私はここの所暇で暇で仕方がない。
以前は異変などもあり傍観したり、参加したり、そのあと行われる宴会もあり暇を潰すことが出来たが今はそんな宴会もなく面白そうな出来事もない。
やることがあると言えば花の管理くらいのものだ。
でも正直な事を言えば自分の能力で花の管理は万全なためやることは無く一人で散歩が最近の日課だ。
「今日はこっちに行って見ましょ」
いつもとは違う道を歩く。毎回同じなのもそろそろ飽きてきた。
空を飛ぶのもいいが上から下を見ても同じ風景ばかりで面白味にかける。下からの方が綺麗で心地の良い散歩になるのだ。
「湖か…どうりで涼しいわけね」
夏終わりとはいえまだまだ暑い日は続く。水は空の色を反射し蒼く光っている。寒色なため見ていて悪い気はしない。
しばらくの間湖のほとりで涼んでいると湖の真ん中に紅い館があるのに気が付いた。
「あぁ…吸血鬼の館か。暇つぶしに行ってみようかしら」
日差しで太陽の光を遮りながら紅魔館へと近づいていく。
次第に大きくなる館を見ながら昔自分の住んでいた館を思いだす。今思えばこんなにも大きかったのかと思う。懐かしい気持ちになりながら門の近くで誰かいるのに気がつく。
「銀髪にメイド服って咲夜?」
「誰かと思ったら幽香…さん」
「何よその一瞬の間は」
「いえいえやはりさんは付けるべきかどうか少々悩みまして」
特にツッコミはしなかったものの「何百倍もあなたより生きている事を考えれば付けるでしょ」と言うのも面倒になった。
「で何をしてたの?」
「あぁ…」
言葉にはせずに門の柱のところで寝ている赤髪を指した。
「これは?」
「紅美鈴。うちの門番です」
呆れたような顔で紹介をした。
紅魔館の名は聞いたこともありかなり有名な館でもある。宴会でも見たような見てないような…。
「もう…美鈴起きなさ…」
咲夜がそこまで言ってシーと合図した。
「美鈴起きなさい!!」
「は、はい!」
いつもと違う声で驚いた美鈴は急いで起きた。そしてそこに居たのは…。
「おはよう」
「お、おはようございます…風見幽香さん…」
冷や汗をダラダラ流しながら返事を返す美鈴。幻想郷最凶と言われる人物に起こされたのだ。驚きビクビクするのも無理はない。
「あなたは今日を持ってクビらしいわ」
「はい!……えぇ?!」
「寝てばかりの門番に要はないらしく門番に相応しいのは私って判断したらしいわ。だから私が居るのよ」
「え、あ、うぅ…」
いつも寝てばかりかは知らなかったけど咲夜の様子から大体の予想はついてたからカマをかけたらすぐに引っ掛かったわね。素直な子は大好きよ。
美鈴はおどおどしながら誰かに助けを求めるような目で咲夜を見る。咲夜はというと私の嘘に乗って大真面目な顔をしている。
「さっ早く出ていきなさい」
「そ、そんなぁ…」
今にも泣き出しそうな顔をする美鈴。
「早くしないと私があなたを倒すわよ?」
「うぅ…さ、咲夜さん」
「何?」
「い、今までありがとうございました。では」
飛び立とうとする美鈴を止める咲夜。流石にやりすぎたと思ったのか事情を説明する。
「あぁ……良かった~」
「だからってあんな嘘くさい話まともに聞くかしら?」
「いやいや幽香さんに言われれば誰でも信じますよ」
「私本当に今日でクビかと思いましたよ」
しばしの間談笑をした。
すると咲夜が
「幽香さんって恐ろしいイメージかなかったのですが話すとそうでもないんですね」
「あぁ…そんなに変な噂が立ってるの?」
「えぇ。怒らすと山をも破壊しかねないとか聞いたことがありますね」
「それは多分元祖マスパを山に向かって打ってたからね」
「私が聞いたのは御花畑に入った人たちを大量虐殺したって」
「妖怪ハンター達が襲ってきたから迎撃しただけ。殺しはしてないわ」
大半の話は全て誤解から生まれたものだった。
私はそこまで怖くはない…と思う多分。
「アハハ幽香さんって結構貧乏クジ引くんですね」
「それほど気にはしたことないわね」
「まぁそろそろ中の方にどうぞ。危害も加えない見たいですので客人としてお迎えしましょう」
「…ありがとう」
何だろこの素直に喜べない感じ…。
紅魔館の中はとても綺麗な所だった。外よりも中の方が広いのが気にはなったが窓の数が異様に少ない。多分吸血鬼が居るせいだろう。
「あら…」
「どうかしたの?」
「すみません。まだ客間のお掃除が出来てないみたいですのでこちらに」
他のドアとは作りが違い重たい扉の部屋に通された。
ギィと年季の入った音がした。周りを見てみる。本…本…本……。本しか無い部屋図書館みたいだな。
「パチュリー様」
「どうしたの咲夜?」
どうも事情を説明してるようだ。
「あぁ構わないわよ」
「では私は少し席を外しますので幽香さんはこちらで御寛ぎください」
「ありがと」
パチュリーと呼ばれた少女は病弱そうだった…。
「…名前は?」
「風見幽香。あなたは?」
「パチュリー。パチュリー・ノーレッジ」
「ここは図書館?」
「私のお城。紙と魔の城壁よ」
「……身体壊れそう…」
「事実私は此処にいるせいで身体が弱いわ」
「外に出ればいいのに」
「喘息もあるのよ。体力もないし」
