唐突に秋の神様姉妹から、ジャガイモとサツマイモを頂いた。
人里で農業指導した結果、かなりの収穫が得られたとの事で、それでおすそわけに回っているという。
私はそんなに言われているほど、ひもじい思いをしているわけではないし、お賽銭が唯一の衣食住の獲得源なのではない。でもやっぱり嬉しいので、ありがたく頂戴する。
秋姉妹は嬉しそうに次のおすそわけ先へ歩いて行った。結構な量を抱えていたのでたぶん魔理沙やアリスの家にも行くのだろう。
さて、と私はざる一杯のお芋を見る。
「やっぱり、ふかし芋にしようっと。あれなら冷めても美味しいし」
「ねえ霊夢、何作るの?」 畳に寝転がっていた萃香が声をかけた。
「お芋貰ったから、ふかし芋にしようと思うの」
「うわあ、お酒にも会いそう」
「あんたも手伝いなさい」
外に人の気配がした。魔理沙だと思ったが、チャイナドレス風の服に、萃香のような鎖のアクセサリー? を腕に付けた少女の姿が見えた。最近神社に出入りして霊夢に説教をする仙人、茨華仙こと茨木華扇だった。
「霊夢、ちゃんとご飯食べてますか」
彼女が萃香の姿を見たとたん、はっとして口を手で覆う。
「あなたは伊吹!……幻想郷にいたのですか?」
「おお茨木、ずいぶん変わったなあ。あんたもここへ流れついたのねえ」
「ねえ、二人は旧知の仲なの?」
「そう、窮地の仲でもあったわ、ともに修羅場をくぐりぬけた、ね」
なぜ仙人と鬼が知りあいなのか、霊夢は不思議に思ったが、人も人外も色々な過去を背負っているものだと言う事を思い出し、向こうから言うのでもない限りそっとしておこうと思った。
「霊夢、このお芋も決して天から勝手に湧いてくるものではなくて、多くの労働と知恵と工夫で作られているものなのですよ」
堅苦しい事を言う仙人少女。
「私だって自然の恵みに感謝しているわよ。まるで私が食べ物をないがしろにする前提の物言いね」
「しっかしなんだねえ、清い空間であるはずの神社内に二人も……いや、まァいいか」
私は水洗いしたサツマイモの太い部分の皮だけを包丁で切り、塩水につける。ジャガイモは洗ってそのまま置く。
火を起こそうとしてかまどに行こうと思ったけれど、そろそろ魔理沙が遊びに来る頃だったのであいつにやらせよう。
空に黒い点が現れ、だんだんと箒にまたがった魔法使いの形が見えてくる。
「よう霊夢、賑やかだな」
「魔理沙、秋の神様たちからお芋貰ったの、食べてっていいから八卦炉で火起こしして」
「おやすい御用だぜ」
魔理沙が八卦炉をかまどの中に入れ、火を起こしている間、私はまずサツマイモを水の入ったふかし鍋に入れ、鍋とふたの間に布巾をはさんだ。
私がかまどで火を起こすよりずっと早く、八卦炉から火が上がった。そこに鍋を置いて、3~40分ほど待つ。その間、私達は沸かしておいたお茶を飲んでおしゃべりにでも興じよう。
「それにしても茨木とここで会えるなんてねえ」
萃香が相変わらず瓢箪の酒を飲みながら、華仙の肩に腕を回す。
「こちらこそ意外でしたよ、伊吹もここへ流れ着いたのですね」
「なあ、二人はどういう仲なんだ」
「昔私達もやんちゃだった頃があってねえ、こいつも今でこそ仙人面してるけど……」
「それ以上言わないで下さい」
「むぐぐっ」
華仙が瓢箪を萃香の口に押し込んで強引に黙らせる。
「まあ、幻想郷に流れ着く奴で『ワケあり』じゃない奴なんていないがな。言いたくないなら詮索はしないぜ。私も昔色々と、な」
「ところで茨木、あんた死神から定期的に狙われているんだろう。手を貸そっか?」
長生きすればそれだけで罪も自然と深くなると言う。だから仙人は死神から監視されていて、ときどき刺客も現れるらしい。仙人も楽じゃないのね。
「きちんと撃退しているから大丈夫です」
「もしきつかったら、いつでもあんたの片腕代わりになってやるよ。覚えといて」
