Coolier - 新生・東方創想話

ハネムーン・デイズ7(終)

2005/05/26 15:07:02
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『あんたはこのままだと死ぬわ』

時間跳躍の時、聞いた会話。
巫女がメリーに向かって告げていた。

『まあ、そういうのを選んで召喚したんだけどね。死亡寸前なら、その後で歴史に残す影響も少ないだろうし』
『あー、ええと? ちょっと話が見えないんだけど? っていうか誰?』
『……あんた頭悪いわね』
『こんな状況に呼びつけられて、冷静でいられるのを褒めて欲しいんだけど』
『あたしの要求基準は高いの』
『おうぼうだなぁ』
『そうじゃなきゃ巫女なんてやってらんないわよ。とにかく、ここはあんたから見れば過去ってことになるわ。あんたがどれだけ先の未来人かは知らないけど、明治の世って言えば分かるかしら?』
『え? だって、さっき蓮子がいたよ?』
『蓮子? ああ、あの女ね。アレは何故だかあたしにも分からないけど――』
『そう、謎は全て解けたわ! つまり、これは大掛かりなトリックだってことよね!』
『…………』
『詰めが甘かったわね、なんの企画だか知らないけど、仮にここが明治時代だとすれば、蓮子がいるのは明らかな矛盾! 言い逃れできないエイプリルフール!』
『……その傷はどう説明するの?』
『うわ! 血がどくどくと!?』
『……なんか頭が痛くなってきたわ、未来人ってこんな奴らばっかりなの?』
『あの妖怪にかじられたやつかなぁ。おー、なんか噴水みたい』
『なに遊んでんのよ……』
『ねえ、これ、痛くないよ? ひょっとして麻睡とか打ってる?』
『違うわ。そんな無粋なもの打たないわよ、むしろ『式を打って』痛覚に……って、あー、長話は面倒ね。とにかくそれは現実よ、そう理解しておきなさい』
『ふーん。あ、なんか血の出る量が少なくなってきてる』
『時間が無いってことよ。事情を説明するわね――』
『あと、それって巫女服? 明らかに違うっぽいけど。あ、もしかしてコスプレなの? 私、見るのはじめてだから、キャラとかそこらへんが分からないんだけど』
『人の話を聞け! というかココは過去! いい加減に分かれ!』
『うーん、でも着慣れてて年季が入ってる分、イタイっていうか、ズレてるっていうか、夏の夜がなんだかもの悲しくなってくる今日この頃?』
『痛いって何よ! あ゛ー、もう! 話が進まないじゃない!』
『どうどう』
『あんたが言うな!』
『ところでお茶は? あ、できればほうじ茶ね。私、あの風味が好きなんだ』
『あんたに出すお茶は無い! とにかく説明するわよ! このまんまだと妖怪が溢れてさあ大変! 人間も死ぬけど妖怪も死ぬわ。それを防ぐためにも結界を張らなきゃいけない。だからあんたには犠牲になってもらって――』
『ヤ』
『……は?』
『イヤだよ、そんなの。なにが悲しくて、見も知らない、しかも過去の人たちを助けなきゃならないの?』
『え、いや、でも、ここは過去よ? あんたたちの時代にも影響が出るわよ?』
『ふーん』
『ふーんって……それにこのままだと、あんた無駄死によ? それでいいの?』
『残念だけど、私、命には最上の価値があるって考え方、だいっ嫌いなんだ。
私の命よ、それをどう使うかは私が決めることでしょ? そして、過去の知らない誰かさんを救うってのは、私にとって価値あることでは全然ないの』
『…………』
『無駄死に? 大いに結構じゃない。誰かに便利に使われる命なら、ここで無駄に散った方がまだマシってもんよ』
『…………』
『――――』
『…………』
『――――』
『……悪いけど、だからと言って、素直にその意見を認めるわけにはいかないの。ここで儀式を遅らせれば、また被害が増えるわ。あたしはもう、あの光景を見たくない。こうなったら力尽くでも……』
『――あ、待った』
『え?』
『――――』
『どうしたのよ』
『――なにをする儀式って言った?』
『結界を張るためのよ。式は既に打ってあるから、あとは適応した魂を放り込むだけ…………ってあんた、人の目を見なさいよ。さっきからどこ見てるのよ』
『やりなさい、いますぐに』
『へ?』
『――――』
『……ええ、っと? たしかに私もその方がありがたいんだけど、ほんとに……』
『いいからとっととヤレ! 一秒も無駄にするな! 間に合わなかったら祟り殺してやる!!』

怯んだように後ずさりながらも、巫女は覚悟を決めたようだった。
すう、と息を吸ったと思ったら表情が一変し、神職にある者特有の、侵しがたい静寂を身に纏う。
そして、ゆっくりと祝詞を唱え、玉串を振った。
舞うような足運びから、ひとつひとつの器具を指し示す。
闇の中で、メリーと巫女はうっすらと光り出していた。
地面に八卦と陰陽図が浮かび上がり、更にそれを含んだ巨大な陣が生成された。
凶々しい、生贄を捧げるための道具たちも姿をハッキリとさせる。
メリーは、空の彼方をただひたすらに凝視していた。
意志の込もった視線で、なにかを『視て』た。
高速で陣が回転をはじめ、金色の光が夜の静謐を破る。
薪を貪ってた炎は一際おおきく吠え、陣は極薄のガラス同士を打ち鳴らしたような、涼やかな音を響かせていた。
段々と、祝詞は高まる。
音も、炎も、陣も、高く昇っていた。
囲む器具のひとつが動いた。
誰が手に取ったわけではなく、自動的に、それが元々の機能だとでも言うように宙を滑り、メリーへと突き刺さった。
生々しい音をさせ、めり込む。
それを契機に次々と器具が宙を舞う。
メリーは動かない。
痛みを感じていないのかもしれない。
その想像だけが唯一の救いだ。

『――』

メリーが、何かを喋った。
その唇がどんな言葉を紡いだのかは、分からなかった。
万丈の音に満ち、金色光は陰影しか伝えず、その身体はあらゆる方向から刺し貫かれていたからだ。
祝詞と陣は、いまや天を焦がさんばかりに高まっていた。
だん! と大地を踏み、巫女が玉串を振り下ろし、どの言語とも似ていない音を迸らせた。

それが、合図だったのだろう。
陣が組みあがり、澄んだ高音が鳴らされ、メリーの全身がおおきく震え、そこから一条の閃光が解き放たれた。
矢のように真っ直ぐ上へと向かい、高々度まで上昇するとその場で留まり、そして、そこから水平に『広がった』。絢爛と輝きながら地を覆い。彼岸と此岸を分け距てる。
半球状に被さる様子は、黄金の瀑布とも見えた。
『幻想的』としか言えない光景だ。

地上の陣は、それを最後に沈黙する。
光は、焚き火を含めて全て消え、闇に帰ろうとしていた。

――その中を、襤褸切れのようになったメリーが倒れてゆくのが『視え』た。


+++


――そして、『今』、だ。
わたしは仰向けになりながら呆然としてた。
考えることが、できなかった。
何もかも、心に届かない。
ただ結界を――メリーの魂の散じた様を見ながら、「やっぱりメリーの魂はキレイだったんだ」なんて間抜けなことを思っていた。
その光景は、なぜか『聖夜』という言葉を連想させた。
光片が降り注ぐ様子から、かもしれない。
隅無く覆っている結界は、その内部にキラキラと輝くものを舞い降らせていた。
立つことができず、空間移動もできず、ただ横たわっているだけのわたしにとって、眼前に降ってくるのを見る事だけが、唯一、行なえる行動だった。

「――――」

真夏の夜、物音ひとつしない静寂の中で、たぶん、贅沢すぎる光景だった。

「――」

血の大半が失われ、死に向かう寸前で――

「……あ……」

『どうしてメリーは犠牲になろうとしたのだろう』という疑問が過ぎった。
一度は断ったのに、なぜ意見を翻し、承諾したのか?

