Coolier - 新生・東方創想話

博麗霊夢争奪野球大会「紅魔館スカーレッツ」対「魔法の森ゲットバッカーズ」 第弐話「早苗、マネる」

2011/07/17 03:02:59
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「わたくし実況は射命丸文、そして解説は霧雨魔理沙さんでお送りしておりますこの月夜の一戦は、紅魔館スカーレッツと魔法の森ゲットバッカーズの対決です」

「一回の表裏を終わりました。ここまでの得点は2対0,ホームチームの紅魔館が2点をリードしています」
「初回いきなり得点が入りましたが、ここまでの試合展開をどうご覧になりますか? 解説の魔理沙さん」
「まあ、紅魔館の上位打線は技術有りパワーありの曲者揃いだからな。先制したのは驚かないな。魔法の森の先発はアリスだけど、なんか力が入りすぎてる感じだな。ま、早く立ち直っていつものクールさを見せてほしいところだな」

「さて、ここで他球場の途中経過をお知らせします」
「ここ以外にもまだどっかでやってたのかよ!」
「QJK(旧地獄)オリンフィールドで行われておりました、地霊殿さとりんず対聖輦船野球部の試合ですが、0対0で迎えた4回裏に気温が70度を超えたために試合が継続不能になりました。灼熱のためノーゲームとなっています」
「灼熱地獄のすぐ近くに球場があるってウワサは本当だったのかよ……」

「なお、この試合で3回裏に1アウト満塁からお空のレフト前ヒットかと思われる打球をワンバウンドで捕球した聖輦船のレフト聖白蓮が、なんとセカンドに超人的な送球でセカンドフォースアウト、ベースカバーに入ったショートナズーリンからファーストの寅丸星とボールが渡りました。お空はヒットを確信してのろのろ歩いておりましたところ、これが1塁フォースアウトとなって結局無得点。非常に非常に珍しい、レフト前ゴロによる7-6-3のゲッツーが完成しております!」
「いやー。ノーゲームとなったのが勿体ないですが、凄いプレーがでたようですね。魔理沙さん」
「いろんな意味で『お前達何やってるんだよ』とツッコみを入れざるをえないな。まったく」

「2回の表、先制した紅魔館のメンバーが守備につきます。先制のスクイズを決めた咲夜、追加点となるソロホームランを放ったフランドールには、スタンドのファンから名前を呼ぶ声も聞こえてきます」
「おっと、そして先ほどファーストへのいい当たりのライナーを放ったパチュリーにこれはスタンドから暖かい拍手、そして大歓声!」
「ライナーゲッツーを打ってホームランより大きい拍手って何だよ! 絶対おかしいだろ!」
「本には記録が詰まっているが、本人は記録より記憶に残る選手なのか! 着やせするタイプともウワサされるパチュリーノーレッジ、そのドキドキな実力がヴェールを脱ぐのは果たしていつなのか!」
「ずっと着たまんまだと思うんだがなー。ていうか、今なんかいいこと言ったつもりか? 射命丸文」

「さて、2回の表2点を追いかけます魔法の森、打線は5番キャッチャー天子から」
「右打席に入る天子ですが……おっとこれは大上段に構えている。まるで交通整理でもするように、右手一本で持ったバットを上から下にと、ぐるぐると振り回して投球を待ち構えているぞ!」
「天子のやつ、緋想の剣ならアレで凄い攻撃がくるんだが、野球であの構えじゃカスりもしないだろ」
「幻想郷の野球とはいえ、ちょっと常識にとらわれなさすぎなフォームにピッチャーのレミリアも半笑い。果たしてこの対決の行方は?」

「レミリア、第1球投げた! 内角直球空振りか? 天子は片手で思いっきりアッパースイングして、ボールは後ろに飛びました……が、バットに当たった音はありません。これは?」
「……ま、まさか空振りの風圧でボールが曲がったのか?」
「球審上白沢、一呼吸置いてストライクの判定。1-0です」
「か、片手でブン回してアレかよ……人間じゃないな天子。人間じゃないけどな!」

「レミリアすこしボールをこねてから、第2球投げた! 外角大きく外れてボール! 1-1です。 先ほどのファールを見てちょっと警戒してきたか?」
「当たったらちょっとどこまで飛ぶかわからない感じだからなー。あのスイングは」

