Coolier - 新生・東方創想話

始まりのバースデー

2005/06/04 00:29:23
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  ここは博麗大結界の境、博麗神社。
  普段は結界の守護者、十三代目博麗の巫女博麗霊夢が縁側でお茶をすする光景などが見られる幻想郷の名所である。


  「さて、そろそろ出発するとしましょうか」

  いつもの怪しげな紅白の巫女装束に身を包んだ霊夢は、誰にともなく呟いて空に飛び立った。
  そして、すぐに気付く…境内裏は昼だというのに真っ暗なことに。

  「……またあいつの仕業なんでしょうね」
  「あっ! とって食べてもいい鳥目の人だ」

  霊夢が顔をしかめて言うと、はかったようなタイミングで出てきたのは宵闇の妖怪ルーミア。
  赤い目、赤い靴、赤いリボンがとってもおしゃれ。

  「ああ、なるほどね。こいつのせいで私は鳥目という設定になったのね」
  「さっそく、いただきまーす!」
  「へぇ、いい度胸ね、弾幕ってもいいのよ。鳥目の恨みもあることだし」
  「うっ…分かったわよ。他の人探すからいいわよぅ」

  ルーミアは心なし肩を落とすと辺りを物色し始めた。
  それに驚いた霊夢は慌てて彼女を引き止める。

  「ちょっと、やめなさいよ」
  「ええ~なんでー?」
  「人を食べるのは禁止よ。それと今から宴会に行くからあなたも来るといいわ」
  「えっ、ホントに!」
  「多分大丈夫よ……」

  私の家でやるんじゃないしね。と霊夢は心の中で付け足しておいた。
  それにこれでルーミアをお腹いっぱいに食べさせれば、しばらく人を襲うこともなくなるんじゃないかという打算もある。

  ルーミアが食いだめ出来るのか知らない霊夢は、なんとなくそんなことを考えながら紅魔館へ向かって再度出発した。







  場所は変わって紅魔館付近の大きな湖上。
  ここでも宴会に参加するため、順調にスピードを出す一つの影があった。

  「まったく、いい加減春だっていうのにどうしてここはこんなに寒いんだ」
  「ちょっと、待ちなさ―ゲフーッ」
  「おおっと悪い」

  まさしく風となって飛んでいた霧雨魔理沙は、突如表れた障害物に回避行動をとるそぶりも見せずに突っ込んだ。
  その現場をすぐ隣で目撃した名無しの大妖精は、後日ブレイジングスターを生で見た感動を熱く語っていた。
  だが、それを聞くはめになったブレイジングスターの被害者Tルノは大妖精の友達をやめたくなったと話しているとかいないとか。

  「そんな所にいたら危ないぜ」
  「危ないのはどっちよ。バカー!」

  旋回して犯行現場に戻ってきた犯人は被害者を見て思う。
  (今日も素敵にいっぱいいっぱいな奴だな。それにしてもチルノに馬鹿呼ばわりされるとは思わなかったぜ)
  悪いことをしたとは欠片も思っていないあたり魔理沙らしい。

  「あ、あの魔理沙さん」
  「おっ? あんたは確か……すまない、名前がわからん……」
  「あっ! 私の事は大妖精でいいです」
  「いいのか! そんなので?」

  チルノの隣に浮いていた少し大きめな妖精の、あんまりな自己紹介に思わず聞き返してしまう魔理沙。
  その問いに答えたようとしたのはチルノだった。

  「いいのよ、どうせこの子には名前がないんだか―――」

  言い終える直前、大妖精は左足を軽く引き右足を軸にすると、残像を生み出す速さで一回転しつつチルノの延髄に凶悪な肘打ちを落とした。
  その一撃であっさり気を失った(ブレイジングスターでも平気だった)チルノを右脇に抱える大妖精は、何事もなかったように話を続ける。

  「もしかして魔理沙さんはこれから紅魔館にいきますよね」
  「う、あ……ああそうだぜ……な、なんならいっしょに来てもいいんだぜ……です」

  何故か笑みを浮かべながら、大妖精は質問とも確認とも取れる言葉で聞いた。
  それに魔理沙はしどろもどろになりながら、語尾を直しながら答える。
  どうやら彼女は、名前のことについて他人に言われるのをひどく嫌うらしい。
  その証拠に、笑顔のまま左手は握ったり開いたりして、いつでも掴みかかる準備をととのえている。
  おそらく魔理沙が迂闊な事を言えば……気が付いた時には湖に浮いているだろう。
  チルノという重りを全く感じさせないその動きは、瞬間的なモノながら、魔理沙をも軽く上回っている。
  少なくとも魔理沙は湖に浮かぶまでの過程をはっきり幻視していた。

  「それじゃ、私たちも付いていっていいんですよね」

  その言葉を聞いて魔理沙は悟った。
  (こいつは私に聞いているんじゃない。ただの形式として訪ねているだけで、私の答えは関係ない)

