そのお姫様は言いました。
「海が見たい」と。
月まで届かんとする程に、長く永く、天へと伸びる竹。
人里離れた竹林の奥。
まるで、人々の目からその身を隠しているかの様にひっそりと佇む、大きなお屋敷。
そのお屋敷に、お姫様は住んでいました。
つややかに流れる翠の黒髪をもった、とてもとても可愛らしいお姫様。
綺麗な服を着て、美味しい食べ物を食べて、沢山の召使達に囲まれて。
お姫様の為に作られたお屋敷の中で、何一つの不自由も知らずに暮らしていながら、
それでも彼女は決して、幸せではありませんでした。
お姫様は、籠の中の鳥だったからです。
お姫様は、お屋敷の中でとても大事にされていました。けれど、お屋敷から一歩でも出る事は許されていませんでした。
蝉の鳴き声が次第に鈴虫の音へと変わり、やがてはそれも聞こえなくなって雪が降ってきて、
けれどもその雪もいつかは溶けて花が咲き、そうしてまた蝉の鳴く季節がやって来る。
そんな繰り返しを、お姫様は千回も数えました。ずっと、ずうっと、お屋敷の中で数えていました。
お姫様には沢山の召使達が居ましたが、友達と言えるような者は居ませんでした。
たった一人、お姫様がお屋敷に来る前からずっと一緒に居てくれた女官を除いて。
そんなお姫様が、たった一人の友達に言った、たった一つの願い。
それが、海を見る事でした。
それを聴いたお姫様の友達は、何とかしてその願いを叶えてあげたいと思いました。
そして………
………。
……。
…。
目覚めはいつも眩しい。
瞼を下ろしているというのに、夏の強い日差しは、無遠慮に私を夢の中から現実へと引きずり出そうとする。
遠くに聞こえる波のざわめき。鼻の奥をくすぐる、潮くさい匂いのする風。体中を包み込む熱気。
眠っている間は閉じていた五感が、徐々に活性化していく様な感覚。
私の『頭』の方はまだ睡眠を欲しているのだが、『体』の方は既に起きる準備を整えたらしい。
……仕方ない。私はゆっくりと目を開いた…………
………。
……。
…。
って
「なんじゃこりゃあぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!??」
“ドキッ☆ 少女だらけの水泳大会 ~ポロリもあるよ~”
「大きな声を出して、一体どうしたの?
“5ボスという結構ランクの高い立場に居ながら本当に『5面のボス』としてしか出番が無くて
咲夜や妖夢に比べて何となく扱いが悪い気がすると言うかビジュアル的にはかなり萌え萌え狙ってるのに
本名で呼ばれる事は殆ど無くて永遠亭での真のヒエラルキーに於いては実はてゐより下っぽくて
言うなれば紅魔館に於ける中国みたいな扱いって言うかぶっちゃけ中国は最萌優勝して
萃夢想にも出場決定したから中国よりも可哀想なのかしらそもそもペットって何?ヤッパリ
首輪付けて檻の中に入れられてトイレは砂の上でとかそういう感じなの??とか言われてる”
鈴仙・優曇華院・イナバ!」
「セリフ長ッ! ソレを一息でスラスラと!! しかも何故だか説明文チック!!!
その上エラく失礼な表現ばっかですよ、師匠!!!!」
「前々から思っていたのだけれど、その『師匠』って呼び方、何だか噺家みたいよねぇ。」
「イヤせめて格闘家みたいとか言って下さいよ。って、そーじゃなくて!」
そうだ。そんな事を言っている場合ではない。今現在私の周りに起こっている異変に比べれば、
私の立場がどーだとか師匠という呼び方がこーだとか、そんな事は些事に過ぎない。
何故、一体どうして、何で……
「何で朝起きたら、私の部屋が海になっちゃってるんですか!? 海辺になっちゃってるんですか!!?
・・・・・・・・・・・・・
砂浜になっちゃってるんですか!?? 千里浜海水浴場になっちゃってるんですか!!??」
「千里浜って… またそんな一部地域の人にしか解らないネタを…
せめて松任海浜公園とか言った方が良いんじゃないかしら? ○遊館も近いし。」
「イヤ余計に解りづらいですよ!?
車○館とか言われて『あー、あそこのゲーセンって、SN系無いし微妙に偏ってるラインナップだよなぁ』とか
『ビビンパ屋は結構手軽で美味いよね』とか、相槌打てる人がどんだけ居ますかッ!」
って、あ―――ッ! そうじゃない! また師匠に話をはぐらかされた。千里浜も車遊○も今はどうでもいい。
私が言いたいのは、何で一晩の内に私の部屋が海になったのか、という事なのだ。
一応姫と師匠の直属の部下、という立場にある私には、永遠亭内に専用の個室を与えられている。
三畳一間の小さな和室だが、それでも私の城とも言える様な物であるし、結構気に入っている。
それが今、何故だか海になっている。一面の砂浜になっている。
金髪ロングでポニテな女の子が、「にはは」とか笑いながら遊んでてもおかしくない程に、
立派な海ップリをしていやがる。
と言うか、一面の砂浜の中に、私の布団やら書棚やらがポツンと存在している。
どこで○ドアみたいな感じで、白い砂の上に何の脈絡も無く襖が立っていたりする。何てシュールレアリスムな光景。
まるで、何処かの吸血鬼の館に住むスタンド使いの攻撃を受けている気分だ。
昨日布団に入った時までは、普通に普通の私の部屋だったってのに、今じゃ見事な内灘砂丘だ。
「またマイナーな地名を…」
「人のモノローグを読まんで下さい!
