「はぁ……」
今は、午後5時過ぎ。
未の刻。
冬至を過ぎたばかりの、寒い冬の日。
薄暗い部屋の中で、寒さに耐えながら、彼女はため息をついてる。
「今年も、リア充を爆発させたい時期が来たわね」
とか、物騒なことを言ってる。
その顔は、妬みで歪んでいるようにも見えるな~。
「あぁ、妬ましいわ!!」
たった1人しかいない部屋の中で、妬ましさを存分に込めて1人で喋ってる。
寂しいヒトだね~。
そういえば去年も、彼女は妬みを込めた呪詛を吐いてたな~。
「こんなにも街中にリア充が溢れ、キリスト教信者でもないくせにクリスマスを楽んで」
顔に悔しさが滲み始めてるよ。
「街中、カップルで腕組んでイチャイチャしてるなんて!!」
さっきから、誰もいないのに1人で騒いで、暴れてる。
机の上のコップが飛び跳ね、奇跡的にそのまま着地した。
「えぇ、えぇ。 私には程遠い話ですよ!!」
ーーーグスッ……。
あ~あ、泣いてる。
「べ、別に、悲しくなんか……。」
強がるね~。
半ベソかいてるくせに。
「うぅ……。 妬ましい……」
あ、また言った。
「今年こそ、本当に爆発させてやろうかしら?」
やったら、あのスキマ妖怪にこっ酷く叱られるだろうな~。
「はぁ……」
今日何度目かすらわからないため息をついてる。
暗いオーラを放ちつつ、同情してくれる仲間もいない。
そんななかで、1人で妬ましいと連呼しているのでした。
ーーー(ガサッ)
いや~、荒れてるねぇ~。
いくらクリスマスだからといって、そんなに荒れなくてもね~。
じゃじゃ~ん。
みんなの恋のキューピット、古明地こいしちゃんだよ~。
ーーーイチャイチャ
……イラッ。
なんか、むかつく風景が見えるなぁ~。
どうしよっかなぁ~。
……。
キュッとして~、どか~ん。
ーーーギャー。
あはは。
楽しい悲鳴が聞こえたなぁ~。
と、いうわけで、今年もクリスマスを楽しんじゃおっかな~。
「はぁ~、疲れる……」
なに、この仕事の量。
もう年末ですよね?
残りわずかになっててもいい時期ですよね……。
「おねぇちゃん、ただいま~」
「おかえりなさい、こいし」
「おかえりなさい、ってなんか丁寧に帰れって命令してるように感じるんだけど?」
突然、こいしが、よくわからないことを聞いてきました。
よくあることですが。
「そうですか?」
「そうだよ」
「でも、普通はこう言いますからね」
何故かは知らないのです。
ただ、そう言うのですから。
「ふぅ~ん」
一応、納得したみたいですね。
でも、まだ何か聞きたそうにしていますね。
「どうかしましたか?」
「おねぇちゃんは、明日のクリスマス、どうするのかぁ~、って」
こんな状態でクリスマスですか……。
仕事が山のように溜まっているのに……。
……こんなに溜めた憶えはないのですが。
「別に。 何もないですけど」
「クリスマスはなんのためにあるのさ!?」
「さぁ? リア充が爆発して、その他もろもろが絶望する日じゃないんですか?」
「……」
何故か、こいしが愕然としてる。
何故なんでしょうか?
「そんな日に、何をしろというのですか?」
「むぅ~。 おねぇちゃんもパルスィ病になってる」
「なんですか、それは?」
なんでしょうか、その変な病名?
私が、そんな変な病を罹ってるわけないじゃないですか。
「こういう時期になると、いつもそうやって「リア充爆発しろ!!」とか思ってるんじゃない?」
「そんなことは思ってませんよ?」
爆発させたければ、爆破しますし。
……。
……それも面白そうですね。
私がこんなに働いているのに、みなさんはイチャイチャと楽しんでるのですから。
別に、爆破してもいいですよね?
「もしかして、面白そうとか、思ってる?」
「えっ?」
「えっ?」
「……」
心を読まれた!?
そんなはずは……。
「顔に出てるよ、おねぇちゃん」
顔に出てる?
どういうことなのでしょうか?
出してるつもりは……。
「出してるつもりはなくても、出てるんだよ?」
行動が読まれているような……。
私より、相手の行動を読むのが上手いんじゃ……。
……私の立場が。
「そんなことより、折角なんだからクリスマスを楽しもうよ!!」
「こんなに仕事が残ってるのに、そんな楽しく過ごしている暇なんてありません」
これだけ仕事があるのでは、今年中に終わらせられるかも分かりませんし。
なにより、早く終わらせなくてはいけませんから。
「おねぇちゃん、仕事バカだよね」
仕事バカ、ですか。
仕方ないじゃないですか。
だって……。
「私は、地底の管理者ですから……」
「……」
ふくれっ面をしている。
申し訳ない感じはするが、仕方が無い。
仕事を来年に残すわけにはいかないですから……。
「そうだ!!」
「?」
いきなりどうしたのでしょう?
