目を瞑り、意識を自らの膚の下、身体の内奥へと傾ける。
そこには、一定の鼓動を刻み続ける部品が一つ。その部品が打ち鳴らす音こそが、僕の命の音。僕がここに存在する事を示す音。
そして今、僕がこの音に耳を傾けているのは、何も店に客がいない為に手持ち無沙汰になっているからではない。
この大事な部品が活動の限界を迎えてしまった者、もう二度とその命の音を聞く事が叶わないある人物に対して、思いを馳せていたからだ。
◆ ◆ ◆
ここにあるのは、いつもと変わらない日常。昨日という判子をそのまま今日の白紙に押しつけているのではないかと思えるくらい、平穏無事な毎日。
香霖堂では、相も変わらず閑古鳥がひっきりなしに喉自慢を行っているし、相も変わらず勝手に店に入り浸る連中が現れる。そう、日常というものが持つ一定の構造は、そうそう変わるものではないのだ。例え、大恩ある霧雨の親父さんが亡くなったからといって。僕の日常を支える屋台骨から、一本の柱が抜けたといって。
確かに、親父さんが亡くなった直後は僕も愕然としたし、その死を悼んで涙を流したりもした。彼を多かれ少なかれ知る人物は皆、何かしらの喪失感を抱いていた事と思う。
そして、恐らく僕の知る限り最もその衝撃を受け、しかし『さも何も気にしていない』として受け流そうとしていた少女の姿は、記憶の中にいまだ鮮明に残っている。結局は衝撃を受け流せず、人知れず涙を流そうとする少女に、それに相応しい場所として香霖堂を提供した記憶も共に。
しかし、時の流れとは最上の名医である。その死の痛みも、果てしない喪失感も、いつしか皆の中では『片がついた事』として置かれていく。親父さんの喪失という衝撃で僕の心についた傷跡も、時間の経過と共に瘡蓋となり、それが傷だったとは分からない程度には癒えてきた。
そして今となっては親父さんについての話、もう決して会話を交わす事が叶わない死者についての話も、さして気にする事もなく自然に会話のやり口に登る程度にはなってきた。他でもない、それを口に出す事を最も避けていた相手との会話に置いて。
「そう言えば、私の親父とはいつ知り合ったんだ」
ふと、何とはない会話の合間に、魔理沙が僕にそう疑問を投げかけてきた。本当に何でもない風に、まるで明日の天気でも訪ねているかのように。
僕は魔理沙がその話題を口に出すのが心底意外だったので、思わず彼女の顔をまじまじと眺めてしまったほどだ。
「なんだ、私がこんな事を訊くのは意外か?」
「あぁ、まぁ。意外と言えば意外だし、意外ではないと言えば意外ではないね」
「なんだそれ。相変わらず中途半端な奴だぜ」
どうやら表情にありありと心情が出てしまっていたらしい。見事に考えを見透かされてしまった。
しかし、魔理沙も少しは意地を張り続ける馬鹿らしさを学んでくれたようだ。この調子でツケを貯め続ける馬鹿らしさも学んで欲しいものだが。
それにしても、僕と親父さんとの出会いか。それを彼女に語る事を、僕としては少々躊躇わざるを得ない。何故ならそれは、僕の思い出したくもない過去を見返す事にも直結してしまうからだ。
「男はね、自分の過去を語らない生き物なんだよ。それが格好悪いと思い込んでいるからね」
僕は躊躇いの結果、ここは誤魔化しておこうと決意し、その旨を魔理沙へ伝える。まぁ、この答えで彼女が納得するとは到底考えていないので、これは次の手を考えるまでの時間稼ぎといった所だ。
「香霖が格好悪いのは、既に周知の事実だから気にする必要はないぜ。今更どんな話を聞かされようが私の評価は変わらない」
「そうかい、そいつは光栄だね」
魔理沙は何故だか心底楽しそうに笑いながら、そんな事を僕へと言ってきた。全く、彼女の中で僕は一体どのような評価を受けているのだか。
まぁ、楽しそうなのだから、そのまま放っておくのがこの際得策なのかも知れない。
僕は暫くは適当に魔理沙の言葉を受け流しておく事と、彼女には決して僕の過去を語らない事を決めると、静かに目を閉じる。
視覚が閉ざされ、それに伴い他の感覚が次第に研ぎ澄まされて行く。そうして鋭敏になった知覚が真っ先に見付けるのは、一番近くで絶え間なく音を発し続ける物体。他でもない、僕の命の元。身体の中心で稼動し続ける心の臓。
この音を聴きながら馳せる思いは、僕には一つしかない。他でもない霧雨の親父さん、彼と僕との出会いの事、そして彼から受けた教えの事だ。
◆ ◆ ◆
端的に言って、僕は死に場所を探していた。
まぁ、死にたいと思って死に場所を探していたのではなかった。が、生きたいと思える理由も無しに、ただ何とはなしに日々を放浪していたのだから、死に場所を探しているのと同じようなものだろう。
