わりと知られていないことだけど、咲夜ちゃんはかわいいものが大好きなのー☆
ちっちゃくてー、かわいくて、ぷりちーなのが好き。
お嬢様のことももちろん大好き。だってかわいいもんッ(迫真)。
でも女の子ならやっぱり愛でるだけじゃなくて愛でられたいなって思うの。
自分が一番可愛くありたいなーってところもあって、愛でるより愛でられたいそんな年頃でもあったりするの。
ハァ……。
なんでだろ。
現実って非情。
どこまでもどこまでも非情。
だって咲夜ちゃんはかわいい系というよりは美人さんなのだった☆
いつのまにか紅魔館での役割も仕事のできるオンナとか思われてるみたいだし、周りを見てみたら、ロリなお嬢様方と、ロリな妖精メイドたち。ロリな小悪魔。
これじゃあ、かわいさポイントで勝てるわけないの!
下手するとロリ巨乳のパチュリー様にも病弱補正で負けちゃうの。病弱な女の子が涙目になりながら「ありがと。咲夜ちゃんいつもごめんね」って言ってるって想像すれば、かわいさのあまりに脳味噌爆発しちゃいそう。
対するわたし。
長身で、すらっとしてて、スレンダーで、涼しい色をした鋭いまなざし。
年はまだまだ少女だけど、まとってる雰囲気は大人のそれ。
くわえて地位も、メイドを統べる者としての責任があって、やっぱり大人ポイントに加算される。
どんどん減ってるのは少女ポイント。
メイド長メイド長とか言われてもぜんぜんうれしくないの。
それどころか、お嬢様方やロリな妖精さんたちと違って、咲夜ちゃんは人間さんだからどんどんかわいくなくなっていくの。劣化していくの。売れ残りのクリスマスケーキになるの! 半額セールなの! 冬になってレイプ目な秋姉妹さんなの!
ああ……!
そうすると考えるまでもないことだけど考えなくちゃならない。
紅魔館でかわいさポイント的に勝てそうなのは美鈴だけ。
やだよう。
咲夜ちゃんはかわいいもん。
まだまだかわいいもん。
『かわいい女の子だと思った? 残念!咲夜ちゃんでした!』
って誰かに言っても、
『咲夜ちゃんも十分ぷりちーだよ。その言葉、矛盾してるよ』
って言われたい年頃なの。
メイドやめちゃおうかなぁ。
「すいません。メイド長」
ハッ。
いつものようにプライベートスクエア(咲夜ちゃんルーム)で、咲夜ちゃんモードになってたら、妖精メイドのひとりがドアをノックしていた。
切り替え切り替え。
咲夜ちゃんモードは人には見せられない禁忌の姿。
普段のわたしは瀟洒で完璧なメイドなのだ。
「なにかしら?」
ほらごらんなさい。
妖精メイドの羨望と尊敬をこめたまなざし。
でも、ちょっぴり妖精メイドさんかわゆいな抱っこしたいなーなんて思ってるのは内緒だ。
断じてロリコンではない。
わたしは純粋にちっちゃくてかわいいものが大好きなのだ。
世に言う少女趣味なのだ。
あーそれにしても妖精メイドさんって最高ッにかわゆい。
子どもが背伸びしてるみたいでほほえましいし、やってることはお仕事だから妙に大人びたところもあるし、そのアンバランスさがたまらない。
お持ち帰りしたいなー。
咲夜ちゃんも妖精さんになりたいなー。
咲夜ちゃん妖精になりたい。透明な羽を背中に生やして、月明かりのなかをぷわぷわと飛ぶの。
ぷわぷわ。
ぷわぷわ。
「あの? メイド長?」
「あ、ごめんなさい。ちょっとこのところ仕事が忙しくて、ぼーっとしてしまったわ」
「それはよくないわね!」
後ろからの声に振り返ると、そこにはお嬢様が腕を組んで立っていた。
ああ、お嬢様は今日もかわいかった。
心底、お嬢様になりたかった。
違う。
わたしもかわいくなりたかったの。
もっと等身短くてよいの。こんなひょろ長い体なんていらないの。
お嬢様は咲夜ちゃんの理想体型。
お慕いもうしあげます。心の底からあなたの奴隷です。主に少女趣味的な意味で。
本当にお嬢様は少女趣味的な意味で完璧な存在だった。
お人形さんみたいな身体に、フリル満載のお洋服。ときどき物を知らないのに知ったかぶりをしたり、廊下の何もないところで転んだときも、涙目になりながら『運命が私をもてあそんだか……』とか言って、悶絶級のかわいさだった。耳から脳汁でちゃうー☆って思ったほどだったの。
せめてお嬢様にお近づきになりたいと思って、洗濯機の前で二時間ほど悩んだこともある。
お嬢様の服さえ着れば、少女力がプラス100くらいはされるんじゃないかと思って。
違うの。
単純に着てみたかったの。
ドレスを着て、裾をつまんで、えへへってはにかみたかったの。
でも、絶対に似合わない!
