「咲夜、私は今とても感激しているわ」
「いきなりなんでしょうかお嬢様」
いつもの日課でお嬢様の部屋の掃除に行くと、突然言われた一言。
よく見ると、なにか飲んでいるみたいですわね。
しかしお嬢様がそんないきなり感激したなんて、いったい何を飲んだのかしら?
そんなにおいしいものは今買い込んではいなかったはず……
わかった、あの茶色とも黒とも言えないような飲み物は、台所にたくさん保存してあったあれね。
つい先日、大量のコーラが幻想入りしてくるという事件が起こって。香霖堂の方で珍しく気合いを入れて販売することになった。
今思えば人里出張サービスなんて槍でも降るのかと思いますわね、今のお嬢様は本当にグンニグルでも降らせそうな雰囲気ですけど。
とにかく、それくらい幻想郷ではコーラが大流行中、お嬢様にもついこないだ買ってくるように頼まれて、台所に何本か買ってきてありますけど……
「お嬢様、それはコーラでしょうか?」
「ええ、こんなにおいしい飲み物が何で幻想入りしてきたのかわからないわね、外の世界の人間はなんて贅沢なのかしら、コーラが忘れ去られるなんて。私は最低でも一生忘れられそうにないわ」
ああ、お嬢様がコーラの魅力で少しばかり壊れてきてしまった、確かに私も飲んでみて、確かにおいしいとは思いましたけども……
けれどもこの部屋に漂っている匂いはどこかで嗅いだ事のある匂い、コーラの甘いにおいとは少し違う気がするような……まあ気のせいでしょう。
ともかくお嬢様は大変コーラがお気に召したようで……これは近々私が買い出しに連れて行かれるのが目に見えてるわね、そうなったら美鈴も一緒に連れて行って百本単位で買ってこようかしら。
「咲夜、わたしはコーラが気に行ったわ、しばらくは紅茶の代わりにコーラを出しなさい」
「わかりました、ではコーラを大量に買い込んでおきますね」
「そうして頂戴」
午後の予定に買いだしも入れなきゃならないわね、これで今日の仕事の時間は合計三十時間を超えたわ。今度ストライキしてやろうかしら。
まあそんなことしたら紅魔館が大変なことになるし、門番も泣きついてくるからやめておきましょうか。
……ああ、やっぱりどこかで嗅いだ事のある匂いがするわ、コーラとは違うもっと身近な感じがするわね、本当に何のにおいかしら。
そんなことしているうちに、お嬢様は三本目を空けようとしている。そんなに飲んでお腹を壊されたら大変ですし、そろそろ止めなければなりませんね。
しかし、最初は違和感があったペットボトルもすっかりなじんでいるというか……
最初は変な感じしかしなかったペットボトルも、今では調味料なんかも全部あれ頼みで、あれ? 調味料……何か引っかかるような気がするわね。まあ気のせいでしょう。ともかくあの密封性の虜になりましたわ。
……いけないいけない、思考が明後日に行ってしまって。とにかくお嬢様にはそれで最後にしていただけないと。
「お嬢様、今日はそれくらいにしておいたらどうでしょう」
「そう、まあたしかにあんまりがぶ飲みするようなものじゃないわね、じゃあ最後の一口と行こうかしら」
そしてお嬢様が最後の一口を飲もうとした瞬間、私の中ですべてがつながった。
この匂い、そしてあの茶色と黒の色、けれどもまだ証拠が足りない。
「お嬢様、私も一口よろしいでしょうか」
「いいけど、ほら咲夜も飲みましょう」
そうやって私もペットボトルを渡された。ふたを開けて一口飲んでみればすべてがつながったわ。
つまり、さっきからの違和感は……以外に身近な物も、いざとなれば気がつかないものなのね。
事実が分かった瞬間体の底から笑いがこみあげてきたけれども、そこは従者としてのプライドで我慢する。
そしてわたしはお嬢様にゆっくりと真実を告げた――――――――
「お嬢様、それは しょうゆ です」
お嬢様
クレヨンし○ちゃんのとある映画のワンシーン思い出したw
というか麦茶であってほしかった! 醤油もたしかに良いんだけど!!
…吸血鬼だから大丈夫か
よほど紅魔館の味付けが薄いんだと思いました