Coolier - 新生・東方創想話

触らぬ神に…

2011/08/30 02:14:55
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「ふう、ちょっと休憩」

ここは妖怪の山。
厄神、鍵山雛はそう言って木陰に座り込んだ。

「まあまあ集まったってところね」

幻想郷中から厄を集めてまわるのが雛のおつとめである。
今日も数刻集めて回って、一休み。
すると

「ん?何かしら?」

がさがさ、と近くの茂みから音がした。何かいる。
山の動物か、妖怪か、ひょっとして迷い人か。

「何が出てくるのかな~」

興味津々に茂みの方を見ていると

「うらめしや~!」
「え?」

紫の傘を持った少女が大声をあげて出てきた。
しかし、何なのだろう。裏飯屋?お腹でもすいたのだろうか。

「あれ…?びっくりしないの…?」

少女は左右色違いの瞳でじっと見つめてくる。
どうやら驚いてほしかったらしい。うらめしや…ああ、そういう事か。
そんなことを考えながら

「全然」
「うぐっ」

首を横に振る雛の返答に、ショックを受けたようだ。

「う、うらめしや~!」

半泣きでもう一度叫ぶ。ヤケクソであるが、全く意味が無い。
そもそも一回目の時点で、茂みに隠れていることがバレているのだからしょうがない。

「え~っと…」

どう対応すればいいのか、雛が困っていると

「あー!小傘さん!」
「げ!早苗!?」

早苗と呼ばれた少女が向こうの方から走ってくる。
あ、頂上の神社の…雛がそんなことを考えていると、こっちまでやってきて

「茄子みたいな傘がいると思ったら、何やってんですか小傘さん…!」
「うわ!?ざ、ざなえ…ぐ、ぐるじ…」

早苗が、小傘と呼ばれた少女に怒気のこもった声で熱い抱擁。(締め技ともいう)
やりすぎると死ぬかもしれないが、この一方的な抱擁はしばらく続いた。

「はあ…苦しかった…」
「で、何してたんです?」

ようやく解放されてほっとする小傘。そんな小傘を早苗はじっと睨む。

「この人間を驚かそうとしてて」
「この人間って…」

小傘が雛の方を指差すと、早苗は呆れて

「神様相手に何失礼なことしてるんですか!あと指差すな!」
「へ?ってぎゃああ…」

もう一度熱い抱擁。さっきより力が入ってるかもしれない。

「え、えーっと…つまり、どういうことかしら?」

そんな二人のやり取りに呆然とする雛。

「あ、も、申し訳ありません!ほら、小傘さんも謝りなさい!」
「うぐぐ…ご、ごめんなさい…」

はっと我に返った早苗は、抱擁を解いて雛に頭を下げる。さらに小傘の頭を押し込んで頭を下げさせる。

「この妖怪は人を驚かしてお腹を満たすので、あなたを人間と勘違いして驚かそうとしたみたいです。大変失礼しました!」
「べ、別にいいのよ。害があったわけじゃないし、驚かなかったし」
「がんっ!」

頭を下げながら説明する早苗、それを必死にフォローする雛。
そのフォローは、小傘にとってはダメージになるわけであるが。

「まったく、神様を人間と間違えるなんて…神社に来なさい!お説教です!」
「えー!?」

早苗が小傘を引っ張っていこうとしたとき

―ぷちっ

「え?きゃ!?」
「きゃあ!?」

突然早苗の草履の鼻緒が切れて、ばたっと転んでしまった。小傘も引っ張られて一緒に転んだ。

「ああ!わたしが厄の神様だから厄が移っちゃったのね!ごめんなさい、すぐ回収するわ」

慌てて雛はしゃがみ込んで、二人にまとわりつく厄を集める。

「お、お願いします。いたた…」
「もう!わちきまで巻き込まないでよ!」
「ふ、不可抗力ですよ!それとキャラづくりやめてください」
「な、何をー!」
「何ですか!」

