Coolier - 新生・東方創想話

地下図書館でのお茶会の話

2011/12/16 01:50:33
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あぁ、もう。まったく、もう。なんだってこんなにかび臭いんだろうねこの図書館は。仄暗く光る照明は綺麗だし、このなんとも言えない荘厳で厳粛な空気はまさに知識の泉という感じなのに。
その空気は最悪なぐらいかび臭いっていうんだから全部台無し、まったくもうひどい話だね。もっともここに居る私の親友は、それらも全て含めて私の図書館なのよ。っていってるけど私にはさっぱりわからないよ。
とは言ってもここに来た目的は、ここの空気を吸うことではなくて目の前に見える我が親友に会いに来たことだから、そんなことは別にどうでもいいことなんだけどね。えいっ。うん、今日も素敵な抱きつき心地。

「っというわけで、こんばんは、パチェ。今日もなんだか、難しい本を読んでるね。たまには絵本でも読んでみたらどうだい。あれはあれで中々どうして、深い味わいがあるもんだよ」
「どういうわけなのか、全くわからないわよ。こんばんは、レミィ。いきなり後ろから抱きつくのは、驚くからやめてといつも言ってるはずなのだけれど、一体いつになったらやめてくれるのかしら」
「そりゃあ止めないよ。だって、驚かせるためにやってるんだから。正面に座って気づいてくれるのをずっと待ってたら、それこそ夜が明けてしまうじゃないか」
「普通に、声をかけてくれればいいじゃない。あなたが話しかけてきたら、それを無視したりなんてしないわよ。まぁ、気が付かないことはあるかもしれないけど」
「それじゃあパチェは驚いてくれないし、なによりパチェに抱きつけないじゃないか。そんなの論外、抱きついてから、普通に座るのが一番さ」

私の返答に、パチェは呆れたようにため息を漏らす。私は別に何もおかしい事は言ってないつもりなのだけど。しかし、そう言ってるパチェの頬の血色が少し良くなったことを見逃す私ではないのさ。
ひねくれ者をからかうときのコツは、一緒にひねてどこまでも絡みあうか、自分だけまっすぐに相手に好意を示す事。最初は恥ずかしいが、慣れてしまえば相手の反応を好きなだけ楽しめる。パチェは表情は変えないけど、感情は読みやすい方なんだ。
しかし、このひねくれ者は同時に頑固者でもあるから、ここらへんで止めておくのが無難だね。あまりいじり過ぎるとへそを曲げて、中々機嫌を直してくれないのだよ。さじ加減を覚えるのに結構苦労したものさ。

「それで何の用かしらレミィ。今日は寝る前の本の読み聞かせはしてあげないわよ。研究が一段落ついた所で少し疲れてるの」
「あらら、それは残念。疲れている時は読み聞かせが終わってもそのまま遊べないものね。仕方ない、じゃあ私の話でも聞いてもらおうかな」

これは真に残念無念。今宵はとてもいい月だったから、パチェと楽しく遊ぼうと思ったのに。喘息の調子はよさそうだったけど、別のところも観ておくべきだったかな。
それなら仕方ない、パチェには精一杯、私の話に付き合ってもらうとしよう。幸いにも、話したいことや聞きたいことは、山のようにあるからね。どれから話そうか迷うなんて、まさに贅沢な悩みじゃないか。
あぁ、そういえばこの時間は、咲夜も好きに休ませてしまってるんだったな。おいしい紅茶とクッキーは何よりも会話の潤滑油になるのだけれど、今は我慢するとしましょうか。

「話す前に紅茶とクッキー、でしょ?今小悪魔に準備をしてもらってるわ。さっき頼んだからもう少しで来ると思うわよ」
「流石、パチェのそういうところ、私は大好きだよ。ツーカーの仲ってやつだね。式はキリスト風でいいのかな?」
「もう何回もこうしてお茶会のようなことをしてるんだもの、普通は覚えるわよ」

あはは、照明と同じぐらいパチェの頬が明るくなっちゃった。やっぱりこうやって素直に答えてくれるってのが一番だね。咲夜は最近からかっても表情に出さないことを覚えちゃったし、美鈴の方は私が逆にからかわれちゃう事が多いし。
フランは別、どんな反応だろうが可愛いから別にいいや。なんか最近はやたらと態度が冷たい気がするけど、それはきっと思春期と偉大な姉に対して気恥ずかしさが混じってるだけ。お年ごろなんだねフランドール。
部屋に勝手に入って、枕の下に私の水着写真を入れている場面を目撃されたことは関係無いことだよ。全然まったくこれっぽっちも、今日の晩御飯と今日の月の輝きぐらいに関係のないことさ。
そうそうそんなことよりも、パチェにはどれから話そうかな。あぁもう、ありすぎて迷ってしまうな、どれから話そうかな。フランのことについてにしようかな、それともこの前の宴会のことにしようかな。
まったく、パチェも少しは外に出てみればいいのにね。宴会のお誘いも、本当に偶にしか乗ってくれやしない。世界は、ここにある本だけじゃないというのにね。まぁ、それなりにはここにも客人は来ているみたいだけれど、自分が客人になる楽しさも、もっと味わえばいいのに。

「パチュリー様、紅茶とクッキーをお持ちしました~。二人分で良かったですよね」
「ありがとう、そこに置いてくれればいいわ。下がっていいわよ、呼ぶまでは休んでていいわ」