それよりッ! 何でこんな事になちゃってるんですか!?」
「…『何で』『ですか?』という科白を、どうして私に向かって言うのかしら?
それじゃあまるで、私がこの事態を引き起こした原因を知っているみたいな言い方じゃないの。」
……いけしゃあしゃあとまぁ、よく言うよこの人は。
『原因を知っている』どころか、『原因そのもの』でしょうが、アンタは。
この海は幻覚ではない。本物だ。
恐らくは空間を捻じ曲げて、私の部屋と何処かの海辺を直結させたか、
もしくは空間を拡大して、そこに直接海を創り上げたか。
いずれにせよ、とんでもない程の高レベルな術だが、
真実の満月を隠す事をすら「取っておきでも何でもない」と言ってのける人だ。
私の部屋を海辺にさせる事など、造作も無いのだろう。
て言うか、こんな馬鹿げていて且つ大それた事を、しようと思う者も実際に出来る者も、
永遠亭には一人しか居ないってば。
「あら、よく解っているじゃないの。流石は我が弟子ね。」
「だからモノローグを読まないで下さいよ…」
「…そうね、貴方にはこうなった理由を知る権利が有るわね。」
改めて言われる迄も無いと思うんですけどね。
「我が弟子よ… よくお聞きなさい。
これからあなたに話すことは…とても大切なこと。わたしたちが、ここから始める…
師から弟子へと、絶え間なく伝えてゆく… 長い長い…旅のお話なのですよ。」
旅は関係ねぇだろ旅は、とツッコミを入れようとした刹那、
「あ~~、えーりん。海できたのねぇ♪」
襖を開けて飛び込んでくる能天気な声。カリスマ0の亡霊嬢をも下回る、マイナスカリスマンなお姫様。
永夜をプレイした人の多くが「えっ、ラスボスってえーりんでしょ?」とのたまう程に、ラスボスっぽくないラスボス。
我等が主、蓬莱山 輝夜様の御登場だ。
「と言うワケなのよ。」
全くもって説明としての体を成してない師匠の言葉。けれども、
「なるほど…」
全てが理解できた。
「姫がネットで見つけたゲームかアニメに影響されて、『海が見たい』と我侭言い出したとか、そーいう事ですか…」
「そーいう事よ、ウドンゲ。詳しくはこのSSの冒頭部を参照して頂戴。」
あまり参考にならないと思う。
つーか、簡単に言おうと思えば『姫の我侭』と四文字で表現できる事を、
わざわざ32行2KB使う意味はあるんでしょうか。
脚色激しいし。某空気なPCゲーム意識してるの見え見えだし。
「姫に海を見せようにも、幻想郷は山奥でしょう?
そこでウドンゲが寝ている間に空間を少しいじくって、部屋を海にさせてもらったのよ。」
「私としても外に出るのはメンドーだったから、うちの中に海が出来たのは好都合だったわ(はぁと)」
「はぁ… 姫のNEETップリも相変わらずの様ですね。」
「チョッとイナバMk-Ⅱ! 誰がNEETよ、酷いじゃない!」
何ですかMk-Ⅱって。イヤ、何となく意味は解るし、ツッコまないけど。
「働きもせず、また働く意欲も無い者の事をNEETって言うんですよ。姫にピッタリじゃないですか。」
「何よ、Zイナバ! 私だってチャンと働いてるわよ!」
何だかパワーアップしてるよ私の名前。
取り敢えず美男や柔道明日ではなく、水色美少女を思い浮かべてみる。ひねくれててスミマセン。
「ネットオークションで入手した物の転売だとか、
あと、イナバ部隊のアレやコレやを盗撮した写真を、ペドさん相手に通販で売ったりだとか…」
「……後半部分は普通に犯罪ですね。」
「ッ! …………
…ッン、ふわぁあぁぁ~~ん!
えーりんえーりん助けてえーりん! イナバV2アサルトバスターが虐めるよぅ~!」
一気に時代が上がった私の呼び名。荒んだ心に武器は危険ですよ?
「いい加減になさい、ウドンゲ!」
「ハイ、申し訳ありません…」
師匠には絶対服従の私も、何故だか姫相手には結構強気で出られるんだよなぁ。
何かこう、
紅魔館の主は、見た目ロリだが中身は大人。
白玉楼やマヨヒガの主は、見た目ホワホワだったり胡散臭かったりするが実は色々考えている。
師匠は、見た目は優しいが裏では腹黒。
そして姫は、見た目天然なお嬢で実際その通りな性格、って感じ。
そもそも、公式設定で師匠の方が『圧倒的に力を持つ』とか言われてるし、
戦闘シーンの背景も、師匠は通常版だけで四枚も有る(しかも宇宙とかも有ってヤケに壮大)という
スク○ェアRPGのラスボス並の待遇なのに、姫は通常版+スペカ版の二種類だけ
(月が動いてたり、満月光線?の色や指向が違う等、微妙な変化は在るけど)。
スペカだって、神宝「サラマンダーシールド」なんて、
ラスボスのLunaticスペカなのに、キャラによっては簡単に安地製作可能。
ラストスペルが沢山有る、っていうのは、まぁ、凄いと言えるかも知れないんだけど、
細分化されているせいで、攻略する分にはむしろ楽。特にスペルプラクティスでは。
ぶっちゃけ、「永夜返し -待宵~世明け-」をコンプするより、Normalの禁薬「蓬莱の薬」取る方が難しくないスか?
