当主である吸血鬼を始め、妖怪に魔法使い、妖精の住まう紅魔館で生活する、ただ一人の人間。
十六夜咲夜。
その名を聞けば、多くの者が憧れと賞賛の言葉を口にするだろう。
事実、彼女が里へと出向けば、老若男女の視線が集まってくる。
部下の妖精メイド達からは尊敬され、レミリアからの信頼も篤い。
仕事ぶりも凄まじく、彼女がいなければ紅魔館は一週間でゴミ屋敷に姿を変えると噂されている。
まさに、自他共に認めるパーフェクトメイドである。
スクリュー・キッドも真っ青だ。
そんな彼女なのだが‥‥
「咲夜の様子がおかしい?」
「そうなんですよ。あ、ちょっと足退けてもらっていいです?」
「あ、ごめん」
退屈を持て余し、館内をうろついていたレミリアに、廊下を清掃中だった一匹の妖精メイドが声をかけた。
少なくとも、主人を主人と思わないスキルを得ている程度には古株であるようだ。
「どんな風におかしいの?」
「なんていうんですかね‥‥こう、時々ぼーっとしているのをお見かけするようになったんですよ。普段はそんな姿、絶対見せないのに」
「ふうん? どうしたのかしら。疲れが溜まってるとか‥‥最近、あなた達忙しいの?」
「忙しいといえば、いつも忙しいですけどね。特別、普段以上にって事は無いですよ」
「そう。うん、わかった。私も注意して見ておくわ。ありがとうね」
「いえいえ。それでは、私は掃除を続けますので」
「頑張ってね。私は邪魔にならないように、図書館でも行ってくるわ」
「あ、お嬢様」
ヒラヒラと手を振り、立ち去ろうとするレミリアを呼び止めるメイド。
「今日の御三時は、アップルパイですよ。幸運にも、極上のリンゴが手に入りました」
その言葉に、羽根をピコピコ動かすレミリア。
紅魔館の従者たる者、主を喜ばせる事を疎かにしてはいけないのだ。
「‥‥と、いうわけらしいのよね」
「そう」
図書館を訪れたレミリアは、メイドから聞いた話をパチュリーに打ち明ける。
「どうしたものかしら」
「そんなに美味しそうなおやつが出てくるなら、今からお腹を空かせておいた方がいいかもね」
「そうね。空腹は最高の調味料って言うし、お昼ご飯は少なめにしようかしら。いやいや、そっちじゃなくて」
「冗談よ」
読みかけの本に栞を挟んで閉じるパチュリー。
どうやら今のは、キリのいいところまで本を読むための時間稼ぎだったようだ。
「と言っても、少し多めに休みを与えるくらいしか出来ないんじゃない? 疲れが溜まっているという線が濃厚みたいだし」
「そうなんだけどね。あの子、人間でしょう? 万一にも変な病気とかだったら、心配じゃない」
「まあ、そうね。とりあえず、気を付けて見ておきましょう。私も咲夜に会う時には、なるべく気にしてみるわ」
「お願いね。あら?」
その時、レミリアの視界に妖精メイドが映る。
先のメイドとは別人だった。
「これはお嬢様。ご機嫌麗しゅう」
「あ、何か今、久しぶりに本当のお嬢様扱いされた気がする」
スカートの裾を摘まんで一礼するメイドの姿に、軽い感動を覚えるレミリア。
こういうのが真の主従の姿ではなかろうか、と。
よく考えれば、主人に片足を上げさせてモップをかけるメイドなんて、どうかしている。
「どうかなさいまして?」
「いやいや、こっちの事。あなたはどうしたの? 休憩?」
「はい。今の休憩中に、本を読み終えたので、返却しに参ったのです。パチュリー様、ありがとうございました」
「その辺に置いておいて頂戴。また何か読むなら、危険な魔道書じゃないか確認するから言ってね」
「へえ、あなた本が好きなの? うちのメイドにしちゃ珍しいわね」
紅魔館メイド衆は基本的に体育会系なのだ。
「どんな本読んでるの? えーと、何々‥‥」
