汁ものである。
「おは……うわ」
目を擦りながらルーミアが部屋へと足を踏み入れる。
いつもの場所にいつもの様に座る霖之助に、目の前の机の味噌汁や空のご飯茶碗が並んでいた。
「おはよう」
「……まだおなかへってないけど、」
食べなきゃ、だめ?
「抜いたら健康に悪い」
「妖怪なんだし、あ、ううん。食べるね」
ルーミアは言葉の途中で、失敗したと瞬きを何度かして表情を変える。
霖之助側はそこまで気にしていないのだが、半妖というどちらつかずであることを思い出したからだ。
「……本当に食べたくないなら、無理して食べなくてもい」
「大丈夫、だいじょぶだから。食べるよ、うん。ごめんね」
「ルーミア」
「二人で食べた方がおいしいし、」
ね。りんのすけ。
「今日はおみそしるに、おとうふを焼いたのに、、緑のはっぱ」
「ほうれんそう」
「ほうれんそうに、なっと……、大豆がおおいね」
「他になにか作ろうか?」
「いいよ。どれもおいしそうだし」
ルーミアはそう返すと、欠伸をしながら歩を進めた。
幻想郷の外から見れば旧型の、大きなブラウン管テレビに腰をかける。
「たまに」
「たまに?」
「お店のなかでこうやってご飯食べるのはどうなんだろうなぁて、おもう」
「お客さんが来た際には対応しやすいからね」
霖之助の頭の中で、とても丁寧な接客をする自身の姿が浮かんだ。
実際とはかけ離れた姿であることは間違いない。
「まあ、そもそものお客さんが来ないんだがね」
「たまに」
「たまに」
「うん。霖之助はどこからおこめとかおやさいぎってくるのかって心配になる」
そうルーミアは言いながら、箸を手にする。
いただきます、と二人の声が重なった。
「ぎるって、盗みはしない」
「ほんとう?」
「本当」
こつん軽い音をさせて、ルーミアの頭を叩く。
「なんだかんだ言いながら、儲ってはいるのさ」
魔理沙やら、いろいろと気付かない程度に損して貰ってるけど。
そう口の中で小さく呟きながら、霖之助がご飯茶碗へと白米をよそっていく。
電気式の、炊飯釜だった。
「かまどとかお鍋で炊いたごはんの方がおいしいんだけどね」
「焦げたりしたのが?」
「そ。なんだか、それは味気ないというか」
そう言いながら、ルーミアが箸で炊飯釜を指す。
「行儀が悪い」
「ずっと前はかまどで、ちょっと前はコンロでお鍋、今は電気でぽん。便利べんり」
「楽をおぼえると、どうも駄目みたいだ。今はかまどで炊くなんて面倒なことを出来る気がしない」
醤油を互いの豆腐に垂らす。己の、霖之助のものには豆腐の表明に薄く、ルーミアのには豆腐の側面を垂れて皿に少しの水溜まり。
「りんのすけは基本面倒くさがりだもの。……このおとうふ、おいし」
「お豆腐が美味しいのはいいけど、なんで味噌汁をご飯にかけて」
「たべやすいし」
「いや食べやすいが」
ずず、ごく。
かちゃ、ずず。
「ご飯囓る」
「口にいれながらかじってるよ」
かちゃ、かちゃ、かちゃ、かちゃ、ごく。
かちゃ、
「口に詰め込まない」
「口にいれたまましゃべらない。でしょ?りんのすけ」
ずず。ごくん。
「ルーミア。自分のことをさし」
「なぁに?どちらかというと、今のは霖之助が悪いよ」
「……ごめんなさい」
「うん。ゆるしてあげる」
霖之助は豆腐を口へと移しつつ思った。
僕はいつからこんなに弱くなったんだろうと。
食事の際の会話は大事なものだ。だが、それとは別にマナーも守らなくてはいけない。
酷い場合は殴られたり、食事も没収にあうかもしれない。知れないだけで本当にそのようなことがあるかはわからないし、そもそも、このような話は本題ではないのだが。
「霊夢さん霊夢さん。はい、お昼ご飯。昨日のお鍋で雑炊にしてみました」
