*今回の話は、以前書いた「辻の宴」の後日談になります。どうぞご了承ください。でわでわ。
夜明けの空気の冷たさに、冬の気配を感じる今日この頃。
「起きてちょうだいな」
誰かに声をかけられて、男は目を覚ました。
自分が借りている、散らかった部屋の中に、在るべき、いや居るべきではない者を発見し、文字通りに飛び起きた。
年の頃、十歳そこらの、民族衣装風の服にリボンを付けた、だが不思議とそれがよく似合う、茶色い髪の少女がちんまりと正座している。
「月風さん、お久しぶりです。藍様の式の橙です」
以前、九尾の狐にたずねられた時、酔った拍子で、でまかせに呟いた名で呼ばれ、男は状況を理解した。
あの時、一緒にいた黒い子猫の猫又だ。
よく見れば、頭にかぶった帽子からは、猫のような耳がピコピコのぞき、黒い尻尾がひょこひょこ見え隠れしている。
妖怪なら、人身に転じる事は簡単だろう。しかし、まあ、なんと可愛らしい姿に変わるものだ。
「あー、おはよう、御猫様。お元気そうでなにより」
男は、間の抜けた返事を返す。
「前々から思ってたんだけど、御猫様って呼ばれるの、こそばゆいんで橙でいいよー。マヨヒガでもそう呼ばれてるし」
彼女は、照れながら自分の頬を指で掻き答える。
先程とは違って、外見相応の言葉遣いをする橙に、男はたずねた。
「じゃあ橙、色々と話があるんだろうけど、まずは飯にしようか。腹減ってるだろ」
少女の瞳がキラキラと輝いた。
炊き立てのご飯と味噌汁、ベーコンエッグに簡単なサラダと漬物と、小魚の佃煮の献立がテーブルの上に並ぶ。
「いただきます」
「いただきまーす」
橙は、器用に箸を使い、目の前の朝食を平らげていく。見ていて気持ちが良くなる様な食いっぷりだ。
「おかわりするかい? 」
「うん!! 」
彼女は計三杯程おかわりすると、満足そうに小腹を叩く。
「ごちそうさまー」
「はい、ごちそうさま。食後の一服は緑茶でいいかい? 」
少女の瞳がまた輝いた。
テーブルを挟み、男は式神と緑茶をすする。そういえば昔、ちゃぶ台を挟んで語り合う宇宙人のTV番組を見たな。確か、メトロンなんとか。 物思いに浸っている男に、橙がそわそわしながら話しかける。
「それじゃ、お話してもいいかな」
主の言伝を喋りたいのだろう、わざわざ都会まで来る程なのだから、よほどの事かと男は湯飲みを置く。
「ああ、いいよ。ここまで来るのも大変だったろうしね」
「そうそう、何回も動く変な箱に潰されそうになったって、と、その話は置いといて」
彼女の言葉から、車に何度も轢かれかけたのだろうなと男は思った。
実際、轢き殺された猫や犬達を、男は走るバイクの上から何度となく目にしている。その度、男は心の中で念仏を唱える。成仏しろよ、と。
「わたしの主、藍様のさらに主、八雲 紫様からの伝言を伝えます」
妙にかしこまり彼女は言葉をつむぎ出す。
地元じゃ確か八蜘蛛様って呼ばれていたな。
九尾の藍様の主となると、こいつは厄介な事になりそうだ。男は緊張しながら次の言葉を待つ。
「橙や藍ばかり、美味しい物を食べられて、私つまんない。だから、私にもお土産持ってマヨヒガに来てね。by ゆかり」
男は、一瞬めまいを覚えた。橙はさらに続ける。
「PS 橙があなたの所に着く頃には、私冬眠してるから、春になったら橙に案内させてマヨヒガに来てね。これは藍への罰でもあるの。うふふふふふ。やあね、藍、そんなに血涙流してると、どこぞの魔女みたいに貧血持ちになるわよ。以上です」
「ちょっと聞きたいんだが・・・・・・、その話に嘘は無いよな? 」
男は今、デンプシーロールを全弾食らったボクサーの様な気分だった。