――いや、ちがう。

既にわたしはその答えを分かっている。
これは確認のための問い掛けだ。
だって……そうだ……

メリーは一体、何を『視た』?

これが分かれば簡単にわかる問題。
そして――

彼女の視線が向かったのは、『わたしのいる方角』だった。
時刻は、『わたしがレミリアと闘っていた時刻』だった。
そう、だ――わたしは『どうやって助かった』。

背中が、隅無くあわ立った。
氷の中に放り込まれた。
唇は、もうこれ以上ないほど真っ青なのに、そこからさらに血が引き出す。
ガチガチと歯が咀み合わさらない。

――わたしが、原因だったんだ。
メリ―が決意したのは、わたしが生死の『境』にいた時だ。

まるで鶏と卵のパラドクス。
わたしはメリーが生贄にされると思い、助けに走り。
メリーは、そのわたしが殺されるのを防ぐため生贄になった。
過去跳躍が起こした因果の捻れ。
一体どちらが原因で、どちらが結果なのかは分からない。

分かっているのは――――


 わたしが二回もメリーを殺したのだという現実。


咽喉奥から、音が漏れる。
打ちのめされるなんて単語では、追いつかなかった。
絶望ですら生ぬるい。
腹腔にブラックホールが生まれ、何もかもが飲み込まれてゆく感覚。

――メリーに抱き締められた感触と、わたしの方を視て呟いた姿が、何度もリフレインしてた。
わたしの失敗が、彼女を二度も犠牲にした……!!

ゆっくりと、ゆっくりと、脳の方でなにかがブチンブチンと千切れていった。
視界が酷く歪んでる。
馬鹿みたいに意味不明な音を、誰かが出してた。
よく聞くと、わたしの口から漏れていた。

心が冷える。
無形のナイフで突き刺される。
煮え立ちすぎた感情に、魂が火傷し機能を停止する。

――メリーを殺し、独占してしまいたい気持ちすらあったくせに、いざ現実となるとこうか?
わたしの理性が、唐突にそう囁く。

確かに、その通りだ……
わたしは、なんて救いようの無い馬鹿なんだ。
なんて、滑稽なんだ。
ああ、そうだ。『わたしがメリーを殺した』んだ……!
望みが叶った癖に……
望んだ通りになった癖に……!!


歯を噛み締める。


もうこれ以上は、考えることも思うことも嫌だった。
もの言わぬ、ただの機械になってしまいたかった。

絡繰り人形と変わらぬ確かさ。
鉱物の静寂。

物質なら、哀しみを感じることもない。
魂なんて無いから、誰かを欲することもない。
自分を殺戮したいほどの後悔も、失敗もきっと起こさない。
そう在りたいと、心の底から欲した。

人形のように横たわり、全てが止まる時を、わたしは待った。
自分の中の何もかもを停止させる。
感じることを全て止める。
本当にただの『物質』となるのを、じっと待っていた。
結界から降り行く光片を、ただ無心に見つめていた…………





――――ざッ、と、砂利を弾いて足音がした。
顔を、そちらに向ける。
ほとんど意志の介在しない、反射的な行動だった。
ハダカのまま、レミリアがコチラに来た。
何ひとつ身に付けず、眉間にシワを寄せていた。

「ったく、何事よ」

鬱陶しげに辺りを見渡してた。

「馬鹿みたいに強力な結界ね、お陰で、力を少し削られたじゃない」

おそらくそれは嘘だろう。
感情は凍ったまま、理性だけでそう判断した。
服を再生することができないほど、彼女は消耗している。
その言葉はただのハッタリに過ぎない。
――かといって、今のわたしが殺せるほど、とも見えない。
戦力差は相変わらず圧倒的だ。

いや……それも、どうだっていいか。
いまや彼女を殺すだけの理由が存在しない。
だと考えると、見てる必要すらもはや無い。
わたしは興味を失い、再び『空』を見上げた。

「……咲夜?」

訝しげな声。
傍に屈み込んだ彼女の顔が見える。
視界の半分を覆っていた。
不思議そうな顔で、レミリアはわたしを眺めてる。
そして、幾許かの躊躇の後、恐る恐る――そう言っていい慎重さで、わたしの髪を撫ぜた。

「さくや……」

華やいだ声。
本当に、嬉しそうな声。

「そう、『折れた』のね、貴女の心……」

言って、わたしを抱え起こした。

「それを私ができなかったのが残念だけれど、まあ、仕方ないわね。この世界は、何もかも思い通りに行くわけではないわ……」

黙って彼女の言葉を聞く。

「ああ、そんなことより――」

いままで見たことが無いほど、華やいだ笑顔。
純粋な好意を浮かべてた。

「今は、貴女が手に入ったことの方が嬉しい。やっと私のものになってくれるのね」

おとがいを持ち上げられ、しっかりと観察された後、わたしの頭はレミリアの小さな腕に抱かれた。
すこし苦しいくらいの力加減。
その指がゆっくりとわたしの首筋を通り、髪をかき揚げ、鼻筋を確かめ、唇に接触する。
くすくすという笑い声が、ずっとしていた。
ぺたぺたと、幼子が玩具を弄ぶかのように遠慮なく、それでいて丁寧にわたしに触れる。
帽子はとっくに吹き飛ばされ、服も辛うじて身体を隠している程度。そのわたしから更にネクタイを外し、ボタンを順に解いてゆく。
そうしていながら、レミリアの顔は万華鏡のように変化した。
触れながら驚き、笑い、嬉しそうに笑う。蝙蝠翼をはためかせる様子すら楽しげだった。
ふと、動きが止まる。
恐ろしいほどに真剣な表情。
唐突に、ぎゅっと抱き寄せられた。彼女の唇が耳に触れる。

「――誓いなさい。咲夜」

わたしの鼓膜以外は聞き取れないほどの音量。

「どこにも行かず、何にも心を奪われず、騙すことなく、驕ることなく、絶えることなく、永久に私に仕えると――」

くっついていた顔が静かに離れ、わたしは狂気と狂喜を宿す瞳に撃ち抜かれた。

「そうすれば……そうね、貴女を苦しみから解放してあげるわ。すべてを『無かったこと』にしてあげる。事実や現実は問題では無いわ、あなたの主観において、それを『存在しなく』させるの――」