満面の笑みで、とても顔が輝いていますが。
「おねぇちゃん、またちょっと出掛けてくる!!」
「気をつけてくださいね」
「うん!!」
さっき帰ってきたばかりなのにまたですか。
我が妹ながら、忙しい子ですね。
「いってきま~す」
「いってらっしゃい」
ーーーバタバタ
こいしが、駆け足で出かけて行った。
そんな急いで行かなくてもいいんじゃないでしょうか?
……。
……あっ。
……夕食の材料がなかったような。
頼めばよかったでしょうか?
今の時間は午後3時。
夕食の食材がないのなら、買いに行かなくてはいけませんね。
机の上の書類を見渡す。
「……はぁ」
自然とこぼれるため息を残し、私は部屋を出て、買い物へ向かいました。
「……」
妬ましすぎて、むしろ清々しいわ。
私の前を歩いて行くカップル達。
……これだけ多いと、もう群れって表現出来そうね。
いつもと変わらず橋の上。
私だけが変わらない。
まるで、おいてけぼりのよう。
ーーームニッ
「ひゃっ!?」
えっ!?
何!?
「柔らか~」
後ろから聞き慣れた声がする。
「その度胸、妬ましいわね」
「別に減らないし、いいじゃん」
まるでおっさんね。
ただ、警察や裁判所みたいな便利な所なんてない。
私は、泣き寝入りするしかない。
……まぁ、相手はこいしだし。
別にそこまでしなくてもいいけど。
……何かしても意味ないし。
「おねぇちゃんに訴えてみたら?」
「……」
ふむ。
もっと厄介なことになりそうね……。
却下。
「それで? なんの用なの?」
「別に? 散歩に付き合ってもらおうかなぁ~、って思っただけ」
うわっ、面倒そう。
事実、古明地姉妹は面倒なことしか持ち込まないけど。
「……そんなに暇じゃないんだけど」
暇だけど、面倒そうだから逃げる。
ただですらテンション下がりっぱなしなのに。
面倒なことなんてやってられないわ。
「……そんなにイチャイチャしているカップルを見るのが楽しいの?」
「はぁ!? カップルなんて、見ても楽しいわけないじゃない!!」
なにがカップルよ。
この時期を楽しんじゃってさ。
クリスマスとか、なにそれ美味しいの?
あぁ、妬ましい!
妬ましすぎる!!
「ホンット、暇じゃないとか。 もう妬ましい限りだわ!!」
「つまり、暇なんだね♪」
……しまった。
あまりの妬ましさに、いらないことを口走ってしまった。
「あぁ、もう!! 暇だけど!! なに?!」
「そんなヤケクソにならなくても……」
「あんた達姉妹を相手にすると、ロクなことにならないじゃない」
「えぇ~。 そんなことないと思うけどなぁ~」
そんなことあるんだって。
今だって後ろからセクハラされたじゃない。
「はぁ……」
「ため息なんて吐くと、幸せが逃げるよ?」
嫉妬の妖怪に、幸せ、ねぇ……。
他人を妬む私に、幸せなんて、あるわけないじゃない。
「幸せなんて、最初から持ってないわよ」
「えぇ~。 そうかなぁ~?」
「そんなものよ。 嫉妬の妖怪なんて……」
そう。
幸せなんて、昔に置いてきた。
いや、幸せなんて、もう忘れてしまった。
どんなことを、幸せというのか。
あのときの、絶望で、すべてを失ったのだから。
「……散歩、行こ?」
「はいはい、わかったわよ」
こいしに連れられ、私は旧都の方へ歩き始めた。
「……」
何故なんでしょう。
とてもイライラするのですが。
このお祭りムード。
私がこんなにも忙しいのに、みんなして楽しんでいるなんて。
「……はぁ」
もう、ため息しか出てきませんね。
本当に妬ましい。
買い物を済ませて、さっさと帰りましょう。
「おねぇちゃ~ん!!」
こいし?
あれ?
パルスィまで。
「こんにちは、パルスィ」
「えぇ」
相変わらず、愛想がないですね。
私にくらい、もう少し愛想をよくしてくれてもいいじゃないですか。
じゃなくて、どうしてここにいるんでしょうか?
「どうしてここにいるんですか?」
「私が誘ったんだよ♪」
「こいしが、散歩しよ?って言うから、適当に付き合ってるだけよ」
何気に人付き合いがいいですね、パルスィ。
今度、私も誘ってみましょうか?
「それでね、パルスィの、柔らかいんだよ♪」
「柔らかい?」
何がでしょうか?
……。
ふむ、なるほど、そんなことが。
……羨ましいですね。
……。
……う~ん。
……!!
「あっ!?」
取り敢えず、パルスィの後ろの方を指してみた。
「……」
……あれ?
後ろを向かないですね。
どうしてでしょう?
「……バレバレよ」
……。
う~……。
こいしが羨ましいですね。
「そういえば、おねぇちゃん、仕事は?」
「夕食の材料が無いことに気付きまして、買いに来た、ん、です、よ?」
……!
そうだ!!
「パルスィ!!」
「嫌だ」
えっ!?
ちょっ!?
「いや、まだ何も言ってないじゃないですか!?」
「どうせ、面倒なことを押し付けるつもりでしょ?」
「うぐ……」
まずい。
このままでは逃げられてしまう。
次の手を……。
……!
