魔法の森に住まう魔法使い、アリス・マーガトロイドはちくちくと人形の服を縫っていた。
普段見慣れないデザインの服をしかしついに縫い上げ、既に完成している本体に丁寧に纏わせる。
細く白い指を、細かく、注意深く動かして。
そうして仕上げとばかりに髪にリボンをきゅっと結んで、その手は人形から離れる。
そこには、メイド服に身を包んだ博麗の巫女がいた。
その出来を見てアリスは嘆息すると、その人形をすぅ、と持ち上げ。
「えへへへ……」
そして常の仏頂面から想像しがたい幸せそうなにやけ面を浮かべると人形をひしと抱擁した。
「あの……アリスさん……」
「ぎゃわああああああああああ!?」
常に本気を出さない用心深き魔法使いアリス。
もちろん、そんな現状は間違いなく注意力が四散しており、野生生物なら捕食されてもやむなし。背後に聞こえた突然の遠慮がちな声かけに、彼女は腹の底から声を出した。
「だだだ、誰!?」
脈打つ心臓の辺りを押さえつけながら、アリスは恐る恐る振り向く。
「ど、どうも……」
そこで見たのは、ちょっとばつが悪そうに手を振るその小柄なネズミミ少女だった。
「ナズーリン!!」
巷で噂の妖怪寺、命蓮寺に住まうネズミ妖怪。最近は魔理沙と組んでトレジャーハントしていることが多いので、いつの間にか知り合ってしまった。
「あの、これは……」
「違うのよ! これは魔理沙が!」
「魔理沙が!?」
「魔理沙が、『まぁ、巫女も神のメイドみたいなもんか』って言ってるのを聞いて、つい妄想がむくむくと膨らんできてたまらなくなっただけで、別に変な意味はないのよ!」
「アリスさんそれ言い訳になってない! ドツボだー!!!」
「い、今のは冗談よ!」
どうしようもないところまで自らを追い込んでなお、アリスは強がった。
「では、事の真相をお聞かせ願おうか」
先ほどまでは若干遠慮していたナズーリンも、その様子を見てついつい意地の悪い笑みを浮かべて話を促してしまう。
「これは……シミュレーションよ!」
「なんの」
「もしかしたら、霊夢が何かの気まぐれでメイド服を着て私の前に立ちふさがるかもしれないじゃない! その破壊力に私は何も出来ず棒立ちになってしまうのが常に余裕を忘れない魔法使いとしてくやしいから、今からこの人形を用意してシミュレーションをしているのよ!」
「わけがわからないよ」
アリスが常に奥の手を封印し、精神的に余裕を持とうとしているのはわけがある。
いったん崩れるともうダメだからだ。
「大体アリスさんが何をごまかしたいのかすらわからないんだけど……霊夢さんにラブラブなのも煩悩が溢れてるのも全然隠れてないじゃないか……」
「そこに気づくとは……やはり賢将……」
「いや……ああうん、一応褒め言葉として受けとっとく……」
ナズーリンはため息をつきながら、精一杯の優しさを見せて、追求を打ち切った。
きっとごまかさなきゃってことだけが頭の中にあって、何をごまかすべきかまで頭が回ってなかったのだろう。
そんなの、あまりにも悲しすぎるから。
「……で、何の用なのよナズーリン。今日は魔理沙と一緒じゃないの?」
何事もなかったかのように、自然な動作で霊夢人形を戸棚に仕舞いながら、アリスは珍しくこのネズミが一人で訪ねてきた理由を尋ねる。
「いや、実際は魔理沙のところに行っていたんだが……留守だったのでね。こちらに来てないかと思ってお邪魔してみたんだが」
「どっちかといえば神社にいるんじゃない? そんなにウチには来ないわよ、あいつは」
アリスの指摘にナズーリンは少しむっとしたように膨れる。
「私を誰だと思っている。探し物に定評のあるナズーリンだよ。もちろん神社にも行ったさ。そしていなかった。ついでに霊夢さんもいなかったが」
「霊夢もいなかったの?」
霊夢もいないという追加情報に、アリスは眉をひそめる。
もしかして二人してどこかに出かけているのではないか。しかしだからといってそれにどうこう言う権利は自分にはない。
「むむむ」
「何がむむむだ。そんなことよりアリスさん。ものは……相談なのだが」
若干歯切れ悪く、ナズーリンはアリスに要望の前フリを投げかけた。
「何よ?」
前で手を組んで、両手の人差し指を合わせてもじもじしている様子を訝しがりながら、アリスは続きを促す。
「……人形を、作ってもらえないか?」
「人形? いいけど、どんなの?」
「ま、魔理沙の」
かぁっと頬を朱に染めて、自分の望みを口から思い切って搾り出す。
「さっきの見てたら私も欲しくなって……」
その様子に、きゅん、とアリスの胸が締め付けられる。
(むう……魔理沙がかわいがるのもわかる気がするわね……)
あごに手を当てて神妙に唸りながら、アリスは頷いた。
「いいわよ、頼まれてあげる」
「感謝する!」
ナズーリンは一瞬だけ、無邪気な笑顔を覗かせ、そして思い出したようにすぐに顔を引き締めた。
「で、その……服装指定とかは、できるかい?」
「服装指定?」
アリスはさっき霊夢人形を納めた棚をちらっと見る。
