東方紅執事
~警告~
・オリジナルキャラクターが出ます。
・キャラ崩壊、改変の痕が見られます。
・レイレミ、レミフラ、レミ咲等々、原作キャラによるカップリングを期待してい・・・・る人は居ないと思いますが、
そーいう方にとっては不快かもしれません。
・紅魔館に窓って無いんじゃなかったけ?→あるよ。
・夜伽にアップした同名のSSとは繋がりがあるかもしれないし、無いかも知れません。
それでも読むとおっしゃるならば、ごゆるりと頭のねじをはずしてお読みくださいませ・・・
EP1
-レミリアお嬢様とフランお嬢様の食事風景-
『紅魔館・当主の部屋』
「はぁ・・・暇ね」
窓の外から表を眺めると、朝日が昇りかけ黄金色になりつつある妖怪の山と、亡霊に追いかけられている夜雀が見えた。
「・・・」
今にも寝てしまいそうな瞼を擦りながら、今度は室内を見渡す。
絢爛豪華な調度品の数々。
どれをとっても、唯一無二の一品や、それこそ、霊夢が涎を垂らしながら質屋にもっていきそうなものばかり。
この手に持つティーカップだけで、博霊神社が1軒建つ。
もっとも、それらは運が悪ければ、私の妹によって壊されてしまうことが多々あるのだけれど。
「ん・・・」
一口、紅茶をすする。
最高級のモノと言われてるだけあって、高貴な香りが私の鼻を擽り、官能的ともいえる味が舌を震わせる。
ゆっくりと流れる至福の時間。
そう、他人から見ればそれはとてもとても贅沢で、夢見る一時。
「はふぅ・・・」
ゆっくりと、溜息を吐く。
そんな贅沢な一時にも関わらず・・・
「暇ね」
私ことレミリア・スカーレットはとても退屈だった。
退屈此処に極まれりといった感じで頬杖をつき、もう一度窓を睨むと同時に、ドアがノックされる。
音も無く扉が開くと、咲夜がお辞儀をして部屋に入ってきた。
「何・・・?」
「お嬢様、お食事の時間で御座います」
「あら、もうそんな時間だったのね」
そう言って、テーブルの上にシャンパングラスと前菜が並べられる。
「本日の食前酒は、上等なオレンジジュースが出来ましたので、ミモザで御座います」
そのまま名前の由来となった花と同じ、鮮やかな黄色の食前酒を口につける。
オレンジジュースとシャンパンを軽くステアしたそれだ。
コクコク・・・コクン。
少々子供っぽいが、素敵な味なので許してあげよう。
「前菜はトマトファルシで御座います」
目の前に置かれたそれは、トマトの器と言えばいいのだろうか。
トマトの中身をくり貫き、その中にポテトや海老、ホタテやイカがマヨネーズと少々のカレー粉で合えたものが詰められいる。
とても食欲が沸きそうだ。
さっそく口に運ぶ。
しゃくしゃく、ぷりぷり、もぐもぐ。
「ん・・・美味し・・・」
何と言うか、とても現金なもので先ほどの退屈は何処へやら行ってしまった。
今私を支配しているのは、食欲と次の料理への期待だ。
「コンソメスープで御座います」
単純にして明快。
それで居て奥の深いスープの王様。
小食な私に合わせて、パンではなくクルトンが浮かべられている。
「熱いのでお気をつけを・・・」
炎のように熱された器。
コンソメスープの命ともいえる、温度を保つために、わざわざ器にも工夫がされていた。
一口啜ると、風味豊かな味わいが口いっぱいに広がる。
「これも美味しいわね・・・」
かりかりとしたクルトン、ふにゃっとしたクルトン。
入れるタイミングを変え、2種類の食感を醸し出す。
しかし・・・しかし満足感は無い。
物足りない。
でも之で正解なのだ。
物足りなさが次への皿への期待へ繋がる。
心地よい物足りなさだった。
「次は?」
「サーモンのムニエルで御座います。妖怪の山に住む河童から分けて頂きました」
ソースはタルタルソース。
オニオンが入っているが、別に食べれないわけじゃないので気にしない。
むしろホクホクとしたサーモンに、シャクシャクとした食感が加わって申し分無し。
今時の吸血鬼は偏食じゃ、人生を楽しめないのだ。
そもそも、ニンニクやオニオンというのは滋養強壮や殺菌作用の強い食材だ。
昔の病気は悪魔の仕業とされ、そーいった食材を食べたら治る=悪魔を退治できる・・・と考えられてたのよね。
だから私達吸血鬼にも効くのだろうとされていた。
ま・・・そんなことは無いわけで・・・
「ん、香ばしくていい感じね」
ぱりぱりと揚げられた付け合せのスライスニンニクを齧る。
「んぐんぐ・・・んくっ。・・・はぁ・・・む。もぎゅ・・・」
ここまで食べても、まだ物足りないわね。
まあ、絶対量が少ないからなんだけど・・・
そろそろお肉が食べたいわ。
「またせたな、お嬢」
ああ、来たわね。
魚料理が食べ終わるとほぼ同時に、コックスーツに身を包んだ当館の『執事』が料理片手に部屋に入る。
言葉は乱暴。
慇懃無礼な優男。
だが、私の忠実な僕。
名をエイクスという。
彼の言葉に怒りは感じない。
なぜ?
私がお肉が食べたいと思ってから2秒後に部屋に来た。
その2秒を「待たせた」と謝罪したのだ。
ならば怒る理由もない。
きっとその2秒は、その手に持つ料理を美味しくするためにかけられたものなのだから。
「その分美味しく出来たのでしょ?」
「勿論だ。本日の肉料理にしてメインディッシュ。鴨肉のロースト、血のソース掛けだ」
かぱっと蓋が取り除かれ、肉とソースの良い香りが広がる。
「・・・」
情けないことに、少し涎が出てしまった。
「さあ、熱い内に心逝くまで堪能してくれ」
「そうさせてもらうわ・・・はむ・・・」
野味溢れる鴨肉、噛むごとに滋味が溢れ出し、味雷を一々刺激する。
柔らかく、コクのある肉質は心と胃を満足させる。
咀嚼し、飲み込むと、お肉を食べたという充足感で一杯だ。
わざと付けられた鳥皮の部位も、脂がさらりとしつこくなく、それ自体が旨みの塊だった。
そして極めつけなのはこのソース。
鴨の血・・・そして、
「処女の血だ」
何処で仕入れたかは判らないが、魔力の塊をそのまま食べてるが如く、体に力が溢れてゆく。
これはもう筆舌し難い。
ただ・・・一言。
「美味しい」
「お褒めに預かり、光栄だ」
うん、美味しい。
一緒にソースに忍び込ませてある胡桃なんかも、こりこりしてて最高だ。
「はむ・・・もぐ、んぐ」
優雅さに欠けるが、一心不乱に目の前のご馳走を平らげる。
「はぐはぐ・・・んっく。くちゅ、もぎゅ、むぐ」
「お嬢・・・。美味しそうに食べてくれるのは嬉しいが、名の有るれっきとしたお嬢様の顔じゃあないぞ」
「もぐ?」
我が無礼な執事は、はぁ、と溜息をついて、ナプキンで私の頬を拭う。
「血で服を汚すのもそうだが、料理で服を汚すのも勘弁してくれよ?この染みを取るのはなかなかに大変なんだ」
「もぎゅ・・・(うるさいなぁ)」
エイクスはそうお小言を漏らしつつ、汚れたナプキンを咲夜に渡す。
・・・ってこらまて咲夜。
なぜポケットに仕舞う。
そしてなんだその若干嬉しそうな顔は。
そのナプキンで何をするつもりだ。
「うふふ・・・」
心なしか目が逝ってらっしゃる。
