Coolier - 新生・東方創想話

Moving Mind

2011/09/25 22:38:32
最終更新
サイズ
15.56KB
ページ数
1
閲覧数
2056
評価数
3/19
POINT
930
Rate
9.55

分類タグ

 
 
 いつだったか、パチェに「レミィは丸くなった」と言われたことがあった。私もその通りだと思った。
 咲夜に週一くらいの休みを与えるようになった。日頃も以前ほどの負担がかからないように配慮している。それはまあ、人間は脆いからねえ、と理由付けできなくもない。けど私が本当に丸くなったと感じるのは、フランのことだった。
 四百九十五年ほど、私はフランを地下室に閉じ込めていた。顔を見ることすらしていない。それが紅霧異変を起こした後くらいだったか、地下室から出ることを許した。これといった切っ掛けがあったわけでもないのだが、その時の私は何を考えていたのだろう。結果として、フランは時折紅魔館の中を歩き回るようになった。今のところ特に問題を起こしているわけでもないので、別に閉じ込め直す必要もないだろう。
 フランは時折来る人間、特に魔理沙に懐いているように見えた。魔理沙も別に邪険にしている風でもなかったので、私は特に気にすることなく過ごしていた。それゆえに、今の状況は予想外すぎて対応できない。
 フランに組み敷かれ、耳元で催眠術のように言葉を囁かれている、この状況に。


 ――寝室は闇。分厚いカーテンの外では太陽が燦々と働いているのだろうけど、その働きも一枚の布で遮れる程度だ。米粒ほどの光もなかった空間に今、筋のような光が入り込んでいる。薄暗い館の廊下も、闇に比べれば明るすぎる。
 小さく開いた扉に手を添えて立っている影。背丈から見て咲夜と美鈴は違う。パチェが来る理由もないし、妖精メイドにも睡眠中は来ないように言ってある。……などと考察しないでも、シルエットだけで誰であるかなどわかる話だった。宝石のような七色の結晶が付いた翼。確信を裏付けるように、その影は言葉を発した。
「お姉様……」
「フラン。どうしたの、こんな朝っぱらから」
 指を鳴らして燭台に火を灯す。揺らめく炎の輝きがフランの姿を浮かび上がらせた。
 フランは何も答えず、扉を閉めて歩み寄ってきた。ガチャリ、と重く響く音。目をやれば、そこには無骨な南京錠を扉にかけたフランの姿。歩み寄るフランと、錠をかけるフラン。嫌な予感に首筋が泡立つ。そんな時に、
『お姉様』
 両の耳元で囁かれると同時、一気に腕を締め上げられた。
「なっ!? フラン、何を……っ!?」
 確認するまでもない。私の背後には二人のフランがいる。歩み寄ってきていたフランが私の身体を抱くように重なってきて、錠をかけたフランが首に腕を絡ませてくる。
 フォーオブアカインド。自分の分身を作り出すフランのスペルカード。おそらく部屋に入る前から使っていたのだろう。一人のフランならどうにでもできるが、四人のフランに組み敷かれた状況では、どうすることもできなかった。
「フラン、何のつもり? おふざけのつもりなら離しなさい。今ならただ許してあげるわよ?」
「ううん。おふざけじゃないわ。私、今まで我慢してきたんだもの」
 首に腕を回したフランは、そう言って腕の力を強めた。体にかかる吐息がくすぐったい。振り解こうともがいても、四人のフランは決して私を離しはしない。
 抱きついているフランが人差し指を舌先で舐めた。尖った爪の先がぬらりと照り、刃物のような鋭さを作り出す。実際、さした違いはない。吸血鬼の爪は刃物になる。フランはその切っ先を私の寝巻の襟に当て、胸の下あたりまで下ろした。はらりと力なく垂れる布。下着すらも取り払って、フランは私の肩を舐めた。
「っ……! やめ、なさい……フラン!」
 静止の声など聞こえないかのように、フランはピチャピチャと音を立てながら肩口に舌を這わせる。不意に、右の耳元にいるフランが囁いた。
「お姉様、私のこと、好き?」
「は?」
 唐突すぎて意味が分からない。戸惑いすらも蚊帳の外へと放り出して、それに続くように左の耳元のフランが
「ねえ、好き?」
 と囁いた。染み入るように伝わる声が、私の身体を震わせた。
「ベ……別に、嫌いでは、ないわよ」
「好き?」
 はぐらかすのも効果はなかった。
「好き?」
「ねえ、お姉様?」
「お姉様」
「お姉様」
「私のこと、好き?」
「好き? お姉様」
「お姉様」
「お姉様」
「お姉様」
「お姉様」
 頭の中がぐちゃぐちゃにされていく。耳から入る囁きは思考能力を低下させ、自分が自分でなくなるような感覚が全身に痙攣のような震えを与える。絶えず囁かれる声。私の中に溶け込むフランの声。自分の中に異物が入り込むという、抵抗しなければならないはずの状況で、その抵抗がじわりじわりと毟り取られていく。
「お姉様」
「お姉様」
「私のこと、好き?」
「お姉様、好き?」
「好き?」
「好き?」
「好き?」
「好き?」
「お姉様」
「お姉様」
「好きって言って?」
「言って?」
「好きって」
「好きって」
「フラン、好きって」
「言って?」
「言って?」
「お姉様」
「お姉様」
「お姉様」
 唇の端からだらしなく涎が垂れているのを感じる。それを引き締めるだけの力すらも奪われている。視界がぼやけている。蝋燭の炎が二重にも三重にも見える。非現実的な風景がいっそう自分を曖昧にしていく。
 フランの汗の匂いが鼻腔に入り込んでくる。いい匂いだな、と思うくらい、私はフランに犯されていた。
「お姉様、私のこと、好き?」
 さっきも聞いた気がする問い。さっきははぐらかしたその問いに、私は、
「……ええ。フラン、好きよ」
 自分の思うままに、そんな言葉を口走っていた。肩を舐めていたフランと、首に腕を回したフランが、嬉しそうにニコリと笑う。
「嬉しい……。お姉様、ありがとう」
 肩を舐めていたフランが口を大きく開ける。唾液で濡れて輝く犬歯は、幻想的な美しさで私をより一層溶かす。
 フランが肩口に噛み付いた。牙が皮膚を穿ち、血を啜る。今まで吸ったことはあれ、吸われたことのなかった私は、吸血の恍惚に呑まれるように、意識を闇へ落としていった――。