咲夜ちゃんはまぎれもない美少女なのだけど、ジャンルが違いすぎるの!
スティーブンセガールとキアヌリーブスくらい違うの。
ハァ……。
ため息がまたこぼれちゃう。
幸せさん、さようなら。
「本当に疲れてるようね」
「いえ。仕事に支障がでるほどではございません」
「ふむ……。今日のところは休んだら? あなたは人間なのだし」
かっちーん☆ときた。
確かにお嬢様のことはお慕いもうしあげているし、今の言葉もわたしのことを気遣ってのことだろうけれど、今は人間であることを忘れたかったのに!
咲夜ちゃんは妖精さんなの!
経年劣化する人間さんなんかとは違うの!
「取り消してください」
気づいたら私のお口が勝手にすべっていた。
つるつるりんって感じだった。
なに言ってんの咲夜ちゃん!
お嬢様のご不興を買ったら一大事。
なんのかんのと言いつつも、ここは咲夜ちゃんにとって天国だ。
なにしろ、周りはかわいい女の子ばっかり。
その輪のなかになかなか加われないのが歯がゆかったりするけど、人里のむさい暮らしなんか絶対嫌なの。
ここしか立場ないの。
やばいやばい。どうしよう。
お嬢様はわたしの不適切な発言にあるぇーって感じの顔をなされてて、そんなお顔もベリィキュート。
ああ、でもここはしっかりしないとお暇をだされちゃう。
えーっと。
そ、そうだ。
「わたしは既に身も心もお嬢様にささげております。わたしは人間である前にスカーレット家のメイドなのです」
お嬢様の驚いた表情。
こんなんでどうかなぁ?
