温かいなにかに引き寄せられるような感覚に、ゆらゆらと漂っていた意識がゆっくりと浮上する。
微かな声を漏らしながら薄く開いた眼の前には、緩やかに拡がる黒の波。
胸の中には、なにやら温かくてやわらかな感触。
(なんだろう)
寝惚け眼を瞬かせながらそっと顔を摺り寄せる。
やわらかくて、温かくて、大好きな匂い。
すぅすぅと可愛らしい吐息が規則正しく耳をくすぐる。
伝わる温もりに、包み込まれるような安心した気持ちになる。
私、東風谷早苗がそんなふうに感じることができるのは、この世でただ一人しかいない。
「……霊夢、さん……」
囁くように小さく名前を呼んで、胸の中を覗き込む。
眼に映るのは、安らかな寝息を立てる愛しい少女の寝顔。
薄暗い寝室に一つだけ敷かれた布団の中で、私と霊夢さんは抱き合うようにして眠っていた。
(ああそうか、昨日は霊夢さんのところに泊まったんでしたっけ)
まだよく目覚めていない頭でぼんやりと昨日の出来事を思い出す。
季節は冬。年の暮れも押し迫ろうとした頃。
私は霊夢さんの年末年始の準備を手伝う為、博麗神社に泊まりに来たのでした。
昨日は朝から大掃除を始めて、神社中をくまなく綺麗にして回って。
それから、初詣用の御守りや破魔矢等の授与品の準備に追われて。
普段からいつも掃除をしていたおかげもあって、大掃除はあまり時間もかからずに済んで。
授与品の準備の方も二人で手分けしてやった結果、夕方までには充分すぎるくらいの量を用意することができました。
一通りの準備が終わった後は、一緒にお夕飯の支度をして、食べさせ合いっこをしたり。
膝の上に霊夢さんを抱っこしながら湯船で一緒に温まったりして。
いつものように二人でゆっくりとした時間を過ごして。
最後にお揃いの寝間着を着て、二人一緒に眠りについたのでした。
霊夢さんは私の胸に顔を埋めて、可愛らしい寝息を立てている。
そんな霊夢さんの身体を包み込むように抱きしめながら私は横になっている。
私と霊夢さんが一緒に眠るときの決まった眠り方。
霊夢さんが息をする度、ちょっぴり胸がくすぐったいけれど、じんわりと伝わる温かさが心地良い。
緩やかに拡がる黒髪をそっと梳くと、霊夢さんは微かに声を漏らしながら顔を摺り寄せてくる。
まるで子供のようにあどけない寝顔は、幾多の人妖や神をも打倒してきた博麗の巫女のものにはとても見えません。
(私もコテンパンにやられちゃいましたっけ)
守矢神社の上空にて、霊夢さんと二度目の邂逅を迎えた日のことを思い出す。
現人神として、風祝として、絶対的な矜持を持って臨んだ勝負は、完膚無きまでに私の敗北でした。
それまで持っていた自信とか誇りとかいったものを粉々に打ち砕かれてしまって、しばらくの間とても落ち込んだものだけど。
(でも、あれが始まりだったんですよね)
負けた悔しさ以上に私は惹きつけられてしまっていた。
あのとき、私は色んな意味でやられてしまったんだと思う。
博麗霊夢という少女に、その存在に。
それから、分社の様子見を理由に霊夢さんに会いに行くようになって。
だしにしてしまって神奈子様と諏訪子様には申し訳ないと思いつつ、博麗神社に足を運ぶ日々。
博麗神社に留まる理由を作る為に、無理を言って神社の仕事を手伝うことを申し出たりもしました。
今にして思えば、相当強引だったように思える自分の行動の数々。
いつもそっけない霊夢さんの態度や表情に、もしかしたら嫌われているのかもしれないと考えて落ち込むこともあったけれど。
それでも、そんな霊夢さんの中に見え隠れする優しさに気づいたのはいつのことでしょうか。
そして、霊夢さんに対する感情の正体が、恋だと自覚したのは。
それまで恋をしたことのなかった私が初めて好きになった人。
まさか自分より年下の女の子に恋をしてしまうなんて夢にも思わなかったけれど。
それでも、そんな私の想いを霊夢さんが受け入れてくれて。
―――私のことを好きだと言ってくれて。
「ふふっ」
そっと笑みを零して、霊夢さんの身体を抱きしめる。
今こうして霊夢さんと一緒にいられることがなにより嬉しくて。
抱きしめる腕にほんの少しだけ力を込めた。
「……んっ……」
胸の中の霊夢さんが微かな声を漏らして、小さく身じろぎをする。
整った睫を小さく震わせながら、やがてうっすらと瞼を開けた。
「……んぅ……さなえ……」
「ごめんなさい、起こしちゃいました?」