そう、この世で生きていたい理由。それが僕には、どうにも見付けられなかった。
理由が見つからない理由自体ならば、幾らでも見つかる。
例えば、僕の生まれ。僕は人間と妖怪の間に生まれた合いの子で、その中途半端さ故に人間にも妖怪にも受け入れられなかった。
例えば、僕の見た目。僕の中には妖怪の血が流れていると言っても、今の見た目自体は人間の子供と限りなく近かった。しかし、この『限りなく』というのが曲者で、僕には普通の人間とは決定的に違う部分があった。それは、髪の色。何故だか僕の髪の色は、とても冷たい銀の色をしていたのだ。そのせいで僕は、人の輪に近付く度に自分が異質な存在であると気付かされる。
他にも、理由を挙げようと思えば限りなく見つかるだろう。でも、そんな事をしていても自分が空しくなる以上の効果は何も無いのだから、この辺りで切り上げておく事にする。
どうせ、生きていたくないという結論自体は変わらないのだから。
それでも、ここまで生きていたくないと考えている癖に、自分から死を選べない所に、僕自身の唾棄すべき弱さがあった。そう、一思いに自分の命を絶ってしまえば、最早こんな無意味な生を送る苦労をせずに済む。だというのに僕は、その一思いがどうにも思い切れないのだ。
これまで、何度もその一線を越えようと決心した事はあった。だというのに、いつもいつもうるさい邪魔が入るのだ。他でもない、僕の内側、僕の中心部分から。
その心の臓から響き渡る音は僕の頭蓋を震わせ、例えようもない痛みで僕を苛む。まるで僕の身体が、僕の意志とは関係なく生存権を主張するかのように。
それで僕はいつも、死ぬ事を諦めてしまうのだ。その結果、今まで無様に生を晒している。
生きる事を望まない癖に死ぬ事は出来ず、ただ死んでいないだけの生活を続けていた最中、僕はある男に出会った。
その日、僕は人里を外れた森の入り口で、ただ意味もなく木の根元に座り込んでいた。人里からそれなりに距離のあるこの森までは、人が来る事などそうそう無い。だから、誰かの嫌悪の目に晒される心配もなく、思う存分何もせずにいられると言う訳だ。
僕は、目は見えてはいても何も見ず、耳は聞こえていても何も聞かず、ただ空虚な心を抱えたまま地べたに座っていた。
「お前さん、そんな所で何をやっているんだ?」
何も聞く必要がなかったはずの耳に、突如飛び込んでくる誰かの声。あまりに急な意識の外からの攻撃に、僕はびくりとその身を震わす。
気付けば、僕の目の前には一人の男がいた。
しまった。僕は何をやっているんだ。こんな近くに人が来るまでぼうっとしているなんて。視界の端にでも見付けていれば、さっさと身を隠していたものを。
僕は内心で毒づく。そう、誰も来ないと心の中で思い込んでいたが故に、その男が目の前に現れるまで、僕は自分の視界の中に他人がいる事を認識できなかったのだ。
「……僕の事は放っておいてくれないか」
見つかってしまった以上仕方が無い。ここはさっさとやり過ごしてこの場を離れるに限る。どうせ向こうも、僕のような存在が近くにいる事なんて望まないだろうし。僕のような、人にあらざるものの存在なんて。
そう思いながら改めてその男の顔を見詰めた時、僕は驚いた。
男が僕へと送る視線には、今まで幾度となく僕が浴びてきた嫌悪という感情が、まるで込められていなかったからだ。そこにあったのは、寧ろ興味深いものを見付けたような表情。言ってしまえば、新しい玩具を見付けた子供のような表情だった。
「いやいや、放っておくなんてとんでもない。俺は、お前さんが何でこんな辺鄙な所に一人で座ってたのかが、そりゃもう気になってしょうがないんだ。さてさて、そこに座ってると何か面白いものでも見えるのか?」
「別にここに座ってたからと言って、何か特別なものが見える訳でもない。まぁ、随分と変わったものなら、今目の前に見えてるが。今すぐ帰って鏡を覗いても、きっと同じものが見られるから試してみると良い」
僕は男の視線に耐えられず、棘のある言葉を返す。これで、諦めて帰ってくれると気が休まるのだが。
しかし、男は何故こんな所に来たのだろうか。台車らしきものを引いている所から見て、ただの散歩という訳でもないだろう。台車を引いて散歩をする人間がいるとするならば、それはそれで充分な変わり者だが。
「へぇ、言ってくれるじゃねぇか。確かに俺も、変わり者とは散々揶揄されるがね。それでも、こんな所に一人でぼけっと座り込んでるあんたほど変わってはいないと思うが」