 ――柔らかく暖かな何かに包まれる感覚で、私は意識を取り戻した。意識を失ったはずの私の寝室よりも明るいこの部屋に見覚えはない。どうも腕と足が重いので、首だけを巡らせて部屋を見回した。
 だだっ広い部屋。広さだけなら私の部屋と同じか、それ以上。ただ家具の類いも少なく、物悲しい。壊れた玩具と、壊れてない玩具と、無残に転がるぬいぐるみと、きちんと座っているぬいぐるみ。ベッド脇のチェストの上の花瓶には花らしき物が活けられているけど、それももう萎れて、元が何の花かも分からない。
 そこでようやく、私が今ベッドに横になっていることを理解した。意識を失う前の出来事のせいか、いまだに思考能力が戻りきっていないらしい。手足は相変わらず動かない。目をやると、綺麗な金色の髪が視界に入ってきた。
「フラン……」
 フランは相変わらず四人いた。それぞれ四人が私の手足を一本一本抱くようにして、すやすやと寝息を立てている。ということは……。
「ここは、フランの部屋……?」
 そうだ。四百九十五年前、私が押し込めたきり一度も来ることがなかった部屋。それすら思い出せなかったほどフランを隔絶していたのかと、どういうわけか胸がちくりと痛んだ。理解できないもやもやとした感覚が現れ、私は小さく身じろぎをした。眠りを覚ますには、それで十分だったらしい。
 四人のフランはほぼ同時に、大きな瞳を開いて私を見た。そして、意識を失う前に見た、あの笑顔を浮かべる。
「お姉様。起きたのね」
「フラン。ここ、貴女の部屋ね? ここに連れ込んで、どうするつもり?」
 私の問い掛けに、右腕に抱き着いたフランが笑顔を浮かべたまま答えた。
「一緒にいるの。ずっと一緒」
 左足のフランが同調する。
「そうよ、一緒。起きる時も、遊ぶ時も、ご飯の時も、お風呂の時も、寝る時も、ずっと一緒」
 右足のフランが後を継いだ。
「今までずっと我慢してきたの。だからその分、一緒にいましょう?」
 右腕のフランが締め括る。
「私とお姉様、相思相愛だものね? 誰にも邪魔させないわ。咲夜にも、パチェにも、美鈴にも、メイドたちにも、霊夢にも、魔理沙にも。……誰にも、邪魔させない」
 反射的に部屋の入り口のほうを見た。そして驚きのあまり目を見開く。
 大きな鉄板で塞がれた入り口。十字架を釘のようにして固定された鉄板は入り口を壁と同化させて、何かを進入させるという目的を剥奪している。ここは、まさしく密室なのだ。牢獄であり、揺籃であり、楽園でもある。こんな世界に、今までフランを閉じ込めていたのか。
 思わず私が眉をひそめると、左腕のフランが悲しそうな顔をした。
「悲しい顔しないで、お姉様。一緒に遊ぼう? お姉様。私ね、いっぱいお姉様としたいことがあったのよ」
 フランが顔を近づけてきた。反射的に顔を引くと、右腕のフランの頭とぶつかりそうになった。足に抱き付いていた二人のフランも私を見ていた。
「お姉様、これから、ずっと一緒」
「一緒よ、お姉様」
「遊びましょう? 何して遊ぶ?」
「遊びましょう? 寂しくないわ、ずっと一緒」
 意識を失う前の感覚が蘇る。全く同じ声が様々な方向から聞こえてくる異常。囁き声は身体と同化し、痙攣に近い震えをもたらす。唇の端から涎が零れた。目の端から涙が零れた。
 そして――
『ねえ? お姉様』
「――――っ!!」
 切れてはいけない何かが切れたような感覚とともに、私の意識はぶつりと断絶した。