とろんとした瞳で私を見つめて、霊夢さんが小首を傾げる。
そのまま可愛らしい呻き声を上げながら私の胸をぎゅうぎゅうと押してきた。
「ふふっ、くすぐったいですよ、霊夢さん」
ふわりと微笑んで、あやすように霊夢さんの頭を優しく撫でると、霊夢さんは気持ちよさそうに眼を細める。
一緒に眠るようになってから知ったのですが、寝起きの霊夢さんは子供っぽくてとても可愛らしいのです。
普段、年上と年下の関係が逆転されてばかりな私だけど、朝はこうして素直に甘えてもらえるのですごく嬉しい。
「もう、霊夢さんは甘えんぼさんですね」
「私がこんなことするの、早苗だけだもん」
私の胸に顔を埋めたまま、霊夢さんが舌足らずな声で答える。
胸の中から覗く頬は心なしかほんのり赤く染まっていて、珍しく照れているみたいで。
普段あまり見せない霊夢さんの姿に、余計に母性本能をくすぐられてしまいます。
「早苗、あったかい」
「そうですか?」
「うん。私、早苗にぎゅっとされるの、だいすき」
胸の中の霊夢さんがふにゃりと頬を緩める。
その笑顔があんまり幸せそうで、なんだか私まで幸せな気持ちになってしまう。
やわらかな身体を抱き寄せて、私も霊夢さんの頭に顔を摺り寄せる。
「霊夢さんもとってもあったかいですよ」
「そう?」
「はい。私も霊夢さんにぎゅっとされるの、大好きです」
「えへへ、そっかぁ」
二人微笑み合って、ぎゅっと抱きしめ合う。
伝わる温もりは、なによりも温かくて、なによりも心地良い。
今はただ、霊夢さんのことを感じていたくて。
大好きな匂いを胸いっぱいに吸い込んで、やわらかな温もりに身を委ねた。
――――――――――
いつの間にか二人とも微睡んでしまったみたい。
気がつくと、薄暗かった寝室は襖の隙間から漏れる光でだいぶ明るくなっていて。
枕元に置かれた時計の文字盤は朝ももう遅い時間であることを教えてくれます。
名残惜しいけれど、さすがにそろそろ起きないといけません。
霊夢さんの温もりから離れて、冷え切った布団の外に出なければならないのは非常に辛いのだけれど。
へこたれそうになる自分に喝を入れて、霊夢さんの肩にそっと手をかける。
「霊夢さん、そろそろ起きましょう」
「んぅ……もうちょっと……」
私の胸に顔を埋めながら霊夢さんが眠たげな声を漏らす。
優しく身体を揺すってみるけれど、ぎゅうと私の身体を抱きしめたまま胸から顔を離そうとしません。
霊夢さんの可愛らしい姿を見ていると、思わずこのまま寝かせてあげたいという気持ちが浮かんでしまいますが、そういうわけにもいかなくて。
「今日は人里で慧音さん達と初詣の日の打ち合わせをするんでしょう。それが終わったら年末年始用の買い出しをする予定じゃないですか」
「じゃあさぼる。寒いし」
さも当然のように返される自主休校宣言に思わず苦笑してしまう。
温かいお布団から出たくないという霊夢さんの気持ちは非常によくわかります。
私も学校に通っていた頃にはいつも同じようなことを考えていましたから。
正直、寒い日の朝のお布団には勝てる気がしません。戦う前から全面降伏してしまうのは当然ですよね。
そうやってぐずぐずしていると、決まって神奈子様がやって来て、問答無用で布団を引っぺがされてしまったのも今では良い思い出です。
それはさておき。
もし今回そんなことをしてしまったら、二人仲良く頭突きの刑はまず避けられないでしょう。
不死であるあの妹紅さんに「死ぬほど痛いよ」と言わしめる慧音さんの頭突き。
いただくのは謹んで遠慮したいところですね。
「そんなことしたら慧音さんに怒られちゃいますよ。ほら、起きましょう」
「やだーきょうは早苗といっしょに寝てすごすのー」
私の胸にぐりぐりと顔を押し付けながら霊夢さんがいやいやをする。
肌蹴た寝間着の隙間から直に胸を捏ね回されてしまってとてもくすぐったい。
なんだか変な気分になってしまいそうになるのをぐっと堪えつつ、辛抱強く霊夢さんの身体を揺すり続ける。
「霊夢さん、せっかくのお仕事なんですから、ちゃんとしないとよくないですよ。ね?」
「いーやー」
宥めるように優しく言ってみるも、霊夢さんはまるで子供のように駄々を捏ねるばかり。
むぅ、困りました。どうやら梃子でも私から離れないつもりのようです。
いつもなら渋々としながらもちゃんと起きてくれるのに。
今日に限っていったいどうしちゃったんでしょう。
「うぎゅー」