  「も、もちろんだぜ……です」
  「まぁ、それは良かったわ」

  しかし、それがわかっていても命の惜しい魔理沙に他の答えは用意できなかった。
  大妖精の目が紅く染まっているうちは当分逆らうことは出来ないだろう。







  「おや、あの黒白の影は…」

  陽が沈み始め世界を赤く染める頃、紅魔館の門番は複数の人影が屋敷に近づいてくるのを発見した。
  ……………………それから5分後

  「よう、中国。はるばるやってきたぜ」
  「いらっしゃいませ、私の名前は中国じゃありませんよ」
  「そうだったか? まっ、どうでもいいな。とりあえず景気付けに一発……」

  そう言って、魔理沙は八卦路に魔力を込め始めた。

  「マ~ス~タ~―――」
  「ちょ、ちょっとなんでいきなりそうなるんですか? 今日はちゃんと招待されてるんですから通しますよ」
  「駄目ですよ、魔理沙さん。いきなり吹き飛ばそうとするなんて」
  「ん? あ、ああそうだな」

  おろおろする中国と呼ばれた妖怪は、必死に弁解するが景気付けで吹っ飛ばそうとする者相手には意味がない。
  しかし魔理沙のマスタースパークを止めたのは大妖精だった。
  瞳の色は既に元に戻っているが、右手には未だ目覚めないチルノを抱えている。

  「それにちゃんと名前で呼ばないと駄目ですよ。ねぇ、紅美鈴さん」
  「う……それもそうだな、すまない美鈴」
  「いらっしゃい、大妖精さんにチルノちゃんも。魔理沙さん、なんだか様子がおかしいですけど何かあったんですか?」
  「何でもないぜ……それよりちょっとこっちに来てくれ」

  魔理沙は中国ではないらしい門番を、大妖精に声が聞こえないところまで連れ出した。

  「お前大妖精やチルノと知り合いだったのか!」
  「ええ。偶に組み手に付き合ってもらってますよ。チルノちゃんは主に新技の実験台ですけど」
  「大妖精はそんなに強いのか」
  「まぁ弾幕はそこそこですけど、近接戦闘になれば私ともいい勝負ですよ」
  「(チルノがいつもいっぱいいっぱいなわけが分かった気がするぜ)……ところでお互いに全力で相手をしたことは?」
  「うーん多分ないですね」
  「そうか……」
  「???」

  そこまで言うと魔理沙は大妖精のところに戻っていった。
  その後を頭に?を乗せた屋敷の門番もついて行く。

  「二人ともどうかしたんですか?」
  「ははは、何でもないぜ」

  魔理沙は大妖精の当然の質問を適当に誤魔化した。
  もともと名前以外の細かいことは気にしない性格なのか、大妖精は特に気にとめた様子もない。
  その時門番が、門の外に人影を見つけ魔理沙と大妖精に声をかける。

  「あれっ……あの紅白は霊夢さんじゃない?」
  「――は? 何も見えないが」
  「ああ、あれは確かに霊夢さんですねー」

  …………………………………………10分後、ルーミアを連れた霊夢が到着し、それぞれが自己紹介をしつつ紅魔館に入っていった。―――チルノはいつ目覚めるのだろうか。







  「お! 私はちょっとよっていく所があるから先に行っててくれ」

  魔理沙は巨大な扉の前で立ち止まり皆に声をかけた。
  紅魔館を一行に案内していた美鈴は顔をしかめつつそれを了解する。

  「別に構いませんけど、あまり図書館を荒らさないで下さいよ。それで怒られるのは咲夜さんですけど、最終的な皺寄せは私のところにくるんですから」
  「それなら荒らしがいもあるが、荒らしてるつもりはないぜ。ちょっと本を拝借してるだけで」
  「貸し出し許可は出ていませんよ」
  「そうだったか?」

  話しも途中のまま、魔理沙はさっさと図書館の中に入っていってしまった。
  それを見て美鈴は溜息を吐きながらも、残りのメンバーを屋敷の奥に案内する。
  心配でしょうがないと言った感じだが、紅魔館に不慣れな者たちをほっといて魔理沙を監視するわけにもいかなかった。

  「そんなに心配なら私があいつを見張ってもいいけど」
  「……いいえ、駄目です。霊夢さんには多分これから起こる惨劇を止めていただくことになるでしょうから」
  「ふーん。あんたも大変ねぇ」

  やれやれと思いながら霊夢たちは後をついて行く。

  ・・・・・・

  「ねぇねぇ、その子は今日の宴の主役?」

  ルーミアは目を輝かせながら大妖精が抱えているモノを見つめていた。

  「駄目よルーミアちゃん! チルノちゃんはまだいろいろ使い道があるんだから食べるには早いわ」
  「そーなのかー」

  「…………美鈴、チルノの使い道って?」
  「何で私の聞くのか不思議なんですが、秘密です」

  美鈴は人差し指を自分の口にあてる。

  「それじゃあ、旬がきたら呼んでね」
  「ふふふ、ルーミアちゃんは以外とグルメね」

  大妖精はルーミアの希望に微笑で答える。
  霊夢の後ろでは不穏な会話で盛り上がっていたが、所詮チルノだからと彼女は軽く聞き流しいた。




  「やっぱりここにきたら図書館に寄っていかないとな」

  視界いっぱいに広がる本棚。そこには時、場所を問わないありとあらゆる全ての知識があるという。

  大量の本を見て魔理沙は思わず顔をほころばせてしまった。
  その蔵書数は、一生掛かっても読破することを不可能に思わせる。
  ……しばらく魔理沙が辺りを物色していると、遠くの方から彼女を呼ぶ声が聞こえてきた。

