Coolier - 新生・東方創想話

東方昼ドラ(3)(終)

2005/05/28 13:58:28
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運命の日の出来事以来、パチュリーはレミリアに会っていない。
謝ろうとレミリアが行きそうな紅魔館の部屋に何度も足を運んだ。
しかし、レミリアには会うことが出来なかった。
咲夜に、レミリアがどこに行ったか聞こうと呼び出すも、いつもは紅魔館で
「咲夜」と呼べばすぐにどこからともなく駆けつけてきてくれるのだが
なぜか今回は現れなかった。


紅魔館を探してもレミリアに会えないが、あそこへ行けば会えるかもしれない
と思っているところはある。
博麗神社。そこにいる霊夢のところにレミリアはきっといる。
でも、パチュリーは神社へ行くことが出来なかった。
怖いのだ。自分が神社へ行って、もし霊夢とレミリアがお互い深い仲になっていたら
と思うと・・・これ以上自分が傷つき、拒絶されると思うと・・・


そうして、パチュリーはどうすることもできず、運命の日から三日経っていた。
今では、パチュリーはレミリアを探すということも諦め始め、一日中図書館に篭り
レミリアが、パチュリーと運命の日を祝うために用意していたテーブルの席に一人座り
誰もいない向かいの席をずっと見つめ
「レミィ・・・ごめんなさい・・・ほんとうに・・・」
と、謝るだけの何も無い、悲しく孤独な時間を送っていた。


「ふー、いつもは毎日のように来ていたが、今回は3日ぶりだぜ」
時間的には昼を過ぎた頃。
紅魔館の長い廊下を、魔理沙は箒に乗って、ゆったりとしたスピードで飛んでいた。
「今回のことで気持の整理って難しいのがわかったぜ・・・もしかしたら部屋の整理より
難しいんじゃないか?」
誰に言うわけでもなく、ぶつぶつ言いながら、図書館の方へ進んでいく。
「でも、いつまでもウジウジしているのも私らしくないしな。調子を取り戻すため本を
数冊拝借して、パチュリーに怒られれば完璧に大丈夫だろう。今日はそのためってわけじゃ
ないがバックを持ってきたし・・・」
そう言って、肩にかけた少し大きめのバッグをなでる。うん、それなりに詰め込めそうだ。
そうして、ぼやいているうちに魔理沙は図書館の扉の前に着いた。


(ちょっと、やっぱり緊張するな・・・)
そう思いながら、図書館の扉を開ける。
「おーい、パチュリー。遊びに・・・・パチュリー?」
図書館に入り、パチュリーを見て魔理沙は唖然とした。
パチュリーは綺麗なテーブルの席に一人座って、涙を浮かべ、誰もいない向かいの席に
むかって、ぶつぶつと聞き取れない声で何かをつぶやいていた。
「おい、パチュリー!どうしたんだ!?」
魔理沙はそんな涙を流しながら、何を言っているのかわからないパチュリーの側へ駆け寄った。
パチュリーは駆け寄ってきた魔理沙を数秒見る・・・そして涙を溢れさせて魔理沙にしがみついた。
「おい、どうした?何で泣いているんだ?」
「わ・・・し・・わた・・し・・れみぃと・・」
「落ち着け、落ち着いて私に何があったか話してくれないか?」
しがみつき、魔理沙の服を涙で濡らすパチュリーに、魔理沙はおろおろしながら事情を尋ねた。
パチュリーはしがみついたまま、自分が魔理沙の家から帰った後のことを、話しはじめた。


話し終えると、先ほどより力強く魔理沙にぴったりとしがみつく。
そんな、しがみついて泣いているパチュリーを魔理沙は・・・抱きしめず、パチュリーの
肩に手を置き、そしてゆっくりと自分から引き離した。
「なぁ、パチュリー。私にしがみついても、そして泣いても、何も解決しないぜ?」
「魔理沙・・・」
パチュリーを引き離し、真っ直ぐパチュリーを見つめながら、少し突き放すような口調で
魔理沙は語りかける。
「お前、私に言っただろう?辛いし苦しいけど・・・それに負けないくらいレミリアが
好きだって?あの言葉は私を諦めさせるためについた嘘だったのか?」
「違うわ!そんな事は絶対に無い!!」
パチュリーは、力強く魔理沙の言ったことを否定した。
「なら、その辛い気持に負けるなよ。お前はこんな辛い今もレミリアが好きなんだろう?」
「・・・ええ」
「なら大丈夫だ。お前達はきっと仲直りできる。あいつだって本当はそうしたいはずだ。
だからもう泣くのはやめだぜ?」
魔理沙がパチュリーにウィンクする。
「魔理沙・・・・ありがとう」
再び涙を流し、その流れた涙を拭きながらパチュリーは少し笑った。
「とりあえず、今は図書館じゃなくて、自分の部屋に戻って休んだ方がいい。
なんだ・・・私が言うのもなんだが、今のパチュリーは・・顔がひどいぜ」
魔理沙は頬を欠きながら、パチュリーに申し訳なさそうに目をそらして言った。
今のパチュリーの顔は、目が赤く、鼻も赤くなっている。
そして、あまり寝てないせいか顔色もよくない。
魔理沙に忠告されて、自分の顔がそんな事になっていると気づかされると
パチュリーは恥かしくなり、自分の顔を両手で覆って隠した。
「あはは。まぁ、だから、とりあえず今は休んで、そしてレミリアを捕まえてお前の
気持を伝えてやれ。あいつもきっとそれを望んでる」
「ええ。私、絶対レミィと仲直りしてみせるわ」
「その意気だぜ。さて、私は今日の所は帰ることにするよ。本当は本を拝借していく
つもりだったんだけどな」
「な・・・!?」
パチュリーの罵声が飛ぶよりも早く、魔理沙は箒にまたがり、すぐに図書館から出て
行ってしまった。
何も言えずに固まってしまったパチュリーだったが、魔理沙が
出て行った図書館のドアを見ながらパチュリーは「ありがとう」とつぶやいた。
その後、魔理沙に言われたとおり、少し休もうと自室に戻ったのだった。


図書館から出て、魔理沙は真剣な顔をしてスピードを出し、紅魔館の出入り口に向かって
廊下を飛ぶ。
(世話がかかる二人だぜ・・レミリアの奴・・・・)
そして、魔理沙は勢いよく紅魔館を飛び出していった。


「ねぇ、レミリア、聞いてるの?」
「・・・ええ、聞いているわ」
昼過ぎの時間、レミリアは博麗神社に来ており、そこで霊夢と二人、いつもと同じ、神社の
中にある畳部屋で、お茶を飲みながら話をしていた。
「じゃあ、私が今、何を話したか言ってみなさいよ?」
「え?・・・・紅白についてかしら?」
「・・・・なによ・・・それ」
霊夢とレミリアの会話が全然成立しない。いつもならレミリアが、これでもか!という
くらい、霊夢に話しかけてくるのに、ここ三日間、あのレミリアが霊夢に言った『記念日』
の次の日から、ずっとこの調子だった。お茶はこぼすし、饅頭は転がすし、話しかけても
会話は成立しない。来たと思えば部屋の窓から外の景色をボーっと、見ているだけだった。
しかも、今日は曇りで外が暗い。それが、より一層レミリアを暗く感じさせる。
「ねぇ、やっぱりあなた変よ?何かあったの?」
霊夢がレミリアに「話して」と言うが、レミリアは霊夢に話そうとはしなかった。


レミリアは何も言ってくれないが、霊夢はわかっていた。簡単な事だ。
あの日、レミリアは帰る前に霊夢に「今日はね、私とパチェの記念日なのよ」と言って
レミリアは紅魔館へ帰って行った。そして次の日、神社に来た時から、このような暗い
感じになっていた。
ということは、何かあったとなれば、それはパチュリーが関係しているのだ。
それ以外、もしかしたら他に何かあるのかもしれないが、霊夢にはそれしか考えられなかった。