兎に角、主人公側が豪華オールスター布陣を敷いてる永夜のラストを飾るには、どうにも弱いんだよなあ、姫って。
例えて言うなら、
『地球最大の危機! 歴代ライダー全員出撃!!』みたいな映画で、十面鬼がボス役をやる様なものだ。
……にしても師匠、泣きついて来た姫を抱きかかえながら、
鼻から明らかに致死量を超えてる程の血を出すの、やめて欲しいなぁ…
アレですか、紅魔館に生息する、完全で瀟洒なロリ専の狗畜生を真似してるんですか?
いやアレだ、師匠はドクターだから、むしろナンだ、某南国少年漫画に出てくる香川県庁所在地か。
高○中央商店街のアーケード全長は日本一ですよ、群馬様(ちなみに、直線距離なら大阪の天○橋筋商店街)。
「またそうやって、解りづらい地域ネタに走る… 芸人としてソレで良いの、ウドンゲ?」
誰が芸人ですか誰が。つーかいい加減、人のモノローグ読むのやめて下さい。読心術でも使えるんですか、師匠は?
「流石にそこ迄は出来ないわ。ただ単に、貴方は行動パターンが単純で読み易い、というだけの事よ。」
屋dkfgpふjodkbmfop@odrgj.laraさ。
「何? 『屋dkfgpふjodkbmfop@odrgj.laraさ』って。
ワケの解らない事を考えているんじゃないの。」
「チョッと師匠!? 今の違う! 絶対違うッ!!
私の行動パターン読んでるとか、そういうレベルと絶対違う、今の!
明らかに心の中まで読んでなきゃ出来ないですよ、こんな芸当!?
それともむしろ、私がサトラレ?
皆がなるべくバレない様に気を使っていてくれただけで、実は私がサトラレ!?」
「まぁ、そんなどうでも良い事は置いといて、」
「置いといちゃうの!? どーでもいい事なの!?」
「私に質問したい事は以上で終わり、という事で良いわね、ウドンゲ?」
「……え?……あ、ハイ………」
………イヤちょっと待て。いかん、イカン。師匠のペースに呑まれて、一番大事な事を訊きそびれるトコだった。
「…スイマセン師匠、最後にもう一つ。」
「何? 姫を待たせているのだから、手短にね?」
「何で私の部屋に海を創ったんですか?」
右手を顎に当て、やれやれといった表情で師匠が溜息をつく。
「その事については既に話したでしょう? 同じ事を何度も言わせないで頂戴。無駄は嫌いなの。」
確かに、さっきも聞きました。でも…
「ソレは、『永遠亭内に』海を創った理由でしょう? 私が訊きたいのは、何故『私の部屋』か、という事です。
永遠亭には他にも無数に部屋は在りますし、そもそも師匠なら、新たな部屋を創る事だって出来たでしょうに、
何で『私の部屋に』海を創ったんですか?」
「そんな事、どうでも良いじゃない…」
「良くないですよ! 部屋が海になったせいで、私の本だとか貼ってあったポスターだとかが、
全部潮風でベタベタパリパリになっちゃってるんですよ!?」
「今の科白…」
「…ハイ?」
「『風』を抜いて読んでみると、ちょっぴりやらしいわね。本やらポスターを何に使っていたのかしら~?」
「ワケ分かんねーッ!!」
「ああ、それはね、『風』を抜いて読むと、『本やポスターが潮でベタベタパリパリになった』って文章になって、
潮というのは所謂アレの事で、という事はつまり、ウドンゲが本やポスターを使ってお
「イヤ説明しなくていいです! てかむしろ、説明しちゃ駄目ですッ! 創想話的にNGです!!」
ああダメだ駄目だ。師匠のペースに呑まれるな。
「ッ兎に角! チャンと理由を話してもらいますからね!」
「もしかして怒っているの、ウドンゲ?」
「当然ですよ!? 一番のお気に入りだった藪沢君のポスターだって、ボロボロになっちゃったんですから!」
「藪沢君って、貴方また、誰も知らない様なマイナーアイドルを出してきたわね…」
「な…!? や、藪沢君を馬鹿にするなぁ~!!」
藪沢君っていったらアレですよ? 超人気アイドルですよ?
顔もかわいくて性格もイーんだとか、わりとイイ男の弟が居るとか、実は格闘マニアだとか、
まぁ兎に角、ナウなヤングにバカうけな、今をときめくスーパースターっすよ!?
私の…、〝超(スーパー)アイドルオタク〟の、名にかけて!… 間違い無い…!!!!!