肌は白いではなく青白い。弱々しい目をしている。
それにしてもここはイヤに埃っぽいな。
パチュリーが読んでいた本を閉じるとむせた。
「コホッ…コホッ…」
「飲み物ラベンダーの紅茶ならあるわよ?」
「い…いい。あれ…コホッ…癖があるから」
「これは癖ないのよ」
嘘だと思いながらも飲むパチュリー。以前咲夜が作ってくれた紅茶は匂いはいいが味に癖がありパチュリーはあまり好きにはなれなかった。
「あ…美味しい」
「当たり前よ私が煎れたんだから」
「何者?」
「フラワーマスターの風見幽香。幻想郷最凶よ」
「意外ね」
「よく言われるわ」
セキは止まったがこんな誇りだらけの所に居ては治るものも治らない。
「掃除道具どこ?」
「えっ?」
「掃除させて。汚すぎるわ」
「あ~っと。こあ」
「はいはい。何ですかパチュリー様」
「この方に掃除道具を」
「え?でも客人では無いのですか?」
「したいそうなのよ」
「はぁ…」
こあと呼ばれていた子に掃除道具を借りる。
掃除道具が誇りまみれって…
「とりあえずパチュリーの近辺からね」
テキパキと積まれた本を整理しながら掃除を進めていく。恐らくパチュリーが読んだ本ね。
「本ってどう分類してるの?」
「テキトー」
「はぁ?」
「こあはただ本を元の場所に返してるだけ。並べたのは私だけどお気に入りが手前の本棚。奥が普段読まない本と禁術書」
「手前だけでも片付けとくから」
「本は大切にね」
パチュリーの目は本気だった。本に囲まれた少女の壁は本。本が無くてはいけないのだ。
「分かってるわ。安心しなさい。私はフラワーマスターよ」
そう言うと向日葵の種を出し一気に成長させる。名前でも大きさでも並べられていない本に向日葵が巻き付く。それを幽香は操り次々と整理を始める。
「パチュリー様」
「何?」
「すごいですよ」
「そうね。スゴイの前に私は綺麗と思うけどね」
本の整理プラスパチュリーの近辺の掃除。誇りまみれになりながらも全てやり終えた。
「お、終わった」
近くの椅子にすわる幽香。彼女は今は太陽の畑に一人暮らし。つまり生活力は半端ないほどあるのだ。
「お疲れ。少し空気が変わった気がするわ」
「あぁ…その内いい匂いになるわよ」
「あ、あのお茶でもいかがですか?」
「フフッ。頂くわ」
こあは慣れた手つきでお茶を入れ始めた。
「それで今日は掃除をしに来たの?」
「違うわよ…暇を弄びに来ただけよ」
「そう」
「どうぞ」
「ありがと」
お茶が目の前に置かれた。いい匂いで少し飲むと喉の乾きを癒してくれた。
しばしの間談笑も含め雑談をした。するとここの重たい扉がいきよいよく開かれた。
「パチュリーあーそぼ」
「フラン」
腐乱?いやいや多分違うわね。
「誰?」
「レミィの妹よ」
「吸血鬼の?」
「そう」
パチュリーに説明を聞いているとフランがこちらに気が付いたようだ。目をランランと輝かせながら私方に近寄ってくる。
「あなたはだ~れ?」
「風見幽香。あなたは?」
「フランドール・スカーレット。ね?あなたは強い?」
「強いわよ」
「じゃあ私と遊ぼようよ」
「何で?」
「もちろん弾幕ゲームさ。「レーヴァテイン」
「え?」
あまりに急な展開だった。ギリギリでかわせたのは奇跡に近い。
「あはっ。いいねいいね。もっともっと楽しませてよ」
光線のような弾幕。体制が崩れたままだったので何発か直撃。左腕で受け止めはしたものの肉が剥げ骨までも見えている。
フランは楽しむかのように次々弾幕を打ってくる。
「調子に乗らない方がいいわよ」
自分も傘をフランに向け迎撃する。
連射が出来るので次第にフランの方が不利になってきた。
「よし…これならいける」
幽香は自分の分身を作り二人で迎撃を始める。
「二人ね。なら私はその二倍よ」
「なっ?!」
フランが四人に増える。何とか迎撃しようと試みるが数で圧倒された。自分の分身もやられてしまったようだ。
「無理なら…肉弾戦あるのみ」
弾幕の間を潜りながらフランに近づく。
「なら私も!!」
フランもまた一人の姿に戻り肉弾戦にしてきた。
距離は瞬時に縮まりお互いがお互いの頬を殴り飛ばした。クロスカウンターだ。フランは少し口を切った程度だったが、幽香は頬の肉が少し抉れていた。
「まだまだ行くよー!!」
「くっ」
尖った爪で腹を貫かれる。残った右手で背中に一発。そして足で腹を蹴り、怯んだ所でフランを引きはがす。
「っ―――!!」
腹部に激しい痛みが走る。生命維持は十分に出来ているから問題はない。
とはいえ血を流しすぎた。次で決めないと。
そしていきよいよくフランに突っ込む。フランはまた爪で身体を突こうとしていた。ほぼ動かない左腕でガード。左腕は二つになった。
「あははっ!!これで終わり!」
フランが反対の手で頭を潰そうとしたが幽香はその手を掴んだ。
「残念ね。終わりなのはあなたよ。フラン」
「へ?」
即座に元祖マスパを撃つ。フランはそのまま直撃。壁にぶつかって気絶したようだ。
「はぁ…はぁ…」
つ、強かった。かなりギリギリまで追い込まれたわね…。
そこで気がつくあんなに弾幕が散りばめられたのだ。パチュリーは?