「うんそれ、別に私はアリスさんのことをどうこういうつもりはなかったさ。私にだって、魔理沙に着せてみたい服くらい、ある」
無駄に強固で尊敬すべき決意が、読み取れてしまう語調だった。そしてアリスとしても、その言葉を否定する義理はない。元々は自分がやりはじめたことだ。
「わかったわ。で、どんな服装にするの?」
「ピンク基調の甘ロリで頼む」
「…………」
「…………」
甘ロリとはロリータファッションの一種である。
白やピンクなどを基調とし、フリルなどを多く用いた、おとぎ話のお姫様のようなふりふりでかわいらしいもので、よく言われるゴスロリとは少し違う。
「お前……」
「な、なんだいその目は! 見てみたいじゃないか! そう思うだろう! ゴスロリだと普段とあんまり色合い変わらないし!」
「ま、まぁ私でもちょっと見てみたくはあるわね」
意外と濃いところを突いてきたと思った。というかなんで服装指定のときだけ言葉に澱みがないのか。
「ダメなら燕尾服でも可だよ」
「ダメとは言ってないけどそれもそれで」
少し気圧されはしたが、断る理由になりはしない。
「どれくらいかかりそうだい?」
「そう時間はとらせないわ。素体は以前作ったものを利用できるし、生地も型紙もある」
そう言うとアリスは、ぶわりと両手を広げ、繰り糸を張らせ、数多の人形をスタンドアップさせ、配置につかせる。
アリス必殺の一人工場制手工業(ロンリネス・マニュファクチュア)での構えであった。
こうなったアリスは人形用の服の一着くらいなら10分程度で仕立ててしまう。(ちなみに普段は疲れるしもっと心を込めて作りたいため、手縫いが主である)
「さぁ刮目せよ! これがドールマスター・アリスの実力よ!」
本当に魔法を見ているかのように、服がどんどんとその形を現していく。
サナギの羽化を早回しで見ているかのごときその光景にナズーリンは目を奪われ、時間が経つのなど意識すらしなかった。
「さぁ、コレで仕上げよ! 受け取りなさい!」
甘ロリの衣装にぴしりと仕上げが施され、そして同じく微調整を施され仕上げられた魔理沙人形にふわりと纏わせられていく。
「おおお……」
人形としての完成度もさることながら、自分が思い描いたイメージが形になっていくのをじっくりと見、ナズーリンは嘆息した。
そして、その人形がアリスの操る上海の手によってナズーリンの手に渡された瞬間。
ばたーんとけたたましい音を立てて扉が開け放たれた。
「やっほー、邪魔するぜー!」
全世界が、停止したかと思われた。
「まっまっままままままま魔理沙じゃないか奇遇だねうんまったく」
凄い勢いで後ろ手に人形を隠しながら、ナズーリンは輝かんばかりの笑顔を魔理沙に向ける。
「なんか気になる反応だな……というかナズーがこんなとこにいるとは予想外だったぜ」
「こんなところで悪かったわね。いきなりノックもなしに何の用よ」
そんな魔理沙の闖入にも動じず、いや、もはや慣れているのか――アリスがナズーリンの前に進み出ながら問いかけた。
「ああ、ちょっと見せたいものがあってな。おーい、入ってくれ」
と、魔理沙はドアの外に向かって合図を出し、呼びかけた。
「もー、一体どういうつもりなのよ」
その声に応えて入ってきたのは博麗霊夢。
そして彼女が纏っている服装は、他でもない最初にアリスが人形にあらわしていたままのメイド服だったのだ。
「がっ……はっ……ああっ……!」
「ア、アリスさーんっ!! てい!」
謎の超威力攻撃でも食らったかのようなリアクションを取り始めるアリスに、ナズーリンは慌てて後頭部にチョップをかまして活を入れる。
結局シミュレーションにもなっていやしない。
その様子を見ながら魔理沙は悪戯な笑顔を浮かべ、霊夢に向き直る。
「な、面白いものが見れるって言ったろ」
「面白いものってか何か苦しんでるんだけど!? ねえ、大丈夫アリス?」
博麗霊夢はその様子の面白みを理解しないほどには天然だった。
霊夢はアリスの変な様子を心配して駆け寄り、アリスの両肩に手を置いた。
「ああ、霊夢さん! それは……!」
「か、かっ……」
ナズーリンが気づいたがしかし遅い。妄想の具現に触れられるというドッキドキの極みを経て、アリスは。
「あふぅ」
倒れた。
「アリスー!? ちょっとアリスー!? しっかりしなさい!」
そうしてアリスは霊夢によって部屋の奥へと担ぎこまれていった。
この後アリスはしばらくメイド霊夢に看病されるというご褒美と拷問の合わせ技を喰らい続けることになるのだが、それはまた別の話。
「うーん、まさか倒れるとは思わなかったんだぜ。悪いことをしたかな。しかし思ったよりだいぶ反応が過剰だったが、何かあったのかね」
少々思惑と違うことに、魔理沙が首をかしげていた。
(強く生きてくれアリスさん。そしてありがとう)
ナズーリンは内心ふうと安心の息をつく。
アリスが魔理沙の目を引き付けていた隙を突いて、小ネズミを使いあの人形を使ってさりげなく屋根裏へ避難させたのだ。
これで一安心。
『ねえスター。なんか屋根裏に人形が転がり込んできたよ?』
(!?)