素晴らしい、ジャストタイミングとはこのことだね。咲夜ほどではないが、小悪魔は実にいい従者じゃないか。今度、パチェに一人もらえないか頼んでみようかな、別に減る者でもなさそうだし。
どれどれ早速、良い温度のうちに……。うん、絶品とまではいかないけれど、これまた美味しく紅茶を淹れるじゃないか。少しミルクが多すぎる気もするけど、芳醇な風味と甘い花を思わせる香気がとてもいいね。
これはお茶請けの具合も、是非確かめる必要があるね。どれどれ……、うん。クッキーは逆に、あまり甘すぎずサクサクと口に馴染んでくる、思わず食べ過ぎてしまいそう。これなら乙女の敵役として十分だよ。
紅茶……紅茶か。何から話そうか悩んでいたけど紅茶繋がりで一つ、これにしようというのが決まったよ。これは絶対に、パチェに相談したいことだったしね。私一人の意見でも、それはそれであの子にはいいのかもしれないけれどさ。

「聞いておくれよ、最近咲夜の様子がおかしいんだよ。仕事ぶりは相変わらず完璧なんだけど、ふとした時にため息ばかり吐いているんだよね。この前も折角とても美味しい紅茶だったのに、関係ない所でマイナス評価をつけてしまうなんて、あの子らしくもない」
「何か悩み事があるってことかしらね。あの子がため息を吐いているところなんて、まるで想像できないのだけれど。あの子もやはり人間ということかしね、悩みが人間らしいものとは限らないけど」
「私もそう思ったから、聞いてみたんだよ。ため息なんてらしくない、なにか悩みがあるなら言ってみろ、私がいくらでも力になってやるよ。ってね」
「それでなんて言ったのかしら。主の我儘に手を焼いています?それとも、仕事が一日48時間は流石に辛いです。かしらね。たしかにそれなら簡単に解決できそうね」
「違う違う、まったくもう。そんな訳無いだろう。あの子のことを一番大事にしてあげてるのは私だよ。壊れやすいものは、しっかり大切に扱わなきゃ」

今のようにちゃんと休憩時間だって決めているし、休暇だって本当は与えてあげているんだよ。それなのに咲夜ときたら休日までメイド服に身を包んで館の仕事をしているんだもの、流石になんとかしないとまずいと私も思うんだ。
私が我儘を言う時だって咲夜の力で絶対に叶えられる物にしているんだ。絶対はちょっと言い過ぎたかな、8割ぐらいはと言っておこう。なにせ私がなにもしないでボーッとしていると、何故か咲夜のほうが手持ち無沙汰になってそわそわし始めるんだよ。
だから定期的になにか仕事を与えてあげないと暴走して、結果的に何も仕事を与えない時よりも疲れさせてしまうんだよね。この前も悪戯で仕事を与えなかったら目に見えて生気がなくなっていって、最終的にはフランとか美鈴のところに行って仕事を貰おうとしてたからね。

「仕事に生きがいを感じてくれることはとても嬉しいけどさ。さすがに限度ってものがあると私は思うんだよね。咲夜は人間なんだし、私達のようにはいかないからね」
「そればっかりは貴方がなんとかしてあげなきゃ駄目ね。私は家族ではあっても主ではないのだから。貴方にしか、それはどうすることもできないわ」
「わかってるって。いざとなったらふんじばってでも仕事を休ませるさ。それに悩みを聞いた限りでは、私達の心配もどうやら杞憂だったようだよ」

咲夜の悩みは仕事のこととは全く別のこと。しかもこの私が解決してあげれない悩みだったのさ。力に成ってやることはできるけど解決は絶対無理だろうね。
なんせ私が悩んだことのない事を、今あの子は悩んでいるからね。だから私には今のあの子の思考は理解できても、感情に共感は出来なかったのさ。
けど、我が紅魔館の頭脳たるパチェと二人で話し合ってしっかりと考えれば、必ず咲夜にとってプラスの力に成ってやれる自身はあるよ。運命を観るまでもなくそれはわかることさ。

「パチェはさ、もし本気で他人のことが好きになってしまったら、どうする?どうしようもなく恋しくて、それこそ大事な事に手がつかないぐらいに」
「本気で誰かを好きになったら?考えたこと無いけれど、あらゆる手を尽くして自分のモノにしようとするのではないかしら。それが一体どうしたの」

……やっぱり皆同じようなこと考えるよねぇ。悪魔的っていうか、エゴイズムたっぷりの回答ではあるのだけど、ここは悪魔の館だから当然って言えば当然だよね。欲しけりゃ貰う駄目なら奪う。汝求めよ、さらば与えられんってね。
恋愛で大事なのは彼を愛する自分を愛すこと。そんなことは一切思っていないって、貴方さえ良ければ私はいいわって、自分を騙すこともまた、大事なんだろうけどさ。生憎と悪魔はとても素直なんだよ。
それよりも困ったな。私もパチェも同じ意見か、それならやっぱりそのままそう言っちゃえば良かったのかもしれないな。けど咲夜はあれで案外こういう考え方はしない子だからなぁ。自分では悪魔の狗なんていっているけど、どう考えても可愛いわんこだよね。

「あぁ成る程、そういうこと。咲夜もやはり、従者である以前に女の子だったというわけね。本人にそれを言ったら否定されそうだけど。あの子は従者である自分が大切なようだし」
「そういうことだね。けれど、恋の悩みなんてのは私にはよくわからないからな。何をどうアドバイスすればいいのかわからなかったんだよ。正しい、欲しいものの略奪の仕方なら丁寧に教えてやれたのだけど」
「それは絶対に駄目、レミィの場合は特に加減なんてないのだから大変なことになるわ。それで、相手はどんな人なのかわかるのかしら?それがわかれば、少しは色々とできそうだけれど」
「敵を知り己を知ればってヤツかい?それがさ、咲夜も恥ずかしいのか詳しくは教えてくれなかったんだよね。少しならどんな感じの人が意中の人なのか聞けたんだけどね」