静かな沈黙が部屋を支配する。
ふっと、レミリアが顔を窓から隣にいる霊夢に向けた。
「霊夢、お願いがあるのだけれど、いいかしら?」
「なによ、突然?聞いてみなくちゃわからないけど、私にできる事ならいいわよ」
「私を・・・抱きしめてくれないかしら?」
「は?・・・だ・・・抱きしめるの?」
霊夢はレミリアのそんなお願いに驚き、戸惑ってしまった。
顔は火照っていき、手が汗ばんでいくのがわかる。
そんな霊夢とは逆にレミリアは真剣な顔をしている。
「・・・だめかしら?」
「・・・・・・い、いいわよ、抱きしめるだけでしょ?」
「ええ。じゃあ、お願いするわ」
レミリアはすっと立ち上がり、顔だけでなく体全体を霊夢に向け、手を広げる。
霊夢も、レミリアに続き立ち上がる。そして霊夢はレミリアを引き寄せ抱きしめた。
(うぅ~・・・とは言ったものの、どきどきするわ)
霊夢はそう思いながらレミリアを抱きしめた。
抱かれたレミリアは、霊夢の背中と腰の間辺りに手を回し、何かを確かめるかのように
手を回している背中の辺りを、ぽんぽんと叩く。
「やっぱり・・・駄目みたい」
「え・・」
霊夢は突然のレミリアのつぶやいた言葉の意味がわからなかった。
「私ね、パチェとこうして抱き合っていると、とても胸の鼓動が激しくなって
言いようのない幸せな気持になるの。だけど・・・今霊夢とこうしていても私はなんとも
思わない・・・」
「・・・・あたりまえでしょ?私はあなたの大好きなパチュリーじゃないわよ」
「そうね、あたりまえなのよね」
そうして二人は、お互いどちらからともなく体を離した。
「ありがとう、霊夢。あなたのおかげで、今私が何をすれば良いのか何となくわかったわ」
「そう・・役に立ってよかったわ」
目を瞑り、自分の胸に手を置いて礼を言いうレミリアに、霊夢は少し悲しげに微笑んで
「どういたしまして」と答えた。


「まだ夕方になるか、ならないかよ?もう帰るの?」
「ええ。今日はもうお暇するわ」
レミリアが帰ると言い出したので、霊夢はレミリアを見送るため一緒に外へ出た。
外はまだ曇っているが、昼間よりは雲が薄くなったような気がする。
レミリアもそれに気づいて、太陽は出ていないものの、一応日傘を差す。
「霊夢」
日傘を差して、くるりと後ろにいる霊夢に振り返る。
「何よ?」
「あなたは私の大事な友人。そしてパチェは私にとって特別な存在・・・」
「と・・・突然何よ?」
「いえ・・なんでもないわ。ただ、今言っておかなくちゃと思って。ごめんなさい」
そして、レミリアは霊夢に「またね」と言って神社から飛び立って行った。
「何よ・・・今の」
霊夢は飛んでいくレミリアを見て呟いた。
「なんで、私の前で、自分の気持の確認なんか・・・する・・・かな」
霊夢の視界からレミリアが見えなくなると、霊夢はその場で静かにうずくまった。


(パチェに会うと決めたは良いけれど・・・なんて言えばいいのかしら)
神社の帰り道、レミリアはそんな事を考えながらゆっくりと紅魔館に向かって飛んでいた。
パチュリーが、二人の記念日を忘れていたからこうなってしまった。
しかしあの時、レミリアがパチュリーを非難した時、パチュリーは何かを言おうとしていた。
あの時はただの苦し紛れのいい訳だと思っていたが、冷静に振り返ってみると、あの表情は
とてもいい訳を言うような顔ではなかったような気がする。
(パチェが悪いって思ったけど・・・私の方が駄目じゃない!)
自分に悪態をつく。
(時間が惜しい、パチェに早く会わないと!)
そう思いスピードを上げる。
その時、真横辺りからか、何かがレミリアに向かって飛んでくる。
レミリアはその飛んできたものに反応し、ぎりぎりで避けるが、避ける際にさしていた
傘が、その向かってきた物体に当たり粉々になって、パラパラと地に落ちていった。
レミリアは通り過ぎて飛んでいったものを見る。
「あれは・・・魔法弾?」
魔法弾はそのまま飛んでいき見えなくなる。次は魔法弾が飛んできた方向を見る。
そこにはよく知った、箒に乗る、白黒の魔法使いの人間がこちらを見ていた。


「レミリア・・・探したぜ」
「魔理沙・・・今の攻撃は、あなたよね」
「そうだぜ、私に気づかないでスピードを上げたからな」
レミリアは魔理沙を睨むが、魔理沙は何の悪びれた顔もせず、微笑みながら
レミリアを見ている。
「で、何の用件かしら?」
「単刀直入に言うぜ。パチュリーを許してやってくれないか?できれば、お前から
謝ってほしいんだ」
突然、魔理沙の顔が真剣になる。レミリアはそんな顔をする魔理沙を見たのが初めてで
少し動揺するが、それを顔には出さず、微笑んで魔理沙を見る。
「私がパチェに?何で謝るのかしら?」
(魔理沙に言われなくても、謝るために今紅魔館に向かっているのよ)と言えれば良かった
のかもしれないが、プライドからか、レミリアは魔理沙に、自分とパチュリーの関係に
口出しされたのが気に食わなかった。


「お前、パチュリーに運命の日とかいうのをすっぽかされたから、パチュリーに怒りを
ぶつけたんだろ?確かに、忘れてたあいつは悪かったかもしれない。だけどあの日は
私がパチュリーに泊まっていけと言ったんだ。雨が降っていたし、お前は神社に行ってた
から、紅魔館に帰ったって仕方がないってな。私が悪いんだ。だから、パチュリーを
許してやってくれないか?あいつは今も、お前に拒絶されて、傷ついて紅魔館で泣いてるんだ」
魔理沙は帽子を取り、頭を下げる。
レミリアは、やはり気に食わなかった。魔理沙がパチュリーをこんなにも一生懸命
庇っているという事、魔理沙がパチュリーに運命の日や、喧嘩した事を相談された
事が何故かひどく悔しかった。
レミリアはそんな想いを胸にしまい込み、頭を下げる魔理沙に対して、笑みを浮かべる。
「・・・あなたに指図されるような事じゃないわ。これは私とパチェの問題なのよ?」
頭を下げていた魔理沙がぴくっと反応する。そんな魔理沙を見ても、レミリアは口の
動きがとまらなかった。
「それにしても、あの娘、随分口が軽くなったわね。魔理沙にあれこれ話したり相談する
なんて。そうだ、魔理沙。あなたがパチェの事を励ましてあげればいいじゃない?
あの娘も私が許したりするより喜ぶんじゃないかしら?」
レミリアは自分の言っていることがよくわからなくなっていた。ただ、何か熱いもやもや
した気持が胸に広がり、その気持がレミリアを突き動かしていた。


「レミリア、本気でそんな事言ってるのか?」
魔理沙は下げていた頭を上げ、帽子を被る。帽子を深く被ったからか、表情がよく見えない。
「私じゃ・・・できないんだよ」
震えながら、レミリアの耳には届かない小さい声で訴える。
「何を言っているのか聞こえないわ。もう言う事がないのなら私は行くわよ」
魔理沙をそのまま放っておき、レミリアは目的地をわざと変え、紅魔館ではない方向へ
向きなおして飛ぼうとする。