『自機の邪魔する1000の秘訣~ボムと残機を削り取れ!~』
「え、何これ」
「はい、少しでもお嬢様のお役に立てるように、更に上達したいと思いまして」
「あなた、弾幕得意なの?」
「ここで働かせて頂く前は、妖々夢4面を縄張りにして暮らしてました」
「ああ‥‥」
咲夜も何度となく落とされた、エリート妖精の中の一匹である。
戦力としては申し分無い筈なのだが、レミリアはガックリと肩を落とす。
「お嬢様? どうかなさいまして?」
「あなたもド根性を原動力にするタイプだったのね‥‥」
「当然ですわ! 紅魔館のメイドたる者、一に根性二に気合、三四が元気で五にやる気! お嬢様のためならば、例え火の中水の中! 八雲紫の隙間の中にだって喜んで飛び込んで参ります!」
「頼もしいわね。愛されてるじゃない、レミィ」
他人事のように笑うパチュリー。
そんな親友を見たレミリアは、一見お上品なこのメイドに、悪魔の言葉をかける。
「本当に頼もしいわ。そうだわ。今度、小悪魔にもその元気を分けてあげて頂戴。そうすれば、この陰気な図書館も少しは改善されるでしょ」
「ちょっとレミィ!」
「仰せのままに。みっちりと話をしますわ」
「ちょっと!」
ささやかな復讐を果たし、満足気なレミリア。
これが切っ掛けで紅魔館の体育会系度が更に上がる事になるのだが、そんな事は知る由も無かった。
「あ、元気と言えば‥‥」
「ん? どうかした?」
「最近メイド長‥‥咲夜様が、どうも元気の無い様子でして」
「あら、あなたまで」
「はい?」
「さっき他の子からも、咲夜の体調が優れていなさそうだって報告を受けたのよ」
「やはり気のせいでは無かったんですね。こうしてはいられませんわ! 私、仕事に戻ります!」
レミリアの言葉を聞くと、メイドはクルリと踵を返す。
「へ? あなた、休憩中でしょう?」
「咲夜様の負担を減らすために、私ももう一頑張りしますわ! それではお嬢様、失礼いたします」
会った時と同じく、優雅な一礼と共に去って行く妖精メイドを見送るレミリア。
閉まった扉の向こうから響く、気合を入れ直す掛け声は聞こえなかった事にするレミリア。
「あの子はお上品なメイド」という幻想を捨て切れないのだった。
「さてと‥‥」
「あら、どこかに行くの?」
「ええ。主人である私が気付かない事を、メイド達は知っていた。それでも部下の手前、それなりに上手く誤魔化している筈よ」
「つまり、主人でも部下でも無い‥‥同じ立場の同僚になら、もう少し油断した姿を見せているかも知れないって事?」
「その通りよ。今日は退屈な一日になるかと思ったけれど、存外忙しくなってきたわ」
「それだけ動きまわれば、お昼もおやつも美味しく食べられるんじゃない?」
「そうね。それじゃ、行ってくるわ」
「サボってないか、見回りに来たわよ」
「あ、お嬢様」
「ちょっと聞きたい事があるんだけれど」
「ひょっとして、咲夜さんの事だったりします?」
「あら、話が早いわ。何かあったの?」
「あったも無かったも‥‥」
美鈴は深い溜め息を吐く。
「お嬢様、咲夜さんが変なんですけど」
「変? やっぱり、様子がおかしいのね?」
「様子がおかしいって言うか‥‥変なんです」
「どういう事よ?」
「つい今さっきの事なんですけどね? 実は‥‥」
レミリアが図書館を訪ねた頃、美鈴は初冬の肌寒い風を感じながら、いつものように門前に立っていた。
遠くの方には、これまで以上に活発に飛び回る氷精や、最後の仕事に追われる秋の神の忙しそうな姿が見える。
「本日も 幻想郷は 平和也、美鈴心の一句‥‥っと。ふわあ‥‥」
大きな欠伸を一つ。
平和なのはいいが、何も無いというのもつまらない。
物騒では無い範囲で、何か変わった事は起こらないだろうか。
