Coolier - 新生・東方創想話

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2011/10/21 11:33:11
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「りんのすけー。暇だから来たよー」

 少し風の強い天気のいい昼下がり、森のはずれにある道具屋の前に河童の姿があった。
その河童――河城にとりは、店主である森近霖之助からの返事を待っていた。

これまでも彼女は妖怪の山を降りてちょくちょくこの店にやってきていた。というのもこの店は彼女の好きな機械の山で溢れていたからだ。

「あれ……? いないのかな?」

いつまで経っても返事が返ってこないので、にとりが店の引き戸に手をかけてみると、戸はいとも簡単にがらりと開いた。

「りんのすけー……?」

にとりはもう一度呼びかけをしてみるが、やはり返事はない。

彼女は恐る恐る中へと入る。店の中はいつも通りに雑然と商品が並べられていた。人が歩くスペースはほとんどない。しかも前に来た時よりむしろそれは悪化している感じだ。

どうやら自分が顔を出さないでいるうちに新しい商品が増えたらしい。にとりは 期待を膨らませつつ店主を探した。

彼女は抜き足で店の奥の倉庫へと向かう。別に足音を隠す必要はなかったのだが、おそらく店内の水を打ったような静けさがそうさせたのだろう。聞こえてくる音と言えば売り物の柱時計が時を刻む音くらいだった。

倉庫の中にも霖之助の姿はなかった。どうやら本当に留守らしい。

「ちぇっ。いないのか……つまんないなぁ」

店番もいないのに開けっぱなしにしておくとは不用心なものだ。そう思いながらも彼女は店に置いてある物を見渡す。

もっとも他人から見れば、ただのガラクタにしか見えないらしいのだから盗まれる心配はないわけだ。しかし、彼女にとってこれらはダイヤの原石。磨けば光る。すなわち修理すればいくらでも使えるのだ。

実際に彼女は今まで色んなものを修理してきた。例えば、今愛用している懐中時計はここで手に入れたものだし、この店で使用されている掃除機なる機械も彼女が使えるようにした。
外の世界の文献や設計図を解読して作り上げた発動機という装置の力によって再び稼働するようになったのだ。

更に店の外に飾ってあるネオンサインなる看板もそうだ。昼間は大して目立たないが夜になると掃除機と同じ電気の力でチカチカと光る。霖之助は「いい目印になる」と喜んでいた。とは言っても当然、夜は店を閉じているので活躍の場はほとんどないのだが。

そんなわけで彼女が、目を爛々と輝かせながら今日のお宝を掘り当てようとしていたその時だ。

「こんにちは」

何やら聞き覚えのある落ち着いた声が耳に入ってくる。

「あれ、その声は……もしかして……?」

声の主は紅葉神の秋静葉だった。これは思わぬ珍客だと言った具合に、にとりは思わず目を丸くさせる。と言っても自分はここの店員ではないのだが。

そんな彼女の様子を見て静葉は微笑を浮かべた。

「あら、にとり。こんな所で会うなんて奇遇ね。店主さんはどこにいるのかしら?」

そう言いながら彼女は店に飾ってあるフラワーロックなる顔のついた花の置物に目を向けている。

「いやー。それが留守みたいなんだよね~」
「それは残念ね。じゃあ、もしかしてあなたはお留守番かしら?」

そう言いながらも彼女はフラワーロックを手に取ると、かちゃかちゃと振り始めた。どうやらよほど気になっている様子だった。

「いや、そう言うわけじゃないよ。私も今ここに来たばかりだしさ。……ところで静葉さん。それは揺らすもんじゃないんだけど」
「そうなの? てっきり楽器みたいなものかと思ったんだけど……」