ああ、きっとこの堕メイドは、私の涎とソースのしみこんだナプキンを口に含んでちゅーちゅーするのだ。
そして今晩のオカズにしてしまうのだ。
勿論私の勝手な想像でしかないが、咲夜ならやりかねない。
なにせコイツは自分の部屋の金庫に、私の生え変わった抜け落ちた牙や、私の使ったフォークやらナイフやら。
挙句の果てには、飽きて捨てた筈のパンツまで仕舞いこんでいる。
まるで犬かなにかのようだ。
「・・・咲夜」
「うふふふ・・・」
嫌そうな顔をしている私に察して、エイクスが咲夜を咎める・・・
が、
「んふふ・・・ハァハァ」
絶えず笑みをこぼして私に微笑みかける。
何も知らない奴が見ればほほえましい光景なのだろう。
けど私は、その笑みの成分に淫靡と欲望とハードロリータが詰まっていることを知っていた。
・・・こわいよう。
「咲夜、食器を下げてくれ」
「・・・はい」
空いたお皿や食器を、カートに載せて優雅に退室する咲夜。
表面上は大人しく従っているが、去り際に『チッ』と言っていたのを聞き逃さない。
「・・・っと、デザートだ。ソルベは良い物が出来なかったので今回は無しだ。済まないな」
「構わないわ。あのお肉でお腹一杯だもの」
「そうか、なら、これはお腹に入るか?俺特製滑らかとろふわプリンだ」
「食べるわっ」
デザートは別腹なのよ?エイクス。
それにエイクスのプリンは最高だもの。
たとえお腹がはちきれそうでも食べるわ。
ことっ と置かれたお皿の上でふるんっと踊るエイクス謹製プリン。
ぷるんっとしてはおらず、口に含むと甘い幸せがふんわり蕩ける。
これぞ幸せといった感じである。
「お嬢、また汚れているぞ」
「にゅ?」
どうやら今度はプリンで頬を汚していたらしい。
「ナプキンはもう無いからな、失礼するぞ」
そう言って、手袋をはずし、指で綺麗に掬う。
「で、どうするのよ。それ」
「食べるか?」
「いやよ」
「ふむ・・・仕方が無い、咲夜を呼ぶか」
「それも嫌よっ」
「わかったわかった、ならこうしよう」
ぱく
「あ・・・」
「うむ、我ながら良い味だ。後で妹様にもお出ししなくては」
その意見には賛成だが、ちょっとまてこら。
「ん?なんだお嬢。末代まで呪われそうな顔になっているぞ」
「ん?じゃ無いわよ。何してるのよ。そ、そそそんな頬についたご飯粒を食べる恋人みたいな真似をするなんて・・・」
「意外に耳年魔なんだな、お嬢は」
「煩いわよ!!」
「それにあれだ、気にするな。咲夜じゃあるまいし、お嬢様の味がしますわぁ~なんて考えたこともないしな」
「~~~!!(真っ赤)」
「んん、顔が赤いな。風邪でも召し上げたか?早く布団に入るべきだな」
「ううううううっさい!!死ね!!この変態!!スケベ!!玉無し!!!」
「玉無し・・・は酷いな。それにお嬢様が口にする言葉じゃないぞ」
ひゅんひゅんと、手のひらから発生させた紅い弾幕がエイクスに襲い掛かる・・・
がしかし、エイクスはそれをいとも簡単に銀製ナイフを放ち、相殺する。
「暴れるなら外でやってくれ。また部屋を壊されては堪らん」
「良いわ!表に出なさい!!貴方のその腐った根性、主である私が一から叩きなおしてあげるわ」
「やれやれ、我が大切な主がその辺のサルの様になっては困る。久々にお仕置きして差し上げましょう。具体的には、お尻ペンペンだ」
「お尻ぺんぺんと聞いて!!」
しゅばっと現れる我が堕メイド。
その手に持つ『びでおかめら』が、そのダメダメ度合いに磨きをかける。
「何してるのよ・・・咲夜」
「はい・・・?あ、いえ、これは・・・違うんですよ?」
ホホホと笑い、サッとカメラを隠す咲夜。
「~~~(溜息)」
後でこの駄メイドも折檻してやるっ
「・・・咲夜は置いといて・・・早く外に出なさい」
「なんだ、本当にやる気なのか?お嬢」
「うっさい。早く出ろ」
「やれやれだ・・・」
『紅魔館・美鈴の家庭菜園場』
あと少しで日の出。。
しかし西の空には未だ薄く紅く光る満月。
まだまだお嬢の力が最大限に生かされる厄い夜だった。
お嬢と俺。
きゅうり畑を挟んで対峙する。
「お嬢様ぁ・・・お考え直して下さいまし・・・お願いですからあぁああ」
いざ決闘というところで、美鈴が喚いて中止を訴える。
「だってぇぇぇ、こ、こんな所で戦われたら、丹精込めて育てたお野菜達が粉みじんになっちゃいますうう!!」
「心配要らないわ、美鈴」
フッと笑みをこぼすお嬢。
「ふぇ」
「粉みじんじゃなくて、原子まで分解して跡形もなくなるから。お掃除は簡単よ」
「そうなんですか・・・ぢゃな”い”でずぅぅぅ!!」
未だうわーんと泣き叫び、お嬢の服の裾を掴んで離さない美鈴。
「諦めろ、後で供養しておいてやる」
「そういう問題でも・・・というか、別の場所でやってくださいよぉぉ」
「そもそも・・・美鈴?なぜ貴方はこんな場所に居るの?貴方は門番ではなくて?」
「はぅ!?た、確かにそうなんですけど・・・」
「今この時に不埒者が館に侵入したら如何するつもり?この館にあるもの全てがお嬢様の物。それがたとえ塵一つだとしても盗まれでもしたら・・・美鈴?私ではなくてエイクスの『折檻』が待ってるわよ?」
「ぴぃぃいいいい!??」
酷い言われようだ。
ただひん剥いて簀巻きにして触手が生息する地域に放り捨てるだけだ。
以前悪戯した小悪魔に同じことをしたのだが・・・いや、語らないで置いてやろう。
あいつの名誉のためにもな。
俺は、ふう と溜息をつき、チラッと美鈴に目配せする。
「急いで門番してますうううう!!」
俺と目が合った美鈴は、咲夜に及ばないにしろ、消えるように物凄いスピードで門へと駆けてゆく。
まあ、野菜と己の貞操だと、そりゃ貞操を守るだろうな。
「さて、邪魔者は居なくなったわね」
「そうだな。お嬢」
お嬢の手にはグングニルが。
対して俺の両手には銀製の5対のナイフやフォーク。
咲夜と違い、時を止めて回収など出来ないし、弾幕勝負もお嬢には敵わないだろう。
・・・ならば搦め手で行くか・・・
「行くわよ?せめて1撃は耐えなさい」
お嬢が槍を掲げる。
「悪いな、当たってはやれん」
そのまま地上に居ては館に被害が出るので、浮遊し、ナイフを構える。
「この私に恥ずかしい思いをさせたのだもの、目一杯お仕置きしてあげる」
「勝手に恥ずかしがっただけだろうが」
「(ぷち♪)神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」
力ある宣言と同時に、暴れ狂う紅い稲妻が俺に向かって解き放たれる。
単純にして明快なこの大技だが、速度が狂っている。
来ると思った時には、既に目の前に到達していた。
「くっ・・・!」
間一髪。
すでに身を捩るモーションを取っていた俺は、掠り傷だけで済んだ。
が・・・
殺すつもりかっ・・・!
「あら、良く避けれたわね?殺すつもりだったのに」
そのつもりだった。
既に『次弾』の装填を済ませ、クククと笑うお嬢。
紅く鈍く光る愛らしいお目目が恐ろしい。
微かに残る紅い満月の光に当てられて、本日のお嬢の狂気がいや増ししている。
無事では・・・済まないか?