「一字一句、確実に間違い無く伝えよ。との事でした。あれ、ふが多かったかな? 」
「さらに質問、良いかい。春になったら橙を連れてマヨヒガ、紫様の所に来いって言う事は・・・・・・もしかして」
橙はニコニコしながら答えを返す。
「はい、今日から春までご厄介になります。紫様にも、自分が起きる前に帰ってきたら、レーテの海に飛ばすって言われたので帰れません。藍様も快く送り出してくれました」
アイスラッガーを食らったエレキングも、多分こんな気持ちだっただろうな。
男は次に藍と出会った時、確実に命のやり取りになる事を覚悟した。
そんな男の心も知らず、小さな可愛い式神は、ペコリと御辞儀する。
「どうぞ、今後ともよろしく!! 」
「終」
夜明けの空気の冷たさに、冬の気配を感じる今日この頃。
「起きてちょうだいな」
誰かに声をかけられて、男は目を覚ました。
自分が借りている、散らかった部屋の中に、在るべき、いや居るべきではない者を発見し、文字通りに飛び起きた。
年の頃、十歳そこらの、民族衣装風の服にリボンを付けた、だが不思議とそれがよく似合う、茶色い髪の少女がちんまりと正座している。
「月風さん、お久しぶりです。藍様の式の橙です」
以前、九尾の狐にたずねられた時、酔った拍子で、でまかせに呟いた名で呼ばれ、男は状況を理解した。
あの時、一緒にいた黒い子猫の猫又だ。
よく見れば、頭にかぶった帽子からは、猫のような耳がピコピコのぞき、黒い尻尾がひょこひょこ見え隠れしている。
妖怪なら、人身に転じる事は簡単だろう。しかし、まあ、なんと可愛らしい姿に変わるものだ。
「あー、おはよう、御猫様。お元気そうでなにより」
男は、間の抜けた返事を返す。
「前々から思ってたんだけど、御猫様って呼ばれるの、こそばゆいんで橙でいいよー。マヨヒガでもそう呼ばれてるし」
彼女は、照れながら自分の頬を指で掻き答える。
先程とは違って、外見相応の言葉遣いをする橙に、男はたずねた。
「じゃあ橙、色々と話があるんだろうけど、まずは飯にしようか。腹減ってるだろ」
少女の瞳がキラキラと輝いた。
炊き立てのご飯と味噌汁、ベーコンエッグに簡単なサラダと漬物と、小魚の佃煮の献立がテーブルの上に並ぶ。
「いただきます」
「いただきまーす」
橙は、器用に箸を使い、目の前の朝食を平らげていく。見ていて気持ちが良くなる様な食いっぷりだ。
「おかわりするかい? 」
「うん!! 」
彼女は計三杯程おかわりすると、満足そうに小腹を叩く。
「ごちそうさまー」
「はい、ごちそうさま。食後の一服は緑茶でいいかい? 」
少女の瞳がまた輝いた。
テーブルを挟み、男は式神と緑茶をすする。そういえば昔、ちゃぶ台を挟んで語り合う宇宙人のTV番組を見たな。確か、メトロンなんとか。 物思いに浸っている男に、橙がそわそわしながら話しかける。
「それじゃ、お話してもいいかな」
主の言伝を喋りたいのだろう、わざわざ都会まで来る程なのだから、よほどの事かと男は湯飲みを置く。
「ああ、いいよ。ここまで来るのも大変だったろうしね」
「そうそう、何回も動く変な箱に潰されそうになったって、と、その話は置いといて」
彼女の言葉から、車に何度も轢かれかけたのだろうなと男は思った。
実際、轢き殺された猫や犬達を、男は走るバイクの上から何度となく目にしている。その度、男は心の中で念仏を唱える。成仏しろよ、と。
「わたしの主、藍様のさらに主、八雲 紫様からの伝言を伝えます」
妙にかしこまり彼女は言葉をつむぎ出す。
地元じゃ確か八蜘蛛様って呼ばれていたな。
九尾の藍様の主となると、こいつは厄介な事になりそうだ。男は緊張しながら次の言葉を待つ。