「お、ゲホッ…終わった?」
パチュリーは本を守るために防御陣を張っていた。
「終わったわ…っ!」
アドレナリンの分泌が終わり痛みがさらに悪化した。
パチュリーも喘息が出ているのでこれは誰か呼ばないといけないなと思いパチュリー介抱を出来る範囲でやりながらこあを探す。すると…
「パチェうるさいわよ。何やって…る……の?」
レミリアはまず私、パチェ、そして気絶しているフランを見た。
「……お前がやったのか?」
「れ、レミィ待っ…ゴホッ…ゴホッ…」
パチュリーの声は喘息のせいで言葉にはならずそのまま倒れた。
レミリアはまず見知らぬ幽香がフランとパチェに何かした。そう考えたのだった。
「貴様ぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」
槍の形をした魔力の結晶。喰らえば一溜りもない。避けようするが…
このままだ倒れてるパチュリーに直撃しちゃう…
「持つか!!」
傘を広げて守りに入る。グングニル直撃。傘は吹き飛び幽香は爆風で壁を突き破り外に放り出された。
永遠のような時が流れた。
ふと目を開けるとまだ日が出ていた。身体の力が入らず真っ赤な空が見えた。
「何…してた……っけ?」
思い返す。色々あったなぁ…。今まで見たことのないような空を見て一言。
「最後ってこんなものなのかしら…」
自分の死なんて考えたことも無いが何となく死ぬ。そんな気がした。
「幽香さ~ん!!」
「幽香さ~んどこですか~?!」
自分を探す声。声は出ても腹筋に力が入れれない今の状況では叫ぶことも出来ない。
そう言えばパチュリー無事だったのかしら?
遠のく意識の中で
「幽香!!」
青白い少女が目のハシに映った。
次に目を覚ました時は知らない部屋に居た。左腕も今は感覚がありまだ使い物になりそうだった。身体のあちこちから痛みが伝わってくる。痛い…
「幽香?」
首を僅かに動かし声の主を見る。
「パチュリー…。怪我…しなかった…?」
「幽香のおかげで怪我は無いわよ。それよりもあなたもう3日寝てたわよ?」
「………そう…」
「もう目覚まさないんじゃないかって心配もしたのよ…」
「…ごめん…なさい……」
何故かパチュリ―を見たら心配で心配でしかたなかった。
「レミィ」
「分かってるって…」
パチュリーに呼ばれて入って来たのは私に槍の弾幕をぶつけた張本人だった。この吸血鬼後で殺してやろうかな?
「あ、う~う~…ごめんなさい」
「いいわよ。妹とパチュリーは大切にされているのね」
その場に居た皆が驚いた。あの幻想郷最凶と言われている幽香がまさかの発言をしたからだ。
「なによ?」
「いえ皆幽香様がそのような言葉を仰るとは思っても居なかったのですよ」
「なんて言うとでも?」
「そうね。「この腐れ外道が!生きてる事を後悔させてやる!」って言うのかと」
掃除もしてあげたパチュリーにそんな認識をされてたなんて…心外だ。
「流石にそこまでの元気は無いわ。それよりフランちゃんは大丈夫だった?」
「フランなら今魔理沙と弾幕ごっこやってるわ」
「それなら大丈夫かな」
自然と笑いが出た。さてと身体は痛いけど帰らないと。お花達が可哀想だもの。
「よいしょ…」
「何してるのよ?!」
「そろそろ御暇するわ」
「だってまだその怪我じゃ…」
「パチュリー」
「なに?」
「私は花の妖怪よ。その私から花を取ってしまったら何も残らないわ。私の存在できる理由は花達のおかげ」
「…」
どんなに辛くても私は花と共にある。それは私の存在意義であり、絶対的に変えることの出来ない生き様なのだ。
「花って弱々しいの。誰かに踏まれるだけで枯れちゃうようなそんな存在なのよ。だから私はどんな事があっても花を守る。だから強くなった。踏まれる位なら誰も近寄らせないくらい最凶になろうと思っただけよ」
その場に居たみんなが静まり返った。その中を私は汚れた服を持ち壊れた傘を拾い帰った。
こんな時ばかりは空を飛んだ。熱を持った傷を風が心地よく冷やしてくれた。私の家。私を必要とするあの向日葵畑へ私は帰った。
「やっぱり少し元気無いわね」
花達を元気よくすると自分の家に向かう。家に入るとそのままベッドに寝た。
「怪我治して…秋が来るから秋の花も用意しなくちゃ…ご飯も…あと…」
無理をしたせいかそのまま幽香は意識を失った。
また何日も寝たのかどうかは知らない。何故か誰かが居るような気配がする。身体は前よりも動く。
「だれ?」
「あぁ起きたのね幽香」
「パチュリー?」
台所の方からパタパタとパチュリーが来る。私のエプロンを付けて。
「何してるの?」
「あなたの看病」
「……逆でしょ」
「何が?」
「何でもないわ…」
弱々しい子が看病…情けなくなってきた。
「待っててね。もう少しでお粥出来るから」
「料理出来るの?」
「伊達に本は読んでないわよ」
なら安心と目を瞑った時
「えっ~と…砂糖?塩?まぁいいわどっちでも。後栄養が付くように漢方薬、りんご、蜂蜜、レモン、ムカデ…」
「ちょっとまった―――!」
「ひゃ」
最後の一個はもはや食べ物ですらない!危ない危ない。
「パチュリーは座ってて」
「何よ。私だって料理くらい出来るのよ」
「はいはい」
半ば無理やり席に座らせるとプンスカプンといった感じで怒っていた。可愛らしいものだ。
簡単に直ぐ出来るスパゲッティでいいかな?