俺の呟きを裏付けるが如く、俺の遥か後方に有った魔法の森の一部が大炎上を起こしていた。
「小細工は・・・やめだ」
そう言うと、俺は浮遊したまますぅーっとお嬢に近寄る。
手に持つ銀製品を放り投げ、咲夜へと返す。
しぱぱぱぱっと投げられた銀製品を回収する咲夜だったが・・・
すこーん
「はうぁああああ!?」
一本だけ、本気で投げたフォークが咲夜がまわしていた『びでおかめら』を破壊する。
先ほどからお嬢のパンツを地上から盗撮していたのだ。
ざまあみろ。
「あ”あ”あ”ぁあぁ・・・・」
声にならない声を上げている咲夜を尻目に、お嬢に尚も近寄る。
その距離人一人分。
「さあ、次は貴方の攻撃の番よ?ナイフもフォークも捨てて、如何するのかしら?」
あはははと笑うお嬢。
残念だったな。
「チェックメイトだ」
ひゅんっと手首を振るう。
その手のひらにこっそりと貯められた液体を放る為に。
「はぶっ」
『液体』はお嬢の口の中に丁度良く飲み込まれてゆく。
「もがっ!?」
咄嗟に吐き出そうとしたお嬢を後ろに回り、片手でお嬢の口を塞ぐ。
「もががが!むぐー!!ごきゅっ!?」
じたばたと暴れるお嬢。
『液体』を飲み込んだことを確認すると、ゆっくりと開放する。
「げほっげほっ・・・何を・・・飲ませたのよ・・・」
「判らないか?お嬢。もうちょっと味わって飲んで欲しかったぞ」
「ふぇ・・・」
言葉の意味が理解しきれないのか、きょとんとしているお嬢。
しかし、すぐに効果が現れたのか、お嬢の顔が朱に染まってゆく。
「あ・・・これ・・・ず・・・じゅるい・・・ヒック。こへ・・・おひゃけ・・・えいくひゅの・・・ひ・・・?」
呂律の回らない情けない声で、ふにゃふにゃと。
「そういうことだ」
本稿初公開、俺の能力『液体を酒化する程度の能力』により、先ほど掠った時に流れた血を、手のひらに貯めておき、酒化してお嬢に飲ませたというわけだ。
なんせお嬢に合わせて作った、血で出来た度の強いワインを飲ませたのだ。
ふらふらのへろへろになって、既に浮くことすらままならない状態にまでなってしまっていた。
「よっと。今回は俺の勝ちだな」
「ひゅる・・・ぃ・・・」
墜落しそうになったお嬢をお姫様抱っこし、ふふん と見やる。
お嬢はそれに反応し、キッと睨みつけるが、完全にアルコールが回ってしまっており、ちっとも怖くない。
むしろ可愛いぐらいだ。
「ま、お仕置きは勘弁してやろう。少し汗を掻いているから、今日はもう風呂に入って寝てしまえ」
「う”~・・・」
その瞳は『あんなの無効よ!!もう一度戦いなさい!!』と訴えかけているが、そろそろ日が昇ってしまう。
罷り間違ってお嬢の珠の肌に火傷など負わせられないからな。
「さ、戻るぞ」
そう呟き、急いで館に戻る。
いやいや嫌がるお嬢を浴場へ連れてゆき、控えさせていた妖精メイドにお嬢を入浴させるよう指示を出す。
このメイド妖精、最初は唯のバイトだったのだが、面倒見が良く、妖精にしては賢いので本格的に雇うことにした。
ただ、それからというもの、友達と名乗る氷精が遊びに来ては美鈴と騒動を起こすようになってしまったが。
「それではお嬢を頼むぞ」
「はい、畏まりました」
俺はメイドに伝えると、あ”~だのう”~だの管を巻いているお嬢を引き渡す。
後は、このメイドと不本意だがメイド長がお嬢の面倒をしっかりと見てくれるだろう。
去り際にお嬢が俺のことを見つめていたが、先ほどの遺恨と受け取り、一礼してその場を離れる。
さて、次は妹様にお食事をお持ちしなくては。
そろそろ目を覚まされる時間だしな。
『紅魔館・調理室』
あれから調理室に戻り、妹様為に下準備を済ませてあった食材を調理する。
似たような姉妹でも嗜好は違う。
妹様好みの味付けで、本日のモーニングを完成させる。
「ふむ、こんなものか」
ブラッドオレンジジュースにクロワッサン。
妹様の好きな甘いプチトマトの入ったサラダに、春雨、蒸し鶏、ワカメ、軽く潰した梅肉を入れた塩味のスープ。
少々和風が混じっているが、妹様のお好きな献立だ。
これで本日も機嫌よく目を覚ませて頂けるだろう。
おっと、お嬢に出したプリンもつけなくては。
本日は誰も妹様に会いに来る予定の人は居ない。
だから今日は少し残業だ。
妹様の遊び相手をし、その後就寝の予定となる。
「さて、モーニングコールと致しますか」
『紅魔館地下室・フランドールの部屋へと続く廊下』
地下室と言っても、陰惨な雰囲気は全くしない。
それこそ、本館同様塵一つ落ちておらず、通路に設置されたランプもぴかぴかに磨いてある。
長い廊下を渡り終え、目の前には妹様の部屋へと通じる扉。
この扉には強力な結界が施されている。
そう『約束』という強力な奴がな。
身なりを再度確認。
しかる後に、妹様の合図を待つ。
数秒後、チリンと妹様の合図。
ふむ、今日は早起きだな。
そう思いつつ、こんこんとノックした後、静かに妹様の部屋に入ってゆく。
『紅魔館・フランドールの部屋』
「・・・」
目が覚めた。
勿論ここは地下室であり、窓も無く朝日など差し込むわけもないのだが、そこはそれ、体内時計やら何時もの習慣やら期待やらが、総動員して私を起こしに掛かる。
期待。
そう期待している。
例えるなら、クリスマス当日の目が覚め、プレゼントを探す子供の心境に似ていると思う。
だから私はチリンとコール用の鈴を鳴らす。
そうすれば、私が会いたい人が扉の向こうで待っていてくれて、直ぐにでも入ってきてくれるだろう。
こんこん・・・
鈴を鳴らした刹那。
扉をノックされる音がする。
これで入ってきた奴が咲夜だったりしたら、不貞寝するところだった。
が、本日はそれは杞憂に終わり、自然に頬が緩むのが感じられる。
ええい、こら、情けない顔をするな。
主の意思に反してゆるゆるに緩みきった笑顔を、部屋に入ってきた人に向ける。
「おはよう御座います。フランドールお嬢様。本日も良いお目覚めの様ですね」
「おはよ、エイクス。ねぇ、二人っきりの時はフランって呼んでって言ってるでしょ?」
「失礼致しました。フランお嬢様?」
「だぁあかぁぁあらぁああ!それに、その気障ったらしい喋り方も嫌い。普通のエイクスで居てよぉ」
「しかし・・・」
「しかしもかかしもないの!ほらっ早く~」
ぷぅ~っとふくれっ面してエイクスを睨む私。
ぽりぽりと頬を掻き、困った顔をするエイクス。
「わかった。わかったから怒らないでくれ・・・フラン」
エイクスは降参だと言わんばかりに両手を挙げて、元の言葉遣いに直してくれた。
「えへへ・・・それでいいの。エイクス♪」
ぴょんと飛び起き、にへへ~と笑い此方に抱きつく。
ふわっと美味しそうな朝ごはんの匂いと、私を虜にするエイクスの甘い香りがする。
エイクスは私にとって兄のような存在だった。
私の気まぐれで、物も言わぬ肉塊なるというのに、今も、昔も、変わらず同じ態度で接してくれる。
最初は無礼な態度だから殺してやろうかと思ったけど、今ではそんな事考えない、考えたくもない。
昔の私が今の私を見たら、如何思うだろうか?