まずはその安心感をぶち壊すとばかりに天井裏から聞こえてくる声。
『本当、ピンク色でふりふりしててかわいらしいわね』
『あれ、ピンク色って、まさかさっきの……』
『う……うわあああああ!』
『うわあああああああああああ!!』
真ピンク甘ロリ魔理沙人形はナズーリンにとっては神の贈物だが、三妖精にとっては地獄の宴。知り合いの姉貴分が突然ロリータファッションだったら嫌過ぎるだろう常識的に考えて。
「なんなんだ? あいつらなんだってアリスの家の屋根裏にいるんだ?」
屋根裏に向けられた魔理沙の注意と、謎の妖精の手に渡ってしまった魔理沙人形。ナズーリンの背筋に冷たいものが走る。
『ふぅ、びっくりした……流石の破壊力ね。でもこれは格好の悪戯材料じゃない?』
『そうねー、ここから落とすだけで面白いものが見れると思うわ』
『ねえルナ、思ったんだけどさっきから消音切れてない?』
『あ』
「お前らぁ! その人形をこっちに渡せ!」
三妖精の時が止まった一瞬に、ナズーリンは屋根裏に駆け上がっていた。元々屋根裏はネズミの独壇場である。妖精にでかい顔をさせっぱなしでいいわけがない。
「う、うわぁー! あっさり見つかった!」
「にげろー!」
「ころしてでもうばいとる!」
人形を持ったまま慌しく逃げ出す三妖精に、容赦なくナズーリンが容赦なく弾幕を撃ちかける。
「わー!」
「きゃー!」
ちょこまかと逃げ惑いながら、通気口に殺到する三妖精。
(くそう、まさか出来心で頼んだ人形がこんなことになるなんて!)
ひそやかに自分の目の肥やしとなるだけのはずだったのに。そんな憤りを込めて、手持ちのロッドを強く握る。
「サニー! 早くにげなきゃ!」
「ちょっと通気口にお尻がつかえて……!」
「棒符『ナズーリンロッド』!!」
すぱこーん!
「アッー!!」
小気味良い音を立ててサニーの尻がぶっ叩かれ、外に押し出される。
ナズーリンもその後を通って外に出た。
「ふええ、お尻が割れるかと思った……!」
「最初から割れてるよ!」
「お約束はいいから! 早く隠れないと!」
すぐにナズーリンが追ってくる。
スターの呼びかけで、サニーの屈折とルナの消音の力を発動し、三妖精は姿をくらます。
しかし、相手が悪かった。
「そこぉ!」
すぱこーん!
「アッー!!」
いくら三妖精が隠れるのが得意でも、ナズーリンは探しもののプロである。位置の特定など造作もない。
そうしてぶっ叩いたのは再びサニーの尻だった。
「二度もぶったね! 親父にもぶたれたことないのに!」
「親父って誰だよ!」
涙目で抗議するサニーに、ルナが横からツッコミを入れる。
「私の前で隠れようなどとは愚かなことだよ。さぁ、観念してその人形をこっちに渡すんだ」
オーラが視認できそうなほどの迫力に身を包み、ナズーリンが凄む。
「ふんだ、こうなったら素直には渡さないわ! はいパス!」
サニーがスターに持っていた人形を投げてよこす。
「くっ、幼稚な真似を!」
「妖精ですから。はいパスー」
慌ててとりに来るナズーリンに微笑み、スターはルナに人形をパスする。
「くそっ! 早く観念するんだ!」
「こうなったらヤケよ、はいパス!」
「……お?」
本当にヤケで放ったルナは、投げる先にいる人物が誰かの確認すらまともにしてはいなかった。
それ以前に、その騒動に夢中になっていた四人は、彼女が外に出てきていることすら気づいていなかったのである。
「ま、魔理沙ァー!」
結婚式のブーケを受け取る気もなかったのに受け取ってしまったようなきょとんとした表情を浮かべながら、手にした人形を見る。
「なんだこりゃ? ……って、え? ちょ、ちょっと待ってくれよ、え? なんだこれ。え、あ、えっ……」
かあぁっと魔理沙は顔を紅潮させてうろたえた。
「こ、これは誰の陰謀なんだ?」
「「「この人です」」」
「ちょ」