これだ!!
「ねぇ、こいし?」
「なぁに?」
「折角だから、今日の夕食、パルスィを誘いませんか?」
ーーーニヤッ
「うんっ!! 誘おう、誘おうっ!!」
……気のせいでしょうか?
一瞬、こいしの顔が、何かを企んでいるかのような表情になった気が……。
でも、今は……。
「でも、仕事が忙しくて……」
「じゃあさ、じゃあさ。 パルスィが仕事を手伝えばいいんだよ」
「はぁ!? なんで私がさとりの手伝いなんかしなきゃいけないのよ!?」
「夕食は付けますから、どうか、手伝ってください」
必死に助けてほしい、という顔をする。
ほんと。
助けてくださいぃ~。
「ぐっ……」
「パルスィ、手伝ってあげてよ?」
(まわりが敵だらけなんだけど)
敵だなんて。
心外ですね。
ただ、手伝ってほしいだけなのですが。
「別に、敵のつもりはないのですが」
「自分の仕事くらい、自分でやりなさいよ」
「やっています。 けど、終わらないんです……」
これだけ忙しく働いているのに、終わらないんですよ?
手伝ってくれてもいいじゃないですか。
「パルスィ。 働かざる者食うべからずだよ♪」
「ぐっ……」
「駄目、ですか?」
精一杯、甘えてるような顔を作る。
いや、本当に手伝って欲しいんですよ?
「……わかったわよ」
よし!
落ちた!!
「ありがとう、パルスィ!!」
では、早く帰らなければ。
私の代わりに、たくさん仕事をしてもらいましょう。
「はぁぁ~~……」
なに?
この仕事の量。
机の上、書類の山。
あまりにも多すぎるでしょ?
驚きしかでてこないって。
ただ、ほとんどがつい最近に出されてるってどういうことよ?
いくらなんでも多すぎでしょうに。
こりゃ確かに、手伝いが必要ね。
もう手伝いたくないけど。
というより、手伝わないけど。
早く終わらせないと、家に帰れないんだろうなぁ~。
さっさと終わらせちゃいましょう。
ーーーコンコン
「さとり様~」
控えめに扉をノックする音。
それに、実際の部屋の主を呼ぶ声。
「入ってくれる?」
その声の主を敢えて呼び入れる。
「失礼します」
何故、なんの警戒もせず入ってくるかなぁ?
あんたの主と声違うでしょうに……。
「あれ? パルスィ様?」
「さとりに何か用だった?」
「いえ、特に重要な件は何も」
さて、何もないらしい。
ならば。
「お燐」
「はい?」
「……仕事を手伝ってください」
もう、ぶっちゃけ涙目な気がする。
猫の手も借りたいです。
「え、えぇ。 いいですけど」
やった。
この量、1人じゃ終わらないって。
「それ、さとり様の仕事ですか?」
「そうだけど」
「変ですね」
変?
この仕事量はおかしいわよね。
この年末に。
「この書類の多さはおかしいわよね」
「いえ。 毎年、年末はそんな感じなんですが、いつもは1人で処理するんですよ?」
えっ!?
毎年……。
無茶するわね、さとりも。
「それを、パルスィ様に頼るなんて、珍しいなぁ~って」
「へぇ~」
普通に、自分の部下に手伝ってもらえばいいのに。
私と違って、部下だっているくせに。
「手伝ってくれるならありがたいわ」
「あたいでよければ手伝いますよ」
ーーー1時間後ーーー
「あぁぁ~~」
「なかなか大変ですね……」
部屋の柔らかいカーペットに転がって、ぐったりしてる。
あぁ~。
柔らかい……。
お燐に仕事を手伝ってもらっても、なかなか終わらない。
量、多すぎね。
さっきから、結構作業してるけど、全然減らないわね。
「やっほ~。 どう? パルスィ?」
「あんたも手伝いなさいよ」
「こいし様も手伝ってくださいよ~」
「えぇ~、お空に手伝ってもらえばいいじゃん」
他人に転嫁しないで、あんたも手伝えっての。
何、そんな楽してるのさ。
「なぁに?」
「おぉ、お空。 いいところに」
「なんですか? こいし様」
いやいや、お空には無理でしょう……。
だって、ねぇ……。
「パルスィとお燐が、仕事を手伝ってほしいんだって」
「いいですよ。 やるよ~」
まぁ、人数は多いほうがいいか。
少しは楽になるかな?