お嬢様は幼げながらもカリスマぶって天使のような笑みを浮かべた。
天使のような悪魔の笑顔。この館にあふれているよ。
「その言や良し。さすがはわが従者。いまのはわたしの失言だったわ」
「いえ。でしゃばりすぎました」
「でもね。わたしは本当に心配しているのよ。仕事が忙しすぎてあなたが倒れたとなったら、結局はわたしの支配不足ということになる。今日のところは休みなさい」
「ですが」
「これは命令よ」
「はい……」
そんなわけで一時的に咲夜ちゃんは暇になってしまったのだった☆
こまった。
普段のわたしは一日二十七時間勤務の超過密スケジュールで働いている。女の子のきゃっきゃうふふな職場だけに、働けば働くほど元気になるという好循環だったんだけど、なにもするなとお嬢様に命じられればそうしなくちゃいけないの。
こまったことに、それってけっこう難しいことなの。
普段のやり方を急に変えようと思っても変えられるものじゃないし、お部屋のなかでぼーっとしてるだけなのもつらい。
でもでも。
お外にいくのもアリエナーイ。
だって、お外だと咲夜ちゃんは悪魔に仕えているこわこわな女の子なの。
いつも凛としていて、人を拒絶しているみたいに思われているから、なんだか避けられちゃってるみたいなの。
そもそも用事もないのに遊びにいくほど仲が良い人なんていないし、あえて言えば阿求ちゃんくらいかなぁ。
でも阿求ちゃんの取材のときはなめられちゃいけないと思って、逆ねこかぶりしてたし、いまさら咲夜ちゃんモードで対応したらびっくりするに違いないの。
思いっきりひかれちゃう確率大なの。
そんなの絶対に、ヤ。
だって、咲夜ちゃんの心はそこらにふわふわ漂ってる毛玉さんよりも儚いものなの。
似合わないなんていわれたらきっと立ち直れない。
お部屋に戻って、マジカル咲夜ちゃんスターでも磨こうかなぁ……。
マジカル咲夜ちゃんスターというのは異変解決のためにパチュリー様に作ってもらったオプションだ。パチュリー様のご趣味なのか、それとも咲夜ちゃんの希望をつぶさに感じ取ってくれたのかわからないけど、マジカル咲夜ちゃんスターは球形に星型がついたキュートな形をしていて、もうなんていうか、見た瞬間に惚れこんだの。
魔理沙ちゃんや霊夢ちゃんには何それ似合わないと言われたけど、これだけは手放すことができなかったの。
だいたい自分たちだって同じようなもの持ってるくせに、咲夜ちゃんだけ似合わないとか舐めてるの。しんじゃえばいいの。あ、だめ。そんなこと思っちゃだめなの。咲夜ちゃんは優しい女の子だから、しねとかそんな怖いこと思うわけないの。
あぶないあぶない。
咲夜ちゃんいけない子(てへぺろ)。
マジカル咲夜ちゃんスターはそんなふうにあまりいい思い出がなくて、ずっとタンスのなかにしまっていたけど、それ自体は嫌いじゃないから、磨いてあげるのもいいかもね。
部屋に戻って、意気揚々とタンスを開けて奥をごそごそ。
あるぇー?
あるぇ?
え、ちょっと待って。
マジで?
マジですか?
「ないし!」
どこ!?
どこいったの!?
マジカル咲夜ちゃんスター。
咲夜ちゃんのかわいさを三十パーセントはひきあげてくれる魔法のアイテム。
夢とドリームがつまったスーパーオプションなのに。
なかった。
タンスのなかの奥の奥にしまってあったのがなくなってた。
どういうこと?
どういうことなの?
しばらくの間、咲夜ちゃんは時間停止をつかうまでもなく停止していたと思う。
あの思ったよりも大きなマジカル咲夜ちゃんスターがひとりでになくなるわけがない。
ちょっとしたバランスボール並の大きさがあって、わたしが抱っこすれば抱きごこちよくて、お嬢様が抱っこすれば咲夜の匂いがするーとか言って幻想郷が滅亡しそうなくらいかわいさ天元突破で、いやもうなんか頭がぐちゃぐちゃだ。
いったん、整理しよう。
マジカル咲夜ちゃんスターがなくなってる。
これは事実。
事実は覆せない。
じゃあ、なぜなくなったか。
咲夜ちゃんがどこかに置き忘れた?
ありえない。
マジカル咲夜ちゃんスターは封印されてはきたけれど、咲夜ちゃんにとっては無二の親友みたいなもの。咲夜ちゃんにとってのかわいさ的な味方をしてくれる唯一の存在。それをどこかに置き忘れてくるわけがない。
咲夜ちゃん以外のひとがどこかに移動させたんだ。
それしか考えられない。
もしかしてマジカル咲夜ちゃんスターを作ったパチュリー様かな?