・・・
そのまま抱きついてぐりぐりしたかったが、私のお腹が反乱を起こし、ぐぅ~と一声鳴く。
「ははは、今用意するからな」
「はぅ」
もう・・・恥ずかしい・・・
勝手に鳴いたお腹を睨みながらすりすりして、食事するために席に着く。
さっとエイクスが小さなテーブルクロスを敷き、色取り取りのモーニングが並べられていった。
「いただきまーす」
「召し上がれ」
そうエイクスは言うと、私の横に控え、じっと動かなくなる。
もぐもぐ・・・ちゅー・・・こくん・・・こくん・・・
むぐむぐむぐ・・・
・・・
つまんない。
「ねぇ、エイクス。一緒にご飯、たべよ?」
「ん?どうしたフラン」
「一人じゃつまらないの」
「しかし・・・俺の分は持って来てないからな・・・困ったな」
「じゃあ、私のを半分あげるから、あんまりお腹空いてないし・・・ね?」
それは、嘘。
本当はお腹空いてる。
じゃなければお腹も鳴らないし、お腹一杯食べられなくしようとしてる自分に少しガッカリもしない。
でも。
私はエイクスと食事したい。
一緒にお話しながら、美味しいご飯を食べたい。
だから。
「だったら、パンと・・・之も上げるから・・・」
そういってお気に入りのプチトマトも差し出す。
「・・・分かった。そこまで言うのなら・・・ご相伴に預かろうか」
そう言って、エイクスはすっと私の反対側の席に着く。
「ただ、これはフランの為に用意したんだからな。ちゃんと食べてくれ」
そういって、プチトマトを摘み、あーんしろと目配せする。
勿論、断らない。
餌をねだる雛のように、口をあけてエイクスがプチトマトを入れてくれるのを待つ。
数秒後に、ちょんっと私の舌の上にプチトマトが置かれていた。
「あむ・・・もぐ、もぐ、もぐ・・・」
いつも甘い、美鈴が作ったプチトマト。
だけど今日のは何時もに増して、甘い気がした。
それから、エイクスと他愛も無い話をして・・・
先ほどのお返しに、クロワッサンをちぎってエイクスにあーんさせたり・・・
さらにその仕返しにプリンをあーんさせられたり・・・
とても幸せな時間が過ぎていった。
だけど・・・そういう時間が立つのは残酷なほど早くて・・・
「よし、ご飯も食べたのなら、いい加減パジャマは着替えようか」
少し、眠そうなエイクス。
本人は気づかせないつもりでいるんだろうけど、いつも傍に居てくれてるエイクスだからこそ、すぐに異変に気がついてしまう。
普段ならもう寝てる時間なのに、私に合わせてまだ起きてくれている。
もっと一緒に居たい。
でも、寝かせて上げないと・・・
あっ・・・
「エ・・・エイクス、眠いよね?」
「ん・・・?大丈夫だ。それより、ほら、この服なんかどうだ?何時もはコットンだが、今回はシルクで作ったんだ」
そういって、何時もとは違う、可愛いお洋服を取り出し、私に見せてくれる。
「・・・」
「それとも、こちらが良いか?ああ、そうだ、これも・・・・ん?フラン?何を・・・」
「えい」
私は、小さな掛け声と共にエイクスを布団に押し倒す。
ボフンとエイクスの体重でお布団が沈み、沈みきった所で、ゆっくりと持ち上がる。
私はその隣にポフっと飛び込み、エイクスの体に手を回して逃げれないようにした。
「フラン・・・?」
どうしてこんなことしたか分からない。
でも、エイクスを寝かせてあげたいのと、一緒に居たい。
そう考えた結果だった。
「エイクス、一緒に寝よ?」
後から思い返したら、爆弾発言だった。
顔がみるみる朱に染まっていくのが分かる。
「エイクスは疲れてるの。私も眠いの。だから、一緒に寝よ?」
我ながらめちゃくちゃな理論だった。
それでも、察してくれたのか。
「変なこと、するなよ?」
私の台詞だった。
『紅魔館・フランドールの部屋にあるベッドの中』
何故だ?
どうしてこうなった?
「すぅ・・・すぅ・・・」
俺の胸の上では妹様が静かに寝息を立てていた。
しっかり抱き締められている上に、ここまで幸せそうに寝られてしまったら、動くに動きようが無かった。
それよりもっとまずいのは、眠いということだ。
さらにもっとまずいのは、なぜか黒のタンクトップにトランクス1枚で寝かされているという事実だ。
執事服はフランに剥ぎ取られ、哀れ丸めて部屋の隅っこに投げられてしまっている。
何処の世界に執事の服を剥ぐお嬢様が居るのだろうか。
・・・いや、目の前にはいるが。
別に妹様に劣情を催したりはしない。
咲夜じゃあるまいし。
ただ、この事実を第三者に見つかった場合、俺は咲夜と同列視されてしまうのだ。
それだけは何としても避けなくては。
しかし、眠気がそれを許さない。
すでに、この現状を受け入れてでも眠たいという自分が居る。
どうしよう、どうしたらいい。
「んにゅ・・・?えい・・・く・・ぅ・・?ね・・・なでなで・・・して・・・・・くぅ・・・」
心の葛藤で、もぞもぞしたせいで起きたのか、妹様が半目を開けてなにやらむにゃむにゃと俺に所望する。
俺はもはや条件反射なのか、妹様の命令に対して素直に軽く抱き、ふわふわした髪の毛を撫でていた。
「んふ・・・ぁ・・・。あう・・・・すぅ・・・・・くぅ・・・・・・」
嬉しそうに身を捩り、再度、静かに寝息を立てる妹様。
これでもう逃げられなくなった。
ここにきて、俺は『まあ、大丈夫だろう』という勝手な結論を出した。
俺自身眠いし、妹様のお願いでもあるし、それにお嬢ですらなかなかこの部屋には立ち寄らないのだ。
ならば、妹様の我侭も聞いて差し上げるのが執事というものだ。
そして俺は、眠る寸前まで、妹様の髪を撫でてて、優しい気分に浸りながら心地よい暖かさを満喫したのだった。
しかしその選択が間違いで、翌日様子を見に来たお嬢に『鬼畜!変態!ど助平!ロリコン!妹ふぁっかー!!』
という五冠王を頂戴する羽目になり、騒ぎが起きるのはまた、別のお話。
その騒動の最中妹様に『いいよ・・・?エイクスなら・・・ちょっとくらいエッチなことしても・・・』と、火に油を注いで大炎上したのも、別のお話。
『紅魔館・執事長の部屋』
パタン と本日の記録を残した魔法の日記を閉じる。
各個人の心情まで記録する優れものだ。
それにしても、お嬢には困ったものだ
そう一人ごち、ぐっと一回背伸びをする。
・・・さて、如何だったかな?
俺は『其方』を向き、一礼する。
本日はお嬢様達の食事風景を見ていただいた次第だ
なんだ唐突に・・・?妹様を寄こせ?
構わんが・・・ディナーはハンバーグで決定だな。
材料は貴方だ。
俺の能力?
ああ、あの子鬼や旧地獄街道の鬼と相性がいいんじゃないかって?
まあ、そうだが俺はこの能力を持ってお嬢に仕えているからな。
あいつ等が絡んできたら、この日記にも記されるだろうな。
まだあるのか。『俺のさっきゅんを返せ』?
しらん、何時も通りだろう。あれで。
・・・私か?
これは失礼した。
自己紹介がまだだったな。
名前はエイクスと名乗らせて頂いている。
種族は・・・元、人間だ。
まさか同時に噛み付かれるとは思わなかったな・・・ん、こっちの話だ。
背丈は咲夜とほぼ同じ位。
お嬢と邂逅はまた今度だ。
・・・これが最後の質問?
なんだ?