「紅魔のカリスマと天人のパワー、果たしてぶつかり合うとどうなるのか。さあ第3球投げた! 内角スライダー強引に打った! ファウル! 自打球が天子の足に当たってさらに美鈴の腹に当たりましたが、痛がっているのは美鈴だけだ!」
「この野球、キャッチャーが丈夫じゃないと死人が出るよな」
「駆け寄ってくる咲夜を片手で制する紅美鈴。『気を使うのは自分ですから。咲夜さんではないですよ』という無言のアピールか! ちょっといいシーンが展開しているぞ!」
「深読みしすぎだろ射命丸。……まあ、レミリアもあの大きなアッパースイングでは高め、特に内角高めは打ちにくいと判断してきたな。あえて高めに変化球を持ってきてるぜ」

「すでにレミリアの表情は真剣だ! 第4球投げた! 内角スライダー打ち上げた! 大きい当たり! 打球がたかーく上がってレフトの後方、なかなか落ちてこないぞ? ルーミアは両手を広げてとことこバックするが捕るのか? 捕れそうなのか? 捕れたのか?捕れた! フェンス手前のレフトフライ、1アウト!」
「左中間が140メートルのこのアホ球場じゃなかったら、余裕でホームランだったな」
「バックした際にフェンスに後頭部をぶつけたルーミア、グラブからボールが転がっていますが捕球は成立しています」
「壁を見ないで真後ろにさがる奴がいるかよ。弾幕勝負じゃないんだぞ」

「先ほどの大飛球の余韻冷めやらず、スタンドはまだどよめいていますが、いつの間にか右打席には早苗が入っています」
「知識としていちばん野球を知ってそうなのは早苗なんだけどな-。さすがにこの妖怪変化共と戦うには辛いかもな」

「おっと、早苗も天子に負けず劣らずの大きな構え。バットを体の正面にすーっとかざしてタテにちょんちょんと振りました。魔理沙さん、この構えは?」
「神主打法だな。守矢神社の風祝だから神主の構えってのもわからなくはないが、並みの人間じゃスイングが大きくなりすぎて当てられないぜ」
「となると、レミリアはまた内角を攻めることになりそうですか?」
「だろうな。もっともあの神主打法が本物なら……」

「レミリア第1球投げた! その内角直球打った! 強烈な打球が三塁線左に切れて、ファウル! 1-0です」
「あ、当ててきやがった!」
「魔理沙さん、先ほど『本物なら』、とおっしゃいましたが、本物ならどうなりますか?」
「神主打法ってのは、大きな構えだけに外角しか打てないように見えるんだが、本来は内角も外角もコースに逆らわず打ち返す高度な打法なんだぜ。早苗のあの内角への初球に対するヒジのたたみ方、あれは相当の練習を積んできたと見たな」

「レミリア第2球投げた! 緩い球ちょっと抜けた! ……しかし早苗空振り! 2-0と追い込みました」
「……完全なカーブのすっぽ抜けなんだが、まるでド素人の空振りだぜ。どうなってるんだ?」
「それは私も聞きたいところですが、あいにく本人はバッターボックス。その表情もヘルメットを目深にかぶっていて伺うことはできません」
「今のところ早苗と橙だけだな。ちゃんとヘルメットかぶって打席に入ってるのは」

「レミリア第3球投げた! これもゆる~いカーブだが早苗また空振り! 3球三振で2アウト!」
「まさか、ストレートしかタイミングが合わないのか? 早苗は」

「空振りの勢いでヘルメットが落ちた早苗、ヘルメットを拾ってバックスクリーンを見ながら、軽く首をひねりつつベンチに下がっていきます。まるでモニターで球種を確認するかのような動作です」
「外の世界の球場じゃあるまいし、バックスクリーンにモニターなんて……ああ! そういうことか」
「な、なんでしょうか? 魔理沙さん」
「早苗は外の世界の野球選手のマネをしてるんだ。だから、マネの元になったコースにボールが来ないとカスりもしないってわけだな」
「1球目の神主打法からの内角のさばきは、伝説的な大打者のアレのマネがツボにはまったが、2球目3球目のカーブはマネのレパートリーになかったんだろうな。だからスッ空振りしたってわけだぜ」