   ◆   ◆   ◆

 お嬢様がいないことに気が付いたのは、休暇が終わってお嬢様を起こしに寝室に行った時だった。開け放たれた寝室の扉と、お嬢様の寝室には存在していなかった無骨な南京錠、ベッドの上に乱雑に捨てられた寝巻と下着が、気紛れの外出でないことを示していた。
 お嬢様を連れ出せるほどの存在もいないではないだろうが、それにしてはおかしな部分も多い。私はパチュリー様の助力を仰ぐために大図書館に向かった。


 ――パチュリー様が魔法で寝室に来た存在の痕跡を追っている。私がパチュリー様に命令されて美鈴を連れてきた時には、パチュリー様はその作業を終えていた。
「パチュリー様、何か分かりましたか?」
「まあ、単なる確認作業だったんだけどね。美鈴を連れてきたのは無駄にはならなそうよ」
 話について行けていない美鈴は首を傾げているが、それに付き合う余裕はなかった。
「それで、誰なのでしょうか?」
 私の問いに、パチュリー様は一つ、溜め息をついてから答えた。
「レミィは地下室にいるわ。案内して頂戴」


 地下室とは言わずもがな、妹様のいる部屋のことだ。地下にある唯一の扉に鍵を差し込んで開錠したけれど、扉はピクリとも動かなかった。
「妹様! 妹様開けてください!」
「無駄よ。あちらに開ける気はないわ。それより、あんたら二人に聞くことがあるけど」
 慌てる私の様子とは正反対に、パチュリー様は落ち着き払ってそう切り出した。
「聞きたいこと、ですか?」
「私は現状の理解で精一杯なんですけど……」
「質問に答えりゃいいのよ。ま、簡単に聞くけど、死ぬ覚悟はある?」
 簡単に聞いた割には随分と重い内容の質問だった。美鈴もあんぐりと口を開けている。
「それは、どういった意味で?」
「妹様にとって、レミィを連れ戻そうっていう私たちは睦み事の邪魔者でしかないのよ」
 睦み事の、邪魔?
「あの、パチュリー様。それは、まさか……」
「……ま、あったっておかしくないでしょう。人外に人間の倫理適用したって馬鹿らしいだけよ」
 私の想像はどうやら、パチュリー様が読み取った真実と合致しているらしかった。それならば合点もいく。
「……私は、お嬢様にお仕えしている身ですから」
「まあ、私も拾われた恩がありますし。できればそんなことにならない結末希望ですけど」
 覚悟は決めた。パチュリー様は頷くと、美鈴を見てから親指で扉を示した。
「美鈴の役割よ。ぶち破りなさい」
 私とパチュリー様が扉の前から退く。意図を理解した美鈴は構えを取り、大きく息を吐いた。
「……せいっ!」
 力強く踏み込み、槍のような蹴りを扉に叩き込む。一瞬辺りが揺れたような衝撃とともに、扉の周辺の壁が崩れ、部屋の中に倒れた。
「やりましたっ!」
 ガッツポーズをしている美鈴を後目に、私たちは部屋の中に踏み込んだ。濛々と立ち込める土煙をパチュリー様が払うと、背筋を貫くような殺気を感じた。
 妹様が、紅い瞳を鋭くして睨み付けている。背後に死神の姿が見えそうなほどの殺気を湛えた妹様の腕の中には、意識を失っているらしいお嬢様がいた。両者ともに全裸で、お嬢様の肩口には噛み付いた牙の跡が付いている。
 内心気圧されながらも、それを極力表に出さないように、私は口を開いた。
「妹様。……お嬢様を、お放しください」
「嫌」
 言霊でも込められているかのように、拒否されたらそうですかと受け入れてしまいそうになる。そんな自分を抑えつけながら妹様と相対するのは、骨が折れるどころか砕けることだった。
「妹様……」