『小悪魔はどうなった?』
・・・
ここでは語れない。
どうしても知りたければ、その事を綴った日記が『夜伽話』に公開されるのを待つといい。
あれは俺も少しやりすぎたと思っているからな。
・・・では話も尽きたところで、本日はこれで失礼する。
それではまた機会があれば、我らがお嬢様達の日常を垣間見て頂こう。
~警告~
・オリジナルキャラクターが出ます。
・キャラ崩壊、改変の痕が見られます。
・レイレミ、レミフラ、レミ咲等々、原作キャラによるカップリングを期待してい・・・・る人は居ないと思いますが、
そーいう方にとっては不快かもしれません。
・紅魔館に窓って無いんじゃなかったけ?→あるよ。
・夜伽にアップした同名のSSとは繋がりがあるかもしれないし、無いかも知れません。
それでも読むとおっしゃるならば、ごゆるりと頭のねじをはずしてお読みくださいませ・・・
EP1
-レミリアお嬢様とフランお嬢様の食事風景-
『紅魔館・当主の部屋』
「はぁ・・・暇ね」
窓の外から表を眺めると、朝日が昇りかけ黄金色になりつつある妖怪の山と、亡霊に追いかけられている夜雀が見えた。
「・・・」
今にも寝てしまいそうな瞼を擦りながら、今度は室内を見渡す。
絢爛豪華な調度品の数々。
どれをとっても、唯一無二の一品や、それこそ、霊夢が涎を垂らしながら質屋にもっていきそうなものばかり。
この手に持つティーカップだけで、博霊神社が1軒建つ。
もっとも、それらは運が悪ければ、私の妹によって壊されてしまうことが多々あるのだけれど。
「ん・・・」
一口、紅茶をすする。
最高級のモノと言われてるだけあって、高貴な香りが私の鼻を擽り、官能的ともいえる味が舌を震わせる。
ゆっくりと流れる至福の時間。
そう、他人から見ればそれはとてもとても贅沢で、夢見る一時。
「はふぅ・・・」
ゆっくりと、溜息を吐く。
そんな贅沢な一時にも関わらず・・・
「暇ね」
私ことレミリア・スカーレットはとても退屈だった。
退屈此処に極まれりといった感じで頬杖をつき、もう一度窓を睨むと同時に、ドアがノックされる。
音も無く扉が開くと、咲夜がお辞儀をして部屋に入ってきた。
「何・・・?」
「お嬢様、お食事の時間で御座います」
「あら、もうそんな時間だったのね」
そう言って、テーブルの上にシャンパングラスと前菜が並べられる。
「本日の食前酒は、上等なオレンジジュースが出来ましたので、ミモザで御座います」
そのまま名前の由来となった花と同じ、鮮やかな黄色の食前酒を口につける。
オレンジジュースとシャンパンを軽くステアしたそれだ。
コクコク・・・コクン。
少々子供っぽいが、素敵な味なので許してあげよう。
「前菜はトマトファルシで御座います」
目の前に置かれたそれは、トマトの器と言えばいいのだろうか。
トマトの中身をくり貫き、その中にポテトや海老、ホタテやイカがマヨネーズと少々のカレー粉で合えたものが詰められいる。
とても食欲が沸きそうだ。
さっそく口に運ぶ。
しゃくしゃく、ぷりぷり、もぐもぐ。
「ん・・・美味し・・・」
何と言うか、とても現金なもので先ほどの退屈は何処へやら行ってしまった。
今私を支配しているのは、食欲と次の料理への期待だ。
「コンソメスープで御座います」
単純にして明快。
それで居て奥の深いスープの王様。
小食な私に合わせて、パンではなくクルトンが浮かべられている。
「熱いのでお気をつけを・・・」
炎のように熱された器。
コンソメスープの命ともいえる、温度を保つために、わざわざ器にも工夫がされていた。
一口啜ると、風味豊かな味わいが口いっぱいに広がる。
「これも美味しいわね・・・」
かりかりとしたクルトン、ふにゃっとしたクルトン。
入れるタイミングを変え、2種類の食感を醸し出す。
しかし・・・しかし満足感は無い。
物足りない。
でも之で正解なのだ。
物足りなさが次への皿への期待へ繋がる。
心地よい物足りなさだった。
「次は?」
「サーモンのムニエルで御座います。妖怪の山に住む河童から分けて頂きました」
ソースはタルタルソース。
オニオンが入っているが、別に食べれないわけじゃないので気にしない。
むしろホクホクとしたサーモンに、シャクシャクとした食感が加わって申し分無し。
今時の吸血鬼は偏食じゃ、人生を楽しめないのだ。
そもそも、ニンニクやオニオンというのは滋養強壮や殺菌作用の強い食材だ。
昔の病気は悪魔の仕業とされ、そーいった食材を食べたら治る=悪魔を退治できる・・・と考えられてたのよね。
だから私達吸血鬼にも効くのだろうとされていた。
ま・・・そんなことは無いわけで・・・
「ん、香ばしくていい感じね」
ぱりぱりと揚げられた付け合せのスライスニンニクを齧る。
「んぐんぐ・・・んくっ。・・・はぁ・・・む。もぎゅ・・・」
ここまで食べても、まだ物足りないわね。
まあ、絶対量が少ないからなんだけど・・・
そろそろお肉が食べたいわ。
「またせたな、お嬢」
ああ、来たわね。
魚料理が食べ終わるとほぼ同時に、コックスーツに身を包んだ当館の『執事』が料理片手に部屋に入る。
言葉は乱暴。
慇懃無礼な優男。
だが、私の忠実な僕。
名をエイクスという。
彼の言葉に怒りは感じない。
なぜ?
私がお肉が食べたいと思ってから2秒後に部屋に来た。
その2秒を「待たせた」と謝罪したのだ。
ならば怒る理由もない。
きっとその2秒は、その手に持つ料理を美味しくするためにかけられたものなのだから。
「その分美味しく出来たのでしょ?」
「勿論だ。本日の肉料理にしてメインディッシュ。鴨肉のロースト、血のソース掛けだ」
かぱっと蓋が取り除かれ、肉とソースの良い香りが広がる。
「・・・」
情けないことに、少し涎が出てしまった。
「さあ、熱い内に心逝くまで堪能してくれ」
「そうさせてもらうわ・・・はむ・・・」
野味溢れる鴨肉、噛むごとに滋味が溢れ出し、味雷を一々刺激する。
柔らかく、コクのある肉質は心と胃を満足させる。
咀嚼し、飲み込むと、お肉を食べたという充足感で一杯だ。
わざと付けられた鳥皮の部位も、脂がさらりとしつこくなく、それ自体が旨みの塊だった。
そして極めつけなのはこのソース。
鴨の血・・・そして、
「処女の血だ」
何処で仕入れたかは判らないが、魔力の塊をそのまま食べてるが如く、体に力が溢れてゆく。
これはもう筆舌し難い。
ただ・・・一言。
「美味しい」
「お褒めに預かり、光栄だ」
うん、美味しい。
一緒にソースに忍び込ませてある胡桃なんかも、こりこりしてて最高だ。
「はむ・・・もぐ、んぐ」
優雅さに欠けるが、一心不乱に目の前のご馳走を平らげる。
「はぐはぐ・・・んっく。くちゅ、もぎゅ、むぐ」
「お嬢・・・。美味しそうに食べてくれるのは嬉しいが、名の有るれっきとしたお嬢様の顔じゃあないぞ」
「もぐ?」
我が無礼な執事は、はぁ、と溜息をついて、ナプキンで私の頬を拭う。
「血で服を汚すのもそうだが、料理で服を汚すのも勘弁してくれよ?この染みを取るのはなかなかに大変なんだ」
「もぎゅ・・・(うるさいなぁ)」
エイクスはそうお小言を漏らしつつ、汚れたナプキンを咲夜に渡す。
・・・ってこらまて咲夜。
なぜポケットに仕舞う。
そしてなんだその若干嬉しそうな顔は。
そのナプキンで何をするつもりだ。
「うふふ・・・」
心なしか目が逝ってらっしゃる。
ああ、きっとこの堕メイドは、私の涎とソースのしみこんだナプキンを口に含んでちゅーちゅーするのだ。
そして今晩のオカズにしてしまうのだ。
勿論私の勝手な想像でしかないが、咲夜ならやりかねない。
なにせコイツは自分の部屋の金庫に、私の生え変わった抜け落ちた牙や、私の使ったフォークやらナイフやら。
挙句の果てには、飽きて捨てた筈のパンツまで仕舞いこんでいる。
まるで犬かなにかのようだ。
「・・・咲夜」
「うふふふ・・・」
嫌そうな顔をしている私に察して、エイクスが咲夜を咎める・・・
が、
「んふふ・・・ハァハァ」
絶えず笑みをこぼして私に微笑みかける。
何も知らない奴が見ればほほえましい光景なのだろう。
けど私は、その笑みの成分に淫靡と欲望とハードロリータが詰まっていることを知っていた。
・・・こわいよう。
「咲夜、食器を下げてくれ」
「・・・はい」
空いたお皿や食器を、カートに載せて優雅に退室する咲夜。
表面上は大人しく従っているが、去り際に『チッ』と言っていたのを聞き逃さない。