「言葉の意味は良くわかりませんが、現実は2アウトランナー無し。魔法の森は得点するには厳しい状況です。打席には7番ショートのルナサ、左打席に入ります」
「ルナサの構えはごく普通だな。というかわかれよ。アレのマネだよ」

「レミリア第1球投げた! 外角直球見た……ストライク! 1-0」
「そういえば、この試合まだ三振とフライばかりでゴロのアウトがないな。魔法の森は」
「初回は三振2つに2塁打を挟んで三振、2回はレフトフライに三振……たしかにそうですね」
「だから今まで特に言わなかったんだが、紅魔館の内野の守備陣形がかなり妙だろ?」

「第2球投げました! 外からのスライダーこれは外れた。1-1」
「ああ、確かにこれはちょっと見たことのない感じです。セカンドの咲夜ですが、セカンドベースの後方、右中間に近いところまでかなり下がって守っています。そしてショートの小悪魔がセカンドベースとマウンドとのほぼ中間までかなり前進、ややサードよりにわずかにズレて守っています」
「左打者で強烈に引っ張ってくるタイプの打者ならセカンドはああいう位置取りもするんだが、ショートの位置取りはちょっと意図がわからないな。今のところ右打者左打者に関係無くこの守備位置だし、何か意図があるとしか思えないぜ」

「レミリア第3球投げた! 高め直球見た、決まってストライク! 2-1と追い込みました」
「ルナサもなんか鬱っぽい……じゃなくて、打つ気配がないな。このままじゃ衣玖と同じで見逃し三振になりそうだが」

「さて、レミリアは次が勝負球か? 背中の羽根を伸ばして第4球投げた! おっとドラッグバントだ! 一塁線にボールが転がってこれは誰も反応できない。セーフに──」
「小悪魔だぜ!」
「おおっと!? 一塁線に突っ込んできた小悪魔、ダイビングして捕球、そのままファウルゾーンに倒れ込みながら一塁送球、ボールはファーストで突っ立っていたパチュリーのグラブに吸い込まれました! アウト!アウトです! 一塁線のショートゴロ、信じがたい好プレーで3アウト!」
「2回の表、魔法の森は無得点で攻撃終了。2対0、紅魔館が2点をリードしています」

「今のルナサのドラッグバントだが、レミリアもパチュリーも全くボールを拾いに行ってなかったな。紅魔館はたぶん内野ゴロはセカンドとショートでほとんど全部拾うつもりなんだろ」
「なるほど、あの奇妙な守備陣形は、このためだったんですね!」
「まあ、普通はあんなところの打球はファーストしか拾えないし、投手が一塁カバーに入れなければ内野安打になるんだけどな。まさかショートの小悪魔が一塁のパチュリーをカバーするとはなー」
「小悪魔からの送球を見事に捕球したパチュリーに、スタンドから大きな拍手が湧き起こっています!」
「だからおかしいだろ! どう見ても今のは小悪魔のファインプレーだろ!」


「攻守交代の間に、1回の裏にホームランを放ちましたフランドール選手の談話をご紹介しましょう」

「2回ぶんぶーんって振ったけど当たらなかったら、お姉様が『よく見ていきなさい』って言ったの。だから2回ボールを見たけど、見てるだけじゃつまらないから打ったら、なんか飛んだ。お姉様に『ボール見ていられなくてごめんなさい』って謝ったら『別にいいのよ』って言ってくれたから、よかった! あれは、ほーむらん?っていうの? あまり飛ばなかったから1点しか入らなかったんだと思うから、つぎはどっかーん!って飛ばして5点ぐらい入れたい! わーい!」

「……という、非常に無邪気なコメントをいただきました」
「予想通り、野球のルールをまったく理解してないな。フラン」
「打たれたアリスに聞かせたら、ベンチを両手で殴りそうなコメントですね」
「利き手はやめとかないと大変なことになるぜ」

「さて、初回の2失点から立ち直れるか。魔法の森のアリスが2イニング目のマウンドに上がります」
「んー。まだアリスの表情が暗いな。たしかに2点は取られたが、ここで立ち直ればまだまだ勝負はわからないんだけどな」