「ありがとう伊吹。その時はお願いしますね」
適当におしゃべりに興じながら、時々サツマイモに箸を刺して、中まで柔らかくなっているかを調べる。水が尽きそうだったので何度か補充した。そうして30分ぐらい経っただろうか? ようやく芋が十分柔らかくなったのでざるに移し、ちゃぶ台へ持っていく。
「待ってました~」
「萃香、あんた結局なにも手伝わなかったじゃない」
「まあまあ、食べようぜ」
少し覚ましてから、芋を半分に手で割って食べてみる。
乾き過ぎも湿り過ぎもしないほくほくした食感と、塩味と自然の甘みが合わさって、
みんなの顔がたちまちほころんでゆく。仙人である華扇も含めて。両手で芋を持って食べる彼女の表情は、到底修行をしている者のそれとは思えない、はっきり言ってかわいい。
「むぐむぐ、おいしい♪」
「おい、華扇のそういう顔、初めてみたぜ」 魔理沙が笑う。
「はっ! いや、なに人の顔じろじろ見てるんですか」
「全ての欲を断つ、みたいな修行をしているあんたも、味覚を楽しむのね」
「こ、これは、修行の息抜きみたいなもので……」
「まあ、あんまいじめるなよ、私の友人だし」
萃香が助け船を出すまで、華扇は顔を真っ赤にしてうつむいていた。
芋を半分食べた所で、ぽつり、ぽつりと地面に点が生まれ、雨が降ってきた。
「洗濯物取り込まなきゃ」
私は外に出て、いそいでシーツや巫女の服や下着類をかごに放り込む。他の面々は呑気にふかし芋を堪能し、萃香は酒を飲んでいる。呑気なものだ。さっさともどってお芋食べよう。
「ふえ~ん」 境内につながる階段で、誰かの鳴き声がした。
また厄介事かと思いながら視線を動かすと、一人の妖怪が雨に濡れながら、しゃがんで両手で頭を抱えている。お忍びで遊びに来たレミリアだった。
「レミリアじゃないの、ああそうか、雨にぬれて動けないのね」
「霊夢、おぶってって~」
「はいはい、しょうがないわね」
急いで玄関にもどり、洗濯かごを置く。奥の部屋ではみんなの会話が盛り上がっているらしく、魔理沙の笑い声が聞こえた。人がこんなに苦労していると言うのに……。私はため息をつきつつ、流水に囲まれて動けないレミリアを助けに外へ走る。
「霊夢遅い」
レミリアに背中を向けてしゃがみ、両手を後ろに回す。
「世話が焼けるわね、ほら、さっさと負ぶさる」
レミリアをおぶって神社へ戻り、私は天を仰いだ。
ふかし芋がことごとく消滅しているじゃないの。
「どういう事よ? 言い訳があるなら聞くわ」 私は意識して冷静な口調を保った。
「す、すみません霊夢、萃香といろいろ昔の話をしていたら……つい夢中になっちゃって」 華扇がばつが悪そうに説明した。
「で、気が付いたら全部なくなっていたと?」
魔理沙が血相変えて釈明する。
「まあ霊夢、話を聞け。その上さらにあの覚妖怪の妹がふらっと現れて、芋を勝手に食べちまったんだ。本当だ」
見ると、黒い帽子をかぶって、黄色の上着と緑色のスカートをはいた少女がちゃっかりお芋を食べていた。何てこった。
「これすっごく美味しいよ、さすが博麗だね」
しばらく無言で立ち尽くす私。幾ら嘆いてもお芋は戻ってはこない。永遠に。
「まあ霊夢、芋はまだあるし……ん? おお、これはこれは」
魔理沙はなおも私をなだめようとしてくれたが、急に空っぽのざるを手にとり、まるで芋がそこにまだあるかのように手を動かした。
「おう、これは奇跡だぜ、信じられないぜ」
魔理沙は架空のふかし芋を二つに割り、鼻を近づけ、芳香を嗅ぐ仕草をしている。
わけわからん。
「なにパントマイムでごまかしてんのよ」
魔理沙は半分に割った架空のお芋を、ぴくぴくと震える私の頭に載せて言う。
「霊夢、間違いない。これは八卦炉の魔力で芋が変質した、不老不死をもたらす伝説の『不可視芋』だぜ」
「吹かしコイてんじゃねえぞ」
「すみません」
