Coolier - 新生・東方創想話

レミサナの日常 山登り編

2011/10/21 00:00:59
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歩くという行為は、自転車 自動車 そして私たちのような飛べる存在から見れば無駄な行為である。
だが私たちは歩くということを好む。
別に飛ぶのが疲れるとかそういうことはない。道によればそれこそ歩くほうが面倒なことこの上ない。
その面倒で無駄なことの陰に、四季の楽しみがあるのが歩くという行為だと思う。
秋ならば空から見る紅葉も綺麗であるがそれだけでは味気ない。
春ならば桜吹雪を上から見るだけでなく、その中に入り花に囲まれるというのは幸せのひと時だろう。
「妖怪の山も参道は結構自由になったものね」
咲夜の用意してくれたお泊りセットをピンクのリュックに入れ、私は迎えに来てくれた早苗とともに山登りを楽しむ。
入口付近で2人の天狗に出会ったが、早苗がいるということでとくに護衛の必要もないと悟ったか一礼だけして見張りの仕事を続けている。
基本的には守矢神社への道は安全が保障されているが、念のためにと天狗が護衛についてくれるときもある。
彼らとて他の仕事もあるので常に護衛がいるわけではないが、噂が好きな種族だけに人間との会話も楽しいとこの仕事をやりたがる者は多いとのこと。
早苗がいなければ、吸血鬼なんて一部の天狗以外接点がないので不必要な護衛を名目に会話を楽しんでましたよと早苗は言う。
文だけでもお腹いっぱいなのに、これいじょう新聞記者が増えたら歩くよりも面倒な日常になってしまう。
「霊夢さんも仲のいい妖怪と協力すれば、参拝客が増えると思うんですが」
「思うだけだと思うわ。博麗神社には神様がいないもの」
結界を管理する場所であって、守矢とは根本的に存在理由が違うのだ。
ただ巫女としての力はあるし、何か神社という形に意味はあるみたいでお賽銭箱なども置いてあるだけである。
「一応うちの分社があるので、今なら神奈子様がいる形になったんですけど……」
どう見ても守矢神社のほうが交通の安全が保障されている。
「博麗としての生活の保障はあるんだからお賽銭が無くてもいいんじゃない。運命を操ってお賽銭を入るようにしてくれとか言い出したら愛する霊夢でも殴るけど」
「あはは。萃香さんもお賽銭を萃めてくれと言われたら殴るって言ってましたね。私も頼まれたら殴っちゃいましょうか」
「いいと思うわよ」
無駄は楽しむものだが、本当に無駄なことは嫌いである。
気まぐれで運命を弄って人の人生を大きくかえたこともあるが、その全てが何かしら努力や望みをかけて生きてきた者だけである。
それだけに能力というキッカケ1つで大きく人生の波が変わるのだ。
「努力せず成果はなしってね。で、この看板は河童なりの努力かしらね」
機械類などの修理受け付けます。にとり。 と、書かれた看板が分かれ道のところに置かれている。
錆や汚れがないところを見ると、最近つけられたものであることが分かる。
盟友盟友と言いながらも魔理沙ぐらいしか関われなかったあの照れ屋の河童も頑張るものね。
「幻想郷で使える機械類って言ってもそれほど大したものはありませんがね。レコードが最近ではにとりさんのお蔭で阿求さんのところで流れてますね」
たしかに紅魔館みたいに水力を利用した発電機などを用意しない限り、ここには発電所という建物が存在しない。
うちの電力は冷蔵庫とアニメ鑑賞で一杯一杯で明かりはローソクのままである。
蛍光灯という奴は何度か体験したが好きになれないわ。ただ病弱の親友が暗い所で本ばかり読んでいるので、図書館の一部には何かしら明かりをおいてあげたいものである。
「里の冷蔵庫はおおむねチルノの仕事よね。あの子何気にお金あると思ったら能力生かしたいい仕事してるわ」
バカだの言われているけれど、人が言うほどチルノはバカじゃないのではないかしら。
少なくとも里のお店で金銭を支払って食事をするのだから、香霖堂でツケをためている巫女と魔法使いよりは立派だわ。
「えぇ。彼女がいるので里の皆さんは冷蔵庫は不必要だって言ってますね。お駄賃をあげて好きなお菓子を買うんだって笑顔が見れなくなるのも寂しいと、孫のような気持ちで接している方もいましたし」
天真爛漫な妖精の魅力なのかしらね。
見てくれは子供だけれど、紅魔館のお金の管理をしている私はお小遣いというものを貰ったことがない。
逆の気持ちというものも気になるところだわ。
「にとりさんところを見に行ってみます?」
「そうね。彼女も非想天則に興味深々だったしロボットアニメも好きになってくれるはずね。今度うちに来るように声をかけておきましょう」
気が付いたら私も立派なロボットアニメファンである。
ただ紅魔館の面々はロボットアニメ好きはおらず、美鈴はプリキュアというのに興味を示していた。
打撃と魔法の組み合わせが新しい道につながりそうです!とキュアブラックを研究していたわ。
私としてはGガンダムのファンになると思っていただけに意外だったわ。
「では寄り道ですねー」
これこそが歩きの醍醐味である寄り道。
時間に余裕がある生き方ができるときは最大限に無駄を楽しむ。それこそが人間との思い出の残し方だわ。
……目の前の親友はこれが奇跡です! と言いながら守矢の3柱に進化しそうではあるけれどね。
魔理沙にしても仲のいい人間でそのまま寿命がきてぽっくり死にそうな奴がいないわ。
「やぁ親友」
「それは私のフレーズのぱくりかい?」
店に入るなり私はカウンターの上で機械いじりをしているにとりに声をかける。
「あなたのフレーズの盟友は人間相手にじゃない。だから、私はあなたを親友って呼んだのよ」
「……あははは。天狗の噂で聞いていたけれど、噂の通り悪魔とは思えない」
「悪魔もフランクな時代よ」
別に血の契約も信仰もいらないんだけれどね。幻想郷で楽しく生きるコツではあるわ。
「それは初耳。それで今日は何か依頼かい?」
「残念ながらうちの家電はまだ壊れてないわ。ただ、ロボットアニメが早苗のお蔭で多く見つかったので今度見に来ないかとお誘いよ」
「ロボットアニメだって!? 非想天則のようなロボの漫画が自動で動くあれだろう!? いいのかい!?」
テンションゲージが振り切れて今にでも鼻血を流しそうな勢いで私に詰め寄る。
河童相手でもこの勢いで迫られると後ろに下がってしまうわ。
「え、えぇ。かわりに紅魔館の家電が壊れたときには修理に来てもらいたいのよ」
「それぐらいお安い御用さ。出張費もサービスでいいよ。簡単な修理なら代金もなくてもいい。だから、ぜひそのコレクションを見させてくれないか!」
ここまで待遇よくなるお誘いになるとは思わなかった。
香霖堂店主含めて好きすぎる人には最高の交渉手段なのかしら。
「えぇ。私たちが見終えた者なら、にとりになら特別に貸し出してもいいわよ」
「よし! 紅魔館のお抱えメーカーとで言ってくれてもいいよ。もちろん守矢神社のほうもね!」
早苗がいなければこのアニメ発掘は進まない。
そのことを察し早苗へのアピールをしっかりと忘れないあたりやり手である。
「じゃあ、私のコレクションも今度ぜひ見に来てください。模型もあるので参考になりますよ」
「それは嬉しいお誘いだよ。今度ぜひ紅魔館と守矢神社に行かせてもらうね」
「いつでもどうぞ」
「パチェ達にも言っておくわ。気兼ねなく来なさい」
これで我が家の家電事情は安定ね。
別にそれだけが理由ではなかったのだけれど思った以上に喜んでくれてなによりだわ。
「ではまた会いましょう」
にとりに別れを告げ、私たちは改めて神社をめざし歩く。