「おっと、キャッチャーの天子が何やらマウンドに上がってアリスと話しています。アリスがクスっと笑って天子は守備に戻りますが……」
「これは何を話していたのでしょうか、読唇術がお得意な魔理沙さん?」
「えーと? 天子は『あなた、なに2点取られたぐらいでしょぼくれてるのよ。私がホームランとかいう奴をブッ叩いて5点取ってやるから、要石に乗った気でいなさい!』だな。アリスが『要石じゃフワフワして落ち着かないわよ』って言って笑ってたな」
「天子の発想がフランドールと全く同レベルですね」
「フランのアレも、案外言われても怒らないかもしれないな。アリス」
「魔理沙さん。もう指摘するのもアレなんですが、その読唇術って本当に正しいんですよね?」
「他の奴ならともかく、アリスの唇だけは読み違えるわけがないぜ!」
「さ、紅魔館の攻撃、2回の裏は6番ショート小悪魔からです」
「……おい。人が投げた会話のボールはちゃんと受け取れよな」

「おっと、小悪魔は一礼をして右のバッターボックスに入ります。紅魔館の住民とはとても思えないほどの礼儀正しさ。ヘルメットもきちんとかぶっています」
「なんか、ヘルメットの耳穴から頭の羽根がぴょこんとでてるのが可愛いなー」

「まるで高校野球のように礼儀正しい小悪魔に、アリスも思わず軽く会釈をしてから投球動作に入る。そしてセットから第1球投げた! 外角スライダー、見送って……ストライク。 まず変化球でカウントを取ってきました」
「ランナー無しだがあえてセットからの投球だな。フォームが小さくなるぶん制球のブレは少なくなるぜ」

「アリス第2球投げた! 縦のカーブわずかに低いが……ボール。 1-1です」
「ボールを自在に操りはじめたな。もう完全にいつものアリスらしくなってきた」
「やはり、先ほどの天子のアホな発言で緊張が解けたんでしょうか?」
「あまりにアホすぎて、細かいことがどうでも良くなったんだろうな」

「アリス、セットから第3球投げた! これも外角直球、ハーフスイング止まった! 判定ボールで1-2とボール先行」
「いや、今のはカットボールだな。微妙に外に流れたが小悪魔が見極めたぜ。小悪魔は先頭打者らしく、しっかり球を見てなんとか塁に出ようとしてるな」
「なんか、真面目ですね」
「もしかして、このグラウンドで唯一真面目に野球やってる選手かもしれないな。小悪魔は」

「1-2とバッティングカウントから、アリス第4球投げた! 内角打ったがこれは詰まった当たり、ショートルナサやや左に動いて捕る、ファースト送球、早苗捕って1アウト。先頭小悪魔塁に出られません」
「今度はツーシームで内角にわずかに食い込んできたな。小悪魔は内角の甘い球だとおもって打ちに行ってるんだが、芯を外されてるから当たりが弱いんだぜ」
「……なんか、非常に普通の野球をされると、かえって戸惑いますね」
「……そうだな」
「内野ゴロでしたが一塁まで全力疾走した小悪魔、そのままベンチに小走りで戻ります」
「真面目な奴が損をしがちなのが幻想郷だが、アイツにも良いことあるといいな」

「さてこの回は先頭を討ち取ったアリスですが、迎えるバッターは7番レフトのルーミア、どちらの打席に入るのか? 左打席にはいりました」
「守備ではダイビングが裏目に出たり打球の追い方が危なっかしかったりと微妙なルーミアですが、打者としてはどんなタイプでしょうか? 魔理沙さん」
「いや、野球やってるのなんて見たこと無いし、正直わからないぜ」
「それを言うならほとんどの選手がそうなのではないですか?」
「ま、打席に立つ前の素振りを見てると、引きつけて逆方向に打つ意識で入ってるから、案外アリスの変化球にも対応してきそうだな」
「……解説の信憑性はラジオをお聞きの皆さんでご判断ください」

「さてルーミアに対してアリス第1球、セットから投げた! 外に外れるが振って空振り! 1-0です」
「引きつけたというか、完全に振り遅れだな」

「ちょっと小首をかしげたアリス、第2球投げた! これは高めに外れるが振った! バットに当たらない! ルーミアはアッサリ追い込まれています」
「なんか、完全に選球眼がないっぽいな」
「自分の作った闇で前方が見えずにいろんなモノにぶつかるというルーミアですが、バッターボックスの中でも闇の中なのか!」
「ルーミアの実況のときだけ『なのか』ってやたら使ってないか? 射命丸」