僕の考えとは裏腹に、男はまるでこの場を離れるそぶりを見せない。全く、一体何故僕のような得体の知れないものなんかに、こんなにも関わろうとするのか。僕の頭ではどうにもそれが理解出来ず、帰ってこの男の方が得体の知れないもののようにさえ思えてくる。
「あぁそうさ、僕は普通の人間と比べて変わっている。まるで別物のように」
もしかしたら、有り得ないとは思えるが、この男はまだ僕の事を『里外れに一人佇む変わった子供』だと思って接しているのかもしれない。だからこそ、こんなに不用心なのだ。自分が危険な目に遭う事なんて露にも考えていないから。
ならば、判らせてやれば良い。自分が今話している相手は、人外の存在なのだと。近寄らないに越した事はない存在なのだと。
「そう、見てくれは君たちに似ていても、僕の中には化け物の血が流れてるんだ。その証左が、この髪の色さ。だから碌な目に遭わないうちに、さっさと立ち去った方が良い」
『こちらはいつでもお前をくびり殺せる』といった気概を込めて、男に告げる。実際は他人を殺す事はおろか、自分すら殺せない矮小な度胸の持ち主だという事を決して悟られないよう願いながら。
「化け物の血、ねぇ……」
僕の期待は儚く裏切られ、男はこちらの言葉にも全く動じず、どこか呆れたような表情で僕を見据え続けている。
何故だ。何故この男はこんなにも物怖じせずいられる。この期に及んで、僕がただの子供だと思い込んでいる訳でもあるまい。
「いや、面白いな。お前さんはその事実を、随分と嫌っているように見えるぜ。まるで、本当に殺したいのは自分自身だと言わんばかりにな」
ドクンと、僕の心臓が一つ大きな音を立てた。まるで男の言葉に頷いてみせたかのように。
この男と出会ってからは、まだ僅かな時間しか経っていない。交わした言葉さえ、二言三言だ。なのに、なのにこの男は、どうしてここまで正確に僕の内面を言い当ててみせる?
僕の内面はかつて無い程荒立ち、まともな思考すら出来ないほどになっていく。僕は思わず自らの胸を押さえ、俯いてしまった。そこを押さえていなければ、自分が弾け飛んでしまうような錯覚に襲われて。
「フムン、図星だったかな。まぁ、一つ落ち着いて俺の話を聞け」
息を荒げる僕の様子を見ても、男は変わらず平静を保っている。激昂した僕が飛び掛かっていたら、この男は一体どうするつもりだったのだろうか。自分が襲いかかられる事なんて、初めから想像していないのだろうか。
しかし僕としても、男に飛び掛かる気などは到底無かった。今はただ、自らの気を落ち着かせる事に精一杯だったから。
「俺は今、もうすぐ開く事になる自分の店を準備している最中でな。それで、今日もその為の仕入れとしてこんな里の外れまで来てる訳だ。何か面白いものはあるかってな」
どうやら男は、商品の仕入れの為にここまで足を運んだのだと言う。しかし、こんな所で何が見つかると思っていたのだろうか。まともに売れる物などきっと何も見つからないだろうと言う事は、今だ落ち着かない僕の頭でも判る。
「結局仕入れは無駄足に終わった、と。それで、その話を僕にする意味はなんだい? まさか僕にその店に客として来いとでも? だったら答えは『お断り』だ」
この男の言動は、いちいち僕の理解の範疇を超えてくる。だから先の言葉の真意も測る事が出来ず、僕としては『きっとこういう事が言いたいのだろう』と当て推量をし、それに答えるくらいの事しか出来ない。
「お、お前さんいい勘してるな。だが、惜しい。俺の言いたかったのは『もうすぐ開店だが人手が足りなくて困っている』って事だ」
「じゃあ……僕を雇い入れるとでも言いたいのかい?」
やはり、男の考えは僕の想像を超えていたようだ。そうなればこちらとしてはもうお手上げで、あとは当てずっぽうで適当な事を言う他ない。なので、僕は冗談を言ったつもりでそう答えた。
「おぉ、益々冴えてるな! 俄然お前に期待が持てるぜ」
しかし何も考えずに適当に放った弾は、どうやら大当たりしてしまったようだ。
「馬鹿言うな!」
思わず、僕は声を荒げてしまう。毎度毎度、どうしてこうも見事に予想の斜め上を行くのか。一体全体、どういう理屈で僕を雇おうと思いつくのか。あれ程、僕は人間とは違うと言ったのにも関わらず。
「お前は客としてうちの店に来るのが『お断り』なんだろう。じゃあ店員としてなら『喜んで』って事だよな」
何なのだ、その無茶苦茶な理屈は。全く筋が通っていない。僕は軽い痛みすらを感じる頭を押さえながら、空を見上げる。