日没まで時間があったので、魔理沙と弾幕ごっこで遊び、秀才は所詮秀才に過ぎないという事をたっぷり学習させてやった。ついでに萃香にも、化け物を倒すのはいつも人間である事を分からせてやった。まあ、どっちも結構強かったけれど。
「じゃーな霊夢」
「次はもっとましな洒落にしなさいよ」
「角折られた、また生えてくるけど」
騒がしい面々が帰った後、神社には嘘のように静寂が戻る。秋の虫が鳴いている。
「霊夢、できましたよ」
「ありがとう」
私を見かねた華扇が、また蒸かし芋を作ってくれた。今度はジャガイモ。素直に礼を言う。
そのうち一つを皿に載せ、箸を刺して割り、塩を振る。その後、華扇が小さな瓶から白い塊を取り出して包丁で切り、四角い切片をアツアツのジャガイモの上に乗せる。バターと言うものらしい。
「里で手に入れてきました、牛乳から作ったものです」
「へえ、白沢のおっぱいだったりして」
バターが溶け、脂肪分の香りが漂ってきた。おもわずつばを飲み込む。
「いただきます」
ジャガイモのかすかな苦みと、塩とバターの味が合わさって、私は味の事は良く分からないが、ついがつがつと食べてしまいそうになるほどの味である事は確かだった。
「まだお芋はありますから慌てないで」 華扇が笑う。
「しかし、霞を食っているあんたもこんな物作れたのね」
「ええ、衣食足りて礼節を知るとも言いますし、要は中庸を保つ事です」
「修行をさぼるうまい口実ね」
「失敬な、私はちゃんと精進しています」
「でも食べたそうな顔してますしー」
「むう、せっかくだから、私もいただく事にします……あら美味しい」
崩れたジャガイモとバターの混ざった部分を箸で集め、皿に口をつけてかきこむと、これもまた美味だった。
こうして、私と華扇は二人きりでこっそり、秋の味覚を堪能するのでした。
人里で農業指導した結果、かなりの収穫が得られたとの事で、それでおすそわけに回っているという。
私はそんなに言われているほど、ひもじい思いをしているわけではないし、お賽銭が唯一の衣食住の獲得源なのではない。でもやっぱり嬉しいので、ありがたく頂戴する。
秋姉妹は嬉しそうに次のおすそわけ先へ歩いて行った。結構な量を抱えていたのでたぶん魔理沙やアリスの家にも行くのだろう。
さて、と私はざる一杯のお芋を見る。
「やっぱり、ふかし芋にしようっと。あれなら冷めても美味しいし」
「ねえ霊夢、何作るの?」 畳に寝転がっていた萃香が声をかけた。
「お芋貰ったから、ふかし芋にしようと思うの」
「うわあ、お酒にも会いそう」
「あんたも手伝いなさい」
外に人の気配がした。魔理沙だと思ったが、チャイナドレス風の服に、萃香のような鎖のアクセサリー? を腕に付けた少女の姿が見えた。最近神社に出入りして霊夢に説教をする仙人、茨華仙こと茨木華扇だった。
「霊夢、ちゃんとご飯食べてますか」
彼女が萃香の姿を見たとたん、はっとして口を手で覆う。
「あなたは伊吹!……幻想郷にいたのですか?」
「おお茨木、ずいぶん変わったなあ。あんたもここへ流れついたのねえ」
「ねえ、二人は旧知の仲なの?」
「そう、窮地の仲でもあったわ、ともに修羅場をくぐりぬけた、ね」
なぜ仙人と鬼が知りあいなのか、霊夢は不思議に思ったが、人も人外も色々な過去を背負っているものだと言う事を思い出し、向こうから言うのでもない限りそっとしておこうと思った。
「霊夢、このお芋も決して天から勝手に湧いてくるものではなくて、多くの労働と知恵と工夫で作られているものなのですよ」
堅苦しい事を言う仙人少女。
「私だって自然の恵みに感謝しているわよ。まるで私が食べ物をないがしろにする前提の物言いね」
「しっかしなんだねえ、清い空間であるはずの神社内に二人も……いや、まァいいか」
私は水洗いしたサツマイモの太い部分の皮だけを包丁で切り、塩水につける。ジャガイモは洗ってそのまま置く。