にとりは不思議そうな顔をしている彼女からそれをもらって、底にあるつまみのスイッチを入れて机の上に置いた。

「何も起きないわね?」

と、その時彼女の言葉に反応してその花が揺れ始める。

「あら!」

彼女のその感嘆にも花は反応して激しく揺れた。驚く静葉の様子を見てにとりは思わず、くすりと笑う。

「ま、こういうわけで、これは音に反応して動く置物なんだよ」
「へぇ。面白いわね。中に音に反応する式でもいるのかしら?」

静葉は興味深そうにその花を突っついたりしている。どうやら気に入ったらしい。

「式……とは違うんだけど、まぁ似たようなものかな」

にとりはここで電池というものを彼女に説明しようか迷ったが、結局止めた。説明するのが面倒だったし、それよりも他の商品を早く物色したかったからだ。

「穣子に見せたらきっと驚くわね」

そう言って静葉は不敵な笑みを浮かべる。

またよからぬ事を企んでいるのだろうか、もっとも彼女はいつも何を考えてるか分からない表情を浮かべている。だが、にとりにしてみれば自分に危害がなければ別にどうでもいいやと言った具合だった。

「ま、他にも色々見ていくといいよ。私もしばらく来てなかったんだけど、面白そうなものが増えてるみたいだしさ」

「そうね。いい暇つぶしになりそうだわ」

そんな事を言いながら二人は店内を物色し始める。
もし、この場に霖之助がいたら、暇つぶしじゃなくて出来れば商品の一つでも買っていって欲しいんだが。というぼやきが聞けた事だろう。



 その霖之助は、妖怪の山へと向かっている最中だった。普段滅多に出かけたりしない彼が何故そんな所にいるのかというと、それにはある理由があった。

にとりが訪ねてくる少し前の出来事だ。
いつものように店のテーブルで新聞に目を通しながらぼんやりとしていた彼の元に鴉天狗の射命丸文が姿を現した。

「霖之助さんこんにちは。ご機嫌いかがでしょうか? 清く正しくがモットーの射命丸です!」
「やあ。いらっしゃい。何やら随分ご機嫌のようだけど何かいい事でもあったのかい?」
「実は霖之助さんに是非見てもらいたいものがあるんですよ。おそらく貴方にしかわからない代物なんですが……」
「へえ……どれ見せてごらん」
「いや、それが実は妖怪の山にあるんです」
「ふむ。それじゃ見ようがないじゃないか」
「ですから貴方に是非とも同行を願いたいのです」
「なんだって……!?」

始めは乗り気じゃなかった彼だったが、文があまりにもしつこく頼み込んで来た事と、自分にしか分からないものとは、それはなかなか面白そうだという好奇心も相まってようやくその重い腰を持ち上げる事となった。

そうして彼は文の案内で、今まさに山の山腹へ向かっている途中だったのだ。

「……僕をわざわざ連れ出すくらいなんだから、もしこれで相応のものじゃなかったらそれなりの代償は施して欲しいところだよ。……そうだな。向こう一年間は新聞の購読をタダにしてもらうってのも悪くないだろう」

文は彼の懐疑的な眼差しに対しフッと笑みを浮かべる。

「わかりました。約束しましょう。でもきっと満足していただけると思いますよ?」

そう言うと再び彼女は進み出す。どうやら相当自信があるらしい。

「ほら、あれですよ」

そう言って彼女が指を指した先には、巨大な鉄の物体が横たわっているのが見えた。

「……これは、ずいぶんと大物だな」

思わず霖之助がうめく。

その物体は周りの木々をなぎ倒すようにして山腹に横たわっていた。形状も鉄製の巨大な支柱の先に、これまた巨大な編み目状の鉄の笊のような物が取り付けられているという何とも奇妙な具合だ。

