Coolier - 新生・東方創想話

東方X戦記19

2011/12/20 10:59:55
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東方X戦記



第19話「移動基地」
「ひゃ~・・・・・・まさか、敵の基地が空飛べるなんて初耳だぜ・・・・・・。」
紫のクジによってチーム分けされた魔理沙、アリス、神綺、夢子、夢美、ちゆり、小兎姫・・・・・・それに夢美が開発して今まで博麗神社の物置に眠っていたメイド型ロボ“る~こと”と聖杯を探しているメイド型ロボVIVITも参加する事となったが・・・・・・!?
「空飛んでいますよ、ルーコトさん!異世界の技術力もここまで発展していたのですね!」
<確かに凄いですね・・・・・・私が造られた当時は磁力で浮く電車が開発される案が出始めた時でしたから。>
「とは言え、ここの持ち主はテロリストですよ?」
<正直、ここを飛ばす技術を悪用するなんて、少し残念です・・・・・・。>
とまぁ、る~こととVIVITは同じメイドロボなのか意気投合してすっかり仲良しさん状態だった。
「まぁ、イチャイチャタイムはそこまでにして早速、勇者とやらに会いに行きますか。」
何とまぁ、魔理沙らしい一言である。一見、考えてない様に見えるが・・・・・・・その本心は「廻り道とか細かい事はせずに真正面に行く。」
何よりも曲がった事が嫌いで借りる(盗む?)時も堂々としているのが彼女の性格なのだ。それをアリスが呆れる。
「あのねぇ、いくらなんでも正面から突っ込んだら敵の罠にかかるのがオチじゃないの?」
「そうだけどよ、誰か『私に良い考えがある』って言ってくれないのか?」
「何よ、超ロボット生命体の総司令官みたいな台詞・・・・・・。」
「アリスちゃん、今度この戦いが終わったら私と一緒にそれの実写版3作目を見に行かない?」
「はいはい、母様も勝手に死亡フラグ立てない!敵の基地だから気を引き締めて!」
「アリス様、落ち着いて・・・・・・。」
「はぁ、全く・・・・・・。」
とまぁ、幻想郷ならではのフリーダムさに纏め役のアリスも頭が痛い。こんなんで大丈夫なのか?
「大丈夫だ、問題無いぜ!」
「・・・・・・刺すわよ?」
「あら~アリスが何処でもいるヤンデレに~・・・っと冗談はさておき。さてと、基地の持ち主に殴りこみに行きますか。」
そう言って、魔理沙を先頭に一同は動きだす・・・・・・その時!
<あの、魔理沙様よろしいでしょうか?>
「ん?どした?」
<先程反応しましたが、今から0.67秒前に、魔理沙様の右足が敵の赤外線センサーらしきものに引っかかりました。>
魔理沙は自分の足元を見て、右足を一歩下げて苦笑気味にる~ことに向き直る。
「・・・・・・今度言う時は早く言ってね♪」
それと同時にけたたましい音と共に大量の機械人形が銃器を持って魔理沙達に襲い掛かる。
「「「出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
「あ、所で理香子という科学者は?」
「そう言えば、慧音と言うワーハクタクと一緒に人里で待機って言ってたわね。」
「ご主人、そんなこと言っている場合じゃないでしょ~!」



