注)これはさくやにっき18の裏話です、先にそちらを読んでいただけると流れがわかるかもしれないし、わからないかもしれない。
□月○日
「さてパチェ、申し開きはあるかしら? 」
「……ありません」
正座をさせられているパチュリー様の後ろで私はハラハラと事の成り行きを見守っている。
落とし穴に落とされ、お仕置き部屋と称して勝手に作られたパチュリーランドから辛くも脱出したらパチュリー様が正座していた。
レミリアお嬢様は図書館爆破の件のせいでしょうか?かなり激怒しており、
呼ばれて来た妹様と美鈴さんは私と同じように何でここまでレミリアお嬢様が激怒しているのかがわからずでいる。
いつも通りといえばいつも通り、他に何かあったって事でしょうか?
そういえば咲夜さんはどこへ行ったんでしょうか?こういう時にはまず咲夜さんがパチュリー様にお小言をするのがパターンのはず。
パチュリー様が咲夜さんに自分だけが構ってもらえる唯一の時間ですからね。
「パチェ、皆に状況を説明しなさい」
「……咲夜は、異世界へ跳ばされたわ……」
え?
「「「ええええええええええええええ!? 」」」
事の成り行きを見ていた私達3人は同時に驚きの声を上げた。
つまりあのゲートは本物で、咲夜さんはどこか異世界に飛ばされたってことですか!?
「そ、それで咲夜は戻ってこられるの? 」
妹様の重要な質問に私も首を縦に振りどうなんですかと詰め寄る。
「……今はまだわからないわ」
ちょっパチュリー様、わからないんですか!?
もしかしたら永遠に帰ってこれないかもしれないって事ですか!?
「う、うわぁぁぁぁぁん!!!おねぇさまぁ!!!咲夜がぁ!咲夜がぁ!」
「お、落ち着きなさいフラン!だ、大丈夫!咲夜なら大丈夫のはずよ!う、うん!きっと!たぶん! 」
妹様が取り乱し始めたのをきっかけにレミリアお嬢様も平静を保てずに二人で大慌て。
まぁ私も阿波踊りしそうなくらいにどうしましょうどうしたらいいんでしょうと大慌てしてるんですけど。
これが紅魔館を大きく揺るがす十六夜咲夜消失異変の幕開けだったのです。
「ふぅ、ふぅ……やっと、何とか、落ち着いたわ。
とりあえず咲夜がいない今、紅魔館は重大な危機に直面しているわ。
咲夜を戻す役もそうだけど紅魔館を動かす役も必要よ」
会議室には私、レミリアお嬢様、フラン様、パチュリー様、美鈴さんがいるわけで。
そーなると私は戻す役のサポートに回る事になるんでしょうか。
「紅魔館内の空間維持は私が何とかしてるから問題は無いわ。……ところで何で私はまだ正座なの? 」
全員の目がパチュリー様に向く。
そりゃ当然でしょ、と言わんばかりの目が。
パチュリー様は再び小さくなっていくのでした。
「パチュリーだけじゃ時間がかかりすぎる可能性が大ね。
ここは再び恥を忍んでアリスと魔理沙にお願いするしかないかしらね……
美鈴、この会議が終わったらアリスと魔理沙を呼んできて頂戴、早急に、ね」
「わかりました! 」
アリスさんならばパチュリー様が暴走しようとしても止めてくれるだろうし安心ですね。
問題は魔理沙さんですが私や美鈴さんが小さくなり、パチュリー様が赤ん坊になった事件の時は協力してくれたから大丈夫……ですよね?
「こういうのはあの隙間も詳しそうだけどどこにいるんだかわからないのよね。パチェ、友人のよしみよ、早急になんとかしてよね? 」
「……わかったわ」
「小悪魔、パチェの手綱をしっかり握っておきなさい。
今回は咲夜の分までしっかりとね」
「了解です! 」
今回ばかりは私もパチュリー様の味方というわけにはいきません。
それ程に私も怒ってるんですから反省してくださいねパチュリー様。
「後は普段の紅魔館を維持する為の咲夜の代わりが必要ね。
………………はぁっ、いい加減中に入ってきなさいよ冬妖怪、メイドが主人の話を盗み聞きするもんじゃないよ」
えっ!?と驚く私を尻目に会議室のドアが開き、現在ここにバイト中のレティさんが入ってきました。
盗み聞きしてたわけですか……さすがあの幽香さんの友人、侮りがたい。
「あら、やっぱりバレてたのね」
ニコニコと状況を把握しているであろうレティさんが空いている席に座る。
この人(妖怪だけど)ならば咲夜さんの代役として紅魔館をなんとかできるかもしれない。
そう思いながら状況を見守る事に。
「自分から存在感出しておいてよくもまぁ……で、どう?代理はできる?
その分報酬はちゃんと出すわ、非常時だもの、その辺は多く積むわよ? 」
「彼女のように、ってのは無理ね。私だけじゃ手が回らないわ。
助っ人に心当たりがあるからそれに聞いてみてからね」
助っ人……繋がりからすれば氷の妖精さんとかでしょうか?でもできそうな感じがしないから違うのかな?