「・・・っと、デザートだ。ソルベは良い物が出来なかったので今回は無しだ。済まないな」
「構わないわ。あのお肉でお腹一杯だもの」
「そうか、なら、これはお腹に入るか?俺特製滑らかとろふわプリンだ」
「食べるわっ」
デザートは別腹なのよ?エイクス。
それにエイクスのプリンは最高だもの。
たとえお腹がはちきれそうでも食べるわ。
ことっ と置かれたお皿の上でふるんっと踊るエイクス謹製プリン。
ぷるんっとしてはおらず、口に含むと甘い幸せがふんわり蕩ける。
これぞ幸せといった感じである。
「お嬢、また汚れているぞ」
「にゅ?」
どうやら今度はプリンで頬を汚していたらしい。
「ナプキンはもう無いからな、失礼するぞ」
そう言って、手袋をはずし、指で綺麗に掬う。
「で、どうするのよ。それ」
「食べるか?」
「いやよ」
「ふむ・・・仕方が無い、咲夜を呼ぶか」
「それも嫌よっ」
「わかったわかった、ならこうしよう」
ぱく
「あ・・・」
「うむ、我ながら良い味だ。後で妹様にもお出ししなくては」
その意見には賛成だが、ちょっとまてこら。
「ん?なんだお嬢。末代まで呪われそうな顔になっているぞ」
「ん?じゃ無いわよ。何してるのよ。そ、そそそんな頬についたご飯粒を食べる恋人みたいな真似をするなんて・・・」
「意外に耳年魔なんだな、お嬢は」
「煩いわよ!!」
「それにあれだ、気にするな。咲夜じゃあるまいし、お嬢様の味がしますわぁ~なんて考えたこともないしな」
「~~~!!(真っ赤)」
「んん、顔が赤いな。風邪でも召し上げたか?早く布団に入るべきだな」
「ううううううっさい!!死ね!!この変態!!スケベ!!玉無し!!!」
「玉無し・・・は酷いな。それにお嬢様が口にする言葉じゃないぞ」
ひゅんひゅんと、手のひらから発生させた紅い弾幕がエイクスに襲い掛かる・・・
がしかし、エイクスはそれをいとも簡単に銀製ナイフを放ち、相殺する。
「暴れるなら外でやってくれ。また部屋を壊されては堪らん」
「良いわ!表に出なさい!!貴方のその腐った根性、主である私が一から叩きなおしてあげるわ」
「やれやれ、我が大切な主がその辺のサルの様になっては困る。久々にお仕置きして差し上げましょう。具体的には、お尻ペンペンだ」
「お尻ぺんぺんと聞いて!!」
しゅばっと現れる我が堕メイド。
その手に持つ『びでおかめら』が、そのダメダメ度合いに磨きをかける。
「何してるのよ・・・咲夜」
「はい・・・?あ、いえ、これは・・・違うんですよ?」
ホホホと笑い、サッとカメラを隠す咲夜。
「~~~(溜息)」
後でこの駄メイドも折檻してやるっ
「・・・咲夜は置いといて・・・早く外に出なさい」
「なんだ、本当にやる気なのか?お嬢」
「うっさい。早く出ろ」
「やれやれだ・・・」
『紅魔館・美鈴の家庭菜園場』
あと少しで日の出。。
しかし西の空には未だ薄く紅く光る満月。
まだまだお嬢の力が最大限に生かされる厄い夜だった。
お嬢と俺。
きゅうり畑を挟んで対峙する。
「お嬢様ぁ・・・お考え直して下さいまし・・・お願いですからあぁああ」
いざ決闘というところで、美鈴が喚いて中止を訴える。
「だってぇぇぇ、こ、こんな所で戦われたら、丹精込めて育てたお野菜達が粉みじんになっちゃいますうう!!」
「心配要らないわ、美鈴」
フッと笑みをこぼすお嬢。
「ふぇ」
「粉みじんじゃなくて、原子まで分解して跡形もなくなるから。お掃除は簡単よ」
「そうなんですか・・・ぢゃな”い”でずぅぅぅ!!」
未だうわーんと泣き叫び、お嬢の服の裾を掴んで離さない美鈴。
「諦めろ、後で供養しておいてやる」
「そういう問題でも・・・というか、別の場所でやってくださいよぉぉ」
「そもそも・・・美鈴?なぜ貴方はこんな場所に居るの?貴方は門番ではなくて?」
「はぅ!?た、確かにそうなんですけど・・・」
「今この時に不埒者が館に侵入したら如何するつもり?この館にあるもの全てがお嬢様の物。それがたとえ塵一つだとしても盗まれでもしたら・・・美鈴?私ではなくてエイクスの『折檻』が待ってるわよ?」
「ぴぃぃいいいい!??」
酷い言われようだ。
ただひん剥いて簀巻きにして触手が生息する地域に放り捨てるだけだ。
以前悪戯した小悪魔に同じことをしたのだが・・・いや、語らないで置いてやろう。
あいつの名誉のためにもな。
俺は、ふう と溜息をつき、チラッと美鈴に目配せする。
「急いで門番してますうううう!!」
俺と目が合った美鈴は、咲夜に及ばないにしろ、消えるように物凄いスピードで門へと駆けてゆく。
まあ、野菜と己の貞操だと、そりゃ貞操を守るだろうな。
「さて、邪魔者は居なくなったわね」
「そうだな。お嬢」
お嬢の手にはグングニルが。
対して俺の両手には銀製の5対のナイフやフォーク。
咲夜と違い、時を止めて回収など出来ないし、弾幕勝負もお嬢には敵わないだろう。
・・・ならば搦め手で行くか・・・
「行くわよ?せめて1撃は耐えなさい」
お嬢が槍を掲げる。
「悪いな、当たってはやれん」
そのまま地上に居ては館に被害が出るので、浮遊し、ナイフを構える。
「この私に恥ずかしい思いをさせたのだもの、目一杯お仕置きしてあげる」
「勝手に恥ずかしがっただけだろうが」
「(ぷち♪)神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」
力ある宣言と同時に、暴れ狂う紅い稲妻が俺に向かって解き放たれる。
単純にして明快なこの大技だが、速度が狂っている。
来ると思った時には、既に目の前に到達していた。
「くっ・・・!」
間一髪。
すでに身を捩るモーションを取っていた俺は、掠り傷だけで済んだ。
が・・・
殺すつもりかっ・・・!
「あら、良く避けれたわね?殺すつもりだったのに」
そのつもりだった。
既に『次弾』の装填を済ませ、クククと笑うお嬢。
紅く鈍く光る愛らしいお目目が恐ろしい。
微かに残る紅い満月の光に当てられて、本日のお嬢の狂気がいや増ししている。
無事では・・・済まないか?
俺の呟きを裏付けるが如く、俺の遥か後方に有った魔法の森の一部が大炎上を起こしていた。
「小細工は・・・やめだ」
そう言うと、俺は浮遊したまますぅーっとお嬢に近寄る。
手に持つ銀製品を放り投げ、咲夜へと返す。
しぱぱぱぱっと投げられた銀製品を回収する咲夜だったが・・・
すこーん
「はうぁああああ!?」
一本だけ、本気で投げたフォークが咲夜がまわしていた『びでおかめら』を破壊する。
先ほどからお嬢のパンツを地上から盗撮していたのだ。
ざまあみろ。
「あ”あ”あ”ぁあぁ・・・・」
声にならない声を上げている咲夜を尻目に、お嬢に尚も近寄る。
その距離人一人分。
「さあ、次は貴方の攻撃の番よ?ナイフもフォークも捨てて、如何するのかしら?」
あはははと笑うお嬢。
残念だったな。
「チェックメイトだ」
ひゅんっと手首を振るう。
その手のひらにこっそりと貯められた液体を放る為に。
「はぶっ」
『液体』はお嬢の口の中に丁度良く飲み込まれてゆく。
「もがっ!?」
咄嗟に吐き出そうとしたお嬢を後ろに回り、片手でお嬢の口を塞ぐ。
「もががが!むぐー!!ごきゅっ!?」
じたばたと暴れるお嬢。
『液体』を飲み込んだことを確認すると、ゆっくりと開放する。
「げほっげほっ・・・何を・・・飲ませたのよ・・・」
「判らないか?お嬢。もうちょっと味わって飲んで欲しかったぞ」
「ふぇ・・・」
言葉の意味が理解しきれないのか、きょとんとしているお嬢。
しかし、すぐに効果が現れたのか、お嬢の顔が朱に染まってゆく。
「あ・・・これ・・・ず・・・じゅるい・・・ヒック。こへ・・・おひゃけ・・・えいくひゅの・・・ひ・・・?」
呂律の回らない情けない声で、ふにゃふにゃと。
「そういうことだ」
本稿初公開、俺の能力『液体を酒化する程度の能力』により、先ほど掠った時に流れた血を、手のひらに貯めておき、酒化してお嬢に飲ませたというわけだ。
なんせお嬢に合わせて作った、血で出来た度の強いワインを飲ませたのだ。
ふらふらのへろへろになって、既に浮くことすらままならない状態にまでなってしまっていた。
「よっと。今回は俺の勝ちだな」
「ひゅる・・・ぃ・・・」
墜落しそうになったお嬢をお姫様抱っこし、ふふん と見やる。
お嬢はそれに反応し、キッと睨みつけるが、完全にアルコールが回ってしまっており、ちっとも怖くない。
むしろ可愛いぐらいだ。
