「ブーン」
少女が、空を飛んでいた。
両手を広げ、夜の闇に覆われた空を自由気ままに飛び回る。
彼女は何を考えているのか、それは誰にも分からな……
「ねぇ、あなたは食べてもいい人間?」
「た、たすけてけーね……」
「ちょっと妹紅! その傷はどうしたの!?」
「……食べられた」
それだけ言い残すと、妹紅は意識を失ってしまった。
私は今日一日落ち着けなかった。
血まみれの妹紅が慧音の家に辿り着いた時、私は間の悪いことに朝食の一口目をとろうとしていたのだった。
食欲は失せて当然。それどころか大量の血を見たために吐きそうになった。
傷だらけの妹紅に傷の手当てを施し、血まみれの玄関を掃除し終わった時には既に太陽が真上で輝く時刻。
それから急いで里の人間達の無事を確かめ、凶悪な妖怪の情報を集めているうちに日が沈んだ。
「おなか空いたな……」
なんだかんだで私は今日何も口にしていない。でも何も食べる気がしない。
それもこれも妹紅をかじった妖怪のせいだ。ギッタンギッタンに懲らしめてやる!
ξ・∀・)ξ・∀・)
「ブーン」
少女が、今宵も空を飛んでいた。
両手を広げ、夜の闇に覆われた空を自由気ままに飛び回る。
「おや、こんな夜中に誰だろう」
縁側で涼んでいた慧音は、その不思議な少女を見ながら今朝の惨劇を思い起こしていた。
妹紅も昨日の晩はこうやってのどかに過ごしていたんだろうなと思うと、余計に腹が立つ。
「いくら死なないといっても、食べられる恐怖までは消えないんだろうなぁ……」
その時慧音のおなかがぐぅ~、と鳴る。
「……」
キョロキョロと周りを確認する慧音、こんな恥ずかしい所を他人に見られていたら歴史を消さねばならない。
おなかは減った。でも食欲は無い。こんな日はさっさと寝るに限……
「一緒に夕飯にしませんか?」
ハッとして慧音が顔を上げると、そこにはさっきまで空を飛んでいた少女が立っている。
「君は……?」
「わたしはルーミア、あなたが上白沢さんですね」
初めて聞く名前だ。
ルーミアと名乗った少女は私のことを知っているらしく、親しげに話しかけてきた。
「そうだね。いっしょに夕飯でも食べようか」
「ホントですかぁ? おなかぺこぺこだったんです」
私も夕食の誘いを断るほど落ちぶれちゃいない。二人でなら吐き気も紛れるだろう。
「今から何か作るよ。何が食べたいかい?」
「あなた」
「へぇ……私を食べたいの?」
「うん、とっても美味しそうだから」
「一つ聞くけど、昨日の夕飯は何を食べたの?」
「食べても食べても減らないお肉♪」
「熱くなかったのかい?」
「程よく焼けて、美味しかったよ」
「それじゃあ、私も美味しく食べられそう?」
「もちろん! 今日は満月だから半妖のあなたはとびっきりの美味しさになるよ!!」
「満月……そうね……今日は満月だったわね……」
「じゃあ、いっただっきまーす」
「いたあああああぁぁぁいい!!!!」
「掘ると思ったときには既に掘っている。過去の事象なのだ!」
戦いが、始まった!
「あいたたたた、いきなり何するんですか!」
ルーミアは破れたスカートを押さえ、真っ赤に腫れたお尻を撫でる。
「満月の夜にやってくるとはいい度胸だ。お前は私を食べるのだろう? さぁ存分に食べるが良い!」
「ううう、食べたいけど近づけない……」
明らかな挑発、そして釣りあがる慧音の口元。
慧音の頭には先程まで存在しなかった2本の凶器。ルーミアを襲ったのはこの凶器だったのだ。
「近づいたら刺されちゃう……なら遠くから撃ち落せばいいや!」
「これは……ムーンライトレイ?」
ルーミアの広げられた両の手から、左右それぞれに大量の魔力が発せられた。
慧音は歴史を辿り、即座にルーミアのスペルの正体を暴く。
「このスペル…長大な二本のレーザーで敵を追い詰め、動けなくなった所を狙い撃ちするタイプだな」
「おっちろー!!」
「間抜けめ! このような子供だましで私を倒せるとでも思ったかーーッ!!!」
怒号と共に、二本の角の餌食にしてくれると言わんばかりの勢いで突撃をかける慧音。
一瞬にしてルーミアの懐に潜り、勝利を確信する!