次に目に入ったものは文々。新聞本社とデカデカと書かれた建物である。
天狗の住処をここまででかでかと宣伝していいのか?
「文さんが引っ越し準備していると聞いてましたが、まさか参拝道に住まいを構えるなんて……」
「知らなかったの?」
「普段は飛んでますからね。それに天狗の里はもっと奥地ですよ。ある意味天狗社会では辺境の地に引っ越したものです」
変わり者だとは思っていたがここまで変な奴とは思わなかったわ。
「辺境とは失礼ですね。私の速度なら大した差ではありませんよ。それ以上に話のネタになる他の種族の生活圏に近いほうが新聞も売れるというものです!」
窓から飛び降りてきた天狗が別に聞いてもいない話を始める。 
ここまでくると見上げた根性だわ。
内容はどうであれその執念は他の天狗のいい加減なだけのものとは比べ物にならない熱意がある。……彼女が天狗の中で新聞大会の優勝をほとんど取れていないのが不思議なぐらいだわ。
「ところでレミリアさんがここにいるなんて珍しいことがあるものですね。まさか山を侵略に!?」
「ないない。親友の家に遊びに行くだけよ」
今の私が妖怪の山攻略なんてしたら、友達の家で大暴れするバカになるじゃない。そんなマネしたら咲夜にどれだけ怒られるか分かったものじゃないわ。考えただけでも恐ろしい。
べ、別に咲夜に怒られるのが怖いだけじゃないわよ。私のほうが偉いし!
「ですよねー。それぐらい過激な事件があっても面白いんですが。紅い悪魔 妖怪の山侵略準備か!ぐらいの記事にしかなりません。まぁそれでいいか」
「いいわけあるかー!?」
思わず声をあげて突っ込みを入れる。
さすが1つの事実を2倍3倍にも膨れあげて、脚色を重ねるだけ重ねる新聞なだけあるわ。
「読者は過激な一面を求めてるのですよ。紅魔異変以降おとなしいレミリアさんが何かしでかしたとあれば、キミの瞳を釘付けにすること間違いなし!」
「そうでしょうね。でも、そんな記事書いたら、あんたの家にだけ紅魔の兵力をもって進軍してやるわ。おもにフランの能力的な意味で」
「間違いなく家が吹き飛ぶのでこの記事は諦めるとしましょう。とりあえずレミリアさんのお散歩でも面白おかしく記事にさせてもらいますよ」
やれやれこの天狗も仕方がない奴だわ。悪い奴ではないんだろうけど、仕事熱心すぎて友達できそうにないわね。
「どうせなら巨大ロボットの記事の1つでもあれば読んであげるけれど、天狗の趣味じゃそんな面白いアニメ文化よりもワイドショー的なものが好きなんでしょう」
「……巨大ロボットといいましたね」
あれ、なんか地雷踏んだ?
それとももっとやっかいな何かを踏み抜いたかしら。
「早苗さんも愛読しているこの雑誌なんていかがでしょうか!」
文々。新聞特別詩。スーパーロボット!
「何これ」
「外の世界のロボットの設定集などを見せてもらい、私なりに作り上げたロボットアニメの雑誌です。今では幻想郷は紅魔館と守屋神社のおかげでロボットアニメという娯楽が1つのブームです。私も初めは馬鹿にしていましたが、早苗さんの熱い熱意に折れて視聴したところこれほど素晴らしい作品を見下していた自分が恥ずかしい。そんな思いから思わず筆をとってしまいました!」
シアタールームの集客率が最近信じられないぐらい多い理由はこれだったのね。
数ページ眺めてみたが、実に細かくロボットのイラストが描かれている。
「どうですか。これなんて塗るのに3日かかりましたからね!」
「文さん腕あげましたねえ。オリジナルで作品作れるんじゃないですか」
「早苗さんに言われると鼻が天狗になってしまいますよー」
あんたもう天狗でしょ。
「シアタールームにあれば喜ぶ人も増えるでしょ。いいわ。2部定期購読してあげる」
「ありがとうございます!」
なんていうか普段の新聞よりも気合が入ってる気がするわこれ。
