「ふふふ・・・ついに・・・ついに完成したぜ・・・!」
そんな、どこぞかの世界征服を目論む科学者のような、使い古された陳腐な言葉を、
魔法の森の住人にして「自称」普通の魔法使いである霧雨魔理沙は、赤い目を血走らせながら呟いた。
時刻は、もう寅の三つを過ぎたあたりであろうか。
「この冬にしか生えない幻の惚れきのこから作ったこれさえあれば・・・ッ!霊夢はきっと!今度こそ私に振り向いてくれるはずだ!」
そう叫びながら、魔理沙は白い液体の入った小瓶を天高く掲げた。
よく見ると、噴霧する器具がついている。
どうやら、体に降りかけて使う、恐らくは香水なのだろう・・・。見た目は。
「決行は明日・・・いやもう今日か。とにかく・・・七日七晩かけて作ったから・・・疲れた・・・ぜ・・・。」
そう言うや否や、魔理沙は、研究用の机に突っ伏したまま、深い眠りに落ちていった。
紅く煌け恋の色。
次の日。
博麗霊夢は、雪の降りしきる境内を眺めつつ、一人コタツで緑茶を啜っていた。
雪は吹雪とまではいかないが、雪も大きく、つい先ほどから勢いが急激に増した。
これでは参拝客は見込めないなと踏んだ霊夢は、掃除もしないでのんびりすることにしたのだった。
最も、雪だろうが雨だろうが晴れた日だろうが、賽銭箱にお賽銭が入っていることなどないのだけど。
「だぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・」
そんな、色々とあきらめて境内の雪を肴に茶を啜っていた霊夢は、何かが叫ぶような声を聞いたような気がした。
それでも今は雪、音などほとんどしない筈だ。
気のせいだろうか?そんな疑問を浮かべながら、それでも変わらず茶を啜っていた。すると。
「だああああああああああああああああああああ!!」
ドゴーン!!!ズササササササァー!!
よく知った声の絶叫。その後、境内に爆音が響いた。
その後なにか棒のようなものだろうか、それが高速で滑って行くような音がした。
それでも、霊夢は茶を啜るのを止めずに、目の前に伏している白黒の・・・いや、今は白白黒くらいだろう。
そんな、本当によく知っている彼女に、一声かけた。
「元気ねぇ。」
彼女は本当にそっけなく、かつ簡略に言った。が、顔は嬉しそうだった。
私は、霊夢のそんな突っ込みに、埋もれている体を起こしながら。
「そうだな・・・っていや、そこはせめて『大丈夫?怪我はない?ああ早く介抱しなきゃ!!
まずは服を脱がせないと・・・ああん!でもこれは介抱なのよ!だからやらなきゃいけないのようふふあははははっ!!』
ってくらいまで言うところだろ?」
「それだけ喋れるなら平気でしょうが・・・。それにあんたが私の喋り方するとすごい違和感あるわね。
なにより、魔理沙、内容が私じゃないし・・・。」
「うぐ・・・っ!なにもそこまで言わなくてもいいじゃないか・・・。」
しかし、だ。いつもはこうやって流されてしまう私だが、今日は違う。秘策はすで我が身にに振りかけてあるのだ。
あとは・・・この匂い。『惚れきのこ香水』を嗅がせればいい。そう、たったそれだけなのだ。
そうすれば既成事実などいくらでも・・・。
「なあ霊夢。」
「何よ?」
「そっちにいれてくれ。」
(よし!さりげなく、かつ自然に言い切ったぞ!これを断るような霊夢は霊夢じゃないはずだ!)