「ひゃっ、ちょ、ちょっと、霊夢さん!」
敏感な部分を擦られて、びくんと身体が跳ねる。
けれども、霊夢さんはそんな私のことはお構いなしにぐりぐりと胸の間に顔を押し付け続けてくる。
「ひぁぁっ、れ、霊夢さん、そこはだめですっ!そんなに激しく動かさないで!」
悲鳴を上げながら慌てて霊夢さんの頭を押し留める。
危ないところでした。このまま続けられていたら確実に意識を飛ばされていました。
霊夢さんは意識せずにいきなりこういうことをしてくるから困ってしまいます。
しかもそれがすごく上手だったりするから始末に終えないのです。
ああもう、なんだか身体が熱くなっちゃいました。朝から恥ずかしいです。
「むー」
肩で息を吐いていると、胸元から不満げな唸り声が耳に届く。
視線を下げると、頬を膨らませた霊夢さんが不機嫌そうな瞳で私を見上げていた。
「早苗のいじわる」
拗ねたように呟いて、霊夢さんがそっぽを向く。
どうやら私の胸から離されてしまったのが気に入らなかったみたいです。
いけない、これ以上機嫌を損ねてしまうとあとが大変なのです。
「霊夢さん、今日はどうしちゃったんですか?」
膨らんだ頬にそっと手をあてて、霊夢さんの顔を覗き込む。
霊夢さんはなにか言いたげな瞳で私のことを見つめると、また私の胸に顔を埋めてしまいました。
その姿がまたとても可愛らしくて、ついつい笑みが零れてしまいます。
今日の霊夢さんはいつもにまして子供っぽい感じですね。なんだか赤ちゃんみたい。
そのままあやすように頬を撫でながら、ゆっくりと霊夢さんの言葉を待ちます。
こうしていると、本当にお母さんになったような気がしますね、うふふ。
「早苗」
少しの間そうしていると、やがて霊夢さんが小さな声で私の名前を呼ぶ。
霊夢さんは私の胸に顔を埋めたまま、落ち着かないように身体を身じろぎさせた。
「あのね、笑わないで、聞いてね」
「ええ、大丈夫ですよ」
安心させるように優しく頬を撫でると、霊夢さんはもじもじしながらそっと囁いた。
「だって、今日が終わったら、早苗としばらく会えなくなっちゃうから」
囁かれた言葉に、胸がきゅんと音を立てる。
愛おしさがこみあげるのと同時に、どうして彼女が駄々を捏ねていたのかを理解する。
年末年始は神社が一年で最も忙しくなるとき。
巫女である私たちは当然それぞれの神社の神事に追われることになる。
少なくとも三が日が過ぎるまではお互いに会うための時間が取れなくなってしまう。
それが仕方のないことであることは私も霊夢さんもわかっているつもりだけれど。
それでも、やっぱり寂しさを感じずにはいられなくて。
霊夢さんに声をかけようとして。けれども、途中で思い直して。
代わりに霊夢さんの身体をぎゅっと抱きしめる。
思わず痛いくらいに力を込めてしまったけれど、霊夢さんはなにも言わずにぎゅっと抱きしめ返してくれた。
そのことがまた、どうしようもなく愛おしくて。
抱きしめる腕にもっと力を込めて、お互いの身体を強く抱きしめ合う。
息が苦しくなるくらいの強い抱擁に、ただ吐息だけが漏れ出る。
「ね、早苗」
私の胸に顔を押し付けながら、甘えるように霊夢さんが囁く。
「今日はいっしょに、寝よ?」
耳をくすぐる甘い声と胸の中のやわらかな温もりに、心が揺れる。
できることなら私もこのまま霊夢さんと一緒に心地良い微睡みの時間を過ごしたいです。
けれども、今回のお泊りは風祝として守矢神社の分社が祀られている博麗神社の年末年始の神事について指導することを名目にしてのこと。
本来なら年末年始の準備で忙しいこの時期に、外泊を許してもらえるわけはなかったのだけれど。
この日の為に守矢神社の方の準備を全て終わらせて、無理を言って御二柱から許可をいただいたのでした。
ここでまた一緒に眠ってしまって、人里での打ち合わせに遅刻しましたなんてことになるのは非常に具合がよろしくありません。
もしもそのことが神奈子様の御耳に入りでもして、博麗神社への外出禁止を言い渡されでもしてしまったら。
頭をよぎった不安に身体が震える。
霊夢さんに会えなくなってしまったら、私は生きていける自信がない。
なによりこれ以上、霊夢さんに寂しい思いをさせたくない。
どうしよう。どうすればいい。
揺れる心に問いかけて、ぐるぐる回る頭で必死に考える。
今の私にできること。
それは―――。
「霊夢さん」
小さく名前を呼んで、霊夢さんの顔をそっと引き寄せる。