「ま、お仕置きは勘弁してやろう。少し汗を掻いているから、今日はもう風呂に入って寝てしまえ」
「う”~・・・」
その瞳は『あんなの無効よ!!もう一度戦いなさい!!』と訴えかけているが、そろそろ日が昇ってしまう。
罷り間違ってお嬢の珠の肌に火傷など負わせられないからな。
「さ、戻るぞ」
そう呟き、急いで館に戻る。
いやいや嫌がるお嬢を浴場へ連れてゆき、控えさせていた妖精メイドにお嬢を入浴させるよう指示を出す。
このメイド妖精、最初は唯のバイトだったのだが、面倒見が良く、妖精にしては賢いので本格的に雇うことにした。
ただ、それからというもの、友達と名乗る氷精が遊びに来ては美鈴と騒動を起こすようになってしまったが。
「それではお嬢を頼むぞ」
「はい、畏まりました」
俺はメイドに伝えると、あ”~だのう”~だの管を巻いているお嬢を引き渡す。
後は、このメイドと不本意だがメイド長がお嬢の面倒をしっかりと見てくれるだろう。
去り際にお嬢が俺のことを見つめていたが、先ほどの遺恨と受け取り、一礼してその場を離れる。
さて、次は妹様にお食事をお持ちしなくては。
そろそろ目を覚まされる時間だしな。
『紅魔館・調理室』
あれから調理室に戻り、妹様為に下準備を済ませてあった食材を調理する。
似たような姉妹でも嗜好は違う。
妹様好みの味付けで、本日のモーニングを完成させる。
「ふむ、こんなものか」
ブラッドオレンジジュースにクロワッサン。
妹様の好きな甘いプチトマトの入ったサラダに、春雨、蒸し鶏、ワカメ、軽く潰した梅肉を入れた塩味のスープ。
少々和風が混じっているが、妹様のお好きな献立だ。
これで本日も機嫌よく目を覚ませて頂けるだろう。
おっと、お嬢に出したプリンもつけなくては。
本日は誰も妹様に会いに来る予定の人は居ない。
だから今日は少し残業だ。
妹様の遊び相手をし、その後就寝の予定となる。
「さて、モーニングコールと致しますか」
『紅魔館地下室・フランドールの部屋へと続く廊下』
地下室と言っても、陰惨な雰囲気は全くしない。
それこそ、本館同様塵一つ落ちておらず、通路に設置されたランプもぴかぴかに磨いてある。
長い廊下を渡り終え、目の前には妹様の部屋へと通じる扉。
この扉には強力な結界が施されている。
そう『約束』という強力な奴がな。
身なりを再度確認。
しかる後に、妹様の合図を待つ。
数秒後、チリンと妹様の合図。
ふむ、今日は早起きだな。
そう思いつつ、こんこんとノックした後、静かに妹様の部屋に入ってゆく。
『紅魔館・フランドールの部屋』
「・・・」
目が覚めた。
勿論ここは地下室であり、窓も無く朝日など差し込むわけもないのだが、そこはそれ、体内時計やら何時もの習慣やら期待やらが、総動員して私を起こしに掛かる。
期待。
そう期待している。
例えるなら、クリスマス当日の目が覚め、プレゼントを探す子供の心境に似ていると思う。
だから私はチリンとコール用の鈴を鳴らす。
そうすれば、私が会いたい人が扉の向こうで待っていてくれて、直ぐにでも入ってきてくれるだろう。
こんこん・・・
鈴を鳴らした刹那。
扉をノックされる音がする。
これで入ってきた奴が咲夜だったりしたら、不貞寝するところだった。
が、本日はそれは杞憂に終わり、自然に頬が緩むのが感じられる。
ええい、こら、情けない顔をするな。
主の意思に反してゆるゆるに緩みきった笑顔を、部屋に入ってきた人に向ける。
「おはよう御座います。フランドールお嬢様。本日も良いお目覚めの様ですね」
「おはよ、エイクス。ねぇ、二人っきりの時はフランって呼んでって言ってるでしょ?」
「失礼致しました。フランお嬢様?」
「だぁあかぁぁあらぁああ!それに、その気障ったらしい喋り方も嫌い。普通のエイクスで居てよぉ」
「しかし・・・」
「しかしもかかしもないの!ほらっ早く~」
ぷぅ~っとふくれっ面してエイクスを睨む私。
ぽりぽりと頬を掻き、困った顔をするエイクス。
「わかった。わかったから怒らないでくれ・・・フラン」
エイクスは降参だと言わんばかりに両手を挙げて、元の言葉遣いに直してくれた。
「えへへ・・・それでいいの。エイクス♪」
ぴょんと飛び起き、にへへ~と笑い此方に抱きつく。
ふわっと美味しそうな朝ごはんの匂いと、私を虜にするエイクスの甘い香りがする。
エイクスは私にとって兄のような存在だった。
私の気まぐれで、物も言わぬ肉塊なるというのに、今も、昔も、変わらず同じ態度で接してくれる。
最初は無礼な態度だから殺してやろうかと思ったけど、今ではそんな事考えない、考えたくもない。
昔の私が今の私を見たら、如何思うだろうか?
・・・
そのまま抱きついてぐりぐりしたかったが、私のお腹が反乱を起こし、ぐぅ~と一声鳴く。
「ははは、今用意するからな」
「はぅ」
もう・・・恥ずかしい・・・
勝手に鳴いたお腹を睨みながらすりすりして、食事するために席に着く。
さっとエイクスが小さなテーブルクロスを敷き、色取り取りのモーニングが並べられていった。
「いただきまーす」
「召し上がれ」
そうエイクスは言うと、私の横に控え、じっと動かなくなる。
もぐもぐ・・・ちゅー・・・こくん・・・こくん・・・
むぐむぐむぐ・・・
・・・
つまんない。
「ねぇ、エイクス。一緒にご飯、たべよ?」
「ん?どうしたフラン」
「一人じゃつまらないの」
「しかし・・・俺の分は持って来てないからな・・・困ったな」
「じゃあ、私のを半分あげるから、あんまりお腹空いてないし・・・ね?」
それは、嘘。
本当はお腹空いてる。
じゃなければお腹も鳴らないし、お腹一杯食べられなくしようとしてる自分に少しガッカリもしない。
でも。
私はエイクスと食事したい。
一緒にお話しながら、美味しいご飯を食べたい。
だから。
「だったら、パンと・・・之も上げるから・・・」
そういってお気に入りのプチトマトも差し出す。
「・・・分かった。そこまで言うのなら・・・ご相伴に預かろうか」
そう言って、エイクスはすっと私の反対側の席に着く。
「ただ、これはフランの為に用意したんだからな。ちゃんと食べてくれ」
そういって、プチトマトを摘み、あーんしろと目配せする。
勿論、断らない。
餌をねだる雛のように、口をあけてエイクスがプチトマトを入れてくれるのを待つ。
数秒後に、ちょんっと私の舌の上にプチトマトが置かれていた。
「あむ・・・もぐ、もぐ、もぐ・・・」
いつも甘い、美鈴が作ったプチトマト。
だけど今日のは何時もに増して、甘い気がした。
それから、エイクスと他愛も無い話をして・・・
先ほどのお返しに、クロワッサンをちぎってエイクスにあーんさせたり・・・
さらにその仕返しにプリンをあーんさせられたり・・・
とても幸せな時間が過ぎていった。
だけど・・・そういう時間が立つのは残酷なほど早くて・・・
「よし、ご飯も食べたのなら、いい加減パジャマは着替えようか」
少し、眠そうなエイクス。
本人は気づかせないつもりでいるんだろうけど、いつも傍に居てくれてるエイクスだからこそ、すぐに異変に気がついてしまう。
普段ならもう寝てる時間なのに、私に合わせてまだ起きてくれている。
もっと一緒に居たい。
でも、寝かせて上げないと・・・
あっ・・・
「エ・・・エイクス、眠いよね?」
「ん・・・?大丈夫だ。それより、ほら、この服なんかどうだ?何時もはコットンだが、今回はシルクで作ったんだ」
そういって、何時もとは違う、可愛いお洋服を取り出し、私に見せてくれる。
「・・・」
「それとも、こちらが良いか?ああ、そうだ、これも・・・・ん?フラン?何を・・・」
「えい」
私は、小さな掛け声と共にエイクスを布団に押し倒す。
ボフンとエイクスの体重でお布団が沈み、沈みきった所で、ゆっくりと持ち上がる。
私はその隣にポフっと飛び込み、エイクスの体に手を回して逃げれないようにした。
「フラン・・・?」
どうしてこんなことしたか分からない。
でも、エイクスを寝かせてあげたいのと、一緒に居たい。
そう考えた結果だった。
「エイクス、一緒に寝よ?」
後から思い返したら、爆弾発言だった。
顔がみるみる朱に染まっていくのが分かる。
「エイクスは疲れてるの。私も眠いの。だから、一緒に寝よ?」
我ながらめちゃくちゃな理論だった。
それでも、察してくれたのか。
「変なこと、するなよ?」
私の台詞だった。
『紅魔館・フランドールの部屋にあるベッドの中』
何故だ?