手早く用意をし作り始める。
「幽香が料理って方がなんだか似合わない」
「これでも一人暮らししてるからね。どこぞの引き篭りよりかは生活力あるわよ」
「むきゅー…」
「で?」
「どうしたの?」
「何であなたが居るの?」
「…看病」
「それは聞いたわ。別の理由でもあるんじゃないの?パチュリーって責任で動くタイプじゃなさそうだから」
「幽香が心配だったから」
「………ありがと」
「どういたしまして。でも意外」
「何が?」
「幽香って好意を受け取ってはくれそうにないもの」
「そうね。ありがた迷惑、余計なお節介、私を思っての好意。全て嫌いよ」
「じゃあ何で今は受け取ったの?」
「普段は本ばかり読んでる子が頑張って来てくれて、やったこともない料理を作ろうとしてくたんだからね。そんな子にされるのならありがた迷惑も余計なお節介も私を思っての好意も可愛らしく見えたのよ」
「…………」
顔真っ赤にしちゃって可愛い可愛い。
「さっ出来たわよ」
「美味しそう…」
「ご堪能あれ」
パチュリーはフォークでそのままいきなり食べようとした。
「いただきます!」
「ひゃ」
「食べ物を頂きます。大切なことよ?」
「はい…いただきます」
「よろしい」
子供もしくは妹が出来たみたい。まっいっか。
自分のご飯を早めに片付けてお風呂を沸かしに行く。
「パチュリー?」
「なに?」
「私何日寝てた?」
「日にちは経って無いわよ」
「ならあれから数時間ってところか」
「どうしたの?」
「いや何日も寝てた気がしただけよ。今日は泊まるの?」
「へ?」
「泊まるなら服とかの用意もいるから」
「…と、泊まる……」
「じゃあ服と下着とタオル…」
身体も結構ベタベタだから早くお風呂に入りたい。
風呂の支度を済ませリビングのソファーに座る。パチュリーも反対のソファーに座った。
「……」
「……」
「何か言いたそうな顔ね」
「うん」
「早くしないとお風呂冷めちゃうわよ?」
「昼間のこと。あなたは最凶になって花を守るだけの人生でいいの?」
「いいわ。当たり前の事だから」
「それは当たり前とは言わない」
「…ねぇパチュリー」
「なに?」
「私は昔からこうではなかったわ。こっちに来るときに決意をして髪も切り、服も変えたわ。もう甘えてばかりじゃ居られないって思ったわ」
「…」
「最初は寂しかったりもしたわ。けど慣れたのよ。だから今じゃこれが私の普通の生活になったの」
「今は寂しくないの?」
「えぇ。貴方はにも当たり前の日常があるでしょ?」
「あるわ」
「だから私の当たり前の日常はこうやって花を守って、花を見て楽しむ。それが私の当たり前」
「そこに私が居たら迷惑?」
「……迷惑ってより困惑するでしょうね」
「なんで?」
「甘えを無くすために来たのにまた甘えていいのかって考えるだろうから」
パチュリーは私の隣に来た。
「甘えて欲しいんじゃない」
「?」
「甘えさせて」
「どういう意味?」
「ほら私って知識ばっかりで何も知らないの。今日も看病とか言って料理作ろうとしたけど失敗するし…」
今にも泣いてしまいそうな顔。自分の事をよく分析してるな。
そんなパチュリーを抱きしめる。
「ゆ…うか?」
「今から覚えれば良いだけの事をウジウジ考えない。私に甘えてしっかり見てそれで覚えていけばいいだけじゃない」
「けど」
パチュリー口に指を当てる。言葉はもういい。
「I Love You」
何でパチュリーがこんなにも心配なのかが分かった。花に似ているのだ。弱々しい所なんて特に。言葉は口に出せばいいだけ。今のパチュリーに…いや私に必要なのは前に進む行動力。
「へ?」
「さっお風呂入るわよ」
パチュリー手を引く。
「待って」
「返事は何時でもいいわ」
「い、今したいの…」
「…ふふ。ならどうぞ」
「私も愛してる。ずっとずっと永遠に。色々迷惑かけるかもしれないけど・・・けど絶対に覚えるから。色々出来るようになるから。だから見捨てないで大切に育ててね?」
その上目遣い禁止!!
パチュリーってこんなに可愛かったっけ?