「んー・・・どうしようかなぁ。お茶請けはもう私の分しかないし・・・。」
・・・霊夢じゃなかった。
「霊夢!頼む入れてくれ!こんな寒い日に野ざらしじゃ流石に死・・・にはしないけど悲しすぎる!」
必死だった。七日七晩かけてようやく掴んだチャンスなのだ。
だからこそ、こんな雪の誰もこない日を選んだのだから。途中、夕立ちならぬ雪立ちに遭ったのは誤算だったが。
「うーんどうしようかな・・・って。ん?・・・ふうん。
魔理沙、冗談よ。あがりなさい。でも、とりあえず雪は払ってね?お茶とタオル持ってくるわ。」
(なんだか、急に態度が変わった様な気がしたが・・・気のせいか。)
単に、あまりに必死だったので哀れに思われただけだったかもしれない。
それでも、嬉しいことには変わりはなかったので、私は意気揚々と、神社の中に入っていった。
部屋に入り、コタツに入った私は、コタツの中でガッツポーズをした。完璧だ。英語で言うならパァーーフェクトだ。
さあ、早く戻ってこい霊夢!そして二人でめくるめく向こう側、百合の世界へ―――――――――――――――――――
「おまたせー・・・って魔理沙・・・あんたどうしたの?顔が赤いし、なんかクネクネしたりして・・・。」
と、急に霊夢が怪訝な口調で聞いてきた。
「うおおっ!?」
「・・・?魔理沙、あんた今日・・・ああ、なんでもないわ。」
そう言いながら、霊夢はお盆をコタツに乗せて、自分もコタツに入った。
ふう・・・なんとかやり過ごせた。危ない危ない、無意識下であろうと、
この霧雨魔理沙が醜態を晒すというのは霊夢の株を大きく下げかねん。
そんなことになれば、私は霊夢争奪戦から速攻で脱落だろう。それ程に彼女、博麗霊夢は狭き門なのだから。
しかし、霊夢が来て、コタツに入った。ちょうど向き合う形になっている。つまり・・・射程圏内に霊夢が入ったということだ!!
「はい、お茶。」
そう言って霊夢はお茶を私の前に差し出す。
「お、サンキュ。」
私も心の昂ぶりを抑えつつ、超クールに決めた・・・はずだった。
「・・・。」
「・・・。」
何故だろう、どことなく居辛い雰囲気がするのは私の気のせいだろうか。
「・・・。」
「・・・。」
別段何も気まずいことはしていないはずだ。
(霊夢はさっきからお盆を隅においたり、今はコタツの上のみかんを慣れた手つきで剥いているし・・・って
ああ、霊夢は白い所ちゃんと剥くのなー剥くとき結構神妙な顔だな、ほほー器用なもんだなあ)「魔理沙。」
「ってぬお!?ど、どうした霊夢?」
「『どうした霊夢!?』じゃないわよ。あんた、さっきから私の事ばかり、しかも力いっぱい見てるじゃないの。」
「!」
(不覚!しまった、霊夢をロックオンしたのに浮かれて熱視線だけ送るなんてとても私からぬ不自然な行動をおおお!)
「あー・・・いやー・・・ほら、あれだ。私さっきコタツはいったばかりだから、寒くて体が動かなくってさ。
というわけで霊夢、私にもミカンくれるか?」
「ふうん・・・。そう、ならいいけどね。でも、あまりそういうのは慣れてないから、なるべく止めてよね。」
「あ、ああ、悪いな霊夢。」
「分かればいいのよ。」
そう霊夢は微笑みながら次のミカンに手を伸ばしていった。
(くう・・・今回も凌げたが・・・。やはり浮かれすぎているらしい。
・・・クールだ。クールになれ・・・!魔法使いって奴はどんな状況でも常にクールじゃなきゃいけねえっ!!)
私は、ヴワル魔法図書館から拝借した本に載っていた、ある大魔法使いの言葉を思いだし、自分を戒めた。
そう戒めて、ミカンを食べているうちに、ふと気付いた。
そう、おかしいのだ。何がおかしいって、霊夢に変化がまったく起こらないのだ。
言動、行動、状態、どれをとってもいつもの霊夢そのものである。
調合の際に読んだ本が間違えていなければ、効果は嗅いでから五分もせずに現れるはずなのに。
まさか・・・調合をミスったか・・・?だとすれば今までの苦労も水の泡だ。
なにせこの惚れきのこは幻想郷の冬限定、しかも探し出すのに五日もかかった代物である。
それに加えて調合するのに二日、さらにこの雪立ちの中ここまで来たのも全て無駄に・・・。考えたくなかった。
(しかし・・・これだけ時間が経ってなおこの有様では・・・失敗と認めるしかないのだろうか、いやしかし)「魔理沙ぁ?」
「!?れ、霊夢?」
本日数回目のカットインだった。いや、それだけではない。
私を何より驚かせたのは、霊夢の私を呼ぶ声が、妙に艶のある声だったからだ。
「ねえ魔理沙ぁ、ちょっと、聞きたい事があるんだけど・・・いいかしらぁ?」
「!?」
お、落ち着け!落ち着くんだ私!さっき戒めたばかりじゃないか!ってうわ、霊夢の目が潤んでる!?