でもパチュリー様だったら、ちゃんと咲夜ちゃんに話を通すと思うの。
だいたい咲夜ちゃんはお嬢様の従者なんだし、パチュリー様はお嬢様のご友人だからほとんど同格。そのパチュリー様から命じられればマジカル咲夜ちゃんスターを提出しないわけがないの。それなのに黙ってもっていく必然性がないの。隠れ巨乳魔女たるパチュリー様がそんな無駄なことをわざわざするとは思えない。
でもでも。
もしかしてってことも考えられるし。
なにより、魔理沙ちゃんのことを疑いたくなかったの。ほんとはちょぴっと疑ってたけど。疑っちゃってたけど。友達を疑うなんて悪い子なの。咲夜ちゃんはいい子だからそんなことしないの。まずは確認しなくちゃ!
「あの、パチュリー様」
「あら咲夜。レミィから聞いたわよ。体調が優れないんですってね」
「いえ。たいしたことはありません。それよりも気になることがありまして」
「なに?」
「前にパチュリー様からいただいたオプションのことですが」
「あれがどうかしたの?」
「少しメンテナンスをと思いまして、タンスを調べたところ、どこにもなかったのです。それで、もしかするとわたしの記憶違いでパチュリー様にメンテナンスをお頼みしていたかもしれないと思い、確認しにまいりました」
「いや、わたしのところにはないわね。でも場所なら調べられるわよ」
「え、そうなんですか」
「いちおう内蔵機能としてGPS搭載しているから」
「GPSですか」
そんなの初耳なの!
咲夜ちゃんの知らない機能がこんなところに!?
ただナイフの本数増やすだけと思ってたのに。
もしかしてパチュリー様は夜な夜な咲夜ちゃんのかわいらしい寝顔をそれで監視してるとか!
こわいの。こわすぎるの。
「GPS……ゲンソウキョウ・ポジショニング・システム。単に場所がわかるだけよ。レミィがつけろってうるさかったからつけたのよ。普段は機動すらしていないシステムだから心配しなくても大丈夫よ。あなたのプライベートは守られてる」
なんだ。
場所がわかるだけなんだ。
あれはずっと咲夜ちゃんのプライベートスクエアにおきっぱなしだから、べつに場所を知られてもプライバシーの問題にはならないの。
それよりGPS機能をつけたのがお嬢様の指示だったのって、もしかして咲夜ちゃんのためだったりするのかなぁ。
お嬢様はぷりちーだけど、やっぱりカリスマだ。
「じゃあ調べるわね」
パチュリー様の詠唱で、空中に半透明の魔法陣がうかびあがる。
とっても綺麗でファンタジック。
ああ、咲夜ちゃんも魔法少女になりたい。
フリルつきのピンクな服をまとって、ちょっぴりえっちな従者をひきつれて、ご近所さんの平和を守るの。
メイドなんかよりもずっとやりがいがあると思うの。
でも、やっぱり似合わない。
絶望という名の奈落が襲うの。
さげぽよなの。
「思ったとおり……。魔理沙の家にあるみたいね」
パチュリー様の検索が終わったみたい。
なかば予想どおりだけど、魔理沙ちゃんひどいの。
勝手に咲夜ちゃんの持ち物をもっていくなんて。
自分はなにもしないでもかわいくてぷにぷにしてて、妖怪たちからも面白愛されしてるのに!
咲夜ちゃんからこれ以上かわいさをとったら、本当に美人系のお姉さんキャラになってしまうの。
無慈悲などろぼーさんなの!
「取り返してきます」
「あなた、今日は休んでいたほうがいいんじゃないかしら」
「いえ、このくらいは平気です。むしろ気分転換になってよいくらいですよ」
キングクリムゾン。
唐突だけど、魔理沙ちゃんの家についたの。
相手はどろぼーさんだからノックなんか必要ない。
今日は無理やり侵入するの。
ぷんぷくりーん。
咲夜ちゃんは怒っているのだ。
「お、なんだ咲夜じゃんか。どうしたんだ?」
背後をとられたの!