「・・・・・・“霊烏路空”。地霊殿の妖怪、さとりのペットであり、体内にはヤタガラスという神が宿っている。性格は何も考えていないに等しいが、その弾幕の威力は我々の世界で言うと核兵器に等しく、勇者3号・ザリクを破ったので警戒が必要だ。」
一方、魔理沙達が機械人形と戦っている中で数多くのシルエット達がお空のスライドを注目している。
この基地の責任者、“軍事隊長”が自分の配下の者達に幻想郷の者達の説明をしていた。特に勇者達を破った者を中心に。
次々とスライドを変えていく軍事隊長。そこには・・・・・・
「“小野塚小町”。勇者7号・美優を打ち負かした死神だ。結構、男勝りとも言われるが、泣き声が特徴的であると言われている。特に船頭をサボっているが、彼女は死神であるが故に鎌の扱いに長け、距離を操る能力を持っている。」
「次に、“星熊勇儀”。空と同様、地霊殿に住む鬼だ。酒と喧嘩が好きで、鬼特有の怪力を誇っている。細かい事は気にしない性質であるが、幼い頃から弾劾された悲しい過去がある様だ。勇者4号・スィガを負かしたので彼女も警戒の恐れがある。」
「“鈴仙・優華院”勇者6号・レグリンに勝った月出身の兎だ。常に貧乏くじを引く特質を持っており、必要最低限には戦う事を嫌っている。何より注意すべき点は赤い眼でその狂気の眼に見つめられた者は意識が混乱するとも言われ、射撃の達人でもある。」
「“比居名天子”。位の高い天人、総領の娘の天人。暇潰しに自身を起こした者であり、天人は頑丈故に性格と合わさってマゾの噂が絶えない。緋色の剣が彼女の絶対的な威力を誇る武器であり、勇者5号・天玖もそれに敗れたとも言われる。」
「“魂魄妖夢”。勇者8号・四由美との戦いに勝った白玉楼の庭師で人と霊のハーフだ。主である西行寺幽々子に振り回される位の性格で真面目故に苦労しやすい所が多い。だが、剣の腕前は発展途上ながらも精進しており、これが我々の障害になるかもしれない。」
「“東風谷早苗”。我々の世界から幻想郷へ引っ越した現人神と言われる巫女である。信仰の為に考えているものの、最近は常識に囚われず、先輩格である博麗霊夢を尊敬している。奇跡の能力を持っており、勇者2号・神影が負けたのはこれが原因かもしれん。」
「最後に“十六夜咲夜”。勇者1号・S2を打ち負かした紅魔館のメイド長。過去等については住人の中でも謎に包まれており、時を止める厄介な能力を持っている。また、R島の件以後、吸血鬼の力を宿した“紅魔形態”という新能力も判明した。」
次々と幻想郷の住人のスライドを切り替え終え、軍事隊長はそれを見ていた一同を見る。
「以上が、幻想郷の住人・・・・・・取り分け、勇者を打ち破った者の詳細だ。現在の所、それとは別行動の者達がこの移動基地を侵入したとの報告があった。政府軍とは違い、量産型T‐Jではせめて時間稼ぎでしかない。我々はこれに対し全力で撃破する。何か異存は?」
そう言って、一同を見渡す軍事隊長。その一団の中から手が上がる。
「隊長、一ついいですか?敵の中には博麗霊夢と同じ実力を持つ“霧雨魔理沙”がいると聞きますが・・・・・・。」
「霧雨魔理沙か・・・・・・気にするな。奴とて必死だ。しかしその実力等、たかが知れている。」
「しかし、霧雨魔理沙は博麗霊夢と共に異変を解決し、その異変解決は十六夜咲夜より多いと言われますが・・・・・・。」
「・・・・・・霧雨魔理沙の件は後回しにしよう・・・・・・これより、行動を開始する。」
遂に動きだした軍事隊長。勇者と並ぶ実力を誇ると言われるその者の能力は一体・・・・・・?