パチュリーの頭を撫でる
「見捨てるわけないわ。こんな危なっかしい子ほっとけないもの」
「ありがと…」
「じゃお風呂入りましょ。冷めちゃったら貴方直ぐ風邪引きそうなんだもの」
「う、否定できないわ」
夏は終わっても熱い日が続くこの頃。今年の冬は暖冬になりそうで良かった。
以前は異変などもあり傍観したり、参加したり、そのあと行われる宴会もあり暇を潰すことが出来たが今はそんな宴会もなく面白そうな出来事もない。
やることがあると言えば花の管理くらいのものだ。
でも正直な事を言えば自分の能力で花の管理は万全なためやることは無く一人で散歩が最近の日課だ。
「今日はこっちに行って見ましょ」
いつもとは違う道を歩く。毎回同じなのもそろそろ飽きてきた。
空を飛ぶのもいいが上から下を見ても同じ風景ばかりで面白味にかける。下からの方が綺麗で心地の良い散歩になるのだ。
「湖か…どうりで涼しいわけね」
夏終わりとはいえまだまだ暑い日は続く。水は空の色を反射し蒼く光っている。寒色なため見ていて悪い気はしない。
しばらくの間湖のほとりで涼んでいると湖の真ん中に紅い館があるのに気が付いた。
「あぁ…吸血鬼の館か。暇つぶしに行ってみようかしら」
日差しで太陽の光を遮りながら紅魔館へと近づいていく。
次第に大きくなる館を見ながら昔自分の住んでいた館を思いだす。今思えばこんなにも大きかったのかと思う。懐かしい気持ちになりながら門の近くで誰かいるのに気がつく。
「銀髪にメイド服って咲夜?」
「誰かと思ったら幽香…さん」
「何よその一瞬の間は」
「いえいえやはりさんは付けるべきかどうか少々悩みまして」
特にツッコミはしなかったものの「何百倍もあなたより生きている事を考えれば付けるでしょ」と言うのも面倒になった。
「で何をしてたの?」
「あぁ…」
言葉にはせずに門の柱のところで寝ている赤髪を指した。
「これは?」
「紅美鈴。うちの門番です」
呆れたような顔で紹介をした。
紅魔館の名は聞いたこともありかなり有名な館でもある。宴会でも見たような見てないような…。
「もう…美鈴起きなさ…」
咲夜がそこまで言ってシーと合図した。
「美鈴起きなさい!!」
「は、はい!」
いつもと違う声で驚いた美鈴は急いで起きた。そしてそこに居たのは…。
「おはよう」
「お、おはようございます…風見幽香さん…」
冷や汗をダラダラ流しながら返事を返す美鈴。幻想郷最凶と言われる人物に起こされたのだ。驚きビクビクするのも無理はない。
「あなたは今日を持ってクビらしいわ」
「はい!……えぇ?!」
「寝てばかりの門番に要はないらしく門番に相応しいのは私って判断したらしいわ。だから私が居るのよ」
「え、あ、うぅ…」
いつも寝てばかりかは知らなかったけど咲夜の様子から大体の予想はついてたからカマをかけたらすぐに引っ掛かったわね。素直な子は大好きよ。
美鈴はおどおどしながら誰かに助けを求めるような目で咲夜を見る。咲夜はというと私の嘘に乗って大真面目な顔をしている。
「さっ早く出ていきなさい」
「そ、そんなぁ…」
今にも泣き出しそうな顔をする美鈴。
「早くしないと私があなたを倒すわよ?」
「うぅ…さ、咲夜さん」
「何?」
「い、今までありがとうございました。では」
飛び立とうとする美鈴を止める咲夜。流石にやりすぎたと思ったのか事情を説明する。
「あぁ……良かった~」
「だからってあんな嘘くさい話まともに聞くかしら?」
「いやいや幽香さんに言われれば誰でも信じますよ」
「私本当に今日でクビかと思いましたよ」
しばしの間談笑をした。
すると咲夜が
「幽香さんって恐ろしいイメージかなかったのですが話すとそうでもないんですね」
「あぁ…そんなに変な噂が立ってるの?」
「えぇ。怒らすと山をも破壊しかねないとか聞いたことがありますね」
「それは多分元祖マスパを山に向かって打ってたからね」
「私が聞いたのは御花畑に入った人たちを大量虐殺したって」
「妖怪ハンター達が襲ってきたから迎撃しただけ。殺しはしてないわ」
大半の話は全て誤解から生まれたものだった。
私はそこまで怖くはない…と思う多分。
「アハハ幽香さんって結構貧乏クジ引くんですね」
「それほど気にはしたことないわね」
「まぁそろそろ中の方にどうぞ。危害も加えない見たいですので客人としてお迎えしましょう」
「…ありがとう」
何だろこの素直に喜べない感じ…。
紅魔館の中はとても綺麗な所だった。外よりも中の方が広いのが気にはなったが窓の数が異様に少ない。多分吸血鬼が居るせいだろう。
「あら…」
「どうかしたの?」
「すみません。まだ客間のお掃除が出来てないみたいですのでこちらに」
他のドアとは作りが違い重たい扉の部屋に通された。
ギィと年季の入った音がした。周りを見てみる。本…本…本……。本しか無い部屋図書館みたいだな。
「パチュリー様」
「どうしたの咲夜?」
どうも事情を説明してるようだ。
「あぁ構わないわよ」
「では私は少し席を外しますので幽香さんはこちらで御寛ぎください」
「ありがと」
パチュリーと呼ばれた少女は病弱そうだった…。
「…名前は?」
「風見幽香。あなたは?」
「パチュリー。パチュリー・ノーレッジ」
「ここは図書館?」
「私のお城。紙と魔の城壁よ」