……この苦しみが無くなる?
死んでいた脳みその一部が蠢いた。
その言葉は、今のわたしにとって、どんな麻薬よりも効果があった。
自殺する気力すら失ったわたしには、喩えようも無いほどの魅力だ。

――たぶん、わたしは「貴女を殺してあげるわ」と言われても、ただ黙って頷いただろう。
この世に、一瞬たりとても存在していたくなかった。

「あ……」

ひりついた咽喉の奥から、わたしは、言葉をひねり出した。

――はい、誓います、と。


+++


嬉しそうな笑い声が、聞こえてた――
声帯が奏でるその音は、絶えることなく鳴らされる。
レミリアが、まずはじめにしたことが、親指を噛み千切り、わたしに血を振り掛ける作業だった。
傷口に振りかけられた途端、まるでシャッターが閉まるように傷痕が消えた。
あれだけの深手が、『無かったこと』にされていた。
ヤケド跡も、炭化した右腕でさえ例外ではなかった。

それが終わると、彼女はわたしの髪を撫ぜた。

「これから、大変ね」

それでも嬉しそうに微笑む。

「咲夜、料理はできる? 掃除は? 紅茶の淹れ方は? ああ、殺し方だけは教える必要が無さそうね」

面白い冗談を聞いたみたいに、彼女は咽喉を鳴らす。

「そうね、全て一から教えなくては……これから忙しくなるわ」

とっても大変。と言いながら、レミリアはわたしにくちづけをした。
そのまま血を送り込まれる。
反射的に、わたしは飲み込んだ。
同時に、彼女は髪を撫ぜた。

「!!」

目を見開く。
胃が飲んだものを吐き出そうとする。
両手がレミリアの指を弾こうとした。
苦しさ、では無かった。
もっと別の感覚、別の嫌悪。
強烈な違和感に似た、言語化できない拒否反応だ。

――がちん

目は、レミリアの紅く歓喜する瞳だけを映した。
吐き出そうとする行為は、更に送り込まれた血によって流される。
手は、いくら足掻いてもびくともしない。

――がちん、がちん、がちん

煩い音がする。
とても瑣細な音なのに、全神経に障る音。

わたしは瞳を閉じる。
目の端から、涙が流れた。
そうすると、音がわたしの内部から響いてることに気が付いた。
身体のどことは言えない、ひたすらに『内側から』響く音。
胃が痙攣するが、無理矢理に血を流し込まれた。
わたしの身体は、仕方なしに摂取をする。
レミリアの唇が離され、笑みを形作り、
――心臓がひとつ、巨大な鼓動を打った。

「!?」

内部からひっくり返されたみたいな感覚。
背筋がいっぺんに総毛立つ。
瞼が限界まで開いた。

髪を撫ぜられる。
レミリアの指が梳いた部分から、まるで染めたみたいに、『白銀色に』変色して行くのが見えていた。
もともとの茶髪が、別色に変えられる。

――がちんがちんがちんガチンガチンガチンガチン!

子どもの頃の風景が散華した。
両親の顔が分からなくなった。
知り合いの名前が誰ひとり思い出せない。
自分が何歳なのか記憶にない。
好きだった食べ物。
愛読してた本の名前。
子どもの頃に手にしたわたしの相棒。世界で二番目に大切なカメラの形。

きえるきえるきえる。
水で流したみたいにあっという間に流れて去って闇に溶け、二度と手元に戻らない。
 
――ガチンガチンガチンガチンガチンガチンガチンガチンガチンガチンガチンガチン!!!

わたしの運命が鳴る音――ではなかった。
これは、『わたしの運命そのもの』が変わる音。
時計で言えば、その針ではなく内部構造を変えられていた。

『宇佐見蓮子』という人間が、消えようとしていた。
『十六夜咲夜』というニンゲンが、誕生しようとしてた。

わたしの目はレミリアの狂った瞳だけを覗き、
わたしの耳はレミリアの悦楽に酔った声を聞き、
わたしの肌はレミリアの滑らかな手の感触を知り、
わたしの舌はレミリアのどろりと塩辛い血を確かめ、
わたしの鼻はレミリアのかすかな体臭だけを嗅ぎ取り、
わたしの意識はどことも知れない闇に飲み込まれ、消えうせようとしてた。

――メリーの顔が思い浮かぶ。

「!」

ゆっくりと、彼女の事柄が、水中の紙のように溶けようとしている。
『思い出せなく』なろうとしてる。

――いやだ!

凍結してた魂が蘇生する。
それだけは、それだけは!
突き放そうとする行為を、吸血鬼の人間離れした膂力に防がれた。
片手は強靭にわたしを抱え、もう片方の手はあくまでも優しげにわたしの髪をくしけずる。
視界が歪む。
暴れる。
暴れ続ける。

始めて会った時のこと。
互いの能力を知った時のこと。
異世界でふたり過ごした夜のこと。
夏の日に、しどけなく横たわる様子。
彼女を飽きることなく眺めつづけ、自分の感情を自覚した日。
わたしが助け、それ以上に助けられたこと。

いやだ。
それだけは。

それだけは消さないで!

わたしの命なんかより大切な記憶。
生きていたことの、その重み。価値。
誰にも触れられたくない! 消されたくなんて――

「無駄よ」

冷徹に、それでも優しく告げられた。

「咲夜、貴女はもう誓ったのでしょう?」

――わがままは言わないで、と、『頭を撫でられる』。

身体を振り回す。
逃げ出そうとする。
そうじゃない、
そうじゃないんだ!
わたしは、わたしは――!

混乱する。
自分で自分の感情が分からない。
――大切なのに――本当に楽しかった――死んでしまった――でも好きだった!――ひとりじゃない――『わたしが殺した』――ふたりきりで交わした数々の会話――どこにも行かないで!――もう会えないなら……――

「わたしは!!」

「無駄よ、貴女は既に私のものなのだから――」

視界が真っ紅に染まる。
信じられないほどの幸福感と墜落感。

「――」

八割方の髪が白銀と化していた。
触れられる指は痛くないが、恐ろしいほどの異物感があった。
それが下に行く頃には馴染んでいる。その繰り返しだった。

レミリアの手が、持ち上がり、一番大切なものへと容赦なく下ろされ――



「また遅刻だよ、蓮子」



聞こえるはずのない声が聞こえた。



+++



「!」
「え――」

世界が軋んだ。
黄金の壁面が火花を散らす。
幾つもの小雷が駆け巡り、光片が下から上に遡る。
鉄鋼を切断する時に生じる音、それと似た轟音をさせ、『空間に二本の指が生えていた』。
酷く生々しい音をさせながら空間が裂けた。
そこには――

「……め、りー……?」

居るはずのない人間。
死亡したはずの彼女がいた。
裂け目の向こうでは、巫女の呆気に取られた表情と、黄金に輝く陣が僅かに見える。
その身体は相変わらず幾本もの器具が突き刺さり、身体中は血の赤で染色されていた。
肌は生きているものではなく、いかなる白よりも白かった。
変わっていないのは、その双眸の輝きと快濶な笑顔。
悪戯っ子じみた表情だけが、変わっていなかった。

「だから、私の方から来ちゃったよ」

地面に降り立ち、その背後の裂け目が閉じる。
へへ、とばかりに照れた笑みを浮かべてた。

「…………」

たぶん、その時のわたしは最高にマヌケな表情だったと思う。
口は半開き、顔は涙や鼻水でぐちゃぐちゃだ。とても人に見せられる顔じゃない。
だから、だろう。メリーはわたしを指差し、大爆笑しやがった。なんて失礼なやつだ。

「そ、そんな蓮子のそんな顔はじめて見た! カメラ無いカメラ!」
「あ……」
「あと、その髪って染めたの? うーん、似合ってるけど私は前の方が好きだったよ?」

なんと、答えていいものやら。
珍しげにわたしの髪を眺める様子や、その表情。
あんまりにも変わらない、いつも通りのノリに頭がクラクラしてくる。
さっきまでの非日常との落差加減は、どんなプロ野球選手が投げるフォークボールも及ばないに違いない。

もう……!

