Coolier - 新生・東方創想話

七色の行方(2)

2005/05/31 02:13:26
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「……珍しい」
 霊夢が発した最初の言葉は「ありえない」の意味だった。
 自分の友達は、そういった大人しくしていることや退屈には真っ向から対立するタイプだった。ところがどっこい、本を読みながら大人しく店番をしているではないか。お茶が減ってきたのでお裾分けを求めて香霖堂にやってきたのだが、いやはや、貴重な場面に遭遇したものだ。霊夢はにやにやと笑う。
「私だって好き好んでやってるわけじゃないぜ。香霖がどうしてもって言うから、仕方なく引き受けてやったんだ」
 臆面もなく天邪鬼を発揮する魔理沙だが、霊夢は全てお見通しなのか、「ふーん」と、いやな笑いを止めない。
「まあ、いいけどね。で、その霖之助さんはどこにいるわけ?」
「あー、アリスの家に行ったぞ」
 霊夢の表情が能面になって、動きが一瞬止まる。
「……あれ? 交流とかあったっけ、あの二人」
「一、二回会っただけで顔見知り程度だろ。今日はアリスが買い物に来て、その代価を香霖が受け取りに行ったんだよ」
 淡々と状況を説明する魔理沙だが、霊夢は、彼女が少し落ち着いていないのが動作の機微でわかった。装ってはいるものの、心半分ここにあらずといった感じである。再び霊夢が笑う。
「あーあ、早く帰ってこいよ香霖ー、退屈だぜー」
「そうねー、魔理沙は退屈でしょうねー」
「……なんだよ、その『私は』ってのは」
「別になんでもないわよ。ささ、お茶でも淹れましょうか。魔理沙も飲むでしょ?」
 いやに嬉しそうにしていて、返答も待たず準備を始める霊夢を、魔理沙はどことなく遠い目で見ていた。その視線の先に映っているのが霊夢なのか、あさってなのか、はたまた違うものなのかはわからない。