「レミリア、パチュリーはかわいいよな。あいつ、私の家に泊まった時、甘えるように
私に擦り寄ってきたんだぜ?」
放っておこうと思っていたが、そんな魔理沙の言葉を聞いて、レミリアが魔理沙の方を向く。
「・・・冗談は好きではないわ」
「本当だぜ?私があいつに好きって言ったら、あいつも私のこと好きって言ってくれたぜ
だから、本当はお前の許しなんてパチュリーはいらないんだ。むしろ都合がいいぜ」
魔理沙は笑いながらレミリアに話す。レミリアは小刻みに震えていた。
「それにあいつ許してくれたぜ、私があいつのこと、パチェって呼んでいいってな」
魔理沙がその言葉を言った時、レミリアの周りに大小、いろいろな大きさの紅い
魔法弾が浮かび上がる。
「魔理沙、もう一度言うわよ?でたらめを言うのはやめなさい・・・」
「試してみるか?パチェの想いが私にはついてる。今の私は無敵だぜ?」


その瞬間レミリアが目を大きく開く。そして、レミリアが作り出した魔法弾の弾幕を
魔理沙にめがけて飛ばす。その弾幕を魔理沙は、左右、上下、ぎりぎりの所でかわす。
かわしきれない弾は、自分が生み出す魔法弾をぶつけ相殺した。
魔理沙も防戦だけではない。かわしたりするだけでなく、しっかりと応戦をしていた。
レミリアも魔理沙と同じような行動をとる。
「レミリア!私はお前を倒して・・・パチェをもらうぜ!!」
魔理沙は力強くレミリアに向かって叫び、次に魔法詠唱を完成させ、大きく叫ぶ。
「マスタースパーク!!」
魔法が発動し、白く太いレーザーが一直線にレミリアに向かって伸びていく。
レーザーの周りの空気は、そのレーザーの威力からか、びりびりと震えていた。
レミリアは避けきれないと思ったのか、両腕で盾のような形を作り
そのあとに体を丸め、その体を羽根で包み込み防御体制に入る。
そして、マスタースパークはレミリアを包み込んだ。
「決まったか!?」
魔理沙がマスタースパークを放ちながら、レミリアがレーザーの光に包まれたのを確認して叫ぶ。
しかし次の瞬間、マスタースパークの白い光とは違った、紅い槍状の光が
レーザーの中を通り、真っ直ぐそのまま魔理沙の方へ向かっていく。
「あいつ!?」
魔理沙は、マスタースパークを止め回避運動をする。紅い槍は魔理沙には当たらなかった
ものの箒をかすめた。それにより、箒が少し傷み、魔理沙は空中で上手く体勢を
コントロールする事ができなくなり地上へ向かって落ちていく。
そしてそのまま地上へと落下するが、ぎりぎりの所で箒を上手くコントロールし
地上との直撃を避けた。
地上は木々がぽつぽつと生えていたものの、開けた場所のほうが多くあった。
「危なかったぜ・・・あいつは?」
開けた場所へおり、地上から空を見上げると、レミリアは魔理沙に向かって既に急降下はじめていた。
「くそっ!?やばいぜ」
魔理沙は急降下してくるレミリアを見ながら、魔法詠唱を始める。
「遅いわ!」
レミリアは急降下しながら右手に力をこめ、そのまま魔理沙につめより拳を振りかざそうとする。
しかし、魔理沙よりもレミリアよりも先に、第三者の攻撃がレミリアに向かって飛んでいく。
「なに?」
攻撃に気づくが、奇襲なうえに、思い切り急降下していたため、急に軌道を変えることができず
その攻撃を避けることはできなかった。
どんっ・・・と、レミリアはその攻撃にはじかれ、魔理沙から少し離れた所に飛ばされた。


魔理沙はその攻撃の飛んできたほうへ顔を向けた。
「・・・アリス!?」
魔理沙が驚いた声を出す。
アリスは魔理沙から少し離れた木の影の所に立っていて、レミリアに当たったのを
確認すると、すぐに魔理沙に近づいてきた。
「魔理沙!大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫だ。助かった・・・・けど、何でお前が?」
「人形が教えてくれたのよ」
倒れこんでいるレミリアに目を離さず、魔理沙の鞄に手を伸ばし、勝手に鞄を探る。
そして鞄から手を出すと、手には魔理沙人形とアリス人形がふたつ握られていた。
「あの日、魔理沙に人形を投げつけた時、この二体の人形に魔法を掛けておいたの。
人形を通して、魔理沙の行動とかを知るためにね・・・」
「・・・おい、アリス・・・それって・・・」
「犯罪」と言おうと思ったが、そのおかげで今助かったのも事実だし、とりあえず
それ以上は言わない事にした。
「やっぱり、あれぐらいじゃ無理か・・・」
アリスがレミリアの方を向いたままつぶやく。魔理沙も視線をアリスからレミリアに変える。
レミリアは、むくりと立ち上がっていた。服が少しボロボロになっていて、顔や腕に
擦り傷がついているものの、元気そうに自分についた土などの汚れを払い、二人に顔を向けた。
「アリス・・・あなたも参戦してくるとはね」
「魔理沙を放って置けないもの」
「そう、なら二人同時にかかってきてもいいのよ?」
睨みかかるアリスに、レミリアは微笑む。
「魔理沙、私たち二人ならレミリアを簡単に倒せるわ。一気にカタをつけましょう!」
横にいる魔理沙に、アリスはレミリアを睨んだまま、小さい声で魔理沙につぶやく。
しかし、魔理沙はアリスに返事をせず、箒を片手に持って、一歩その場から踏み出す。
「レミリア、私はアリスと二人で戦うつもりはないぜ」
「魔理沙!?何を言って・・」
「いいんだ、アリス。次で終わる・・・だから、見守ってくれ」
心配するアリスに、一歩踏み出した魔理沙は顔をアリスに向け微笑む。
そしてまた、真剣な顔をレミリアに向け直す。
レミリアも微笑んでいた顔が、真剣な顔になっていた。
「レミリア、私はこの攻撃を最後にするぜ。全力でいくからな」
魔理沙は箒にまたがり、詠唱を開始して、目を閉じて集中する。
「いいわ。私も全力でいかせてもらうわ」
レミリアもそう言って、その場で魔理沙を見据えて、少し前のめりの姿勢になる。
アリスは見守ることしかできず、二人から少し離れた所で静観していた。
(魔理沙・・・負けるんじゃないわよ!それが、パチュリーのためでも・・・)


強い風が吹き、雲が流れる。時間はいつの間にか夕方から夜になっていたため
夕日ではなく、月の光がうっすらと地上を照らす。
その瞬間、それを合図とするかのように、魔理沙の詠唱が終わり、目を開いて魔法を発動させる。
「いくぜ!ブレイジングスターだ!!」
魔理沙は、魔法を発動させると、彗星のように綺麗に、そして力強く光り輝き
高速スピードで、レミリアに向かって一直線に突っ込んでいく。
「ドラキュラクレイドル!!」
レミリアもほぼ同時に、魔理沙と同じく技を発動する。
地面を強く蹴り、レミリアは紅い光を放ちながら高回転し、魔理沙へと飛んでいく。
そのまま二つの光は、ぶつかり合う。少しの間、力が拮抗し押し合い続けるが、それは
長くは続かなく、魔理沙もレミリアも、お互いはじけ飛び、地に叩きつけられた。


