注意:大崩壊紅魔館
「美鈴は一体何の妖怪なのかしら?」
日傘をさしたレミリアが美鈴の前に降り立ったのは昼過ぎの事。
彼女は出迎えた美鈴に開口一番にそう告げたのだ。
「急にどうしたんですか?」
「ああ、考えてみれば聞いたことが無かったと思ってね」
美鈴は妖怪である。だが何の妖怪であるのかは誰も知らなかった。
レミリアは周りも気にしなかったしそれでいいと思っていた。
種族うんぬんで差別するなど小さい事はするつもりも無かった。
「ふむ……」
「教えてくれない?」
だがふと、就寝前に棺桶の中で考え事をしていたら気になったとレミリアは告げる。
やましい気持などは特にはない。突き動かすは純然たる好奇心。
「……う~ん」
そんな主人に美鈴は眉を寄せしばし悩む様子を見せる。
「分かりました、内緒ですよ」
「ああ、血の盟約に従って秘密は守ろう」
答えに応じて美鈴は、それから周りを確認して誰も居ない事を確認するとレミリアに耳打ちする。
「実は私……」
美鈴の声に緊張が滲んでいた。
思わずレミリアが身構える。
「実は……」
「ええ……」
「烏龍茶の妖怪なんです」
「なるほ……え?」
きょとんとするレミリアに照れたように美鈴が顔を逸らす。
しばしの沈黙。困った様に固まるレミリアともじもじする美鈴の間をぬるい風が吹き抜けていく。
それからぼそぼそと呟くように美鈴が言葉を発した。
「……その、どうですか?」
「いや、どうですかと聞かれても、そもそも私をたばかってるんじゃ……」
「何をおっしゃいますか!」
先ほどの羞恥はどこへやら声に僅かに怒りを滲ませて美鈴が静かに抗議する。
「私は由緒正しい烏龍茶の妖怪です、こればかりは誰にも否定させません!」
「由緒正しいんだ……と言うか、証拠とかあるのかしら?」
突然の美鈴の怒りに少々戸惑いながらもレミリアが疑問を返す。
すると今度は再び顔を赤らめて美鈴が俯いてしまう。
どうやらまた恥ずかしいらしい。せわしないなとレミリアが思う。
「見たいんですか?」
「ええ、できれば……」
「……お嬢様のエッチ」
「え、エッチなのか!?」
「此方へ……」
釣られて顔を赤くするレミリアを美鈴は誰も見えない門扉の裏へと連れて行く。
「では……」
「ああ」
もはやゆでダコ状態になった美鈴を前にレミリアもドキドキしながら頷く。
いったい何なのかと疑問を持つが考えても答えは出ない。
そうこうするうちに美鈴が瞳を閉じて両手を胸元で合わせる。
「はぁぁ」
呼気が漏れて先ほどとは違った固い空気が辺りにに立ち込めた。
「破ァ!」
そして見守るレミリアの前で美鈴がひときわ眩しい光を放ちそして……
思わずつぶった目を開いたレミリアの前には何も無い。
「美鈴?」
返事はない。美鈴の気配もない。
何処に行ったのかとレミリアが辺りを見回すとそれが目に入る。
それは長方形をしていた。
上に行くほどに細まって飲みやすいように口が付いていた。
「ペットボトル?」
「はい、そうですお嬢様」
いかな原理か目の前のペットボトルから美鈴の声がした。
「これが貴方の正体?」
「はい、真の姿をさらすのは少々恥ずかしいですが……」
ペットボトルの中身は琥珀色の液体で満たされている。
どうもそのまま烏龍茶なのであろう。
レミリアはつかつかとそれに近づくとその手にとって見つめた。
見つめられると恥ずかしいですと言う美鈴の言葉を無視してそのキャップに手を掛ける。
「お嬢様!?」
途端に美鈴の声色が変わった。
「や、まさか」
緊張、怯え、そんなたぐいの声色。
レミリアは構わずにキャップを開けるとそのまま飲み口に口を付ける。
「あ……」
「んぐんぐ」
「らめぇ、のんじゃらめぇぇぇ!?」
美鈴の悲鳴とレミリアの喉の鳴る音。
半分ほど中身を空けてレミリアは一息つくと判断する。
「まごう事無く烏龍茶だわ」
程良い苦みとコク、喉を伝うまろやかさ。
最上級と言ってよい出来の烏龍茶であった。
「ごちそうさま、美鈴」
それからキャップを閉めてペットボトルを地面へと置く。
しばらくまっても返事が無くてレミリアは首を傾げた。
ああそういえばなんか悲鳴を上げて居た様な気がすると今更ながらにレミリアは思い出す。
「美鈴、あの、大丈夫?」
声をかけても反応が無い。まさか、飲んだことで死んでしまったのでは眉をひそめる。
どうしようかとレミリアが困惑しているとペットボトルが再び光を放つ。
「ああ、大丈夫だったのか、良かった」
どうやら生きていたようだと胸をなでおろすレミリアの目に映ったのは……
「ひどいですよぅ」