「貰った! 発掘されよッ!!」
「えーい、閉じちゃえ!」
「なっ……にィィィィ!!」
ムーンライトレイが、閉じた。
歴史上存在しない事象に対しては、歴史を辿ることが出来ない。
まさかの閉じるムーンライトレイに反応できなかった慧音は、ルーミアのスペルをマトモに受けてしまったのだった。
「やったぁ、お夜食ゲット!」
「まずいな……このダメージは酷い」
叩き落された慧音は自分の体の損傷を素早く分析し、事後の対策を練る。
「特に右足などは全治1ヶ月という所か、アバラも2本ほど持っていかれている」
脚をやられては満足に動くことが出来ない。ならば相手が射程に入るように仕向け、スキを作らなくては……
勝負は一瞬、
掘 る か 食 わ れ る か
「こんなところに牛肉が♪」
ルーミアがやってきた。
動かざるが牛の如し。動けない慧音は死んだフリでルーミアを誘い込む。
「えへへ、新鮮なお肉は美味しいんだよね~」
よし、そのまま寄って来い。
「……って、このまま食べるとでも思った?」
なっ……死んだフリを見抜かれている……!?
焦る慧音。まだだ、今ロングホーンアタックをブチかましても避けられる。機を待つんだ……。
「……ちゃんとエプロンをしないと服が汚れちゃうからね」
滴る涎、堪え切れない食欲。ルーミアは満面の笑みを浮かべている。
ごそごそと慣れた手つきでエプロンをかけたルーミアは……目を閉じた。
「それでは、合掌、いただきます!」
「いただきますッ!!!」
それは一瞬の出来事!
夜の竹林に、少女の断末魔が響き渡った……
「ハァァァァ……フゥゥゥゥ……」
薄氷の勝利であった。まさか少女がこれほどの大妖怪だったとは……
「ここから出せー!!」
「そうはいかない。折角掘った穴が勿体無いだろう?」
「穴なんていつでも掘れるでしょ!」
ルーミアに上白沢流封印(首まで土に埋める)を施した慧音。
「しばらくそこで反省しなさい。お腹が減るまで」
「この鬼ー、悪魔ー、牛ー!!」
「ま た 掘 る ぞ?」
「……ごめんなさい」
「ああ…もうくたくただ……」
足は痛い。あばら骨は折れた。明日の朝にでも永遠亭の薬師に薬を貰いにいかなくては。
「今日は寝よう。疲れすぎた……」
飲まず食わずの上にエクストラな妖怪と立ち回ったのだ。倒れないだけでも奇跡。
ふらふらと家に向かう慧音の前に、一匹の雀が立ちはだかった。
「ねぇあなた、今宵は折角の満月。私の歌声を聴いていきなさい」
「……めどい」
「そんなこといわないで♪ これから楽しい妖怪祭りが始まるのよ?」
その時、慧音のおなかが再びぐぅと鳴った。
頑張りすぎて空腹だ。妹紅の仇をとった今なら何でも食べられそうだ。
「そうだな、楽しいディナータイムの始まりだ!」
参考にさせてもらったイメージ
ルーミア 絵板Ⅲ58 はとはる氏
慧音 絵板Ⅲ298 AG氏
ミスちー 絵板Ⅲ276 FLX氏
掘るか食われるか、笑わせていただきました♪
2ch発(だと思うんですが)ネタはわからないと面白くないというか、
どの辺が笑えるのかよくわからないというか・・・。
たまねっぎー、たまねぎあったわね♪
ってえーりんが言ってた(嘘
4コマ漫画風なコミカルな場面が目に浮かぶ・・・。
オチワラタ
もともと、妖怪の食料である人間が、逆に妖怪を食べるというケースも出始める始末。
特に夜雀の被害が大きく、国は天然記念物の指定を検討しているそうです。
まぁ長々とバカなこと言ってますが、笑わせてもらいました。