・・・
「もう、仕方ないわねぇ。コレをあげるから、少し落ち着きなさい。」
そう言いながら、師匠が筒状に丸められた紙を懐から取り出す。
「何ですかコレ?」
「好青年フンドシ眼鏡のポスター(はぁと)」
「要らんわぁぁああ~~!!!」
「あら、貴方の運命の彼でしょう?」
「誰がじゃあぁぁ――!!!」
ああ、トラウマが甦る… 詳しくは、第2回東方最萌トーナメントを参照の事。
て言うか師匠は、あの変態のポスターをいつも持ち歩いてるんですか?
「昔の人は言ったわ。『備えあれば憂いなし』ってね。」
「イヤ絶対違う! 得意気に言ってるけど、その諺の用途、絶対間違ってる!!
謝って下さい! 昔の人に謝って下さい!!」
って、いかんイカン! またもや話を逸らされた。
「いいッッ加減!! 『私の部屋を』海にした理由を教えて下さいッ!!」
「はぁ、仕方ないわねぇ…
我が弟子よ… よくお聞きなさい。
これからあなたに話すことは…とても大切なこと。わたしたちが、ここから始める…
師から弟子へと、絶え間なく伝えてゆく… 長い長い…旅のお話なのですよ。」
A○Rネタはもういいですから。
「ウドンゲ、あなたも既に知っていると思うのだけど…
強大な電磁気の場は、物質の根源をなす原子と呼ばれる微粒子を一定方向に整列させ、
一気に極低温に温度を低下させるの。
さらに、作り出された極低温の領域を膨張冷却させると、
目標に到達したところでその領域の温度は絶対零度に達するわ。
絶対零度の領域に包み込まれた目標は、瞬時にして氷結し、
急激な温度変化によってこなごなに粉砕されることになる。
だから、あなたの部屋を海にしたのよ。解ったかしら?」
「…え?? あ? ハイ………??」
「解ってくれたなら良いのよ。」
「…え、あ、ハイ………」
「えーりん~、ウイングイナバ0カスタムとの漫才、終わったのぉ?」
「ええ、終わりましたよ、姫。」
「だったら遊ぼう! 早く遊ぼう!」
「そうですね。まずは、ビーチパラソルを立てましょうか。
ウドンゲ! ボーッとしていないで、貴方も手伝いなさい!」
「っえ、あ、スミマセン、師匠!」
「もぅ~、イナバDXってば大丈夫ぅ~?」
「…姫、そのDXってヤッパリ、デラックスじゃなくてダブルエックスって読むんですか…?」
「当然じゃない。貴方も月から電波を受け取るワケだし、ピッタリじゃない?」
「そりゃまぁ、そうと言えなくもないかも知れないですけど…
アレってなんか、変なヒゲっぽいのが付いてるしなぁ…」
「ターンAよりはいいでしょ?」
「まぁ、シ○・○ードよりは確かに。」
「ウドンゲ、パラソルが倒れない様に、足の部分をしっかり埋めて固定して頂戴。」
「了解です、師匠!」
………。
……。
…。
…………チ ョ ッ ト 待 て 。
「全然説明になってないじゃないですかぁ――ッ!!」
「ちっ、気付いたか。」
「あっ、今『ちっ』って言いましたね師匠、『ちっ』って!?」
あまりにもボケが強引過ぎて、ツッコミを入れる迄に59行も間が空いてしまった。
「コレだから、中途半端に知恵の付いた兎は…」
「あ、今の差別発言ですよ! NGですよ!! 謝って下さいよ!!!」
「五月蝿いわ。黙りなさい。兎は兎らしく、ラギョラギョ鳴いていれば良いのよ。」
「何で逆切れ気味なの!?
つか、それ以前に、何ですかラギョラギョって! 兎はそんな鳴き方しませんよ!」
「するわよ。
なんてったって、『兎がラギョラギョ鳴く様になっちゃうゾ☆ウィルス』を、この間幻想郷中に散布したんだから。」
とんでもなく外道な行いを、胸を張ってさも誇らしげに答える師匠。かなりデカメロンぶりが強調されてます。
じゃなくて、
「な、何でそんな事を…!」
「イヤまぁ、暇だったもので、つい。」
『暇』だとか『つい』だとかいう理由で、兎権を踏みにじる様な行為をしたというのか、この人は…!
「師匠は兎を何だと思ってるんですか!?」
「耳の長いモルモット?」
「違いますよ!!」
「じゃあ、寂しいと死んでしまうモルモット?」
「モルモットから離れて下さい、モルモットから!」
「うーん、それなら……耳が長くて寂しいと死んでしまうラットかしら?」
「結局、実験動物かいッ!」
駄目だ。この人にはまともな理屈が通じないみたいだ。こうなったら実力行使しかない。
いくら師匠とはいえ、今日ばかりは堪忍袋の緒も切れた。
幻想郷中の兎達を代表して私が、兎を兎とも思わぬこのマッドサイエンティストにお灸を据えてやる!