「魔理沙!?」
アリスは魔理沙が倒れた所まで駆け寄り、その場で膝をついて魔理沙の状態をうかがう。
魔理沙の服は所々ボロボロになってはいるものの、特に体には大きな外傷は見られなかった。
「魔理沙!?大丈夫?」
仰向けの状態で倒れている魔理沙の頬をぺちぺちと叩く。
「アリス・・・大丈夫だ。だから叩かないでくれ」
魔理沙はそのまま倒れた状態で、心配そうに自分を見つめているアリスに笑いかけた。
そんな魔理沙を見て、アリスは安心して気が緩み、うっすらと目元を潤ませた。
「本当に・・・タフね。人間の癖に・・・」
アリスの後ろから声が聞こえる。振り向くと、魔理沙のように地面に叩きつけられた
レミリアが立ち上がり、二人に近づいてきていた。
「レミリア!」
近づいてくるレミリアに対し、アリスは両手を広げ、倒れている魔理沙を庇うように前に
立ち、戦える姿勢を作る。
「アリス、大丈夫よ。これ以上やり合う気はないわ。ただ魔理沙と話がしたいの」
「・・・・・ふぅ」
戦う意思を感じられないレミリアを確認して、アリスは構えを解いた。
レミリアは「ありがとう」と、アリスに声をかけ、倒れている魔理沙を見る。
「よう・・・勝てると思ったんだけどな・・・この通り、力がもう残ってない」
「私も力は残ってないわ・・・勝負は引き分けね」
魔理沙とレミリアはお互い苦笑する。


その後、レミリアは真剣な顔になり魔理沙を見つめる。
「魔理沙、あなたに聞きたい事があるの」
「・・・なんだ?」
「パチェは・・・本当にもうあなたを選んでしまったの?」
真剣に尋ねてくるレミリアに、魔理沙はきょとんとなり、そして笑い出す。
「ばーか。そんなわけないだろ・・・私はパチュリーに想いを伝えたけど・・・振られた。
あいつはお前を選んだ」
「そう・・・」
レミリアは安堵の息を吐く。しかし笑っていた魔理沙が、次はレミリアのように
真剣な顔になり、その後言葉を続ける。
「でも、あいつが泣いているっていうのは本当だ。レミリア、負けた私がまだこんな
こというのもなんだけど・・・許してやってくれないか?」
「・・・ええ、そのつもりよ」
それを聞いて、次は魔理沙が安堵の息を吐く。
「ふふ。実はね、あなたと戦わなくてもパチェには謝るつもりだったのよ」
「な!?・・・本当か?」
笑って言うレミリアに、魔理沙は顔が引きつった。
「じゃあ・・私たちが戦ったのは時間の無駄じゃないか・・」
「いいえ、無駄じゃないわよ」
レミリアが自分の胸に両手を置く。そして顔は真っ直ぐ魔理沙を見た。
「あなたと戦っている時、あなたの気持が私に伝わってきたわ。
あなたがパチェをどれだけ心配してくれていたのか。私がどれだけパチェの
気持に気づいてあげられなかったか・・本当にいろいろわかったわ」
「そっか・・・なら、無駄じゃないな」
「ええ。無駄じゃないわ。魔理沙・・ありがとう」
「礼はいいぜ・・・それよりも早く行けよ」
素直に礼を言うレミリアに、魔理沙は少し照れながら、レミリアに手をひらひらさせて
行けと促す。
レミリアは魔理沙に背を向け、羽根を広げた。
「魔理沙、これからもパチェと・・・私の良き友人でいてくれるかしら?」
「・・・ああ。当たり前のこと言うなよ」
それを聞いてレミリアは空に向かって飛んでいった。
魔理沙には見えなかったようだが、アリスには見えていた。魔理沙の答えを聞いて
レミリアが嬉しそうな笑顔を浮かべていたのを。


「ったく・・・それにしても、やっぱりあいつは化け物だぜ。私はもう魔力も空だし
体はまだしばらく動かせそうにないのに・・・」
飛んでいったレミリアを見て魔理沙はぼやいた。
「・・・レミリアもボロボロよ。あいつ、無理をして飛んでるわ」
「え?」
アリスの言葉に魔理沙が聞き返す。
「パチュリーに早く会いたいのか・・・それとも格好つけているのか。どちらにしても
あなたと同じくらいなのは確かよ」
「・・・そっか」
空にはもう雲があまりかかっていなく、月や星が綺麗に輝いているのが見える。
魔理沙は目を細めて、空に浮かぶ月を倒れながら見ている。アリスはそんな魔理沙の頭を
「よいしょ」と持ち上げ、自分の膝の上に乗せる。そして魔理沙と同じように月を眺めた。


「でもよかったの?行かせちゃって・・・」
「何言ってるんだ?」
アリスの問いに、魔理沙はきょとんとした顔で聞き返す。
「だって、魔理沙、パチュリーのことまだ・・・好きなんでしょ?」
「・・ああ、好きだぜ。でもそれは親友としてだ。それ以上でも以下でもない」
魔理沙はニッコリ笑って、表情を暗くしたアリスに返事をした。
「それにさ・・・」
魔理沙が自分の頬をかきながら、アリスから視線をそらす。
「何?」
「心変わり早いとか思われるかもしれないけど、私、今気になる奴がいるんだ」
「え?」
アリスは魔理沙の言葉を聞いて目を大きく開いた。
魔理沙がパチュリー以外で気になりそうな人物・・・
そして思い出す。人形越しで聞いた、あの雨の日の魔理沙とパチュリーの会話を。
パチュリーの言っていたことを。
(魔理沙、アリスのこと好きでしょ?)


「魔理沙、その気になる人って・・・もしかして・・・」
「あの日から人形越しで、私の行動とかを全部チェックしてるなら・・・わかるだろ?」
魔理沙は相変わらず視線をアリスから外し喋る。顔は少し赤くなっている。
そんな魔理沙を見て、アリスも顔を赤くする。
「そ、それって本当?冗談なんて後で言ったら本当に許さないわよ?呪っちゃうわよ?」
「嘘じゃない・・・私のやり方でいいんなら、今証明できるぜ?」
「・・・してみなさいよ、証明」
膝枕されている魔理沙は、自分のすぐ上にあるアリスの頬に手をのばす。
アリスはゆっくりと、自分の膝に乗っている魔理沙の顔に、自分の顔を近づける。
「ほ、本当に・・・嘘じゃないのよね?」
「しつこいぜ・・・アリス」
そうしてアリスは涙を流し、魔理沙は笑って・・・お互いの口が触れたのだった。