きょとんと私を見上げる霊夢さんの唇が言葉を紡ぐより先に、霊夢さんの唇に私の唇を重ね合わせた。
「んっ……」
唇から微かな声を漏らして、霊夢さんの身体がぴくりと震える。
腕の中の霊夢さんがくすぐったそうに身じろぎをするけれど、そっと唇を深めるとすぐにおとなしくなった。
霊夢さんの眼がきゅっと瞑られるのを見届けて、私もゆっくりと眼を瞑る。
重なり合う唇の柔らかな感触、時折漏れる切ない吐息、伝わる温もり。
その全てに、霊夢さんの存在をすぐそばに感じられる。
もっと霊夢さんを感じたくて、強く唇を吸うと、息が苦しくなるくらいに強く吸い返された。
身体中に電流が走って、ゆるゆると力が抜けていく。
意識が飛ばされてしまうような感覚に、蕩けてしまいそうになる身体をぎゅっと抱きしめ合うことで支えて、なおも唇を深め合う。
どきどきと胸が音を立てて、だんだんと鼓動が早くなっていく。
私の胸の鼓動がそのまま霊夢さんに伝わってしまうんじゃないかと心配になるくらい。
このまま続けていたら私の方が先にどうにかなってしまいそうで。
名残惜しかったけれど、霊夢さんの唇からゆっくりと唇を離した。
「……ぁ……さなえ……」
しっとりとした溜息を漏らして、覚束ない声で霊夢さんが私の名前を呼ぶ。
熱を帯びて赤く上気した霊夢さんの頬にそっと触れて、耳元に唇を寄せる。
「おはようのキス、です」
やわらかい声で囁いて、照れたように微笑む。
これが、今の私が霊夢さんにできる精一杯のこと。
霊夢さんのお願いを聞いてあげられないのは本当に心苦しいのだけれど。
「霊夢さん、今日は一日ずっと一緒にいられますから。だから、起きましょう。ね?」
囁いた言葉に、霊夢さんは小さく俯いて。
消え入るような声でぽつりと呟いた。
「……たりない……」
「え?」
「これだけじゃ、たりないから、起きれない」
私の寝間着の裾をぎゅっと握りしめて、霊夢さんが上目遣いに私を見つめる。
幼いしぐさの裏に見え隠れする匂い立つような艶めかしさに、思わず息を呑んでしまう。
切なげに揺れる黒曜の瞳に見つめられて動けない中、桜色の唇がそっと言葉を紡いだ。
「だから、早苗、もっと……して?」
思わず叫び出してしまいそうになる衝動を無理矢理に押さえ込んで。
身体中から溢れ出る愛おしさのままに、霊夢さんの身体をぎゅうぎゅうと抱きしめる。
ああもう、ああもう、本当にもう、この人は。
そんな表情でそんなこと言われてしまったら、もうどうしようもないじゃないですか。
素でやってるにしても、狙ってやってるにしても、こんなのずるいにも程があります。
ひとしきり身悶えた後、がっくりと項垂れて、霊夢さんの頭に顔を埋める。
なんていうかもう、霊夢さんのことが愛おしすぎて、どうにかなってしまいそうで。
やっぱり、私は色んな意味で霊夢さんにやられてしまっているみたいだと思い知らされてしまうけれど。
こみあげてくる感情は、ただただ喜びと幸せに溢れている。
いつも飄々としていて、どこか大人びている霊夢さんだけれど。
本当は私よりも年下で、寂しくなったら甘えてくる、普通の女の子で。
霊夢さんがこんな姿を見せてくれるのは、他の誰でもなく私だけしかいなくて。
霊夢さんのこんな表情を引き出せるのも、きっと私だけ。
だったら私がやるべきことは一つしかないわけで。
「霊夢さん」
やわらかな頬を両手でそっと包み込んで、もう一度霊夢さんの顔を引き寄せる。
唇が触れそうな距離で見つめる先の霊夢さんは、穏やかに私を見上げていて。
初めて会ったときは想像もできなかった表情に、ああもう、やっぱり霊夢さんは可愛いなあなんて思いながら。
やられてしまってばかりなことへのせめてものお返しの意味を込めて、悪戯っぽく囁きかける。
「眠れないくらいに、いっぱいしてあげますから。覚悟してくださいね」
「……うん……もっといっぱい、しよ」
頬を包み込む私の手にそっと自分の手を重ねて、あどけなく微笑む霊夢さんに、私もまた微笑んで。
愛しい少女の寂しかった想いを埋めるように。彼女がもう寂しい想いをしないようにと、想いを込めて。
さっきよりももっと深く、霊夢さんの唇に私の唇を重ね合わせたのでした。
心を許した少女と迎える心地良い微睡みのとき。
温かくて、ふわふわとした、甘い甘い幸せの時間。
私と霊夢さんの朝が始まるのは、まだもうちょっとあとになりそうです。