  「マーリーサーさーん」
  「よぅ……って、うわっ何だ!!!」

  大声で魔理沙を呼んでいたのはこの魔法図書館で司書をしている小悪魔だった。
  彼女は魔法陣を一つ展開するとその中から無数のクナイを出し、自身は巨大な魔力の塊を波状に放出する。
  それらを魔理沙の方に放ちつつ近づいていく。小悪魔の顔は久しぶりに友人に会ったというような風で全く邪気は感じられない。
  相手が何を考えているか読みきれずに、魔理沙も慌てて回避行動をとりつつ子悪魔が近寄ってきた分だけ後退した。
  とてもではないが、あの同時攻撃を間近ではかわせない。

  「ちょっと待て、今日は本を借りに来たわけじゃないぜ」

  その言葉で小悪魔は立ち止まり、少し悩んでいたかと思うとポンと一度手を打つ。
  すると今度は展開する魔方陣を三つに増やしつつ、実に楽しげに追い詰めてゆく。

  「ついに開き直って堂々と盗み出すつもりですね。私は騙されませんよ!」
  「だから待てって! 今日はパチュリーを宴会に連れていくだけだ」

  ・・・・・・・・・・・・・・・

  「危なかったですね。魔理沙さんの後ろには直径三メートルはあろうかという大毛玉がいたんですよ。あんなのに襲われていたら、きっとワンコインじゃすまなかったですね」
  「…………」

  後ろを向く魔理沙。もちろんそこには何も無い。

  「安心してください、私がしっかり倒しましから!」
  「……お前はホントに小悪魔だな」
  「任せてください」

  小悪魔は態度を一転させて魔理沙の隣に並ぶと魔理沙のそのまんまの質問にも自信満々に答えた。
  あまりの開き直りのよさに魔理沙も毒気を抜かれてしまう。

  「まぁいっか。それでパチュリーはどこにいるんだ?」
  「ヴワル魔法図書館です」

  魔理沙は、間髪入れずに答える小悪魔を半眼でにらむ。

  「お前嘘をつかなければいいとか、ついてもばれなければいいとか思ってるだろ」
  「……そ、そんなことないですよ。そうだ! パチュリー様ならいつもの所で読書中ですよ」
  「うむ、初めからそう言えばいいんだ」

  二人は『いつもの所』…パチュリーの書斎に向かって歩き出した。



  ヴワル魔法図書館にはほとんど使われていない部屋が複数あり、その中のいくつかを、パチュリーは書斎や寝室として利用していた。
  一日のほとんどを本を読む時間にあてている彼女は大抵書斎にいる。
  当然今日も書斎で読書にふけこんでいるパチュリーは、扉を叩く音で意識が現実に戻ってきた。

  「……誰?」

  パチュリーは本から目を離さずに鬱陶しそうに聞く。

  「私です」
  「私もだぜ」

  扉の外で二つの声がすると勝手にそれは開き、魔理沙と子悪魔が姿を表す。

  「素材のアクを簡単に取る方法は……」
  「まだそんな研究してたのか!?」
  「……冗談よ」
  「パチュリーが言うと冗談に聞こえないぜ。それより宴会だぜ。パチュリーも来るんだろ」
  「…………」

  パチュリーは急に黙り込んでしまった。
  なにやら考え込んでいるようだが、魔理沙には最初から彼女の考えなど関係ない

  「……まっ、パチュリーに選択肢はないけどな」
  「分かったわ。本を読み終わってから私は行くわ。だから先に行っててちょうだい」
  「あー、それはその机の上に蓬莱山のように詰まれている本を全部ってわけじゃないよな」
  「……さあ」

  魔理沙は溜息を吐きつつ子悪魔の方に向いた。
  ある程度予想していた返事が返ってきてしまったが彼女はこのぐらいでは諦めない。
  小悪魔の肩を叩きつつ労いの言葉かける。

  「しょうがない。小悪魔に背負っていってもらうか。頼んだぜ」
  「ええ! 嫌ですよ。何で私なんですか」
  「適役だからだ」
  「私なんかより魔理沙さんの箒に乗せていけばいいじゃないですか」
  「二人乗りは危険だってよく言うだろ」
  「初めて聞きましたよ」
  「まったくこれだから引きこもりは……」

  魔理沙も小悪魔も一歩も引かずに話は平行線をたどる。
  だが、先に折れたのは魔理沙の方だった。

  「ああ、もう分かったよ。箒に乗せていけばいいんだろ」
  「やった、……初めからそう言えばいいんですよ」
  「……どこかで聞いたセリフだな?」
  「私の意見は…無視?」

  パチュリーは何かぼそぼそといっているが二人は聞いていあなかった。
  そうしている間にも、魔理沙は本を読んでいるパチュリーを箒に搬送していく。

  「よし、積み込み完了。思ったより時間くったし飛んでいくぞ」
  「そうですね」
  「…私はお荷物じゃない」
  「それはなんか違うぜ」



  三人が紅魔館を飛んでいると、小悪魔が本を取り出し、そこに何かをかきこみ始めた。
  その姿は嬉しくてしょうがないといった感じで、鼻歌まで聞こえてくる。

  「なぁ、一体何を書いてるんだ?」
  「ふふ、実はですね。パチュリー様が魔理沙さんの箒に二人乗りをしつつ本を読んでいる、という歴史的瞬間をスケッチしているんです」