あ、もしかして風見さんですか、そうなんですか、嫌な予感がしますよ私。
「頼んだわ。そしてフラン、私達に出来る事は一つだけ……普段通りに生活する事よ」
「えっ、お姉様……? 」
レミリアお嬢様が席を立ち、窓の外を見るようにして私達に背を向けた。
その表情は私達の側からは全く見えない。
「きっと見知らぬ土地に飛ばされた咲夜は自分よりも私達紅魔館の皆の心配をしていると思うわ。
咲夜はそういう人間だもの……だからねフラン、私達は普段通りの生活を送るの。
咲夜が帰って来た時に安心してくれるように、そして咲夜が帰ってきたら少しだけ我儘を言ってあげなさい。
貴女がいないと皆が楽しくないんだって、貴女が必要なんだって、教えてあげる為に、ね」
レミリアお嬢様の肩が少しだけ震えた。
きっと自分は誰かに頼むことしかできないんだってレミリアお嬢様は自分の無力に嘆いているのかもしれない。
私だって実際には手伝いくらいしかできないから……
「だからって何もかも皆に任せるわけじゃないわよ?自分でできる事はするのよ?
少しは私達だって出来る事を咲夜に教えなくちゃいけないからね」
一度腕で顔を拭いた後、振り返ったその顔は強気な笑顔だった。
その笑顔にフラン様は泣きそうな顔を一度だけ目を瞑り、
「うん!お姉様、私頑張るよ、咲夜に心配ばかりかけさせない為に、ちゃんとおかえりって言う為に! 」
眩しい程の笑顔でレミリアお嬢様に答えた。
……咲夜さん、私達は絶対あなたをこの幻想郷に戻してみせます。
だから、少しだけ待っていてください。
私は心の中で決意を新たにし、こうして咲夜さんのいない紅魔館にて、咲夜さん救出作戦が始まった。
「というわけで、アリス、あなたの協力が必要なの」
「……成程、異世界からの咲夜の救出……このゲートを修理して尚且つ飛ばされた世界を何とか見つけないといけないわけね? 」
「えぇ、一番彼女を戻せる確率が高い手段はそれしかないと思うの」
会議後直ぐに美鈴さんがアリスさんを呼びに行き、こうして図書館にてレミリアお嬢様、パチュリー様が事情を説明。
私はお茶の用意をした後、パチュリー様の背後にて話を聞く事にした。
「いいわ、私にとっても見過ごして良い問題じゃないし協力するわ。後は魔理沙だけど……」
「美鈴が行った時には既に外出中、大方霊夢の所か人里でしょうね。
夜になっても見つからなかったら私も探しに出るわ。
それよりありがとうアリス、協力感謝するわ、パチェだけじゃ不安だから」
「ちょっとレミィ、それはどういう意味? 」
ギロリとパチュリー様がレミリアお嬢様を睨んだ。
しかしお嬢様はにこりと笑みを浮かべて振り返り、
「ねぇパチェ、親友がいつもいつもいっっっっつも自分の家を壊して迷惑をかけて悪気も無く振る舞って、
その上今度はお互いにとっても大事な人をどこかに飛ばしちゃった癖にまだ生意気なの、どうしたらいいかしら? 」
何時だったか、咲夜さんが事故で大怪我をした時や騙されて永遠亭に強襲した時のような恐ろしい程のプレッシャー。
それが今またお嬢様がパチュリー様に向けて放っている、あぁ、本気で怒ると笑みを浮かべるって本当なんですね、は、ははは……
直接当てられていないけど震えが私は止まらない、アリスさんは平気なのか溜め息をついてそりゃそうよ、と呟いた。
そしてパチュリー様はうっ、とたじろぎ、
「ご、ごめんなさい……」
と言いながら項垂れた。
「全く、パチェじゃなかったら槍の一本でも刺してるわよ?
大体咲夜の気を引こうってやりすぎなのよパチェは、素直になったら? 」
あ、それは禁句……!
「んなっ!?そ、そういうレミィこそ素直じゃないでしょ!?
いつもいつも妹様が咲夜に甘えている時に面白くなさそうな顔している癖に! 」
「ちょ、ちょっと……パチュリー?レミリア? 」
「お二人とも、そ、そこまでにしたほうが……」
まずい、何か雲行きがやばい方向になってる気がします。
オロオロと私とアリスさんはレミリアお嬢様とパチュリー様の間で止めようとしますがお二人はどんどんヒートアップしていきます。
「何よパチェなんか甘える事すらできない癖に!厄介な同居人とでしか思われてないんじゃないかしら!? 」
「ふん!そんなレミィこそ何時までも素直に甘えられないようじゃ妹様のメイド長になられちゃうんじゃないかしら!? 」
「おーっす、呼ばれて飛び出て……なんだこの修羅場」
「お嬢様?パチュリー様?な、なに恥ずかしい喧嘩してるんですか? 」
「何々?咲夜の事を誰が一番大事に思ってるか大会か何か?私も混ざりたーい」
図書館の入り口には何時の間にか魔理沙さんと美鈴さんの姿が。
おまけにフラン様、それ違いますから!そんな変な興味持たないでください!