自室のベットで、睡眠をとっていたパチュリーは、夜になって目を覚ました。
ゆっくりと上半身だけ起き上がる。起き上がった目の先には壁に掛けられた鏡があり
その鏡の中の自分を見つめる。寝る前の顔は、本当にひどく、私はあんな顔で
ずっと紅魔館をぐるぐる回ったり、図書館にいたりしたのか、と考えると、とても
恥かしくなる。しかし今は、いつもの自分の顔が、鏡に映し出されていた。
それを確認して、両足をベットの外へ出し、ゆっくりと立ち上がる。
そして壁に掛けていた帽子を、きゅっと被り、真剣な面持ちをし、深呼吸をして声を出す。
「咲夜、ちょっと聞きたい事があるの。部屋まで来て頂戴」
咲夜を呼ぶが、やはりいつもなら反応があるのに、今は何の反応が無い。
「咲夜、あなたは、いつ私を無視できるほど偉くなったのかしら?」
昼間のパチュリーとは違い、今のパチュリーはとても力強かった。
「なんでしょうか?パチュリー様」
そして気づくと、咲夜は部屋の中に入り、パチュリーの目の前に立っていた。
咲夜は目を瞑り、用件を伺う。パチュリーは強気で用件を話す。
「レミィは今どこかしら?」
「・・・それを聞いてどうするのですか?」
予想通りというべきか、すんなりと咲夜はパチュリーの質問に答えようとしない。
「レミィに会うわ。話をしたいのよ」
「お嬢様がそれを望んでいなくてもですか?」
「ええ。レミィがそれを望んでいなくてもよ」
「失礼な事を申し上げますが、私はあなたとお嬢様を引き合わせたくありません。
お嬢様を傷つけたパチュリー様を許せませんから」
閉じていた瞳を開け、咲夜はパチュリーを睨みながら、パチュリーの頼みを断る。
そんな咲夜にパチュリーは静かに自分の気持を話し始める。
「そうね、私はレミィを傷つけたわ。レミィを信じていたはずなのに、霊夢とレミィの
仲が気になって、弱気になって、そして、レミィとの大事な日を忘れてしまった・・・
ごめんなさい、これは言い訳よね」
咲夜は静かにパチュリーの話を聞いている。
「でもね、私は前も今も本当にレミィが大好きなの!もうレミィは私のことが嫌いに
なって会いたくないと思っているかもしれない。だけど私は会いたい!自分のせいで
こうなったのはわかってる。勝手なのもわかってる。でも会って話をしたいの!」
パチュリーの声は、途中から大きくなり部屋全体に響く。
パチュリーは、心の中でこんな大声を出している自分に驚いていた。
そして数秒沈黙が続き、咲夜が嘆息交じりの息をはく。
「話に付き合っていられません。申し訳ありませんが失礼します」
「咲夜!」
パチュリーに背を向け、咲夜は部屋を出ようとする。
パチュリーはそんな咲夜をひき止めようと、大きな声で咲夜の名前を叫ぶ。
「すみませんが忙しいんです。これから、ちょっとした料理を作らなければいけませんし
その後すぐに神社へ行ったまま戻ってない、お嬢様を迎えに行かなければいけませんし」
「神社?レミィはまだ神社に行ったまま帰ってきてないのね!?」
部屋を出ようとしていた咲夜より早く、パチュリーは部屋を飛び出して行った。
ドアを開けたまま飛び出して行ったパチュリーを見て、咲夜はまた大きく息を吐いて見送った。


「ねぇ、霊夢~。何をずっと、ぼーっと、空を眺めているのよ?」
夜の博麗神社。縁側で紫は、隣に寝転がっている霊夢に構って欲しくて、体を揺すったりしていた。
紫は、神社に夕方頃、レミリアが帰った少し後に現れ、縁側で呆けている霊夢を見つけた。
最初、紫は起きたばかりだったし、喋るにも頭がまだ寝ぼけていたので、それに習って
とりあえず一緒に呆けていた。時間が経ち、紫の頭はスッキリしてきたのだが
霊夢は変わらずに寝っころがったまま、空を眺め続けていた。
そして、紫は暇なのでそろそろ構って欲しくなり、今に至っていた。
そんな紫を無視して、現在も霊夢は寝転がり、ぼーっと空を見ている。
今眺めている空は、昼に覆っていた雲はなくなっており、空には星がきれいに輝いている。
「なんなのよ?もしかして霊夢・・・のんびりしすぎて、ボケちゃった?」
ケラケラ笑いながら、べしべしと頭を叩いてくる紫に、無言で霊夢は上半身を起こし
チョップを紫の頭に振り下ろして黙らせた。
「・・・ボケてないなら最初から反応しなさいよ」
「うるさいわね、ほっときなさいよ」
自分の頭を撫でながらぶーぶー言う紫に、霊夢が面倒くさそうに反応する。
「ねぇ、本当に何かあったの?」
「ん・・・多分だけど、今日はあと一人お客さんが来るのよ」
「お客さん・・・?」
霊夢の勘は鋭いのは知っているけど、もう夜だし、こんな時間に誰か来るのか?と
紫が首をかしげると、霊夢が「ほら、きたわよ」と言って、空を見つめ紫に言った。
霊夢にそう言われ、紫が霊夢の見つめている先を見ると、確かに空を飛んでこちらへ
近づいてくる影が見えた。
その影は神社の上空で動きを止めると、ゆっくりと下におりてきた。
そして、縁側に座っている霊夢を見つけると、影はゆっくりと霊夢のほうに歩み寄ってくる。


「こんばんは、パチュリー」
「こんばんは、霊夢」
霊夢は縁側で座り少し微笑み、パチュリーは霊夢と少し距離を置いたところに立ち
真剣な面持ちで挨拶を交わす。紫はそんな二人を見て、自分は入り込まないほうがいいと思い
「私ちょっと忘れ物」とか、そんなことを言ってその場から消えてしまった。
紫がいなくなっても二人は何も気にせずに、話を始めた。
「珍しいというか、はじめてよね?こうしてあなたが神社へ来るのは?」
「そうね・・・レミィに誘われても来なかったから、今日が初めてになるわ」
風が少し強く吹き、髪を少し乱されたパチュリーは、髪を適当に整える。
「聞きたい事があるの?今レミィ、神社にいるかしら」
「いないわよ。結構前に帰るって言って帰ったわ」
「結構前に?」
霊夢にレミリアは帰ったと言われ、パチュリーは考える。
「帰った・・・でもレミィは紅魔館にはまだ帰ってない。霊夢、レミィは
帰る前にどこかに行くとか何か言っていなかったかしら?」
「さあ・・・私は何も聞いてないわよ」
(それじゃあどこに・・・すれ違ってしまったのかしら)
再びパチュリーが考え込んだ。


「ねえ、パチュリー。悪いけど、たぶんあなたはレミリアと会えないわ」
「なんでかしら?」
レミリアがどこにいるのか考えていたパチュリーが、一旦考えるのをやめ
霊夢の方を向いた。霊夢は相変わらず微笑んでいる。
「だって、レミリアが会いたくないって言っていたもの。パチュリーが嫌い
もう会いたくないって言ってたし・・・とりあえず今は諦めて時間を置けばどう?」
「・・・私が悪い事をしたのだし仕方がないわ。でも、そう思われていても
私は今レミィに会いたい!そして謝って・・・また元通りになりたい!」
軽口で言う霊夢に、パチュリーは強い言葉を返す。パチュリーの両手は
こぶしが作られ、力んでいるためか、少し震えている。
「あのレミリアを見た感じ、きっと拒絶されるわよ?」
「そうかもしれない。でもわかったのよ、拒絶される事を怖がって、弱気になって
何もしないほうが、きっと後で後悔するって!」
パチュリーが言いきって肩の力を抜き、深呼吸をして、霊夢のように少し微笑んだ。
そんなパチュリーを見て、霊夢も一度深呼吸をし、その場を立ち上がった。
そして「ちょっとまってて」、と言葉の残し、神社の中へ入っていった。
レミィが実はまだ神社にいて、今霊夢はレミィを連れてきてくれるのだろうか?
そう思ったパチュリーは静かに霊夢を待った。


そして少しして霊夢が神社から出てきた。
出てきた霊夢は、頭に野花と茎で作られた王冠がかけられており、左手には野花の茎を
絡めて作られた指輪が薬指にはめられていた。少し状況が違うが、その光景はあの夢で
見た光景とほとんど同じだった。
霊夢の姿を呆然と見るパチュリーに、霊夢はパチュリーが何かを聞いてくる前に喋り始めた。
「これね、少し前にレミリアが作ってくれたの。前にレミリアから、あなたにこれを作ったって
話を聞いていて、私にも作って欲しいって頼んだら、すぐに私のために作ってくれたわ」
そして立ち尽くしているパチュリーに近づいていく。
「これでわかったでしょ?喧嘩なんてただの言い訳。レミリアはずっと前から私の
ことが好きだったのよ。レミリアがその真実を言う前に、あなたが喧嘩の種を
まいてくれた。レミリアは言う手間が省けたって喜んでいたわよ?」
霊夢は、手を伸ばせば届く距離まで近くへ来ると、そこで立ち止まり、指輪を
見せるように、左手をパチュリーの目の前に差し出した。
指輪を見せ付けられ、パチュリーはその王冠と指輪をただ静かに見ていた。
王冠は以前パチュリーに作ったものとは違い、首元ではなく、綺麗にちゃんと頭に
のっていて、指輪も指に合わない大きなものと違い、綺麗に指にはまっていた。
パチュリーは霊夢の手に触れ、指輪に触れた。
そうして、パチュリーは何かわかったのか目を瞑り、静かに口を開く。