「んじゃ、頑張ってね~」
「ちょっと待て」
なんで帰ろうとしてるのよ。
手伝えって。
「えぇ~」
「あんたも手伝え」
「むぅ~」
むぅ~、じゃないから。
なんであんただけ楽してんのよ。
「働かざる者食うべからず、でしょ」
「うぅ~、分かったよ……」
さて、頑張りましょうか。
ーーーさらに1時間後ーーー
「お、終わった……」
「ふわぁぁ~~……」
「うにゅ……」
「つ~か~れ~たぁ~~」
みんなで雑談しながら、なんとか終わった。
はぁ……。
多すぎるって。
「助かったわ、お燐、お空」
「いえいえ」
「うにゅ」
「ねぇねぇ、私は?」
「えっ?」
「えっ?」
あんたは違うでしょうに。
手伝うというより、半分遊んでたじゃない。
それに、あんたはこの問題の元凶でしょうに。
「あんたは厄介事を持ち込んできた元凶じゃない」
「えぇ~~、酷いよ~」
全部事実じゃないの。
貢献度が低いのよ。
「パルスィ。 お仕事、どうですか?」
さとりのエプロン姿……。
かわいいかもしれない。
……。
仕事のしすぎかしら……。
「なんとか、終わったわよ」
「かわいい、なんて……」
「うっさい」
うるさいわね。
心の声に答えなくていいから。
「あら? みんなでやってくれたんですか?」
「えぇ」
「みんな、ありがとう」
「あまり、1人で抱えこまないでくださいね、さとり様」
「……」
ペットの忠告くらい聞きなさいよ。
飼い主が、ペットに心配されてどうするのよ。
「夕食が出来ましたから、食べましょう?」
「「はぁ~い」」
地霊殿のリビング。
みんなを席に着かせる。
さて……。
「では、いただきましょう」
「「いただきま~す!!」」
「召し上がれ」
みんなが、私の作った料理を、美味しいそうに食べてくれている。
美味しそうに私に料理を食べているのを見るのは嬉しいですね。
「おいし~」
「美味しいです、さとり様」
「ありがとう、お燐、お空」
(なかなかに美味いわね)
「ありがとう、パルスィ」
「心の声に答えなくていいから」
「パルスィは素直じゃないねぇ~」
「うるさい、だまれ」
「えぇ~。 パルスィが酷いこと言う~」
みんなでわいわいと食事をするのも楽しいものですね。
たまには、みんなで食べましょうか。
「みなさん。 今日は本当にありがとうございました」
「そんな、1人で溜め込まないで、いつも頼ってくださいよ」
「……」
お燐の気持ちはとても嬉しい。
けど、あなただっていつも忙しいでしょうに。
そんな中で手伝ってもらうなんて出来ない。
「まったく。 ペットがそう言ってるんだから、少しくらい甘えたら?」
「お燐だって、自分の仕事で忙しいでしょうに」
「そうですけど、さとり様の仕事よりは楽ですよ?」
なら、お燐の言葉に甘えてみましょうか?
たまには、手伝ってもらいましょう。
ーーー1時間後ーーー
「おいしかった~」
「美味しかったです」
「お粗末さま」
楽しかったですね。
皆さん、美味しそうに食べてくれましたし。
絶対、また食事会をしましょう。
「パルスィ、片付け、手伝ってください」
「はいはい」
この片付けが一番面倒なんですよね。
料理を作るのは楽しいのですが。
「ここでいい?」
「えぇ。 ありがとう」
……!
背後を見せた!!
そ~っと。
「おねぇ~ちゃん!!」
「えっ!? あっ、ちょ!?」
「ん?」
突然のこいしの突撃で身体がよろける。
そのまま、パルスィに身体を預ける形になる。
「……!?」
よくわからない出来事に、パルスィからさっと離れる。
いくらなんでも恥ずかしすぎる。
「さとりって、思ってたよりも大胆なのね」
「あっ!! いやっ!! そういうわけでは!!」
「まぁ、どうせそうだろうとは思ってたけど」
「だから、違いますって!!」
こいしに押されただけなんですって。
別に大胆なわけでは……。
むぅ~。
からかわれてる。
でも……。
「パルスィなら、別に……」
「えっ!? ちょ!?」
「隙あり!!」
ーーームニュ
「柔らか~」
ーーーバシッ
爽快な音をたて、パルスィの手刀が一撃入った。
痛い。
「揉むな!! 叩くわよ」
もう叩いてるじゃないですか。
でも。
確かに柔らかい。
「もう1回揉ませてください」
「嫌に決まってるでしょ!!」
そう言って、手刀を繰り出すパルスィ。
そして、もう1撃見舞われたのでした。
う~。
痛い。
「まったく。 ふざけるな!!」
「……初めてが、パルスィでも構わないのは、ふざけてませんよ?」
あ、思考が止まった。
なんか、ぐちゃぐちゃになってる。
しかも赤くなってる。
……かわいい。
止めも刺しちゃいましょうか?
「パルスィ、本当にありがとう」
私にとって、貴女は大切な友人。
いや……。
それ以上の、大切な人。
「これからも……。 よろしくお願いしますね」
そして、私は……。
貴女の……。
ーーーむふふふ。
良かったね、おねぇちゃん。
大切な人が出来て。
でも、まぁ。
2人でイチャイチャしちゃって~。
もうお腹いっぱいだよ。
あっ。
洗い物始めた。
もう終わりかぁ~。
でも、仕事も終わったし。
年末はみんなで楽しめるかな?