紙を折り曲げただけのようなものと違い、きっちりとハードカバーの本に仕上がっている。
2000円。
納得の値段が裏表紙に書かれているわね。
「映画鑑賞会する時にその本なら売り出してもいいわよ」
「それは嬉しいですね! 趣味で作ってるだけに結構お財布に響いてるんですよ」
「じゃあ今度うちに来てその辺の契約をしましょう」
今日だけで2件の仕事を確保できるなんて嬉しいわね。
図書館のシアタールームも場所を変えて庭先に映画館レベルの物を作ってお客さんの数も増やしたいわね。
そうなると地底と博麗神社にいる鬼に声をかけて建築の手伝いをお願いしたいわね。
「あんた1本角の鬼と交流あったわよね」
「勇儀さんですか?」
「えぇ。彼女を今度博麗神社に連れてきてくれるかしら。見返りになるかは分からないけれど、彼女達が話にのってくれたら新聞のネタになりそうなものを提供するわ」
「う~んそうですねえ」
元上司とはいえできれば鬼とは関わりたくはないのだろう。
「分かりました。新聞のためとあればお任せください」
それでも新聞のネタを選ぶあたり他の天狗よりもやはり熱意は上よね。
「早苗も喜ぶものが作れそうだわ」
「私がですか?」
「ふふ、映画館なんて素敵と思わない?」
「おお! 劇場版のF91とかがスクリーンで見れるわけですね!」
「その通りよ。さすがにフィルムじゃなくてVHSとかになるけれど、今のシアタールームよりも里の人も喜ぶ娯楽になることは違いないわ。上映の時は里と紅魔館を美鈴達に頼んで護衛を兼ねて馬を走らせれば問題ないものね」
「私もお手伝いします! あぁ逆襲のシャアがスクリーンで見れるなんて幻想郷に来てよかった!」
本当にガンダムが好きねぇ。
あとは外の文明を使うから紫にも相談しておかないとね。幻想郷に外を入れすぎてはいけないもの。
映画館で人が賑わう街なんてものは外にはもう無いか。
人はどれほど文化を忘れ文化を生み出してきてるのかしらね。
「なんていうか早苗さんって私が手にした雑誌に描いている外の女の子とは全然違う気がします」
「ロボットアニメが絡まなければ大和撫子よ。……ロボットが絡んだら察しなさい」
「そうですね」
趣味にここまで熱くなれるのはいいことだと思うわ。
早苗のおかげで時間を無駄に長く生きる妖怪にはならなくて済みそうだし、面白い空気は幻想郷に吹き荒れてるわ。
「文屋。また今度ね」
ここで立ち話も悪くないが、今回の目的は守屋神社でお泊りである。
きりのいいところで文屋に別れを告げる。
「はい。ではまた今度です」
今度ですと言いながらおそらく遠くから私たちを撮影しているのでしょうね。
慣れたことなので気にせず私たちは参拝道を歩く。
「鬼達も人も騒がしいことは好きなものよ。映画館もきっと素敵なものができるでしょう。1900年代アメリカの校外みたいなイメージがいいわ」
「豪華な映画館にすると思ったけど違うんですか?」
「それは外の世界にもまだあるわ。幻想郷にしか存在しない古い時代の映画館。そういう魅力も私は分かるのよ」
カントリーマァムっていうのよね! 私知ってるよ!
そうと決まれば、夜は神奈子達とお酒を飲みながら手伝いを頼もうかしらね。
皆が喜ぶことをするのが王と名乗る者の役目だもの。
PCのHDDが壊れた。バックアップあるもんね(どやぁ と思ってたら外付けHDDも壊れた。小説のデータ全部消えた。
あまりの悔しさにゲスト原稿ほったらかしてレミサナ書いてやった。しかも続き物なのでこのまま続編も書いてやろうと思う。
八神桜花
http://harunohanahubuki.blog81.fc2.com/
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コメント