「……身体壊れそう…」
「事実私は此処にいるせいで身体が弱いわ」
「外に出ればいいのに」
「喘息もあるのよ。体力もないし」
肌は白いではなく青白い。弱々しい目をしている。
それにしてもここはイヤに埃っぽいな。
パチュリーが読んでいた本を閉じるとむせた。
「コホッ…コホッ…」
「飲み物ラベンダーの紅茶ならあるわよ?」
「い…いい。あれ…コホッ…癖があるから」
「これは癖ないのよ」
嘘だと思いながらも飲むパチュリー。以前咲夜が作ってくれた紅茶は匂いはいいが味に癖がありパチュリーはあまり好きにはなれなかった。
「あ…美味しい」
「当たり前よ私が煎れたんだから」
「何者?」
「フラワーマスターの風見幽香。幻想郷最凶よ」
「意外ね」
「よく言われるわ」
セキは止まったがこんな誇りだらけの所に居ては治るものも治らない。
「掃除道具どこ?」
「えっ?」
「掃除させて。汚すぎるわ」
「あ~っと。こあ」
「はいはい。何ですかパチュリー様」
「この方に掃除道具を」
「え?でも客人では無いのですか?」
「したいそうなのよ」
「はぁ…」
こあと呼ばれていた子に掃除道具を借りる。
掃除道具が誇りまみれって…
「とりあえずパチュリーの近辺からね」
テキパキと積まれた本を整理しながら掃除を進めていく。恐らくパチュリーが読んだ本ね。
「本ってどう分類してるの?」
「テキトー」
「はぁ?」
「こあはただ本を元の場所に返してるだけ。並べたのは私だけどお気に入りが手前の本棚。奥が普段読まない本と禁術書」
「手前だけでも片付けとくから」
「本は大切にね」
パチュリーの目は本気だった。本に囲まれた少女の壁は本。本が無くてはいけないのだ。
「分かってるわ。安心しなさい。私はフラワーマスターよ」
そう言うと向日葵の種を出し一気に成長させる。名前でも大きさでも並べられていない本に向日葵が巻き付く。それを幽香は操り次々と整理を始める。
「パチュリー様」
「何?」
「すごいですよ」
「そうね。スゴイの前に私は綺麗と思うけどね」
本の整理プラスパチュリーの近辺の掃除。誇りまみれになりながらも全てやり終えた。
「お、終わった」
近くの椅子にすわる幽香。彼女は今は太陽の畑に一人暮らし。つまり生活力は半端ないほどあるのだ。
「お疲れ。少し空気が変わった気がするわ」
「あぁ…その内いい匂いになるわよ」
「あ、あのお茶でもいかがですか?」
「フフッ。頂くわ」
こあは慣れた手つきでお茶を入れ始めた。
「それで今日は掃除をしに来たの?」
「違うわよ…暇を弄びに来ただけよ」
「そう」
「どうぞ」
「ありがと」
お茶が目の前に置かれた。いい匂いで少し飲むと喉の乾きを癒してくれた。
しばしの間談笑も含め雑談をした。するとここの重たい扉がいきよいよく開かれた。
「パチュリーあーそぼ」
「フラン」
腐乱?いやいや多分違うわね。
「誰?」
「レミィの妹よ」
「吸血鬼の?」
「そう」
パチュリーに説明を聞いているとフランがこちらに気が付いたようだ。目をランランと輝かせながら私方に近寄ってくる。
「あなたはだ~れ?」
「風見幽香。あなたは?」
「フランドール・スカーレット。ね?あなたは強い?」
「強いわよ」
「じゃあ私と遊ぼようよ」
「何で?」
「もちろん弾幕ゲームさ。「レーヴァテイン」
「え?」
あまりに急な展開だった。ギリギリでかわせたのは奇跡に近い。
「あはっ。いいねいいね。もっともっと楽しませてよ」
光線のような弾幕。体制が崩れたままだったので何発か直撃。左腕で受け止めはしたものの肉が剥げ骨までも見えている。
フランは楽しむかのように次々弾幕を打ってくる。
「調子に乗らない方がいいわよ」
自分も傘をフランに向け迎撃する。
連射が出来るので次第にフランの方が不利になってきた。
「よし…これならいける」
幽香は自分の分身を作り二人で迎撃を始める。
「二人ね。なら私はその二倍よ」
「なっ?!」
フランが四人に増える。何とか迎撃しようと試みるが数で圧倒された。自分の分身もやられてしまったようだ。
「無理なら…肉弾戦あるのみ」
弾幕の間を潜りながらフランに近づく。
「なら私も!!」
フランもまた一人の姿に戻り肉弾戦にしてきた。
距離は瞬時に縮まりお互いがお互いの頬を殴り飛ばした。クロスカウンターだ。フランは少し口を切った程度だったが、幽香は頬の肉が少し抉れていた。
「まだまだ行くよー!!」
「くっ」
尖った爪で腹を貫かれる。残った右手で背中に一発。そして足で腹を蹴り、怯んだ所でフランを引きはがす。
「っ―――!!」
腹部に激しい痛みが走る。生命維持は十分に出来ているから問題はない。
とはいえ血を流しすぎた。次で決めないと。
そしていきよいよくフランに突っ込む。フランはまた爪で身体を突こうとしていた。ほぼ動かない左腕でガード。左腕は二つになった。
「あははっ!!これで終わり!」
フランが反対の手で頭を潰そうとしたが幽香はその手を掴んだ。
「残念ね。終わりなのはあなたよ。フラン」
「へ?」
即座に元祖マスパを撃つ。フランはそのまま直撃。壁にぶつかって気絶したようだ。
「はぁ…はぁ…」
つ、強かった。かなりギリギリまで追い込まれたわね…。
そこで気がつくあんなに弾幕が散りばめられたのだ。パチュリーは?
