Coolier - 新生・東方創想話

鼻に山葵は正直やりすぎたと反省している。

2011/10/01 03:03:45
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「凄い、布都が息を引き取ってからもう一月経つと言うのに全く体が腐っていない」

驚きと少しの恐怖を含んだ神子の声が響いた。
尸解仙となるための術、青娥の言っていた術は彼女の言ったとおりのものだった。
これならばしかるべき後に自分も尸解仙として復活できる。神子は確信した。

そんな驚きの声を上げる神子の横で屠自古は暗い顔をしていた。

「太子様」

「何ですか屠自古?」

「もう、私は貴女達が復活するまで話す事も会う事も出来ないのですね」

寂しさを含んだ声だった。

「コイツと軽口を言い合う事もしばらく出来ないのですね……」

「屠自古……」

蘇我と物部、宗教対立をしていた彼女らの一族の因縁から屠自古は尸解仙にならないと決めた。

だが決して二人の仲が悪いわけではない。むしろ布都は屠自古も尸解仙になる事を望んでいた。
それでも屠自古が尸解仙になる事を望まなかったのは神子と布都を守るためでもあった。
蘇我が物部に打ち勝ち仏教が広まったこの国で道教は邪教だ。
もしも尸解仙になろうとしている二人の事が世にばれたら殺されかねない。
だから外から二人を守る者が必要だった。
屠自古は蘇我の者の中でもそれなりの地位にいた。
役目を全うするならば打って付けだった。
だから因縁を理由に尸解仙になる事を拒み二人を守ると誓った。

対立をしていた蘇我と物部であったが、その中で布都と屠自古は悪友と言う感じだった。
互いに軽口を叩き合う仲、それが二人の関係だった。
傍から見れば仲が悪いと思うかもしれないが彼女らを知る者から見れば親友と呼べる仲だった。

屠自古は友人を守るため、慕う者を守る為に自ら貧乏くじを引いた。
屠自古も青娥から道教を学んでいた。ならば尸解仙になりたくないはずなどない。
それでも『尸解仙になってもいずれ朽ちる身体なら私は青娥殿の術で亡霊となり貴女の復活
と共に貴女の元に駆けつけ守りましょう』と言ってくれた。
そんな彼女に神子は頭が下がる思いだった。

「太子様、少し布都と二人きりにしてくれませんか?」

「……解りました」

何だかんだ言い合っていても仲が良かった二人だ。
何時再開出切るか解らない別れの前に挨拶をしておきたいのだろう。

「屠自古、私もこれより青娥殿に頼み尸解仙になる術で眠りにつきます、復活は何時になるか解りません
それまでの間、私たちの身体を宜しくお願いします」

「お任せ下さい太子様、お二人の身体必ず私が守り抜いて見せましょう」

こうして神子は屠自古に一礼し部屋を後にした。

「……布都」

そして一人になってから屠自古はしばらく目覚める事のない親友に語りかける。

「私が尸解仙にはならぬと言った時を覚えていますか?貴女は確かにこう言いましたね
『ならば屠自古、亡霊になったお主を我が家来としてこき使ってやる』と」

思い出し笑いか愉快そうに屠自古は笑う。
そして

「私が貴女如きにいい様に扱われると思っているのですか?私に命令をしていいのは太子様のみです」

ガラリと変わった屠自古の態度にこの場に神子がいたのなら驚愕していただろう。
しかし忘れてはならない、彼女達は親友であるが悪友でもあるのだ。

「全く貴女は何を考えているのか?と、そう言えば布都、貴女は童顔である事を悩んでいましたね?
この先いつ復活するか解りませんがその時のために髭でも描いて置いてあげましょう」

屠自古はどこからか墨を取り出し髭を描き始めた。

「ふぷ、貫禄が出ましたね、ふむ、ついでに瞼の上に目も描いておこう」

布都の髭面に思わず噴出しそうになるのを堪える。
普段なら抵抗する布都だがこうなっていると可愛い者である。
何も言わないし何も反応を返さない。まるで自分の好きにできる人形だ。

「くっふ、そ、そういえば貴女は最近鼻がよく詰まると悩んでいましたね、復活してから鼻声では
格好がつかないでしょう、安心なさいちゃんと対策を考えておきました」

笑いながら言って、今度は山葵を取り出しその辺にあった岩でゴリゴリとひたすらにおろし始めた。
摩りおろした山葵を舐めてみるとツンと鼻を通る刺激がある。
うむ、これなら大丈夫だろう。

屠自古は山葵の出来を確認するとソレを布都の鼻の穴に丁寧に詰めた。
ちょうど良い事にこの術は布都の眠っている棺にもかけられている様で棺の中にある物は
布都と同様に腐る事は無いと言う。
つまり布都の鼻に詰めた山葵は何時までも新鮮という事だ。

「そうそう目覚めた時お腹が空いていては可哀相ですから食料も持ってきましたよ
貴女が好きだった納豆とクサヤです棺の中ならば腐る事はないので復活した時食べると
いいでしょう」

屠自古は鼻を摘みながら納豆とクサヤを棺の中に仕込む。

「ああ、そうだ後は……」

ツッコミが不在のため止める者がいなく、暫く屠自古はやりたい放題していた。



――



「ふふ、これで何時目覚めても安心ですね、ええと布都?」

満面の笑みで屠自古は棺の中を覗く、何故彼女の語尾が疑問符だったのかを言えば
少しやり過ぎたからだ。
布都の眠る棺の中はもはや眠っている布都が確認できない程いろんな物で溢れていた。