全く。何故この男の言葉は、いちいち僕の胸の鼓動を高鳴らせるのか。
そう、僕の内奥では先程より、鳴り止む事を知らない音が絶えず響いている。男の言葉に呼応するかのように。まるで、僕が男の言葉を待ち望んでいたかのように。
しかし鼓動の高鳴りに逆らうかのように、その音を止めたくて仕方が無い僕もまた、存在する。男の言葉に応えて人里を訪れれば、きっと嫌な目に遭う事は想像に難くないからだ。それならば今まで通り、一人でいた方が良いとも思える。
二つの思いがせめぎ合った結果、僕は何を言って良いのかが判らず、ただ縋るような思いで男の表情を見詰める事しか出来なかった。
「お前さん、どうせ『自分には化け物の血が流れてる。人間とは違うから、上手くいくはずがない』とかそんな事を考えているんだろう」
男が、再び僕の内面を見透かしてみせる。
そしてその顔に浮かぶのは、出会った時と同じ子供のような満面の笑み。
「いいから来いよ」
どこまでも、力強い言葉。有無を言わさず、どこまでも僕を引っ張っていってくれるような力が、この言の葉には乗っていた。
それに――と男は言葉を続ける。
「膚の下の事なんか人間には判らんからな、精々見てくれが似てれば客商売には充分だろう? 少なくとも俺はそう思ってるぜ」
男は言葉と共に、僕へとゆっくりとその手を差し出してくる。僕はその優しく伸ばされた手を、しっかりと握り返す。その手の暖かさに、僕は初めて、この鼓動を止めたくないと心の底から思えた。
◆ ◆ ◆
こうして、僕は男の店、つまり霧雨の親父さんの店で丁稚奉公を行う事になった。
まぁ、店に勤めてからも、それこそ枚挙にいとまがないほど様々な事があったのだが、それはまた別の話だ。
とにかく、親父さんに会った事で、僕は変われた訳だ。それまでの『誰にも判る訳無いと苦悩を気取り、冷めた視線で世の中を見ている』なんて恥ずかしい僕から。
そう、そんな恥ずかしい僕の過去を語りたくないから、この事については沈黙を守らざるを得ないのだ。
先程まで躍起になってこちらを問い詰めていた魔理沙も、のらりくらりと答えをはぐらかして一向に語ろうとしない僕に愛想を尽かしたのか、この話題を振る事を諦めたようだった。
「あーもういいぜ。よくよく考えてみれば、今日はこんな所で香霖の相手をしている場合じゃないんだ。何しろ今日は宴会だからな!」
「そうか、なら早く行った方が良いだろう。君がいないと宴会も盛り上がりに欠けるだろう」
僕はこれ幸いとばかりに、魔理沙を早く宴会に向かうように急かす。
しかしさっさと魔理沙を追い出したい考えとは裏腹に、僕には宴会に浮かれる彼女に訪ねたい事柄が一つ浮かんだ。
「魔理沙」
「ん、なんだ? もしかして香霖も行きたくなったか?」
扉を開き、半ば身体を店の外に出した状態のままで、魔理沙がこちらを振り向く。
「いや、そうではない。ただ、君に一つ聞きたいだけだ。最近の宴会は、天狗や鬼やと、寧ろ人間の方が少ないそうじゃないか。君はその少数派の人間として、彼女達のような所謂『化け物』と称されるもの達に関して、何か思う所はあったりするのかい?」
僕の中に浮かんだ疑問。それは、かつて僕が親父さんより向けられた視線を、魔理沙もまた他の誰かに向ける事が出来るのだろうか、膚の下の事など判らないという教えを知っているだろうか、という事だ。
もしも魔理沙が、自分とは違う存在を嫌悪の目で見詰めるという事があるのならば――それはいつか、僕自身にも向けられる可能性だってある。かつて親父さんに救われた身としては、その子である魔理沙がそのような事をするとは思いたくないという自分勝手な願いがあるのだが。
まぁ、さすがに疑問をそのままの形で訊く事は出来なかったので、我ながらかなり回りくどい訊き方になったと思える。
さて、魔理沙は何と答えてくれるだろうか。
「ま、確かにあいつらの見てくれは化け物かもしれない。羽やら角やら色々生えてたりもするからな」
けど――と魔理沙は言葉を続ける。
「その膚の下にあるものは、きっと私達と対して変わらないものだろう? 少なくとも、私はそう思ってるぜ」
魔理沙の返答に、僕の心臓が一つ大きな音を立てる。かつて、彼女の父親に会った時を思い出すかのように。
僕は思わず魔理沙へと視線を向けるが、こちらを見据える魔理沙の表情は、夕焼けの逆光に遮られて窺い知る事が出来なかった。
しかし僕には、その顔に浮かんでいるのは、きっといつもの満面の笑みだろうと確信出来た。きっと、親父さんと同じ、子供のような晴れやかな笑みだろうと。
