今日は宴会の日だ。
とは言っても今回の宴会はいつもの博麗神社ではなく
最近妖怪の山に引っ越してきた守矢神社で開かれることになっている。
本来、妖怪の山は人間の立ち入りを禁ずることになっているのだが
神奈子や天狗たちとの交渉の甲斐もあって宴会や祭り行事のときの出入りは自由になっていた。
夕方の魔法の森、マーガトロイド邸
「おーい!アリスー!そろそろ行けるか?」
「ごめん!もうちょっと待ってて~!」
玄関先で迎えに行く予定だったアリスに呼びかけると
いつもの気取ったしゃべり方とは違うかなりラフな返事が返ってきた。
「おまたせ。」
「待ちくたびれたぜ。」
私たちは、はたから見たら犬猿の仲だとか言われがちだけど
実は割と仲がいい。
最初は異変解決を目的として一緒に行動していることが多かっただけだった。
その後の付き合いで意気投合できる部分も多くあったこともあり
弾幕ごっこなどはするものの、無意味な衝突はあまりしなくなった。
それどころか最近ではプライベートで一緒に出掛ける機会も増えたり
家に遊びに行った時のお茶菓子のグレードがアップしていたりと
前よりも確実にいい関係にはなっていると思う。
少なくとも私の中では……。
「さ、出発するか。」
「あ、待って。」
アリスに呼び止められる。
「後ろ向いて」
「なんだ?」
ふぁさっと首に何かをかけられた。
「ケープ?」
それは水色のかわいらしいケープだった。
「ええ。この季節山の上は寒いでしょ?」
もう秋も終わりに差し掛かっていたこともあり夜になると確かに冷える。
「私のために?」
「手作りよ。感謝なさい。」
首の周りがあったかい。
でもそれ以上に顔が熱くて、きっと真っ赤になっているということが自分でもわかった。
「どうしたの?」
「な……なんでもないぜ!……その……ありがとな」
帽子を目深にかぶり、表情を見えないように礼を言った。
「ふふふ。どういたしまして。」
嬉しくてどうしようもないのがアリスには筒抜けだったのかもしれない。
「じゃ、じゃあそろそろ行くぞ。」
「あ、魔理沙!」
「今度はなんだよ?」
「よいしょっと……」
アリスは私の箒の後ろの方に横座りし
自分の腕を私のお腹の辺りに回した。
あれ?これって二人乗り?
「あ……アリス!?」
「さ、行きましょ。」
抱きしめられている感覚がとても心地良くて
うまくコントロールできるかわからなかった。
でも途中で事故ったら洒落にならない。
気を入れなきゃ
「ああ、しっかりつかまってろよ。」
そのまま私たちは夕暮れの空に飛び立った。
「おっす!遅くなったな!」
「あ、いらっしゃい魔理沙さん、アリスさん。」
「遅いわよ。」
神社に着くと早苗がお酒やら料理やらを運んでいる真っ最中だった。
霊夢はというと早く着いたのが裏目に出てしまい早苗のお手伝いをさせられているようだ
紫はうまいこと逃げたらしい。
「悪い悪い。ちょっと取り込んでてな」
「こんばんわ。」
「よく来てくれたね。」
「幹事なんだから当然だぜ。」
「そうかい。まぁ楽しんでってよ」
神社の主である二柱をはじめ、出席している妖怪たちにあいさつして回った。
もう既に飲み始めている物も何人かいて、そこら中で乾杯の声が上がっていた。
「あんたたちも飲みなさいよ。」
仕事が一段落したのか霊夢と早苗が私とアリスの近くにきて場所をとった。
「勿論そのつもりだぜ。な、アリス」
「ええ。」
少し遅れたが四人で乾杯を交わし私たちの宴会がスタートした。
---------------------------それから数分して--------------------------------------
「ねえ魔理沙さん?」
「なんだ?」
「アリスさんとはどこまで進んでるんですか?」
「ぶふぉっ!」
焼酎吹いた。
何を言い出すんだこの巫女は!?