胸ポケットのカードに手を伸ばす。
「波符…」
宣言しかけたその瞬間、
「ケンカはダメですぅ~!」
後頭部に鈍い痛みが走り、視界が揺らぐ。
「スペカ宣言の時に、あの鬼っ娘が何処からカードを取り出してるのか、気になるなぁ」等と考えている間にも、
目の前に迫り来る地面。
空から飛来した巨大な何かの下敷きになりながら私は、熱い砂浜と熱いベーゼを交わす羽目になった。
………。
……。
…。
「あ゛~~、死ぬかと思った…」
「ダイジョブですかぁ、レイセンちゃん?」
フワフワした長い耳を持つ黒髪の少女が、心配そうに私の顔を下から覗き込む。
因幡 てゐ。永遠亭イナバ部隊隊長である。
「でもホント、おどろいたですよぉ。ひめのいいつけで、つづらをもってレイセンちゃんのへやにきたら、
いきなりレイセンちゃんとえいりんさまがケンカしてたですからぁ…
てゐってばビックリして、ついレイセンちゃんにむかって、つづらをなげちゃったですよぉ☆」
てゐが、姫の言いつけで持って来たと言うつづら。
これが先程、私の頭にスカイツイスタープレスをかましてくれたワケだが。
……何かやたらデカい。んでもって重い。こんな物を『つい』で投げられるんだ、うちの幼女は。
「てか、この大きなつづら、一体何が入ってるんですか、姫。」
「ソレは後のお楽しみよぅ、ストライクフリーダムイナバ。開けてビックリ玉手箱、ってヤツね。
イナバも有難う、御苦労様ッ☆」
「わぁ~い! ひめにほめられちゃったですぅ♪」
『大きなつづら』にしろ『玉手箱』にしろ、姫がやるにはチョッと違う気もする。
つーか、てゐは普通にイナバで、私には変なのが付くんだ。まぁ、区別してくれるのは有難いんだけど。
でも、ストライクフリーダムってのはどうよ。ネーミングセンスが黒魔砲使いと大差無いと言うか。
ファイナルマスタースパークなんかと同レベル。イヤ、別にいいけどね。
「ところでぇ、なんでレイセンちゃんとえいりんさまはケンカしてたですかぁ?」
「それは…」
かくかくしかじか
「なるほどなるほどぉ… それはレイセンちゃんも、チョットわるいこだったですねぇ。」
「え、なんで!?」
「ていうかレイセンちゃん、まじめさんすぎですよぉ。えいりんさまのじょうだんをまにうけてぇ。
『ウサギがイピュイピュなくようになっちゃうゾ☆ウィルス』だなんて、ウソにきまってるじゃないですかぁ。
だって、てゐもレイセンちゃんも、ぜんぜんいつもとかわりないですよぉ?」
「あ、そう言えば…」
…ん? ところで、鳴き声ってイピュイピュだったっけ?
「まったくぅ、レイセンちゃんってばそそっかしいですぅ☆」
(ちゅうか、そんな事もいちいち言われんと気付かんがけ、こんダラが。)
「……今、変なのが聞こえた様な…??」
「えぇ~、きのせいですよぅ?」
(あ~もぅ、いじかっしいぞいや、コイツ!)
「また…」
「だからきのせいDEATH~★」
何だか色々煙に巻かれた様な気もするけど、まぁいいか。
つーか、これ以上追求したりなんだりする体力も気力も無いし…
「でも、ホント何で、私の部屋を海に…」
「まだ言ってるの? 貴方もしつこい娘ね、ウドンゲ。」
イヤだって、藪沢君のポスターが…
「いいこと? ウドンゲ…」
肩の上に師匠の手が置かれる。心なしか、その手には力が込められている様に感じられる。
「今の貴方にピッタリの諺があるわ。」
真っ直ぐに私を見つめる師匠の眼。深くて暗い翠色の目。 …まるで深い湖の底のような…
陳腐な表現かも知れないけど、『吸い込まれそうな瞳』って、こういうのを言うのかなぁ…
「昔の人は言ったわ……
……『男なら、誰かの為に強くなれ。女もそうさ、見てるだけじゃ始まらない』ってね。」
「イヤそれ多分、諺じゃないですよ!? 昔の人の科白でもないしッ!
それ以前に、話の流れと全く無関係じゃないですかッ!?
あぁもぅ! ツッコミ所が多すぎて、むしろ気持ちいいなぁッ!!」
「それは良かったわね(はぁと)」
「イヤ皮肉ですよ、今の!?」
「アラ、皮肉だなんて、ウドンゲのクセに生意気ね。貴方チッポケな、青い果実でしょ?」
「サッパリ意味が解りませんけど、ケンカですね? 今のケンカ売ってるって事で間違い無しッスね!?」
「おちつくですぅ、レイセンちゃん!」
今にも師匠に食って掛からんとする私を、必死になっててゐが制止する。
「えいりんさまも、きっとなにかしかたのないりゆうがあって、レイセンちゃんのへやをうみにしたですよぅ。
だからおちついて、ね、レイセンちゃん?」
(ちゅうか、『素饂飩に対する嫌がらせ』以外の理由なんて無いげん。いい加減、気付かんかい、ダラぶちが。)
「…てゐ、あんた何か、言外に色々隠してない……?」
「だからぁ~、そんなことないですぅ~☆」
(んな事、どうでも良いじ~。いじかっしいなぁ…)
「イヤ、でも、何か…」
「ッあぁ~~ッ! もぅ、マジでガンコいじかっしいぞいや! わしがナンも無いってゆっとるさけぇ、
ナンも無いに決まっとるわいね! ちっとは黙っとれ、こん素饂飩!」
(もぅ~、レイセンちゃんってばぁ~。
そんなにてゐのことがしんじられないですかぁ~? てゐ、プンプンですぅ~★)
……本音と建前が逆になってるわよ、てゐ………
「ちょっと~! えーりん、イナバ、イナバシザース!