2人とも、楽しそう。
よかった、よかった。
今は、午後5時過ぎ。
未の刻。
冬至を過ぎたばかりの、寒い冬の日。
薄暗い部屋の中で、寒さに耐えながら、彼女はため息をついてる。
「今年も、リア充を爆発させたい時期が来たわね」
とか、物騒なことを言ってる。
その顔は、妬みで歪んでいるようにも見えるな~。
「あぁ、妬ましいわ!!」
たった1人しかいない部屋の中で、妬ましさを存分に込めて1人で喋ってる。
寂しいヒトだね~。
そういえば去年も、彼女は妬みを込めた呪詛を吐いてたな~。
「こんなにも街中にリア充が溢れ、キリスト教信者でもないくせにクリスマスを楽んで」
顔に悔しさが滲み始めてるよ。
「街中、カップルで腕組んでイチャイチャしてるなんて!!」
さっきから、誰もいないのに1人で騒いで、暴れてる。
机の上のコップが飛び跳ね、奇跡的にそのまま着地した。
「えぇ、えぇ。 私には程遠い話ですよ!!」
ーーーグスッ……。
あ~あ、泣いてる。
「べ、別に、悲しくなんか……。」
強がるね~。
半ベソかいてるくせに。
「うぅ……。 妬ましい……」
あ、また言った。
「今年こそ、本当に爆発させてやろうかしら?」
やったら、あのスキマ妖怪にこっ酷く叱られるだろうな~。
「はぁ……」
今日何度目かすらわからないため息をついてる。
暗いオーラを放ちつつ、同情してくれる仲間もいない。
そんななかで、1人で妬ましいと連呼しているのでした。
ーーー(ガサッ)
いや~、荒れてるねぇ~。
いくらクリスマスだからといって、そんなに荒れなくてもね~。
じゃじゃ~ん。
みんなの恋のキューピット、古明地こいしちゃんだよ~。
ーーーイチャイチャ
……イラッ。
なんか、むかつく風景が見えるなぁ~。
どうしよっかなぁ~。
……。
キュッとして~、どか~ん。
ーーーギャー。
あはは。
楽しい悲鳴が聞こえたなぁ~。
と、いうわけで、今年もクリスマスを楽しんじゃおっかな~。
「はぁ~、疲れる……」
なに、この仕事の量。
もう年末ですよね?
残りわずかになっててもいい時期ですよね……。
「おねぇちゃん、ただいま~」
「おかえりなさい、こいし」
「おかえりなさい、ってなんか丁寧に帰れって命令してるように感じるんだけど?」
突然、こいしが、よくわからないことを聞いてきました。
よくあることですが。
「そうですか?」
「そうだよ」
「でも、普通はこう言いますからね」
何故かは知らないのです。
ただ、そう言うのですから。
「ふぅ~ん」
一応、納得したみたいですね。
でも、まだ何か聞きたそうにしていますね。
「どうかしましたか?」
「おねぇちゃんは、明日のクリスマス、どうするのかぁ~、って」
こんな状態でクリスマスですか……。
仕事が山のように溜まっているのに……。
……こんなに溜めた憶えはないのですが。
「別に。 何もないですけど」
「クリスマスはなんのためにあるのさ!?」
「さぁ? リア充が爆発して、その他もろもろが絶望する日じゃないんですか?」
「……」
何故か、こいしが愕然としてる。
何故なんでしょうか?
「そんな日に、何をしろというのですか?」
「むぅ~。 おねぇちゃんもパルスィ病になってる」
「なんですか、それは?」
なんでしょうか、その変な病名?
私が、そんな変な病を罹ってるわけないじゃないですか。
「こういう時期になると、いつもそうやって「リア充爆発しろ!!」とか思ってるんじゃない?」
「そんなことは思ってませんよ?」
爆発させたければ、爆破しますし。
……。
……それも面白そうですね。
私がこんなに働いているのに、みなさんはイチャイチャと楽しんでるのですから。
別に、爆破してもいいですよね?
「もしかして、面白そうとか、思ってる?」
「えっ?」
「えっ?」
「……」
心を読まれた!?
そんなはずは……。
「顔に出てるよ、おねぇちゃん」
顔に出てる?
どういうことなのでしょうか?
出してるつもりは……。
「出してるつもりはなくても、出てるんだよ?」
行動が読まれているような……。
私より、相手の行動を読むのが上手いんじゃ……。
……私の立場が。
「そんなことより、折角なんだからクリスマスを楽しもうよ!!」
「こんなに仕事が残ってるのに、そんな楽しく過ごしている暇なんてありません」
これだけ仕事があるのでは、今年中に終わらせられるかも分かりませんし。
なにより、早く終わらせなくてはいけませんから。
「おねぇちゃん、仕事バカだよね」
仕事バカ、ですか。
仕方ないじゃないですか。
だって……。
「私は、地底の管理者ですから……」
「……」
ふくれっ面をしている。
申し訳ない感じはするが、仕方が無い。
仕事を来年に残すわけにはいかないですから……。
「そうだ!!」
「?」
いきなりどうしたのでしょう?
満面の笑みで、とても顔が輝いていますが。
「おねぇちゃん、またちょっと出掛けてくる!!」
「気をつけてくださいね」
「うん!!」
さっき帰ってきたばかりなのにまたですか。
我が妹ながら、忙しい子ですね。
「いってきま~す」
「いってらっしゃい」
ーーーバタバタ
こいしが、駆け足で出かけて行った。
そんな急いで行かなくてもいいんじゃないでしょうか?
……。
……あっ。
……夕食の材料がなかったような。
頼めばよかったでしょうか?