「これは・・・レミィの作ったものじゃないわ」
パチュリーが触れている霊夢の手が、ぴくっと少し震えた。
「何言ってるのよ?これはレミリアが作ってくれたものよ?」
「いいえ、違うわ」
「何でそんなことがパチュリーにわかるのよ!」
霊夢は少し声を荒げる。そんな霊夢とは対照的にパチュリーは静かに喋り続ける。
「レミィはね、本当に不器用で大雑把なのよ。人間の血を飲むときも綺麗に飲めなくて
服をいつも汚すし、自分の身の回りのことは、咲夜にやらせてるし。魔法だって本当は
そこまで得意じゃないの。弾幕を張ったりするより、手足を振り回したほうが強いし。
だから、レミィはそんな綺麗に王冠と指輪は作れないの。それになにより・・・」
霊夢の指輪を見つめ、指輪を撫でるようにさわる。
「この指輪には、あなたに対するレミィの想いが感じらないのよ」
「な・・・あなたになんでそんなことがわかるのよ!?」
霊夢は触れられていた手を引っ込め、パチュリーを睨む。
「わかるわ・・私がこれを作ってもらったときは、とても王冠と指輪って言えるもの
じゃなかったけれど、とても暖かさを感じたの。でも霊夢がつけているものには
それが感じられないの。そんなことわかるわけないって思うかもしれないけれど
不思議とレミィの想いを感じる事ができるのよ、私」
睨む霊夢に、パチュリーは微笑む。
そんなパチュリーを見て、霊夢は睨むのを止め、「ん~」と言いながら背伸びをする。
そして次の瞬間には霊夢も微笑んでいた。
「パチュリーって、ちょっと気が弱い奴だと思っていたのに、案外強いのね」
「そうでもないわ。内心は何もなさそうな顔して、ビクビクしてるのよ。
でも今回だけは・・・それじゃ駄目だから」
風が吹く。今度は優しい風。そんな風が二人の間を駆け抜ける。
「パチュリー。多分だけど、レミリアは特別な場所・・・あなたに指輪と王冠を作った
場所に今いると思うわ」
「え・・・どうして?」
「直感よ、直感。私の感って結構当たるのよ」
霊夢が笑って言う。そんな霊夢をパチュリーは見つめる。
「霊夢・・・ありがとう」
「いいわよ、感で物を言ってるだけだし。早く行きなさいよ。
意地っ張りで不器用な幼い吸血鬼さんの所へ!」
パチュリーはゆっくりと地面から空へと浮き始めた。
霊夢は親指を立てパチュリーに向ける。
「しっかり仲直りしてきなさいよ!」
「ええ。ねえ、霊夢。またここに来てもいいかしら?・・・レミィと一緒に」
「別にいいわよ。その代わり何か食べ物を持ってきてくれると嬉しいわ。
レミリアと一緒に来るなら、沢山持ってきて」
「わかったわ。霊夢・・・本当にありがとう」
そしてパチュリーは高く空へ飛び上がり、神社から離れていった。


それを見送る霊夢の後ろから声が聞こえてくる。
「霊夢・・・いろいろと損な役割をしてるわね」
「あんた・・・消えたと見せかけてずっと見てたでしょ?」
声を掛けてくる紫に振り向かず、霊夢はパチュリーの飛んでいった方向を
見ながら言う。
「ごめんなさいね。もし何かあったら心配でしょ?だから見守っていたのよ」
「何かって何よ・・・まったく」
霊夢は少し声を荒げて紫に言う。しかし、紫を見てではなく、相変わらず
空を見上げながらだ。
「あの二人は、お互いどんなことがあっても気持が変わらないくせに、うじうじしすぎなのよ。
私はそれがじれったかったから、巫女として二人の幸せのために一肌脱いだの。それだけよ」
霊夢は頭につけていた王冠と、手につけていた指輪をはずした。
「それ・・・自分で作ったんでしょ?」
「まあね・・・上手くできてるでしょ?」
「ええ。とっても・・・」
霊夢は外した王冠と指輪を両手で持ち、それを胸に抱く。。
「ほんと・・・二人とも、ふらふらしすぎなのよ。二人がふらふらするから周りも
釣られてふらふらしちゃうの・・・わかってないのかしら・・」
霊夢の声が少し震えはじめた。
そんな、声を震わせている霊夢に、紫は近づき手を伸ばすと、後ろから霊夢を優しく引き寄せた。
「まったくね。霊夢、あなたは巫女としてとても良いことをしたわ」
「でしょ?久しぶりに縁結びなんていう、真面目な仕事をすると疲れるわ」
抱き寄せてわかる。霊夢は声だけでなく体も少し震えている。そして霊夢に回した
紫の手に暖かい雫が落ちる。
それを感じて紫は、霊夢を抱く手に力を込める。


「霊夢・・・」
「何よ・・・」
「もし、よければだけれど、その作った王冠と指輪、私にくれないかしら?」
「これは私のサイズで作ったものだから、紫には合わないわよ」
「いいわよ。あなたからもらえるのだもの。きっと宝物になるわ」
「なによそれ・・・」
抱きしめながら紫はくすくすと笑う。霊夢は笑わなかった。
「今日は飲みましょうか。お酒は私のおごりよ」
「・・・いいわよ。でも・・・飲む前に少しいいかしら?」
「何?」
「実はさっきからゴミが目に入って、大きいゴミなのかな・・涙が止まらないし
少し痛いから、なんていうか、ちょっと・・・声を出して泣きたいのよ」
「そうなの・・いいわよ。泣けばきっとそのゴミも涙で流れ落ちるわ」
紫はそっと後ろから回していた手を離す。すると涙を浮かべた霊夢はくるりと紫に
顔を向け、紫にしがみつき、声を出して泣いた。
紫は、子供をあやす様に霊夢の頭を撫でた。
(レミリア、パチュリー・・・これで二人元に戻らなかったら本気で許さないから!)


「痛っ・・・やっぱり、あと少しは動けそうにないわね」
レミリアは戦い終わった後、紅魔館に帰ろうと飛んだものの、魔理沙との戦いの
ダメージが大きく、紅魔館ではなく、紅魔館の少し離れたところにある静かな湖に降り
そのほとりにある、少し大きな岩に腰をかけて休んでいた。
「魔理沙・・・咲夜やフランを倒したということだけはあるわ。もし弾幕だけの戦いだ
ったら、私は負けていたわね・・・」
自分は本当に強い吸血鬼なのかしら?人間の方が化け物なんじゃないの、とちょっと
レミリアは落ち込んで、ため息を吐く。


湖の方から風が吹いてくる。
レミリアは目を細めて、湖の方へ目をやった。
「・・・パチェと来た時は、良いところだと思えるのだけれどね」
湖を見ながら、レミリアは呟く。
「パチェ・・・そう、何をやっているのかしら。私よりパチェのほうが傷ついているのに
こんな所で!」
レミリアは痛む体を、無理矢理起こし、空を飛ぼうと羽根を広げる。
そして空を見上げる。すると今一番会いたい人物・・・パチュリーが自分に向かってきているのが見えた。