魔理沙の問いに、三妖精は素早くしゅぱっとポーズをとってナズーリンを指し示す。
「いきなり何を……! ていうかなんなんだ君たちは! どこから湧いて出たんだ!」
「話せば長くなりますが」
「梅霖の妖精が新居を探していたので、お手伝いにと物件を物色していたのですが」
「たまたま立ち寄った屋根裏の下で面白いことやってたのでウヒョーイタズラすっぞーい、といきり立って今に至ります」
「みじか!」
前置きとは何だったのか。
「でも私ら最初からいましたから」
「その人形はこの人がアリスさんに注文して作ってもらったものってのは確かです」
「それでは、私らはここで退散しますね~」
「ま、待て!」
上手い具合に場をかく乱して逃げ出す三妖精。
慌ててナズーリンが止めようとするが。
「ナズー?」
投げかけられた魔理沙の声が、ナズーリンそのものを止めてしまう。
「ま、魔理沙……」
「これは一体……」
今更ながら、ナズーリンはアリスのことを笑えないなと思った。
何をどうごまかしていいのかわからなくなる。
だが……ここで取り乱すわけにはいかない。何をごまかすべきなのかを見失うな。
この人形を持っていておかしくなくなる言い訳を考えなければ。
「……ちょっとしたファッションショーだよ」
そうしてナズーリンは、ゆっくりと、結論を吐き出す。
「ふぁっしょんしょー?」
「いや何、ちょっと服でも贈ろうかと……見繕おうとしてみたんだけどね。せっかくだから似合うものを選ぼうと思って、人形を作ってもらったんだ。できれば内緒にしておきたかったんだがね。恥ずかしいし……」
少しは恥も飲まねばなるまい。慌てたことへの説明にならなくなる。服を贈るというのも実際にやるとして吝かでもないし。
ナズーリンは焦りを見せずに言い切れたことに内心息をつくが、まだ相手の返答を聞かねばならない。上手くごまかせているかどうか。
さて、うまく誤魔化されてくれただろうか。そんなナズーリンの期待を受けつつ、魔理沙はぼそりと言った。
「……似合ってるのか?」
「……は」
やっちまった。
ナズーリンの脳裏にその六文字が浮かぶ。
「……これ、似合ってるのか?」
あの言い訳は人形を持っていることの言い訳としては確かに完璧だった。
だが、この服を着てることの説明にまったくもってなっていない。
「いや、あの、その……」
本当に笑えない。
自分も結局ドツボじゃないか。
「……似合ってるよ! かわいいよ! 少なくとも私にとっては!」
ナズーリンは勢いに任せて言って、すぐにぷいっとそっぽを向いた。紅潮した顔をなるべく見られたくなかったのだ。
「……ぷっ……くっ……ははははっ!」
その様子を見て、魔理沙が急に笑い出した。
「な、何を笑う」
「いやいや、不安がってたのが馬鹿らしくなってな」
目尻に笑い涙を浮かべながら、ぽん、と魔理沙はナズーリンの頭上に手を置く。
「不安?」
「いやまぁ、こういうカッコすると『似合わないからやめなよ』とか言われそうだったからさ。ナズーの前ならもちっと女の子っぽいカッコしててもいいのかね」
今の格好が『女の子っぽくない』とは別に思えなかったが、黒白カラーや魔女服がトレードマークとなってる節はある。
そういう観念に、魔理沙自身がとりつかれていたのかもしれない……。
ナズーリンは、ドツボな賢将の頭で、ぼうっとそんなことを考えた。
「服くれるんだろ? 楽しみにしてるぜ。ただし……私もナズーの人形を作ってもらうけどな!」
「おお!?」
「どんなのが似合うかじっくりたっぷり検討してやるぜー、うふふ」
「お、お手柔らかに頼むよ」
ごまかすごまかさない以前に、結局同じ穴のネズミだったのかもしれない。
「まぁ、あれだ」
こめかみのあたりを人差し指でいじりながら、
「ありがとな、ナズー」
照れ隠しのような笑顔を、魔理沙は浮かべた。
――何ゆえに二人はドツボにはまったのか?