結局お二人の喧嘩は1時間にも及び、弾幕勝負になりそうだったところを私と美鈴さんが抑えて事無きを得た。
咲夜さん、初日の最初から不安です……
魔理沙さんへの説明も終わり、とりあえずお茶でも、と調理場に向かうとホールで妖精メイド達が整列していた。
何事だろう、と通路から顔を出して見てみると……
「先程説明した通りメイド長の代理として紅魔館メイド隊は私が取り仕切る事になったわ。
でも、さすがにメイド長の代わりというのは私には荷が重い、というわけで助っ人を呼んだわ」
「ルナサ・プリズムリバーだ、咲夜が異世界に飛ばされたなんて緊急事態は友人として見過ごせない……またよろしくね」
おぉレティさんの助っ人ってルナサさんだったんですか。
咲夜さん繋がりなのか個人の付き合いがあったのかわかりませんがこれで安心ですね。
ってあれ?もう一人いるみたいで……あ、あの方は……
「風見幽香よ、私が再び来たからには甘えは許されない、覚えておきなさい」
やっぱりぃ!?私あの方苦手なんです…だって怖いじゃないですか、色々と。
下手な事言ったら笑顔で痛い目に合わされそうで……あぁ嫌な想像しちゃった。
現に彼女を知っている妖精メイドは苦笑いと冷や汗を掻いているのが結構いた。
「あら怖い怖い。だから影で色々と言われてたのね」
「あんたもどうせ影で腹黒とか言われてるわよ」
あ、まずい、あの空気には耐えられない。
笑顔で背後に竜子相打つみたいな虎と竜が見える、そんな気がする光景に私は戦慄すら覚える。
その隣ではぁっ、と溜め息をつくルナサさんにここは全てを託しましょう、決して私じゃ無理だからとか思ってないで……いや、無理なんで逃げます。
ルナサさん、あなただけが希望です!どうかお願いします!
パチュリー様達にお茶を出し、言われた魔道書を探して持って行く事数時間……
未だゲートの修復には至らず、夜のとばりにも入り一度休憩をする為に再び給湯室へ。
その時窓から門で構えている美鈴さんが見え、それに近づくレミリアお嬢様が見えた。
何だろう、と様子を窺いに。
「美鈴、そんなに気負う必要はなくてよ、今の幻想郷は平和そのものなんだから」
「お嬢様……別に気負ってなど」
普段とは美鈴さんの様子が違う。
いつもよりも力が入っているというか緊張しているというか。
でもどこかで見た事が、あぁ、咲夜さんが大怪我した時だ。
最初レミリアお嬢様とフラン様の圧力に涙目で立っていたように見えたけど少し経つとそれも収まり、普段とは思えぬ程に凛々しく立っていたのを覚えている。
「懐かしいわね、咲夜がまだいなかった頃が……何事にも無茶ばっかりしてた頃が」
「そう、ですね。あの時の私は必死でした」
夜の月を眺めるお二人は本当は何を見ているんでしょうか。
ひょっとして私が知らない過去を見ているんでしょうか?
「前のように、とは言わないし、少し肩の力を抜きなさい。
昔を知る妖精メイド達なんてほとんどいないのだから。
そんな事じゃ本当に何かがあった時、疲れて何もできないわよ?」
「そうかも知れません……しかし、私は不器用なんです。
咲夜さんのいない今を、咲夜さんが帰って来た時に門番として恥ずかしくないようにしていたいんです。
甘えていられた分を今ここで引き締めておかないと…………結局今の私も昔と変わらないんです。
この地に来ていっぱいいっぱいになりながら必死にこなそうとしていた頃と何も」
美鈴さんがぐっと握り拳を作った。
普段どことなく抜けた様子があるのは咲夜さんがいたからなんですね…
きっと私が知らない過去の美鈴さんはたくさん苦労してきたんでしょう。
だから今の紅魔館に自分が甘えられる人がいるというのは美鈴さんにとってとても安心できる状況なんでしょうね。
「普段見せない理由は?」
「咲夜さんがいるからです」
「あら、咲夜のせい?」
「いいえ、咲夜さんがいてくれるからサボれ……いえ、ナンデモナイデス」
微笑と苦笑。
私はそっと給湯室を目指して歩く。
普段見せない美鈴さんの凛々しく立つ門番としての姿を私は覚えておこうと思った。
咲夜さん、やっぱり貴女がいないと駄目なんですね……私もですけど。
□月×日 十六夜咲夜救出作戦二日目
3人がかりのゲート修復作業は難航し出しました。
作った当人曰く「本気で成功するなんて思ってもいなかった、今は反省しているつもりだ」だそうで修復に必要な物を探すのだけでも手一杯。
作り方の魔道書はどうやら失敗対策をしていなかったらしく灰となってしまいました。
「珍しいじゃないかパチュリーが確信を持たずにやるなんて」
そういえばそうですね……いつもならうん、これでいけるって言って咲夜さんに怒られるのに。