「なんて、これじゃまるで、お嬢様みたいだわ。反省反省」
そんな不謹慎な美鈴に、罰が当たったのかも知れない。
或いは、退屈を紛らわせる粋な計らいのつもりか。
ともかく、美鈴の背後に騒動の種が迫っていた。
「美鈴、元気にしてる?」
「おや、咲夜さん。元気ですよー」
背中越しに声をかけられて振り返ると、そこにはよく見知った相手が立っていた。
「そう。よかったわね」
「咲夜さんこそ、調子はどうで‥‥おや? 何だか、顔色が優れませんね?」
「わかる? あー、やっぱりわかっちゃうのねえ」
「へ?」
普段ならば、仮に体調が悪くても「大丈夫よ」の一言が返ってくる筈の場面。
こうもあっさり認めるとは、それほど辛いのだろうか。
美鈴が思案していると。
「あの、なんていうのかしら。体調が悪いってわけでも無いのだけれど、まあ、正直あんまり寝てないのよね」
「え、寝てないんですか?」
「いやいや、寝てないって言うか‥‥正確には寝てるのよ? うん、寝てる。全く寝てないって言うと、それはまあ、嘘になっちゃうんだけどね」
「はあ‥‥」
「でもまあ、睡眠時間が足りてるかって言われれば、はっきり言うと、はっきり言っちゃうと、まあ、足りてないのかな? みたいな」
「は、はあ‥‥あの、今は休憩中ですか?」
「うん」
「それなら、ちょっと寝てきた方がいいんじゃないですか?」
「そうね。でもほら、私、割と寝なくても大丈夫な方だから」
「いや、大丈夫って言っても‥‥」
「今日もね? 今日っていうか、ここ数日‥‥一週間くらいなんだけれどね? 睡眠時間、私の平均睡眠時間がね? どれくらいだと思う? ここでクイズ。私の今週の平均睡眠時間はどれくらいでしょーうか」
「え? ク、クイズって‥‥五時間くらいですか?」
「あー五時間、五時間寝たいわね。うん。それくらい寝られれば、大分嬉しいわよね。はずれー」
「‥‥あの、やっぱり、こんな事してないで、少しでも休んだ方が」
「正解は二時間でしたー」
「聞いてくださいよ」
「二時間って言ったら、あれよ? 思ってるより、あなたが思ってるより、案外短いわよ。想像より短い時間、それが二時間」
「いや、二時間は短いですよ。だから今の内にお休みに‥‥」
「あ、でも私ってほら、寝付き悪い方じゃない? だから実質、一時間半くらいっていう‥‥」
「いいから寝て下さいってば! そんな、咲夜さんの寝付きなんて知らないですし!」
「ああん、もう少し聞いてくれてもいいじゃないの。美鈴のいじわるー」
機関銃のように放たれる、咲夜の寝てないトークに耐えかねた美鈴が、咲夜を肩に担いで部屋まで連行。
ベッドに放り込み、眠るのを見届けてから門前に帰還。
尚、この時の昨夜は、寝付きの悪さなど微塵も感じさせなかった。
それから数分も経たない内に、レミリアが現れたのだった。
「と、いう感じです」
「それは‥‥確かに、変としか言いようがないわね」
「お嬢様ったら、何か我儘でも言ったんですか? 咲夜さんの睡眠時間を毟り取るようなレベルの」
「失礼ね。言ってな‥‥言ってないわよ」
「なんでちょっと考えたんですか」
「うっさい。大体、仮に私が無理難題を言ったとしてもよ? 咲夜なら、時間を止めて寝れるじゃないの」
「それは確かに‥‥ん?」
ここまで来て、二人は一つの仮説に思い当たる。
「能力が‥‥」
「使えなくなってる?」
「‥‥‥‥」
沈黙の中、目と目を合わせる主人と門番。
こんな時、二人の取れる行動は一つしか無い。
「パチェー!」
「パチュリー様ー!」
紅魔館の頭脳、パチュリーに頼る事だった。
「無いわね。それは無い」
「へ?」
主従が二人揃って出した答えは、一蹴された。
