Coolier - 新生・東方創想話

紅く満たされてゆく月

2011/08/28 00:12:21
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私は紅茶がカップに注がれていくのを見るのが好きだ。
瀟洒なメイドが綺麗な手でカップを満たしていくのが。

「お嬢様、おやつでございます」
咲夜が午後九時のこの時間帯、いつも発する言葉。
正確には昼夜逆転で午前3時な為、言葉の由来のやつどきではないのだが別にどうでもいい。
「ああ、今日も時間を止めないで、注いで」
「かしこまりました」
そして、私はいつも注ぐとき時間を止めぬよう命じる。
この時をとめる力をもつメイドは放っておけばすべての準備を時間を止めて行ってしまう。
私は、カップに紅茶が注がれる瞬間だけは見ていたいが為にこう命令するのだ。

カップに紅茶、もとい人間の血が注がれてゆく。
紅い液体がカップを満たす様は、月が満ちていくのによく似ている。
だからこそ、好きなのだ。
月は人を狂わせる。そして吸血鬼である私自身も、狂ったように満ちた月が好きだ。
本来月は紅くない。しかし、自身が起こしたあの異変の時だけは霧により血の色に染まった。
その時、一瞬だけあろうことか月に見とれた。この、私ともあろうものが。
月は人を狂わせる、とはよくいったもので咲夜がみれば瞬時に狂ったであろうその狂気に満ちた月は、
私をも軽く狂わせ、そして月自身も狂おしいほどの美しさを放っていた。

「……お嬢様?」
レミリアは咲夜の声で我に返った。
見ればカップには既に紅茶が注がれており、
その他クッキーの類も私が食べるにふさわしい状態になっている。
「あ、ああ。……咲夜、あなたは月は……好きかしら?」
とても賢いのに、私が紅茶を淹れるところを好く理由は分からない従者にといかける。
「……好きで、ございます。あなた様が好きならば」
予想通りの、主至上主義の言葉。
その言葉にゲンナリしながらも、レミリアは満たされた月を削るかの如くカップの紅茶に口をつけた。

この従者は、どこぞの月の兎と同じように赤い目をもっている。
それも、狂気にあてられたかのように。
しかし、普段は碧眼。
なぜ、月の民のように赤い目になるのか。
普段とは目の色が変わることがあるのか。
それを今のレミリアが知る術はない。
しかし、この瀟洒な従者が何者であるかなど彼女には関係なかった。
ただ、側にいて、明日も同じようにカップを紅い液体で満たしてくれればよい。
そう、レミリアは想うのだった。

fin
こんばんははじめましていろはです。
皆様の作品を読んでいたらみなぎってきたのでつい投稿を

誤字、脱字、指摘点などありましたら言ってやって下さい。
いろは
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コメント



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8.70ほっしー削除
ワンシーンだとなんか寂しいなぁなんて思っちゃうんですけど。
レミリアの咲夜に対する疑問点がなんとなく分かる気がしました。
17.無評価いろは削除
>>ほっしーさん
ワンシーンだけじゃなくもっと話をふくらませられたらいいなと常々思っております。
緋想天などで気になったりするのでレミリアに思わせてみました。