やっぱり魔法の森は魔理沙ちゃんのテリトリー。
いくら咲夜ちゃんが時間を停止する能力があっても、気配を探ることはできなかった。
しかたないから、咲夜ちゃんはくるりと優雅にターン。
どんなときでもかわいらしさをアピールするのを忘れない。
だって女の子だもん。
「魔理沙。あなた、わたしのオプションを勝手に取っていったでしょ。返しにもらいにきたのよ」
「なんだよ。死ぬまで借りてるだけだぜ。かたいこと言うなよ」
「そんな言い訳が通ると思ってるの?」
どろぼーさんはいけないことなんだから。
いつか閻魔さまにお尻ぺんぺんされちゃうんだよ。
咲夜ちゃんはお怒りモードだったから、すぐにナイフをかまえて臨戦態勢をとった。
本当は魔理沙ちゃんの柔肌に傷をつけるかもしれない武器で戦いたくはないの。
でも、咲夜ちゃんにとっては無二の親友、マジカル咲夜ちゃんスターがかかってる。引くことはできない!
「弾幕ごっこでもする気か。わたしとしてはべつにいいぜ」
「わたしは自分の持ち物を取り返したいだけよ。弾幕ごっこなんかわざわざつきあってあげると思って?」
ザ・ワールド!
時は止まる。
いちいち魔理沙ちゃんに戦いを挑む必要はないの。
ナイフを構えたのは、ドアを破壊するため。
時間停止中に目的のものを手に入れてさっさと離脱すればいい。
咲夜ちゃんの能力も無限じゃないから手早くやる必要があるの。
ドアにナイフを何本か刺して、もろくなったところで蹴破る。
瞬時に中に侵入。物色開始。
そこで、後ろから魔理沙ちゃんのかわいらしい声が響く。
「あー、どろぼーッ!」
どろぼーさんは魔理沙ちゃんの方。
魔理沙ちゃんが家に入る前に、もう一度時間停止。
それにしても魔理沙ちゃんは女の子さんなのに部屋のなかが腐海みたいになっちゃってる。
綺麗すきな咲夜ちゃんとしては許せない状況なの。
ああ、掃除したい。
でもいまは人質ならぬ物質を救出するほうを優先しなきゃ。
どこにあるんだろう。
とりあえず床はなにかよくわからないマジックアイテムの類がおかれていて、下手に触ると危なそう。
マジカル咲夜ちゃんスターの大きさからいって、すぐにわかるはずだけど、ざっと目につくところにはないみたい。
ここで、またもやタイムアウト。
「しかたないやつだな。なにを返してほしいんだ」
「さっきも言ったでしょ。わたしのオプションよ」
「オプションっていわれてもなー」
「星型のマークがついた球」
「球?」
「そう球。球形。まあるくくてかあいいの!」
「あ……」
「なに?」
「あれか」
「思い出したの?」
「あれならすまんがもうないぞ」
「なに言ってるのよ。パチュリー様の魔法で場所は割れてんのよ。言い訳は見苦しいわ」
「まあ残ってるっちゃー残ってるんだが」
なにか嫌な予感がするの。
魔理沙はぽりぽりと頭をかきながら、奥の衣装棚に向かって、そこからなにやら灰色の物体をとりだしたのでした。
灰色?