「霊夢さんから聞きましたよ。二人とも付き合ってるって」
私は霊夢の方をきっと睨みつける。
「私間違ったこと言ってないし。」
まったく悪びれる様子のない霊夢。
いやいや、話が飛躍し過ぎだろ!?
肝心のアリスは別の席に移動して天狗やら鬼やらに絡まれている真っ最中だった。
アイツあんなに飲まされて大丈夫か……?
ある意味、今されている質問よりもそっちの方が気になって仕方がない。
「まぁまぁ。私たちの仲なんですし。この際隠し事は無しってことで」
あれ?早苗とはまだ付き合いが浅いはずなんだけどなぁ…
っていうかコイツってこんなキャラだったっけ?
初めて話した頃はもっともう……真面目そうな……。
「今時の女の子なら誰だって気になることよ。」
「さっすが霊夢さん。話がわっかる~!」
あれ?いつの間にやら味方がいない。
というか、霊夢に今時の女の子っていう表現を使われたのがすごく引っかかる。
「今ならアリスさんいませんし。ね?」
「あのなぁ……」
周りを見渡すとさっきまでアリスにお酒を注いでいた天狗二人が
こちらに聞き耳を立てていた。
これ以上変な噂を立てられても迷惑だ。
それに、これがきっかけでアリスと会いづらくなるのはもっと嫌だ。
だから私はみんなの前で否定しようとしていた。
だが……
「私と魔理沙はそんな関係じゃないわ。」
アリスの放った言葉に場が騒然とする。
酔っているとかそういう雰囲気ではない。素面の表情。
「え……とアリスさん?それはどういう事ですか。」
早苗が食いついてくる。
「言葉の通りよ。」
はっきりと断言された。
拒絶。
そう、私とアリスはそんな関係じゃない。
そんな関係じゃないんだ……
そう自分に何度も何度も言い聞かせる。
そう……わかっていたことなのに……なぜか涙が止まらなくて
「私達二人はね」
そのままアリスは続ける。
大丈夫。何を言われたって傷つかない。わかってるんだから。
もうなにも怖くない
そう覚悟を決めた瞬間。
私の体を温かさが包み込む。
周りがざわめく
「あ……ありす」
私はアリスに正面から抱きしめられていた。
大勢の人妖達が私たちを注目している中
アリスはよく通るきれいな声で宣言した
「新婚さんよ」
なにかを考える間もなく
唇にとても柔らかい感触が伝わってきた。
周囲に歓声やら囃し立てるような声が上がっていたような気がしたが
今の私にはまったく気にならなかった。
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一時の騒ぎが収まって、私と魔理沙は縁側で休憩を取っていた。
「アリスさん。水です。」
「ありがとう。早苗。」
あれから乾杯攻めにされてダウンしてしまった魔理沙に水をすすめる。
「ほら、魔理沙。水よ」
「あ……ああ……」
私の膝の上で横になっている魔理沙の口に水の入ったグラスを近づけてあげると
こくこくとそれを飲み始めた。
その姿が愛らしくて自然と魔理沙の頭を撫でていた。
「また、何かあったら呼んでください。」
「こめんなさいね。迷惑かけて。」
「ぜんぜん構わないですよ。いいもの見れましたし!」
もの凄いイイ笑顔を見せる早苗。
「幻想郷では常識にとらわれてはいけないんですね!」
「うん……まぁ間違ってはないと思うけど」
そんなに自分の行動が常識外れだったのかと少し悩んでしまう。
確かに酔ったふりをして「初キス」なんてさすがにどうかしていたかもしれない。
これがきっかけで魔理沙に嫌われてしまったらどうしよう……。
少し落ち着いたせいかぐっすり眠っている魔理沙を見て
勢いに身を任せた行動に少し後悔した。
「魔理沙……ごめんね。」
「…………………ぜ」
「えっ」
聞き取れるかどうかわからない程小さい声。でも確かに聞こえた
「うれしかったぜ」と
未だ騒がしい境内から少し離れてたこの場所。
二人きりになったこの空間で
私たちはもう一度キスをした。
コメントもそうだけど
公式までレズ設定を持ち込みたいという考えが怖い
魔理沙アリス共々お幸せにね!
それにしてもこの緑茶甘いな。