  よく見ると子悪魔の持っている本はスケッチブックだった。

  「な、おい、やめろ。そんな恥ずかしいものを記録に残すな。パチュリーも止めさせるように言ってくれよ」
  「あなた……飛びながら絵が描けるなんて案外器用ね。見直したわ」
  「絵は得意なんですよ」
  「ちがうだろーー!!!」

  小悪魔とパチュリーが二人で楽しく盛り上がっているところを、魔理沙も違う意味で盛り上がっていく。

  「勘弁してくれーー!」  「魔理沙さん、あんまり動いちゃ駄目ですよ。真っ直ぐ飛んでください」









  紅魔館大広間前の廊下

  霊夢たちを連れた美鈴は宴の会場前まで来ていた。
  しかしここでは一人のメイドが掃除をしている。

  「あー、掃除が進まない」

  そう言ってメイドが美鈴たちをちらりと見る。

  「あ、咲夜さんお疲れ様で……す」

  美鈴の挨拶は途中で遮られ、彼女の額のすぐ近くを何かが通り過ぎた。

  トスッ

  銀色の軌跡を生むその一閃は美鈴の後ろに刺さる音を残す。

  「あの、咲夜さん? 何をしていらっしゃるのでしょうか?」
  「掃除よ」

  厳しい顔つきで紅魔館のメイド長は答える。

  「この人たちは今日の宴のお客――」
  「――さんよね。安心して、分かっているから。でも妖怪を招待した覚えはないわ」
  「え、えっとこれはですね……」

  美鈴はしどろもどろになりながらなんとか弁解を試みる。
  しかし、またもその言葉は遮られることになった。

  「宴会は大勢いた方が――」
  「いっったーーい!!」
  「…え! 咲夜さん、ホントに当てたんですか? 完全で瀟洒と言われた咲夜さんがこんなことで強行手段に出るなんて。やっぱり鬼のメイド長という噂は本当だった」
  「うるさいわねぇ。ただのギミックナイフよ」

  そう言われて美鈴は後ろを振り向いた。
  そこではチルノが額からギミックナイフを生やしてはしゃいでいる。
  それを見ると美鈴は安心して咲夜に向き直る。

  「なんだ、ギミックナイフなら安心ですね……チルノちゃんもあんなに喜んでナイフを生やしてる」
  「当たり前よ。私がギミックナイフなんてちゃちなモノ持ってるわけないじゃない」
  「あはは、やっぱり咲夜さんは鬼だったんですね」
  「そんなこと言われてもねぇ。私は当てさせられただけだし」
  「へっ?」

  咲夜は苦笑いをしつつ肩をすくめてみせた。
  美鈴はもう一度後ろを向くと、落ち着いて一行を観察してみる。
  霊夢は泰然としていて何を考えているのか読めないが、いつも通りだ。
  ルーミアも何を考えているのか分からないが、実際に何も考えていないのかもしれない。とにかくいつも通り。
  さっきまで大妖精に抱えられて眠っていたチルノはいつのまにか起きて一人で騒いでいる。これもいつも通り。
  大妖精はこんな状況だというのに満面の笑顔でことの成り行きを見守っている。…その笑顔はどこか得たいがしれない。

  「そういうことか! 犯人はあなたね、チルノちゃん!」

  美鈴はびしーっという効果音が聞こえてきそうな程の勢いで犯人を指差す。

  「いたいーー。ひどいーー。なんで被害を受けた私が悪いことになってるのよー」
  「私が長い修練で身につけた野生の勘よ……というのは嘘であなたの所為にすれば概ね丸く収まるからよ」
  「そーなのかーそーなのかー」

  チルノ以外一同頷く。
  ルーミアだけは何故かやたら嬉しそうに、チルノの頭をポコポコ叩いている。

  「うう、皆ひどい」
  「それはもういいとして、そこの大きな妖精さんはなんでこんなことしたの?」
  「大妖精っていいます。そろそろあの子を持つのもしんどくなったきたので、起きてもらおうと思っただけです」
  「成る程ね。それにしても私の最速の一閃[インフィニティゼロ]が見えて、あまつさえそれに反応できるなんてなかなかやるわね」
  「視力はいい方なんですよ」
  「へぇ、……大妖精だっけ。この屋敷で働いてみない? 副メイド長あたりでどう」
  「うわ、いきなり私より偉いんですか!」
  「そう言っても、紅魔館の肩書きなんてあまり関係ないから気にしないで。よっぽどの事しない限り『門番』にはならないから」
  「ありがとうございます。でも私は湖で暮らしている方があっていますから」