「全く、敵も必死だな、こりゃ・・・・・・。」
弾幕を張りながらも量産型T-Jと激しい銃撃戦を繰り広げる中で魔理沙がぼやいた。敵も幻想郷のとは違い、銃器を主に武器としているので遠距離を得意としているのだ。建物の陰に隠れながらもこちらも弾幕で応戦する。
「まぁ、突っ込む手間が省けたからな・・・・・・各個、撃破!憎き機械人形を油祭りに上げろ!」
「何か悪役っぽい台詞よ、それ・・・・・・てか、油祭り?」
「人間に流れているのは血だから“血祭り”。機械人形は油で動いているから“油祭り”。」
「・・・・・・言っとくが、量産型T‐Jは特殊オイル、JL液を使用しているから“JL液祭り”だな・・・・・・。」
「そんな硬い事・・・・・・今のツッコミ誰よ?」
「・・・・・・っ!?魔理沙、あれ!」
アリスが指さす方向に見るとそこには謎の人影が!
何とその正体は迷彩服に身を包み、多数の銃器を所持している少女達だった。その先頭に立っている紫髪の女性の顔が・・・・・・
「っ!?ま、魔理沙ソックリ・・・・・・!?」
「マジかよ・・・・・・世の中には自分と同じ顔の人が3人いるって聞いたけど、まさにその通りだぜ・・・・・・!?」
「・・・・・・お前が霧雨魔理沙か・・・・・・私と同じだとは正直、驚いたな・・・・・・。」
「あんた・・・・・・何者なんだ・・・・・・。」
魔理沙の問いに対し、魔理沙と同じ顔の女性は銃を構えてこう答える。
「・・・・・・これから死に行く者に答えたくないが、仕方がない・・・・・・我等は北方勇者帝国の特殊軍事部隊・・・その名も武零無親衛隊!言わば、外の世界の者達で構成された、サイボーグ兵士軍団だ・・・・・・まぁ、私は少し違うがな・・・・・・。」
「サイボーグ・・・・・・!?」
<サイボーグと言うのは、体の一部を機械が組み込まれた者達の事です。>
「北方勇者帝国の幹部が勇者だけだと思ったら大間違いだ・・・・・・撃てぇ!」
謎の女性の掛け声と共に一糸の乱れも無く、多数のサイボーグ少女達が魔理沙達に多数の銃弾を浴びせる。慌てて避ける一同。
「くそぉ・・・・・・まさか、勇者と同じ実力を持っているっぽい外の世界の奴等が相手とは・・・・・・!?」
今まさに、魔理沙達と謎のサイボーグ軍団の戦いが切って落とされた。



一方、霊夢とハクレイでは、いつもの様に弾幕による修行を続けるが、最初の頃よりも変化が見られる。
最初は全然当たらなかった弾幕がギリギリながら当たりそうだったり、ハクレイの弾幕も何とか避けられる事に。
「(落ち着いて、みだらに焦らず・・・・・・敵を倒す為でなく・・・・・・常に誰かの為、魔理沙の為に戦う事を意識する!)」
そう考えながらも霊夢は次々と敵の攻撃を避けつつ、弾幕を張る。その表情には常に落ち着いている感じだった。
「やるね、霊夢・・・・・・そろそろ第2段階を教えようかな・・・・・・。」
ハクレイの言葉が言い終わらない次の瞬間、彼女の左肩を霊夢の弾幕が掠め取る。そして驚くハクレイ。
「(・・・・・・驚いた・・・・・・霊夢の心境の変化がこれまでなんて・・・・・・もしかしたら、もの凄い奥儀が一気に取得できるかも!?)」
「・・・・・・あ、当たった・・・・・・いえ、掠っただけで喜ぶなんて馬鹿みたいだから止めとくわ・・・・・・。」
「・・・・・・ま、まぁ・・・・・・霊夢も変わった・・・・・・何か昔に戻った感じだね・・・・・・。」
「そりゃどうも・・・・・・次はピチュらせるわよ?」
「本気で来なさいよ。でないと、修行の意味はないからね・・・・・・。」
こんな調子でまだまだ修行中である。
しかし、決戦の段階に至る事はあと少しだと言えるかもしれない・・・・・・