「わ、わたしが遅刻するのは、毎度のことでしょ……?」

なぜか、鼻がツンとする。
罪悪感に潰されそうになりながら、それでも、わたしは微笑んだ。

「うん、そうだったね」
「うん、そうだよ」

笑い合う。

「あ、そうだ、これ抜くの、手伝ってくれない?」
「それ……大丈夫なの?」

メリーはいまだ器具が突き刺さったままだ。

「うーん、まあ、痛くはないし。ただ、ちょっと邪魔なんだよね、これ」

言いながらすぽんすぽんと抜いていく。
血は、出なかった。
見てるこちらの方が、むしろ痛い。

「蓮子~、ちょっと手伝って。背中のが、これ、ちょっと」
「あ、うん、分かった」

なにかが間違ってる、と理性は告げたが、気にせず器具に手をかける。
引き抜いた感触に、恐ろしいほどの手ごたえがあった。
内部に入った部分が、ぞっとするほど長い。

「ふう、すっきりした」

まるで「あ~、いいお湯だった」とでも云う雰囲気で、メリーは言った。
すべてを引き抜き終わり、今は大きく伸びをしていた。
血まみれでさえなければ、呑気な光景と言えるだろう。

「――誰だ」

そこに、敵意を剥き出しにして、レミリアが問うた。
全身の毛を逆立てた猫のような、あからさまな戦意を、少し離れた場所から見せ付けていた。
良く見ると、すぐ傍の川原に、一直線の焼き焦げ跡があった。
黄金の残滓がわずかに見える。
――結界の張られた跡、だった。

「お前がメリーであるはずが無い。先ほど確かに魂が昇った。その身体が勝手に動くなどあり得ない。お前はいったい、誰だ?」
「あ、はじめまして。私はマエリベリー・ハーン。メリーってのは愛称ね? 蓮子のせいでみんなその名前で呼ぶんだよねー」

困ったもんだ、と言って、頭を掻いてた。
メリー、いまはそんな場合じゃない。
と言うか自己紹介をしてどうする。

「答えろ! 付喪神の類いとて、これほど短時間ではあり得ない! 妖怪では無い、人間ですらない、そんなお前は何者だ!」
「なんで答えなきゃなんないの?」

まったくの素で、メリーは言った。
あ、レミリアが呆然としてる。

「一応、敵対してるわけだよね? 私たち。その相手にご親切に説明してあげる義理は無いと思うんだけどな?」
「………」
「というか、ね」

静かに、空気がねばりを増した。
黄金結界が小さな電を鳴らす。
それを背景にして、メリーは吸血鬼を睨みつける。

「私、怒ってるんだよ? 蓮子のこと、いじめてたよね……」

それだけで、レミリアは後退した。
横で見ているわたしにすら、メリーの凄まじい力が理解できた。
まさに『圧倒的戦力差』だった。

「いや、いじめてたって言うのかな、アレは……」

だけど、いつでも理性的なわたしは、気になったことを思わず呟いた。

「え、違うの?」
「うーん、そうね。なんて言ったらいいのか……」
「ああ! ひょっとして双方合意のSMぷれい!? 蓮子にそんな趣味がっ!?」
「違う!! 怯えつつ興味津々な顔をするな!」
「じゃあなに?」

正確に言えば、助けに行く途中で邪魔をされたというか、身体・心理両面で攻撃されたというか――――あー、駄目だ。この複雑すぎる状況を、メリーみたいな天上天下唯我独尊的人格に、きちんと説明する術をわたしは持たない。
「なんだよー」とわたしの袖をひっぱるメリーを宥める。
というかメリー、君は何故シリアス的なことを五分以上つづけられない?

「――マエリベリー・ハーン」
「ん?」
「状況を認めよう、確かに、私は今のお前に勝てない。さすがに私は弱りすぎている――――だが、分かっているのか?」
「なにを? 今晩の夕食? たしかに悩むよね」
「…………」

あ、青筋が浮かんでる。
「煮魚かな? いやハンバーグとかもいいなぁ」とか呟いてるメリーを無視し、レミリアはさらに問う。

「――お前の、隣にいる者のことだ」
「蓮子のこと?」

言ってメリーはわたしの肩を抱き、ぐい、っと引き寄せた。
いや、嬉しいんだけど――

「メリー、なんか血がいっぱいで気持ち悪い」
「ひどっ! 蓮子、愛情が足りないよ?」
「――分かっているのか?」

レミリアが遮り、告げてきた。
その笑みには、ある種の悪意が確かにあった。
嫌な予感が過ぎる。

  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「彼女がお前を殺したがっていることを、分かって、そうしてるのか?」
「え、そうなの?」
「――――」

反射的に顔を背ける。
顔から血が抜けてゆくのを自覚した。
指先が震える。
メリーの方に、目を向けられない。
そうすることが、レミリアの言葉を肯定する作業だとは分かっていても、どうすることもできなかった。
釈明が思いつかない。
『もしメリーが別の人のものになったら』という前提の元では、それは決して間違いではなく、真実そのものなのだ。
――たとえその後に、死ぬほど後悔するとしても、だ。

「ありゃ、そうなんだ」

意外そのもの、といった声色だった。

「まあ、特に問題じゃないよね、それ」
「…………」
「――――」

…………なんとも言い様のない、恐ろしくヘンな空気が満ちた。

「え……」
「蓮子が好きこのんで無差別に殺しまわってる、ってわけじゃないんだよね? 私を殺したいだけなんでしょ? それなら、まあ、許容範囲かな?」

え、いや、おいおい待て。

「メリー……?」
「ん? なにさ」
「正気?」
「しっけいな」

ぺしり、と叩かれる。

「だって……」
「んー、道徳なんて場所によって変わるものだよね。戦場だと、むしろたくさん殺した方が偉くなるんだし。そこで『殺せない』ことはむしろ間違ったことだとされる」
「――――」
「それに、普通に友達やってても、傷つけ、傷つけられることはあるよね。それがちょっとバージョンアップしただけでしょ」