いやはや、あれはとても充実した一刻だったな。本当に、唯の生娘のように完全な従者が顔を赤くして自分の好きな人のことを語るんだよ。それがとてもとても可愛らしくて、思わずお腹がすいてしまったぐらいさ。おっと、思い出しただけで涎が、失礼。
しかも、ただ恥ずかしがるだけじゃないんだよ。話しているうちに、想いがどんどん溢れてきて、最後の方はとても楽しそうに、嬉しそうに好きな人の好きなところを話してれたんだよ。終わった後には勿論、今のは忘れてくださいって言ってたけれどそれは無理な話だよね。おおっと、またまた失礼。
けど結局、教えてもらった人物像だけでは私には誰か特定出来なかったんだよね。フランが欲しいって言ってたら、その時は二人まとめて私と血縁にしたけのだけど。血縁って言うよりは血族っていったほうがそれっぽいかな。

「しかし、咲夜ももうそんな年頃かぁ。私や美鈴について回って離れなかったり、パチェの図書館でフランと一緒にうるさくして叱られてたことなんて、まるで昨日のように思い出せるっていうのにね」
「そんなこともあったわね。あの頃の彼女なんて、今の彼女からはとても考えられないわ。あれから立派に成長したし、親代わりのあなたとしても言うことはないんじゃないかしら?」
「人や従者としての育て方は、私じゃなくて美鈴に頼んでいる部分がとても多かったけどね。そればっかりは、私にはどうしようもないものだったし。私は咲夜にとっての生きる意味に成れればそれで十分だったのさ」
「とてもっていうかほとんど全部だったじゃない。自分で言っておいてなんだけど、貴方は完全に親役には役者不足だったわね。愛情を持つことはとても大切だけど、甘くし過ぎなきらいがあったし」

そうなんだよねぇ、私にはどうも駄目だったんだよ。叱って躾けることはとても大事だなんてことはわかってるんだけど、それがどうにも私には出来なかったんだよ。なんかもう、どんな間違いでも可愛いから許すって気分になっちゃっうんだよ。
確かにそういう部分では美鈴とパチェに任せっきりだったな。けれど、私も勿論なにもしなかったわけじゃないさ。咲夜はフランと並んで、私の一番大切な人だからね。あまり大きいい声じゃ言えないけど、本来どうしようもないことだって私にとってはどうにでもなることなんだよ。
そうだな、やったことで一番わかり易いことといえば、咲夜をとてもとても健康に育つようにしたこととかかな。人間ってのはどんなに健康にしてても、その健康にするため体の働きすら狂ってしまうことがあるそうじゃないか。竹林の賢者がいっていたよ、なんだっけな……癌だっけ。そこはどうでもいいか。
でも、私の大事な従者の身体をそんなどこの雑魚ともわからぬ悪魔にやるわけにわいかないからね。強固とまではいかないけど、それなりに色々と弄らせてもらったよ。あぁ勿論体の方は綺麗なまま弄っちゃいないさ、変な勘違いしないでね。弄ったのはもっと大きくて大事な所。
しっかし、好きな人……かぁ。いいなぁ、そんな甘酸っぱい思いを私はしたこと無いからな。一体どんな感じなんだろう、やっぱりこう私がフランのことを思うときのように、おへその下あたりがキュンキュンする感じなのかな。でもこれは、どっちかっていうとそんなに純情なものじゃない感じがするんだよねぇ。

「道理で最近、咲夜が私と一緒に添い寝してくれなくなったわけだよ。好きな人のことを思って切なくなってしまった時に、目の前にこんな魅力的な人がいたら間違いを起こしてしまうだろうからね」
「咲夜が貴方と添い寝してたのってだいぶ前の話じゃなかったかしら。それに、好きな人のことを思っているのに貴方になにかするわけないでしょうに。それが咲夜みたいな子なら尚更よ」
「そこはほら、私の抑え切れないこの素敵な魅力がこう……むらむらっとさせたりとかするわけだよ。私がフランと寝てる時なんか私はしょっちゅうなるしね。あと私は、愛があるなら別に不倫もありだと思うよ」
「貴方の場合はまったくあてにならないわよ。貴方は誰かと一緒に寝ると大体いつもむらむらしてるじゃないの。布団に潜り込んできたと思ったら身体をまさぐって、年中発情期ってレベルじゃないわよ」

年中発情期だなんて、失礼しちゃうな。他よりちょっとだけ人の体に触ったりするのが好きなだけなのにさ。それをパチェもフランも咲夜も、人のことを色情魔みたいに扱わないで欲しいものだよ。温もりってものは大事だと思うんだけどね。
美鈴はなぁ……。さわり心地は言うことなしなのに、くすぐったいぞーとか言って完全にじゃれ合いになっちゃっうからねぇ。健全なのはいいけど色気がなさすぎるのも考えものだよね。でもレーヴァテインとかだけは勘弁してください。
しかしどうなんだろうな咲夜の奴め。あそこまで照れることもないだろうに、変な所で初心なんだよなぁ。可愛かったから構わないけど、もう少し詳しく教えてくれてもいいじゃないか。私に隠し事はするなとはいわないけど、気になってしまってしょうがないよ。

「私にも是非、特長を教えて頂戴。瀟洒な従者の素敵な想い人。さぞかし、立派で素晴らしい人なんでしょうね。それとも案外、ああいう手合いは欠点がある方を好むものなのかしら」
「そんなことはなかったけどね。どのぐらい美化されてるかは知らないけど、話を聞く限りじゃ中々良い奴だとは思えたよ。それでも咲夜をやってもいいかと問われたら微妙なところだったけどね」
「恋する乙女の美化は凄い物があるものね。それでも咲夜が、自分自身に吊り合わないと感じるものに恋をすることなんて無いと思うわね。その時点でかなりの人物だと私は思うけど、それで肝心の特長は?」
「えっと、確か……。誰にでも優しく接することができて、ちょっと間抜けなところもあるけど、しっかりと自分を持っている。そして、どんな時でも私を見守ってくれた人、だってさ」