魔理沙達と武霊無親衛隊の戦いは苛烈を極めた死闘となっていた。高威力の弾幕を誇る魔理沙や魔界神である神綺がいるなど、こちらはつわもの揃いであるが、どうやらサイボーグでの人体改造の影響か親衛隊の方も反射神経や運動能力等が向上さてており、なかなか被弾してくれない。時には連携して互いをサポートしながらだと一筋縄ではいかない様子だ。
「数は100ちょうど・・・・・・弾幕のエキスパートを押しているなんて流石ね・・・・・・。」
「ご主人、どうしよう~!?」
「慌てないの。この状況を打開するには・・・・・・。」
「・・・・・・許せねぇ・・・・・・!」
「?魔理沙・・・・・・?」
その声にアリスが振り向くと、魔理沙が震えていた。恐怖ではない、怒りで震えているのだ。
「あんな可愛い少女達を無理やりに改造させるなんて・・・・・・キリュウの野郎、絶対に許さないぜっ!」
「ちょ、ちょっと魔理沙!?」
アリスの制止の声を聞かず、飛び出して突っ込む魔理沙。彼女は幻想郷においては射命丸文を除いて最速を誇っているのだ。
「(何と言う高速!?それにあれは・・・・・・カミカゼか!?)各員、手榴弾を!」
謎の女性の命令により、サイボーグ少女達は手に手榴弾をセットして魔理沙に向かって投げる。投げられた手榴弾は暫くして爆発、だがその程度の爆発では魔理沙が怯む事は無い。一気にサイボーグ少女達の頭上を飛び越え、謎の女性に向かってスペルを発動する。
「っ!?」
「喰らえ!『恋符:マスタースパーク』!!」
幻想郷の住人では1、2を争う高威力を持つマスタースパークを謎の女性に向かって放つ。だが、謎の女性が両手を構えると何と光の楯らしきものが現れ、マスタースパークを何とか凌いでいるので流石の魔理沙もびっくり。そして魔理沙の周りにはサイボーグ少女達が詰め寄っている。危ない!誰もがこう思った瞬間、「・・・・・・良い案を思いついたぜ・・・・・・。」と不敵に笑う魔理沙。
「新必殺!ローリング・スパーク!!!」
何と魔理沙はマスタースパークを放ったまま回転し始めたのだ!その高威力のスペルは周りのサイボーグ少女達を吹っ飛ばし、グロッキー状態にするのには十分だった。ちなみにさっきのローリング・スパークはただ単に思いついただけであったが。
「なっ・・・・・・(全滅!?我等のサイボーグ技術を駆使して構成された親衛隊が1分も経たずに全滅だと!?)」
「どうだ!これで一気に形勢逆転一発だぜ!」
ガッツポーズをして勝利宣言をする魔理沙。全く、その大胆不敵な性格は脱帽的である。
「くっ・・・・・・!?」
謎の女性が後退した次の瞬間、突如として魔理沙の頭上から多数の弾丸が!慌ててかわす魔理沙。
「な、何だ!?新手か!?」
「いや、今の攻撃は・・・・・・まさか!?」
ハッと謎の女性が振り向くと、そこには重装甲的な迷彩服に身を包み、黒い長髪が目立つ女性が立っていた。
「軍事隊長・・・・・・!?」
「下がっていろ、“ハルサメ”副隊長・・・・・・どうやらお前の言う通り、霧雨魔理沙は他の住人とは一味違う様だな・・・・・・。」
「ハッ・・・・・・」
“軍事隊長”と呼ばれる女性が命令すると、謎の女性・・・ハルサメは片手で敬礼し、下がる。
「(ハルサメって『マ○ニ~』みたいな名前だな・・・・・・)おっと、お前がこの移動要塞とやらの黒幕か!?」
「そうだ・・・・・・北方勇者帝国の特殊軍事部隊こと武零無親衛隊の軍事隊長・・・・・・名は“オメガ”だ・・・。」
そう言って、軍事隊長オメガは戦闘の態勢を取る。だが、武器らしきものがないので少し警戒する魔理沙。
「?(何だ、こいつ・・・・・・?武器らしきものを持っていないが・・・・・・一体、何をするんだ?)」
考える魔理沙に対し、オメガが右手を上に挙げると突如として銀色の銃が現れ、それを取って弾丸を発した!
どうやらハルサメやサイボーグ少女、機械人形とはスペックが上で超高速での連射性能が高いのが特徴らしい。
「こ、こいつは一体・・・・・・ん?」
慌てて物影に隠れる魔理沙だったが、どうやら弾切れなのか銀色の銃器が大人しくなった。それを見て突撃しようとする魔理沙だが、オメガが銃を捨て、片手を挙げるとまたもや銃が出、連射を再開するオメガ。