「ななな、なんだ霊夢!?」
私は、なけなしの理性をすっかり冷めた緑茶を啜る事で死守しながら、霊夢に質問を促す。
「あのさぁ・・・、魔理沙って・・・好きな人いるの?」
「ぶっ!!?」
緑茶防衛線は跡形もなく粉砕した。いや粉砕だと語弊があるな。霧散した。ってそんなことはどうでもいいんだよ!
「げほっ、な、何を急にそんなことお?唐突すぎて話がみえないじぇ!?げほっ!」
吹いたときに肺に入ったらしい、霊夢の急変からの動揺と咳き込みで呂律が回らない!
「ふうん。いるのね?」
「いや、私はまだいるだなんて・・・!」
(・・・いや、まったくもってその通りで、目の前にいるんだけどな。しかも何故か追い詰められている・・・。)
咳き込みは収まったが、戸惑いが収まらない。やっぱり、成功してたのか!?
そんな疑問など露も知らないであろう霊夢は、おもむろにコタツから出て私の後ろに回った。
(い、一体何をする気なんだ霊夢)「!!!」
頭が嬉しさと驚愕で一瞬真っ白になった。霊夢が、私の、この霧雨魔理沙の首にもたれ掛かってきたからだ。
そして、そのまま彼女は私の耳元に囁く。
「それは・・・誰なのかしら?魔理沙。教えてくれるとうれしいなぁ。」
(これは・・・これはもう間違いない!!効果が出たのだ。恐らく相手が霊夢だったから、効きが遅かったに違いない。
間違いない、霊夢の奴普段から恐ろしくマイペースだし!)
私は霊夢に耳元に囁かれて、今までの戸惑いが、香水の効果、引いては私の勝利による副産物であったことを確信した。
やはり、私はミスなどしてはいなかったのだと。正義は勝つのだと。・・・何かが違うって?そんなことはないぜ。
嗚呼、そんなことより。思えば色々あったなあ・・・
レミリアと霊夢を賭けて弾幕ごっこで戦ったこととか。
アリスのやつと霊夢を賭けて弾幕ごっこしたこととか。
八雲ファミリーと霊夢を賭けてやっぱり弾幕ごっこしたこととか・・・って全部弾幕ごっこじゃないか。
そのくせ、全部どこから知ったのか必ず霊夢が飛んで来て。
双方ともムソーフイーンで叩きのめされて終わっていたのだがな・・・。
・・・泣きそうになった。まあ、本人承諾無しで霊夢を賭けていたのが悪いのはわかるのだが。
(だが!!そんな日もこれで終わりだ!あとは霊夢に告白すれば!)
そう意気込みを新たにして、私はもたれ掛かっている霊夢ごとコタツから出て立ち上がった。
そして、霊夢を立たせて、真正面に立たせて見つめる。・・・肩を抱くのもポイントだ。・・・何のポイントだって?
それは聞いちゃいけないぜ。察しなきゃな。
「霊夢・・・。あのな。私が・・・私が好きなのは・・・『ちょっと待って魔理沙。』」
(な、何でそこで止めるんだ霊夢ぅぅ!!本当に本日何度目のカットインだよぉぉ!?)
と文句を言おうとしたのだが・・・霊夢の顔が紅い、
さらに潤んだ目に加えて上目遣いの三段コンビネーションに、私は・・・負けた。
「な、なんだ霊夢?」
「目を・・・瞑ってて欲しいの。」
な、なんていうこと!流石霊夢!私が思いつかないことを平然と言ってのけるッ!!そこに痺れる憧れるぅぅ!!!