微かな声を漏らしながら薄く開いた眼の前には、緩やかに拡がる黒の波。
胸の中には、なにやら温かくてやわらかな感触。
(なんだろう)
寝惚け眼を瞬かせながらそっと顔を摺り寄せる。
やわらかくて、温かくて、大好きな匂い。
すぅすぅと可愛らしい吐息が規則正しく耳をくすぐる。
伝わる温もりに、包み込まれるような安心した気持ちになる。
私、東風谷早苗がそんなふうに感じることができるのは、この世でただ一人しかいない。
「……霊夢、さん……」
囁くように小さく名前を呼んで、胸の中を覗き込む。
眼に映るのは、安らかな寝息を立てる愛しい少女の寝顔。
薄暗い寝室に一つだけ敷かれた布団の中で、私と霊夢さんは抱き合うようにして眠っていた。
(ああそうか、昨日は霊夢さんのところに泊まったんでしたっけ)
まだよく目覚めていない頭でぼんやりと昨日の出来事を思い出す。
季節は冬。年の暮れも押し迫ろうとした頃。
私は霊夢さんの年末年始の準備を手伝う為、博麗神社に泊まりに来たのでした。
昨日は朝から大掃除を始めて、神社中をくまなく綺麗にして回って。
それから、初詣用の御守りや破魔矢等の授与品の準備に追われて。
普段からいつも掃除をしていたおかげもあって、大掃除はあまり時間もかからずに済んで。
授与品の準備の方も二人で手分けしてやった結果、夕方までには充分すぎるくらいの量を用意することができました。
一通りの準備が終わった後は、一緒にお夕飯の支度をして、食べさせ合いっこをしたり。
膝の上に霊夢さんを抱っこしながら湯船で一緒に温まったりして。
いつものように二人でゆっくりとした時間を過ごして。
最後にお揃いの寝間着を着て、二人一緒に眠りについたのでした。
霊夢さんは私の胸に顔を埋めて、可愛らしい寝息を立てている。
そんな霊夢さんの身体を包み込むように抱きしめながら私は横になっている。
私と霊夢さんが一緒に眠るときの決まった眠り方。
霊夢さんが息をする度、ちょっぴり胸がくすぐったいけれど、じんわりと伝わる温かさが心地良い。
緩やかに拡がる黒髪をそっと梳くと、霊夢さんは微かに声を漏らしながら顔を摺り寄せてくる。
まるで子供のようにあどけない寝顔は、幾多の人妖や神をも打倒してきた博麗の巫女のものにはとても見えません。
(私もコテンパンにやられちゃいましたっけ)
守矢神社の上空にて、霊夢さんと二度目の邂逅を迎えた日のことを思い出す。
現人神として、風祝として、絶対的な矜持を持って臨んだ勝負は、完膚無きまでに私の敗北でした。
それまで持っていた自信とか誇りとかいったものを粉々に打ち砕かれてしまって、しばらくの間とても落ち込んだものだけど。
(でも、あれが始まりだったんですよね)
負けた悔しさ以上に私は惹きつけられてしまっていた。
あのとき、私は色んな意味でやられてしまったんだと思う。
博麗霊夢という少女に、その存在に。
それから、分社の様子見を理由に霊夢さんに会いに行くようになって。
だしにしてしまって神奈子様と諏訪子様には申し訳ないと思いつつ、博麗神社に足を運ぶ日々。
博麗神社に留まる理由を作る為に、無理を言って神社の仕事を手伝うことを申し出たりもしました。
今にして思えば、相当強引だったように思える自分の行動の数々。
いつもそっけない霊夢さんの態度や表情に、もしかしたら嫌われているのかもしれないと考えて落ち込むこともあったけれど。
それでも、そんな霊夢さんの中に見え隠れする優しさに気づいたのはいつのことでしょうか。
そして、霊夢さんに対する感情の正体が、恋だと自覚したのは。
それまで恋をしたことのなかった私が初めて好きになった人。
まさか自分より年下の女の子に恋をしてしまうなんて夢にも思わなかったけれど。
それでも、そんな私の想いを霊夢さんが受け入れてくれて。
―――私のことを好きだと言ってくれて。
「ふふっ」
そっと笑みを零して、霊夢さんの身体を抱きしめる。
今こうして霊夢さんと一緒にいられることがなにより嬉しくて。
抱きしめる腕にほんの少しだけ力を込めた。
「……んっ……」
胸の中の霊夢さんが微かな声を漏らして、小さく身じろぎをする。
整った睫を小さく震わせながら、やがてうっすらと瞼を開けた。
「……んぅ……さなえ……」
「ごめんなさい、起こしちゃいました?」
とろんとした瞳で私を見つめて、霊夢さんが小首を傾げる。
そのまま可愛らしい呻き声を上げながら私の胸をぎゅうぎゅうと押してきた。