0.880簡易評価
1.80奇声を発する程度の能力削除
お話のテンポが良く面白かったです
4.90名前が無い程度の能力削除
時代はクラウドで、ローカルストレージもそろそろ幻想入りかな…
それはそうと、相変わらずクールなレミリアさんが見れて幸せです。
5.100名前が無い程度の能力削除
IGLOOもありですよね!
この組み合わせマイナーでも自分は好きですね
18.90名前が無い程度の能力削除
F91も逆シャアもスクリーンで見れるときに生まれてなかったのが悔しい……
ちょっくら幻想郷行ってきます
ダブルオーは見たんですけどね、うん
やっぱF91がいいや
19.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです
21.無評価八神桜花削除
>>奇声を発する程度の能力さん
UPするたびに見ていただいてありがとうございます。
シリアスとか書けないので、こういうリズム感ある作品で褒めてもらえると凄く嬉しいです。

>>4
VHSは間違いなくローカル入りしてそうですね。
2年前ぐらいからついに近所のコンビニからテープが消えました。
基本クールだけど ときどきブレイクするのが可愛らしさかなと思います。

>>5
IGLOOは素晴らしい作品なので早苗さんは家宝にしてること間違いなし。
マイナーでも「ところ変われば神と悪魔は変わる」なので二人が仲良しでも問題ないんです。

>>18
F91はなんとか生まれてたけれど映画館いってくるわーって年齢には届いていませんでした。
でも、小学校入る前にガンダムは見始めてましたねw
幻想郷にいけば紅魔館でF91 逆襲のシャア ナイトガンダム物語が映画してますよ。

>>19
ありがとうございます!
次も面白かったといわれるよう頑張りますね