う~む、やっぱり誰なのか皆目見当がつかないね。最初は私かと思って咲夜に聞いたけど、お嬢様はとても大切な御人です、けれども、この気持ちとは少し違うと思います。って言われたし。
私もよく知ってるヤツだって言ってたけど、誰なんだろうねぇ。もしも万が一、私がそいつを気に入るようなことがあれば、咲夜との仲を認めて祝福してやってもいいのだけれどね。二人共末永くお幸せにーってね。
自分で言うのも何だけど、悪魔の祝福なんて普通は欲しいとも思わないだろうがね。でもまぁそれこそ、私がそんなことを思う奴を気に入るようなことなんて無いと思うけど。どんな奴だろうな、パチェはなにかわかったかな。

「おや、おやおや。パチェのその表情!ひょっとしたらひょっとして、誰なのかわかったとかいうんじゃないだろうね。流石は流石は、我が紅魔館の知識人だ。大丈夫、二人のここだけの秘密にしてあげるから私にそっと教えておくれよ」
「いや……。今の態度で確信しちゃったけど、もしかしなくてもレミィ、貴方本気でわかってないようね。私はてっきり、いつもの様に貴方の遠まわしな冗談だと思ったのだけれど。本当にわからないとは思わなかったわ」
「おいおいなんだよ、勿体ぶるなよぉ。焦らされるのは嫌いじゃないけどそれは時と場合によりけり、だよ。誰なのか最初っからわかってたら、そいつについての話で盛り上がってるって。なぁなぁ教えてくれよ。私は気になって、月見すら落ち着いて出来なかったんだ」

やっぱり持つべき物は、頭脳明晰な友人だね。もしかしたらパチェならわかるかもしれない、そう思って相談してみた甲斐があったというものだよ。内容は最初とは少しずれてるけどそんなことは気にしない。
ふふふ、咲夜の好きな人か。いや、正確には人じゃないのかもしれないけどさ、誰だろうな。私が知っているってぐらいだし、誰なのかまだ気が付かないふりして、咲夜と一緒にそいつを弄ってやるのもとても面白いだろうね。
やっぱりどんなに欲しいもの、知りたいことでもそれを一瞬で手に入れてしまっては味気ないというものさ。ワインのように、ハムのように、じっくりと熟成させてやったほうが最後の喜びは増えていくものなのさ。私の能力はそういった意味では案外不便なものなんだよ。

「さぁはっきりきっぱり、ここで名前をいっておくれよ。大丈夫、さっきも言ったとおり秘密にするし、心の準備も神様へのお祈りもバッチリ終わってるからさ。一体全体どこの誰なんだい」
「じゃあお望みどおりはっきり言うけど……。咲夜の好きな人って、美鈴じゃないの?どう考えても彼女にしかならないのだけど」
「なぁるほどぉ、めいり……ん?って、え、ちょ、ちょっとまって。パチェが言ってるめいりんって、もしかしなくても、ウチで門番やってる……?」
「そうよ、その紅美鈴。華人小娘、紅美鈴。言われてみれば、確かに咲夜の好きそうなタイプではあるわね。それにしたって、て感じだけど。まさかという感情は隠しきれないわね、パチェびっくり」
「いやいやいやいやいや、びっくりじゃなくてさ!それ、本当に本当かい?今ここに咲夜を呼んで、正解発表してもらっちゃう!?正解賞品は、紅魔館の門番と従者の丼物です!やったーそれがいいそうしようそうしよう」

なんてことだ、咲夜の好きな人がよりにもよってウチの門番だったとは。あんな奴、本当は頭が切れて近接戦なら私と本気で遊べて良い匂いがして自分に厳しく他人に優しくてかと思ったら結構ノリがいいぐらいじゃないか。
認めない、認めないぞ。たとえ美鈴でも、私の大事な大事な可愛い咲夜をあげたりなんてするものか。美鈴も私の大切な部下だし大切な家族だけど、こればっかりは絶対に認めない。二人が私のところにいきなり来て、私達の交際を認めて下さい、とかいいでもしたら……。
どうしようどうしよう、まったくもってどうすればいいかわからないよ。祝福してやるべきかな、それとも、認めないと突っぱねるべきかな。けど、そんなことも認めてやれない主だなんて咲夜も美鈴もきっと嫌だよなぁ。でも咲夜はあげたくないなぁ。
もしも、二人に愛想を尽かされてしまったら……。その時はもう、私は身も心も灰になってしまう気がするよ。あぁ、どうしよう。今はもう何も考えずに、フランのベッドでお休みしたいよ。あぁ、それにしても紅茶とクッキーがおいしいな、お代わりしちゃおう。

「はいはい、少し落ち着きなさいな。リスのようにクッキーを齧っていたって、なにも変わらないわよレミィ。もし本当にそうなら、どうするつもりか考えなきゃでしょう。貴方の意見はあの二人にとっては重要なのだから」
「そうだね、そうだよね。私が二人の主なんだもんね、二人共私の意見を尊重してくれるんだよね。そうだ、私はこの紅魔館の当主にして、偉大なる紅の吸血鬼。堂々と構えて二人がどうなるのかを見守り、二人が私の元に来たときには決断してやろう」
「二人は貴方の意見を尊重するでしょうけど、貴方は二人の意思を尊重してあげなければ駄目よ。上に立つということは簡単ではないことは、貴方自身が一番良くわかっている筈。どうか選択を間違えないようにして頂戴。といっても、これは釈迦に説法だったかしらね」
「無論だよパチェ。我こそは運命を操る悪魔。運命の女神は恭しく跪き、我が歩いたその道の後を、唯黙ってついてくるしか無いのさ。二人どころか全員がハッピーにならなきゃ私は納得なんてしてあげないんだよ。……けど咲夜を上げるのは嫌だなぁ。なんとかならないかな、パチェならこういう場合どうする?」
「そもそも、何をそこまで嫌がる事があるのかしら。貴方が咲夜をとても大切にしていることは知ってるけど、美鈴のことだって大切にしているじゃない。ベクトルは違えどどちらも大切、そしてその二人がくっついて幸せになる。それ以上に何かあるかしら、私はいいと思うけど」