「単なる気晴らしがてらよ……何か言いたそうねアリス」
「いいえ別に。起動させる前に止めてほしかったんじゃないか、なんて思ってないわよ」
むっとした顔になるパチュリー様とアリスさんの言葉で今回のパチュリー様に合点がいった。
成功させるつもりのない実験、つまり被害が起きる前に咲夜さんによって止めてもらいたい実験。
成程そういうことですか。
「別に咲夜に止めてもらうつもりでなんて実験しないわよ、考えすぎよ」
「まっ、今度からはこういう実験はきっちりやることってこと。
いやいやそれにしても昨日のレミリアとの喧嘩は見物だったなぁ……文でもいれば……パチュリーさん、そのボタンは何でしょう?」
「うん?引き際を見誤った愚かな黒白お喋り猫をお仕置きする為のボタンかしらね」
本棚につけられているボタンに手をかけるパチュリー様はとてつもなく笑顔だった。
アリスさんはさっさと済ませなさいよ、と放置。
つまり私も放置、ていうか巻き添えは御免です。
「あーその、悪かったわよ、冗談じゃないかははは」
そして苦笑いをする魔理沙さんをパチュリー様は一度ニコリと笑い、
「さて魔理沙、私は優しいからどこへ落っことすのか教えてあげるわ、楽しい楽しいパチュリーワールドへご招待、よ! 」
ポチリとボタンを押し、魔理沙さんは声高らかに、ああああああああ!!!と叫び声を上げながら落下していきました。
パチュリー様は親指を下に立てて勢いよく上から下へ腕を降ろしたのも衝撃的でしたが、
また名前が違う辺りまたパチュリー様のお仕置き部屋の内容が変わっていると思うので下手な事を言わないようにしよう。
□月△日 十六夜咲夜救出作戦三日目
難航する修理作業に私達は頭を抱えていました。
せめて本が残っていればと考える私達ですが無い物は仕方ありません。
少しでも同じような事例、内容がある本を片っ端からお三方に渡し続ける。
しかしどうにも望まれた物が無く、どうしたものかとお三方と一緒に悩み始めた頃、
「はぁい、元気かしら~? 」
スキマ妖怪こと八雲紫さんが空間を裂いて現れた。
突然の登場に驚きましたがとりあえず紅茶の用意をして自分の心を落ち着かせる。
「何?今の私はとっても喘息の調子が良くてとっても機嫌が悪いの、現状をわかってるならさっさと帰ってくれない? 」
危険なカーブを描くパチュリー様の眉にちょっとビクビクしながら紅茶を八雲紫さんに出す。
あら、ありがとう、と紅茶を一口飲み、試すような見下した目をパチュリー様に向けた。
「あら、そういう事言っちゃうの?
現状の責任を取ってもらいに来た、と言ったらどうするのかしら? 」
「責任?無断で世界と世界を一時的にでも繋げた事?それとも咲夜を幻想郷の外へ出してしまった事? 」
どんどん空気が悪くなっていくのがわかります。
いったいパチュリー様は何故そんなに不機嫌なのでしょうか?からかいに来た、と思っているから…?
そんな事、とは言いませんが今回のような事で八雲紫さんが来るとは思わないんですけど。
「この場合は両方ね。幻想郷のパワーバランスを崩し、尚且つ別の世界との繋がりができたかもしれないなんて、ねぇ?
落とし前をつけてもらうのは当然といえば当然の話よ」
「……責任は果たすわよ。何でも言いなさいよ、その時に。今は優先するべき事があるわ」
落とし前、という言葉に私は心配になってパチュリー様を見た。
今回の件が他の場所でもこんなに大事になるとは思っていませんでした。
幻想郷を作ったと言っても過言ではない、と言われている八雲紫さんからすれば由々しき事態なのでしょう。
「十六夜咲夜が飛ばされた世界と幻想郷を再び繋げて彼女を助ける、えぇ、良い話だわ。
でもね、繋げた事で何が起こるかわからないわ、それこそ彼女が生きているかも…」
八雲紫さんの言葉が止まる。
彼女のいた場所にはどこから聞いていたのかレミリアお嬢様のグングニルとフラン様のレーヴァテインとそしてパチュリー様のジンジャガストが着弾していた。
直すの私なんですから少しは手加減……いえ、話の内容からしてもっと思いっきりやってもいいですね。
「おいスキマ、性質の悪い冗談はそう何度も許せないよ? 」
「次は当てるよ?そういう冗談は、好きじゃないから」
ぬっと再び空間を裂いて現れた八雲紫さんは苦笑を浮かべていた。
魔理沙さんやアリスさんはあんまり関わる気は無いようですがさすがに私も戦闘態勢をとります。
私にとっても咲夜さんは大事な方ですから、許せない事はあるんです。
「ふむ、後はレティや幽香にプリズムリバー長女辺りも……いえ、何か狙われているからやめときましょ」
?何のお話でしょうか?