なんの問題もないわ、相手が蓮子なんだし。と締めくくった。

「――――」
「…………」

ふたたび、ヘンな空気が満ちた。
今度の沈黙は更に深い。
地獄のような静寂だった。

瞬間、『命には最上の価値があるって考え方、だいっ嫌いなんだ。私の命よ、それをどう使うかは私が決めることでしょ?』という、メリーの言葉が蘇った。

「……………………あ、あはっ……」

思わず、笑った。
言葉の意味が、遅れに遅れて、ようやくわたしの脳に伝わったのだ。
しばらく我慢していたけれど、腰を折り、ついには腹を抱えて大声で笑った。
恥も外聞も無く、肺の酸素が続く限り笑う。
見当外れの心配をするメリーに返事をすることもできず、わたしはただ大笑いをする。
激怒のためではなかった。
そういうことでは、まったくなかった。

――ああ、参った。
わたしの中で知らぬ間にわだかまり、永久に溶ないと思っていたものが、容易くほどけてゆくのを感じていた。
なにせ、この愛しすぎる馬鹿は「わたしに殺されても別に構わない」と言ったのだ。
たぶん、どんな贈り物を受け取るよりも、わたしは嬉しい。
一番、卑近で卑怯で醜悪な感情を、肯定されてしまった。
文字通り、丸ごと受け止められてしまった。

この言葉だけで、これから先、どんな拷問にだって耐えられる。
たぶん、彼女が結婚することになっても、拍手できてしまう。
わたしに与えられるどんな苦痛より、メリーのことが大事だった。

彼女の肩に顔を埋める。
血が顔中に掛かったけど、まるで気にならなかった。

レミリアの表情が、そうしていても『視え』た。
あらゆる感情を消し去った。能面のような顔だった。
歯を噛み締め、わたしを睨みつけていることだけが分かる。

メリーが困惑した顔のまま、レミリアに告げた。

「んー、まあ、正直、なにがなんだかサッパリなんだけど。蓮子を傷つけたのは確かだし、とにかく邪魔だから、『ここから』出てって」

言って片手を振った。
空間が悲鳴を上げて軋み、レミリアを球状に取り囲む。

「あ、ついでに館もつけてあげる。というか、あれって邪魔」

彼方で雷鳴音と発光が確認できた。
館が『消える』のを、わたしの目は捉えた。
レミリアの背後に異界の裂け目が生じ、その異色を見せつける。
その存在の重さの為か、それとも運命操作を行なっているのか、裂け目はとてもゆっくりとしか開かなかった。
レミリアはまっすぐにわたしを見つめた。

「――――十六夜咲夜!」

その叫び声に、わたしはメリーの肩から顔を離した。
視線が絡み合う。

「――――」
「…………」

紅い瞳が、わたしを捉える。
変色しかかったわたしの瞳が、彼女を写す。
なにも喋らなかった。
喋る必要は、なかった。


レミリアの双眸が、「それでも貴女は私のモノだ」と告げていたから。


そう、わたしは、わたしは『誓ってしまった』。
レミリア・スカーレットのものになると。
わたしのわだかまりが解消されても、メリ―が途中で遮っても、その事実そのものが無くなることはない。
一度、契約し、結ばれてしまったこの縁は、何をもってしても解消できない。
それは、双方向的に結びついた『契約』なのだ。
こうしている間にも、髪は徐々に銀色に染まり、記憶が消失しているのが分かった。
きっと、わたしは近いうちに、何もかもを忘れてしまう。
どれだけの時間の後、そうなるかは分からないけれど、その確信があった。
でも――

「さよなら、レミリア・スカーレット」

わたしは、もうレミリアとは会えない。
そうなったわたしは、もうわたしじゃなかった。

「――――」

ぴん、と、緊張の糸が張る。
背後の裂け目が、彼女を半ば飲み込んでいる。
わたしが言った言葉の意味を、彼女なら理解するはずだ。

そう、『わたしは』、彼女の元へ行けない。

怖いほどに張り詰めた空気。
百万の言葉よりもなお重い、この場だけで通じる無音の里言が交わされた。
同じ闇を持った者同士の、理解、嫉妬、共感、羨望……
ただ見つめあうだけの、硬質な時間。
どんな言葉よりも深い部分での交感。
裂け目が徐々に広がって行く中、声のひとつも出さずに会話する。
射殺すようなレミリアの視線が、ふ、っと僅かに緩み、

「さようなら、ウサミレンコ――」

はじめてわたしの名を呼び、あっという間に消失した。
僅かな残滓だけを残して、この世界から消えた。

「…………」

――なぜか、悲しさに似たものが最後に残った。
彼女が最後に浮かべた、淋しげな表情のせいかもしれない。
諦めとも悲哀ともつかない瞳が焼きついてる。

「………――」

わたしは、思う。
彼女に仕えることは、実は、そんなに悪いことじゃないのだろう。
外面を威と矜持で覆い、本心をまるで見せない彼女は、やはりわたしとどこか似ている。
吸血鬼と人間の違いしかないんじゃないかと思うくらいだ。
そんな彼女の世話をするのは、きっと楽しい作業に違いない。

だが、それでも、それが分かった上でも、彼女の元に赴くのはわたしではなかった。
わたしがいるのは、メリーの傍だ。
行くのは、『十六夜咲夜』という名の人間だ。
どことも知れない場所に飛ばされたレミリアの元へ、一心不乱に馳せ参じるのは彼女の役目だ。
言葉遊びのようだけれど、これは、わたしにとって厳然たる境界だった。

ため息を吐き、その未来を、少しだけ夢想してみる。
驚くほど自然に、しっかりと想像できた。
なぜか口元が緩んでしまう。
それは楽しい日々となるだろう。


…………まあ、でもとりあえず今は、わたしの隣でむくれてるメリーを宥めるのが先決なのかもしれない。
あからさまに目を外らし、「私は気にしてないよ? うん」というフリをしているが、貧乏揺すりをしてる足とか、口元が引きつった様子とかが、限界に近いことを示している。
この相棒は、妙な所で嫉妬深い。
『レミリアと目と目で話し合う』なんてことをしたのが、どうも気に食わないらしかった。
まったく、もう……
このヘソ曲がりの機嫌をどうやって直そうか……?



+++



「あんたら、なにやってるの?」

呆れた声と共に巫女がやって来た時、わたしはタックルから腕ひしぎ十字固めへのコンボを発動し終わったところだった。
うん、つまり、手を変え品を変えしても、まるで機嫌を直さないので、実力行使に移ったのだ。
拙劣な会話より、身体に直接訴えた方が時には効果的である。
幸いにも痛覚は復活してるみたいだし、いつものようにした方がてっとり早い。

「あ、どうも」
「蓮子、ギブ、ギブ!」

わたしはその状態のままで挨拶をする。
メリーはその状態のままで七転八倒してる。

「本当になにやってるのよ――というか、蓮子だっけ? あんたがなんでここにいるのか、是非、聞きたいんだけど」
「話すと長くなりますよ?」
「巫女業は基本的に暇なのよ、構わないわ」
「えーと、そうですね……」
「蓮子! 喋ってないで解放して! って言うかマジで痛い! なんか骨がミシミシいってるし!?」
「…………離してあげたら? いや、お願いだから解放してあげて。なんかこの先、巫女やってくことができなくなりそうだから」