わかってない、わかってないよパチュリー・ノーレッジ。咲夜が幸せになる美鈴も幸せになる、確かにそれはとても素晴らしいことだよ。本来なら私も、そうなるのなら精一杯の譲歩はするつもりだし努力もするつもりだよ。紅魔館の主としても、レミリア・スカーレットとしてもね。
けど、違うんだよパチェ。私は二人に幸せになって欲しくない訳じゃないんだよ。そんなことは一切思っちゃいないし、それどころか逆に幸せになってほしいと考えていることは、今更言うまでもないことに決まっているじゃないか。
でもね、でもだよパチェ。それによって、そうなってしまうことによって確実に不幸になる人がここに一人いるんだよ。それは勿論、この私レミリア・スカーレットさ、なんでだって?そんなことは決まっている、どうなるのか考えればわかるだろう。つまり……・

「咲夜と美鈴がくっついちゃったら二人共、今以上私に構ってくれなくなっちゃうだろう!そんなのは絶対に嫌だ!咲夜も美鈴も二人揃って、私より大切な人と楽しく過ごすなんて、そんなの私が寂しくなってしまうじゃないか!一人で啜る紅茶のあの、なんとも言えない甘さと言ったらもう……唯でさえ最近、フランも態度が冷たいというのに!」
「あぁ、貴方らしすぎてなんて言ったらいいのかわからないわよ。なんというか、そこまではっきり言われると逆に何とかしてあげたくなる……いや、ならないわ。流石に無理があるって。貴方もう500年以上生きてるのでしょう?子供じゃないんだから、子供より我儘でどうするのよ」
「う、うるさいな。永遠に幼き紅い月は伊達じゃないんだぞ。凄いんだぞ、偉いんだぞ、格好いいんだぞ!そんな私を放って置くなんて、絶対に許されることじゃないだろう!?パチェもそう思わないか?だから私は皆が幸せになるような解決策をだね―――」

ううぅなんてことだ、パチェの目が氷のように冷たいよ。なんだ、なんでだ、なんでなんだよ。た、確かに、そりゃ少しは大人気ないなぁとは思ってるよ。けどさ、こればっかりは嫌なんだからしょうがないだろう。二人共消えていなくなってしまう訳じゃないことぐらいわかってるさ、けれど嫌なものは嫌なんだよ。二人は、私にとって本当に大切な人だ。
美鈴は、私とフランがまだ小さかった頃からこの館に居た。今よりも少し乱暴でがさつだったけど、私達は彼女を姉のように慕い、彼女もまた私達を妹のように大切にしてくれていた。強く美しくあれと、私達を守り支え続けてくれたことには本当に感謝している。最近は周りから、少し平和ボケし過ぎだとも言われてるけどね。
けれども私は、今の美鈴もとても大好きだよ。絵に描いたような優しいお姉さんみたいになって、見ているだけで太陽を知らない私ですら太陽の暖かさとはこういうものなのかと思えるんだ。咲夜はとても素敵な人に恋をしているんだよ、主としてはこれ以上嬉しいことはないね。
咲夜は逆に、まだ本当に小さかった頃から私たちが面倒をみてきた。今でもはっきり覚えている。懐かしいな、思い出すよ。まだ、咲夜じゃなかった彼女と、私の馴れ初めを。あれはここに来て、少しやんちゃをした後のことで、私もすっかり大人しくなっていた時のことだったんだ。
月が少し欠けた夜、散歩をしていた私の目の前に、突然、本当に突然現れたんだ。あれは能力を使ったからとかじゃなくて多分、外から流れ着いたまさにその瞬間だったんだと思う。ここに流れ着いたばかりだったから、あの時の彼女はあんなにも、何もなかったんだ。
だから私とあの子は、やはりあの夜に出会う運命で、私が名前を与えて育てることもまた、必然だったのだろう。





今夜はとてもいい夜。月も星々と共に空に輝いているし、闇と共に私の頬を撫ぜる風が心地良い。絶好の散歩日和、大嫌いな太陽は出てないけど上を見あげれば大好きな月が私を照らしてくれている。
月を見上げて視線を前に戻した瞬間、先ほどまでは誰も居なかったはずのその場所に突然、一人の少女が立っていた。立っていたと言うよりは、朧気にそこに揺らめいている様は、佇んでいたのほうがしっくりくる。
何の変哲もない、何処からどう見ても唯の人間。何故私の目の前に現れたのかも、何をしにきたのかもわからない唯の少女。こちらを向いている二つの瞳は、赤色と青色の闇に濁り、がらんどうで何もうつしていない。
いい気分で散歩をしていたのに、いきなり現れ私を驚かせた。折角の散歩を邪魔されたみたいで、本来ならとても腹立たしいはずなのに。何故だろう、私は目の前の少女が気になったんだ。
偶然か必然かなんてどうでもいいと考えてしまうぐらい、大好きな運命って言葉さえ陳腐に思えるぐらい、私はその少女がどうしようもなく気になったんだ。いや、正確には違う、私はその少女に惹かれたんだ。
月影を受けて暗く輝き返すその銀髪が、何もうつしていないその両の瞳が、ガラス細工よりも華奢なその身体が、幽鬼の様に希薄なその存在そのものが、私を強く強く魅了してやまなかった。
何よりも輝いているはずの空の月さえ、どうでも良くなるくらいに愛おしく感じたから、ただただ美しく感じたから。だから私は自分でも気が付かないうちに、名も知らぬその少女にあんなにも優しく話しかけていたんだと思う。

「貴方の名前は?」
「わからない」
「どこからきたの?」
「わからない」
「ここが何処だかわかる?」
「わからない」
「貴方は一体何?」
「わから……ない」
「何故自分が、ここに、居るのかわかる?」
「…………わから……ない……」