「(どうなってるんだ!?あれじゃあまるで紫のスキマみたいなものじゃないか!?)」
「どうした・・・・・・幻想郷の住人というのはその程度か?8人の勇者を破った者はマグレで勝ったのか?」
「くっ・・・・・・んなろぉ!」
オメガの挑発にすっかり頭に血が上った魔理沙は一気に飛び出し、オメガの前方に弾幕を張りまくる。
しかし、オメガの方もたいしたもので、人並み外れた瞬発力で魔理沙の弾幕を次々とかわす。
「(なっ・・・・・・なんだ、あの動きは・・・・・・あいつもサイボーグなのか・・・・・・!?)」
「・・・・・・やはり、キリュウだけに杞憂と言う訳か・・・・・・私の運動能力では幻想郷の住人でも私の敵ではないと言う事だ・・・・・・。」
「過信は自滅を招くだけだぜ!」
魔理沙がそう言うや否や、スペルをセットする。こうなったら、ありったけのマスタースパークを奴にぶつけるのみ!
「む・・・・・・あれがスペルカードという物か・・・・・・?」
魔理沙がスペルの体勢を取るとオメガもそれを見て動きを止める。
「こいつでトドメだ!『恋符:マスタースパーク』!」
魔理沙の前方から発せられた真っ直ぐなレーザーがオメガに襲い掛かる!しかし、オメガはマスタースパークを少し直視した後、腰のポッケから何かを取り出す。取り出されたそれは四角く、小さい形の・・・・・・そうそれはまるで・・・・・・。
「「「!!!???」」」
「・・・・・・な、何で外の世界の人間が・・・・・・スペルカードを!?」
絶句する一同の中、やっとの思いでアリスが口を開く。そう、オメガの手に持っているのは紛れもなく、スペルカードだった。
幻想郷の弾幕ごっこで重宝されているそれが何故、彼女の手に・・・・・・?
その問いに答えるかのように、オメガがスペルカードらしきものを腰のバックルに入れて、上をスライドさせると・・・・・・
『ランサー・オン』
「???」
突如、バックルから電子音が鳴り響き、魔理沙も首を傾げる。
だが、オメガが片手を振うと片手から光が生じ、何とその光が圧倒的な破壊力を誇るマスタースパークを分断したのだ!
「っ!!??」
それを見て、驚愕した魔理沙だったが、その光の“正体”を見極め、回避する。しかし間に合わなかったのか左肩が光に当たり、激痛が走る。そう言う事か・・・・・・。何とか回避できた魔理沙は光の正体を確信した。
「さっきの“ランサー”ってのが、そのカードの力と言う訳か・・・・・・!?」
痛む左腕を抑えながら魔理沙が呻く。そしてオメガの右腕からは槍状の光が伸びていた。
「・・・・・・あまり自慢したくないが、教えてやろう・・・・・・こいつは人工スペル読み取り機『スペルラウザー』・・・・・・お前達、幻想郷の住人達のスペルカードを我々の技術で複製、強化した“人工スペルカード”を読み取る装置だ。」
そう言って戦闘態勢を構え続けるオメガに対して、魔理沙は焦っていた。まさか、外の世界の人間達が自分達の目的の為にその技術力で幻想郷の特徴でもあるスペルカードを複製したなんて・・・・・・。
「魔理沙っ!・・・・・・っ!?」
魔理沙を助けようとするアリス達であったが、その前には魔理沙と同じ顔をしたハルサメ、やっとグロッキー状態から目覚めたサイボーグ少女達が立ちはだかっていたのでなかなか動けずに行けないのだ。
「・・・・・・軍事隊長、この者達は我々にお任せを・・・・・・!」
「頼んだぞ、ハルサメ・・・・・・霧雨魔理沙は・・・・・・私が殺る・・・・・・!」
その殺意ある眼差しで睨まれるも、魔理沙は気丈に振舞って何とか打開策を見出そうと考える。
「(どうすればいい・・・・・・相手は人工のスペルを持っている・・・・・・次の中での行動は・・・・・・?)」
1:幻想郷一、可憐な魔理沙はこの状況を打開する最高の方法を思いつく。
2:アリスら仲間達の援護を受けて何とか倒す。
3:相手を舐めたばかりにやられる。嗚呼、現実は非常である。
「・・・・・・・・・・・・どこかで見た事のある様な展開だが・・・・・・・・・?」