「橙や藍ばかり、美味しい物を食べられて、私つまんない。だから、私にもお土産持ってマヨヒガに来てね。by ゆかり」
男は、一瞬めまいを覚えた。橙はさらに続ける。
「PS 橙があなたの所に着く頃には、私冬眠してるから、春になったら橙に案内させてマヨヒガに来てね。これは藍への罰でもあるの。うふふふふふ。やあね、藍、そんなに血涙流してると、どこぞの魔女みたいに貧血持ちになるわよ。以上です」
「ちょっと聞きたいんだが・・・・・・、その話に嘘は無いよな? 」
男は今、デンプシーロールを全弾食らったボクサーの様な気分だった。
「一字一句、確実に間違い無く伝えよ。との事でした。あれ、ふが多かったかな? 」
「さらに質問、良いかい。春になったら橙を連れてマヨヒガ、紫様の所に来いって言う事は・・・・・・もしかして」
橙はニコニコしながら答えを返す。
「はい、今日から春までご厄介になります。紫様にも、自分が起きる前に帰ってきたら、レーテの海に飛ばすって言われたので帰れません。藍様も快く送り出してくれました」
アイスラッガーを食らったエレキングも、多分こんな気持ちだっただろうな。
男は次に藍と出会った時、確実に命のやり取りになる事を覚悟した。
そんな男の心も知らず、小さな可愛い式神は、ペコリと御辞儀する。
「どうぞ、今後ともよろしく!! 」
「終」
プチのほうともいい、たいへん良いものを書いてくれる
がんばってくだされ
プチのほうともいい、たいへん良いものを書いてくれる
がんばってくだされ
ご感想ありがとうございます。これからも全力を尽くすつもりですが、今日はちょっと、自分の馬鹿さのせいで鬱が入ってます。申し訳ありませんが、明日からは気合入れて復活します。でわでわ。
・・・もう気持ち的に死んでるんですね・・・。
て言うか、うふふふふ以降の言葉は伝言じゃないような・・・。ま、そこがまた可愛いんですが。
以前の感想にも書きましたが、紫やレミリア程の大妖怪(またはそれに準ずる存在)は人間を常食(怖っ)できるのでしょうが、中堅クラスの妖怪なら毎食後とに人間を食べているとはちょっと考えにくいですね。このSSの橙もそうですし。やはり他のものでもまかなえるんでしょうか・・・。・・・・・しまった。感想じゃないぞ、これ。
あとうたかたの夢のほうもがんばってください
出揃ったとこを一気にいただくつもりなんでw
オレの、変身!!
元ネタ分かる方大歓迎。沙門です。一晩寝て、復活しました。昔から聞きますよね。「馬鹿にはかなわん」とかなんとか。
>うほ 橙の大冒険! こいつは一波乱ありそうだぜ!
はい、鋼の馬のリアシートに乗っかって、大冒険が始まります。「うたかたの夢」もきっちり最後まで仕上げます。でわでわ!!
>紫やレミリア程の大妖怪(またはそれに準ずる存在)は人間を常食(怖っ)できるのでしょうが、中堅クラスの妖怪なら毎食後とに人間を食べているとはちょっと考えにくいですね。このSSの橙もそうですし。やはり他のものでもまかなえるんでしょうか・・・。
ご感想ありがとうございます。自分の知ってる範囲では、物語の上では人を食するけれど、怪物、妖怪は、もともと人間の持つ、未知への恐怖が具現化した様な存在なので、ぶっちゃけ人間の持つ恐怖を食ってるんじゃないでしょうか。と、小説版「仮面ライダー 誕生1971」を片手に語ってみたり。でわでわ。
創想話について語る掲示板にも書きましたが、作った作品を消去するという、読んでくれた方達に対する背信行為を行いました。申し訳ありません。
これからは、より楽しんでいただける作品を作るように頑張ります。でわ。