  お断りします、と言って大妖精はメイド長の申し出を断った。

  「そう、惜しいけど無理に強制するわけにはいかないわね。でもその気になったらいつでもここに来なさい」
  「はい、ありがとうございます」

  大妖精はもう一度お礼を言うと深々と頭を下げた。
  そして話が一段落したところで、咲夜は宴の会場へ案内する。

  「それでは……皆さん紅魔館へようこそ。この先が会場になっております」

  完全で瀟洒に、メイド長は大広間への扉を開いた。



  「やっと会場に到着ね。……ところで美鈴、あなた一体何をやらかして門番なんてやってるの?」
  「それは秘密です」

  美鈴は笑みをうかべながら人差し指を振ってみせる。

  「ああ、そういうことしてるからか。それと前に私が必要みたいなこと言ってたけどあれは何?」
  「咲夜さんを霊夢さんに止めてもらおうと思ってたんですけど、大妖精さんのおかげでいりませんでしたね」
  「どうりで私の影が薄いわけだわ」
  「いないようなもんでしたね、会話にもまったく絡んでませんでしたし」
  「ルーミアにさえ私は負けたのね」
  「だからといってこんな所で私に絡むのは反則ですけど、霊夢さんならそれもありな気がするところが罠ですね」
  「う、ばれてる」

  他愛もない話をしつつ咲夜を先頭に、一同は大広間の中に入っていく……ただ一名を除いて。

  「ちょっとー誰かこれとってよー。私が死んでもいいって言うの!」

  チルノの叫びは分厚い扉にはじかれて、届くことはなかった。











  大広間の中では二人の姉妹が仲良く談笑をしていた。

  「いい、フラン。こうやってね…」
  「ええと、こう?」
  「そうそう、いい感じよ。それで最後に『うー』よ」
  「えっと、『れ、れみり…』あ、あれ?」

  ここ紅魔館の主レミリア・スカーレットは何かを必死に妹のフランドール・スカーレットに教授している。
  せっかく姉が教えてくれているということがフランドールを真剣にさせていた。
  そして盲目的なまでにレミリアの仕草、セリフを真似ている。

  「お嬢様、失礼します……ええと、一体何をなさっておいでですか?」
  「あら咲夜、早かったわね。宴の準備は出来ているのでしょうね」
  「それは、もちろんできています。私の質問に答えてはいただけないので?」
  「あれー、魔理沙はー?」
  「咲夜の質問は完全に無かったものにされたわね」

  霊夢はここで働くのは大変そうねという感想は呑み込んで、咲夜を労った。
  その時、咲夜の脇を通り抜けレミリアの前に躍り出る一つの影。
  その影はレミリアに背を向け、逆にフランドールを敵意の視線で射抜くと、そのまま威嚇するように立ちはだかった。
  影の正体、紅美鈴はフランドールから眼を離さずにレミリアに陳謝する。

  「申し訳ありませんお嬢様。またこの様な侵入者をいれてしまいました。ですが、ご安心ください。今ここで撃退いたします。」
  「ハッ? ……一体何のこと?」
  「大丈夫です。お嬢様は何も気にする必要はありません。この私の命に替えてもお守りいたします」
  「はぁ……それはありがたいわね」

  一人息巻いている紅美鈴。この事態についていけずに空返事をするレミリアとその他一同。
  いち早く事情を察した咲夜は「あっ」と呟いて納得顔で頷いている。
  そのまま咲夜は音もなくレミリアに近づくと、レミリアだけに聞こえるように声を潜めた。

  「お嬢様、お嬢様」
  「何、咲夜。これは一体どういうことかしら?」
  「お嬢様はあの中国人風の妖怪はご存知ですよね?」
  「確か、門番をしていたわね。名前は……まぁどうでもいいわ。だからって何なのよ?」

  咲夜の遠回しな説明にレミリアはかなり苛立ってきていた。
  それでも咲夜は説明を続ける。

  「それでは、お嬢様はあのどうでもいい名前をした門番を、屋敷の中で見たことはありますか?」
  「そうね、ここ一年は見たことないわね。……ああ、そういうことか」
  「おそらく、そういうことです」

  レミリアと咲夜はお互い納得した傍で、美鈴とフランドールは対峙したまま一触即発の空気を放っていた。
  いや、緊張しているのは美鈴だけで、フランドールはすごく可笑しいといったふうに笑っている。

  「あはは、新しいおもちゃかな?・・・かな?・・・・・・お持ち帰りかな?・・・かな?」
  「お嬢様、お止めしなくてよろしいのですか?」
  「その必要はないわ。このままの方が楽しそうだしね」
  「はい。私もそう思います」

  美鈴の手にはいつのまにかナイフが握られていた。
  それは一見無造作に握っているようにしか見えず、構えもとらずに自然体でフランドールと向き合っている。
  しかし、必殺の一撃を放つ瞬間を彼女は静かに狙っていた。

  張り詰めた空気が限界まで引き絞られ、美鈴が飛び出そうとした瞬間、異変は唐突に訪れた。
  部屋全体に響く轟音と激しい揺れ。
  全員の視線が音の発信源、廊下と広間を繋ぐ扉に注がれる。
  すると扉を揺るがす音とは別に何かが砕けるミシッという音まで混じり始めた。
  しばらくの間、轟音と揺れ、破砕音が続いていたかと思うと今度は急速に治まり始める。
  訳が分からないという静寂が部屋を支配した中、それを破ったのは勢い良く扉が開く音だった。