「な、なんでですか!?」
「そうよ! いい? 考えてみなさいよ。咲夜が精神に異常を来すほどの眠気を感じながらも、時間を止めて休憩を取らない。能力が使えなくなっている以外に、考えられる理由はある?」
「その通りです。流石お嬢様」
「もっと褒めていいのよ」
珍しく、完璧な理論を以ってパチュリーをやり込められる。
そんな事を考えて得意気な表情の二人に、パチュリーは心底呆れたような溜め息を吐く。
「確かに、他に考えられる理由は今のところ見当たらないわね」
「でしょう?」
「ただね‥‥あなた達こそ、考えてみなさいよ。あの子が能力を使えなくなってるとしたら‥‥」
「したら?」
「私は今頃、本棚に潰されてペシャンコになっているわ」
「ん?」
「あ」
時間を操るのは空間を操るのと同義。
紅魔館内は、咲夜の能力によって今の面積を保っているのだ。
仮に咲夜が能力を失っているのならば、門前から図書館までもっと早く移動できたし、パチュリーは圧死しているのだ。
「私がピンピンしているのが何よりの証拠。随分と得意気に色々説明してくれたけど、考えが足りなかったみたいね。それも主従揃って。似た者同士なのね。もちろん悪い意味で」
「よし美鈴。図書館だけ咲夜の能力から外すように頼みましょう」
「御意。狭くなって入り切らなくなった分の本は、売り払いましょう」
「謝るからやめて」
魔女は、二人の結束の前に敢え無く敗退した。
「それはともかく、どうしようかしらね」
「やっぱり、咲夜さんに直接確かめるしか無いんじゃないですか?」
「そうね。とりあえず、今日一日は休ませて、起きてきたら話を聞きましょう。と、いうわけで」
「じゃ、じゃあ私はそろそろ門に‥‥」
「紅茶を淹れて頂戴」
「うわあ、やっぱり。私、咲夜さんの代わりなんて出来ませんよ?」
「安心なさい。メイドの仕事を全部代われだなんて言わないわ。ただ、私の身の回りの世話全般だけしてくれればいいのよ」
「それ、一番面倒なやつじゃないですかー。世界で一番面倒なやつじゃないですかー」
「うっさい。ほら、早く紅茶ー、紅茶ー」
「わあ、もう。わかったから離れてくださいよ」
「‥‥とりあえず、他でやってくれない?」
仲良く戯れていた二人は、仲良く追い出されるのであった。
咲夜が目を覚ますと、見知った天井が目に入った。
はて、自分はいつベッドに潜ったのだったか。
随分と長い時間眠っていたような感じがする。
これだけすっきりとした気分なのは、何日ぶりだろうか。
首を左右に倒すと、バキボキと軽快な音が鳴った。
体によくないと言われているが、咲夜の朝はこの行動から始まるのだ。
すっきりとしたところで、仕事着であるメイド服に着替え‥‥
もう着ている。
仕事をしやすい様に髪の毛を編んで‥‥
もう編んである。
なんとなく、記憶が呼び覚まされてきた。
恐る恐る時計を見る。
針の指している時刻は、自分が一番忙しく動き回っている筈の時間だった。
「きゃー! きゃー! きゃー! 何て事なの!」
咲夜は顔を真っ青にして、主人のいるであろう広間へ走る。
何と詫びればいいものか。
ふと脳裏に、寝坊した妖精メイドを叱った時の映像が蘇る。
あの時、あの子は何と言っていただろうか。
『しぃやせん、寝てたっす。二度寝しゃーした』
「言えるかー!」
何の解決にもなってくれなかった部下の幻影を頭から追い払い、咲夜は半泣きで広間へと急いだ。
「お嬢様ぁ!」
バタンと大きな扉を開け放ち、部屋に飛び込んだ時、そこでは館の面々が食事中だった。
「お嬢様! 申し訳ありません! 十六夜咲夜、一生の不覚です!」
「‥‥‥‥」
「主人の許しも得ずに睡眠を貪るなど、従者にあるまじき事です! 御許しください!」
「‥‥‥‥」