「あ、ああ・・・分かった・・・。」
そう返事を返して、私は目を瞑る。もう心臓はバクバクだ。テンションもかなりおかしくなっている。
(それなのにこの表面上のクールさ!!最高だ私!嗚呼、早く!早く霊夢!はりーあっぷ!れいむ!!)
そんな劣情と自画自賛に陶酔していると、顔の前に気配を感じた。ドクン。と心臓が跳ねた。
間違いない。この気配は、霊夢の・・・顔なのだ。
近づいてくる。近づいてくる。更に。更に。もう霊夢の熱が感じられる。息遣いも聞こえる。
私は、心が真っ白になっていくのを感じた―――――――――――――――――――――――――――――――――
『ぺち。』
「・・・。」
「・・・。」
(・・・ぺち・・・?ぺち・・・ぺち??ぺちって・・・なんだ・・・・?)
思考が五秒程止まった。更に目を開けるという判断に至るまでに五秒・・・。
「!???」
猛烈な勢いで目を見開いた。思わず、私は・・・息を飲んだ。
そこには、境内に降り積もった雪をバックに手を後ろに組み微笑む、白銀を背負った紅の巫女。
目を開けたばかりなので、白の眩しさが相まって、微笑んでいる霊夢が一層輝いて見えた。
・・・ちなみにおでこには「焼肉定食」と書かれた御札が付いていた。
(あぁなるほど、『ぺち。』っていうのはこの音かぁ・・・。ってかそんなに食べたいのか?焼肉定食。
・・・あぁ、霊夢貧乏だしなあ・・・。)
「っておおおおおおい!??!」
「あらら、随分反応が遅かったわね。にしてもその姿・・・ぷっ。あはは!」
と、霊夢は私の呆け切った姿を見て笑い出した。
「い、一体これはどういうことなんだ!?確かに惚れきのこの香水が効いていたはずなのに・・・!?・・・あ。」
・・・神は死んだ。いや、幻想郷の創造主が誰かなんて、私には分からないが。
《・・・おお魔理沙よ口に出してしまうとはなさけない。》
・・・いや、いた。聞こえたぜ・・・神の声が。でもやっぱり。何も変わらないぜ・・・。
「あははははっ!やっぱり・・・、それだったのね・・・・。うくくくくっ!」
「な・・・やっぱりって・・・なんだよ!?」
もう、何がなんだか。頭がすっかり混乱している。そんな私を見て、霊夢さらに大爆笑。
こんな霊夢も珍しいがやっぱり話が見えない。
「あんた、部屋に上がるときに、これ、落としたでしょー。」
「!!!」
笑いを堪えながら、そう言って霊夢が白い液体が入った香水瓶をかざす。
・・・私は、ショックで心臓がドクンとまた跳ねた。そして恐る恐る瓶が入っているはずのポケットに手をいれた・・・。
「え・・・あ、あれ!?ない!?・・・だ、だけど!なんでそれが惚れきのこ香水瓶だってわかるんだ?!」
なけなしの反論をしてみる。悪あがきに過ぎないということすら気付く余裕すらない。
「簡単よー。だって・・・昨日アリスに同じような事されて同じような展開になったんだもの。」
「・・・ナンデスト?」
急に口調がロボットになった。そして今までの流れが急激に理解され始めた―――。
(つまり・・・あれか?霊夢は始めから演技してたってことか・・・?私は・・・あれか?