  「もう少しで広間に到着だな。小悪魔、時間のほうは大丈夫か?」
  「不味いですね。このままだと間に合わないと思います」

  小悪魔はポケットから懐中時計を取り出すと、それを見ながら答えた。

  「とは言っても、少しぐらい遅れても問題はないと思いますよ」
  「いや、そんなもったいない事はできないぜ。紅魔館のおごりで騒げるなんて滅多にないことだ」

  そんな訳でよろしくっと言って魔理沙は突然後ろに乗っていたパチュリーを振り落とした。
  一瞬何を言われているのか分からなかったパチュリーは、次の瞬間宙に放り出されている。

  「へっ?」
  「おっと、ナイスキャッチ!」
  「悪いな、先に行くぜ」

  空中で見事パチュリーを捕まえた小悪魔は自画自賛していた。
  パチュリーが地面に落ちる前に小悪魔に回収されるのを確認した魔理沙は、突然加速し始める。
  後ろではパチュリーが扱いが悪いとか、私の意見が通らないとか言っているが、もう魔理沙には聞こえてはいなかった。

  パチュリーというハンディがなくなった彼女は本来の速さを取り戻し、最後の直線に差し掛かかる。





  大広間手前の廊下ではチルノが額のナイフと熱い戦いを繰り広げていた。

  「ん~、抜けない~」
  「そういえば、押しても駄目なら轢いてみなさいって大妖精が以前言ってたわね」
  「それならこの場合は……ん? 何の音」

  チルノが振り向いた先には、床を抉りながらもの凄い速さで突っ込んでくる黒白の物体。
  どこか別の場所で似た光景を思い出したが、結局出来たことは以前と同じく声をかけるだけだった。

  「ちょっと待ちなさいよ! 嫌、ホントにこない――ゲフーッ」

  しかし結果は同じでも過程は違っていた。
  湖ではほとんど何も言えずに散った命は、ここでは更に長く言葉を紡ぐことに成功していた。
  これなら遠い未来、いつかは犯行を未然に防ぐ日が来ないかもしれないし――やはり来ないかもしれない。

  そして箒の柄の先端にオプションを付けた彗星は勢いを緩めることなく広間の扉に激突。
  激しい衝撃音を響かせながら、少しずつ抉り、削り取りながらせめぎ合う。
  後方へは推進剤になれとばかりに無数の星を乱舞させ、周囲を星の結界へと誘う。
  空間を震わせるほどの力を生んだ体当たりは、ついに大破させることに成功すると急速に勢いを失っていった。

  「む、思ったよりここの扉は頑丈だな。ぶち抜けると踏んでいたんだが、傷一つ入らないとは。やっぱり間に緩衝材が入ったのが失敗だったか」

  言葉とは裏腹に清清しい表情を浮かべている魔理沙は、箒から床に降りて勢い良く扉を開けるとその中に入っていった。
  柄の先にはぐったりとして動かない推定チルノを乗せている。
  文字通り轢かれたためなのか、額のナイフはカランという乾いた音をさせて床に落ちる。
  その音は、静寂を取り戻した廊下にいつまでも反響していった。

  
    
  






  ナイフの音が凍りついた広間の空気を、一気に融解させてゆく。
  それと同時に中の様子を確認した魔理沙は、すぐにその異常な事態に気付いた。

  「よう、時間に厳しい魔理沙の到着だぜ。」
  「寄り道しといてよくそんなことが言えるわね」

  魔理沙の言葉に小声で霊夢が漏らした。
  霊夢の愚痴を聞こえかったふりをして、無視を決め込んだ魔理沙は、気にせず後を続ける。

  「ところで立ち位置が何かおかしくないか? 霊夢や咲夜、レミリアがそこにいるのは分かるとして、なんで美鈴とフランが対峙してるんだ?」
  「……そういえば、美鈴とかいう名前も、彼女の数多くある名前の一部だったわね」

  魔理沙の言葉を聞いてレミリアはためになったわ、と一人頷いていた。
  フランドールと美鈴は同時に声を上げる。

  「あっ、マリサ見て見て。新しいおもちゃ!」 「えっ! この侵入者は魔理沙さんのお知り合いですか?」
  「むっ、誰が侵入者よ。それにあなたこそ誰よ」 「それは私のセリフですよ。一体どうやって屋敷の中に侵入したんだか」

  更に言い争いを続ける二人に我慢の限界を越した魔理沙は、二人より大きな声を出して黙らせた。

  「ああもう、五月蝿い! 説明してやるから少し黙ってろ」
  「は~い」
  「はぁ」

  魔理沙に構ってもらえて、満面の笑みを浮かべるフランドールとは対照的に、不満の様子を見せる美鈴も一応返事をする。

  「私は、何であんたの箒にチルノらしきものが刺さっているかの方が気になるんだけど」
  「チルノの新しい遊びだ。こっちは重くてしょうがないんだがな」

  霊夢の質問に魔理沙は迷いなく答えた。
  その言葉から溢れる自信は、例え嘘だと分かっていても真実だと思わせる力がある。
  また、チルノがお休み中ということで真偽を確かめることが出来ずに、チルノの新しい性癖ということで決着がつくことになった。
  大妖精はいつのまにか魔理沙の近くに寄ってくると、チルノの顔を覗き込んでいる。