そこには、一定の鼓動を刻み続ける部品が一つ。その部品が打ち鳴らす音こそが、僕の命の音。僕がここに存在する事を示す音。
そして今、僕がこの音に耳を傾けているのは、何も店に客がいない為に手持ち無沙汰になっているからではない。
この大事な部品が活動の限界を迎えてしまった者、もう二度とその命の音を聞く事が叶わないある人物に対して、思いを馳せていたからだ。
◆ ◆ ◆
ここにあるのは、いつもと変わらない日常。昨日という判子をそのまま今日の白紙に押しつけているのではないかと思えるくらい、平穏無事な毎日。
香霖堂では、相も変わらず閑古鳥がひっきりなしに喉自慢を行っているし、相も変わらず勝手に店に入り浸る連中が現れる。そう、日常というものが持つ一定の構造は、そうそう変わるものではないのだ。例え、大恩ある霧雨の親父さんが亡くなったからといって。僕の日常を支える屋台骨から、一本の柱が抜けたといって。
確かに、親父さんが亡くなった直後は僕も愕然としたし、その死を悼んで涙を流したりもした。彼を多かれ少なかれ知る人物は皆、何かしらの喪失感を抱いていた事と思う。
そして、恐らく僕の知る限り最もその衝撃を受け、しかし『さも何も気にしていない』として受け流そうとしていた少女の姿は、記憶の中にいまだ鮮明に残っている。結局は衝撃を受け流せず、人知れず涙を流そうとする少女に、それに相応しい場所として香霖堂を提供した記憶も共に。
しかし、時の流れとは最上の名医である。その死の痛みも、果てしない喪失感も、いつしか皆の中では『片がついた事』として置かれていく。親父さんの喪失という衝撃で僕の心についた傷跡も、時間の経過と共に瘡蓋となり、それが傷だったとは分からない程度には癒えてきた。
そして今となっては親父さんについての話、もう決して会話を交わす事が叶わない死者についての話も、さして気にする事もなく自然に会話のやり口に登る程度にはなってきた。他でもない、それを口に出す事を最も避けていた相手との会話に置いて。
「そう言えば、私の親父とはいつ知り合ったんだ」
ふと、何とはない会話の合間に、魔理沙が僕にそう疑問を投げかけてきた。本当に何でもない風に、まるで明日の天気でも訪ねているかのように。
僕は魔理沙がその話題を口に出すのが心底意外だったので、思わず彼女の顔をまじまじと眺めてしまったほどだ。
「なんだ、私がこんな事を訊くのは意外か?」
「あぁ、まぁ。意外と言えば意外だし、意外ではないと言えば意外ではないね」
「なんだそれ。相変わらず中途半端な奴だぜ」
どうやら表情にありありと心情が出てしまっていたらしい。見事に考えを見透かされてしまった。
しかし、魔理沙も少しは意地を張り続ける馬鹿らしさを学んでくれたようだ。この調子でツケを貯め続ける馬鹿らしさも学んで欲しいものだが。
それにしても、僕と親父さんとの出会いか。それを彼女に語る事を、僕としては少々躊躇わざるを得ない。何故ならそれは、僕の思い出したくもない過去を見返す事にも直結してしまうからだ。
「男はね、自分の過去を語らない生き物なんだよ。それが格好悪いと思い込んでいるからね」
僕は躊躇いの結果、ここは誤魔化しておこうと決意し、その旨を魔理沙へ伝える。まぁ、この答えで彼女が納得するとは到底考えていないので、これは次の手を考えるまでの時間稼ぎといった所だ。
「香霖が格好悪いのは、既に周知の事実だから気にする必要はないぜ。今更どんな話を聞かされようが私の評価は変わらない」
「そうかい、そいつは光栄だね」
魔理沙は何故だか心底楽しそうに笑いながら、そんな事を僕へと言ってきた。全く、彼女の中で僕は一体どのような評価を受けているのだか。
まぁ、楽しそうなのだから、そのまま放っておくのがこの際得策なのかも知れない。
僕は暫くは適当に魔理沙の言葉を受け流しておく事と、彼女には決して僕の過去を語らない事を決めると、静かに目を閉じる。
視覚が閉ざされ、それに伴い他の感覚が次第に研ぎ澄まされて行く。そうして鋭敏になった知覚が真っ先に見付けるのは、一番近くで絶え間なく音を発し続ける物体。他でもない、僕の命の元。身体の中心で稼動し続ける心の臓。
この音を聴きながら馳せる思いは、僕には一つしかない。他でもない霧雨の親父さん、彼と僕との出会いの事、そして彼から受けた教えの事だ。
◆ ◆ ◆
端的に言って、僕は死に場所を探していた。
まぁ、死にたいと思って死に場所を探していたのではなかった。が、生きたいと思える理由も無しに、ただ何とはなしに日々を放浪していたのだから、死に場所を探しているのと同じようなものだろう。