博麗神社の居住区。その中の居間に、どこぞの館の小悪魔が一人用の小さな鍋を手に歩み入った。
「あら、おいしそう。の前に帰れ」
季節外れのコタツに脚をいれた、霊夢が小悪魔にお札を投げつける。
まだ何も書かれていない、ただの紙片ではあるが。
「そんな、ひどい」
「泣きまねで目薬を使うときは隠すものよ」
「泣きまねだとわかるから泣きまねなんですよ。その方がかわいいじゃないですか」
「どうでもいいわよそんなの」
目の前に置かれた鍋を眺め、次に小悪魔の顔を眺め、にこにこ笑う小悪魔の顔に何も書かれていない札を押し当て、わざとらしくギャーと叫ぶのを上目に、鍋を中心に見据え、鍋の内に入っていたスプーンで雑炊を掬い取る。
口に入れた瞬間にスプーンに戻し、鍋に戻し、しっかりと書き込まれた札を改めて顔に押し付けた。
「い、いやこれ本当に痛い」
「食えるかこんなん熱くて」
「いやそこはあれですよ、私がふーふーって」
「しなくていいから」
ぐりぐりと右手をこぶしにしておでこに押し付ける。あうあうと真似ではなく泣く小悪魔が、ほんの少し、今の霊夢には小気味よかった。
居間の霊夢、ではない。居間にはいるが。
「ゆっくり食べるわよ、ゆっくり」
「冷めたらおいしくないですよ」
「舌火傷したから」
「舌がしたって冗談ですか?」
もう突っ込まないわよ。
霊夢がそう言うと、小悪魔が悲しそうな表情に。
「真似?」
「真似ですね」
「あっそ」
かり、きゃり。
そんな音をさせて、鍋の底をスプーンの先でこする。
「で、なんでスプーン?れんげあったでしょ」
「割れてましたよ。陶器製なんですからやさしく扱わないと」
「あー、そっか。ありがと」
「いえいえ。夜までに買ってきますね」
あむ、はっ、ぱ、まむ、ん、ごく。
「重ね重ねありが、ん?いやありがたいけどありがたくないわね」
「どっちですかそれ」
「なにあんた私の家です見たいな顔で居座ってんのよ」
「いいじゃないですか、それぐらい」
よくないわよ。
「ご飯だって作ってますし、お洗濯も、お掃除も、お風呂だって私がやって、参拝客も一割増しですよ?」
「どうやったのよ参拝客。なんで神様奉る場所に悪魔が協力してんの」
「いや霊夢さんの協力してるだけなんで神様なんてく……、いえ、まあ、うん、死んじゃえというところで」
「どんな言葉言おうとしたのかは聞かないどくけど」
ガキッ、ガキィ。
「硬いスプーンね。……帰んなさいよ。どっかの図書館に」
「ここが家ですよ。我が家我が家」
……エクソシスト、連れてこないかな、紫辺り。
「生半可なエクソシストじゃ無理ですよ私。これでも意外と強キャラですもん」
「はいはい。すごい悪魔でいいわよ、なら」
「信じてないですね、その言い振り」
「だって、そんなすごい悪魔ならこんな料理うまかったり、掃除うまかったりしないんじゃないの?」
ま、そのおかげでだらけれてるんだけど。
あ、堕落ね、なるほど。
「……こんな家、家出してやる!」
「よし、出てけ」
「あ、ごめんなさい冗談です。いさせてください」
「出てきなさいよ、本当に…………」
そう言いながらも、強行手段に出れない霊夢であった。
気づけば、半年ほど、小悪魔との共同生活が過ぎたところである。
陶器製や木製を使う際には気をつけなくてはならない。気付けば欠け、口を傷つけるかもしれないからだ。
それらを忘れさせ、気付かなくさせる、それは悪魔の仕業かもしれない、がそれらの考察は悪魔学者あたりに任せて話を続けようと思う。
蓮子とマエリベリーが頭をつき合わせて、れんげを手に言葉を交わしていた。
「で、梅干?」
「そう。消化のいいおかゆに、梅干で塩分とかいろいろ補うと」