咲夜の必死の謝罪に、レミリアは言葉を返さない。
が、怒りで言葉が出ないわけでも、呆れ果てているわけでもない。
勢いよく開いた扉の音に驚き、丸呑みにしてしまったシシャモの頭が、喉に突き刺さっていたのだ。
しかし、そんな事を咲夜が知る由も無かった。
沈黙が重く圧し掛かり、まるで針の筵に座らされているかのように感じられる。
「お嬢様‥‥お怒りは御尤もです。かくなる上はこの咲夜‥‥」
「‥‥?」
「死にます!」
『ぶーっ!』
咲夜の突然の自決宣言に、その場で静観していた全員の口から味噌汁が霧になって宙を舞った。
「咲夜さま、お気を確かに!」
「何を考えてるんですか! ナイフをこちらに渡してください!」
「放して! 放してーっ!」
「お嬢様! メイド長に何か言ってください!」
「ん、んーっ! んーっ!」
「きゃあ! お姉様の顔が変な色になってきた!」
「水! 誰か水を!」
咲夜もパニック、レミリアもパニック。
メイド達も、美鈴も、パチュリーも、フランドールも、全員がパニック。
楽しかった夕食の時間が、地獄絵図へと変貌した。
「あー、死ぬかと思った‥‥」
「不滅の吸血鬼が、魚を喉に詰まらせて死ぬとか、勘弁してくださいよ」
「どうしてご飯食べてただけなのに、知人が二人もまとめて死にそうになってるのよ」
数分後、何とか窮地を脱した面々は、疲れ果てた表情で席に戻っていた。
咲夜も多少は落ち着きを取り戻し、気まずそうにしている。
「で、咲夜。どうなの? 疲れは取れた?」
「は、はい。お陰ですっかりと‥‥」
「美鈴に聞いたよー。咲夜って眠たいと、スーパーめんどくさい人になるんだってね」
「そ、それは‥‥」
咲夜をからかうようなフランドールの言葉に、美鈴に対して見せた自分の痴態を思い出す。
顔は真っ赤に染まり、手も震えている。
「やめなさいフラン。あんまりそこを突くと、今度は本当に死にかねないわ」
「それにフラン様。あの時の咲夜さんは、スーパーめんどくさいんじゃなくて、ウルトラめんどくさかったです」
「ぐぅ‥‥!」
「とどめを刺さないで」
美鈴の追撃で立ち直り難いダメージを負った咲夜に、レミリアが漸く本題を切り出す。
「で、咲夜。あなた、ここ何日か能力を‥‥時を止めてないの?」
「はい‥‥」
「やっぱりね。今まで時間を止めて、何とか回っていた仕事を、時間停止無しで同じ量こなしてたんじゃ、そりゃ眠る時間も無くなるわよ」
「申し訳ありません‥‥」
「それで? どうして時間を止めないの?」
「それは‥‥」
ここで咲夜の表情に変化が表れた。
非常に言いにくそうな、困ったような顔をしている。
しかし、元はと言えば自分の体調管理の甘さから生じた今回の騒動。
咲夜は正直に話し始めた。
「ご存じの通り、私は時間を操る事が出来ます。そして、その力を使って、今まで館の仕事をこなしてきました」
「ええ」
「時間停止の力を使えるからこそ、私は人間の身でありながら、紅魔館のメイド長の立場にいる事ができると言ってもいいのかも知れません」
「うーん‥‥それはどうかしらね‥‥」
「ですが、この能力にも、欠点があるんです。それは、周りの時間を止めていても、私自身の体は、時を刻み続けるという事です」
「‥‥‥‥」
「例えば、一日に十二時間分の時を止めたとすると、私は通常の人間の1.5倍の速度で成長して行くんです」
「言われてみれば、そうなるわね」
「もっと極端な話をすれば、霊夢や魔理沙が大人になる頃、私は老人になっている、という可能性もあるんです」
「咲夜‥‥ごめんなさいね。気付かなくて。そうよね。自分一人だけが、親しい人間達と別の時間を歩んで行くだなんて、辛いわよね‥‥」
レミリアが、神妙な面持ちで咲夜を見つめる。