そう、この世で生きていたい理由。それが僕には、どうにも見付けられなかった。
理由が見つからない理由自体ならば、幾らでも見つかる。
例えば、僕の生まれ。僕は人間と妖怪の間に生まれた合いの子で、その中途半端さ故に人間にも妖怪にも受け入れられなかった。
例えば、僕の見た目。僕の中には妖怪の血が流れていると言っても、今の見た目自体は人間の子供と限りなく近かった。しかし、この『限りなく』というのが曲者で、僕には普通の人間とは決定的に違う部分があった。それは、髪の色。何故だか僕の髪の色は、とても冷たい銀の色をしていたのだ。そのせいで僕は、人の輪に近付く度に自分が異質な存在であると気付かされる。
他にも、理由を挙げようと思えば限りなく見つかるだろう。でも、そんな事をしていても自分が空しくなる以上の効果は何も無いのだから、この辺りで切り上げておく事にする。
どうせ、生きていたくないという結論自体は変わらないのだから。
それでも、ここまで生きていたくないと考えている癖に、自分から死を選べない所に、僕自身の唾棄すべき弱さがあった。そう、一思いに自分の命を絶ってしまえば、最早こんな無意味な生を送る苦労をせずに済む。だというのに僕は、その一思いがどうにも思い切れないのだ。
これまで、何度もその一線を越えようと決心した事はあった。だというのに、いつもいつもうるさい邪魔が入るのだ。他でもない、僕の内側、僕の中心部分から。
その心の臓から響き渡る音は僕の頭蓋を震わせ、例えようもない痛みで僕を苛む。まるで僕の身体が、僕の意志とは関係なく生存権を主張するかのように。
それで僕はいつも、死ぬ事を諦めてしまうのだ。その結果、今まで無様に生を晒している。
生きる事を望まない癖に死ぬ事は出来ず、ただ死んでいないだけの生活を続けていた最中、僕はある男に出会った。
その日、僕は人里を外れた森の入り口で、ただ意味もなく木の根元に座り込んでいた。人里からそれなりに距離のあるこの森までは、人が来る事などそうそう無い。だから、誰かの嫌悪の目に晒される心配もなく、思う存分何もせずにいられると言う訳だ。
僕は、目は見えてはいても何も見ず、耳は聞こえていても何も聞かず、ただ空虚な心を抱えたまま地べたに座っていた。
「お前さん、そんな所で何をやっているんだ?」
何も聞く必要がなかったはずの耳に、突如飛び込んでくる誰かの声。あまりに急な意識の外からの攻撃に、僕はびくりとその身を震わす。
気付けば、僕の目の前には一人の男がいた。
しまった。僕は何をやっているんだ。こんな近くに人が来るまでぼうっとしているなんて。視界の端にでも見付けていれば、さっさと身を隠していたものを。
僕は内心で毒づく。そう、誰も来ないと心の中で思い込んでいたが故に、その男が目の前に現れるまで、僕は自分の視界の中に他人がいる事を認識できなかったのだ。
「……僕の事は放っておいてくれないか」
見つかってしまった以上仕方が無い。ここはさっさとやり過ごしてこの場を離れるに限る。どうせ向こうも、僕のような存在が近くにいる事なんて望まないだろうし。僕のような、人にあらざるものの存在なんて。
そう思いながら改めてその男の顔を見詰めた時、僕は驚いた。
男が僕へと送る視線には、今まで幾度となく僕が浴びてきた嫌悪という感情が、まるで込められていなかったからだ。そこにあったのは、寧ろ興味深いものを見付けたような表情。言ってしまえば、新しい玩具を見付けた子供のような表情だった。
「いやいや、放っておくなんてとんでもない。俺は、お前さんが何でこんな辺鄙な所に一人で座ってたのかが、そりゃもう気になってしょうがないんだ。さてさて、そこに座ってると何か面白いものでも見えるのか?」
「別にここに座ってたからと言って、何か特別なものが見える訳でもない。まぁ、随分と変わったものなら、今目の前に見えてるが。今すぐ帰って鏡を覗いても、きっと同じものが見られるから試してみると良い」
僕は男の視線に耐えられず、棘のある言葉を返す。これで、諦めて帰ってくれると気が休まるのだが。
しかし、男は何故こんな所に来たのだろうか。台車らしきものを引いている所から見て、ただの散歩という訳でもないだろう。台車を引いて散歩をする人間がいるとするならば、それはそれで充分な変わり者だが。
「へぇ、言ってくれるじゃねぇか。確かに俺も、変わり者とは散々揶揄されるがね。それでも、こんな所に一人でぼけっと座り込んでるあんたほど変わってはいないと思うが」