「嫌って、言ってるじゃない!」
「っ!?」
 足元の床が砕け散った。妹様は右腕を伸ばしている。おそらく床の一部を壊したのだろう。そしてこれは脅しのはず。そうでなければ、今頃私の命はない。
「妹様……!」
 一歩踏み出す。
「嫌って言ってるでしょ!」
 破壊の能力を使われると考えた私は咄嗟に身構えるが、妹様はそうはせず、胸に抱いたお嬢様の身体を一層強く抱き締めた。
「ずっと我慢したんだもん! ずっとずっと一人で、寂しいのも我慢したんだもん! もう我慢できないの。お姉様といたいの。ずっとずっと、一緒にいたいの!」
 最後には駄々っ子のようになっていた。首を左右に大きく振りながら、喉が張り裂けそうな声で、我が侭を押し通そうとする子供のように妹様は叫んだ。
 私がお嬢様にお仕えするより遥か昔から、妹様はお嬢様と引き裂かれてきた。寂しさを感じるのは当然だし、我慢の限界というのも、むしろ遅いくらいだろう。けれど、私はお嬢様に仕えるメイド。二人を天秤にかけたなら、私はお嬢様を選ぶ。
 そのことをわかっているのか、妹様はお嬢様を離すまいときつく抱き締めると、最初に見せた、鋭利な殺気の籠った瞳を向けた。
「……邪魔するなら、貴女たちでも……!」
 張りつめた緊張が辺りを支配する。一戦もやむを得ないかとナイフに手を伸ばした時、掠れたように小さな声が聞こえた。

   ◆   ◆   ◆

 意識が戻ってみれば、なんだかよく分からないことになっていた。私はフランに抱き締められている。それはまだいい。だが咲夜の声が聞こえて、しかもフランと一触即発な雰囲気とはどういったわけか。
 丸くなった私はどちらかを捨てる、なんて選択肢も思い浮かばず、考えるより早くに言葉が出ていた。
「フラン……」
 叫びすぎて喉がひどい調子になっている。それでも何とか伝わったらしく、フランは咲夜との緊張を解いて私を見た。
「お姉様……」
 さて、困った。考えなしに呼んだはいいものの、その後になって何を言わなければいけないかを考えなければならない。こういう場面での神経の逆撫では得意でも、その逆は苦手分野だった。
 でもまあ、考えたって仕方がないかと、逆撫でしないようにだけ気を付けて、あとは思うままに言うことにした。
「……あーあ、つくづく、自分が馬鹿みたい」
「お姉様?」
 力が入らずに腕がガクガク震える。それを何とか持ち上げて、フランの頭に持っていった。
「フラン、いい子だったね。長い間、よく我慢できたね」
 ぎこちない所作で頭を撫でる。それは仕方ない、なにせ、誰かを撫でるなんて、初めてのことだから。
「フラン、今までごめんね。私もフランが好きよ」
 私の寝室では、半ば言わされた結果のようなものだった。けれど今回はそうじゃない。自分のことには鈍いみたいで、私がフランのことが好きだというのに気付いたのは、ほんの少し前のことだった。
「もう、閉じ籠もる必要はないわ。外に出ても、貴女を責める人はいない。ね? フラン」
 言葉がうまく出てこない。困った、逆撫でしていなければいいのだけど。その心配もなかったようで、フランはぐすりと鼻をすすりながら聞いてきた。
「……一緒にいてくれる? 一人にしないでくれる?」
「……勿論よ。フラン」
 フランは安心したように、力を抜いて私にしなだれかかってきた。
「なんかね、眠いの。お姉様……」
「いいのよ、フラン。ゆっくり、お休みなさい」
 そのうち、フランの寝息が聞こえてきた。私は何となく、あやすようにフランの背中を擦っていた。


