Coolier - 新生・東方創想話

早すぎたサンタクロース

2011/12/27 18:04:24
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「ほぅほぅほぅ! めーりーぃーくりすまーすっ!!」
雪を舞い上げ、風を引き連れ、少女は飛びこむ。窓を透き温かな暖炉の光がチラチラと覗く紅魔館の室内へ。盛大に窓ガラスを割って侵入してきたその少女は俊敏な身のこなしで、絨毯の上へ着地した。一本歯の下駄がトンと軽い音を立てる。
「ちょっと~! トナカイよりも先にサンタが飛んで行ってどうするんですか~!!」
そんな声が窓の外から聞こえてきたかと思えば、やや遅れてさっきの少女が破砕した窓……の、隣の窓を蹴破りもう一人の少女が飛び込んでくる。室内の暖かい照明を浴び、キラキラと舞い散る硝子の破片と雪の結晶。少女の着地に送れてそれらが降り注ぐ。
 さて、ド派手な登場をかました2人の少女であったが、彼女らの登場の派手さとは裏腹に、場はしんと静まり返っていた。
「あれ……? ちょっと早すぎたかな?」
飛び込んできた少女が、その反応を見て首を傾げた。
 別に登場の仕方に問題があった訳ではなかった。紅魔館の窓ガラスは割とよく割られる。主に白黒の魔法使い等に。では何が問題だったか。それは他でもない“少女達がサンタクロースの衣装を身に纏っていること”と、“今日が12月27日であること”だった。
「えっと……射命丸さん、ですよね?」
吸血鬼の姉妹や魔女が呆気にとられて言葉を失っている中。この微妙な感じの空気をなんとか打ち破ろうと切りだしたのは紅魔館のメイド長、十六夜咲夜だった。
「え? あ、はい。まぁそんなところです」
登場時の勢いがすっかり削がれた少女こと射命丸文はとりあえず本当の事を答えた。まぁ、顔が丸出し故にそこの所は誤魔化しようがないのだが。
「で、そちらは犬走さん」
「はい、なんか新聞を配りに行くから手伝えって」
再び訪れる沈黙。とりあえず確認は済んだ物の、何からどう尋ねていいのやら。
「えっと……師走の24日に、散多菩薩とかいう人の仮装をしてプレゼントを配るのが最近の流行りだって聞いたので。ですので、24日までは毎日この衣装で新聞を配達しようかと……」
今度は、この状況を打開すべく射命丸が説明を行うが。
「散多……菩薩……?」
状況は打開されるどころか、より一層の混迷を極めた。
「散多菩薩ってあれよね……サンタクロースの事よね?」
魔女が吸血鬼に囁き、そして吸血鬼が困った顔で首を傾げる。そんな状況を見てか、射命丸と椛の方もなにやらひそひそと話し合いを始めた。
「椛! 私たち何かものすごーく場違いなんですけど。何か間違いましたっけ?」
「う~ん、確かに散多なる物についてはしっかり調べた筈なのですが」
「どこ情報ですか!?」
「民明書房です」
「それだ……」
問題の所在が分かったところで。さてはて、どうしたものか。相手も相手で2人の事を気遣ってしまっているため、ほんとうにどうしようもない空気なのだ。
 とりあえず、何か間違っていたことは間違いない。
「えっと、その……私たち、妖怪の山の天狗は西洋の文化に疎いもので……何か間違ってましたっけ?」
あはは、と引きつった笑みを浮かべ、射命丸がその場にいる一同に尋ねる。
「いや、その……。散多菩薩っていうのはサンタクロースの事であってるのよね?」
魔女が天狗に確認をする。
「え? さんたく……ろーず? あ、はい、そうそう! さんたくろーず! もちろんさんたくろーずのことですともっ!!」
さんたくろーず。いかにも知っていましたとばかりに、間違った単語を連呼する射命丸。まぁ、これ以上追い打ちをかけることはなかれと、魔女もそこの部分については触れない事にした。
「その……大変申し上げにくいんだけど。サンタクロースが来るのは先一昨日の夜よ?」
「…………」
静寂。雪の降り積もる音が聞こえそうなほどの、耳が痛くなるほどの。冷たい風が窓を通り抜け、びょうと吹き抜けた。その後は暫く、やっぱり何の音もしなかった。
「や、やだなぁ! その、あれですよ! ららら、来年の12月24日に向けて今日から散多の仮装をですね……ほら、そうですよね、椛!!」
詭弁であった。が、とにかく静寂を打ち破った文は、その後の処理の一切を椛に投げ打った。まさにキラーパス。
「わふっ! わんわん!」
が、椛は犬語を使ってそのキラーパスを受け止めることなく華麗に回避した。いや、犬語かどうかについては犬のみぞ知ることではあるが。
「ちょ、椛! あんたなんか言いなさいよ! フォローしなさいよ!」
「だって、ここでもし文さんをフォローしたらあと1年間この衣装で新聞配達に付き合わされるんですよね?」
小声で文に返答する椛。そう言えばそうだった。この理屈ではこれを毎日やることになるのだ。
「えっと……じゃ、じゃぁそういう事で!! 新聞でーっす!!」
ばっしーん! 4人が囲む食卓に、その日の新聞を叩きつけ、慌てて飛び去る射命丸。入って来た時とは違う窓を突き破って、12月27日の紅魔館を超音速で後にした。