今の時間は午後3時。
夕食の食材がないのなら、買いに行かなくてはいけませんね。
机の上の書類を見渡す。
「……はぁ」
自然とこぼれるため息を残し、私は部屋を出て、買い物へ向かいました。
「……」
妬ましすぎて、むしろ清々しいわ。
私の前を歩いて行くカップル達。
……これだけ多いと、もう群れって表現出来そうね。
いつもと変わらず橋の上。
私だけが変わらない。
まるで、おいてけぼりのよう。
ーーームニッ
「ひゃっ!?」
えっ!?
何!?
「柔らか~」
後ろから聞き慣れた声がする。
「その度胸、妬ましいわね」
「別に減らないし、いいじゃん」
まるでおっさんね。
ただ、警察や裁判所みたいな便利な所なんてない。
私は、泣き寝入りするしかない。
……まぁ、相手はこいしだし。
別にそこまでしなくてもいいけど。
……何かしても意味ないし。
「おねぇちゃんに訴えてみたら?」
「……」
ふむ。
もっと厄介なことになりそうね……。
却下。
「それで? なんの用なの?」
「別に? 散歩に付き合ってもらおうかなぁ~、って思っただけ」
うわっ、面倒そう。
事実、古明地姉妹は面倒なことしか持ち込まないけど。
「……そんなに暇じゃないんだけど」
暇だけど、面倒そうだから逃げる。
ただですらテンション下がりっぱなしなのに。
面倒なことなんてやってられないわ。
「……そんなにイチャイチャしているカップルを見るのが楽しいの?」
「はぁ!? カップルなんて、見ても楽しいわけないじゃない!!」
なにがカップルよ。
この時期を楽しんじゃってさ。
クリスマスとか、なにそれ美味しいの?
あぁ、妬ましい!
妬ましすぎる!!
「ホンット、暇じゃないとか。 もう妬ましい限りだわ!!」
「つまり、暇なんだね♪」
……しまった。
あまりの妬ましさに、いらないことを口走ってしまった。
「あぁ、もう!! 暇だけど!! なに?!」
「そんなヤケクソにならなくても……」
「あんた達姉妹を相手にすると、ロクなことにならないじゃない」
「えぇ~。 そんなことないと思うけどなぁ~」
そんなことあるんだって。
今だって後ろからセクハラされたじゃない。
「はぁ……」
「ため息なんて吐くと、幸せが逃げるよ?」
嫉妬の妖怪に、幸せ、ねぇ……。
他人を妬む私に、幸せなんて、あるわけないじゃない。
「幸せなんて、最初から持ってないわよ」
「えぇ~。 そうかなぁ~?」
「そんなものよ。 嫉妬の妖怪なんて……」
そう。
幸せなんて、昔に置いてきた。
いや、幸せなんて、もう忘れてしまった。
どんなことを、幸せというのか。
あのときの、絶望で、すべてを失ったのだから。
「……散歩、行こ?」
「はいはい、わかったわよ」
こいしに連れられ、私は旧都の方へ歩き始めた。
「……」
何故なんでしょう。
とてもイライラするのですが。
このお祭りムード。
私がこんなにも忙しいのに、みんなして楽しんでいるなんて。
「……はぁ」
もう、ため息しか出てきませんね。
本当に妬ましい。
買い物を済ませて、さっさと帰りましょう。
「おねぇちゃ~ん!!」
こいし?
あれ?
パルスィまで。
「こんにちは、パルスィ」
「えぇ」
相変わらず、愛想がないですね。
私にくらい、もう少し愛想をよくしてくれてもいいじゃないですか。
じゃなくて、どうしてここにいるんでしょうか?
「どうしてここにいるんですか?」
「私が誘ったんだよ♪」
「こいしが、散歩しよ?って言うから、適当に付き合ってるだけよ」
何気に人付き合いがいいですね、パルスィ。
今度、私も誘ってみましょうか?
「それでね、パルスィの、柔らかいんだよ♪」
「柔らかい?」
何がでしょうか?
……。
ふむ、なるほど、そんなことが。
……羨ましいですね。
……。
……う~ん。
……!!
「あっ!?」
取り敢えず、パルスィの後ろの方を指してみた。
「……」
……あれ?
後ろを向かないですね。
どうしてでしょう?
「……バレバレよ」
……。
う~……。
こいしが羨ましいですね。
「そういえば、おねぇちゃん、仕事は?」
「夕食の材料が無いことに気付きまして、買いに来た、ん、です、よ?」
……!
そうだ!!
「パルスィ!!」
「嫌だ」
えっ!?
ちょっ!?
「いや、まだ何も言ってないじゃないですか!?」
「どうせ、面倒なことを押し付けるつもりでしょ?」
「うぐ……」
まずい。
このままでは逃げられてしまう。
次の手を……。
……!
これだ!!
「ねぇ、こいし?」
「なぁに?」
「折角だから、今日の夕食、パルスィを誘いませんか?」
ーーーニヤッ
「うんっ!! 誘おう、誘おうっ!!」
……気のせいでしょうか?