「お、ゲホッ…終わった?」
パチュリーは本を守るために防御陣を張っていた。
「終わったわ…っ!」
アドレナリンの分泌が終わり痛みがさらに悪化した。
パチュリーも喘息が出ているのでこれは誰か呼ばないといけないなと思いパチュリー介抱を出来る範囲でやりながらこあを探す。すると…
「パチェうるさいわよ。何やって…る……の?」
レミリアはまず私、パチェ、そして気絶しているフランを見た。
「……お前がやったのか?」
「れ、レミィ待っ…ゴホッ…ゴホッ…」
パチュリーの声は喘息のせいで言葉にはならずそのまま倒れた。
レミリアはまず見知らぬ幽香がフランとパチェに何かした。そう考えたのだった。
「貴様ぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」
槍の形をした魔力の結晶。喰らえば一溜りもない。避けようするが…
このままだ倒れてるパチュリーに直撃しちゃう…
「持つか!!」
傘を広げて守りに入る。グングニル直撃。傘は吹き飛び幽香は爆風で壁を突き破り外に放り出された。
永遠のような時が流れた。
ふと目を開けるとまだ日が出ていた。身体の力が入らず真っ赤な空が見えた。
「何…してた……っけ?」
思い返す。色々あったなぁ…。今まで見たことのないような空を見て一言。
「最後ってこんなものなのかしら…」
自分の死なんて考えたことも無いが何となく死ぬ。そんな気がした。
「幽香さ~ん!!」
「幽香さ~んどこですか~?!」
自分を探す声。声は出ても腹筋に力が入れれない今の状況では叫ぶことも出来ない。
そう言えばパチュリー無事だったのかしら?
遠のく意識の中で
「幽香!!」
青白い少女が目のハシに映った。
次に目を覚ました時は知らない部屋に居た。左腕も今は感覚がありまだ使い物になりそうだった。身体のあちこちから痛みが伝わってくる。痛い…
「幽香?」
首を僅かに動かし声の主を見る。
「パチュリー…。怪我…しなかった…?」
「幽香のおかげで怪我は無いわよ。それよりもあなたもう3日寝てたわよ?」
「………そう…」
「もう目覚まさないんじゃないかって心配もしたのよ…」
「…ごめん…なさい……」
何故かパチュリ―を見たら心配で心配でしかたなかった。
「レミィ」
「分かってるって…」
パチュリーに呼ばれて入って来たのは私に槍の弾幕をぶつけた張本人だった。この吸血鬼後で殺してやろうかな?
「あ、う~う~…ごめんなさい」
「いいわよ。妹とパチュリーは大切にされているのね」
その場に居た皆が驚いた。あの幻想郷最凶と言われている幽香がまさかの発言をしたからだ。
「なによ?」
「いえ皆幽香様がそのような言葉を仰るとは思っても居なかったのですよ」
「なんて言うとでも?」
「そうね。「この腐れ外道が!生きてる事を後悔させてやる!」って言うのかと」
掃除もしてあげたパチュリーにそんな認識をされてたなんて…心外だ。
「流石にそこまでの元気は無いわ。それよりフランちゃんは大丈夫だった?」
「フランなら今魔理沙と弾幕ごっこやってるわ」
「それなら大丈夫かな」
自然と笑いが出た。さてと身体は痛いけど帰らないと。お花達が可哀想だもの。
「よいしょ…」
「何してるのよ?!」
「そろそろ御暇するわ」
「だってまだその怪我じゃ…」
「パチュリー」
「なに?」
「私は花の妖怪よ。その私から花を取ってしまったら何も残らないわ。私の存在できる理由は花達のおかげ」
「…」
どんなに辛くても私は花と共にある。それは私の存在意義であり、絶対的に変えることの出来ない生き様なのだ。
「花って弱々しいの。誰かに踏まれるだけで枯れちゃうようなそんな存在なのよ。だから私はどんな事があっても花を守る。だから強くなった。踏まれる位なら誰も近寄らせないくらい最凶になろうと思っただけよ」
その場に居たみんなが静まり返った。その中を私は汚れた服を持ち壊れた傘を拾い帰った。
こんな時ばかりは空を飛んだ。熱を持った傷を風が心地よく冷やしてくれた。私の家。私を必要とするあの向日葵畑へ私は帰った。
「やっぱり少し元気無いわね」
花達を元気よくすると自分の家に向かう。家に入るとそのままベッドに寝た。
「怪我治して…秋が来るから秋の花も用意しなくちゃ…ご飯も…あと…」
無理をしたせいかそのまま幽香は意識を失った。
また何日も寝たのかどうかは知らない。何故か誰かが居るような気配がする。身体は前よりも動く。
「だれ?」
「あぁ起きたのね幽香」
「パチュリー?」
台所の方からパタパタとパチュリーが来る。私のエプロンを付けて。
「何してるの?」
「あなたの看病」
「……逆でしょ」
「何が?」
「何でもないわ…」
弱々しい子が看病…情けなくなってきた。
「待っててね。もう少しでお粥出来るから」
「料理出来るの?」
「伊達に本は読んでないわよ」
なら安心と目を瞑った時
「えっ~と…砂糖?塩?まぁいいわどっちでも。後栄養が付くように漢方薬、りんご、蜂蜜、レモン、ムカデ…」
「ちょっとまった―――!」
「ひゃ」
最後の一個はもはや食べ物ですらない!危ない危ない。
「パチュリーは座ってて」
「何よ。私だって料理くらい出来るのよ」
「はいはい」
半ば無理やり席に座らせるとプンスカプンといった感じで怒っていた。可愛らしいものだ。
簡単に直ぐ出来るスパゲッティでいいかな?