  「あは、本当に安らかに眠っていますね」
  「!! ええと、大妖精さんが言うと洒落になってませんよ」
  「???」

  魔理沙の言葉遣いに全員が違和感を感じたものの、それを誰かに疑問にされるよりも早く、魔理沙は口を開いた。

  「とりあえずフラン!」
  「なーに?」
  「新しいおもちゃがもらえてよかったな」
  「うん」

  笑いかけながらフランドールに答えてやる魔理沙を見て、レミリアも頷いているのだが背を向けている美鈴にその様子を見ることは出来ない。

  「んで美鈴」
  「なんでしょう?」
  「こいつの知り合いかって話だが、もちろん知っている。名前はフランドール・スカーレット。どっかの吸血鬼の妹君だそうだ」
  「えっ……? すかーれっと?」

  美鈴は、ぎぎぎ、という音が聞こえそうなほどゆっくりとレミリアを振り返った。
  その表情には絶望と、嘘と言ってくれるのではないかという微かな望みがうかがえる。
  しかしレミリアの口から紡がれた言葉は遠回しながら真実を伝えていた。

  「そんなことも、あったわね」
  「あ~! お姉様その言い方はひどーい」

  レミリアは何故か物憂げな表情で、ふっ、と顔をそらしてポーズをとってしまった。
  それでもまだ納得がいかない美鈴は相手を咲夜に替えて食い下がる。

  「だってだって、咲夜さん、私そんなこと初めて聞きましたよ」
  「あら? 何のこと?」

  美鈴の眼には既に涙が浮かんでいる。

  「えっとだから、フランドール様が地下から出られていたって事ですよ」
  「だってあなた、何故か最近は全然屋敷の方に顔を出さないんだもの。確か最期にあなたを屋敷の中で見かけた翌日に、フランドール様が出てこられたのよ。……どう、これで納得した?」
  「えっ? 嘘……それじゃあ私の努力の意味は……?」
  「何かしてたの?」
  「ええとですね、二度目に霊夢さんと魔理沙さんが侵入してきた時に、私は屋敷の中で休憩をとっていたんですよ。それで対応が間に合わなくって、いざ駆けつけてみたら騒ぎが収まってるじゃないですか。
   それからというもの、私はもう二度とこんなことがないようにと、門の近くにプレハブを立てて侵入者がいないか警戒していたんですよ。……どうですか?」

  美鈴は、途中からテーブルをバシバシ叩きながら抗議し始める。
  しかしそんな奮戦も虚しく。

  「「どうですか?」ってそこであなたが居直ってもねー……」
  「だってだって~」

  更には涙を目尻に浮かべたまま首を横に振って、髪を振り乱しながら叫ぶ。

  「とりあえずこれからの美鈴の任務は、フランドール様の遊び相手に決まったから。期限はフランドール様が飽きるまでよ」

  レミリアはうんうんと頷いたあと、フランドールに微笑みかける。

  「フラン、これは私からの誕生日プレゼントよ。496歳の誕生日おめでとう」
  「わーい、お姉様ありがとう」
  「イヤーー!」

  ついに泣きながら床に座り込んでしまった美鈴に、フランドールが抱きつく。

  「ねぇ魔理沙、この宴会って誕生日パーティーなの?」
  「そう、らしいな」

  霊夢と魔理沙が話している側では、気絶しているチルノを食べようとしたルーミアが、大妖精に叱られていたという。
  これから何をして遊ぼうかとフランドールは美鈴にいろいろ話しかけていたが、天井を見上げながら笑い出した彼女にはほとんど聞こえていないかった。












  宴が始まれば皆の士気が上がるのも早い。
  普段は館にくることのない妖怪も飛び入り参加の形となり、話題に事欠くことはなかった。

  「ルーミアちゃんの近くはいつも暗くて羨ましいな」
  「そうかな? でもフランちゃんには優しいお姉さんがいるじゃない。……んぐんぐ」
  「うん、自慢のお姉様だよ。ルーミアちゃんには家族はいないの?」
  「うーん、どうなんだろうね。気がついた時には一人だったからわかんないよ。……あ、この骨付き肉おかわりー」
  「えー! 寂しくないの? 私なんか周りに知ってる人がいなかったら、きっとすぐにどうかしちゃうよ」
  「きっと慣れだろうね。初めからそれが普通だったから、よくわかんないよ。……この赤いジュースもっと持ってきてー」
  「それじゃあさ、私がお姉様から外に出る許可をもらえるようになったら、一緒にルーミアちゃんの家族を探しにいこうよ―――」


  「ちょっと、レミリア。あの二人の会話、心温まる話しに見えて、外に出たときの事を考えるとやたら物騒な話しにも聞こえるんだけど」
  「あら霊夢。やっと私に吸われる気になってくれたの?」

  霊夢は半眼で睨み付けるが、レミリアは全く気にした様子はない。

  「今の話からどうやったら私があんたに吸われる事になるのよ」
  「そうすればきっと霊夢もルーミアの素晴らしさが分かるわ。ね、咲夜。」

  レミリアが呼ぶとメイド長は唐突に姿を表し、霊夢を羽交い絞めにした。

  「はいお嬢様、暗いというだけで私はいろいろな幻想ができてしまいます」
  「ちょっ! いきなり何してんのよ。しかもあんたのは幻想じゃなくて妄想て言うのよ」
  「あっ! 咲夜お姉さん、ここはもう少しきつく絞めたほうがいいですよ」
  「へぇ、なるほどね」