いやーな予感が五割増しなの。
「えーっと。なにこれ?」
「ちょっと前にな、テストスレイブって技を思いついて、それの素体につかっちまった」
ふ。
ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
マジカル咲夜ちゃんスターの淡いファンタジックパープルは無残にも金属色に成り果ててしまっていたのでした。
ふえーん。
マジカル咲夜ちゃんスターが。
咲夜ちゃんの無二の友が。
こんな灰色の球になっちゃうなんて。
「なんてことしてくれんのよ」
「さすがパチュリーが作ったやつだけあって、魔力が通るわ通るわ。実験は大成功って感じだったぜ? 使い勝手は悪そうだったがな」
「そんなこと聞いてないし!」
「またパチュリーに作ってもらえばいいじゃないか」
「マジカル咲夜ちゃんスターは無二の親友さんなの!」
「ま、マジカル咲夜ちゃんスター?」
「バカバカバカぁ。魔理沙ちゃんなんて大嫌いなんだから!」
「魔理沙ちゃん?」
「あ」
「ん?」
「いまのなしで」
「いや、なにがなにやらわからないんだが」
「いまのはわたしのなかに封印された第二の人格が解き放たれたにすぎない……」
「キリッってしても無駄だぜ」
「いやああああああ、いますぐ忘れなさい。忘れろ。忘れるまで殴る!」
「わあああああ待て待て」
乙女の秘密を知ったからには生かしてはおけないの。
魔理沙ちゃんには尊い犠牲になってもらう。
それからあとはまったく無駄な弾幕ごっこが二十分は続いたの……。
「はぁはぁ……、いきなりなんだよ。おまえ」
大きく息をついてる魔理沙ちゃんの隣で、わたしは体育座りしていた。
ZUUUUUUUNって感じ。
とってもZUUUUUUUUNって感じなの。
気分は最悪を通り越して深海のなかに沈みこんでるみたい。
だってマジカル咲夜ちゃんスターは見るも無残な姿に成り果てちゃってし、魔理沙ちゃんにはわたしが少女趣味思考をしていることがバレちゃったの。
もう生きる資格ないかもしんない。
家族にロリコンだってバレたときってこんな気持ちかなー、ハハ笑うしかないや。
「要するにそれがおまえの素ってことか」
「笑いなさいよ」
「なんで?」
「だってわたしは女の子っていうよりも大人って感じでしょ。現に見た目年齢だけなら魔理沙と霊夢よりも年上に見られること多いし、紅魔館はロリばっかなのよ。心のオアシスは美鈴だけよ。でも美鈴は門番だし館の中にはあまりいない」
「おまえが美鈴にナイフ刺しまくってるのはもしかしてそのせいか」
「ええそうよ。わたしと同じぐらいの年齢に見えるから劣等感を抱かなくてすんだのよー!」
咲夜ちゃんは弱い子でした。
「べつに笑わないぜ」
「え?」
「それがおまえの本来の姿なんだろ。だったらそのままのおまえのほうがいいに決まってる。それをわたしは笑ったりはしない」
ああ。
魔理沙ちゃん神様みたいですー。
「もしかして吸血鬼にならないのもそのせいか」
「うん、そう。だって咲夜ちゃんはあまりかわいくないもの。こんな醜い姿のまま固定されるなんて絶対にいやよ」
「普通に美少女の類だと思うんだがなー」
「魔理沙ちゃんみたいにかわいくないじゃない」
「照れるぜその言い方」
「わたしなんて変にひょろ長いし、無駄に鋭い目つきしてるし」
「モデルみたいな体型っていうんだろうけどな」
「ともかく吸血鬼にはなりたくなかったの。もしももっとかわいいときだったら一も二もなくうなずいたんだろうけど」
「いやでもさぁ、人間のほうが圧倒的に老化早いだろ。いまのうちになっとかないともっと後悔するんじゃないか」
「もう咲夜ちゃんに残された希望は転生しかないの」
「おもいつめてんなぁ……。だがな咲夜」
「なによ」
「おまえは自分で思ってるよりも十分かわいい」
「うそだ!」
「うそじゃない。そもそもかわいいという価値観は周りから言われるから生まれるもんなんだぜ」
「周りからかわいいと言われればかわいいってこと?」
「ああそうだ。つまりかわいいとは相対的なかわいさなんだ」
「本当にそうなのかしら」
「ああ、美少女はかわいいかわいいといわれて初めて美少女になるんだぜ」
ああ。
魔理沙ちゃん教祖さまみたいですー。
「でも過ぎ去ってしまったときは戻せないわ。もうかわいらしい女の子だった時は戻らないの」
「基本的にかわいさというのは子どもっぽいってことだから、おまえが若ければ若いほどいいって発想は正しいな。しかし、ここでもう一度思い出してほしい。わたしは言ったよな、かわいさとは相対的な数値だって。だったら周りが年をとればとるほどおまえのかわいさポイントはあがっていくってことだ」
「なるほど理論はわかった……けど」
ハッ。
まさかそういうことなの?