手早く用意をし作り始める。
「幽香が料理って方がなんだか似合わない」
「これでも一人暮らししてるからね。どこぞの引き篭りよりかは生活力あるわよ」
「むきゅー…」
「で?」
「どうしたの?」
「何であなたが居るの?」
「…看病」
「それは聞いたわ。別の理由でもあるんじゃないの?パチュリーって責任で動くタイプじゃなさそうだから」
「幽香が心配だったから」
「………ありがと」
「どういたしまして。でも意外」
「何が?」
「幽香って好意を受け取ってはくれそうにないもの」
「そうね。ありがた迷惑、余計なお節介、私を思っての好意。全て嫌いよ」
「じゃあ何で今は受け取ったの?」
「普段は本ばかり読んでる子が頑張って来てくれて、やったこともない料理を作ろうとしてくたんだからね。そんな子にされるのならありがた迷惑も余計なお節介も私を思っての好意も可愛らしく見えたのよ」
「…………」
顔真っ赤にしちゃって可愛い可愛い。
「さっ出来たわよ」
「美味しそう…」
「ご堪能あれ」
パチュリーはフォークでそのままいきなり食べようとした。
「いただきます!」
「ひゃ」
「食べ物を頂きます。大切なことよ?」
「はい…いただきます」
「よろしい」
子供もしくは妹が出来たみたい。まっいっか。
自分のご飯を早めに片付けてお風呂を沸かしに行く。
「パチュリー?」
「なに?」
「私何日寝てた?」
「日にちは経って無いわよ」
「ならあれから数時間ってところか」
「どうしたの?」
「いや何日も寝てた気がしただけよ。今日は泊まるの?」
「へ?」
「泊まるなら服とかの用意もいるから」
「…と、泊まる……」
「じゃあ服と下着とタオル…」
身体も結構ベタベタだから早くお風呂に入りたい。
風呂の支度を済ませリビングのソファーに座る。パチュリーも反対のソファーに座った。
「……」
「……」
「何か言いたそうな顔ね」
「うん」
「早くしないとお風呂冷めちゃうわよ?」
「昼間のこと。あなたは最凶になって花を守るだけの人生でいいの?」
「いいわ。当たり前の事だから」
「それは当たり前とは言わない」
「…ねぇパチュリー」
「なに?」
「私は昔からこうではなかったわ。こっちに来るときに決意をして髪も切り、服も変えたわ。もう甘えてばかりじゃ居られないって思ったわ」
「…」
「最初は寂しかったりもしたわ。けど慣れたのよ。だから今じゃこれが私の普通の生活になったの」
「今は寂しくないの?」
「えぇ。貴方はにも当たり前の日常があるでしょ?」
「あるわ」
「だから私の当たり前の日常はこうやって花を守って、花を見て楽しむ。それが私の当たり前」
「そこに私が居たら迷惑?」
「……迷惑ってより困惑するでしょうね」
「なんで?」
「甘えを無くすために来たのにまた甘えていいのかって考えるだろうから」
パチュリーは私の隣に来た。
「甘えて欲しいんじゃない」
「?」
「甘えさせて」
「どういう意味?」
「ほら私って知識ばっかりで何も知らないの。今日も看病とか言って料理作ろうとしたけど失敗するし…」
今にも泣いてしまいそうな顔。自分の事をよく分析してるな。
そんなパチュリーを抱きしめる。
「ゆ…うか?」
「今から覚えれば良いだけの事をウジウジ考えない。私に甘えてしっかり見てそれで覚えていけばいいだけじゃない」
「けど」
パチュリー口に指を当てる。言葉はもういい。
「I Love You」
何でパチュリーがこんなにも心配なのかが分かった。花に似ているのだ。弱々しい所なんて特に。言葉は口に出せばいいだけ。今のパチュリーに…いや私に必要なのは前に進む行動力。
「へ?」
「さっお風呂入るわよ」
パチュリー手を引く。
「待って」
「返事は何時でもいいわ」
「い、今したいの…」
「…ふふ。ならどうぞ」
「私も愛してる。ずっとずっと永遠に。色々迷惑かけるかもしれないけど・・・けど絶対に覚えるから。色々出来るようになるから。だから見捨てないで大切に育ててね?」
その上目遣い禁止!!
パチュリーってこんなに可愛かったっけ?
パチュリーの頭を撫でる
「見捨てるわけないわ。こんな危なっかしい子ほっとけないもの」
「ありがと…」
「じゃお風呂入りましょ。冷めちゃったら貴方直ぐ風邪引きそうなんだもの」
「う、否定できないわ」
夏は終わっても熱い日が続くこの頃。今年の冬は暖冬になりそうで良かった。
他は良かったです
まさかのパチュリーと幽香?
甘甘で砂糖が…
誤字報告を
掃除道具が誇りまみれって…
「誇り」→「埃」
ありすぎるよ。