「パチェ・・・!?」
「レミィ!」
勢いよく向かってくるパチュリーを、レミリアは両手を広げ受け止めた・・・が、
体がパチュリーを支えきれず、レミリアはパチュリーを抱いたまま、岩の上で倒れた。
「レミィ!大丈夫!?」
「大丈夫よ、ごめんなさいね、支えきれなくて」
レミリアは申し訳なさそうに苦笑した。パチュリーはそんなレミリアに首を振って
涙を浮かべる。
「レミィ、ごめんなさい!私、あなたとの大事な運命の日を忘れるなんて・・・
本当にごめんなさい!」
倒れこんだまま、パチュリーはまたレミリアに置いてかれると思っているのか
少し震えながら、レミリアの服を力強く握って謝った。
「いいのよ、パチェ。もう気にしてないわ・・・本当よ?それより謝らなくては
いけないのは私の方。パチェ、ごめんなさい。私はあなたをたくさん傷つけたわ」
「え・・・」
レミリアが、しがみついているパチュリーを抱きしめる。
「魔理沙から聞いたの。あなたが沢山傷ついているって。それを私は気づかずに・・
私はあなたの信じる心に、ただ甘えているだけだったわ」
「違う!レミィは何も悪くないわ!私はあなたと霊夢が仲良くなるのを見て、不安に
なったの。レミィは、私より霊夢のことが好きなんじゃないかって。そんな事思って
私は運命の日を忘れてしまった。レミィはちゃんと私のことを好きでいてくれたのに
ごめんなさい!」
「いいえ、パチェ・・・」
「違うわ、レミィ・・・」
二人は「私が悪い」と交互に言い続け、そんな状況がおもしろく、ばからしくて
二人一緒に最後「ごめんなさい」と謝って、笑った。


その後、二人は岩にちょこんと座り、三日間の間にあったこと。
特にレミリアは魔理沙とあったこと、パチュリーは霊夢にあったことをお互い話した。
「それで・・・レミィ、ぼろぼろなのね」
パチュリーが話を聞き終わって、ぼろぼろになったレミリアを見つめる。
「いいのよ・・・これは私がパチェを傷つけた罰・・・だから魔理沙には感謝してるのよ」
「レミィ・・・」
パチュリーは、きゅっとレミリアの腕を取り、くっつく。
「ねえ、レミィ・・・聞いてもいいかしら?」
「何かしら?」
腕に暖かいぬくもりを感じ、微笑みながらレミリアは返事する。
「あのね・・・なんでレミィは霊夢の所へ、あんなにも遊びにいったのか聞きたいの。
あ!もう疑ってるわけじゃないの・・・ただ、ずっと気になって・・」
パチュリーの手に力が入る。
「最初は私を倒した力に興味があって会いにいっていたわ・・・でも、途中から変わったわ。
霊夢が・・・なんとなくだけど、昔のパチェに似ていたから」
「霊夢が・・・昔の私に?」
きょとんとするパチュリー。レミリアは微笑みながら話を続ける。
「ええ。霊夢って誰かと接する時、壁を作っている感じがするの。
それが昔のあなたに似ていて。だから、あの娘の壁を壊したくなったの。
でも、私はあの娘を傷つけてしまったわ。パチェのときとは違って、壊すだけ壊して。
私はその後、あの娘に何もしてあげなかった。結局ただの自己満足・・・」
レミリアは自分で自分をあざ笑う。そんなレミリアをパチュリーは見ていられなかった。
「レミィ、そんなこと言わないで。確かにレミィは霊夢を傷つけたかもしれない。
だけど、きっと傷ついただけではなくて、何かを霊夢は手に入れられたと思うの。
よくはわからないけど、私はそうだと思うの・・・」
「パチェ・・」
「それに、私だって魔理沙に酷いことをしたわ・・・魔理沙が優しくしてくれるからって
弱気だった私は魔理沙を逃げ道にしようとしたわ。そんな私は魔理沙だけじゃなくて
アリスも傷つけてしまったかもしれない。まだあるの・・・・んっ!?」
それ以上言おうとするパチュリーに、レミリアは、顔をパチュリーに向け、そのまま
自分の口でパチュリーの口を塞いだ。


数秒そうして、レミリアはパチュリーと顔を離した。
パチュリーは、自分の指で自分の唇をなぞる。
「レミィ・・・今・・・」
少し放心状態でレミリアに尋ねる。レミリアはニッコリ笑って、腕にしがみついていた
パチュリーの手を優しく振り解く。そして立ち上がり、座っていた岩から降りると
レミリアは湖の方へ歩き出した。
「レミィ・・・」
パチュリーはそのまま座っている。
パチュリーはこの後レミリアがどうするかわかっていた。
レミリアが湖の周りに生えた長い草などによって見えなくなる。
見えなくなっても、パチュリーは静かに岩に座り待っていた。
そして少し立つと、レミリアが長い草などを掻き分けながら出てきて
右手を隠しながらこちらの方へ歩いてくる。
パチュリーは岩場の上で立ち上がる。レミリアはパチュリーの目の前まで来て足を止めた。


「私、思うの。私もパチェも故意からでなくても、周りを傷つけてしまった・・・
だけど、だからこそ、その分、私たち幸せにならなくちゃいけないと思うの。自分勝手な
考えかもしれないけれどね」
そして隠していた右手を出す。
レミリア右の腕には、前の時と変わらず、野花と茎で作られた王冠がかけられており
手のひらには野花の茎を絡めて作られた指輪があった。
「パチェ・・・前は言葉にしなかったけれど、今度はしっかり言うわ。私の一番の大好きはパチェ。
もし、あなたも私を一番と思ってくれるなら・・・受け取って欲しいわ」
レミリアはパチュリーを見つめる。パチュリーは涙を浮かべていた。
「ええ・・・私も一番の大好きはレミィよ。だから、レミィの気持ち・・ください」
それを聞いてレミリアは微笑んで、まず王冠を手に取った。
「考えたのだけれどパチェ、今度は帽子に王冠をのせるわ。そうすればきっと・・・」
そう言って、少し頭を下げたパチュリーに、レミリアは王冠を帽子のうえにのせた。
前は帽子を取って、頭にのせようとしたが、王冠は頭を通過して、首にかかってしまった。
今回は帽子にちょこんとのり、王冠の役目をしっかりと果たした。
「次は、指輪ね。でもこれは・・・ごまかしとかは無理ね」
「ふふ」
笑うパチュリーに、レミリアは苦笑しながら、パチュリーの左手を取り
指輪を薬指に持っていく。
「・・・あら?」
「あ・・・」
二人の予想に反して、指輪は綺麗にパチュリーの薬指にはまった。
「作っておいてなんだけど、また大きめに作っちゃったと思ってたの。
でもちゃんと指の大きさにあっていてよかったわ」
「ねえ、レミィ・・・」
「何かしら、パチェ?」
レミリアが微笑んで答える。パチュリーは少し不気味に微笑みながら
レミリアのほっぺたを軽く引っ張る。
「にゃ・・・にゃひをするの!?」(なにをするの!?)
「一応確認だけど・・・信じてないわけじゃないのよ?霊夢に指輪作ってないわよね?」
自分の指に綺麗にはまる指輪を見て、霊夢の指に綺麗にはまっていた指輪を思い出し
ちょっと疑って、口より早く、ほっぺたを引っ張っていた。
「つくっひぇないわよ」(作ってないわよ)
しっかりと、自分の思う事を言うようになったパチュリーに、レミリアは嬉しかった
反面ちょっと今のパチュリーの顔は怖かったと思った・・・


「ごめんなさいね、疑って。ありがとう・・・レミィ」
「いいわよ、あなたが思っている事を、しっかり私に言ってくれてるのだし」
レミリアは笑い、パチュリーは、手を自分の顔の前へ持ってきて、指輪をみつめる。
そして、見つめ終わって、手を下げた後、パチュリーは顔を赤らめ少しもじもじした。
「レミィ・・・」
「何かしら?」
もじもじするパチュリーに、レミリアが少しきょとんとする。
「あのね・・・さっきの所から続き・・・しない?」
「さっきの?・・・ああ、いいわよ」
月の光が優しく湖を照らし、草木を照らし、岩を照らし、二人を照らす。
風は時折優しく吹き、耳をすませば虫の鳴き声が聞こえる。
そんな中、岩の上で二つの影はゆっくりと一つになった。