考えてみれば、自分達と違って、ただでさえ短い人間の人生。
それを仕事のために、更に浪費させる事に今まで気が付いていなかったのだ。
レミリアは後悔し、改めて咲夜を始めとする、人間達との関わり方について、考えなければならないと感じていた。のだが。
「あ、いえ、そっちはまあ、いいんです」
「へ?」
「お嬢様に仕える以上、覚悟は出来ていますので」
「あ、あらそう?」
「いいえ、出来ていた、と言うべきなのかも知れません‥‥」
咲夜はふっと自嘲するように、思わせぶりな言葉を口にする。
「何か、今更そんな顔をされても、肩透かしの予感しかしないんだけれど」
「あれは、一週間ほど前‥‥私が能力の使用を抑えようと決意した日の事です」
「あなた、案外マイペースに話を続けるよね。いいけど」
「私は、食料の買い出しで里へ行っていたんです。必要な物を粗方買い揃え、最後の店‥‥八百屋に向かったんです」
「あー、もうダメだ。八百屋なんて言葉出てきたら、どう考えてもシリアスにならないわよ、これ」
「買い物を終えた私に、店主さんがこう言ったんです。『おや? 今日はお子さんは連れてきてないのかね?』って!」
「‥‥はあ?」
「『ほら、たまに一緒に買い物してるだろう? 青っぽい髪の子と、金髪の子。あれはお母さんに似て、美人になるよ』って!」
「えーと‥‥」
「私、お嬢様達の母親だと思われたんです! こんなに大きな子供がいる年齢だと思われたんですよ!」
「‥‥‥‥」
涙ぐむ咲夜。
しかし、それを見ている他の者の顔には、困惑の表情しか浮かんでいない。
「‥‥えっと、咲夜? それってつまり‥‥」
「はい」
「寿命とか身体能力とか、そういうのは別にいいけど、外見が倍速で老けていくのは我慢ならない‥‥って事?」
「そうです」
「‥‥じゃあ、とりあえず、仕事の内容とか見直しましょうか。無理しなくても何とかなるように」
「よろしいんですか!?」
「うん、まあ」
咲夜は感激しているようだが、レミリアからしてみると非常に複雑だった。
根本は同じなのかも知れないにせよ、霊夢達と違う時間を歩む悲哀、という前者の理由であって欲しかったのだ。
仕事を減らすという処置には変わりないかも知れない。
しかし、気分の盛り上がりが相当変わってくるではないか。
「ありがとうございます! それでは、食後のデザート作りに取り掛かりますね!」
「ええ、お願い」
そんなレミリアの心中は露知らず、主の寛大な心に感動した咲夜は、足取り軽くキッチンへ向かう。
その後ろ姿を眺める、レミリアを筆頭とする面々。
咲夜が去って暫く経った頃、レミリアが、その場にいる全員の気持ちを代弁した。
「‥‥辛いわ。こんな事だろうと途中から思ってたけど、予想以上に辛いわー‥‥」
その言葉に、美鈴やパチュリー、妖精達も、大きく頷くのだった。
仲良しな美鈴&お嬢様とか相変わらずどっかアレな妖精メイドちゃん達とか大好き
まさかプリズムリバー三姉妹の直前に出てきてボムを落とすあの妖精か!?
ありゃ妖精超えてるよ…強すぎるよ
あと咲夜さん可愛い
>味噌汁
和食も嗜むのか紅魔館一家w
微妙に噛み合わない、ちょっと人の話を聞いていない、こんな咲夜さんを待っていた。
読んでるだけで充分鬱陶しいわwww
メイド妖精たちのキャラもナイスだった
妖々夢4面は本当にきつい…
妖々夢4面のあの妖精を普通に従えてる紅魔館こえぇw
あなたの紅魔館が大好きです!
もし咲夜さんが小さい頃調子に乗って時間止めまくってたら…
実年齢は10歳くらいという可能性も…
ふぅ…
めんどくさくて人の話聞かない咲夜さんは最高にかわいいな
美鈴が他人にあまり遠慮しない、とてもいい性格していると思います。