「おかゆってしょっぱくない?」
「どんだけ舌いいのよ、蓮子は」
うべ、と蓮子に向け舌を出す。
「そんなにはよくないわよ。どこかの金髪お嬢さんよりいい程度」
「あら、茶髪なお子様には梅干の酸っぱさは早かったかしら」
「お茶漬けふりかけのあられのカリカリ感が最高であって、梅干なんて端から見てないもの」
「梅茶漬けがあるじゃないの」
梅の話をしながら、海苔の佃煮のビンを開け、新しく割り箸を割っておかゆへと乗せていく。
「今度は佃煮とか、塩分過多で病院運ばれるんじゃないの?」
「大丈夫でしょ、これぐらい」
そう言いながら、舌と上前歯の裏でおかゆを潰し、佃煮の冷たさを感じながら飲み込んでいく。
「佃煮なら昆布派ね」
「なんか、小魚あるじゃない。あれとか」
「いりこ?高いのよ意外と。作るの面倒だし」
「作れるの?」
マエリベリーからの尊敬した目。その目を受けて、蓮子の表情に笑みが浮く。
「作れるわよ。これでそれなりに家庭的ですから」
「信じられない。ぐーたら蓮子が」
「ぐーたら言うな、チータラメリー」
「チーズたらは好きだけど、チータラメリーはないんじゃないの?」
かちゃかちゃと掬い、誰にも聞こえない程度に咀嚼して、互いの器が空になる。
「……チーズ、粥?」
「蓮子、なんでそこでおかゆの話に戻るのかしら」
「そうね。メリー、あなたは天才よ。明日はチーズ粥のおいしい食べ方を研究するの」
「…………秘封倶楽部を美食倶楽部かなんかに改名しなさい」
はぁ、とマエリベリーがため息を吐いた。
なにごとにも試行錯誤が必要である。もちろん食においても。
その先が失敗で、一食抜きになるかもしれないが、それでも美味しいものを食べるために、食べるために、すみませんが、これ本当に食べないといけませんか。
「おは……うわ」
目を擦りながらルーミアが部屋へと足を踏み入れる。
いつもの場所にいつもの様に座る霖之助に、目の前の机の味噌汁や空のご飯茶碗が並んでいた。
「おはよう」
「……まだおなかへってないけど、」
食べなきゃ、だめ?
「抜いたら健康に悪い」
「妖怪なんだし、あ、ううん。食べるね」
ルーミアは言葉の途中で、失敗したと瞬きを何度かして表情を変える。
霖之助側はそこまで気にしていないのだが、半妖というどちらつかずであることを思い出したからだ。
「……本当に食べたくないなら、無理して食べなくてもい」
「大丈夫、だいじょぶだから。食べるよ、うん。ごめんね」
「ルーミア」
「二人で食べた方がおいしいし、」
ね。りんのすけ。
「今日はおみそしるに、おとうふを焼いたのに、、緑のはっぱ」
「ほうれんそう」
「ほうれんそうに、なっと……、大豆がおおいね」
「他になにか作ろうか?」
「いいよ。どれもおいしそうだし」
ルーミアはそう返すと、欠伸をしながら歩を進めた。
幻想郷の外から見れば旧型の、大きなブラウン管テレビに腰をかける。
「たまに」
「たまに?」
「お店のなかでこうやってご飯食べるのはどうなんだろうなぁて、おもう」
「お客さんが来た際には対応しやすいからね」
霖之助の頭の中で、とても丁寧な接客をする自身の姿が浮かんだ。
実際とはかけ離れた姿であることは間違いない。
「まあ、そもそものお客さんが来ないんだがね」
「たまに」
「たまに」
「うん。霖之助はどこからおこめとかおやさいぎってくるのかって心配になる」
そうルーミアは言いながら、箸を手にする。
いただきます、と二人の声が重なった。
「ぎるって、盗みはしない」
「ほんとう?」
「本当」
こつん軽い音をさせて、ルーミアの頭を叩く。
「なんだかんだ言いながら、儲ってはいるのさ」
魔理沙やら、いろいろと気付かない程度に損して貰ってるけど。