まるで最初から、どれも全て、そんなものなんて無かったかのように、与えられなかったかのように、わからないとしか答えられない少女。それはとても悲しいことで、けれども彼女には、何が悲しいのかすらわからない。星を知らない少女は、綺麗な星も、それを見ることができない悲しさすらも知らない。
ここはどこ?私は誰?なんてそんな言葉は、冗談でも絶対に口にしては駄目。それは、貴方が最初から持っているものを、持つことができなかった人の前で嘲笑うことだから。腕が不自由な人に腕を自慢するように、足が不自由な人に足を自慢するように、自分すら与えられなかった人に、自分があるということを自慢するようなものなのだから。
でも大丈夫、貴方はこうして私に出会えた。もう泣かないで、涙は出ていないけれど、貴方が泣いてしまっていることが、まるで自分のことのようにわかってしまうわ。あなたはまるで、神に見捨てられ、何もわからぬまま野を彷徨う哀れな子羊。けれど安心して、神が貴方を見放したのなら、悪魔である私が貴方を狼から守ってあげる。
貴方に名前を与えてあげる。
貴方に居場所を与えてあげる。
貴方に精一杯の愛を与えてあげる。
貴方がここにいる意味を与えてあげる。
貴方が成り得る最高の貴方に成るために――

「私が、貴方に、貴方を与えてあげる。だから貴方は、私が与える全てを信じて」

こんなにも月が映える夜は。
少し欠けた月が優しい夜は。
貴方が、ここで生まれて始まった夜。
貴方は十六夜の月夜に生まれ、月明かりの下で私の為に咲き誇るの。
さぁ、私と行きましょう、帰るべき場所へ。さぁ、私と生きましょう、この世界で。大丈夫、ここは何もかもを受け入れてくれる、少女の優しい箱庭の中だから。

「さぁさ、悲しんでいる暇なんてのは、もうないよ。これからお前は、私と一緒に楽しいことをするのに忙しくなるからね。……だから今は、私に身を預けてゆっくり良い夢を見るといい。目が覚めたら、今度は一緒にその夢を叶えよう」
「……わかった」





そのままそこで眠らせて、抱きかかえて紅魔館に戻ったんだったな。皆びっくりしてたな、美鈴は一体何事かとしつこいし、パチェなんて何かの儀式に使うのかと勘違いしちゃってたしね。その時の私の、日頃の行いを考えたらそういうふうに思えちゃうのも仕方ないけれど、育てると言った時のパチェの驚き様ったら酷かったものだよ。
思えば、人を拾って育てる吸血鬼なんて滑稽以外の何者でもないのにね。体面を重んじて周りからどのように思われるかを気にしていた私が、そんなことなんて何も考えないで咲夜のことばかりを気にかけていたな。私だけじゃなくて、館の皆もちやほやしていたんだけどね。
しかしここまでよく育ってくれた、ここまでよく私に尽くしてくれた。勿論咲夜だけではなくて美鈴も、これ以上ないほどに私に尽くしてくれた。恩を受けてそれを返さないなど誇り高き吸血鬼のすることではないよね。寂しいっていっても、別に居なくなってしまうわけじゃないんだしさ。

「やっぱり、認めてあげるべきかな。二人が好き合っていて最後に私の許可を求めてくるのなら、それを認めて二人を祝福してやることこそ私のしてやれる最善の行動なんだろうね」
「あら、どういう風の吹き回しかしら。貴方が寂しいということを理由に我儘を言い出した時は、大体いつも折れずにごね続けるのだけど。なにか思うところでもあったの?」
「いやさ、ただ昔を思い出しただけだよ。昔を思い出したらなんとなく、そんな気がしただけさ。とても寂しくなるかもしれないけど、そしたらその分二人をからかってやればいいと思っただけだよ」

咲夜と美鈴が私の幸せを何よりも願ってくれているように、私も二人の幸せを何よりも願っている。だったら何も迷わなくていいんだ、少しだけ自分の感情に整理をつければいいだけの簡単なことさ。
二人がべたべたくっついてたら、その間にドラキュラクレイドルで割って入るぐらいが私達には丁度いいんだよね。そう考えれば大丈夫な気がしてきたし、こんなにネガティブに考えるなんて私らしくもなかったな。
それに咲夜も仕事で凡ミスをすることもなくなるだろうし、美鈴ももう少し昔みたいにしっかりするんじゃないのかな。アイツもあれでいて結構やる気のムラが激しいやつだし、恋人の前でなら格好つける気がするよ。うん、良い事ばっかりだね。

「私は少し怖かっただけなんだよ。姉のような存在と娘のような存在。家族という一番大事な存在が、二つも同時に手の届かないところに行ってしまうんじゃないかってね。家族が遠くに行ってしまうのは、もう嫌なんだよ」
「…………貴方にとっては、家族という存在はこれ以上ないほどに大切な存在だものね。フランのこともあるし、本当に辛いなら私も――」

悲しむ必要なんてのも、寂しくなってしまう理由なんてのもまるでなくて、ただほんの少し勇気を持てばいいだけ。一人が幸せになるために二人が我慢しないといけないなんて、そんなのは不平等にも程がある。この私がそんなことを思っちゃうんだ、咲夜も美鈴も幸運だね。
そうだな、私が寂しくならないように二人には精一杯幸せになってもらうとしよう。どのぐらい仲がいいかをたくさん見せ付けて貰って、苦労しているところも喜んでいるところも全部全部見せてもらおう。やっぱり咲夜を手放すなんて考えられないから、それぐらいはしてもらわないとね。
過去のことを懐った。現在のことを思った。未来のことを想った。それを踏まえた上で下した決断だ、何も躊躇うことはない。パチェはとても心配そうだけど、私はとても大事な事を忘れていたよ。私にはまだ、昔からの親友も愛すべき妹も居るってことをね。