「色々な物があるな。思わず目移りしてしまう」
「ええ、ちょっとした自慢よ。まあ、どれでもってわけでもないけど選んで。あなたが代価として認める物で、私が頷ける物ならなんでもいいわ」
 限定された中での「なんでも」はちょっとした矛盾ではないだろうか。霖之助はそんなことを考えながらも、陳列されている物を眺めたり手に取ったりしている。
 「未知の道具の名称と用途がわかる程度の能力」を有する霖之助は今もその力を使っており、これはいいかもしれない、これは駄目、区別しながら選んでいる。使用方法がわからないのがネックだが、あとで紫にでも訊けばいい。気まぐれゆえ、答えてくれるかも、来てくれるかも怪しいが。
「めぼしい物はあったかしら?」
「そうだね。正直、どれも興味を引く物ばかりだよ。これだって思える物しかないし、思えない物しかない」
 魅力的な道具が多々あって霖之助は心躍らせたが、さすがに「全部くれ」とは言えない。アリスが買い取った物は四セットで、他の道具はオマケにしておいても差し支えない。どれも代価になりそうで、ならなさそうで。ハズレを引きそうな悪寒があった。
「……ん」
 盛大に悩み始めようかと思った霖之助だが、すぐにそれを霧散させて、三つほど道具を手に取った。
「これはどうかな、アリス」
「えーっと、どれどれ……、……これなら喜んで譲るけど、いいの?」
「ああ、これでいいよ。……で、もう一つ、ここにはないものが欲しいんだけど」
 言葉を数秒ためてから紡ぐ。
「何かしら。この家にあるもので、貴方が欲しがりそうなのは全部ここだと思うけど?」
「いや、さっき淹れてくれたお茶があるだろう? その茶葉を分けてほしいんだ」
 「美味しかったからね」そう付け加えると、アリスはきょとんとした。
 代価に見合う物と言われて、自分の蒐集品の一つや二つや三つは覚悟していた。実際三つほど持っていかれたが、これらはすぐに手に入る物ばかり。それに加えて、茶葉が欲しいと言う。代価には程遠く、得をしたのは自分だけではないか? アリスの胸中は穏やかではなかった。
「納得できないかな?」
「あ、いえ、そんなことは……、……あるけど」
「正直だね」
「納得できるはずがないわ。誰が見たって、代価とは程遠い物ばかりよ」
 アリスが食って掛かると、霖之助は微笑んだ。
「正直どれも僕には魅力的過ぎてね、どれにするかだなんて選べなかった。だから、直感で選ぶことにした。茶葉はそれの足しさ。どこかの巫女が、僕の店にあるお茶をどんどん持っていってしまうからね」
 霊夢のことかな。アリスは直感した。確かに、彼女なら有無を言わさず持っていってしまいそうである。
「要するに見方の問題だな。僕はこれらで、『代価に相応しい』と思った。これじゃ駄目かい?」
 概念の問題だと霖之助はアリスに諭した。しかし、
「貴方の方はそれでいいでしょうけど、生憎私は、はいそうですか、って引き下がれないわ」
 アリスは常に相手よりも少し上の力を出して勝とうとする。今、この場は彼女と霖之助の戦いの場になっている。これでいいとする霖之助に対し、それではこっちが略奪をしたみたいだと納得しないアリス。『常に上の力で勝つ』彼女として、退くわけにはいかなかった。
「……はぁ、わかった。僕が折れるよ」
 そのまま膠着状態に入りそうになると、話の腰を折る霖之助の一撃が場の空気に炸裂した。精神的に拍子抜けし、アリスは目を見開く。
「じゃあこうしようか。さっき言ったと思うけど、僕の店から茶葉を度々強奪する巫女がいるんだ」
「ええ、聞いたけど。それがどうかしたの?」
 すると霖之助はまた微笑んだ。
「さっき淹れてくれたお茶は定期的に仕入れているのかい?」
「え、ええ。切れそうになったら仕入れてるから定期的とは言いがたいけど、一応仕入れはしてるわよ」
「僕もお茶が好きでね。店で読書をしながら飲むのは格別に美味い。雰囲気が美味いとも言うね」
 その気持ちはアリスにもわかる。なんとなく飲むお茶が日によって味が違うことと似たり寄ったりだろう。
「僕のお茶は一ヶ月に一度、狙ったかのように切れる。そこで相談だ。来月から、定期的に僕のところにさっきの茶葉を持ってきてくれないか?」
 唖然。アリスは文字通り唖然とする。そんなことでいいのか、それで代価に相応しいと言うのか。
「これ以上は僕も譲歩できない。君と僕では見方も違うだろうから、『そんなこと』と思っているだろうけど、お茶がなくなることは結構きついんでね。定期的に手に入る約束があれば心労も減るだろうし、君にとっても悪くない取引だと思うけどね。この三つとお茶の定期仕入れプラス僕の心身の健康のため。どうだい?」
 アリスはこれにも口を出そうと思った。が、霖之助にも退く姿勢が見えない。このままいけば、本当に終わらないだろう。妥協することは少し癪だが、今度はアリスが折れた。
「……はぁ。頑固ね、霖之助さん」
「なに、君といい勝負だろう?」
 それもそうね。アリスは口には出さなかったが、霖之助には伝わっただろう。
「じゃあ頼むよ。わざわざ僕のところまで出向くのは面倒くさいとは思うけど」
「ええ、まったくだわ」
 アリスが苦笑すると、霖之助も続いた。五十歩百歩の勝負はとりあえず引き分けと言う形になった。
「……さてと、けっこう時間が経ってしまったな。そろそろ帰らないと店が危ない」
「品物が全部なくなってたり?」
「……」
 想像して、目眩。霖之助の挙動が忙しなくなってくる。それが少しだけ見かけから推測する年相応には見えず、アリスは噴出しそうになった。
「それじゃあ僕は失礼するよ。お茶は今日から一ヶ月区切りでいいから」
 冷静さを装うも、にじみ出る焦燥は隠せない。アリスが「ええ、それじゃあ気をつけて」と言うやいなや、すぐに家から飛び出ていった。
「……見方の問題、ね」
 それ一つであらゆるものがひっくり返ったり昇華されたりするだろう。是非とも学ぶべき事象だ。ましてやアリスは魔法使いであるので、そういった柔軟な発想は大事になる。
「さてと、みんなを修繕しないとね」
 考えることは後回しにして、アリスは大事な人形たちの待つ作業部屋へと消えていった。
次の展開にかなりつまった挙句、こんな意味不明な文章が。反省。
それは嵐のようなすさまじい渇きだったッ!!(黙れ)
この話はこーりん×アリスではないですが、それにしか見えないですね。Λ||Λ<あ、ロープとってください
それではこのへんで失礼します脳髄グシャー。
彼岸
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コメント



0.2030簡易評価
10.50ねぐせ削除
続編が楽しみです脳髄グシャー。
12.無評価K-999削除
そ、その語尾はショッキングすぎるッ!! 異邦人+は男性読者一割なのにっ!? 関係無いっスね脳髄愚者ー(ぉ

私の見解では魔理沙は気に入った相手の前でしか傍若無人な振る舞いをしないと・・・そんなことはないかも^^
しかし、この魔理沙の霖之助に対する複雑な、或いはわかりやすい感情が新鮮でよいですねー。

私は魔理沙ノーマル派です^^
13.80K-999削除
点の入れ忘れでした。失礼。