  大妖精はひょっこり現れると咲夜にくわしくホールドの仕方を教え始める。

  「大妖精まで何教えてるのよ。しかも呼び方変わってるしって、うわ! 何故メイド服!?」
  「「私たち実は姉妹だって事がわかったのよ」です」
  「だから私も早く咲夜お姉さんのように、立派なメイドになるために、一日メイドをしているんです」
  「声揃えてまで嘘っぽい嘘をつくな。だいたい立派なメイド目指しておいて、『一日メイド』ってやたら中途半端だし」
  「さぁ、霊夢の心の準備も出来たことだし、もう遠慮はいらないわね」
  「なんでこいつらは人の話聞かないのよ。魔理沙ー。見てないで助けてよー」

  魔理沙は切なげに顔をそらすと、一言だけ謝ってからどこかに行ってしまった。

  「霊夢、すまない。霊夢の言うとおり私は『見てない』からな。助けられないぜ」
  「裏切り者ー!」
  「さぁお嬢様。私は剥き出しの肩が、実は誘っているものだと思います―――」



  部屋の隅では、宴とはかけ離れたある種独特の世界が創られていた。
  一人目はチルノ。宴が始まるとすぐに隅に追いやられてしまっていた。まだ再生に時間は掛かるのか全く動く気配はない。
  しかし、なんとか姿形だけは元通りに復元されている。
  二人目は紅美鈴。宴が始まると自ら進んで壁端の住人になり、体育座りで将来の自分を思い描いていた。
  だがすぐに鬱状態に入っては隣の動かない相棒に話しかけている。 
  この壁端では見事に肉体の死と、心の死の見本が出来上がっていた。
  そんな者達にも話しかける人はいる。

  「なぁ、美鈴。そんなに落ち込むことじゃないと思うぜ」
  「ん……? ああ魔理沙さんですか。私のことはほっといて下さい」

  すっかり落ち込んだ美鈴は返す言葉にも覇気がない。

  「そう卑屈になるなって。遊び相手って事はいつもフランの近くにいるって事だろ?」
  「……そうなると思いますけど」
  「つまり皆お前に期待してるって事だぜ。まだフランは地下から出てきて間もないんだ。いろんなものに興味を持ってる時期だろう。そんな大事な期間を美鈴に任せるって事は信頼されてるんだろ」

  ずっと沈んでいた美鈴の顔に徐々に生気が戻ってくる。

  「それに初対面からフランにあんなに好かれてたんだ。今までのフランの生活から考えれば破格の対応だと思うぜ」
  「そう、ですよね。ありがとうございます魔理沙さん、私がんばってみます。……早速フランドール様に話しかけてきますね」

  急に元気になった美鈴は、素早く立ち上がると弾むように宴の輪の中に入っていった。
  それを見送った魔理沙からは小さな溜息がでてしまう。

  「まったく私も結構お節介だぜ。…………そういえば何か忘れている気がするんだが―――」



  大広間前の廊下

  「誰がこんなところに星屑結界なんかはったんですかー!?」
  「小悪魔、もうちょっとよ。がんばりなさい」
  「パチュリー様もそろそろ読書を止めて、自分で飛んでくださいよー」
  「あなたは私に死ねと言うの?」
  「うわーん、理不尽だー」



  「―――思い出せないって事は大したことでもないか。それより霊夢の様子でも見に行っといたほうがいいかな」

  「さぁ、そろそろ頂きましょうか」
  「「いただきまーす」」
  「なんでルーミアと美鈴まで来てるのよ! 誰か助けてーー!!!」


  その夜、乙女の絶叫が絶えることはなかったという……








       <続いたらいいな>







チルノとチルノファンの皆さん、ホントごめんなさい。


いきなり謝りましたが、chokoというものです。
おそらく久しぶりですと言うより、始めましてと挨拶した方が無難なぐらい消えてました。
おそろしいぐらい遅筆なので、多分また消えると思います。
安定して書ける人羨ましいです。

作品についてはいろいろありますが、大妖精暴走しまくりました。
設定の少ないキャラは妄想が膨らむようです。

ご意見・ご感想などもらえれば嬉しいです。キャラのイメージが壊れたという皆さん、大変申し訳ないです。


かなり訂正&修正。一行目からかなり痛いミスもあるし、自分下手すぎだよ。
コメントありがとうございます。続きもがんばります。
choko
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コメント



0.1330簡易評価
5.80名前が無い程度の能力削除
まさか大妖精が接近戦に強いとは、ビックリだ。
あの後霊夢がどうなったのか気に成ります。
ぜひ続きをお願いします。
7.60蔭野 霄削除
大妖精が素敵に黒いですv
20.50おやつ削除
続きが気になるところですね。
これはこれで纏まってると思いますが。
無邪気なフラン嬢可愛いよ。
34.80名前が無い程度の能力削除
うーん誤字が多いなぁ。
でも、ある意味大妖精が素敵過ぎて困るw