どうしてこうなった?
「すぅ・・・すぅ・・・」
俺の胸の上では妹様が静かに寝息を立てていた。
しっかり抱き締められている上に、ここまで幸せそうに寝られてしまったら、動くに動きようが無かった。
それよりもっとまずいのは、眠いということだ。
さらにもっとまずいのは、なぜか黒のタンクトップにトランクス1枚で寝かされているという事実だ。
執事服はフランに剥ぎ取られ、哀れ丸めて部屋の隅っこに投げられてしまっている。
何処の世界に執事の服を剥ぐお嬢様が居るのだろうか。
・・・いや、目の前にはいるが。
別に妹様に劣情を催したりはしない。
咲夜じゃあるまいし。
ただ、この事実を第三者に見つかった場合、俺は咲夜と同列視されてしまうのだ。
それだけは何としても避けなくては。
しかし、眠気がそれを許さない。
すでに、この現状を受け入れてでも眠たいという自分が居る。
どうしよう、どうしたらいい。
「んにゅ・・・?えい・・・く・・ぅ・・?ね・・・なでなで・・・して・・・・・くぅ・・・」
心の葛藤で、もぞもぞしたせいで起きたのか、妹様が半目を開けてなにやらむにゃむにゃと俺に所望する。
俺はもはや条件反射なのか、妹様の命令に対して素直に軽く抱き、ふわふわした髪の毛を撫でていた。
「んふ・・・ぁ・・・。あう・・・・すぅ・・・・・くぅ・・・・・・」
嬉しそうに身を捩り、再度、静かに寝息を立てる妹様。
これでもう逃げられなくなった。
ここにきて、俺は『まあ、大丈夫だろう』という勝手な結論を出した。
俺自身眠いし、妹様のお願いでもあるし、それにお嬢ですらなかなかこの部屋には立ち寄らないのだ。
ならば、妹様の我侭も聞いて差し上げるのが執事というものだ。
そして俺は、眠る寸前まで、妹様の髪を撫でてて、優しい気分に浸りながら心地よい暖かさを満喫したのだった。
しかしその選択が間違いで、翌日様子を見に来たお嬢に『鬼畜!変態!ど助平!ロリコン!妹ふぁっかー!!』
という五冠王を頂戴する羽目になり、騒ぎが起きるのはまた、別のお話。
その騒動の最中妹様に『いいよ・・・?エイクスなら・・・ちょっとくらいエッチなことしても・・・』と、火に油を注いで大炎上したのも、別のお話。
『紅魔館・執事長の部屋』
パタン と本日の記録を残した魔法の日記を閉じる。
各個人の心情まで記録する優れものだ。
それにしても、お嬢には困ったものだ
そう一人ごち、ぐっと一回背伸びをする。
・・・さて、如何だったかな?
俺は『其方』を向き、一礼する。
本日はお嬢様達の食事風景を見ていただいた次第だ
なんだ唐突に・・・?妹様を寄こせ?
構わんが・・・ディナーはハンバーグで決定だな。
材料は貴方だ。
俺の能力?
ああ、あの子鬼や旧地獄街道の鬼と相性がいいんじゃないかって?
まあ、そうだが俺はこの能力を持ってお嬢に仕えているからな。
あいつ等が絡んできたら、この日記にも記されるだろうな。
まだあるのか。『俺のさっきゅんを返せ』?
しらん、何時も通りだろう。あれで。
・・・私か?
これは失礼した。
自己紹介がまだだったな。
名前はエイクスと名乗らせて頂いている。
種族は・・・元、人間だ。
まさか同時に噛み付かれるとは思わなかったな・・・ん、こっちの話だ。
背丈は咲夜とほぼ同じ位。
お嬢と邂逅はまた今度だ。
・・・これが最後の質問?
なんだ?
『小悪魔はどうなった?』
・・・
ここでは語れない。
どうしても知りたければ、その事を綴った日記が『夜伽話』に公開されるのを待つといい。
あれは俺も少しやりすぎたと思っているからな。
・・・では話も尽きたところで、本日はこれで失礼する。
それではまた機会があれば、我らがお嬢様達の日常を垣間見て頂こう。
タイトルだけで痛い
すげえ不愉快
>「~~~!!(真っ赤)」
こういうのはちゃんと文章で表現できないと。SSなんだから。
そこはサボってはいけないですよ。
それとまぁ、無意味な美鈴いじめはあまりここの読者は好きじゃないと思います。
本来のキャラらしさをねじ曲げ、一ミリも好感の沸かない典型的「やれやれ」系男子にベタ惚れなレミリアやフランを見て、楽しめるでしょうか?すまん私は無理だった
あちらでエロいのが正義なのと同じく、こちらでは面白いのが正義です。今作品集だけでも読んで傾向を知ってみてはいかがでしょうか
気持ち悪いと言う言葉以外見つからないです
とてもためになりますよ
この赤裸々なSSを投稿した勇気はすごいと思う。
また、結構な長さがあって暇つぶしには十分でした。
とりあえず姉妹を愛していることは伝わりました。
オリキャラ主人公モノはここにも数ありまして、そのどれにも似たようなコメントがつきます。
それらは一般に、自分の世界観と合致しないことに対する不満と、主人公に対する不満、であります。
前者は書き手には対処しにくい課題と思います。ですが、後者はもう少し弄れるのではないでしょうか。
具体的に申しますと、オリキャラの設定が作中で語られていないがために唐突な展開に感じることや、
せっかくの主人公なのに、感情などが見えてこないためにますます共感を得にくくなっていること、などでしょうか。
最後の段落などはかなり見苦しいです。
まるで設定の補足を、後付けで誤魔化しているようにすら感じます。
そこで語るな、っていう話です。読み終わったあとに言われても今更な印象を受けます。
推理小説ならともかく、隠しても仕方ないでしょう。恥ずかしいなら最初から言うな。
とは言え、最初に設定を述べればいいってもんでもないんですが。
ちゃんと読者を引っ張ってあげるような作品であれば、幾分か読みやすくなるかと思います。
ここのコメント見たら凹むだろうけど、めげずに頑張ってください。
そういうのはだいたいエイクスみたいな面白くない「やれやれ」キャラなんだよ…そういうのがカッコいいと思ってるんだろうけどさ
あの紅魔館メンバーにも面白みや色どりが無く、オリキャラの一人称さえもハッキリしない
>11さんのコメントをよく読んどいた方がいい
出直してこい
勿論、それ以上は嫌だけど。
竿役の必要性からオリキャラの存在に寛容な夜話と違って、こちらではオリキャラのハードルが高い。
どういう形でオリキャラが原作キャラの中に入り込んできたのか、だとかそういった描写をしておいた方が受け入れられやすくなると思う。
エイクスの登場時にレミリアからの紹介があるし、現在どういった形で関わっているかは文中から伝わるが、過去が足りない。
そこを伏せる事で興味を持たせたいと思うのかもしれないが、作中の登場人物全員が知り得ていて読者が知らない情報というのは読者のストレスになりやすいから避けるに越したことはない。
どうしても伏せたいならば、レミリアがある日突然連れてきた謎の男だとか、ずっと前から館にいるが何者かはわからない、だとか、わからない事をキャラクターと読み手で共有できるように……といった工夫を。
万能型の男性オリキャラはメアリー・スーに見られがちで風当たりが強く、受け入れられにくい。
が、丁寧に作りきれば新しい領域が開けるかもしれない。そこを期待したい。
個人的には応援させて貰う、長々と偉そうなレスになってしまいましたが、頑張って下さい。
パチェいないな。マリサ(最悪エイクス)にデレるだけのキャラになりそうだから出なくて正解だけど
次回にも期待