「ほら、お探しの魔道書、藍に感謝しなさいな。
何か無いかと倉を探してたら丁度そちらのご希望の品が眠ってたのを探し出してくれたわ。
それであなた達のメイドさんを助けてやりなさいな」
パチュリー様の手元に降ってきたそれは一冊の魔道書。
パチュリー様の驚愕の表情を見るにどうやら探していたのはそれだったようだ。
「私がしてあげるのはここまで。ひょっとしたら藍が何か手伝いに来るかもしれないけどその時はよろしくね」
素直じゃない奴、と魔理沙さんが小声で呟いたのが聞こえましたがばっちり八雲紫さんにも聞こえていたようで、
隙間から盥が魔理沙さんを頭上から襲い、魔理沙さんは退場となりました。
「スキマ、なんでここまでしてくれる?見返りが欲しいわけじゃないでしょ? 」
お嬢様が代表して八雲紫さんに問いかけました。
そう、何でここまで言い方はあれですが『あの』八雲紫さんがしてくれるのかが私にはさっぱりわかりません。
んー、と少し考えるような素振りをした後、扇子を開いて顔を少し隠し、
「私、ハッピーエンドが好みなのですわ。
そう、力を合わせた結果の王道のハッピーエンド、それだけですわ」
パチン、と扇子を閉じるのとスキマで八雲紫さんが消えるのはほぼ同時でした。
残された魔道書にこの場の全員の視線が集まります。
「……何にせよ、これで話が進むと考えてよさそうね」
「そうねアリス、これで私達の問題はクリアしたけど……気にいらないわ」
パチュリー様は依然不機嫌そうな態度を隠しませんがどうやらこれで何とかなるみたいです。
ということは今夜は徹夜ですかね……まぁ、それくらいどうってことないです。一大事ですから。
「そうか、これで咲夜は…」
「後は咲夜さんがいる世界を探して繋げる事が出来るかが問題みたいです」
給湯室でルナサさんと一緒に御夕飯の支度中、進展について聞かれたので状況を話すと安心したかのような表情をルナサさんは浮かべました。
そういえばレティさんと風見さんはどこいったんでしょうか?
「あぁ、あの二人なら今頃庭園で揉めてると思うわ」
「……止めなくていいんですか、むしろ止めていただけると助かるんですが」
主に妖精メイド達の為に、ですけど。
「いや、あれで二人は弁えている、何も心配はいらないさ」
「はぁ……そうなんですか?」
クスリと何もかもわかっているような笑みを浮かべるルナサさんに何も言えなくなる。
どうやらこの三日間であのピリピリとした空間は安全だと判断した、と見ていいんでしょうか?
ということは……私もそんなにビクビクしないでいいんでしょうか?
「私と咲夜のような友人の関係、とは見えないだろうけどあれでお互い信頼している。
悪友というか喧嘩友達というか、そういう物だと思ってみれば納得できると思うわ」
成程、それならば多少はと私の中のもやもやが少しだけ晴れた。
まだ怖いと思ってしまう気がしますが少しくらい平気に見る事ができそうな気がします。
「しかし本当に凄いですね、まるで咲夜さんみたいです」
テキパキと野菜の調理をこなしていくルナサさんの姿に私は感嘆してしまう。
咲夜さんも同じように厨房を賄っていた姿を思い出す。
ルナサさんは咲夜さんが認める程、私が憧れをもって見てしまうのも仕方ないと思う。
「まだまだ咲夜には敵わないわ」
「そうですか?咲夜さんならそんな事はないって言いそうですけど」
しかしルナサさんは作業を中断してこっちを向いて首を振った。
「まだ彼女の横には並べていないさ、もっと、もっと努力しなくては彼女がいた時のようにはできない」
……うーん、もしかして……
「ルナサさん、失礼な事を聞きますがもしかして咲夜さんに劣等感とか感じたりしてませんか?」
瞬間ルナサさんの動きが止まった。
そして一度天井を仰いでこちらを見たルナサさんの表情はとても、とても暗かった。
「……そうね、私は今、咲夜と自分を比べてるわ。
彼女の為にこうして手伝いに来ているのに咲夜のようにできなくてはいけない、けれど咲夜のようにできる程の実力はない、と思っている。
当たり前のことなのにね、紅魔館でメイドとして仕切ってきていたのは彼女なのだから、彼女の代わりなんてできるはずがないのに」
咲夜さんがいないからこそ咲夜さんのようになりたい。
私もそう、少しだけそれは思いました、でも私では足りないという事は直ぐにわかりました。
きっとルナサさんは咲夜さんがいない穴を必死に埋めようとしてくれているのでしょう。
咲夜さんがいる時のような紅魔館にしてみせると思ってくださっているのでしょう。
咲夜さんが帰ってきた時に何事も無かったと、彼女を安心させる為に。
「咲夜のようになりたい?私はあなたに咲夜のようになってほしくないなー」
私でもルナサさんの声でもない第三者の声。
振り向くと厨房の入り口にはフラン様が立っていた。
「けれど」
「あなたは咲夜の偽物になりたいの?」
うっ、とルナサさんが口籠る。
私はかける言葉が見つからず、ただ状況を見守る。
「それは私にとってもあなたにとっても咲夜にとっても許せない事だと思うよ?