「……お嬢様」
 フランが寝て少ししてから、咲夜が声をかけてきた。
「ご無事ですか?」
「無事なもんですか、疲れたわよ。身体が重くって仕方ないわ」
 フランを起こさないように少し小さめな声で愚痴った。
「私も眠いから、しばらく寝るわ。咲夜、私たちの寝室、用意しときなさい」
 咲夜は少し驚いたような顔をすると、
「かしこまりました。お嬢様」
 そう答えて、頭を下げてから部屋を出ていった。
「お疲れ様。レミィ」
 落ち着いた様子のパチェが声をかけてきた。相変わらず、事情の大半は察しているらしい。
「ああ、パチェ。いろいろ世話かけたわね」
「別に。規模を別にすればいつものことよ。私自体は大したことやってないしね」
 パチェは何かを考えているような目で私とフランを見ている。気になりはしたけど、私も眠くて仕方がない。
「あー、眠い。パチェ、悪いけど寝るわ。咲夜が来たら運ばせといて」
「その前に一つ、聞きたいのだけど」
「んー?」
 パチェは私の目をまっすぐ見ながら、
「レミィは、妹様のことが好きなの?」
 と、聞いてきた。
 何をいまさらな質問だろう。わかったのは少し前だけど、それが本当だということくらい理解できている。
「……ええ、好きよ。それがどうかしたの?」
「いえ、別に。じゃ、お休み」
 パチェが何を聞きたいのかは結局わからなかったけど、そのうち分かるかと気にしないことにした。眠気に任せるまま、私はゆっくりと眠りに落ちていく。その時、遥か過去の記憶、フランと遊んでいた夢を、見た気がした。


 本当に、丸くなったものだと思う。一時期は他人なんてどうでもいいみたいにツンツンしていた気がしたのに。たとえ孤高の吸血鬼でも、どんなものでも変わるものだ。
「なんだっけなこういうの。修行無情じゃなくて、衆生無常じゃなくて……」
「諸行無常でしょうか?」
 私が思い出せないでいると、咲夜が代わりに答えた。
「ああそうそう、それよ」
「それが、どうなさいました?」
「別に。そういやそんなのもあったなってだけよ」
 首を傾げた咲夜だったが、それもすぐにやめて、懐から懐中時計を取り出した。
「そろそろ、アフタヌーンティーのお時間ですわ」
「あらそう。じゃ、咲夜。フランも呼んできなさい」
「かしこまりました」
 咲夜が退室する。日差しを受けて庭の花の映えている様を見ながら、さてどんな話をしようかと考える。なにせ久方ぶりの姉妹水入らずだ。話したいことなら山ほどある。
 ノックとともに入ってきたフランを迎える。その時には、自然な笑顔を浮かべられた気がした。
 
 
 
 
 
お久しぶりです、金之助です。二か月近く振りの投稿ですね。
またまた紅魔ものですよ、どれだけ好きなんだって話ですよね。

レミリアとフランのお話です。これって百合なんですかね? 少し違う気がしてますが。どちらかと言えば、姉妹愛ってところでしょうか。
個人的に、レミリアには孤高のカリスマお嬢様的な感じでいてほしいんですが、なんか考えていくとそこから離れていくんですよねえ。まあ、それはそれで好きなので結果オーライ(笑)
なんだか、フランは紅魔館のいろいろなキャラと絡ませたくなりますね。今のところ小悪魔とレミリアですが、他のキャラともいい味を出してくれそうな気がします。

それではいつもの通り。読んでくださった皆様、ありがとうございます。感想批評、大歓迎です。忌憚ないコメントを頂けると嬉しいです。
では、この辺で。金之助でした。過去作、そしてこれ以降もどうぞ、よろしくお願いします。



そうそう、9月19日に開催されたもりや神社例大祭、僕も『濁江の蛙』名義でサークル参加してたりしました。こっちでも宣伝しようかと考えていたんですが、投稿する小説がなかったのでやめました。頒布物とかに興味がありましたらどうぞ、リンク先のブログへ。

 
金之助
http://david490alf.blog97.fc2.com/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.670簡易評価
6.80奇声を発する程度の能力削除
お嬢様のカリスマっぷりが素晴らしかったです
14.80とーなす削除
丸くなった、というか大人になった感じがしますね、レミリア。
あの場面を、言葉一つで円く治めたのはさすが。
18.100名前が無い程度の能力削除
フランちゃんの望みをかなえて従者も守る。お嬢様のカリスマは素晴らしいですね。
個人的にはフランちゃんと咲夜達の戦闘でフランちゃんが勝って、一生お嬢様とすごす。という結末も
それはそれでよさそうだなと思いました