そう口の中で小さく呟きながら、霖之助がご飯茶碗へと白米をよそっていく。
電気式の、炊飯釜だった。
「かまどとかお鍋で炊いたごはんの方がおいしいんだけどね」
「焦げたりしたのが?」
「そ。なんだか、それは味気ないというか」
そう言いながら、ルーミアが箸で炊飯釜を指す。
「行儀が悪い」
「ずっと前はかまどで、ちょっと前はコンロでお鍋、今は電気でぽん。便利べんり」
「楽をおぼえると、どうも駄目みたいだ。今はかまどで炊くなんて面倒なことを出来る気がしない」
醤油を互いの豆腐に垂らす。己の、霖之助のものには豆腐の表明に薄く、ルーミアのには豆腐の側面を垂れて皿に少しの水溜まり。
「りんのすけは基本面倒くさがりだもの。……このおとうふ、おいし」
「お豆腐が美味しいのはいいけど、なんで味噌汁をご飯にかけて」
「たべやすいし」
「いや食べやすいが」
ずず、ごく。
かちゃ、ずず。
「ご飯囓る」
「口にいれながらかじってるよ」
かちゃ、かちゃ、かちゃ、かちゃ、ごく。
かちゃ、
「口に詰め込まない」
「口にいれたまましゃべらない。でしょ?りんのすけ」
ずず。ごくん。
「ルーミア。自分のことをさし」
「なぁに?どちらかというと、今のは霖之助が悪いよ」
「……ごめんなさい」
「うん。ゆるしてあげる」
霖之助は豆腐を口へと移しつつ思った。
僕はいつからこんなに弱くなったんだろうと。
食事の際の会話は大事なものだ。だが、それとは別にマナーも守らなくてはいけない。
酷い場合は殴られたり、食事も没収にあうかもしれない。知れないだけで本当にそのようなことがあるかはわからないし、そもそも、このような話は本題ではないのだが。
「霊夢さん霊夢さん。はい、お昼ご飯。昨日のお鍋で雑炊にしてみました」
博麗神社の居住区。その中の居間に、どこぞの館の小悪魔が一人用の小さな鍋を手に歩み入った。
「あら、おいしそう。の前に帰れ」
季節外れのコタツに脚をいれた、霊夢が小悪魔にお札を投げつける。
まだ何も書かれていない、ただの紙片ではあるが。
「そんな、ひどい」
「泣きまねで目薬を使うときは隠すものよ」
「泣きまねだとわかるから泣きまねなんですよ。その方がかわいいじゃないですか」
「どうでもいいわよそんなの」
目の前に置かれた鍋を眺め、次に小悪魔の顔を眺め、にこにこ笑う小悪魔の顔に何も書かれていない札を押し当て、わざとらしくギャーと叫ぶのを上目に、鍋を中心に見据え、鍋の内に入っていたスプーンで雑炊を掬い取る。
口に入れた瞬間にスプーンに戻し、鍋に戻し、しっかりと書き込まれた札を改めて顔に押し付けた。
「い、いやこれ本当に痛い」
「食えるかこんなん熱くて」
「いやそこはあれですよ、私がふーふーって」
「しなくていいから」
ぐりぐりと右手をこぶしにしておでこに押し付ける。あうあうと真似ではなく泣く小悪魔が、ほんの少し、今の霊夢には小気味よかった。
居間の霊夢、ではない。居間にはいるが。
「ゆっくり食べるわよ、ゆっくり」
「冷めたらおいしくないですよ」
「舌火傷したから」
「舌がしたって冗談ですか?」
もう突っ込まないわよ。
霊夢がそう言うと、小悪魔が悲しそうな表情に。
「真似?」
「真似ですね」
「あっそ」
かり、きゃり。
そんな音をさせて、鍋の底をスプーンの先でこする。
「で、なんでスプーン?れんげあったでしょ」
「割れてましたよ。陶器製なんですからやさしく扱わないと」
「あー、そっか。ありがと」
「いえいえ。夜までに買ってきますね」
あむ、はっ、ぱ、まむ、ん、ごく。
「重ね重ねありが、ん?いやありがたいけどありがたくないわね」
「どっちですかそれ」
「なにあんた私の家です見たいな顔で居座ってんのよ」