きっと二人とも、『そこのところ』に嘘をつきたくなかったんだろう。
いろんな姿が見たいという気持ち。
君が好きだという気持ちに。
『桃色魔理沙人形』――fin
~おまけ・その後のアリスさん~
アリス・マーガトロイドはぱちりを目を開け、いつものようにベッドから身を起こした。
「あれ……私は一体……」
「あ、目ぇ覚めた?」
判然としない寝る前の記憶に首をかしげていると、ふと耳朶を打つ聞きなれた声が。
「もー、いきなり倒れるからびっくりしたわよ」
そこには、自分の部屋で粥を運んでくる神のメイドの姿が。
「ふうっ……」
「ちょっとアリスー!!」
まるで逆再生をしているかのごとく優雅に、再びアリスはベッドに倒れた。
以下、規定回数繰り返し。
普段見慣れないデザインの服をしかしついに縫い上げ、既に完成している本体に丁寧に纏わせる。
細く白い指を、細かく、注意深く動かして。
そうして仕上げとばかりに髪にリボンをきゅっと結んで、その手は人形から離れる。
そこには、メイド服に身を包んだ博麗の巫女がいた。
その出来を見てアリスは嘆息すると、その人形をすぅ、と持ち上げ。
「えへへへ……」
そして常の仏頂面から想像しがたい幸せそうなにやけ面を浮かべると人形をひしと抱擁した。
「あの……アリスさん……」
「ぎゃわああああああああああ!?」
常に本気を出さない用心深き魔法使いアリス。
もちろん、そんな現状は間違いなく注意力が四散しており、野生生物なら捕食されてもやむなし。背後に聞こえた突然の遠慮がちな声かけに、彼女は腹の底から声を出した。
「だだだ、誰!?」
脈打つ心臓の辺りを押さえつけながら、アリスは恐る恐る振り向く。
「ど、どうも……」
そこで見たのは、ちょっとばつが悪そうに手を振るその小柄なネズミミ少女だった。
「ナズーリン!!」
巷で噂の妖怪寺、命蓮寺に住まうネズミ妖怪。最近は魔理沙と組んでトレジャーハントしていることが多いので、いつの間にか知り合ってしまった。
「あの、これは……」
「違うのよ! これは魔理沙が!」
「魔理沙が!?」
「魔理沙が、『まぁ、巫女も神のメイドみたいなもんか』って言ってるのを聞いて、つい妄想がむくむくと膨らんできてたまらなくなっただけで、別に変な意味はないのよ!」
「アリスさんそれ言い訳になってない! ドツボだー!!!」
~桃色魔理沙人形~
「い、今のは冗談よ!」
どうしようもないところまで自らを追い込んでなお、アリスは強がった。
「では、事の真相をお聞かせ願おうか」
先ほどまでは若干遠慮していたナズーリンも、その様子を見てついつい意地の悪い笑みを浮かべて話を促してしまう。
「これは……シミュレーションよ!」
「なんの」
「もしかしたら、霊夢が何かの気まぐれでメイド服を着て私の前に立ちふさがるかもしれないじゃない! その破壊力に私は何も出来ず棒立ちになってしまうのが常に余裕を忘れない魔法使いとしてくやしいから、今からこの人形を用意してシミュレーションをしているのよ!」
「わけがわからないよ」
アリスが常に奥の手を封印し、精神的に余裕を持とうとしているのはわけがある。
いったん崩れるともうダメだからだ。
「大体アリスさんが何をごまかしたいのかすらわからないんだけど……霊夢さんにラブラブなのも煩悩が溢れてるのも全然隠れてないじゃないか……」
「そこに気づくとは……やはり賢将……」
「いや……ああうん、一応褒め言葉として受けとっとく……」
ナズーリンはため息をつきながら、精一杯の優しさを見せて、追求を打ち切った。
きっとごまかさなきゃってことだけが頭の中にあって、何をごまかすべきかまで頭が回ってなかったのだろう。
そんなの、あまりにも悲しすぎるから。
「……で、何の用なのよナズーリン。今日は魔理沙と一緒じゃないの?」
何事もなかったかのように、自然な動作で霊夢人形を戸棚に仕舞いながら、アリスは珍しくこのネズミが一人で訪ねてきた理由を尋ねる。
「いや、実際は魔理沙のところに行っていたんだが……留守だったのでね。こちらに来てないかと思ってお邪魔してみたんだが」
「どっちかといえば神社にいるんじゃない? そんなにウチには来ないわよ、あいつは」
アリスの指摘にナズーリンは少しむっとしたように膨れる。
「私を誰だと思っている。探し物に定評のあるナズーリンだよ。もちろん神社にも行ったさ。そしていなかった。ついでに霊夢さんもいなかったが」
「霊夢もいなかったの?」
霊夢もいないという追加情報に、アリスは眉をひそめる。
もしかして二人してどこかに出かけているのではないか。しかしだからといってそれにどうこう言う権利は自分にはない。
「むむむ」
「何がむむむだ。そんなことよりアリスさん。ものは……相談なのだが」
若干歯切れ悪く、ナズーリンはアリスに要望の前フリを投げかけた。
「何よ?」
前で手を組んで、両手の人差し指を合わせてもじもじしている様子を訝しがりながら、アリスは続きを促す。
「……人形を、作ってもらえないか?」
「人形? いいけど、どんなの?」
「ま、魔理沙の」
かぁっと頬を朱に染めて、自分の望みを口から思い切って搾り出す。
「さっきの見てたら私も欲しくなって……」
その様子に、きゅん、とアリスの胸が締め付けられる。
(むう……魔理沙がかわいがるのもわかる気がするわね……)
あごに手を当てて神妙に唸りながら、アリスは頷いた。