座り込み涙を流す美鈴だった。
しかも小さい。外見幼児であるレミリアよりも小さかった。
いわゆるちめーりんであった。
「随分可愛くなったわね」
「可愛くじゃないですよ~、どうしてくれるんですか!」
ぐずぐずと泣きながらちめーりんは抗議の声を上げる。
「いきなり飲むなんて、酷すぎますよ。
私汚れちゃったじゃないですか、この人でなし!」
まあ確かに人ではないが……
ともあれそれほどいけない事だったのかとレミリアは少しすまない気持ちになる。
だがそれでも主人に対して随分な言い様だと思ったが可愛いので許す事にした。
「こうなったら元に戻るの大変なんですよ」
「どうすればいいのかしら?」
確かにあの外見大人なスタイル抜群の美鈴がこうなってしまったのだ。
元に戻るにはそれなりに困難な条件があるのだろう。
まさか烏龍茶を継ぎ足せばいいなどと簡単な条件ではあるまい。
「烏龍茶を補充しなくちゃいけないんです」
そのまさかだったとレミリアは溜息を吐いた。
「簡単じゃない」
「この幻想郷で烏龍茶なんて何処で手に入るというのですか」
「ああ、分かった分かった、なんとか調達してみよう、だから泣きやんでくれ」
「ふぁい」
涙滲む目をごしごしと擦りながらちめーりんが立ち上がる。
「烏龍茶、冷蔵庫にあったかなぁ。あるいはパックとか……」
レミリアはそんなちめーりんの手を引いて、とりあえず食堂へ行こうかと紅魔館へと歩を進めた。
「お姉さま、何その子」
「美鈴よ」
レミリアが手を引く幼子を見つけてフランドールが飛んでくる。
紅魔館の赤い絨毯にふわりと着地した。
「んー」
フランドールが怪訝な表情でちめーりんを観察する。
ちめーりんは気弱な表情でレミリアの背に隠れる様に移動した。
「確かに美鈴みたいね」
「ええ」
「どうしてこうなったの?」
「それは……」
言っても良い物かレミリアが迷う様子を見せる。
そんな姉に対してフランドールはなんてね、とおどけて見せた。
「飲んじゃったんでしょ、美鈴の中身」
「!?」
驚くレミリア達にフランドールはあっけらかんと言った。
「知ってるよ、美鈴の正体。烏龍茶の妖怪なんでしょう?」
「な、なんで知ってるのよ」
「それはね……」
フランドールは唇に人差し指を当てて、妖しく微笑んだ。
「美鈴があまりにもエロかったから、夜中に部屋に忍び込んだの。
寝てる美鈴が起きない様に睡眠の魔法をかけてね、それから……」
得意げに語られる内容。
「○○○○を××ってね△△△を□□□ってそれから私の○○○を×××で……」
レミリアが顔を歪めて、ちめーりんが涙目でその服を掴む。
ニヤニヤ笑いながらフランドールが事細かに色々語って……。
「んで、ぐったりした美鈴が突然光って、ペットボトルになっちゃったのよ。
私確信したわ、これが美鈴の正体なんだってね、当然味見したけど苦かったし一口でやめたけどね」
「そ、そう」
もう俯いてぷるぷる震えているちめーりんを抱きしめながらレミリアが顔をひきつらせる。
「でもそんな美鈴になるんだったら飲んどけばよかったかな」
にぃぃとフランドールが無邪気に笑う。
「ねえ、美鈴。いまから私の部屋に来ない?一緒に遊ぼうよ」
「いや、今から美鈴を元に戻すから遊んでられないの。元に戻ったらにしなさい」
「うん、まあ仕方ないか」
さりとて興味をなくしたのかそんな事を言いながらフランドールがふよふよと去っていく。
「あの、今度美鈴の部屋にはパチェに言って結界張ってもらうからね」
とりあえず呟くレミリアにちめーりんはがくがくと頷いた。
「無いわね」
冷蔵庫や戸棚を漁ったレミリアがややがっくりした様子で呟いた。
洋風の紅魔館には紅茶やコーヒーはあれど烏龍茶はなかったのだ。
「さてどうしたものか」
レミリアは後ろでぷるぷるしているちめーりんに視線を送る。
美鈴がこうなったのは自分のせいでもあるのだ。直す責任がある。
「どうかなされましたか?」
ふと声に振り向くとそこにはメイド長が立っていた。
「ああ、咲夜」
完全で瀟洒の二つ名を持つレミリアの忠実な僕。
「丁度良かったわ、烏龍茶を用意しなさい」
「はい」
了承の二つ返事にレミリアは満足する様に頷いた。
考えてみれば最初から咲夜に頼んでおけばよかったのだ。
人間でありながら誰よりも優秀な彼女。
どんな無理難題も顔色一つ変えずに達成してしまう能力にレミリアは全幅の信頼を置いていた。
「どうぞ」
そして咲夜もそれに応える様に琥珀色の液体で満たされたガラスのティーポットを既に手にしているのだ。