きっと咲夜がいたら怒るよ、私の代わりなんてつまらない事はやめてくれって」
言いそう、と内心で苦笑。
きっと少し悲しそうな顔で怒るんでしょうね、咲夜さんの事だから。
「私はあなたに咲夜のようにしてほしいなんて思わないし求めてもいない。
私は咲夜の料理は好きだけど、あなたの料理も好きなの。だから楽しみなの、こうしてまた食べられる事が」
「……ごめんなさい。どうかしてたわ」
どうやらルナサさんの中の何かはふっ切れたようです。
あれ?でもフラン様はどうしてここにいらしたんでしょうか?
「ところで……何か食べるもの頂戴?お腹空いちゃった」
「…………あんまり食べてほしくないけど、ちょっと待ってて」
ルナサさんが別の調理に取り掛かり始めた。
フラン様はそれを後ろで楽しそうに眺めている。
なんというか、咲夜さんがいたらこの場をどう思うんでしょうね。
きっと頬笑みを浮かべてルナサさんの横で自分も何か、と作るのでしょうね。
そしてフラン様が両方美味しいと残さず食べるのでしょう。
咲夜さん、私達はあなたがいない穴を埋めようと必死です。
だから絶対早く帰って来てもらいます。
やっぱり咲夜さんがいないとどうしょうもないんですよ私達は。
□月□日 十六夜咲夜救出作戦四日目
咲夜さんを連れ戻す為の装置の修理は完了しました。
あの後藍さんが増援に来て下さり、とりあえず紅魔館内の状態は平静を保っています。
次のステップに入り、咲夜さんがいる異世界を探索中とのことですがこれは時間がかかるとの事。
下手に異世界とのコンタクトを取ろうとすると色々と不味い事も多いようで慎重な作業をしているようです。
異世界との衝突が起こらない事と咲夜さんの無事を祈る事だけが今の私に出来る事……歯がゆい思いです。
□月&日 十六夜咲夜救出作戦五日目
どうやら目星はついたらしく、明日その世界との接触を試みるとの事。
危うい時もありましたがなんとかここまでこぎつける事ができたと安堵してます。
後は咲夜さんが無事である事を祈るばかりです。咲夜さん、大丈夫ですよね?
□月!日 十六夜咲夜救出作戦六日目
「さて、いよいよね」
目星はつけたという世界とのコンタクト。
咲夜さんが送られた時の波長がどうとか世界の作りがどうとかよくわかりませんがそこに咲夜さんがいる可能性が高い、というお三方の結論。
「えぇ、これで何事も無く咲夜と話せればいいけど」
アリスさんが心配そうな顔でゲートを見る。
わかります、ここに来るまで本当に綱渡りでしたからね。
「何、咲夜なら大丈夫だろ。今頃新しい主人でも見つけてるかもしれなああああああああああああ!?」
言い終わる前に魔理沙さんは再び穴に落ちて行きました。
とりあえず誰も何も言わないので私も何事も無かったかのようにゲートを見直します。
「さて、始めましょうか」
起動音と共にゲートに魔力が集まっていくのがわかりました。
そして歪みが発生し、何やら声が聞こえてきました。
どうやら無事成功のようです。
「いきなりでごめんなさいね、異世界の住人」
「……待っていました、と言った方がいいですかね」
!?この話振り、もしかして!?
「どうやら私達はようやく希望を繋ぐ事ができた、というべきなのかしら」
「少しの間お待ちください、私達の世界の神と咲夜を呼んでおります」
あれ?咲夜さん何かこの人?と親しい関係なんでしょうか?
声しか聞こえないのでどんな方かわかりませんがきっとまたお節介をしたんだろうなぁとか思います。
そして少しの間お互いの世界についての談笑をし、役者が揃いました。
向こうの世界を作ったという神と咲夜さんがどうやらこの繋がってる場所に来たみたいです。
「初めまして、この世界を統治している神綺と申します」
「パチュリー・ノーレッジよ。咲夜とまずは話をさせて」
少し間が開いてパチュリー様、お久しぶりです。と今一番私達が聞きたい声が聞こえてきた。
あぁようやく咲夜さんの無事を確認できたんです、ちょっと涙が出たのは内緒ですよ?
パチュリー様がホッとしたような表情を浮かべていたのも私とアリスさんの秘密です。
「紅魔館は大丈夫ですか?また図書館を壊したりしてませんか?お嬢様達は無事ですか?