「ふふっ、くすぐったいですよ、霊夢さん」
ふわりと微笑んで、あやすように霊夢さんの頭を優しく撫でると、霊夢さんは気持ちよさそうに眼を細める。
一緒に眠るようになってから知ったのですが、寝起きの霊夢さんは子供っぽくてとても可愛らしいのです。
普段、年上と年下の関係が逆転されてばかりな私だけど、朝はこうして素直に甘えてもらえるのですごく嬉しい。
「もう、霊夢さんは甘えんぼさんですね」
「私がこんなことするの、早苗だけだもん」
私の胸に顔を埋めたまま、霊夢さんが舌足らずな声で答える。
胸の中から覗く頬は心なしかほんのり赤く染まっていて、珍しく照れているみたいで。
普段あまり見せない霊夢さんの姿に、余計に母性本能をくすぐられてしまいます。
「早苗、あったかい」
「そうですか?」
「うん。私、早苗にぎゅっとされるの、だいすき」
胸の中の霊夢さんがふにゃりと頬を緩める。
その笑顔があんまり幸せそうで、なんだか私まで幸せな気持ちになってしまう。
やわらかな身体を抱き寄せて、私も霊夢さんの頭に顔を摺り寄せる。
「霊夢さんもとってもあったかいですよ」
「そう?」
「はい。私も霊夢さんにぎゅっとされるの、大好きです」
「えへへ、そっかぁ」
二人微笑み合って、ぎゅっと抱きしめ合う。
伝わる温もりは、なによりも温かくて、なによりも心地良い。
今はただ、霊夢さんのことを感じていたくて。
大好きな匂いを胸いっぱいに吸い込んで、やわらかな温もりに身を委ねた。
――――――――――
いつの間にか二人とも微睡んでしまったみたい。
気がつくと、薄暗かった寝室は襖の隙間から漏れる光でだいぶ明るくなっていて。
枕元に置かれた時計の文字盤は朝ももう遅い時間であることを教えてくれます。
名残惜しいけれど、さすがにそろそろ起きないといけません。
霊夢さんの温もりから離れて、冷え切った布団の外に出なければならないのは非常に辛いのだけれど。
へこたれそうになる自分に喝を入れて、霊夢さんの肩にそっと手をかける。
「霊夢さん、そろそろ起きましょう」
「んぅ……もうちょっと……」
私の胸に顔を埋めながら霊夢さんが眠たげな声を漏らす。
優しく身体を揺すってみるけれど、ぎゅうと私の身体を抱きしめたまま胸から顔を離そうとしません。
霊夢さんの可愛らしい姿を見ていると、思わずこのまま寝かせてあげたいという気持ちが浮かんでしまいますが、そういうわけにもいかなくて。
「今日は人里で慧音さん達と初詣の日の打ち合わせをするんでしょう。それが終わったら年末年始用の買い出しをする予定じゃないですか」
「じゃあさぼる。寒いし」
さも当然のように返される自主休校宣言に思わず苦笑してしまう。
温かいお布団から出たくないという霊夢さんの気持ちは非常によくわかります。
私も学校に通っていた頃にはいつも同じようなことを考えていましたから。
正直、寒い日の朝のお布団には勝てる気がしません。戦う前から全面降伏してしまうのは当然ですよね。
そうやってぐずぐずしていると、決まって神奈子様がやって来て、問答無用で布団を引っぺがされてしまったのも今では良い思い出です。
それはさておき。
もし今回そんなことをしてしまったら、二人仲良く頭突きの刑はまず避けられないでしょう。
不死であるあの妹紅さんに「死ぬほど痛いよ」と言わしめる慧音さんの頭突き。
いただくのは謹んで遠慮したいところですね。
「そんなことしたら慧音さんに怒られちゃいますよ。ほら、起きましょう」
「やだーきょうは早苗といっしょに寝てすごすのー」
私の胸にぐりぐりと顔を押し付けながら霊夢さんがいやいやをする。
肌蹴た寝間着の隙間から直に胸を捏ね回されてしまってとてもくすぐったい。
なんだか変な気分になってしまいそうになるのをぐっと堪えつつ、辛抱強く霊夢さんの身体を揺すり続ける。
「霊夢さん、せっかくのお仕事なんですから、ちゃんとしないとよくないですよ。ね?」
「いーやー」
宥めるように優しく言ってみるも、霊夢さんはまるで子供のように駄々を捏ねるばかり。
むぅ、困りました。どうやら梃子でも私から離れないつもりのようです。
いつもなら渋々としながらもちゃんと起きてくれるのに。
今日に限っていったいどうしちゃったんでしょう。
「うぎゅー」
「ひゃっ、ちょ、ちょっと、霊夢さん!」
敏感な部分を擦られて、びくんと身体が跳ねる。