おとうさん、待ってよ・・・・・・
見て見て、おとうさん!綺麗な花でしょ~?お父さんへのお土産だよ♪
おとうさん、こんなにプレゼント貰ったよ。嬉しいな・・・・・・。
おとうさん・・・・・・今まで、ありがとう・・・・・・

おとうさん、私、良い子にしているよ?私、悪い事はしてないよ?
痛いよ・・・・・・おとうさん、もう止めてよ・・・・・・
おとうさん、どうしちゃったの・・・・・・何だか怖いよ・・・・・・。
『誠に残念ですが・・・・・・貴方を調べ終わったのでもう用済みですよ。さよならです・・・・・・。』
用済みって何・・・・・・私、悪い事してないのに置いて行っちゃうの・・・・・・!?
待って!行かないでよ!おとうさ・・・・・・!!

「っ!!・・・・・・夢か・・・・・・!?」
自室のベッドから半身を素早く起こして彼女・・・キリュウは目覚める。全身に冷や汗が出ていて少し気持ち悪い。
「・・・・・・そうじゃった・・・・・・サイゼリアが帰って来た時、わしは・・・・・・。」
そう、全ては自分の娘並に大切に育てたS2(本名サイゼリア)と神影(本名薫)が負けて帰って報告を聞いてショックのあまりにまたも奇声を上げて倒れたっけ・・・・・・?その後は何故か再びナース服姿のザリクと四由美に介抱されつつ、今に至る。
「嫌な夢じゃった・・・・・・本当に嫌な思い出じゃった・・・・・・!」
額の汗を拭おうとした瞬間、目頭が熱くなり、頬を冷たい水らしきものが流れていた。
「っ!?」
突然の事態にキリュウ自身も驚いていた。自分が泣いている事に。
「・・・・・・は、はは・・・・・・泣けるとは・・・・・・こんなわしでも泣けるとは・・・・・・。」
拭っても拭っても目からは溢れもなく涙が流れ落ちる。耐え切れずに顔を枕に押し付けるキリュウ。
「何故じゃ・・・・・・何故わしを捨てたんじゃ、Z・・・・・・何故わしを酷い実験のモルモットにしたのじゃ・・・・・・そなたはわしの事が分かっとるかもしれんが・・・・・・わしにはそなたが分からぬ・・・・・・何故じゃあ、Z・・・・・・何故、最後まで教えぬまま死んだのじゃあ・・・・・・!」
嗚咽を漏らしながら、キリュウは泣いた。過去に父親として、親として・・・そして恋人として愛していた者の裏切りによる憎しみ、怒り、そして悲しみと絶望・・・・・・。彼女はその思いだけで今まで生きていた。だがそれは絶えまない虚無の出来事だった。
そんな中、ドアからノックの声がしてきた。慌てて目元の涙を拭って「何じゃ?」と高圧的に尋ねる。
「ふぅむ・・・・・・まだ寝ていたのか・・・・・・。」
「な、なんじゃ、そなたか・・・・・・。」
ドアから現れた人物・・・・・・闇の巫女、博麗霊牙にキリュウはヤレヤレと溜息をつく。
「いつまでそんな所で寝ているのだ?貴様の部下がやられた位で寝込むとは・・・・・・。」
「ぬしには分からぬじゃろう・・・・・・サイゼリアと薫はわしの自身作じゃ。そんな彼女等が幻想郷の者共にやられたのじゃぞ?」
「・・・・・・ふぅむ、使えぬなら新たなクローンを作れば良いのだろう・・・・・・たった1年で出来上がるからな・・・・・・。」
「・・・・・・あやつらはわしの娘みたいな者達じゃ・・・・・・クローンとは言え、モルモットみたいな事は・・・・・・!」
過去に捨てられた事が再び思い出されそうなので慌ててキリュウは頭を振って振り払おうとした。
「・・・・・・成程な・・・・・・いいだろう・・・・・・所詮、奴等は我と冥界四天王にやられる運命だからな。」
「それはそうと、軍事隊長からまったくの連絡が無いのじゃが・・・・・・大丈夫じゃろうかの・・・・・・?」
「そう不安がるな。奴は幻想郷の者如きにやられはしない・・・・・・奴の心は無に等しいからな・・・・・・。」