「アリス第3球投げた! 落として当然のように空振り三振! 2アウト!」
「ルーミアはバットをかじりながらベンチに戻りますが、上白沢から態度を注意されています。小悪魔の礼儀正しさを見たあとだけに余計に悪態が目に付くというわけなのか!」
「やっぱりわざと『なのか』って言ってるだろ」

「この回アッサリと2アウトランナー無しに追い込まれた紅魔館。8番キャッチャー紅美鈴が右のバッターボックスに入ります」
「ん、美鈴もちゃんと礼をして打席に入ってるな」
「ヘルメットをかぶっていないがこれは見逃す上白沢。不遜な態度も紅魔館なら許されるということか。紅魔館なら何でも許されるのか!」
「小悪魔を褒めたんならちゃんと美鈴も褒めとけよ。だから」

「チャイナ服風の上着には大きなスリット、そこからチラリとのぞく肉付きの良い脚を強調するような打席のスタンス。これはちょっと教育上宜しくないのではないでしょうか? 解説の魔理沙さん」
「いや、普通のオープンスタンスだろ。なにか美鈴に恨みでもあんのか? 射命丸は」

「最近極秘の女子会を開催してるとウワサの紅魔館。その突撃取材を阻む巨大な壁、紅美鈴を打ち砕いてもらいたい魔法の森のエースはアリス。第1球投げた! 内角に強烈なシュート、これはエグい! かろうじて避けた美鈴が涙目だ!」
「5センチぐらいのけぞっただけだろ。表現が過剰すぎるぜ」

「1ボールぐらいくれてやるとばかりにアリスは眉一つ動かさない。セットから第2球投げた! 外角直球あるいはカットか、いっぱいに決まってストライク! 美鈴これには手が出せない! 1-1とカウントを戻す」
「……要するに、突撃取材を妨害されたから逆恨みしてるんだな」
「そ、そんなことはありませんですよ?」

「アリス、セットから第3球投げた! 縦のカーブ打った!弱い打球がフラフラっと一塁後方へ、ファースト早苗とセカンドメルランが下がる、ライト橙も前進するが三者の中間落ちた! 美鈴、小憎たらしいライト前ヒットで2アウトからムダに出塁しました」
「その悪意を薄めて川に流してこい。射命丸」

「2アウト1塁となって迎える打者は9番ライトチルノ。複雑なルールの野球を、妖精のほのぼの頭脳がはたしてどこまで理解できているのでしょうか。まず右打席に入るところまではクリアしました」
「打って三塁側に走るのまでは許容してやろうな。射命丸」

「さあこい! とばかりに打席でいつまでもブンブン素振りをしているチルノを球審上白沢が頭を撫でて落ち着かせます。あの青髪ショートには私もちょっと触ってみたいところ。ひんやり冷たい魅惑の手触りなのでしょうか」
「あいつは夏場は近くに置いておきたいけどな。たしかに」

「アリス第1球投げた! 低め直球空振り! おっと天子の頭に空振りしたバットが当たったということで、ちょっとつかみ合いになっていますが……。上白沢が二人を引き留めて、今なんとか治まりました」
「あ、チルノのバットの持ち方、右手と左手が逆だぜ。アレで思いっきり振ったらたしかにバットが妙な回転をして天子の頭を殴っても仕方ないな」

「アリス第2球投げた! 高め直球打ってファウル! おっと天子がバットを白羽取りしてニヤリと笑っています!」
「何の勝負してんだよ。あの二人は」

「ここまで、2回は変化球主体に組み立ててきたアリスですが、チルノには一転して直球を続けていますね?」
「……まあ、お前もわかるだろ? カーブとか投げたらなんか可哀想だろ。チルノが」
「人質の命を賭けた真剣勝負のなかにも漂うわずかな人情。もしかしてこれが幻想野球の醍醐味かもしれません!」
「あ。そういえば霊夢が賭けられてるんだったか。この勝負」