「いいわよ、頼まれてあげる」
「感謝する!」
ナズーリンは一瞬だけ、無邪気な笑顔を覗かせ、そして思い出したようにすぐに顔を引き締めた。
「で、その……服装指定とかは、できるかい?」
「服装指定?」
アリスはさっき霊夢人形を納めた棚をちらっと見る。
「うんそれ、別に私はアリスさんのことをどうこういうつもりはなかったさ。私にだって、魔理沙に着せてみたい服くらい、ある」
無駄に強固で尊敬すべき決意が、読み取れてしまう語調だった。そしてアリスとしても、その言葉を否定する義理はない。元々は自分がやりはじめたことだ。
「わかったわ。で、どんな服装にするの?」
「ピンク基調の甘ロリで頼む」
「…………」
「…………」
甘ロリとはロリータファッションの一種である。
白やピンクなどを基調とし、フリルなどを多く用いた、おとぎ話のお姫様のようなふりふりでかわいらしいもので、よく言われるゴスロリとは少し違う。
「お前……」
「な、なんだいその目は! 見てみたいじゃないか! そう思うだろう! ゴスロリだと普段とあんまり色合い変わらないし!」
「ま、まぁ私でもちょっと見てみたくはあるわね」
意外と濃いところを突いてきたと思った。というかなんで服装指定のときだけ言葉に澱みがないのか。
「ダメなら燕尾服でも可だよ」
「ダメとは言ってないけどそれもそれで」
少し気圧されはしたが、断る理由になりはしない。
「どれくらいかかりそうだい?」
「そう時間はとらせないわ。素体は以前作ったものを利用できるし、生地も型紙もある」
そう言うとアリスは、ぶわりと両手を広げ、繰り糸を張らせ、数多の人形をスタンドアップさせ、配置につかせる。
アリス必殺の一人工場制手工業(ロンリネス・マニュファクチュア)での構えであった。
こうなったアリスは人形用の服の一着くらいなら10分程度で仕立ててしまう。(ちなみに普段は疲れるしもっと心を込めて作りたいため、手縫いが主である)
「さぁ刮目せよ! これがドールマスター・アリスの実力よ!」
本当に魔法を見ているかのように、服がどんどんとその形を現していく。
サナギの羽化を早回しで見ているかのごときその光景にナズーリンは目を奪われ、時間が経つのなど意識すらしなかった。
「さぁ、コレで仕上げよ! 受け取りなさい!」
甘ロリの衣装にぴしりと仕上げが施され、そして同じく微調整を施され仕上げられた魔理沙人形にふわりと纏わせられていく。
「おおお……」
人形としての完成度もさることながら、自分が思い描いたイメージが形になっていくのをじっくりと見、ナズーリンは嘆息した。
そして、その人形がアリスの操る上海の手によってナズーリンの手に渡された瞬間。
ばたーんとけたたましい音を立てて扉が開け放たれた。
「やっほー、邪魔するぜー!」
全世界が、停止したかと思われた。
「まっまっままままままま魔理沙じゃないか奇遇だねうんまったく」
凄い勢いで後ろ手に人形を隠しながら、ナズーリンは輝かんばかりの笑顔を魔理沙に向ける。
「なんか気になる反応だな……というかナズーがこんなとこにいるとは予想外だったぜ」
「こんなところで悪かったわね。いきなりノックもなしに何の用よ」
そんな魔理沙の闖入にも動じず、いや、もはや慣れているのか――アリスがナズーリンの前に進み出ながら問いかけた。
「ああ、ちょっと見せたいものがあってな。おーい、入ってくれ」
と、魔理沙はドアの外に向かって合図を出し、呼びかけた。
「もー、一体どういうつもりなのよ」
その声に応えて入ってきたのは博麗霊夢。
そして彼女が纏っている服装は、他でもない最初にアリスが人形にあらわしていたままのメイド服だったのだ。
「がっ……はっ……ああっ……!」
「ア、アリスさーんっ!! てい!」
謎の超威力攻撃でも食らったかのようなリアクションを取り始めるアリスに、ナズーリンは慌てて後頭部にチョップをかまして活を入れる。
結局シミュレーションにもなっていやしない。
その様子を見ながら魔理沙は悪戯な笑顔を浮かべ、霊夢に向き直る。
「な、面白いものが見れるって言ったろ」
「面白いものってか何か苦しんでるんだけど!? ねえ、大丈夫アリス?」
博麗霊夢はその様子の面白みを理解しないほどには天然だった。
霊夢はアリスの変な様子を心配して駆け寄り、アリスの両肩に手を置いた。
「ああ、霊夢さん! それは……!」
「か、かっ……」
ナズーリンが気づいたがしかし遅い。妄想の具現に触れられるというドッキドキの極みを経て、アリスは。
「あふぅ」
倒れた。
「アリスー!? ちょっとアリスー!? しっかりしなさい!」
そうしてアリスは霊夢によって部屋の奥へと担ぎこまれていった。
この後アリスはしばらくメイド霊夢に看病されるというご褒美と拷問の合わせ技を喰らい続けることになるのだが、それはまた別の話。
「うーん、まさか倒れるとは思わなかったんだぜ。悪いことをしたかな。しかし思ったよりだいぶ反応が過剰だったが、何かあったのかね」
少々思惑と違うことに、魔理沙が首をかしげていた。
(強く生きてくれアリスさん。そしてありがとう)
ナズーリンは内心ふうと安心の息をつく。
アリスが魔理沙の目を引き付けていた隙を突いて、小ネズミを使いあの人形を使ってさりげなく屋根裏へ避難させたのだ。
これで一安心。
『ねえスター。なんか屋根裏に人形が転がり込んできたよ?』
(!?)