レミリアは笑顔でそれを受け取ると、ちめーりんへと手渡す。
それを受け取るとちめーりんは嬉しそうにんぐんぐと飲み干し始めた。
「それにしても良く烏龍茶なんて用意出来たわね」
「こんなこともあろうかと用意していたのですわ」
「こんなこともあろうかと?」
「はい」
顔色一つ変えない咲夜の視線は夢中で烏龍茶を飲んでいるちめーりんに向けられている。
「まるで美鈴がこうなる事が分かっていたみたいじゃないか」
「ええ、分かっておりました。美鈴は烏龍茶の妖怪なのでしょう?」
あっけらかんとした答えにレミリアはさして驚きもしなかった。
「フランに聞いたのね?」
「妹様に、ですか?いいえ」
「ならばどうして美鈴の正体が烏龍茶だと……」
「はい、それならば……」
澄ましたまま咲夜は平然と答える。
「美鈴があまりにもエロかったので、夜中に部屋に……」
「お前もかぁ!?」
ガシャン、と音がした。
レミリアが振り向くとティーポットを落としたちめーりんが蒼白でぷるぷると震えている。
「それにしても美鈴は可愛いですね。私の部屋に来ませんか?むしろ来なさい」
「命令口調!?」
「お嬢様とはいえ邪魔をなさるのならば仕方ありません、二人で楽しみましょう」
澄まし顔で咲夜がそんな事を呟いた。
涙目で服の裾を掴むちめーりんを庇うようにレミリアが前に出る。
変態だ!とレミリアは思う。
妹も従者も自分が知らないだけで変態だったと言う事実が重くのしかかる。
「お嬢様も此方に来てしまえばよいのですわ」
「絶対にごめんだ!」
そんな事を言う従者からじりじりと距離をとる。
出口まで数歩、能力を使われても対抗できるようにさりげなく体を霧化させて結界もどきを張る。
廊下に出てしまえば一直線に飛んで逃げる事が出来る。
如何に咲夜とて、能力を防がれた上ならば吸血鬼に追いつくことはできない。
「おねーさま、美鈴。考えたんだけどね三人で遊べばいいと……」
だが目論見はフランドールが出口から現れた事で打ち砕かれた。
周りを見回して彼女は首を傾げて、それからにぃぃっと無邪気に笑う。
「四人で遊ぶ?」
「違うでしょ!」
思わず叫んでレミリアは二人からじりじりと距離をとる。
背には壁。ちめーりんがぎゅうっとしがみ付いてくる。
負ける訳にはいかないとレミリアは体に力をためる。
「美鈴、まだ体は戻らない?」
「……烏龍茶の成分がしみこむまであと数時間は……」
「そう」
美鈴の戦線復帰は期待できない。
ならば壁をぶち破って逃げるしかないとそう考えて。
「レミィ」
救いの主の声がした。
見やると食堂出口に魔女が佇んでいた。
「パチェ!」
レミリアの親友のパチュリー・ノーレッジだ。
いつもは淡白で弱々しい彼女がとても力強く見えた。
二人は見つめ合う。それだけでお互いの意思を確認する。
「任せて、理解したわ」
「ああ、頼む」
「5Pなのね!」
「違うわ!!」
確認できてなかった。
レミリアの叫びにパチュリーが戸惑う様に声を揺らした。
「え、レミィに正体を訪ねられた美鈴が烏龍茶の本性を顕わしたら半分中身を飲まれて直すために
食堂に向かう途中にフランに正体を知っている事を知らされて、食堂で探したら見つからなくて
咲夜に頼んだら烏龍茶を用意してくれてうまくいって皆でにゃんにゃんして大団円じゃないのかしら?」
「随分詳しいなおい!」
パチュリーは頬を赤らめるとはにかんだ。
「ずっとレミィを遠見の魔法で見ていたもの」
「きもっ!?」
「そんなに褒めないで」
「褒めてない、と言うか……ならばわかるでしょう」
「ええ、もちろんよ!私も混ぜてもらおうと思って急いでやってきたのよ!」
「もう嫌だこの紅魔館」
レミリアは振り向きざまに紅い槍を形成して壁をぶちぬくとちめーりんを連れてそこへ身を躍らせた。
そのまま振り向かず背後に牽制の誘導蝙蝠弾を放つとわき目も振らずに外に向けて地を蹴った。
脱出までの道は長い、でも諦める気はなかった、なぜなら……
私はようやくのぼりはじめたばかりだからな、この果てしなくとおい脱出坂をよ……
-未完-
変態だー!
なにこの紅魔館こわい
それはそうと美鈴印?の烏龍茶って何処で買えますか?
それともレミリャ母さんとちめーりん愛の逃避行になるのか
問題はそれからだ
美鈴スレから烏龍茶ネタを持って来たという事は次は母乳ネタですね。わかります
そして変態しかいない…
もうやだこの紅魔館
さて、烏龍茶のペットボトルを買ってこよう。
まぁ……その、何て言うのかな
めーりんがエロいのがいけないんだよな、うん
ぶふぁっwww深夜にwwwくそwwwwww