翌日。妖怪の山、守屋神社にて。

 守矢神社は大忙しであった。年末の祭事に年始の祭事。この時期には神社としてやらねばならない仕事が集中しているのだ。どれもこれも信仰の要。ことに、境内の掃除や手入れに関してはいつもより入念に、きめ細やかに行われる。
 さて、そんな大忙しの年の瀬。神社の境内にやはり忙しそうに雪かきに勤しむ一人の巫女の姿があった。背中のあたりまである長髪は翠色。彼女の一挙一動にしなやかにつき従い、エメラルドの滝のようにキラキラと光りを振りまく。肩の出た巫女服から覗く肌は陽光を捉えて眩しいばかりに輝く白。翡翠のような透き通った瞳に、優しそうな桜色の唇。彼女こそ守屋神社の巫女にして現人神の、東風谷早苗であった。
「ちょっと、話が違うじゃないですかぁっ!!」
突然、頭上からかけられた声に見上げれば、既にそこに声を発した主はおらず。
「あれ? いま射命丸さんの声が聞こえたような……」
目を細めて、高く澄み渡った冬の空を見上げる。雲ひとつない、影一つない快晴。
「もう貴女の前にいますよ」
と、その声で視線を前に戻せば、そこには赤と白の衣装に身を包んだ射命丸の姿が。
「あら、相変わらず幻想郷最速なんですね」
早苗はそんな彼女を見て、にっこり笑った。
「相変わらず変な挨拶ですね……。って、そうじゃなくって」
射命丸は半ば怒りながら、昨日起きた出来事について早苗に説明した。
 そう、射命丸にサンタクロースの話をしたのは他ならぬ早苗であった。本当に些細な、他愛もない世間話の一つとして。早苗が話したことと言えば、そのサンタクロースは12月の24日に来る物であることと、外の世界ではそれが商戦にこれでもかとばかりに利用されているということ。ならばそれに便乗しようと、後の事は椛と文で調べて衣装まであつらえたのだった。
「ふ……ふふっ。そう、それは大変でしたね」
話を聞くなり、早苗は吹き出してしまった。自分が事の元凶である故に、少しばかりの罪悪感もあるが。
「大変でしたね……って! 早苗さん、散多がくるのは12月24日だって言ってたじゃないですか!! 本来ならばまだまだ20日もある筈ですよ!? 早すぎた筈が、遅すぎたってどういう事ですか!?」
もはや半泣きで、射命丸が早苗に詰め寄る。
「いいえ、確かに遅いのです。だって今日は12月の28日ですよ?」
ふふっ、と早苗が笑いながら答える。どうにも話がかみ合わない。
「あれ……今日は12月の4日ですよね?」
射命丸が指を折って数を数え、それを数回繰り返して首を傾げる。
「そうですね、旧暦では」
数瞬の沈黙。そして文はやっと事態が飲み込めた。
「早苗さんは、外の世界のカレンダー使ってるんですかああぁぁっ!?」
「えぇ。それに、紅魔館の方々もグレゴリオ暦を採用してらっしゃいます」
あはは、と早苗は笑う。そうだった、妖怪の山では旧暦が用いられていることをすっかり忘れて話をしてしまっていたのだ。確かに悪いことをしたとは思うが、しかしこれは中々に愉快。
「ぷっ……くく……あと一年間、サンタの衣装で配達頑張ってくださいね……っ!」
射命丸の肩をぽんと叩き、そして早苗は雪かきに戻って行った。いや、戻って行くだけならともかく、戻って行った先で盛大に、ゲラゲラ笑っていた。
 取り残された射命丸は、参道に棒のように立ちつくし。
「く……クリスマスなんて爆発してしまえええぇぇぇ!!」
彼女の絶叫は幻想郷の寒空に高く響き渡り、小さくこだまを残して消えていった。
サンタネタはもう終わりと思ってるそこのあなたへお届けするサンタネタです。
初投稿がこんなんで非常にアレですが、クリスマスって事で勘弁してやってください。
虚構の人
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コメント



0.480簡易評価
2.100名前が正体不明である程度の能力削除
菩薩ってww
何はともあれ、「創想話へようこそ! 」
3.20名前が無い程度の能力削除
正直、読みにくい
もう少し改行増やして欲しかった
13.100名前が無い程度の能力削除
滅離苦離蘇婆訶(メリクリソワカ)~

哀れなあややぽんに祈りをー 南無ー