まずはその安心感をぶち壊すとばかりに天井裏から聞こえてくる声。
『本当、ピンク色でふりふりしててかわいらしいわね』
『あれ、ピンク色って、まさかさっきの……』
『う……うわあああああ!』
『うわあああああああああああ!!』
真ピンク甘ロリ魔理沙人形はナズーリンにとっては神の贈物だが、三妖精にとっては地獄の宴。知り合いの姉貴分が突然ロリータファッションだったら嫌過ぎるだろう常識的に考えて。
「なんなんだ? あいつらなんだってアリスの家の屋根裏にいるんだ?」
屋根裏に向けられた魔理沙の注意と、謎の妖精の手に渡ってしまった魔理沙人形。ナズーリンの背筋に冷たいものが走る。
『ふぅ、びっくりした……流石の破壊力ね。でもこれは格好の悪戯材料じゃない?』
『そうねー、ここから落とすだけで面白いものが見れると思うわ』
『ねえルナ、思ったんだけどさっきから消音切れてない?』
『あ』
「お前らぁ! その人形をこっちに渡せ!」
三妖精の時が止まった一瞬に、ナズーリンは屋根裏に駆け上がっていた。元々屋根裏はネズミの独壇場である。妖精にでかい顔をさせっぱなしでいいわけがない。
「う、うわぁー! あっさり見つかった!」
「にげろー!」
「ころしてでもうばいとる!」
人形を持ったまま慌しく逃げ出す三妖精に、容赦なくナズーリンが容赦なく弾幕を撃ちかける。
「わー!」
「きゃー!」
ちょこまかと逃げ惑いながら、通気口に殺到する三妖精。
(くそう、まさか出来心で頼んだ人形がこんなことになるなんて!)
ひそやかに自分の目の肥やしとなるだけのはずだったのに。そんな憤りを込めて、手持ちのロッドを強く握る。
「サニー! 早くにげなきゃ!」
「ちょっと通気口にお尻がつかえて……!」
「棒符『ナズーリンロッド』!!」
すぱこーん!
「アッー!!」
小気味良い音を立ててサニーの尻がぶっ叩かれ、外に押し出される。
ナズーリンもその後を通って外に出た。
「ふええ、お尻が割れるかと思った……!」
「最初から割れてるよ!」
「お約束はいいから! 早く隠れないと!」
すぐにナズーリンが追ってくる。
スターの呼びかけで、サニーの屈折とルナの消音の力を発動し、三妖精は姿をくらます。
しかし、相手が悪かった。
「そこぉ!」
すぱこーん!
「アッー!!」
いくら三妖精が隠れるのが得意でも、ナズーリンは探しもののプロである。位置の特定など造作もない。
そうしてぶっ叩いたのは再びサニーの尻だった。
「二度もぶったね! 親父にもぶたれたことないのに!」
「親父って誰だよ!」
涙目で抗議するサニーに、ルナが横からツッコミを入れる。
「私の前で隠れようなどとは愚かなことだよ。さぁ、観念してその人形をこっちに渡すんだ」
オーラが視認できそうなほどの迫力に身を包み、ナズーリンが凄む。
「ふんだ、こうなったら素直には渡さないわ! はいパス!」
サニーがスターに持っていた人形を投げてよこす。
「くっ、幼稚な真似を!」
「妖精ですから。はいパスー」
慌ててとりに来るナズーリンに微笑み、スターはルナに人形をパスする。
「くそっ! 早く観念するんだ!」
「こうなったらヤケよ、はいパス!」
「……お?」
本当にヤケで放ったルナは、投げる先にいる人物が誰かの確認すらまともにしてはいなかった。
それ以前に、その騒動に夢中になっていた四人は、彼女が外に出てきていることすら気づいていなかったのである。
「ま、魔理沙ァー!」
結婚式のブーケを受け取る気もなかったのに受け取ってしまったようなきょとんとした表情を浮かべながら、手にした人形を見る。
「なんだこりゃ? ……って、え? ちょ、ちょっと待ってくれよ、え? なんだこれ。え、あ、えっ……」
かあぁっと魔理沙は顔を紅潮させてうろたえた。
「こ、これは誰の陰謀なんだ?」
「「「この人です」」」
「ちょ」
魔理沙の問いに、三妖精は素早くしゅぱっとポーズをとってナズーリンを指し示す。
「いきなり何を……! ていうかなんなんだ君たちは! どこから湧いて出たんだ!」
「話せば長くなりますが」
「梅霖の妖精が新居を探していたので、お手伝いにと物件を物色していたのですが」
「たまたま立ち寄った屋根裏の下で面白いことやってたのでウヒョーイタズラすっぞーい、といきり立って今に至ります」
「みじか!」
前置きとは何だったのか。
「でも私ら最初からいましたから」
「その人形はこの人がアリスさんに注文して作ってもらったものってのは確かです」
「それでは、私らはここで退散しますね~」
「ま、待て!」
上手い具合に場をかく乱して逃げ出す三妖精。
慌ててナズーリンが止めようとするが。