額に指を当て、首を振ってる巫女を眺めつつ、わたしはメリーを解放した。
恨めしげな目で、メリーは見つめてくる。

「……蓮子って、相変わらず容赦ないよね」
「メリーって、相変わらず運動神経ないよね」
「うっさいなぁ。私は深窓の令嬢だからいいの」
「どっちかって言うと、深層の霊場じゃない?」
「墓場の奥でうらめしやって? あー、今だとシャレになんないかも」
「ゾンビだもんね」
「違うって」
「神さまよ」

わたしとメリーは、意味不明なことを言う巫女に顔を向けた。

「どゆこと?」
「明治時代の冗句って、あまり笑えないのね」
「あたしだって信じたくないわよ」

頭痛を堪えるように、コメカミを揉んでた。

「でもね、立場的にはそうなのよ。理解して無いようだから言っとくけどね、今やあんたの手の内に幻想郷は有るのよ。そこら辺のこと、もうちょっと自覚してくれる?」
「えー、面倒そうだなぁ、パスとかできない?」
「あ、あんたねえっ!!」
「なんだか、わたしには話が見えないんだけど……」

巫女は凶悪に不機嫌な視線を、片手を上げるわたしに飛ばした。

「……あたしがどういうことをしたか、分かってる?」
「結界を張る作業でしょ? メリーをその素材に使ったことは、今すぐ斬殺したいくらい許せないけど」
「有効利用よ。どのみちあのままでも、彼女は死んでたんだから」

…………ものすごく納得できない部分はあるが、今は仕方がない。
後で論破しよう。

「本来なら、固定化するためだけにメリーの魂を使用するはずだったのよ。人柱があった方が、結界なんていう『形の無いもの』を長期間固定するのに便利だったからね。でも――」

巫女はメリーを指差した。
その対象は小首を傾げてる。

「どういうわけだ、そこのアンポンタンは意識を持ったままだし、固定化の陣を逆用して『式を打つし』、しかもそれで自分の死体を自分で動かすしで――――ああ゛っ! もう!! 本当に無茶苦茶よ!!」

天へと吠える。
まさに神を呪わんがばかりの様相だった。
そのまま続けて、妖怪退治の依頼ばっかで碌にお茶も飲めないことや、お賽銭が少なすぎることや、ツケを認めてくれなくなった小売店への文句を叫ぶ。
どうやら、相当なストレスが溜っているらしい。
わたしはメリーへと振り向いた。

「そういうことなの?」
「うん、そゆことなの」
「えーと、つまり、本体がコレ?」

わたしは博麗大結界を指差した。

「そういうことだねえ」
「なにを他人事みたいに」
「だって、ホントに他人事なんだもん」
「そんなわけないでしょ。言うなれば、『大結界メリー』が『この場のメリー』を遠隔操作してるってことでしょ?」
「大結界メリーって、なんかヤな言い方だなぁ――――折角だし改名とかしようかな?」
「いいから!」
「あ、えーとね、うーん……それだとちょっとニュアンスが違うのかな? いまの私って、言うなれば『夢をみてる』状態なんだ。『本体』はぐっすりと眠ってる。
私の主観では、いまここは『夢』なんだよ。
――だから、ホント言うとね、これが実際に起きてることなのかどうかも、私には判別ができない。もしかしたら、全ては私の妄想なのかもしれない。まあ、たとえ『起きていて』も、今度はそれが現実なのかどうかを知る術が無いんだけどね」
「それはまた……難儀なことね」
「そっかな? 当然のことでしょ。人間なら誰だってそうだよ」

メリーは別に悲しそうでも辛そうでもなかった。
いつものような自然体だった。
その、あまりの『変わらなさ』に、わたしはふと気付かされた。
そうだ、メリーは、あの冥い街でも、同じような感覚で暮らしてたんだ。
彼女自身にとっては、さほど変わりが無いに違いない。
相対性精神学の基礎である『夢と現は同一ある』を、文字通り体現してた。

「――でもさ。なんで、そんな思いまでして、ここに来たの? 『式を打って』いなければ、そんなおかしな存在にならずに済んだんでしょ?」

わたしを助けたかったから、という訳ではないと思う。
結界を張った時とは状況が違う。
外部から見れば、あの時、わたしは危機的状況下には無かったのだから。

「むむ……」

お、珍しく困った顔。

「……メリー、ひょっとして何か隠してる?」
「いや、そんな事実はまったく滅相もございませんのことよ?」
「その変な喋り方は絶対に隠してるね……」
「いやいやいやいや」

どれだけ一緒にいると思ってるんだ、まったく。
相変わらずメリーは嘘が下手だ。
揺れる金髪を見ながら、そんなことを思う。

――そして、いままでにこういった状態になって、逃げられたことがあったかどうか、それくらいは学習して欲しいというものだ。
後ずさりする彼女に、わたしは無音で近寄る。
メリーは盛大に顔を引きつらせて後退する。

「ほらほら、ね? 私って怪我人だし?」
「大丈夫よ、優しくするから」
「うわあ、なんか蓮子がえっちだ……」
「もう遠慮するのはやめたの――――」

口の両端を吊り上げる。
わたしと彼女とでは、肉体の性能に圧倒的な格差がある。
悲鳴を上げて逃げる彼女を、いつものように追い詰めた。
せっかく『力』を得たんだから、それを活用すればいいのに、それにも思い至らないほど必死な逃げ様だった。
結果、背後の樹に追い詰めた状態で、「くすぐるぞー、くするぐるぞー」とワキワキさせている両手を前に、ついにメリーは観念した。
相変わらず、これに弱いらしい。
人間の本質は、さほど変わらないものなのだろう。
身を縮め、哀願の視線で見上げるメリーは、いつもと変わらぬ小動物だった。
……そして、手中にしたエモノを前に、貪ることをためらう肉食獣もまたいない。


「やめ! ぷひゃっ! ぷはあはは!!」


笑いで途切れ途切れの言葉を聞くと、まあ要するに、結界からわたしとレミリアを覗いた時。その抱き合ってる様子(しかも片一方はハダカ、わたしは服を脱がされてる)に、「なんでだかよく分からないけど、もの凄くムカついて」、この所業に及んだらしい。
愛いやつ。
「だったら同じ事しよっか」というわたしの妥当で的確な提案は、なぜか速攻で却下された。
何故だ……
そんな返事だと、もっとくすぐらなきゃいけないじゃないか。

笑うメリーを確かめながら、わたしも笑った。

こんなに笑ったりするなんて、普段のわたしじゃ考えられない。
奇妙なほど、自分のこころが浮き立っているのを感じていた。
実におかしな心地だった。

冷静に現状を見れば酷い有様だ。
お先真っ暗、わたしに未来は既に無く、期間限定でしかこの場にいられないというのに、なぜか楽しい。
とてもワクワクしてる。
くすぐるのを止め、メリー抱き締めてみた。
なぜか突然、そうしてみたくなった。
驚いて、慌てる表情を堪能しながら、わたしは考えた。