「いいじゃないですか、それぐらい」
よくないわよ。
「ご飯だって作ってますし、お洗濯も、お掃除も、お風呂だって私がやって、参拝客も一割増しですよ?」
「どうやったのよ参拝客。なんで神様奉る場所に悪魔が協力してんの」
「いや霊夢さんの協力してるだけなんで神様なんてく……、いえ、まあ、うん、死んじゃえというところで」
「どんな言葉言おうとしたのかは聞かないどくけど」
ガキッ、ガキィ。
「硬いスプーンね。……帰んなさいよ。どっかの図書館に」
「ここが家ですよ。我が家我が家」
……エクソシスト、連れてこないかな、紫辺り。
「生半可なエクソシストじゃ無理ですよ私。これでも意外と強キャラですもん」
「はいはい。すごい悪魔でいいわよ、なら」
「信じてないですね、その言い振り」
「だって、そんなすごい悪魔ならこんな料理うまかったり、掃除うまかったりしないんじゃないの?」
ま、そのおかげでだらけれてるんだけど。
あ、堕落ね、なるほど。
「……こんな家、家出してやる!」
「よし、出てけ」
「あ、ごめんなさい冗談です。いさせてください」
「出てきなさいよ、本当に…………」
そう言いながらも、強行手段に出れない霊夢であった。
気づけば、半年ほど、小悪魔との共同生活が過ぎたところである。
陶器製や木製を使う際には気をつけなくてはならない。気付けば欠け、口を傷つけるかもしれないからだ。
それらを忘れさせ、気付かなくさせる、それは悪魔の仕業かもしれない、がそれらの考察は悪魔学者あたりに任せて話を続けようと思う。
蓮子とマエリベリーが頭をつき合わせて、れんげを手に言葉を交わしていた。
「で、梅干?」
「そう。消化のいいおかゆに、梅干で塩分とかいろいろ補うと」
「おかゆってしょっぱくない?」
「どんだけ舌いいのよ、蓮子は」
うべ、と蓮子に向け舌を出す。
「そんなにはよくないわよ。どこかの金髪お嬢さんよりいい程度」
「あら、茶髪なお子様には梅干の酸っぱさは早かったかしら」
「お茶漬けふりかけのあられのカリカリ感が最高であって、梅干なんて端から見てないもの」
「梅茶漬けがあるじゃないの」
梅の話をしながら、海苔の佃煮のビンを開け、新しく割り箸を割っておかゆへと乗せていく。
「今度は佃煮とか、塩分過多で病院運ばれるんじゃないの?」
「大丈夫でしょ、これぐらい」
そう言いながら、舌と上前歯の裏でおかゆを潰し、佃煮の冷たさを感じながら飲み込んでいく。
「佃煮なら昆布派ね」
「なんか、小魚あるじゃない。あれとか」
「いりこ?高いのよ意外と。作るの面倒だし」
「作れるの?」
マエリベリーからの尊敬した目。その目を受けて、蓮子の表情に笑みが浮く。
「作れるわよ。これでそれなりに家庭的ですから」
「信じられない。ぐーたら蓮子が」
「ぐーたら言うな、チータラメリー」
「チーズたらは好きだけど、チータラメリーはないんじゃないの?」
かちゃかちゃと掬い、誰にも聞こえない程度に咀嚼して、互いの器が空になる。
「……チーズ、粥?」
「蓮子、なんでそこでおかゆの話に戻るのかしら」
「そうね。メリー、あなたは天才よ。明日はチーズ粥のおいしい食べ方を研究するの」
「…………秘封倶楽部を美食倶楽部かなんかに改名しなさい」
はぁ、とマエリベリーがため息を吐いた。
なにごとにも試行錯誤が必要である。もちろん食においても。
その先が失敗で、一食抜きになるかもしれないが、それでも美味しいものを食べるために、食べるために、すみませんが、これ本当に食べないといけませんか。
なので-100点。(←
>ねこまんまは鰹節じゃなく味噌汁かけ派です
全力で同意します。
ただし「創世維持永愚魔封印」、てめーはダメだ。