「ナズー?」
投げかけられた魔理沙の声が、ナズーリンそのものを止めてしまう。
「ま、魔理沙……」
「これは一体……」
今更ながら、ナズーリンはアリスのことを笑えないなと思った。
何をどうごまかしていいのかわからなくなる。
だが……ここで取り乱すわけにはいかない。何をごまかすべきなのかを見失うな。
この人形を持っていておかしくなくなる言い訳を考えなければ。
「……ちょっとしたファッションショーだよ」
そうしてナズーリンは、ゆっくりと、結論を吐き出す。
「ふぁっしょんしょー?」
「いや何、ちょっと服でも贈ろうかと……見繕おうとしてみたんだけどね。せっかくだから似合うものを選ぼうと思って、人形を作ってもらったんだ。できれば内緒にしておきたかったんだがね。恥ずかしいし……」
少しは恥も飲まねばなるまい。慌てたことへの説明にならなくなる。服を贈るというのも実際にやるとして吝かでもないし。
ナズーリンは焦りを見せずに言い切れたことに内心息をつくが、まだ相手の返答を聞かねばならない。上手くごまかせているかどうか。
さて、うまく誤魔化されてくれただろうか。そんなナズーリンの期待を受けつつ、魔理沙はぼそりと言った。
「……似合ってるのか?」
「……は」
やっちまった。
ナズーリンの脳裏にその六文字が浮かぶ。
「……これ、似合ってるのか?」
あの言い訳は人形を持っていることの言い訳としては確かに完璧だった。
だが、この服を着てることの説明にまったくもってなっていない。
「いや、あの、その……」
本当に笑えない。
自分も結局ドツボじゃないか。
「……似合ってるよ! かわいいよ! 少なくとも私にとっては!」
ナズーリンは勢いに任せて言って、すぐにぷいっとそっぽを向いた。紅潮した顔をなるべく見られたくなかったのだ。
「……ぷっ……くっ……ははははっ!」
その様子を見て、魔理沙が急に笑い出した。
「な、何を笑う」
「いやいや、不安がってたのが馬鹿らしくなってな」
目尻に笑い涙を浮かべながら、ぽん、と魔理沙はナズーリンの頭上に手を置く。
「不安?」
「いやまぁ、こういうカッコすると『似合わないからやめなよ』とか言われそうだったからさ。ナズーの前ならもちっと女の子っぽいカッコしててもいいのかね」
今の格好が『女の子っぽくない』とは別に思えなかったが、黒白カラーや魔女服がトレードマークとなってる節はある。
そういう観念に、魔理沙自身がとりつかれていたのかもしれない……。
ナズーリンは、ドツボな賢将の頭で、ぼうっとそんなことを考えた。
「服くれるんだろ? 楽しみにしてるぜ。ただし……私もナズーの人形を作ってもらうけどな!」
「おお!?」
「どんなのが似合うかじっくりたっぷり検討してやるぜー、うふふ」
「お、お手柔らかに頼むよ」
ごまかすごまかさない以前に、結局同じ穴のネズミだったのかもしれない。
「まぁ、あれだ」
こめかみのあたりを人差し指でいじりながら、
「ありがとな、ナズー」
照れ隠しのような笑顔を、魔理沙は浮かべた。
――何ゆえに二人はドツボにはまったのか?
きっと二人とも、『そこのところ』に嘘をつきたくなかったんだろう。
いろんな姿が見たいという気持ち。
君が好きだという気持ちに。
『桃色魔理沙人形』――fin
~おまけ・その後のアリスさん~
アリス・マーガトロイドはぱちりを目を開け、いつものようにベッドから身を起こした。
「あれ……私は一体……」
「あ、目ぇ覚めた?」
判然としない寝る前の記憶に首をかしげていると、ふと耳朶を打つ聞きなれた声が。
「もー、いきなり倒れるからびっくりしたわよ」
そこには、自分の部屋で粥を運んでくる神のメイドの姿が。
「ふうっ……」
「ちょっとアリスー!!」
まるで逆再生をしているかのごとく優雅に、再びアリスはベッドに倒れた。
以下、規定回数繰り返し。
規定回数が何回なのか非常に気になる
にしてもみんな可愛いなあ
>「お前……」
この瞬間俺は当作品に100点差し出す事を決意した
レイアリは元々大好きでしたが、ナズマリにも目覚めました、ありがとうございます。
一人工場制手工業(ロンリネス・マニュファクチュア)に噴いたww
なんかこれからはアリスさんって呼びたくなってきた
ナズもアリスも愛ゆえにドツボに嵌っていくのがもうね。
普段クールなキャラだけにギャップがいいです。
魔理沙にぜひとも女の子らしい格好をさせてやってください!
ねぇ?(さらににじり寄り
二組とも甘いっ!
ナズとは旨い酒が飲めそうだ
サクラ対戦のアイリスになりました
いやあ、ナズナズかわいい。
誰も彼も本当に可愛くて、面白かったです!