・・・ピエロ?霊夢の掌で踊ってたっていう・・・。なによりアリス・・・お前と考えが被るだなんて・・・。)
私は、その考えに至り・・・、頭が真っ白になり・・・。なんかもう色々と絶望的な気分になった。泣きたい。
そう思った私は、部屋の隅で体育座りで隅に向き合った。『の』の字をクルクルと描き始める。
「魔理沙?」
「・・・。」
「魔理沙―?大丈夫?」
「・・・。」
「魔理沙・・・。もしかして・・・拗ねてる?」
「・・・悪いか。」
「ふふ。そっかそっか。」
とてもではないが、霊夢の顔など直視できない。そうだとも、負け犬は負け犬らしく。
ふふ、そうだなアリス、今ならお前と、素直に傷の舐め合いができそうだぜ・・・。
「魔理沙・・・。」
「!?」
霊夢の手が私の体を回して、霊夢の正面に向き合わされた。
それから、急に霊夢の奴が目を閉じて。顔を近づけてきたと思ったら・・・。
その・・・おでこに・・・キスを・・・された・・・。
「な・・・なっ・・!?」
「ありがとね、魔理沙。」
「!!!」
「今のは・・・、私の気持ちよ。魔理沙。私は・・・、あんたが大好きよ。
でもね魔理沙、私は誰か一人を選ぶ事はできないの。全てを認めて・・・、全てに平等に接しなければ。
なぜなら。私は人である前に巫女。そして、巫女である前に博麗なのよ。
幻想郷を護り、幻想郷の全てのものを許容する中立の存在。
だからね魔理沙。私は一人、飛んでいなければいけないのよ『そんなの、私は嫌だぜ。』・・・え?」
霊夢は、そう言いながら・・・ほんの少しだが、泣いていた。多分泣いていることにも気付いてないのだろう。
だから今日初めて、霊夢の言葉を塞いだ。そして、そのまま宣言する。
「私はそんなの嫌だ。そういったんだ。霊夢。お前が人である前に巫女で、巫女である前に博麗だとしても。
お前は博麗である前に霊夢のはずだ。なら、問題ないじゃないか。
私は恋色、あらゆるものを音速で看破し、吹き飛ばす、魔砲の使い手だぜ?
陰陽も、五行も、七曜も、敵わない。一つ輝く命の力なんだ。
私は・・・ずっとお前の傍にいたいんだ。この恋の炎は消せやしない。だからな、霊夢。
どんな制約も、弾幕も、道理からも。霊夢・・・、いつかお前を攫って突きぬけてやる。突き破って・・・振り切ってやる!」
言ってやった。あまりにも彼女が遠いから。それでも、私は諦められないから。啖呵を切ってやった。
涙が出そうだった。でも堪えた。泣いたらこの宣言は虚偽になってしまう。
「だから・・・、泣くな、霊夢。まあ、お前が泣いてる所なんて、そう滅多に見られないだろうけどな。」
涙を堪えて笑いながら、霊夢にそう言ってやった。・・・恋がまた燃えた。
「馬鹿・・・。」
悪態をつきながら、言われて気付いたのか、目に溜まっていた涙を、彼女は払い。
霊夢は、笑った。
そうだ、それでいい。
その笑顔が、おそらく私の人生での宝物になるのだから。
その存在が、私の目指す目標になるのだから。
それでこそ、素敵な楽園の、霊夢だ。
そして私も・・・、笑いながら悪態で返す。
「恋は、馬鹿じゃなきゃ・・・やってらんないだろう、霊夢?」
ふと外を見る。雪は、いつの間にか止み、夕暮れに差し掛かっていた。
「さて・・・と。私はそろそろお暇するぜ。」
「あら、もういいの?珍しい。」
「ああ、大分すっきりしたし・・・な。」
恐らく、私の顔は赤いのだろう。だが、今は夕暮れだ。気にするものか。
「そう・・・。それじゃあ、気をつけてね・・・?」
そういう霊夢の顔もまた、心なしか赤く見えたのは、私の目の錯覚か。
分からないが、もしそうなら・・・。いや、止めた。所詮仮定に過ぎないし、
私はそんな不確かで曖昧な部分は見せないと心に決めてある。
全ては努力と試行の上の研鑽・・・その上で確かなものを、私は掴む、手にいれる。
「ああ。じゃあ、またな霊夢!」
そう言って、私は相棒の箒に魔力を込め。音速で、この博麗神社を飛び立った。
飛んで家路に駆けて行く。太陽も、もうすでに三分の二以上が沈んでいた。
夜になれば、ここは全てを許容する幻想郷。妖々跋扈、百鬼夜行が当たり前に存在する世界だ。
(だけども。私は負けない、負けない。負けない!)