「大丈夫さ、大丈夫。私にはまだパチェもフランも居るじゃないか。こうなったら寂しいって理由で前以上にベタベタするからね。まさかあそこまで交際を肯定しておいて私をないがしろにするなんてことはしないよね」
「別に私はなんでもいいわよ。読書の邪魔さえしてくれなければいくらでもどうぞ。けれどもレミィ、貴方本当に鈍感なのね。折角だしもうひとつお話をしましょう。ついでで話すようなことではないけど、ここで話したほうがいい気がしてきたわ」
「……えっ。それっていくら抱きついてももう怒らないってこと?いくら勝手にベットに潜り込んだりしても、もうロイアルフレアはないって事かい!?魔女のお茶会中に机の下で――」
「いいから話を聞いて頂戴。おそらく、貴方がもう一つ私に話そうと思っていたことだから。貴方最近、フランがやけに冷たいことに悩んでるんじゃないの。それについての話」

そうか……咲夜と美鈴をくっつけることによって、私は前以上にいろんな娘とスキンシップを取ることができるのか。パチェも顔が赤いけど、これは怒ってるんじゃなくて照れているだけ。つまり、遠まわしな合意。合意、なんていい響きなんだ。
素晴らしいな、咲夜からの愛情が少し減ってしまうかもしれないのは確かに痛いがそれなら全然補えるじゃないか。フランも傷心状態の私ならきっとやさしくしてくれる!狂気の発作だって最近は滅多にでないし、これは凄いことになるぞ。主に私の心と体が、生活とか性活とかそんなところが。
っと、魔女殿の話も聞いてあげないとね。私ばっかり話してそれで満足なんて失礼なことはしないよ。……どうしよう最後のほう全然聞いていなかったんだけど、言ったら怒るかな。普通に考えれば怒るよねそりゃ。なんの話だっけ、あの白黒鼠と人形使いの話だっけ?
フランの話か?そうだな確かフランの話だった筈だ。っそうだよそうだよ!パチェは実によくわかってるじゃないか!最近フランが異様に冷たいんだよ。おやつのケーキが原因で喧嘩した時だってここまで酷くはなかったというのに、いったい何があったんだろう。

「貴方のことだからフランが冷たいのは愛情が足りないから、とか思って色々と余計なことをしてるのではないかしら?その考えは半分は大正解で、もう半分は大間違いよ。正直に言って一番タチが悪い選択かもしれないわね」
「それはどういうことだい?確かに愛情表現が足りていないのかと思って、お風呂とかお茶会とか部屋にいるときに遊びに行ったりとか色々しているけど、それは余計なことだとでもいいたいのか?それはいくらパチェの言うことでも聞き捨てならないね」
「話を聞いて頂戴レミィ。貴方の話よ、これは貴方がどうするのかの話なの、話を聞いて頂戴。フランドールが何故貴方に冷たい態度を取るのか、簡単よ。それはとても簡単なこと、だからこそ貴方も気がつけないで悪い循環に入ってしまっているのだと思うわ」
「簡単なこと?もし本当にそんな簡単なことなら、この私が気が付かない筈ないじゃないか。一体どれほどフランと一緒にいたと思っているんだ。それこそ、おはようからおやすみまで一緒にいるというのに」
「簡単なこと。フランが貴方に冷たい理由?そんなの、貴方が他の女にも優しくしているのが心の底では悔しくてたまらないからに決まっているでしょう。フランは他でもない、貴方の妹なのよ?貴方に似ていないとでも思ったのかしら」

…………今、この紫MOYASIはなんと言った?フランが冷たいのは私がいろんな娘にちょっかいを出しているから……?つまり、私が全面的に悪いといいたいのか?そこまでフランに怒られるほどフランの目のつく所ではちょっかい出してない筈。
というか、その言い方だと私が外でどんな事してるか全部筒抜けみたいじゃないか。どういうことなんだ、私がいろんな娘と遊んで回っているということが完全にバレているというのか。し、仕方が無いだろ。フランは冷たいしパチェは篭りっぱなしだし咲夜と美鈴はあんなんだし。
まて、落ち着くんだ。焦っちゃ駄目だよ、私は何時だって冷静なんだ。まだ全部がバレてると決まったわけじゃないだ。うろたえるんじゃあない、スカーレットデビルはうろたえない。こ、紅茶を一口……。

「ここは、飲んどる場合かーっ!でいいのかしら?やらないけれど。結論から言うと、貴方がいろんな娘と遊んでいることは館の全員がもうとっくに知っているわ」
「違うんだよ!いや、遊んだのは確かに事実だけどそれは別に不健全なものでもなんでもなくて。本当に一緒に遊んだだけでやましいことはしていないんだ!つまりノーカウントなんだ!」
「一番最近は神社の境内裏によくいる宵闇の妖怪」
「ええっと……」
「その前は里に薬を売りに来た月兎」
「それは……」
「その前は神社によくいる鬼」
「その……」
「その前はたまたま里で出会った八雲の式」
「……」

まずい、とてもまずい。全部バレてる、これは確実に全部バレているぞ。弁明のしようもない、多分これじゃなにをしていたかなんてのもきっと筒抜け……。ほっぺにキスはセーフ……。ほっぺにキスはセーフのはず……!
違うんだよフラン。これはフランが私に冷たくするから私も寂しくなって余計いろんな娘にちょっかいを出すわけで、言うなればこれは生きるための活力のようなもので……。わ、私は悪くないんだよぉ!