「様々な想いを込めてアリス、第3球投げた! 外角直球打ち上げたがこれは力のない当たり、セカンドメルランがバンザイして捕球体勢……おっとグラブに入れてからちょっとお手玉しましたが慌ててキャッチ。ファーストランナー残塁、3アウトチェンジです」
「結局、チルノのバットの持ち方は誰も何も言わなかったな」
「ここまで態度や礼儀に厳しい上白沢でさえ、特に何も言わなかったですね? 魔理沙さん」
「まあ、ルール違反ではないからな。個性を尊重するとか、そういうことだろ」

「さて、2回の表裏を終わりました。この回は両軍とも得点無し。2対0で紅魔館の2点リードは変わりません」
「ん? なんかゾロゾロやってきた連中がいるぜ?」
「何ですか? 魔理沙さん」
「……おい、もう来たのかよ! お前ら!」

  【続く】
【次回予告】
2回は結局両軍無得点。引き締まった試合展開になっていくのか?
グラウンドに姿を現す正体不明の少女達は一体何者なのか?
そして、愛されパチュリーと可愛いアリスの間で魔理沙は?

地の文がないのは、ラジオ中継の実況と解説という設定だからです。

【この作品の正しい楽しみ方】
  (1)メンバー表を書きましょう
  (2)大きな声で音読しましょう

【突発!早苗さんクイズ】
 第一問:今回早苗さんが打撃フォームをマネた名選手とは? (難易度Easy)
屋敷犬
[email protected]
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コメント



0.780簡易評価
2.100Dark+削除
読んでなかったんで、第一話の方から読んできました~。
完成度高いですね、コレ。面白いぞ……

次の作品も期待してます。個人的にはルーミアが頑張って欲しい。

で、クイズ……自分は野球好きですが、昔の選手はよう分からんです……
6.100名無し程度の能力削除
待ってました!
本当に試合を見ているような臨場感でした。

……落合かな
8.100名前が無い程度の能力削除
今回も面白かった
11.90名前が無い程度の能力削除
野球の詳しいルール知らんがところどころ入るボケなど含め面白かった
続編大いに期待
13.100名無し削除
非常におもしろい
光景が目に浮かぶようだ

解説者二人の掛け合いに笑ったw
18.100名前が無い程度の能力削除
これはなかなか。
地底の試合も中継してはもらえませんかね?

早苗は…落合かな?全盛期のイチローを真似れば良かったのにw
20.100名前が無い程度の能力削除
情景が目に浮かびやすいし、臨場感があって面白い
早苗の構えは落合かな

あと
「打たれたアリスに聞かせたら、ベンチを両手で殴りそうなコメントですね」
「利き手はやめとかないと大変なことになるぜ」のやりとりは杉内のことをいってるだろw
22.100名前が無い程度の能力削除
実況みたいな感じで良いねー。二人の掛け合いがいい味出してる。
打席内での動きから想像するに落合かなー。よく落合なんて知ってたな早苗さんww
神奈子様が教えたのかね。
まぁ打撃練習ではカーブ打ちをメインにしていたのは知らなかったみたいだが。
杉内のことは許してやれよwww
そういえば第一回のフランのクイズで助っ人なのか日本人なのかぐらいは教えてほしいんだけど。
流石に構えに対する描写が早苗さんと比べるとほとんど無いし。
それで現役の左打ちの強打者でベンチスタートが言われても解らないんだけど。
23.無評価屋敷犬削除
ストライクゾーンの狭い作品に感想をくださった皆様、ありがとうございます。
>>2 ルーミアは交代で下がっても一塁側走塁コーチとか塁審とか色々仕事がありそうですね。動作的に。
>>6 読んでいて映像が見えるのなら幸いです。
>>8 第一話に引き続き読んでいただいてありがとうございます。
>>11 野球実況なんて8割ぐらいトーク番組ですから問題ありませんよ。
>>13 射命丸と魔理沙の間にもなんか火花が散りそうになってきましたね。
>>18 QJKオリンフィールドは放送権の関係でちょっと中継できないのです……。
>>20 ブルガリアという助っ人外人投手の話なんてしていませんよ?
>>22 パリーグのファンには割と有名な選手ですが、第一話にヒント追記しておきます。

早苗さんがマネをしていたのは「微笑みのバズーカ」江藤……ではなく、両リーグで三冠王を達成した落合ですね。現実には変化球にも柔軟に対応していた落合ですが、早苗さんはたぶんテレビ中継で見た内角を芸術的にさばいた一打が忘れられなかったのでしょう。