一瞬、こいしの顔が、何かを企んでいるかのような表情になった気が……。
でも、今は……。
「でも、仕事が忙しくて……」
「じゃあさ、じゃあさ。 パルスィが仕事を手伝えばいいんだよ」
「はぁ!? なんで私がさとりの手伝いなんかしなきゃいけないのよ!?」
「夕食は付けますから、どうか、手伝ってください」
必死に助けてほしい、という顔をする。
ほんと。
助けてくださいぃ~。
「ぐっ……」
「パルスィ、手伝ってあげてよ?」
(まわりが敵だらけなんだけど)
敵だなんて。
心外ですね。
ただ、手伝ってほしいだけなのですが。
「別に、敵のつもりはないのですが」
「自分の仕事くらい、自分でやりなさいよ」
「やっています。 けど、終わらないんです……」
これだけ忙しく働いているのに、終わらないんですよ?
手伝ってくれてもいいじゃないですか。
「パルスィ。 働かざる者食うべからずだよ♪」
「ぐっ……」
「駄目、ですか?」
精一杯、甘えてるような顔を作る。
いや、本当に手伝って欲しいんですよ?
「……わかったわよ」
よし!
落ちた!!
「ありがとう、パルスィ!!」
では、早く帰らなければ。
私の代わりに、たくさん仕事をしてもらいましょう。
「はぁぁ~~……」
なに?
この仕事の量。
机の上、書類の山。
あまりにも多すぎるでしょ?
驚きしかでてこないって。
ただ、ほとんどがつい最近に出されてるってどういうことよ?
いくらなんでも多すぎでしょうに。
こりゃ確かに、手伝いが必要ね。
もう手伝いたくないけど。
というより、手伝わないけど。
早く終わらせないと、家に帰れないんだろうなぁ~。
さっさと終わらせちゃいましょう。
ーーーコンコン
「さとり様~」
控えめに扉をノックする音。
それに、実際の部屋の主を呼ぶ声。
「入ってくれる?」
その声の主を敢えて呼び入れる。
「失礼します」
何故、なんの警戒もせず入ってくるかなぁ?
あんたの主と声違うでしょうに……。
「あれ? パルスィ様?」
「さとりに何か用だった?」
「いえ、特に重要な件は何も」
さて、何もないらしい。
ならば。
「お燐」
「はい?」
「……仕事を手伝ってください」
もう、ぶっちゃけ涙目な気がする。
猫の手も借りたいです。
「え、えぇ。 いいですけど」
やった。
この量、1人じゃ終わらないって。
「それ、さとり様の仕事ですか?」
「そうだけど」
「変ですね」
変?
この仕事量はおかしいわよね。
この年末に。
「この書類の多さはおかしいわよね」
「いえ。 毎年、年末はそんな感じなんですが、いつもは1人で処理するんですよ?」
えっ!?
毎年……。
無茶するわね、さとりも。
「それを、パルスィ様に頼るなんて、珍しいなぁ~って」
「へぇ~」
普通に、自分の部下に手伝ってもらえばいいのに。
私と違って、部下だっているくせに。
「手伝ってくれるならありがたいわ」
「あたいでよければ手伝いますよ」
ーーー1時間後ーーー
「あぁぁ~~」
「なかなか大変ですね……」
部屋の柔らかいカーペットに転がって、ぐったりしてる。
あぁ~。
柔らかい……。
お燐に仕事を手伝ってもらっても、なかなか終わらない。
量、多すぎね。
さっきから、結構作業してるけど、全然減らないわね。
「やっほ~。 どう? パルスィ?」
「あんたも手伝いなさいよ」
「こいし様も手伝ってくださいよ~」
「えぇ~、お空に手伝ってもらえばいいじゃん」
他人に転嫁しないで、あんたも手伝えっての。
何、そんな楽してるのさ。
「なぁに?」
「おぉ、お空。 いいところに」
「なんですか? こいし様」
いやいや、お空には無理でしょう……。
だって、ねぇ……。
「パルスィとお燐が、仕事を手伝ってほしいんだって」
「いいですよ。 やるよ~」
まぁ、人数は多いほうがいいか。
少しは楽になるかな?