やいのやいの騒ぐ二人の様子に、雛は厄を集めながらふふっと笑って

「あなたたちって仲がいい友達なのね」
「「友達ぃ!?」」

二人はそろって声をあげた。

「違うよ!早苗は永遠の好敵手だよ!」
「違います!小傘さんは永遠の三下です!」

少し顔を赤くして、息ぴったりに答える。そしてまた、う~っと睨みあう。
そんな微笑ましい光景にまたふふっと笑って

「はい、厄は取り終わったわ。もう大丈夫よ」
「あ、ありがとうございます。では失礼します。ほら行きますよ小傘さん!お説教です!」
「うーやっぱりお説教かあ…あ、じゃあね!さっきはごめんなさい」
「神様に向かって馴れ馴れしいですよ!」
「べ、別にいいじゃない!わちきの勝手でしょ!」
「だからキャラをつくるな~!」

またわいわい言いあいながら二人は歩いて行った。
やっぱり仲がいいじゃないか、お互い素直じゃないな。雛はそんなことを思いながら

「じゃあね~気を付けてね~」

手を振って二人を見送った。
二人が見えなくなると、ふうっと空を仰いで

「それにしても…」










「ねえにとり、わたしって神様っぽくないのかな?」
「どうしたの突然?」

厄を集め終わった黄昏時、雛はにとりの家に遊びに来た。厄を集める日はいつもそうしている。場合によっては泊っていく。以前雛が、まるで通い妻ね、と言ったらにとりはすごく照れた。
ともあれ、そこで今日あったことを話した。
小傘という妖怪に、人間と間違われて驚かそうとされた。驚かなかったけど。

「ぶっ、あはははははは!」

雛の話を聞くや否や、にとりは大声で笑った。

「わ、笑わないでよ」
「だ、だって…神様なのに…人間とまち…あはははははは!」

笑いを堪えようとするが堪え切れず、思わず笑ってしまう。
そんなにとりの様子を見て、雛は少しむすっとした。

「確かに、にとりと一緒にいて神様っぽい扱いをされたことなんてないけど」
「ははははは……ふぅ、じゃあ何~?雛はわたしに崇められたいの~?」
「そ、そんなことないわよ!」

ようやく笑いをおさえこんで、にとりはいじわるそうにニヤッとわらって聞いた。雛は首をぶんぶん振って強く否定する。
いつもどんな時も何をしていても、にとりは親しく接してくれる。崇められるなんてよそよそしいのは嫌だ。ただ…

「ただ、ひと目見て神かどうか分からないっていうのは、何かこう、威厳がなぁ~」
「でも早苗はすぐに神様って分かったんでしょ?」

それは確かにそうである。そうであるのだが、
早苗は守矢神社の風祝、いつも神様と一緒にいるのだから、分かって当然だろう。
その旨をにとりに言うと

「なるほどね。でも威厳か~…なら二つ名でも決めて箔をつけてみる?それで文に頼んでその二つ名を広めてもらうとか」
「二つ名…」

雛はう~ん、と考え込んで

「二つ名とは違うかもしれないけど『触らぬ神に祟りなし』って言葉、知ってる?」
「下手に関わらない方が身のためって言葉だよね?」
「そうね。神は強い力をもっているから、触れると大きな禍を招くかもしれない。神はきまぐれ、人間の味方をするかもしれないし、しないかもしれない。ならば関わるな。そんな教訓からでた人間たちの格言ね」
「でもそれがどういう関係があるの?」

首をかしげてにとりは尋ねた。盟友たちの格言が何かヒントになるのだろうか。

「わたしは厄を集める神だから、そういう意味では人間の味方。でも近づくと厄が移るから、そういう意味では味方じゃない。なんかぴったりかな~って思って」
「なるほど…」
「例えば『触らぬ雛に厄はなし』とか、畏れおおいって感じで」
「う~ん…」

ちょっと安直すぎるかもしれないが、いい線いってるだろう。雛はそう考えていたが、それにひきかえ、にとりの反応は芳しくない。

「どうかな?」
「いいとは思うんだけど、ちょっと引っかかる所がな~」

やっぱり何か気にかかるところがあるらしい。
「何が引っかかるの?」
「『触らぬ雛に厄はなし』ってことは、雛に触れちゃいけませんってことだよね?」
「そうなるわね」
「…じゃあ、これも駄目?」
「!!?」