僕の考えとは裏腹に、男はまるでこの場を離れるそぶりを見せない。全く、一体何故僕のような得体の知れないものなんかに、こんなにも関わろうとするのか。僕の頭ではどうにもそれが理解出来ず、帰ってこの男の方が得体の知れないもののようにさえ思えてくる。
「あぁそうさ、僕は普通の人間と比べて変わっている。まるで別物のように」
もしかしたら、有り得ないとは思えるが、この男はまだ僕の事を『里外れに一人佇む変わった子供』だと思って接しているのかもしれない。だからこそ、こんなに不用心なのだ。自分が危険な目に遭う事なんて露にも考えていないから。
ならば、判らせてやれば良い。自分が今話している相手は、人外の存在なのだと。近寄らないに越した事はない存在なのだと。
「そう、見てくれは君たちに似ていても、僕の中には化け物の血が流れてるんだ。その証左が、この髪の色さ。だから碌な目に遭わないうちに、さっさと立ち去った方が良い」
『こちらはいつでもお前をくびり殺せる』といった気概を込めて、男に告げる。実際は他人を殺す事はおろか、自分すら殺せない矮小な度胸の持ち主だという事を決して悟られないよう願いながら。
「化け物の血、ねぇ……」
僕の期待は儚く裏切られ、男はこちらの言葉にも全く動じず、どこか呆れたような表情で僕を見据え続けている。
何故だ。何故この男はこんなにも物怖じせずいられる。この期に及んで、僕がただの子供だと思い込んでいる訳でもあるまい。
「いや、面白いな。お前さんはその事実を、随分と嫌っているように見えるぜ。まるで、本当に殺したいのは自分自身だと言わんばかりにな」
ドクンと、僕の心臓が一つ大きな音を立てた。まるで男の言葉に頷いてみせたかのように。
この男と出会ってからは、まだ僅かな時間しか経っていない。交わした言葉さえ、二言三言だ。なのに、なのにこの男は、どうしてここまで正確に僕の内面を言い当ててみせる?
僕の内面はかつて無い程荒立ち、まともな思考すら出来ないほどになっていく。僕は思わず自らの胸を押さえ、俯いてしまった。そこを押さえていなければ、自分が弾け飛んでしまうような錯覚に襲われて。
「フムン、図星だったかな。まぁ、一つ落ち着いて俺の話を聞け」
息を荒げる僕の様子を見ても、男は変わらず平静を保っている。激昂した僕が飛び掛かっていたら、この男は一体どうするつもりだったのだろうか。自分が襲いかかられる事なんて、初めから想像していないのだろうか。
しかし僕としても、男に飛び掛かる気などは到底無かった。今はただ、自らの気を落ち着かせる事に精一杯だったから。
「俺は今、もうすぐ開く事になる自分の店を準備している最中でな。それで、今日もその為の仕入れとしてこんな里の外れまで来てる訳だ。何か面白いものはあるかってな」
どうやら男は、商品の仕入れの為にここまで足を運んだのだと言う。しかし、こんな所で何が見つかると思っていたのだろうか。まともに売れる物などきっと何も見つからないだろうと言う事は、今だ落ち着かない僕の頭でも判る。
「結局仕入れは無駄足に終わった、と。それで、その話を僕にする意味はなんだい? まさか僕にその店に客として来いとでも? だったら答えは『お断り』だ」
この男の言動は、いちいち僕の理解の範疇を超えてくる。だから先の言葉の真意も測る事が出来ず、僕としては『きっとこういう事が言いたいのだろう』と当て推量をし、それに答えるくらいの事しか出来ない。
「お、お前さんいい勘してるな。だが、惜しい。俺の言いたかったのは『もうすぐ開店だが人手が足りなくて困っている』って事だ」
「じゃあ……僕を雇い入れるとでも言いたいのかい?」
やはり、男の考えは僕の想像を超えていたようだ。そうなればこちらとしてはもうお手上げで、あとは当てずっぽうで適当な事を言う他ない。なので、僕は冗談を言ったつもりでそう答えた。
「おぉ、益々冴えてるな! 俄然お前に期待が持てるぜ」
しかし何も考えずに適当に放った弾は、どうやら大当たりしてしまったようだ。
「馬鹿言うな!」
思わず、僕は声を荒げてしまう。毎度毎度、どうしてこうも見事に予想の斜め上を行くのか。一体全体、どういう理屈で僕を雇おうと思いつくのか。あれ程、僕は人間とは違うと言ったのにも関わらず。
「お前は客としてうちの店に来るのが『お断り』なんだろう。じゃあ店員としてなら『喜んで』って事だよな」
何なのだ、その無茶苦茶な理屈は。全く筋が通っていない。僕は軽い痛みすらを感じる頭を押さえながら、空を見上げる。
全く。何故この男の言葉は、いちいち僕の胸の鼓動を高鳴らせるのか。