「気づいたな。おまえには時を操る能力があるだろう。時というのは未来に進むもの。ゆえに過去に戻すのは難しく未来に進むのはたやすい。おまえは周りの時間を加速させればいいんだよ。そうすれば未来においておまえはまぎれもないかわいらしい女の子だ」
ああ。
魔理沙ちゃんあなたが神か。
それからあと。
わたしは魔理沙ちゃんとしっかりと握手をして別れた。
これが今生の別れになるかもしれないから、わたしは臆面もなく泣いた。だって女の子だもん。
紅魔館に戻った咲夜ちゃんはお嬢様にすべてをお話した。
咲夜ちゃんが少女趣味であること、かわいさポイントをあげるために周りの時間を加速すること、その間自分が無防備になるから守ってほしいと伝えた。周りの時間が加速するってことは、咲夜ちゃん主観でいえば、一秒の間に何年も経過するってことと同じ。逆に言えば、周りが超加速してるってことだから、わたしを害そうと思えば誰でも可能ってことになる。だから誰かに守ってもらわなければならない。客観時間で千年か二千年か。ともかく、お嬢様方が咲夜ちゃんより見た目的に大人になるまで、それは続く。
お嬢様はしばらく驚いていたが、すぐに快諾してくださった。
やっぱりお嬢様はぷりちーだがカリスマだ。
ああ、でもこのぷりちーな姿も見納めだと思うと名残おしい。
最後にお嬢様からの充電行為。
それから――。
紅魔館の地下。
もともと妹様が使っていた地下の部屋。
周りは鉄格子で覆われ、そのうえからさらにパチュリー様の魔法がかけられてる。
そこにいまでも咲夜ちゃんが彫像のようにたたずんでいるのは、そういった理由からなのです。
みんなばいばい!
いつかかわいい女の子だと思われる日を夢見て。
どや顔ダブルピース☆
時間を加速し終えた後はどうなるんだろう・・・
馬鹿な真似は止めて戻ってきておくれー!
以前どこかで見た、意識だけ5億年過ごす装置の話を思い出した。
うざさと可愛さのバランスが絶妙で面白かった。しかしラストはこれでええのんか?
そして予想もしなかったオチ!
面白かったです。
咲夜ちゃんイイネ!
もらっていいですか?
脱帽という他ないw
高橋葉介を思い出してしまった。
途中素が出た所はツボに入りました。
咲夜ちゃんは今でも十分かわいいよ
あと、なんかPCゲーのマーガレットスフィアの茉を思い出した
おもしろかったです。
いい具合に二連続で騙された。
けど最後が切なすぎるので何とかしてください待ってます
咲夜ちゃんに祝福あれ。
労働基準法なんてなかった。
まあ紅魔館の人たちは千年、二千年程度じゃどうにもならんだろうが……すっかり忘れ去られてそうだ、咲夜さん。
あと咲夜ちゃんは今のままでも十二分に可愛いと思います!
オチも本編とは違った意味でなんだこりゃ。
言いたいことは色々あるが、ただ一つだけ
小悪魔は美人系
というか咲夜さん無しで紅魔館大丈夫なのかよ!
読後感は有り得ないくらい悪かったけど「お見事」と言わざるを得ない。
スイーツ(笑)とはまた違うこのおぞましさは一体……
この辺りから吸い込まれて目が離せなくなりました。
そして吐き出されたところにすごいオチが待っていました。おもしろかったです。
うわぁ
すげぇ
おもしろかったです
自分の中でも過去最大のインパクト
オチ読めんかったw本当に残念な咲夜ちゃんw