「全く、貴女が止めないもんだからやりすぎてしまいましたよ」

やれやれと言った感じで布都に話掛けた。
いつもなら悪戯をすれば直ぐに怒ってきた。

「まぁ悔しかったら貴女もさっさと目覚めて何時もの様に仕返しする事ですね?」

悪戯をしたのなら直ぐにやり返してきた。

「あ、でもあまり派手な事は止めて下さいよ?太子様に怒られてしまいますから」

そして喧嘩両成敗で最後には何時も揃って神子に怒られた。

「ねぇ、布都?」

どんな悪戯をしても喧嘩をしてもいつもなら名前を呼べば必ず返してくれた。
のに

「何故、何も言ってくれないのですか?」

目の前で棺の中にいる布都は何をしても無反応で本当に人形と話しているみたいで

「何か、言ってくださいよ?……何時もみたく怒りなさいよ、二人で太子様に
怒られましょうよ?」

仮にとはいえ本当に死んでいるのだと解ってしまって

「嫌ですよ、私を一人にしないでくださいよ?貴女も太子様もいなくなっては寂しいじゃないですか?
私を一人ぼっちにしないでくださいよ布都」

ポタポタと大粒の涙がこぼれていった。

尸解仙となる二人を守ると決めた時からこうなる事は理解していた。
でも頭で理解していても身体は理解してくれてなかったらしい。
涙が止まらない、発する声は震える。

尸解仙として二人が復活するのは一体何時だ?
十年後か?百年後か?千年後か?それともそれ以上か?
自分はそれまでの孤独を耐えられるだろうか?
何故自分は尸解仙にならないと決めてしまったのか?

様々な考えが頭を過る。
ああすればよかったとかこうしとけばよかったとか、今更な事ばかり思いつく。

一人は嫌だ。でも二人を守れないのも嫌だ。
いつもと同じように三人一緒がいい。

一人ぼっち何て耐えられない。

「耐えられないよ太子様、布都……」

これから一人になる不安と恐れから屠自古はしばらく布都の横で泣き続けた。



――



その後の年月を屠自古は一人で耐えた。
仏教を見限っていたから本当の意味での仲間は布都と神子以外にはいない。
そんな孤独の中で耐え続けた。
その身が滅び、生前青娥にかけられた術で亡霊になってからも二人の目覚めを待った。


そして


屠自古は感じていた。
ココ最近様子がおかしい。
霊が何かを求めるように集まりだしている。
しかも自分の様な亡霊ではない、神霊だ。
これは前触れだ、二人が復活前触れに違いない。

喜んだ時、大きな力が近付いてくるのを感じた。
神子の復活を遅らせた寺の者かもしれない。

屠自古とて二人が復活するまで遊んでいたわけではない。
復活したばかりでは二人は存分に力を使う事が出来ないだろう。
ならば自分が二人を守ろう。
いつかの約束を果たす時が今なのだ。

また三人一緒になるために。

























屠自古が決意を固めた頃

「屠自古ーー!!!」

遠く棺の中から起き上がった布都が自身に施された悪戯を確認して怒鳴り声を上げた。
布都ちゃん復活おめでとう(挨拶)H2Oです。
私考えたんです、先に布都が眠ったのなら残った二人は悪戯し放題じゃないか!って
そんな感じで最初考えていたのは何処でどう間違ったのかR指定になりそうでしたので
書き直しました。
屠自古が二人を守るために尸解仙にならなかったり、でも寂しくて泣いたりした日にはもう……

最後まで読んでいただきありがとうございました。

奇声を発する程度の能力様
痛そうですね、私はあと少しで三歳の姪にやられそうになった事があります。
気付いて何とか私の鼻は無事でした。

ぺ・四潤様
そして豪族乱舞の時に神子まで巻き込む破壊力
「ど、どうしたのですか、太子様!?」とか言いながら顔を近づける。

8様
猫ヒゲ…?猫布都……、とても素晴らしいと思います!!

9様
亡霊ですからね、夜な夜なマジックでヒゲを書きに……

SARAyear様
本当に守ろうとしてなら屠自古もっと好きになりますね、山葵詰めますけど。
いやぁ、悪戯が何故か性的な悪戯になりそ…、おやこんな時間に誰かが?

16様
ひとりぼっちは寂しいですからね。

20様
まぁ可愛い悪戯ですよね?

直江正義様
ありがとうございます。
もしも屠自古がこんなんだったらもっと好きになりますよ、私。

コメントありがとうございました。
H2O
http://twitter.com/H2Oekijou
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コメント



0.1340簡易評価
3.80奇声を発する程度の能力削除
鼻に山葵て…ww
7.90ぺ・四潤削除
そして5ボス戦でどういうわけか突然笑い出し勝手に被弾しまくる主人公’sの姿があったという
「これが復活した我の真の力だ!!」
8.90名前が無い程度の能力削除
額に肉とは言わずとも、絶対なんか書いたな。米とかかな。布都に猫ヒゲとかどうよ?
9.80名前が無い程度の能力削除
亡霊ってのは怖いですね。
12.90SARAyear削除
自分から選んだとはいえ孤独は辛いですね。山葵詰めてるけど。
てかR指定って何書こうとしたのw
16.無評価名前が無い程度の能力削除
笑いと同時に切なさがこみ上げました・・・。
20.100名前が無い程度の能力削除
これくらい悪戯しても許されるんじゃないかなぁ…うん
27.80直江正義削除
なるほど、こういう話もありですね。
面白かったです。