これは、なんなのだろう?
この感情は、何かに似ている気がする。
旅行?
家出?
結界探索?
いや、経験したことのない、これは――

「――――ああ、そうか……」
「れ、蓮子? あの……?」
「ううん、なんでもない」

笑顔で首を振った。
不思議そうな顔をしてるメリ―が愛しかった。

――わたしは気が付いた。

これは、まるでハネムーンだ。

契約が終わり、誓いを交わしたのに、まだ、なにか『途中に在る』という感覚。
これから後は、ひたすらに繰り返される日常が続き、大仰なことは何も起こらない。
その直前の、最後の打ち上げ花火みたいな楽しみ。
別世界で過ごす、とても短い非日常……

「ははっ」

なんておかしなハネムーンだろう!
生涯を共にすると宣誓し終わったのに、わたしは別の人と新婚旅行をしようとしてる!
こんなヘンなハネムーンは、たぶん、わたしくらいしかしないだろう。
もちろん、不満があるわけではない。
メリーと一緒なのだ。こんなの言うこと無しだ。

「ねえ、蓮子―――」
「ん?」

メリーが珍しく、真面目で、不安そうな顔をしながらわたしを見てた。
唐突に笑い出したわたしを心配してるのかもしれない。
たしかに、わたしのキャラじゃない。

「あの、さ」
「うん」

どうしたんだろう?
言い淀むなんて、それこそキャラじゃないだろうに。
腕を放し、真正面から彼女に向き直った。

相当の時間をかけた躊躇の後、メリーはかなりの小声で呟いた。

「蓮子は、どこにも行かない、よね……?」
「…………」

口を開き、そして閉じた。
冗談めかして返答することができなかった。
メリーの瞳の奥で揺れている不安が、それを封じた。
もしかしたら、彼女は感じているのかもしれない。
この時が、決して永遠ではなく、ごく僅かしかないことに。
直感に優れたメリーのことだ、薄々は分かっているのだろう。

でも――

「――――」
「…………」

闇を理由も無く怖がる、幼子のような瞳を前に、
金色の、やわらかなウェーブを描く髪と、血にまみれた服とに囲まれた顔を前に、
ヒトデナシで殺人鬼で、そして嘘つきなわたしは、自分にできる最高の笑顔を浮かべて、言った。













うん、ずっと一緒だよ














































++++++++
  エピローグ
++++++++




時は遥かに流れ。
ある日、ある時、ある場所で、
幽霊姫の春集めを阻止したその後で――



冬の厳しさが大気に満ち、春のぬくもりが僅かしかない空の上で、二人が対峙していた。
どことも知れぬ異界にしてスキマ――ここマヨヒガであっても、あまりに特異な組み合わせだった。

一人は、一言で表現すればメイド。
冬用の厚着ではあるものの、完璧なまでにメイド服を着こなし、瀟洒に隙もなく飛んでいる。
鋭い双眸は理性と激情を融和させ、完璧に制御していた。
片手に幾本ものナイフを構え、目の前のうさん臭い人物を睨んでいる。

もう一人は、一言で言えばゴスロリ。
日傘を差し、フリルの付いた紫色の服を、これでもかと着込んでいる。
まるで人形が生きて動いてるかのような、ひどく不自然な存在感。
動いて、喋ること自体が既にうさん臭い。
構えることも無く日傘を差し、ゆったりと浮かんでた。

二人は、喋り合っていた。
それは日常の会話というには殺伐過ぎ、
戦闘前というには呑気過ぎた。

「あなたの事は、藍から聞いたわ」

日傘片手に呟く言葉は、音楽的な響きすらあった。
黄金色の髪が軽やかに揺れる。

「あら、私も有名になったものだわ」

瀟洒なメイドらしく余裕を持って、しかし鋭く返答する。
白銀の髪が静かに舞う。

「有名人であるあなたに、ちょっと会って見たくてね」
「それで起きてきたというわけ?  でも、サインも出来ないけど」
       ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「いやぁ、直筆の二枚舌で結構です~」
「直筆?」

初対面で嘘つきも何もないでしょうに、とメイドは思った。
けれど、その巫山戯た言い様は、心のどこかを軋ませた。
その違和感はいつまでも消えず、むしろ増大しつづける。
奇妙なほど親和に満ちた、彼女の目のせいかもしれない。
振り切るためにも、彼女は断言した。

「地獄だなんて、魔界より怖くない。鬼だなんて、悪魔に比べたらなんて事も無いわ」
  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「あなたは此処から抜け出せない、それが無間地獄」
「大丈夫、一本の蜘蛛の糸さえあれば、極楽の境界を見つけられる」

約束は破られ、
物語は終わる。

「ふふふ、その道が蜘蛛の糸より細く、蜘蛛の糸より複雑な弾幕の道でも?」

確認の言葉に、十六夜咲夜は深く頷き、
それを見た『彼女』は、あるかなしかの微笑みを浮かべ――

そして、
まったく同時に、
想いのたけをぶちまけるかのように、
己の現在を伝え、その在り方を証明するかのように、

――そして、ここから始まる、新しいなにかの為に――

大空のすべてを、
時空のすべてを
境界のすべてを埋め尽くす弾幕を、
躊躇無く全力で解き放った。



「――幻符・殺人ドール!――」
「――人間と妖怪の境界!――」 























    ――――――――――『ハネムーン・デイズ』・『結界を決壊』 END―――――――――――















                ―――――――&START――――――――
























なんで二枚舌なんだろう?

それが、このSSを思いついたキッカケだったりします。
東方妖々夢、Phantasmをやっていた時のことです。
エピローグ部分でも引用した、この二人の会話がどうにも意識に引っかかり、ゲーム終了後も、どこかモヤモヤしたもの残りました。
「実は知り合いだったのかな?」とも思いましたが、なにか納得がいかない。

その後、ハネームン・デイズの第一話を書き終わり、「あ、ひょっとしたら繋げられる?」と直感してしまい、この無謀な所業へと至ったわけです。

ええ、だから、全体プロットをきちんと作ったのは、実は第二話を書いてる途中だったりします……w
いやあ、本当に無謀だった、我ながら――

また、この無計画バンザイっぷりのため、レミリア側の心情、事情のほとんどがお蔵入りしてしまいました。
いつか、彼女から見た『ハネムーン・デイズ外伝』とかも書きたいですね。
ずいぶん大変そうなので、文章力がレベルアップしたら、なのですが。

あ、それと、某スレで質問に答えてくださった方々、本当にありがとうございます。
この場を借りて、改めてお礼を言います。

そしてもちろん、このSSを最後まで読んでくださった皆様方に最大の感謝を!


