Coolier - 新生・東方創想話

例え孤独が君を引き裂いても

2011/09/28 19:44:16
最終更新
サイズ
3.83KB
ページ数
1
閲覧数
2301
評価数
5/27
POINT
1290
Rate
9.39

分類タグ


空が青い。九天の瀑布の白さが際立つ青さだ。妖怪の山は少しずつ色を濃くしている。もう秋だと実感する風景の移り変わりを私は残したい。だから、写真という形でこの風景を切り取る。あの人に見てもらいたいから。
 
 「何、新聞なら要らないわよ。賽銭入れて帰れ。」

 「ちょっと、私を見るなり、追い返そうとするのはやめてよ。」

 「あんたの取材と勧誘は碌なことにならないからよ。」

 「今日は取材じゃないわよ。口調が違うでしょ。」

 「口調が変わろうと、胡散臭さでは紫とタメ張るわよ。」

 「失礼な。私は清く正しい射命丸文。胡散臭さとはまるで縁がありません。」

 「はいはい。暇ならあんたも手伝いなさい。」

 「何を?」

 「社領の稲刈り。」

 「あれ、なんか私、重労働押しつけられた?」

 「天狗なら一瞬でしょ。」

 「泣きたくなってきた。」

 「ぶつくさ言わずについてきなさい。」

 博麗神社の社領。大した広さではないが、霊夢の台所を支える大事な収入源だ。しかし、管理しているのは霊夢たったひとり。昔はそれなりに里の者が管理にあたっていたが、博麗神社に人が寄りつかなくなって久しく、今は田畑の世話を霊夢一人でやらざるを得なくなった。

 「ねえ、霊夢。いつまでもひとりじゃ、負担が大きいわよ。昔みたいに里の人間に手伝ってもらうようにしなくちゃ。」

 「そんなことは百も承知よ。だけど、そう言って素直にやってくれるかしらね。寧ろ、嬉々として火を放ちに来るわよ。」 
 
 「極端すぎるよ。そこまで人里であなたを嫌う人間なんて居ないわ。」

 「良いわよ。私は人も妖怪も信じていないし、ひとりがつらいとも思わない。」
 
 霊夢はそう言うと、黙々と稲を刈っていく。鎌を持つ手は、その作業と似つかわしくないほど白く華奢であった。私は常々心を痛めている。霊夢の幼いころを知っているだけに、人里への頑なな態度に対して、あまり強く言えなかった。

 霊夢はその優れた霊力と勘の良さから、小さいころより次代の博麗の巫女として教育が為されていた。しかし、その強すぎる力は人々に敬遠され、霊夢は常に孤独だった。霊夢の性格は子どものそれとは思えぬくらいすれていた。喜怒哀楽はとても豊かで、子どもらしく闊達なところも見受けられたが、それでも誰にも心を開く素振りを見せず、腹の底が読めずにいた。力のある妖怪には好かれど、人間にとっては薄気味悪い存在として目に映ったのだろう。それが今の状況の所以だ。

 私はため息をつきながら、ザクザクと刈っていく。私ひとりでやると、ものの一瞬で終わるが、それでは詰らない。折角ふたりきりなのだから、もっと霊夢を傍に感じていたかった。この孤独の乙女を手離さば、もう二度と手の届かぬ所へ行ってしまいそうだ。後悔はしたくない。

 「霊夢。私はずっと一緒にいる。あなたの身が絶える時まで、あなたの傍に居させて。」

 「何を唐突に……。勝手にしたらいいじゃない。」

 「霊夢。」

 私はぎゅっと霊夢を抱き締める。鼻一杯に広がる霊夢と土の香りがこそばゆい。大きく目を見開き、驚いた顔をしていたが、霊夢は私の腕の中から逃れようともがく。

 「いい加減にしなさい、文。私は誰にも頼らぬ。誰も信用ならぬ。どいつもこいつも口先ばかりで、腹の中では、皆、私を嘲笑う。どんなに私が頑張っても、誰もみてくれやしない。」

 「違う。違うよ、霊夢。私はずっと見ていた。だからこそ、あなたと共にこの大空を舞い、同じものを見て喜び、悲しみ、そして怒り、そうやって生きていきたいと思った。あなただから。あなたじゃなければ駄目だったから。」

 私を振り払おうとした手を下に垂らし、霊夢は下を俯いてしまう。

 「駄目だよ。そんな優しい言葉なんてかけてもらう資格なんかないよ。私だって、文が好きだよ。でも、私には誰かを愛することはでき……。」

 蚊の鳴くような弱弱しく掠れる言葉を遮り、私は霊夢に口づけする。霊夢から哀しい言葉を聞きたくなかった。そんなものは塞いでしまえばいいのだ。

 「霊夢、これ見て。今日撮った写真。あなたにこれを見せたくて、はりきって来たの。」

 私はあの写真を霊夢に見せる。霊夢にはもっと美しいものを見せてあげたい。頑なな心を必死に築こうとする霊夢の力を抜いてあげたい。

 「霊夢。私にまで肩肘を張った態度はとらなくていいの。私なら、霊夢の全てをぶつけてもいいの。だから、私と一緒に空を飛んでくれますか?」

 「文。」

 もう一度、唇を交わす。共に生きていこう。もっとあなたの笑顔を見たいから。小さい頃、私に綺麗だと言ってくれた、その屈託のない笑顔を絶やしたくないから。

 
「ちょっと、何で文だけが良くて、私には御鉢が回らないの?」

「わあ、紫。何よ、いきなり。」

「ねえ、霊夢。私じゃ、あなたにとっては邪魔者なの?どうなの。」

「ちょっと、そんな捨てられた子犬みたいな目で人を見るな。」

「だって、だって、うえええええん。霊夢に捨てられたあああああ。」

「文、早くこれ何とかしてよ。」

「わ、私だって困るわよ。」

「あ、あたしだって、あたしだって霊夢のことずっと見てたもん。ヒグッ。文なんかよりずっと近くにいたもん。ウウッ」

「ああ、もう。全く子どもなんだから。大丈夫、誰も捨てやしないわよ。」

「れ、霊夢。エヘヘヘ、霊夢ぅ。」

「もう、紫ったら。」

「ちょっと、最後まであやれいむさせてよ。何、このオチ。」

あやれいむもゆかれいむも大好きな俺に死角はなかった。この分だとゆうかれいむも追加ですね。

くろまくみこも書きたいので、どういう設定にするか、冬に考えます。

ちなみに今日のこれは、やはり聖飢魔Ⅱのエガオノママデを聞いて思いつきました。

じゃあ、ゆうかれいむは白い奇蹟でいこうかな。
吾妻
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.830簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
ゆうかれいむには期待せざるをえない
3.100名前が無い程度の能力削除
〉〉ゆうかれいむ
ほう!

誤字報告を
〉〉私ひとりでやると、ものの一瞬で覆わるが

終わるがが誤変換されています
5.無評価吾妻削除
誤字訂正しました。
6.80奇声を発する程度の能力削除
やや短いながも良かったです
18.100名前が無い程度の能力削除
少し短いと思うけど良いですね、ゆうかれいむに期待です。
22.100名前が無い程度の能力削除
いいあやれいむ