いつまで私を放っておいて、三人だけでお笑いオンステージを楽しんでるつもり~?」
あぁ、スッカリ忘れてた、姫の事。て言うか、私の呼び名の方向性が、さっき迄と変化してる気がする。
「申し訳ございません、姫… 我が不肖の弟子のせいで、姫に不快な思いをさせてしまいました……」
「あぅ~… レイセンちゃんのせいで、ひめにおこられちゃったですぅ~……」
「まったくもぅ、気を付けなさいよね、イナバΔ!」
「え、何? 私? 私だけが悪者なの!?」
「イナバレンゲルが悪いと思う人、手ぇあげて~♪」
「「はぁ~い♪」」
天に向かって伸びる、三本の白い手。マイノリティーを封殺する、数の暴力。
ひでぇ、イジメだよコレ… イジメかっこ悪いよ…… 前○さんの言う通りだよ………
「まぁ、今回だけは特別に許してあげるわ。
お優しい私様に感謝なさいな、そして敬いなさい、イナバBLACK RXよ。エッヘン♪」
「流石は姫、何て寛大な御心の持ち主なのでしょう…! この八意 永琳、感動のあまり涙が止まりません……!!」
「よかったねぇ、レイセンちゃんっ☆」
へいへい、アリガトーゴゼーマス………
「さて、一件落着したところで、海遊びを始めるわよ~! メンバーも全員揃ってるしね。」
「全員って言っても4人しか居ませんけどね、姫。」
「あら、何を言ってるのウドンゲ。4人じゃあないわよ?」
師匠が口を挟む。あぁ分かる、言いたい事は大体分かる。
「私とてゐは兎だから、『4人』じゃなくて『2人と2羽』って事ですか。」
「まぁ、ソレもあるのだけれど…」
アレ、違う?
「今ここに居るのは、『3.5人と2羽と0.5匹』なのよ。」
つづらを横目で見ながら、何だか謎かけの様な言葉を呟く師匠。
「ソレって、どういう……」
「んっふっふ~~♪ ソレはねぇ、イナバインぺラー……」
姫が急に顔を近付けてくる。鼻と鼻がくっつきそう。
姫の吐息が間近に感じられて、くすぐったい様な、照れくさい様な、何だか変な感じがする。
それにしてもヤッパリこの人、綺麗に揃えられた前髪といい、大きな瞳といい、少し幼さの残る頬のラインといい、
顔だけ見れば、ホント正に『美少女』だよなぁ…
「…私の姫に対して邪な感情を抱こうものなら…… 解ってるわよね、ウドンゲ…?」
師匠の視線が怖い…… てか、何気にさり気なく、結構凄い事をカミングアウトした様な…?
「チョッと~、聞いてるの、イナバZX?」
「あ、ハイ! 聞いてますよ、姫。」
「全ての答えは、このつづらの中にあるのよー!
と言うワケでイナバスーパー1、レッツ オプニュャハーッ!」
オプニュャハーッ?
あぁ、Open your heartを、ネイティブスピーカーっぽく言おうとしたのか?
日本語圏の人が、無理して英語を『ソレっぽく』言おうとすると、大抵はビミョーな出来になっちゃうよなぁ。
……て言うか、your heartって何の意味が……?
まぁいいか、大体の意味は解ったし。要は、つづらを開けろって事でしょう?
…蓋を開けようと、つづらに近付く。
……ん? 何だろう、さっきは気付かなかったけれど、このつづら、中から変な臭いがする…?
夏場に放っておかれた生ゴミの様な、それでいて、何か錆びた鉄みたいな感じも…
嫌な予感がする。否、『予感』ではない、『確信』だ。
私は頭の回転が特に速いワケでもないが、それにしたって、この臭いが何かくらいは容易に想像がつく。
臭いの元である、つづらの中身についても……
夏の日差しの真っ只中に居るというのに、何故だかイヤに寒く感じる。体中に鳥肌が立つ。
…開けたくない。
けれど、姫の命令だ。開けないワケにはいかない。
……意を決して蓋に手をかける。気付かぬ内に口中に溜まった唾を、一気に飲み下す。心臓の鼓動がやけに速い。
「いく、わよ……」
誰にでもなく呟きながら、手に力を込めた………
赤
赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
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「っヒッ……」
胃袋の中身が全て、喉を目指して逆流してくる。
「うぶっ! え゛あ゛ぁ~~~~~……… がはぁっ、はぁっ……」
口中を支配する胃液の酸味。汚らしい音を立てながら、砂浜に降り注ぐ嘔吐物。
……つづらの中に入っていたのは、奇妙な形状の帽子をかぶった1人の少女。
さるぐつわをかまされ、手足を縛られ、そして全身を赤く染め上げられた少女。
彼女を彩るのは、おびただしい量の赤い液体。
そして、同じく赤い色をした、かつては人間の一部であったであろう物体。
心臓、肺臓、肝臓、腎臓、脾臓。大腸、小腸、胃、胆、膀胱、三焦………
「と言うワケで、つづらの中身は本日のゲスト、
上白沢 慧音タンと藤原 妹紅タン(現在死亡中)でした! イェーイ♪」
何処から取り出したのか、タンバリンを片手に大はしゃぎの姫。
「生の臓物を見た程度で吐くなんて… そんなんじゃ焼肉屋さんに行った時にどうするのよ?」
言いながら、何故かウットリした目で肝臓を手にする師匠。
……もうイヤ。こんな上司も、こんな職場も………
少女復活中
NowResurrecting...