この終わり方が、果たしてハッピーエンドなのかそうでないのかは、皆様の判断にお任せします……


nonokosu
http://nonokosu.nobody.jp/
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コメント



0.7280簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
ただ一言。
「 最 高 で す 」
9.100den削除
連載お疲れ様でした。
堪能させていただきましたっ!
19.100名前が無い程度の能力削除
凄いですね…。こうしてまた一つ、十六夜咲夜の過去が生まれたということですね。お疲れ様でした。GJ!
21.90秘密の名無し削除
すげぇ…すげぇよあんた。少しの疑問でこんな壮大なストーリーを描けるなんて凄すぎるぜ!
23.100名前が無い程度の能力削除
何て言ったらいいのか…兎に角GJ!
26.100てーる削除
いやぁ・・ここまで壮大なお話、お見事でした。
ほかに感想が思い浮かばないのが残念・・というより、言葉に表すのが恐れ多い。
29.100|||削除
圧巻。
紫ことメリーは気付いているのかな。
38.90藤村流削除
戦慄と感動が同時に胸の中を駆けずり回っています。
幸せってなんでしょうかね? などと、答えの出ないことを考えてみる次第です。
大作を、ありがとうございました。
41.100無風削除
ついつい一話から一気に読みきってしまいました。

あかん…あかんよ…こんなん読んでもうたら100点つけるしかあらへんよ…
48.80紅狂削除
「この違和感がなにより心地良い」そんな感じ
54.無評価名前が無い程度の能力削除
想像力と文章力にひれ伏すばかり。
とにかく、お疲れ様でした。
55.100名前が無い程度の能力削除
点付け忘れたんでもいちど投稿。
失礼しました。
57.100転石削除
悶えるほか無いです。
この様な素晴らしきSSを作ってくださった貴方様に感謝をする他にする事がありません。
有り難う御座います。 お疲れ様でした。
59.90名前が無い程度の能力削除
読み終わってあれやこれや考えて出た結論は、
「ああ、これって設定考察やらバトルやらが肝なんじゃなくて、蓮子とメリーのラブストーリーなんだな」
でした。
nonokosuさん、お疲れ様、そしてありがとう。
71.100七死削除
たった一言から世界を啓く。 作者殿、その悪戯はあなたを心より満足させましたか?

いやいやいや、あなた程の悪党がこんな所で満足するものではありますまい。
それその証拠に最後の最後でSTARTときやがったもんだ。 あなたは本当にどしがたい大悪党ですよ。

ああもう本当に、貴方の啓いた世界が私の中に広がって止まらないじゃないか! あなたの壊した幻想の結界は、もはや私では収集がつかなくなって修復不能だぞ!

この快作にして怪作を、世界を啓いた開作と讃えるべきか? いいやこれは、これこそを壊作として末永くその先の解を見つめるべきだっ!!

お見事!! 今私は童の如く手足を打ち鳴らしてこの話を讃えるであります!!
74.100shinsokku削除
ありがとう。
76.100名前を隠す程度の能力削除
いや、これはあなた謙遜とかはダメでしょう

あなたは正しく快作を書きましたよ
心の底から外伝を読みたいと思える一作でしたって言うか良くその一言で思いつけたな本当にw
77.無評価名前を隠す程度の能力削除
追記というかなんと言うか

ハネムーンの意味はそれですかw
てか2話目でこの話になったってことは、当初はどこに落ち着いたのだろうか

てか、この作品ってどこからどこまで原作の伏線回収してるから凄いなぁ

次に始まる物語も期待しております
79.100変身D削除
凄すぎです、全てが。
この連子=咲夜の設定を最初に読んだ時の衝撃、ずっと忘れないでしょう。
あらゆる意味で心が震えた作品でした。

そんな作品を書かれた貴方に、最大級の感謝と僅かばかりの嫉妬を。
ありがとうございました。
84.100ssを読む程度の能力削除
ただただ心に沁みました。素晴しい作品をありがとうございます。
88.100SETH削除
東方SS史上に残る一作になるでしょう 間違いない
90.100名前が無い程度の能力削除
震撼した。
101.100名前が無い程度の能力削除
『結界を決壊』を読み返すと、ゆかりんの茶目っ気と親切さにまた別の感慨が。
102.9014削除
「蓮子=咲夜」設定には無理があるのでは?
と最初は思わされていて、この最終話終わりまでその違和感は消えませんでした。
ですが最後の、
『ハネムーンデイズ』&『結界を決壊』の一言で思い返された『結界を決壊』のストーリーで違和感はスキマ様に飲み込まれました。
最高でした、ありがとうございます!
108.無評価(ry削除
SU、SUGEEEEE!としか
109.100(ry削除
興奮しすぎて点数つけわすr(ry
110.100NVK-DAN削除
自分がここに顔を出し始めてから、ずっと読ませて頂いてました。
こういうのもおこがましいですが、色々な意味で刺激にさせて頂いてましたです。

こうした話が出来るから二次創作は面白い、と痛感させられた次第です。
連載お疲れ様でした。心より『楽しませて貰いました』と言わせていただきます。
123.100削除
何言っても野暮な気がして何度も感想を書いては消しました
それでも何か言わずにいられないので
「ご馳走様でした」と一言だけ。
124.100しん削除
コメントが浮かばない。
大作お疲れ様です。
130.100ke削除
奥の深さが半端じゃない・・・
内容の素晴らしい長編RPGをクリアしたときのような虚脱感をssで味わえるとは・・・
131.無評価翔菜削除
『約束は破られ、
 物語は終わる。』

このたった2行で、ここまでの話を思い浮かべて震えた。

なんというか、素晴らしかったです。
132.100翔菜削除
得点忘れー
140.100子無狐削除
時間を忘れて読みふけりました。
エピローグでは視界が歪んできて……ああ、もう。
素晴らしすぎます。本当に、ありがとうございました。
147.90deso削除
なるほど、こういう解釈もありなのか、と感心しました。
面白かったです。
149.100名前が無い程度の能力削除
凄い、の一言。
惹き込まれました。
155.100名前が無い程度の能力削除
ぬう、考察、バトル、ラブ…どれをとっても痺れるほどの出来栄えでした。
157.100名前が無い程度の能力削除
これはこう……背筋にきますなぁ、色々と、ざわざわと
159.100名前が無い程度の能力削除
初めて東方で涙腺が・・・
163.90名前が無い程度の能力削除
良い物を読ませていただきました。
大作お疲れさまでした。
170.100名前が無い程度の能力削除
まさに、想像の斜め上をいかれました 凄いとしか言いようがない
172.100名前が無い程度の能力削除
これは・・・すごいとしか・・・
173.100名前が無い程度の能力削除
やっぱいい物だな
175.100名前が無い程度の能力削除
創想話に初めて来たのが2007年始め。
ただ長い。それだけ、たかがそれだけの理由でスルーしていた過去の自分をぶん殴りたい。
素晴らしい作品、ありがとうございます。
176.100名前が無い程度の能力削除
読み終えて恍惚としたたのは初めてです
あなたに千言をもっても語れぬ感謝と賛辞を
177.100おしなり削除
壮絶な小説でした。
貴方は化け物か? こんな素晴らしい小説を読むことができる自分は幸せ者です。
178.無評価名前が無い程度の能力削除
100点じゃ足りなさすぎです!
予想もできない展開にもしかしたら…を崩す展開。
トリハダ立つくらいめっちゃ面白い!
でもタグがさっぱりないから他の人が見られないのは
凄いもったいないです。嗚呼もどかしい。
タグ着けの編集ってできないんですか?
180.無評価名前が無い程度の能力削除
1話からここまで一気に読みきり、ただ今半ば呆然とした状態です。
よって、ただこの一言だけ書かせていただきます。
「素晴らしかった」
181.100名前が無い程度の能力削除
点数付け忘れました。
189.100名前が無い程度の能力削除
突拍子もないアイデアなのに、その後の展開に全く無理が無くて、引き込まれました!
196.100名前が無い程度の能力削除
ディ・モールト・ベネ