数時間後、夜もあと少しすればあけてしまう時間。
二人は湖から紅魔館に向かって移動をしていた。
「少し長居してしまったみたいね。あと本当に数時間で夜が明けるわ」
「大丈夫よ、レミィ。太陽が出る前までには十分に間に合うわ」
手を繋いでレミリアとパチュリーは飛んでいた。
そうして紅魔館につき、二人は紅魔館の長い廊下をゆっくりと歩く。
「そういえば・・・図書館のテーブル、私片付けずに、あのままにしていたわね。
パチェ、もう片付けてしまった?」
「いいえ、片付けるはずないじゃない。あのままにしてあるわ。でも、運命の日は
過ぎてしまっているのよね・・・」
レミリアの横を歩くパチュリーが足を止めてしまう。
「気にしなくて良いのよ。また10年待てば運命の日が来るわ。10年なんてあっという間よ。
それに、私たち、また新しい特別な日ができたしね」
「そ、そうね・・・」
レミリアがパチュリーの横で、少し顔を赤くしてウィンクする。
パチュリーはレミリアより顔を赤くして、少しでれでれした。
二人手を繋いで、また廊下を歩き始める。
「片付けていないという事だし、折角だから少しだけ図書館で今日の特別な日を
祝いましょうか。パチェが疲れてなければだけど・・・」
「私は大丈夫よ。レミィのほうこそ大丈夫なの?」
「大丈夫よ」
喋っているうちに、二人は図書館の扉前に着く。
そして扉を開け、図書館に入ると
「お待ちしておりました」
と、二つの声がレミリアとパチュリーを迎えた。突然の迎えに二人は驚く。
「お嬢様、パチュリー様、おかえりなさいませ」
「レミリア様、パチュリー様、お待ちしていました」
レミリアが飾り付けしたテーブルの前で、咲夜と小悪魔がお辞儀して二人を出迎えた。
テーブルには、料理が並べられており、レミリアが持ってきていたワインも置かれていた。
蝋燭もテーブルの上で綺麗に優しく燃えている。
「これは・・・どうしたの?咲夜、小悪魔」
レミリアもパチュリーも、まだ今の状況に驚いていて、立ち尽くしている。
そんな二人に小悪魔が喋りだす。
「レミリア様とパチュリー様の三日前の、運命の日をお祝いするために用意したものです」
笑顔で言う小悪魔に、レミリアがあきれた顔で返事をする
「小悪魔、気持は嬉しいのだけれど、あなたはあの時、私と一緒だったし知っているでしょ?
もう運命の日は過ぎたのよ?」
「お嬢様、お忘れですか?私の能力」
レミリアと小悪魔の会話に、咲夜が横から話を入れてくる。
「私の能力は時を止める程度の能力。この図書館は、あの運命の日から時が止まったままなんですよ?」
咲夜がレミリアにお辞儀をしたまま喋る。
レミリアもパチュリーも、咲夜が嘘をついているのはわかった。
咲夜の能力は、時間を操る程度の能力ではあるが、それは時間を止める能力であり
時刻を止める能力ではない。だから三日前の、運命の日の時刻を止めていられるはずが
ないのだ。
咲夜も自分の能力の事をレミリアやパチュリーに話しているため、そのような
嘘をついても、すぐにばれる事はわかっているはずだった。
本当ならば、「バカにしているの?」と怒る場面だったかもしれない。
しかし、レミリアはそんな咲夜の嘘に騙されようと思った。
自分やパチェのためにつく優しい嘘、レミリアに嘘をつかないし、つきたくない
そんな咲夜がついた一生懸命な嘘。


(うん・・・騙されても・・・悪くないわ・・・)
「そうなの・・ありがとう、咲夜。あなたは本当に役に立つメイドだわ」
その言葉を聞いて、咲夜は顔を上げレミリアを見る。レミリアは怒っている様子は
まったくなく、咲夜に笑顔を向けていた。そこで咲夜も笑顔になる。
「じゃあ、パーティをはじめましょうか。咲夜、小悪魔、あなたたちもがんばってくれた
のだし付き合いなさい。いいわよね?パチェ」
「ええ、もちろんよ」
レミリアがパチュリーに確認し、パチュリーは微笑んで頷く。
「ありがとうございます。では、レミリア様。こちらへどうぞ」
小悪魔がレミリアに近づいてきて、レミリアをテーブルまで招待する。
「パチュリー様もどうぞ」
そう言って、咲夜もパチュリーをテーブルに案内するように、片手をテーブルの方へ向ける。
「ありがとう」
パチュリーが咲夜にお礼を言って、テーブルの方へ歩みだす。
そうしてテーブルの方へ片手を伸ばして、お辞儀している咲夜の横を、パチュリーが
通過しようとした時、咲夜がパチュリーにしか聞こえない声でつぶやいてきた。
「お嬢様とのこと、認めたわけではないですから」
そしてパチュリーの後に続いて咲夜が歩き始める。
「これはお嬢様のためにしたことです。パチュリー様のためではありませんから」
パチュリーは、そんな咲夜に何か言い返そうと思ったが、咲夜のおかげでこうして
三日前の運命の日を祝えるので、偉そうな事が言えない。
とりあえず、わなわなと震えながら後ろを向いて、咲夜にニッコリ笑いかけるのだった。


4人がテーブルを囲むように立つ。いつの間に咲夜が着替えさせてくれたのか
気づくと、レミリアのボロボロだった服が綺麗な服に着替えられていた。
そして4人がワインの入ったグラスを持った。
レミリアはそれを確認して、横にいるパチュリーの手を微笑みながら握る。
パチュリーもそれに答えるように微笑んで手を握り返す。
そして、レミリアとパチュリーがグラスを掲げ、二人高らかに言う。
「運命の日に乾杯」
こんにちは、つぼみんです。
最初に・・・本当にごめんなさい!すっごく遅くなってしまって(泣
訳はあるのですが、結局は言い訳になってしまうので何も言いません(汗
とにかく、最後にもう一度すみませんでした。

で、話は変わってあとがき(早
最後はスッキリさせたいなって思い、できる限り頑張ったつもりです。
でも、もしかしたら、スッキリしてないかもしれないかも(汗
えっと、本当はいろいろ最後の場面考えたのですが
私、もうばればれだと思いますが、レミィ×パチェのカップリングが
好きなのです。結構少ない部類なのかな?(汗
で、こうなりました。というか、こうしないとちょっと痛々しく終わりそう
だったので(汗
また、ちょっと読みにくいかもですし、いろいろ変な部分や突込みどころがあるかもです。
その時はぺしっと言っていただけると幸いです。そしてすぐ訂正をします(汗
場面場面で区切る形を取っているのですが、今いろいろ試行錯誤です・・・すみません。

続き物はとーーーーぶん、やめようと思いました。
でも、楽しかったとも思いました。読んでくださった方も少しでも
楽しいと思っていただいていれば幸いです。
では、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうでした。
つぼみん
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コメント



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1.60名前が無い程度の能力削除
うむ、これぞ昼ドラ。
完結お疲れです。
4.70シゲル削除
かなり泣けました。
完結お疲れ様でした。
7.80てーる削除
昼ドラだぁ~w
もつれる恋愛劇、深まる愛憎。
12.60Hodumi削除
なんというか、もう、昼ドラですね。見ていてハラハラしましたよ。
お疲れ様でした。