けれども、霊夢さんはそんな私のことはお構いなしにぐりぐりと胸の間に顔を押し付け続けてくる。
「ひぁぁっ、れ、霊夢さん、そこはだめですっ!そんなに激しく動かさないで!」
悲鳴を上げながら慌てて霊夢さんの頭を押し留める。
危ないところでした。このまま続けられていたら確実に意識を飛ばされていました。
霊夢さんは意識せずにいきなりこういうことをしてくるから困ってしまいます。
しかもそれがすごく上手だったりするから始末に終えないのです。
ああもう、なんだか身体が熱くなっちゃいました。朝から恥ずかしいです。
「むー」
肩で息を吐いていると、胸元から不満げな唸り声が耳に届く。
視線を下げると、頬を膨らませた霊夢さんが不機嫌そうな瞳で私を見上げていた。
「早苗のいじわる」
拗ねたように呟いて、霊夢さんがそっぽを向く。
どうやら私の胸から離されてしまったのが気に入らなかったみたいです。
いけない、これ以上機嫌を損ねてしまうとあとが大変なのです。
「霊夢さん、今日はどうしちゃったんですか?」
膨らんだ頬にそっと手をあてて、霊夢さんの顔を覗き込む。
霊夢さんはなにか言いたげな瞳で私のことを見つめると、また私の胸に顔を埋めてしまいました。
その姿がまたとても可愛らしくて、ついつい笑みが零れてしまいます。
今日の霊夢さんはいつもにまして子供っぽい感じですね。なんだか赤ちゃんみたい。
そのままあやすように頬を撫でながら、ゆっくりと霊夢さんの言葉を待ちます。
こうしていると、本当にお母さんになったような気がしますね、うふふ。
「早苗」
少しの間そうしていると、やがて霊夢さんが小さな声で私の名前を呼ぶ。
霊夢さんは私の胸に顔を埋めたまま、落ち着かないように身体を身じろぎさせた。
「あのね、笑わないで、聞いてね」
「ええ、大丈夫ですよ」
安心させるように優しく頬を撫でると、霊夢さんはもじもじしながらそっと囁いた。
「だって、今日が終わったら、早苗としばらく会えなくなっちゃうから」
囁かれた言葉に、胸がきゅんと音を立てる。
愛おしさがこみあげるのと同時に、どうして彼女が駄々を捏ねていたのかを理解する。
年末年始は神社が一年で最も忙しくなるとき。
巫女である私たちは当然それぞれの神社の神事に追われることになる。
少なくとも三が日が過ぎるまではお互いに会うための時間が取れなくなってしまう。
それが仕方のないことであることは私も霊夢さんもわかっているつもりだけれど。
それでも、やっぱり寂しさを感じずにはいられなくて。
霊夢さんに声をかけようとして。けれども、途中で思い直して。
代わりに霊夢さんの身体をぎゅっと抱きしめる。
思わず痛いくらいに力を込めてしまったけれど、霊夢さんはなにも言わずにぎゅっと抱きしめ返してくれた。
そのことがまた、どうしようもなく愛おしくて。
抱きしめる腕にもっと力を込めて、お互いの身体を強く抱きしめ合う。
息が苦しくなるくらいの強い抱擁に、ただ吐息だけが漏れ出る。
「ね、早苗」
私の胸に顔を押し付けながら、甘えるように霊夢さんが囁く。
「今日はいっしょに、寝よ?」
耳をくすぐる甘い声と胸の中のやわらかな温もりに、心が揺れる。
できることなら私もこのまま霊夢さんと一緒に心地良い微睡みの時間を過ごしたいです。
けれども、今回のお泊りは風祝として守矢神社の分社が祀られている博麗神社の年末年始の神事について指導することを名目にしてのこと。
本来なら年末年始の準備で忙しいこの時期に、外泊を許してもらえるわけはなかったのだけれど。
この日の為に守矢神社の方の準備を全て終わらせて、無理を言って御二柱から許可をいただいたのでした。
ここでまた一緒に眠ってしまって、人里での打ち合わせに遅刻しましたなんてことになるのは非常に具合がよろしくありません。
もしもそのことが神奈子様の御耳に入りでもして、博麗神社への外出禁止を言い渡されでもしてしまったら。
頭をよぎった不安に身体が震える。
霊夢さんに会えなくなってしまったら、私は生きていける自信がない。
なによりこれ以上、霊夢さんに寂しい思いをさせたくない。
どうしよう。どうすればいい。
揺れる心に問いかけて、ぐるぐる回る頭で必死に考える。
今の私にできること。
それは―――。
「霊夢さん」
小さく名前を呼んで、霊夢さんの顔をそっと引き寄せる。
きょとんと私を見上げる霊夢さんの唇が言葉を紡ぐより先に、霊夢さんの唇に私の唇を重ね合わせた。
「んっ……」