「八意 永琳、一つ訊きたい事があるんだが…」
「何かしら、上白沢 慧音?」
「私の知識が確かなら、あそこの兎二羽が着ているのは、『すくうるみずぎ』なる物の様に思えるんだが…」
「よく知っているわね。流石は“知識と歴史の半獣”、と言ったところかしら?」
「何処で手に入れたんだ、あんな物?」
「“眼鏡とフンドシの青年”がやっている店で。ウドンゲが着ると言ったら、大喜びで譲ってくれたわ。」
「尻尾用の穴が空いてるのは仕様なのか?」
「アレは私が空けたの。兎といったらヤッパリ、尻尾が出ていなければ嘘でしょう?」
「……何と言うか………
ウサ耳ウサ尻尾を付けたスク水少女って、どう考えてもアレでナニなお店の店員さんにしか見えないなぁ……」
「それが良いんじゃない。て言うかむしろ、それが狙いなんだから。
良かったら貴方も着る? もう一着あるんだけど……」
「イヤ、遠慮しておく。」
「あら残念。貴方は特に似合うと思うのに……」
「……頼むから、その何だ、ねぶる様な視線で此方を観るの、やめてもらえないか…?」
「アラ、良いじゃないの、減るものでもないんだし。ウフフフフ……」
ビ-チパラソルの下、ブルーシートに腰を下ろした師匠と上白沢 慧音が、
波打ち際で遊ぶ私とてゐを見ながら何か話している。
……何て言うか、こう、チョッと恥ずかしいな………
私とてゐが今着ている服は、非常に露出度が高いのだ。
普段の私の格好も(幻想郷内としてみれば)それなりに露出が多い方なのだが、この衣装とは比べ物にならない。
なにせ、手足は勿論の事、太腿やその上部、腋、胸元までが丸見えなのだ。しかも、素肌の上に直接の着用。
水遊びをするのに適している、と言えば確かにそうとも思えるが、どうにも落ち着かない。
何かこう、下着だけしか着けてない様な気分……
師匠にいたっては、『びきに』と言うらしいが、胸と腰の部分を僅かに覆うだけの、
それこそ下着そのものの様な物を着ている。
…それにしても……
「……いいなぁ、師匠は胸おっきくて………」
「レイセンちゃんってば、ペチャパイでせいてきみりょくにかけてるですからねぇ――(はぁと)」
「ぺ… ペチャ………!? あんたの胸でそーいうこと言うの!?」
「てゐのむねにはみらいがあるですぅ!! レイセンちゃんみたく、もうおわってないDEATHぅ!」
いかんイカン! 落ち着け私。子供の言う事だ、いちいち真に受けるな。
深呼吸でもして気持ちを落ち着けよう。
蒼い空を見上げて、深く息を吸ってみる。潮を含んだ風が、肺の中を満たしていく。
……気持ちいい。
姫の我侭が事の発端だったワケなんだけど、何だかんだ言って私、結構楽しんでるよなぁ。
他の皆を見てみれば、てゐは大喜びで波と戯れている。
姫は、初めの内は私達と一緒に泳いでたりしていたけれど、疲れたのか、今は砂でお城を作ったりしている。
ちなみに姫の格好だが、私達と似た衣装(ただし色が違くて白、胸元の名札も無く、腰周りの形状もシンプル)の上に、
大きめの白い長袖Yシャツを着ている。シャツがその下の衣装をほぼ完全に隠してしまっている為、
何と言うか、Yシャツ以外は何も着けてない様にも見える。
師匠曰く、
「黒髪ロングでお嬢前髪な美少女には、コレこそがcorrectなのですッ!
黒い髪と白いシャツのコントラスト! スラリと伸びた白く美しい肢体!!
そしてシャツの下は、下にはぁぁああ~~~ッ!!!」だそうだ。
……あーいう大人にはなりたくないなぁ。
姫と師匠に無理やり拉致られて来たらしい上白沢 慧音も、何のかんの文句を言いつつ、
さっきからずっと師匠とお喋りしている。
知識人同士、気が合うのだろうか。
で、同じく拉致られて来た(+惨殺された)藤原 妹紅だが……
……何か、ナイフみたいに尖っては触るもの皆傷付けそうなオーラを発しながら、ずぅっと押し黙って座り込んでいる。
非常に近寄り難い。
蘇生直後は、上白沢 慧音が何とか機嫌を直させようと話しかけたりしていたが、無駄だったみたいだ。
まぁ、当然っちゃ当然だろうけどね。
「もぅ~、もこタンってば。
せっかく私のプライベートビーチに招待してあげたっていうのに、
さっきっからずっとムスッとしてて、何だか感じ悪ぅ~。」
砂遊びに飽きたのか、姫が藤原 妹紅に話しかける。
いい度胸してるなぁ。イヤ、あの人は何も考えてないだけか。
「コイツは驚いたわね。人を虐殺して拉致るのを、月じゃあ『招待する』って言うんだ?」
吐き捨てる様に、藤原 妹紅が答える。
「何? もこタンってば、もしかして怒ってるの?」
「当ッ然だろが!! 朝っぱらに突然来たと思ったら、問答無用で人の事殺戮しやがって!