「これ以上はきりがないからもう言わないけど、これでわかったでしょうレミィ。残念ながら、貴方ぐらい有名な妖怪が完全に人目をさけて行動するなんて不可能ということよ。ましてやそれが天狗の目なら尚更のこと。そんな今の貴方がいくら愛していると囁いた所で、真実を知るフランが信じると思うかしら?」
「あ……ちが……誤解だ……誤解なんだよ……」
「止めを刺すみたいで悪いけど、フランから伝言も預っているわ。少し前に相談を受けて、この話をしたときに見せるために用意したの。今から魔法石に立体映像を映すからよく見てよく聞いて頂戴」

魔法石……あ、フランだ。フランじゃないか。アハハ、今日もフランは可愛いな、そこらへんの芸術作品なんか裸足で逃げ出すよ。可愛いな、アハハ……。

「えっと、もう喋っていいのこれ?えっと、お姉様へ、伝えたい事があるので聞いてください。お姉様がこれ以上いろいろなところに飛び回ってそのまま止めないなら、私にも考えがあるんだ。私もお姉様のようにいろいろな娘達と遊んでお姉様が私によく言う本物の愛というものを探しに旅に出ようかなとおもうの」
「だ、駄目。そんなのは駄目だよ」
「お姉様のことは大好きだし、尊敬もしてるよ。けど、お姉様の言っていること全部が全部正しいなんて思わないし思えないから、私もお姉様みたいに行動で示そうと思うんだ。だから」
「ふ、ふらん……駄目……」
「最後に一言、私以外を愛しているお姉様なんて見たくないし知りたくない。……浮気するお姉様なんて、大っ嫌い!」
「以上よ。もう少し早く、こうやってはっきりさせたほうが良かったのだろうけど。フランの方もフランの方で覚悟を決めるのに時間がかかったのよ。けれどもフランは行動したわ。ここからどうするかは貴方が選択して頂戴。……聞こえてないかしらね」
「あああぁああうわあああああああああ違うんだよフラァアアアアアアアアアアアアアアンン。私が本当の本当に愛しているのはお前だけなんだよぉおおおおおおお。信じておくれぇええええええええええええええええええええええ」



ごほっごほっ。全く図書館では静かにしなさいとあれほど言っているのに、すごい勢いで飛び出して行っちゃって。唯でさえ埃っぽい場所なんだから喘息の発作が起きてしまうじゃないの。こあ、来て頂戴。
あぁ、そこの本の整理が終わってからでいいからお茶のお代わりを入れて頂戴。それにしても、レミィの相談事でここまで事態が大きくなるなんてなかなか珍しいわね、いつもどおりの唯の他愛のない会話で終わると思っていたのだけれど。それについてはどちらも考えがまとまったようだから良しとしましょうか。
これでフランからの相談事の方も解決しそうね、いつにするか迷ったけど今日このタイミングというのは限りなくベストに近かった筈だわ。それに解決するなら早いに越したことはないからね。レミィの方も、これで女癖の悪さが治るといいのだけれど。
フランもフランで素直に本人に言えばいいのに、何故私に相談してきたのかしらね。
私は心がひねくれていると自覚しているけど、あの二人は行動がひねくれていると自覚してないわ。どこまでも無意識に一緒に絡みあって、まっすぐに心が通わない。最初から最後まで相手の本心がわからない。本当に面倒なタイプ、だからこそ私に相談に来るのだろうけど。

「お茶のお代わりです、パチュリー様。クッキーはどうしますか?まだ残っていますけど」
「食べちゃうから置いたままにして頂戴、ほんの少しでいいからゆっくりしたい気分なの。今夜は月が一段とよく見える夜だそうね。このまま少し月光を浴びて休んでこようかしら」
「すいません。パチュリー様ー。居らっしゃいますでしょうか」

……この声は咲夜ね。何しにきたのかしら、なんて考えてみるけどどうせなにか相談事がありますとかいう話なんでしょうね。なんで私のところに相談に来るのかしら。自分で言うのもなんだけど、いくら知識はあるからといっても魔女に相談を持ちかけるなんてことをしないものだとおもうのだけど。
ここは好意的に、私のことを信頼してくれて尚且つ私の知識じゃないとどうしようもないということにしておきましょうか。そう思えば少しはこの煩わしさも楽しさに変わるでしょうしね。

「パチュリー様、パチュリー様は居られますでしょうか。咲夜でございます、少し相談したいことが有って参りました。居らっしゃいますでしょうか」
「……こあ、紅茶をもう一つ用意して頂戴。それと咲夜に、私はここに居るから大きい声を出さないでと伝えて頂戴」
「了解です~」

あぁ、もう。まったく、もう。ここは知識の泉で私の聖域なのであって、決して悩み相談所なんかではないのだけれど。本当にもう、なんで皆揃いも揃って私のところに来るのかしらね。けど別にいいわ、ここに来る本とここに来る様々な話、どちらも私の大切な知識と経験と成る。
折角の綺麗な月らしいのにここからでは見えないのが残念だわ、月光浴はお預けね。まぁ、レミィのように言うならこれも運命というやつなのかしら、違うとは思うけれどそう言ってみるのも悪くはないわね。そうねこれこそ、こういえばいいのかしら。こんなにも月が綺麗だから――

「長いお茶会に、なりそうね」

なーんて、ね。
未熟な文章にここまでお付き合いいただきありがとうござます。
至らぬ点も多く読み苦しいかと存じますが、ご意見ご感想をお待ちしております。
ありがとうございました。
朝鍵
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コメント



0.1020簡易評価
4.90奇声を発する程度の能力削除
お嬢様ww
6.100名前が正体不明である程度の能力削除
レミリアさんwwwカリスマwwwどこww
8.80名前が無い程度の能力削除
なかなか
14.90とーなす削除
レミリアのキャラがいい感じ。
子供っぽくてところどころ芝居がかってて。主に出てきたキャラクターはレミリアとパチュリーぐらいですが、その会話を通して喚起される紅魔館の生活がとても楽しそうで素敵でした。
22.100お嬢様削除
レミィのしゃべり口調が良くて良かったです。
あと会話文だけでお話をつなげてしまうって言うのもスゴイなと思いました!