「・・・・・・これはどう言う事かしら・・・・・・?」
「さ、さぁ・・・・・・?」
勇者を何とか倒し、幻想郷に帰って来た咲夜と早苗の2チームは現在の光景に硬直していた。
何せ、お空や小町、勇儀、鈴仙、天子に妖夢達が荒い息を吐きながら今にも倒れそうなのだ。
「まさか、勇者との戦いの影響じゃ・・・・・・?」
「いえ、それは違うわね。」
突然の声に振り向くと、そこにはヤレヤレという表情の紫がいた。只、いつもの少女風の衣装ではなく、ジャージだが。
「紫さん!?どうしたのですか、そのジャージ?」
「これ?だって特訓の鬼コーチと言えば、ジャージでしょう?と、そんな事は置いといて・・・・・・残りは魔理沙ね・・・・・・。」
「妖夢達はどうしたの?戦闘によるダメージではなければ、一体・・・・・・?」
「・・・・・・2人共、勇者との戦いで見覚えの無いスペルカードが出なかったかしら?」
「!?・・・・・・じゃあ、やはりあのカードは・・・・・・。」
「“伝説の夢想技”だったのですね・・・・・・。」
そう言って、2人が見覚えの無いスペルカードを取り出して渡すと、紫は大事そうに受け取りスキマに仕舞う。
「さて、貴方達にも伝説の夢想技をうまく使いこなせる為にも修行を始めるわよ。」
「修行・・・・・・ですか・・・・・・?」
「そう、思いっ切りハードな修行よ。まずはこの箱・・・・・・の上の蓋に入っている物を腕に付けてもらうわ。」
そう言いながらも紫が取りだしたのは大きな箱だった。その蓋の部分を取り出して見るとリストバンドらしき物が・・・・・・
「・・・・・・所で、その箱の中身は何かしら?」
「服よ?それも霊夢の御先祖が作り出した、伝説の夢想技を完全に使いこなせる為のね。さ、早く着けて着けて♪」
言われるままにリストバンドを着ける2人。するとその瞬間、ガクッと膝を付いてしまう。
何と今まで軽かったリストバンドが突然に重くなったのだ!突然の事態に驚く咲夜達。
「こ、これは一体・・・・・・!?」
「体が・・・・・・思い通りに動きません・・・・・・!?」
「それもそうよ?だってそれは『特訓用リストバンド君・555』。“着けた者の能力を封じ、体を重くする程度の能力”を秘めている特殊なリストバンドよ。それを着ければ、伝説の夢想技を何とか制御できる事になるわね。」
「それを着けて、私達は何をすれば・・・・・・?」
「・・・・・・まずは幻想郷5周・・・・・・。」
「え?」
「まずは幻想郷5周、と言ったのよ。そしたら次は兎飛び50メートル、バック転50回、お風呂での早プ○モ組み立て・・・以上よ?」
「以上よ?と言われても・・・・・・。」
「仕方がありませんよ、咲夜さん。これも霊夢さん達の手助けになる為です・・・・・・頑張りましょう!!」
「・・・・・・しょうがないわね・・・・・・今回だけよ?」
そう言い合って特訓を始める2人であったが、リストバンドの影響なのか全て終わった時には、もう立ち上がれる気力を見せられなかった・・・・・・ちなみに兎飛びで鈴仙が貧血(?)の為にダウン、更にはお風呂での早プ○モ組み立て(早苗曰く、「『プ○モ狂○朗』の真似ですか!?」)では長湯の為にお空がのぼせたのは言うまでもないのだが・・・・・・。