魔理沙が盗みに入って着たり一緒に変な実験してませんか?心配事ばかりですわ」
「咲夜、私を何だと思ってるのか帰ってきたらとことん話してもらうわ」
と、軽口を言いあっている最中、音声が少し悪くなってきました。
故障かとパチュリー様が確認しましたが何も不備はありません、つまり……
「こちらとの繋がりがかなり不安定になってるということね。
事故とはいえ一度繋がってはいけない世界が繋がってしまった、つまりこれは仕方のない事」
神綺さんと名乗った方に声が変わりました。
どうやら事態は手放しに喜べる状況と言うわけではない、ということですか。
ん?繋がってはいけないってどういう意味なんでしょうか?パチュリー様はその言葉を聞いてまさか、と何かに気付いたようですが。
「後一回繋げるのが限界でしょうね、繋げておくにはお互いに全てが足りない状態です。
明日咲夜さんをそちらに責任を持って送ります、よろしいですか?」
「こっちは何も問題は無いわ、早く帰って来てもらわないと困る奴らがいっぱいで迷惑してるの」
ムスッとした顔を意味無く作っているパチュリー様に少し私とアリスさんは笑ってしまった。
何を笑っているのよ!とパチュリー様が威嚇なさいますが少し顔が赤いパチュリー様に怒られてもまるで怖くありません。
それすら微笑ましく見えてしまうのですから。
「あらあら、咲夜さんが羨ましいわー」
「勘弁してください、神綺さん……」
向こうもどうやら咲夜さんをからかい始めたようです。
たぶん咲夜さんは少し頬を染めて困ったような表情をしているんでしょうね。
「パチュリー様、お嬢様と妹様に……いえ、やめておきましょう」
「そ、咲夜は主人に何にも告げない最低な駄メイドだったわ、と伝えておくわ」
それでは、とゲートからの声が途絶え、ゲート自体も軋むような音を立てて止まりました。
確認すると罅も見えており、確かに後一回が限界というのは間違いないようです。
「何で咲夜はレミリア達に何も伝えないのかしら」
「さぁね。きっと伝えない事が伝える事になるのよ」
何か矛盾しているような感じがしますが……まぁきっと私達にはわからない事なのでしょう。
とりあえずレミリアお嬢様やフラン様を呼んできますかと図書館を出ようと扉を開けるとゴン、と何かに当たった音がしました。
見てみると妖精メイドが二人、頭を抑えている子が一人いる辺りドアに当たったのは彼女ですかね。
「いつつつつ……角が当たった……!」
「大丈夫?あぁ、小悪魔さん、すいません」
よく見ると頭をぶつけた子はよく裏で咲夜さんに嫌がらせを画策して失敗してお仕置きされている子で、
もう一人はレミリアお嬢様に凄く名前をつけられた挙句、長いから黒ちゃんと呼ばれている子でした。
「いいんです、というか盗み聞きしてましたね?」
「「ぎくっ」」
まぁ何か問題があるというわけではないと思いますが。
「きっとこれから咲夜さんについては何かしら伝えられると思います。
だからそれまで秘密ですよ?皆さんお仕事しなくなりますから」
こくり、と二人とも頷いてくれた。
さて、お二人を呼んで来ないと、と向かおうと振り向くとにっこりとした笑顔でその件の二人がいらした。
「「「きゃあああああああああああああああああ!?」」」
私と妖精メイド二人の計3人でとてつもなく大きな悲鳴をあげてしまったのはしょうがないと思うんです。
失礼ね、とレミリアお嬢様と妹様が不機嫌なお顔をしましたが気配無く目の前に現れるとびっくりするんですよ!
「成程、やっぱり咲夜は何も私達には言ってこなかったのね」
図書館に主要な方々が集結し、明日に関しての報告が始まりました。
咲夜さんが無事だとわかり美鈴さんやルナサさんは心底ホッとしたような表情をし、幽香さんやレティさんは微笑したくらいでした。
魔理沙さんは戻ってきた時には白い液体塗れだったのでただいま洗濯とお風呂に入っているようです。
そしてレミリアお嬢様とフラン様は咲夜さんから何も言伝が無いのをやっぱり、と納得し、またも笑顔を浮かべました。
「しつもーん、野暮な感じがするけど何であなた達は納得しているのか説明してもらいたいんだけど」
アリスさんが手を上げて私と同じ疑問の答えを求めたのを見てうんうん、と横で頷いておく。
ちなみに妖精メイドの二人もさりげなく同席を許可されており、なぜか私の後ろでコクコクと頷いているのはいいんですが服引っ張らないでください。
「野暮ね。告げるべき言葉がないのよ。咲夜は明日私達のところへ必ず帰ってくる。それは必然なの。
だから咲夜は私達への言伝をやめたの。わかりきった事を言うのは蛇足ではなくて?」
そういうものかしら、とアリスさんは半分納得してはいないようです。
私もそれでも必ず帰りますとか言われると嬉しいような気がするんですが。
「このくらいの方が咲夜に会った時我慢できなくなるわ、これは咲夜は気付いてないと思うけどね」
「そう、帰ってきたらきっと私はいっぱい泣いて咲夜におかえりを言うの、今まで全く言葉を交わせなかった分をいっぱいね」
そう言って笑みを浮かべるレミリアお嬢様に私達は何も言えませんでした。
お互いを信頼しているからこそなんでしょうか?私にはまだわかりません。
とはいえお二人が喜んでいるのは確かなのでこの話はここまでとなりました。
明日はいよいよ咲夜さんの帰還、今から緊張で動悸が止まりません。
寝つけずに夜の紅魔館を散歩しているとテラスにレミリアお嬢様とフラン様が月を眺めているところを通りかかりました。
「咲夜、無事だったってねお姉様」
「えぇ、そりゃあ私達のメイドだもの」
表情は後ろ姿しか見れないのでわかりませんが羽がパタパタと動いている辺り笑顔なのだろう、という予想。
しかしレミリアお嬢様がこちらの方に振り向くような素振りが見えたので、慌てて壁の裏に隠れる事に。
「全く、こんなに主人をやきもきさせるなんて駄目なメイドだわ、帰ってきたらこき使ってあげないと」
「お姉様、笑いながら言ったって説得力が無いよ?」
そして少しの沈黙。
何事か、と思いながらも出るに出れずにいる私、ていうかばれてないんですよね?大丈夫ですよね?