「んじゃ、頑張ってね~」
「ちょっと待て」
なんで帰ろうとしてるのよ。
手伝えって。
「えぇ~」
「あんたも手伝え」
「むぅ~」
むぅ~、じゃないから。
なんであんただけ楽してんのよ。
「働かざる者食うべからず、でしょ」
「うぅ~、分かったよ……」
さて、頑張りましょうか。
ーーーさらに1時間後ーーー
「お、終わった……」
「ふわぁぁ~~……」
「うにゅ……」
「つ~か~れ~たぁ~~」
みんなで雑談しながら、なんとか終わった。
はぁ……。
多すぎるって。
「助かったわ、お燐、お空」
「いえいえ」
「うにゅ」
「ねぇねぇ、私は?」
「えっ?」
「えっ?」
あんたは違うでしょうに。
手伝うというより、半分遊んでたじゃない。
それに、あんたはこの問題の元凶でしょうに。
「あんたは厄介事を持ち込んできた元凶じゃない」
「えぇ~~、酷いよ~」
全部事実じゃないの。
貢献度が低いのよ。
「パルスィ。 お仕事、どうですか?」
さとりのエプロン姿……。
かわいいかもしれない。
……。
仕事のしすぎかしら……。
「なんとか、終わったわよ」
「かわいい、なんて……」
「うっさい」
うるさいわね。
心の声に答えなくていいから。
「あら? みんなでやってくれたんですか?」
「えぇ」
「みんな、ありがとう」
「あまり、1人で抱えこまないでくださいね、さとり様」
「……」
ペットの忠告くらい聞きなさいよ。
飼い主が、ペットに心配されてどうするのよ。
「夕食が出来ましたから、食べましょう?」
「「はぁ~い」」
地霊殿のリビング。
みんなを席に着かせる。
さて……。
「では、いただきましょう」
「「いただきま~す!!」」
「召し上がれ」
みんなが、私の作った料理を、美味しいそうに食べてくれている。
美味しそうに私に料理を食べているのを見るのは嬉しいですね。
「おいし~」
「美味しいです、さとり様」
「ありがとう、お燐、お空」
(なかなかに美味いわね)
「ありがとう、パルスィ」
「心の声に答えなくていいから」
「パルスィは素直じゃないねぇ~」
「うるさい、だまれ」
「えぇ~。 パルスィが酷いこと言う~」
みんなでわいわいと食事をするのも楽しいものですね。
たまには、みんなで食べましょうか。
「みなさん。 今日は本当にありがとうございました」
「そんな、1人で溜め込まないで、いつも頼ってくださいよ」
「……」
お燐の気持ちはとても嬉しい。
けど、あなただっていつも忙しいでしょうに。
そんな中で手伝ってもらうなんて出来ない。
「まったく。 ペットがそう言ってるんだから、少しくらい甘えたら?」
「お燐だって、自分の仕事で忙しいでしょうに」
「そうですけど、さとり様の仕事よりは楽ですよ?」
なら、お燐の言葉に甘えてみましょうか?
たまには、手伝ってもらいましょう。
ーーー1時間後ーーー
「おいしかった~」
「美味しかったです」
「お粗末さま」
楽しかったですね。
皆さん、美味しそうに食べてくれましたし。
絶対、また食事会をしましょう。
「パルスィ、片付け、手伝ってください」
「はいはい」
この片付けが一番面倒なんですよね。
料理を作るのは楽しいのですが。
「ここでいい?」
「えぇ。 ありがとう」
……!
背後を見せた!!
そ~っと。
「おねぇ~ちゃん!!」
「えっ!? あっ、ちょ!?」
「ん?」
突然のこいしの突撃で身体がよろける。
そのまま、パルスィに身体を預ける形になる。
「……!?」
よくわからない出来事に、パルスィからさっと離れる。
いくらなんでも恥ずかしすぎる。
「さとりって、思ってたよりも大胆なのね」
「あっ!! いやっ!! そういうわけでは!!」
「まぁ、どうせそうだろうとは思ってたけど」
「だから、違いますって!!」
こいしに押されただけなんですって。
別に大胆なわけでは……。
むぅ~。
からかわれてる。
でも……。
「パルスィなら、別に……」
「えっ!? ちょ!?」
「隙あり!!」
ーーームニュ
「柔らか~」
ーーーバシッ
爽快な音をたて、パルスィの手刀が一撃入った。
痛い。
「揉むな!! 叩くわよ」
もう叩いてるじゃないですか。
でも。
確かに柔らかい。
「もう1回揉ませてください」
「嫌に決まってるでしょ!!」
そう言って、手刀を繰り出すパルスィ。
そして、もう1撃見舞われたのでした。
う~。
痛い。
「まったく。 ふざけるな!!」
「……初めてが、パルスィでも構わないのは、ふざけてませんよ?」
あ、思考が止まった。
なんか、ぐちゃぐちゃになってる。
しかも赤くなってる。
……かわいい。
止めも刺しちゃいましょうか?
「パルスィ、本当にありがとう」
私にとって、貴女は大切な友人。
いや……。
それ以上の、大切な人。
「これからも……。 よろしくお願いしますね」
そして、私は……。
貴女の……。
ーーーむふふふ。
良かったね、おねぇちゃん。
大切な人が出来て。
でも、まぁ。
2人でイチャイチャしちゃって~。
もうお腹いっぱいだよ。
あっ。
洗い物始めた。
もう終わりかぁ~。
でも、仕事も終わったし。
年末はみんなで楽しめるかな?
2人とも、楽しそう。
よかった、よかった。
なんか読みにくい?気がしました
しかしさとり一家+パルスィというのは萌える…
地霊殿一家+パルスィと言う光景もなかなか良いですね
心温まりますな
場所とかの説明なかったのも逆に良いかもしれんね
>>1さん
読み易くなるよう、努力していきます。
地霊殿組は仲が良さそうに感じます。
>>2さん
妬ましい、妬ましいっ!!
>>5さん
ボクは咲夜さんと過ごしたかったです。
>>雨宮 幽さん
クリスマスとか、さとパルが急増しますよね。
もうさとりとパルスィは家族でいいです。
>>12さん
こいしちゃんは天使です。
心が温まってよかったです。
>>13さん
へい…
>>15さん
空気だけでも好きになって頂けてよかったです。
みなさん、本当にありがとうございます。