「(3だけは絶対に避けたいとして・・・・・・2もアリス達も助けにいけない状態だしな・・・・・・と言う事は・・・・・・)」
不利な状況を何とか打開する為に魔理沙は考えた。オメガのあの光の槍は自分のマスタースパークを両断する能力を持っている。
と言う事はあの槍が両断できない攻撃を放てばいい。それに当てはまるのはアレしかいない。
だが、アレの攻撃力を上げたら少しだけでもリスクが減るかもしれない。その方法はどうすれば・・・・・・?
そう考えている魔理沙だが・・・・・・ふと、頭の上の豆電球が灯って閃いた。
「(一か八か・・・・・・やるしかないぜ!)」
「どうした?私の前に手も足も出ないのか?」
「へへっ、そんな事を言っていられるのも今のうちだぜ!」
魔理沙がスペルカードを見て、オメガは先程と同じ、『マスタースパーク』と呼ばれるスペルだと判断する。
「(妙だ・・・・・・同じスペルでどうしようと言うのだ・・・・・・霧雨魔理沙・・・・・・何を企んでいる?)」
「行くぜ!スペルセット『恋符:マスタースパーク』!!」
そう言って、魔理沙はスペルを発動させる。マスタースパークが発射されようとする瞬間・・・・・・
「今だっ!スペルセット!『Fマスタースパーク』!!」
「っ!?」
魔理沙の行動にオメガは始めての感情・・・驚きを見せた。まさか、スペルカードの重ね発動をやるとは!
「こいつでトドメだ!新恋符:『U(アルティメット)マスタースパーク』!!!」
マスタースパークとFマスタースパークの合体版、Uマスタースパークが発動し、桁外れのレーザーがオメガに襲い掛かる。
「成程な・・・・・・スペルカードの重ね攻撃とは・・・・・・だが、所詮は付け刃だな・・・・・・。」
Uマスタースパークが自分に向かっているにも関わらず、オメガは全くの無表情だった。そして腰のポッケからさっきとは別の人工スペルカード数枚を取り出し、バックルに入れ、バックルのボタンを連続で押す。
『ランサー・オン』
『ブースト・オン』
『ウイング・オン』
『シールド・オン』
『ホイール・オン』
『ランサー・ブースト・ウイング・シールド・ホイール・スペルブレイク!!』
「にゃにぃっ!?」
突然の事態に魔理沙は戦慄した。まさか、人工スペルカードの5枚重ね発動とは!?
スペルを連続発動したオメガは右腕に光の槍、背にはブースターと天使みたいな羽、左腕には硬い盾、脚部にはホイール上のシューズが装備されていた。それを装備して魔理沙の方に突っ込むオメガ。まさかUマスタースパークを斬るつもりかと構えた瞬間、何と彼女はブースターをフル全開して上空に上がったのだ!その光景に魔理沙は驚愕するしかなかった。
「なっ・・・・・・!?」
「当たらなければどうという事もない、と言う事だ・・・・・・その様な付け刃並の戦術とは少し警戒し過ぎたか・・・・・・。」
「何その通常の3倍赤い少佐!?」
「・・・・・・これで決める・・・・・・オメガ・スペル・クラッシャー・・・・・・!」
とてつもない轟音と共に突っ込むオメガ。Uマスタースパークの反動で動けない魔理沙。
仲間もハルサメ達とで苦戦しており、脳内にはある番号が浮かんでいた。
答え、3・・・・・・3・・・・・・3・・・・・・嗚呼、現実は非常である・・・・・・
「ちくしょー!どうすればいいんだぁぁぁっ!!?」



続く



次回:「オメガの必殺技が魔理沙に迫る!もう駄目だと思いきや、何とか危機を逃れる。だが、オメガ達の悲しき過去を聞き、なかなか攻撃できずに防戦一方。その時、小さな勇者の悲しき犠牲と聞き覚えのある声が魔理沙を鼓舞するが如く、轟く。『次回:『魔理沙は大変なスペルを発動しました』 魔理沙が出す星は、甘い。」
ZRXです。もうすぐクリスマスとお正月ですね。
東方X戦記では今年で3回目のお正月が迎えることになるとは・・・。
今回は魔理沙編ですが、次回はどうなるやら・・・ご期待ください。
ZRX
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3.40名前が正体不明である程度の能力削除
これってクロスなの?
ま、いーや。次だ次。
7.無評価名前が無い程度の能力削除
まだいたのかww
14.無評価名前が無い程度の能力削除
「○・オン」「△・オン」(略)「○・△(略)・スペルブレイク」

て、宇宙キタんですかw?