吸うっと息を大きく吸った。そして。この想いを叫ぶ。
「さあ、恋を続けよう!勝負だ博麗!いや・・・、幻想郷!私は必ずお前から!!霊夢を、かっ攫ってみせるぜ!!!」
空中で、私は、高々と宣言する。必ず、必ずだ。絶対に成し遂げて見せる!
こうして箒は飛んでいく。魔理沙の想いを恋色に変えて。
その軌跡に数え切れない程の、星の煌きを散らして。
Fin
おまけ?(蛇足)
その後、この叫びを見ていたどこぞの夜雀が、幻想郷中に言いふらしたせいか。
はたまた、どこぞのスキマが、神社での出来事をやはり幻想郷中に言いふらしたせいか。
それとも、どこぞの紅い吸血鬼がこの事を門番に口走ったせいか。
とにかく。魔理沙のいう、『霊夢争奪戦』は、幻想郷の歴史に、そりゃあもう太い太字で刻まれて。
幻想郷で、この戦いの名を知らない者はいないくらい、そりゃあもう常識になるほど。
激しく凄まじく。歴史に残存するだけで総計500戦を超えた、熱いものだったそうで。
勝者が誰だったのか。はたまた勝者なんていたのか。それは、今尚不明なのだそうな。
<ってけーねがいってた。
<そーなのかー。
・・・今度こそFin
あと、最後の魔理沙の一言、「博麗」が「博霊」になってますが、故意的でしょうか…?
「フォォォォォォ
魔理沙は俺なんて言わないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
ということで、-50点して20点をどうぞ。次回からは気をつけて下さいね。
ツッコミは他の方にお任せするとして。
恋もSSも・・・・・・馬鹿じゃなきゃやってらんないですね!
>ある大魔法使いの言葉
それって、どこぞの『言葉の魔術師』ですか?
駄目だ魔理沙! KOOL(誤字に非ず)になんかなるな!!
>名前を間違われる程度の能力様、名前が無い程度の能力のお二方様
両方とも「私」でしたか・・・。ご指摘感謝です、修正しておきます。
東方なのですが、PCスペックが足りなくて文字が潰れてしまいます・・・。
ですが言い訳無用、勉強不足。要精進します。
>雪羅奈界様
これも自分の勉強不足です。λ....同じく修正しておきます。
>春雨様
なにぶん書くのは初めてだったので、相当目に痛い文になってしまっているなと反省中です。とりあえず、知識は備えてある馬鹿になりたいです・・・。
>蔭野 霄様
読んでもらって、コメントまでつけてもらえるだけで十分に有難いです。
それで大魔法使いネタなんですが・・・多分違うと思います・・・。
すいません。ネタはジャンプのダイの大冒険のマトリフ師匠から持って来ました。
読んでいて気持ちよく、文体も読みやすかったです。
これからも頑張って下さい。
突っ走る魔理沙が可愛らしくてぐっじょぶです。でもこの魔理沙は絶対圭一なのですよ。みぃ。
東方について知りたいなら幻想郷ワールドガイドとかほんのひなんじょ辺りを参考にすると幸せになれるかもしれません。
izu様、名前が無い程度の能力様、コメントありがとうございます。
>名前が無い程度の能力様
コメントを頂いてから、幻想郷ワールドガイドさんの方に突貫してきました。
全部読んでみて。自分の各キャラ、特に今回だと魔理沙描写の勘違いっぷりが相当・・・いや、かなり。
やはり若輩です。ですが、こんな阿呆にご教授して頂いて、ありがとうございます。幸せでした。吸収してゆきます。
>izu様
文体の方は、なるべく文同士が固まらないようにしてみました。というのも、自分が固まって塊のようになっている文章郡を見ると畏縮してしまうのがあるからなのですが・・・。
これからも、頑張ります。もっといいお話が創れるように。
お褒めに預かり感激の極み。ありがとうございました。