彼女が自信を持つのも頷ける。確かにこんな不思議な物は早々お目にかかれないだろう。悔しいがどうやら今回は自分の負けのようだと、彼は思わず舌を鳴らした。

「今朝、私の部下が見つけたんですよ」

そう言いながらも文は、その物体をあらゆる角度から最速の速さで写真に収めている。

「……じゃあ、早速視てみる事にしようか」

霖之助はその巨大な物体を能力を通して視た。

「ふむ、名称は……パラボラアンテナ。用途は電波を捕らえる物だ」
「ぱらぼらあんてな? それがこの物体の名前なんですか」
「そういう事だね」

文はふむふむと頷きながらメモを取り出す。

「して電波を捕まえる……とは?」
「それは分からないよ。僕はあくまで用途だけしか視れないからね」

彼の言葉に文は、しまった。といった感じで思わず指を鳴らす。

「しかし、これでは記事にする事が出来ませんよ」
「謎の漂流物発見! で、いいんじゃないか?」
「う~ん、それでは記事としてインパクトが足りないです。せっかくの大物なんですからもう少し突っ込んだ内容が欲しい所ですね」
「突っ込んだ内容?」
「そうですね。やはり最低限、使用方法などは知りたいものです」
「いや、そうは言うが……」
「……別にこの際、仮説でもいいんですよ?」

彼女の言葉を聞いた霖之助は思わず怪訝そうな表情を作る。

「……ちょっと待ってくれ。それは僕に、こいつの使用方法を今この場で適当に考えてくれと言ってるようなものじゃないか?」
「はい、だいたい合ってます」

やれやれと言った具合に彼はため息をついた。

「折角だが断らせてもらうよ。もう用件は果たしただろう。ここから先は君だけでやってくれ」

そう言い残すと霖之助は、彼女を残したままその場を立ち去った。

……まったく、あの子は僕を鑑定士か何かと勘違いしているんじゃないか

別に頼られるのは悪い気はしない。しかし、このままでは彼女のいいように扱わられているような気がしてならない。
こっちにも自尊心というものがある。それに彼女のわがままにつきあってやるほど自分はお人好しではないのだ。などと考えてるうちに道具屋へと戻ってくる。

ふと見ると入り口に人影があった。彼は嫌な予感を抱きつつ近づいてみた。

「霖之助さん。置いていくなんてひどいじゃないですか」

人影の正体は文だった。予感的中である。最も、幻想郷最速を誇る彼女なら先回りしていても何ら不思議な事ではない。

「言っておくが僕は一度言った事はねじ曲げるつもりはない。引き取ってくれないか」

霖之助は極めて頑固者である。自分の意志をねじ曲げた事は滅多にない。

「そんな事言わずにお願いします」
「まったく、君もしつこいね」
「ありがとうございます。それは私たち記者にとっては誉め言葉です」

とは言え、今回ばかりは相手が悪かった。彼女もまたドがつくほどの頑固者なのだ。

頑固者同士でやりあっても話が平行線のままなのは目に見えていた。それでも二人とも妥協する気はこれっぽっちもなかった。

そのときだ。

「あれ? 二人ともそこで何してんのさ」

二人が声に驚き振り向くと、店の窓からにとりがひょっこりと顔を出していた。

「あれ、にとりじゃないか。いつの間に来てたんだい?」
「え? ずーっといたんだけど」
「また勝手に上がり込んで」
「だって開いてたんだもん。いいじゃん別に」
「……店の品物なくなってないだろうね?」