火を起こそうとしてかまどに行こうと思ったけれど、そろそろ魔理沙が遊びに来る頃だったのであいつにやらせよう。
空に黒い点が現れ、だんだんと箒にまたがった魔法使いの形が見えてくる。
「よう霊夢、賑やかだな」
「魔理沙、秋の神様たちからお芋貰ったの、食べてっていいから八卦炉で火起こしして」
「おやすい御用だぜ」
魔理沙が八卦炉をかまどの中に入れ、火を起こしている間、私はまずサツマイモを水の入ったふかし鍋に入れ、鍋とふたの間に布巾をはさんだ。
私がかまどで火を起こすよりずっと早く、八卦炉から火が上がった。そこに鍋を置いて、3~40分ほど待つ。その間、私達は沸かしておいたお茶を飲んでおしゃべりにでも興じよう。
「それにしても茨木とここで会えるなんてねえ」
萃香が相変わらず瓢箪の酒を飲みながら、華仙の肩に腕を回す。
「こちらこそ意外でしたよ、伊吹もここへ流れ着いたのですね」
「なあ、二人はどういう仲なんだ」
「昔私達もやんちゃだった頃があってねえ、こいつも今でこそ仙人面してるけど……」
「それ以上言わないで下さい」
「むぐぐっ」
華仙が瓢箪を萃香の口に押し込んで強引に黙らせる。
「まあ、幻想郷に流れ着く奴で『ワケあり』じゃない奴なんていないがな。言いたくないなら詮索はしないぜ。私も昔色々と、な」
「ところで茨木、あんた死神から定期的に狙われているんだろう。手を貸そっか?」
長生きすればそれだけで罪も自然と深くなると言う。だから仙人は死神から監視されていて、ときどき刺客も現れるらしい。仙人も楽じゃないのね。
「きちんと撃退しているから大丈夫です」
「もしきつかったら、いつでもあんたの片腕代わりになってやるよ。覚えといて」
「ありがとう伊吹。その時はお願いしますね」
適当におしゃべりに興じながら、時々サツマイモに箸を刺して、中まで柔らかくなっているかを調べる。水が尽きそうだったので何度か補充した。そうして30分ぐらい経っただろうか? ようやく芋が十分柔らかくなったのでざるに移し、ちゃぶ台へ持っていく。
「待ってました~」
「萃香、あんた結局なにも手伝わなかったじゃない」
「まあまあ、食べようぜ」
少し覚ましてから、芋を半分に手で割って食べてみる。
乾き過ぎも湿り過ぎもしないほくほくした食感と、塩味と自然の甘みが合わさって、
みんなの顔がたちまちほころんでゆく。仙人である華扇も含めて。両手で芋を持って食べる彼女の表情は、到底修行をしている者のそれとは思えない、はっきり言ってかわいい。
「むぐむぐ、おいしい♪」
「おい、華扇のそういう顔、初めてみたぜ」 魔理沙が笑う。
「はっ! いや、なに人の顔じろじろ見てるんですか」
「全ての欲を断つ、みたいな修行をしているあんたも、味覚を楽しむのね」
「こ、これは、修行の息抜きみたいなもので……」
「まあ、あんまいじめるなよ、私の友人だし」
萃香が助け船を出すまで、華扇は顔を真っ赤にしてうつむいていた。
芋を半分食べた所で、ぽつり、ぽつりと地面に点が生まれ、雨が降ってきた。
「洗濯物取り込まなきゃ」
私は外に出て、いそいでシーツや巫女の服や下着類をかごに放り込む。他の面々は呑気にふかし芋を堪能し、萃香は酒を飲んでいる。呑気なものだ。さっさともどってお芋食べよう。
「ふえ~ん」 境内につながる階段で、誰かの鳴き声がした。
また厄介事かと思いながら視線を動かすと、一人の妖怪が雨に濡れながら、しゃがんで両手で頭を抱えている。お忍びで遊びに来たレミリアだった。
「レミリアじゃないの、ああそうか、雨にぬれて動けないのね」
「霊夢、おぶってって~」
「はいはい、しょうがないわね」
急いで玄関にもどり、洗濯かごを置く。奥の部屋ではみんなの会話が盛り上がっているらしく、魔理沙の笑い声が聞こえた。人がこんなに苦労していると言うのに……。私はため息をつきつつ、流水に囲まれて動けないレミリアを助けに外へ走る。