そう、僕の内奥では先程より、鳴り止む事を知らない音が絶えず響いている。男の言葉に呼応するかのように。まるで、僕が男の言葉を待ち望んでいたかのように。
しかし鼓動の高鳴りに逆らうかのように、その音を止めたくて仕方が無い僕もまた、存在する。男の言葉に応えて人里を訪れれば、きっと嫌な目に遭う事は想像に難くないからだ。それならば今まで通り、一人でいた方が良いとも思える。
二つの思いがせめぎ合った結果、僕は何を言って良いのかが判らず、ただ縋るような思いで男の表情を見詰める事しか出来なかった。
「お前さん、どうせ『自分には化け物の血が流れてる。人間とは違うから、上手くいくはずがない』とかそんな事を考えているんだろう」
男が、再び僕の内面を見透かしてみせる。
そしてその顔に浮かぶのは、出会った時と同じ子供のような満面の笑み。
「いいから来いよ」
どこまでも、力強い言葉。有無を言わさず、どこまでも僕を引っ張っていってくれるような力が、この言の葉には乗っていた。
それに――と男は言葉を続ける。
「膚の下の事なんか人間には判らんからな、精々見てくれが似てれば客商売には充分だろう? 少なくとも俺はそう思ってるぜ」
男は言葉と共に、僕へとゆっくりとその手を差し出してくる。僕はその優しく伸ばされた手を、しっかりと握り返す。その手の暖かさに、僕は初めて、この鼓動を止めたくないと心の底から思えた。
◆ ◆ ◆
こうして、僕は男の店、つまり霧雨の親父さんの店で丁稚奉公を行う事になった。
まぁ、店に勤めてからも、それこそ枚挙にいとまがないほど様々な事があったのだが、それはまた別の話だ。
とにかく、親父さんに会った事で、僕は変われた訳だ。それまでの『誰にも判る訳無いと苦悩を気取り、冷めた視線で世の中を見ている』なんて恥ずかしい僕から。
そう、そんな恥ずかしい僕の過去を語りたくないから、この事については沈黙を守らざるを得ないのだ。
先程まで躍起になってこちらを問い詰めていた魔理沙も、のらりくらりと答えをはぐらかして一向に語ろうとしない僕に愛想を尽かしたのか、この話題を振る事を諦めたようだった。
「あーもういいぜ。よくよく考えてみれば、今日はこんな所で香霖の相手をしている場合じゃないんだ。何しろ今日は宴会だからな!」
「そうか、なら早く行った方が良いだろう。君がいないと宴会も盛り上がりに欠けるだろう」
僕はこれ幸いとばかりに、魔理沙を早く宴会に向かうように急かす。
しかしさっさと魔理沙を追い出したい考えとは裏腹に、僕には宴会に浮かれる彼女に訪ねたい事柄が一つ浮かんだ。
「魔理沙」
「ん、なんだ? もしかして香霖も行きたくなったか?」
扉を開き、半ば身体を店の外に出した状態のままで、魔理沙がこちらを振り向く。
「いや、そうではない。ただ、君に一つ聞きたいだけだ。最近の宴会は、天狗や鬼やと、寧ろ人間の方が少ないそうじゃないか。君はその少数派の人間として、彼女達のような所謂『化け物』と称されるもの達に関して、何か思う所はあったりするのかい?」
僕の中に浮かんだ疑問。それは、かつて僕が親父さんより向けられた視線を、魔理沙もまた他の誰かに向ける事が出来るのだろうか、膚の下の事など判らないという教えを知っているだろうか、という事だ。
もしも魔理沙が、自分とは違う存在を嫌悪の目で見詰めるという事があるのならば――それはいつか、僕自身にも向けられる可能性だってある。かつて親父さんに救われた身としては、その子である魔理沙がそのような事をするとは思いたくないという自分勝手な願いがあるのだが。
まぁ、さすがに疑問をそのままの形で訊く事は出来なかったので、我ながらかなり回りくどい訊き方になったと思える。
さて、魔理沙は何と答えてくれるだろうか。
「ま、確かにあいつらの見てくれは化け物かもしれない。羽やら角やら色々生えてたりもするからな」
けど――と魔理沙は言葉を続ける。
「その膚の下にあるものは、きっと私達と対して変わらないものだろう? 少なくとも、私はそう思ってるぜ」
魔理沙の返答に、僕の心臓が一つ大きな音を立てる。かつて、彼女の父親に会った時を思い出すかのように。
僕は思わず魔理沙へと視線を向けるが、こちらを見据える魔理沙の表情は、夕焼けの逆光に遮られて窺い知る事が出来なかった。
しかし僕には、その顔に浮かんでいるのは、きっといつもの満面の笑みだろうと確信出来た。きっと、親父さんと同じ、子供のような晴れやかな笑みだろうと。
親父さんマジかっけえ
親父さんとの出会いを考えるのも面白いですよね。
そしてフムンの源流をしることができました
でも後書きやりたかっただけだろうw