そう言うと、にとりは雛の方へ体を寄せて、抱きついた。
なるほど確かに「触らぬ雛」にこんなことはできない。
雛はというと、突然の大胆行動に顔を真っ赤にしてしまった。

「そ、そうね!こういうのが出来なくなったら困るから『触らぬ雛』っていうのは駄目ね!」

思わず早口になってしまう。

「じゃあどうする?」

抱きついたまま、にとりは雛に尋ねる。
身長は雛の方が頭一個分高い。見上げる形で雛の顔をまじまじと見つめる。
碧い両目に見つめられて、雛のボルテージはぐんぐん上がる。

「そ、そうね、考えても埒が明かないから、もうやめにしましょう」
「それでいいの?」
「ええ!」

そう、神様としての威厳なんてもういい。今目の前ににとりがいて、ぎゅっと抱きしめてくれる。それだけで十分だ。
これ以上何かを望めば、欲張りすぎで罰が当たるかもしれない。
そんなことより…

「ねえ、もう暗いし、今日にとりの家に泊っていってもいい?」
「あ、いつのまにか外暗くなってるね。いいよ~」

気付けば日が落ちて、外は薄暗い。しかしそれは建前にすぎない。
にとりに抱きつかれて気持ちの昂った雛にとって、このまま帰るなんてありえない、あってはならない。「場合によっては泊っていく」のである。今がその場合だ!

「ふふふ♪」
「何か雛、うれしそうだね」
「ええ、とっても♪」

雛も片手をにとりの背中にまわし、もう一方の手で頭を撫でる。
「触らぬ雛」の心と体に触れたにとり。果たしてそこから出てくるのは祟りか、厄か、それとも…

「雛がうれしそうに笑ってると、何だかこっちも楽しくなってくる♪」
「あらそう、うふふ♪」

とりあえず、二人は満面の笑顔だった。
にと雛が好きです。こがさなも好きです。
この二つの組み合わせって共通点ありますよね。髪の色的な意味で。どうでもいいですね。
ちなみに同じような髪の色の組み合わせで好きなのがもう一つあります。もっとどうでもいいですね。

では、読んでくださってありがとうございました。

追記
ご評価、コメントありがとうございます。

どんな予想が出るのだろう、と思ってもう一つの青と緑の組み合わせは伏せてみましたが、わたしは大チルが好きです。たしか、一番最初に好きになった組み合わせです。しょっぱなから言い当てられていたので思わず笑ってしまいました。割とメジャーだからでしょうね。

コメントを読んでいますと、色々な組み合わせがあるんだなあと感じました。みなさんの好きな組み合わせがいろんな形で出てくると、それはきっと楽しいだろうなと思います。わたし自身、他の方々のすばらしい作品の影響を受けて好きになった組み合わせばかりですし。
One’s Justice!
トローロン
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コメント



0.860簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
大チルですね、わかります
6.90奇声を発する程度の能力削除
ああ確かに大チルだ…
甘くて良かったです
8.100名前が無い程度の能力削除
良いね

リグチル…
10.100名前が無い程度の能力削除
流行れ
12.100名前が無い程度の能力削除
適度な甘さ
13.90名前が無い程度の能力削除
幽チルだろjk…

にと雛はいいものですね
17.100名前が無い程度の能力削除
ええい。真面目に話していると思ったらイチャイチャと…けしからん、もっとやってください!
実際のところ、人と神を外見で見分けるポイントって何なんでしょうね?
19.100名前が無い程度の能力削除
俺はいつか雛傘を書くんだ……
20.90名前が無い程度の能力削除
こがさn…ああいや、さなレミか。コアなカップルを選びますねぇ
22.70とーなす削除
箔がつく二つ名……えんがちょマスt(ry
良いいちゃいちゃっぷりでした。ごちそうさま。
25.100Admiral削除
にと雛のほのぼの感が良かったです