「霊夢遅い」
レミリアに背中を向けてしゃがみ、両手を後ろに回す。
「世話が焼けるわね、ほら、さっさと負ぶさる」
レミリアをおぶって神社へ戻り、私は天を仰いだ。
ふかし芋がことごとく消滅しているじゃないの。
「どういう事よ? 言い訳があるなら聞くわ」 私は意識して冷静な口調を保った。
「す、すみません霊夢、萃香といろいろ昔の話をしていたら……つい夢中になっちゃって」 華扇がばつが悪そうに説明した。
「で、気が付いたら全部なくなっていたと?」
魔理沙が血相変えて釈明する。
「まあ霊夢、話を聞け。その上さらにあの覚妖怪の妹がふらっと現れて、芋を勝手に食べちまったんだ。本当だ」
見ると、黒い帽子をかぶって、黄色の上着と緑色のスカートをはいた少女がちゃっかりお芋を食べていた。何てこった。
「これすっごく美味しいよ、さすが博麗だね」
しばらく無言で立ち尽くす私。幾ら嘆いてもお芋は戻ってはこない。永遠に。
「まあ霊夢、芋はまだあるし……ん? おお、これはこれは」
魔理沙はなおも私をなだめようとしてくれたが、急に空っぽのざるを手にとり、まるで芋がそこにまだあるかのように手を動かした。
「おう、これは奇跡だぜ、信じられないぜ」
魔理沙は架空のふかし芋を二つに割り、鼻を近づけ、芳香を嗅ぐ仕草をしている。
わけわからん。
「なにパントマイムでごまかしてんのよ」
魔理沙は半分に割った架空のお芋を、ぴくぴくと震える私の頭に載せて言う。
「霊夢、間違いない。これは八卦炉の魔力で芋が変質した、不老不死をもたらす伝説の『不可視芋』だぜ」
「吹かしコイてんじゃねえぞ」
「すみません」
日没まで時間があったので、魔理沙と弾幕ごっこで遊び、秀才は所詮秀才に過ぎないという事をたっぷり学習させてやった。ついでに萃香にも、化け物を倒すのはいつも人間である事を分からせてやった。まあ、どっちも結構強かったけれど。
「じゃーな霊夢」
「次はもっとましな洒落にしなさいよ」
「角折られた、また生えてくるけど」
騒がしい面々が帰った後、神社には嘘のように静寂が戻る。秋の虫が鳴いている。
「霊夢、できましたよ」
「ありがとう」
私を見かねた華扇が、また蒸かし芋を作ってくれた。今度はジャガイモ。素直に礼を言う。
そのうち一つを皿に載せ、箸を刺して割り、塩を振る。その後、華扇が小さな瓶から白い塊を取り出して包丁で切り、四角い切片をアツアツのジャガイモの上に乗せる。バターと言うものらしい。
「里で手に入れてきました、牛乳から作ったものです」
「へえ、白沢のおっぱいだったりして」
バターが溶け、脂肪分の香りが漂ってきた。おもわずつばを飲み込む。
「いただきます」
ジャガイモのかすかな苦みと、塩とバターの味が合わさって、私は味の事は良く分からないが、ついがつがつと食べてしまいそうになるほどの味である事は確かだった。
「まだお芋はありますから慌てないで」 華扇が笑う。
「しかし、霞を食っているあんたもこんな物作れたのね」
「ええ、衣食足りて礼節を知るとも言いますし、要は中庸を保つ事です」
「修行をさぼるうまい口実ね」
「失敬な、私はちゃんと精進しています」
「でも食べたそうな顔してますしー」
「むう、せっかくだから、私もいただく事にします……あら美味しい」
崩れたジャガイモとバターの混ざった部分を箸で集め、皿に口をつけてかきこむと、これもまた美味だった。
こうして、私と華扇は二人きりでこっそり、秋の味覚を堪能するのでした。
霊夢の吹かしコイてんじゃねえぞがツボったw
レミリアはいったい何のために登場させたんですかね?
しかし、不可視芋にはやられました
ほのぼのしてて和めました
私もお嬢様は何だったんだろうって最後まで疑問が残りました。
お料理上手な華仙ちゃんはいいお嫁さん。
このコンボは反則だwww
とてもほのぼのしててよかったです