霖之助は思わずため息をついて家の中に入る。すると文も無言でその後ろをついてくる。そして彼が店の奥の椅子に腰掛けると、彼女も机を挟んで正面の椅子に腰掛けた。

二人のただならぬ様子を見てにとりが思わずつぶやく。

「いったいどうしたのさ……?」

彼女の問いに対して、如何にも不機嫌そうな面もちで文が答えた。

「霖之助さんったら私を置いて一人で帰ってしまったんですよ!」

するとすかさず霖之助が言い返す。

「何を言うんだ。僕は君の要望には応えたんだ。あとはどうしようと僕の勝手だろう」
「……あ、あの、二人とも、とりあえず落ち着いてよ」

全く状況がつかめないにとりは、おろおろとしながら二人に声をかけるが、二人ともお互いにそっぽを向いたままだった。

こんな時はどうしたらいいものだろうか。彼女は腕組みをしてしばらく考えた。そして出た答えは。

「じゃ、私そろそろこの辺で……」

あまり関わるとまた面倒ごとに巻き込まれそうだから、今のうちにこの場を立ち去った方が得策だと彼女は判断したのだ。

にとりはそろりそろりと玄関の戸を開けて出ていこうとする。

「待ちなさい! にとり、あなたならきっとあれが何なのかわかるかもしれないわ!」

そう言って文が勢い良くテーブルから立ち上がった。

「え?」
「そういえばあなたは機械とかに明るかったものね!」
「うん……まぁ……」

話が飲み込めないにとりは生返事を返すが、そんなのお構いなしとばかりに文は期待の眼差しを向けている。

どうやら、時すでに遅しと悟ったにとりは思わず心の中でうめいた。



――結局こうなるんかいっ




「さあ、二人とも! あの谷を越えた先ですよ!」

 文の溌剌とした声が山中に響く。彼女の後ろを飛んでいるにとりは、思わずため息をついた。

「もう、にとりったらさっきからため息なんかついてどうしたの? 目的地までもうすぐじゃない」

一緒に飛んでいた静葉が彼女に言葉をかける。にとりはその紅葉神の方を見てもう一回ふうと息を吐いた。

「あの……さも当たり前のようにいるけどさ、どうして静葉さんまで一緒について来たの?」
「あら、私が居ちゃお邪魔だったかしら?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけど……」

にとりはどこか腑に落ちないといった感じで思わず首をひねった。

「二人とも、下を見て下さい! あれが問題の物体です」

文の言葉に二人が下を見下ろすと、巨大な鉄の網のような物体が眼下に映った。

「すげぇ……なにこれ!?」

その巨大な物体を見たにとりが思わず声を漏らす。さっきまでの心のわだかまりは、既にかき消えていた。

「椛が今朝見つけたんですよ。どうやら昨日の夜辺りにどこからか落ちてきたみたいですね」

三人とも地面に降りてその鉄の籠のそばまで近づく事にした。

「これはなかなかの技物ね。いい仕事してるわ」

と静葉がつぶやく。

「あれ、静葉さん。もしかしてこれがなんだかわかるの?」
「ええ、わかるわ」

静葉はにとりの問いに、はっきり答えるとにやりと笑みを浮かべた。

「へえ。んじゃあ、これは何に使うものなの?」
「これは空中に漂っている色んな物を拾う事が出来るものよ」
「空中に漂ってる色んな物……?」
「そう、これを使えばいろんな事が出来るの」

明解に返ってくる彼女の答えを、文はふむふむと相づちしながらメモをしている。しかし、果たして彼女の言ってる事は本当なのだろうか。にとりが確かめてみようとする前に、文が尋ねた。

「ねぇ。静葉さん、ずいぶん詳しいようですが、どうしてそんなにご存じなんですか?」

どうやら彼女も同じ気持ちだったらしい。無理もない。彼女は秋の神様であり、こういう人工物に対しては縁のなさそうな存在だ。

ところが、彼女からの返事は意外なものだった。

「だって私、元々外の世界にいたんですもの」
「なんと!?」
「ええっ!!?」

衝撃の事実を聞いた二人はほぼ同時に驚きの声を上げた。静葉は「あら、二人には言ってなかったかしら」などと言いながら笑みを浮かべている。

「では、信憑性は高いですね! なんせ外にいた者が言うんですから!!

文も俄然気合いが入った様子で自然と語尾も強くなってくる。

「それでいろんな物とは具体的に何なんでしょうかっ!? あの役立たずの道具屋はでんぱとか言ってましたが……」
「それは私も見た事はないわ。目に見えないものですもの」
「目に見えないとな……?」

メモをする文の手が止まる。

「つまり……目に見えないいろんな物をつかまえる事が出来る……ということですか?」

文の言葉に静葉は「そうよ」と、相づちを打つ。

「ふむ。目に見えないのにつかまえられるもの……まるで謎かけみたいですね……」
「外の世界では私たちの常識は通用しないのよ」

そう言うと静葉は、少し挑発的な笑みを浮かべた。

「ふむふむ、なるほど……電波か」

当惑する文を尻目に、にとりは、ぽつりとつぶやくと思わず口元をゆるめた。

元々エンジニアの知識を携えている彼女は、電波というものが何をする物なのかすぐに見当がついたのだ。もっともそれは外から流れてきた書物から得た知識だし、河童の間でもまだそれほど普及していない技術だ。