唇から微かな声を漏らして、霊夢さんの身体がぴくりと震える。
腕の中の霊夢さんがくすぐったそうに身じろぎをするけれど、そっと唇を深めるとすぐにおとなしくなった。
霊夢さんの眼がきゅっと瞑られるのを見届けて、私もゆっくりと眼を瞑る。
重なり合う唇の柔らかな感触、時折漏れる切ない吐息、伝わる温もり。
その全てに、霊夢さんの存在をすぐそばに感じられる。
もっと霊夢さんを感じたくて、強く唇を吸うと、息が苦しくなるくらいに強く吸い返された。
身体中に電流が走って、ゆるゆると力が抜けていく。
意識が飛ばされてしまうような感覚に、蕩けてしまいそうになる身体をぎゅっと抱きしめ合うことで支えて、なおも唇を深め合う。
どきどきと胸が音を立てて、だんだんと鼓動が早くなっていく。
私の胸の鼓動がそのまま霊夢さんに伝わってしまうんじゃないかと心配になるくらい。
このまま続けていたら私の方が先にどうにかなってしまいそうで。
名残惜しかったけれど、霊夢さんの唇からゆっくりと唇を離した。
「……ぁ……さなえ……」
しっとりとした溜息を漏らして、覚束ない声で霊夢さんが私の名前を呼ぶ。
熱を帯びて赤く上気した霊夢さんの頬にそっと触れて、耳元に唇を寄せる。
「おはようのキス、です」
やわらかい声で囁いて、照れたように微笑む。
これが、今の私が霊夢さんにできる精一杯のこと。
霊夢さんのお願いを聞いてあげられないのは本当に心苦しいのだけれど。
「霊夢さん、今日は一日ずっと一緒にいられますから。だから、起きましょう。ね?」
囁いた言葉に、霊夢さんは小さく俯いて。
消え入るような声でぽつりと呟いた。
「……たりない……」
「え?」
「これだけじゃ、たりないから、起きれない」
私の寝間着の裾をぎゅっと握りしめて、霊夢さんが上目遣いに私を見つめる。
幼いしぐさの裏に見え隠れする匂い立つような艶めかしさに、思わず息を呑んでしまう。
切なげに揺れる黒曜の瞳に見つめられて動けない中、桜色の唇がそっと言葉を紡いだ。
「だから、早苗、もっと……して?」
思わず叫び出してしまいそうになる衝動を無理矢理に押さえ込んで。
身体中から溢れ出る愛おしさのままに、霊夢さんの身体をぎゅうぎゅうと抱きしめる。
ああもう、ああもう、本当にもう、この人は。
そんな表情でそんなこと言われてしまったら、もうどうしようもないじゃないですか。
素でやってるにしても、狙ってやってるにしても、こんなのずるいにも程があります。
ひとしきり身悶えた後、がっくりと項垂れて、霊夢さんの頭に顔を埋める。
なんていうかもう、霊夢さんのことが愛おしすぎて、どうにかなってしまいそうで。
やっぱり、私は色んな意味で霊夢さんにやられてしまっているみたいだと思い知らされてしまうけれど。
こみあげてくる感情は、ただただ喜びと幸せに溢れている。
いつも飄々としていて、どこか大人びている霊夢さんだけれど。
本当は私よりも年下で、寂しくなったら甘えてくる、普通の女の子で。
霊夢さんがこんな姿を見せてくれるのは、他の誰でもなく私だけしかいなくて。
霊夢さんのこんな表情を引き出せるのも、きっと私だけ。
だったら私がやるべきことは一つしかないわけで。
「霊夢さん」
やわらかな頬を両手でそっと包み込んで、もう一度霊夢さんの顔を引き寄せる。
唇が触れそうな距離で見つめる先の霊夢さんは、穏やかに私を見上げていて。
初めて会ったときは想像もできなかった表情に、ああもう、やっぱり霊夢さんは可愛いなあなんて思いながら。
やられてしまってばかりなことへのせめてものお返しの意味を込めて、悪戯っぽく囁きかける。
「眠れないくらいに、いっぱいしてあげますから。覚悟してくださいね」
「……うん……もっといっぱい、しよ」
頬を包み込む私の手にそっと自分の手を重ねて、あどけなく微笑む霊夢さんに、私もまた微笑んで。
愛しい少女の寂しかった想いを埋めるように。彼女がもう寂しい想いをしないようにと、想いを込めて。
さっきよりももっと深く、霊夢さんの唇に私の唇を重ね合わせたのでした。
心を許した少女と迎える心地良い微睡みのとき。
温かくて、ふわふわとした、甘い甘い幸せの時間。
私と霊夢さんの朝が始まるのは、まだもうちょっとあとになりそうです。
罰としてこの点数
甘えんぼ霊夢さん可愛えのう。
…里のほうには間に合ったんだろうか
正月の忙しい時期が過ぎたらゆっくり二人で過ごして欲しいですね