「フラン、今なら誰も見てないわ」
「お姉様こそ、今なら誰も見てないよ?」
?何のことでしょうか?何か見られてはまずいものがあるんでしょうか?
と思った瞬間、少しずつ、少しずつですがすすり泣く声が聞こえてきました。
私は直ぐにその場を離れました。
願わくば私のような者がお二人を見つける事が無いように祈ります。
今は誰も言葉をかけてはいけない、誰も見てはいけない、そう思ったから。
□月%日
「本棚に結界は?」
「万事OK」
準備は万端。
後は起動するだけといったところですか。
今や図書館にはパチュリー様、アリスさん、魔理沙さん、私のいつもの4人に加え、
レミリアお嬢様、フラン様、美鈴さん、ルナサさん、レティさん、幽香さん、妖精メイド隊のほぼ全員が揃っているというまさに全員集合!状態。
藍さんは後で咲夜本人に来てもらうさ、と昨日の内にご自身の家へ帰られたようです。
「さぁパチェ、始めて頂戴」
「えぇ、わかってるわ」
再びパチュリー様の手によってゲートが起動し、ゲートから声が聞こえてきました。
聞こえる声から判断して向こうの代表者、神綺さんという方のようですね。
「無事起動できたみたいね」
「えぇ、早くうちのメイドを返して頂戴」
何私の物みたいに言ってるのよ!とはレミリアお嬢様。
軽く無視して話を進めようとするパチュリー様、何してるんですかね、まったく。
「わかったわ、と言いたいところだけど少しだけ待っててね。
……別れの言葉くらいは、させてほしいの」
「……なるべく早めにね、こちらが持たないわ」
ありがとう、と聞こえたかと思うと音がぷっつりと止みました。
どうやら向こうでは咲夜さんと向こうの住人とでお別れの言葉をかけあっているのでしょう。
向こうの世界でもやっぱり咲夜さんは色々と世話していたのでしょうか?
「心配?」
「まさか」
小声でパチュリー様とレミリアお嬢様の会話が聞こえたかと思うと不意にゲートが強く光り出しました。
「やっと帰って……あら、これはまずいかしら」
「「「「「「え?」」」」」」
何が?と聞こうかと思った瞬間にさらにゲートが光り出したかと思うと私の目の前は真っ白に………ていうかこれ爆発してませんかああああああああああああ!?
私の意識はそこで途切れていた。
気がつくと図書館は本棚以外壊滅状態といった状態になっていました。
パチュリー様達は事前に何か防御手段を使っていたのか全くの無傷、ずるいです。
レティさん達は傷ついたメイド妖精達を起こしにかかっているようです。
そして……
「咲夜!咲夜咲夜咲夜!」
「咲夜!目を開けて咲夜!」
「んんっ……!?こ、ここは……お、お嬢様!妹様! 」
ゲートは既にバラバラに壊れていましたがその場所には涙をぼろぼろと溢してしまっているレミリアお嬢様とフラン様。
そして……この場の誰もが帰ってきてほしいと願っていた咲夜さんがついに私達の目の前に戻ってきてくれていました。
「咲夜!やっと起きたわね……心配、させてくれるじゃない」
「咲夜ぁ!よかったぁ……もう会えないんじゃないかって心配したんだよ? 」
咲夜さんがレミリアお嬢様とフラン様を見、そしてこちらを見た。
泣いてなんかないです、泣いてなんかないですからね?でも私も自分が泣いているのを抑えられずにただただ咲夜さんを見る事しかできませんでした。
よかった、本当によかったとそれだけで私の心はいっぱいいっぱいになってしまいました。
「ただいま戻りましたわ、お嬢様、妹様」
お帰りなさい咲夜さん、これからもよろしくお願いします。
声にできず私はそれだけを心の中で咲夜さんに向けて言うのが精一杯でした。
いやはや、こちら側は予想以上のドタバタになってたんですねぇ。ホント、愛されてますね咲夜さん。
再び丸く収まった館に、祝福を
咲夜さん帰還のために力を合わせて頑張っている姿や会話に、頬が緩んじゃいますね。
皆からこんなにも慕われている咲夜さんって素敵ですね。
ちょっと気になった部分があったのですが。
>魔理沙さんはああああああああ!!!と叫び声を上げながら落下していった。
ここなんですけど、一度区切るか「」のほうが解りやすいかもと思ったり。
>「おいスキマ、達の悪い冗談はそう何度も許せないよ? 」
ここの達は「タチ」とか「性質or質」などみたいです。