ぜひ今すぐにでも自分の住処に持って帰って詳しく調査したい。彼女はそんな衝動に駆られるが、いかんせんその獲物はあまりにも大きすぎた。

「う~ん。出来れば持って帰って調べたいけど、ちょっと大きすぎるねぇ……」

にとりが途方に暮れていると、静葉が一言。


「それならここにあなたの研究所建てればいいじゃない」


その考えはなかった。




 それから数週間後。アンテナのあった場所の横には施設が建てられた。施設と言っても木製の粗末な小屋で、いかにも急拵えといったものだったが、その中は河童にしかわからないような装置で埋め尽くされていた。
横倒しになっていたアンテナは起こされ、土台をつけて倒れないように補強されていた。

山の山腹にそびえ立つその姿は麓からでもはっきりと確認する事が出来、今や、山のちょっとした有名スポットにすらなっていた。


「ふむ、電波ねぇ……文献で記事を読んだことはあるよ。だが、まさかあのパラボラアンテナが関係してるとはね……」

霖之助は天狗の新聞記事を読みながらひとりごちた。すると脇にいた文が冷たい口調で言い放った。

「ま、あなたに任せていたらきっと今でもわからないままだったでしょうね」

彼女はどうやらまだ根に持っているらしく、あれからずっと霖之助に対しては厳しい事ばかり言い続けていた。

「さてと。新聞は渡しましたし、いつまでもこんな辛気臭い所にいるわけにはいきません」

そう言うや否や、彼女はさっさと霖之助の元を去って行ってしまった。

「やれやれ……いい加減機嫌を直してくれないものかね」

霖之助は思わず大きく息をつく。

とは言うものの、きっとこれでもまだ加減している方なのだろう。これで自分が新聞の購読を断った日には、それこそ根も葉もないような醜聞をでっち上げられたうえに新聞によって流布されてしまうのだ。考えただけでも恐ろしい。

そう考えた霖之助は、天狗だけは敵に回さないようにしようと心に誓うのだった。


文が山へ帰ってくると何やらアンテナ周辺が騒がしかった。
気になった彼女が近づいてみるとその理由はすぐ分かった。



アンテナが踊っていたのだ。


その鉄の体をどういう理屈なのか知らないが、グネグネと捻りながら左右に揺れていたのだ。その度に周りに振動が走る。
これは妖怪にとってはいい迷惑だ。この施設の主であるにとりは、案の定、アンテナのすぐ近くで慌てふためいていた。

「ちょっと、にとり! なんなのよこれ! アンテナってこんな動きをするものなの?」
「いや、そんなはずないでしょ!? 私にも何がなんだか……」

文の問いかけににとりは、わけがわからないといった様子で答えると、暴れるアンテナの様子をしばらく眺めていたが、ふと何かに気づいたようにつぶやいた。

「あ、この動きって……」


その頃、秋姉妹の家では。

「……ねぇ姉さん。なんで庭の木が動いてんの? 踊ってんの?」
「フラワーロックって奴の真似をしてみたのよ」
「フラワーロック……?」
「そ、踊る花よ。かっこいいでしょ」
「はぁ……」
「あ、そうそう、今、山のにとりのアンテナの方に行くと、きっと面白いのが見れるわよ?」
「……」

眼の前で繰り広げられる木々の怪しい踊りに圧倒された穣子は、それ以上何も言えなかった。

静葉は香霖堂から持ってきたフラワーロックを手のひらに乗せニヤリと笑みを浮かべる。フラワーロックは、彼女の手の上でニヒルな笑みを浮かべて延々と踊り続けていた。


彼女らの元に怒り狂ったにとりが殴り込みに来たのは、それから間もなくしての事だった。
府中にある巨大アンテナが取り壊しになるかもという話を聞いて。
バームクーヘン
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コメント



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1.90奇声を発する程度の能力削除
想像したらエライ事になったw
12.90名前が無い程度の能力削除
オチにワロタ。
13.90名前が無い程度の能力削除
結局静葉さんはフラワーロックを持っていったのかw