んな事されて怒らん人間が居たら、是非とも脳味噌かっさばいて内部構造を確認してみたいわ!!」
「あ、凄かったでしょう今日のは。えーりんにも頼んで、もえだんのダブルスペルみたく
禁薬『蓬莱の薬』と『永夜返し -世明け-』を同時発動してみたの。気に入ってくれた?」
「気に入るかボケ! 第一段階の時点で普通に回避不能だっつの! 普通に死ぬっつの!!」
「ん~、だったら、『蓬莱の樹海』と『天網蜘網捕蝶の法』の方が良かったかしら?」
「レーザー網を敷かれた上で、回転なんか出来るかぁ――ッ!!」
流石は姫。マジもんの宇宙人なだけあって、地球人との意思疎通が感動的な迄に駄目駄目だ。
「もこタンの怒りん坊~
どうせ不死身なんだから、チョッとくらい死んだっていいじゃないのよぉー」
「不死身っつったって、痛いモンは痛いんじゃ! 何だったらお前にも味あわせたろか、あぁ!?」
カードを取り出した藤原 妹紅の背後に、炎の鳥が具現化する。ヤバいなコリャ、逃げ出す準備をしといた方がいいか?
「落ち着け妹紅! 蘇生したばかりの体であまり無茶をしたら、
せっかく修復した五臓やら六腑やらが、またバラバラになるぞ!!」
うわっ! 言ってるそばから、赤黒いナマモノがボトボトベチャベチャ落ちていってるよ!
……うげぇ、また吐き気がしてきた………
「ほら、言わんこっちゃない! 取り敢えず今は落ち着くんだ、妹紅!」
「えぇい、止めるな慧音! この腐れ外道をヌッ殺せるなら、内臓の一つや二つ、安いものよ!!
今日という今日こそ、この最終鬼畜兵姫さまの捻じ曲がった性根を叩き折った上で露西亜式の暖炉にくべて
その前でペチカ燃えろよ燃えろよペチカとか歌い踊ってやる!」
「どうしてもやるのかしら、もこタン?」
「今更命乞いか? 炎がお前を呼んでるわよ!」
「なら燃え尽きなさい、潔くね!」
ああ、やめて姫、煽ったりしないで! 姫や師匠は不死身だからいいかもしれないけど、
こちとら巻き添え喰らって死んだりしたら、
普通にその時点で私の兎生ゲームオーバーでコンティニュー出来ないのさ!?
「くらえ!! 星も砕け散るフェニックスの羽ばたきを!!」
「げエエ~~~!?」
「なにい!?」
「こ…これは――ッ!?」
「不死! 火の鳥 -鳳翼天しょ……ぉ?………」
宣言を終える事なく、砂浜に倒れ伏す藤原 妹紅。そのすぐ脇に、いつの間にか師匠が立っていた。
「永琳! お前、妹紅に何をした!?」
「安心なさい。鎮静剤を打っただけよ。」
言いながら、掌の中で空になった注射器を回転させる。何か格好いいです、師匠ッ!
「なるほど。で、その注射器に入っていた物は一体なんだ。」
「ゲルセミウム・エレガンスのお茶に、隠し味としてドクターペッパーを少々混ぜた物。」
「そんな、口から摂取しても充分にヤバそうな物を、直接血管に注入するな!」
「別に良いじゃないの。不老不死なんだし。
あ、それとも、河豚の内臓をミキサーにかけ、そこにトマトソースと日本酒を加えて
三時間程じっくりコトコト煮詰めた物の方が良かったかしら?」
…流石は師匠。自分がやられてイヤな事を、
(三割増しくらいにして)平気で他人に対して行う素晴らしい迄の外道ップリ。
子供の教育上、とてもよろしくない人物ですね、ホント。
……何でこんな人の弟子をやってるんだろう、自分?
少女復活中
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「あ゛~~、死ぬかと思った…」
実際、死んでたと思うけど。
「大丈夫ぅ、もこタン?」
「お前に心配されたくない。」
「あ、ひど~い! せっかく心配してあげたのに。もこタンのイケズぅ~」
流石は姫、永遠を生きているだけあって、言葉のセンスが微妙に古い。『イケズ』だなんて単語、久しぶりに聞いた。
「ちなみに『イケズ』は、『い』つも『け』なげな『○』レーター、の略よ☆」
姫、それ伏字の意味が全く在りません。それ以前に、○レーターって健気な人なの?
「待てコラ! 誰がパナマ出身のソフト○ンク外国人選手だ、誰がッ!」
「もこタンが。そんな事も知らなかったの? 駄目ねぇ…」
「知るかぁぁ――ッ!!」
「いざゆ~け~ 無敵~の~ ワカタカ軍団~♪」
「歌うなぁぁ――ッ!!!」
「ちなみに『ワカタカ軍団』ていうのは、大量の兄弟力士が『どぅすこ~い、どぅすこ~い』な軍団です☆」
「ワケ解らんわぁぁ――ッ!!!!」
まずい。藤原さんの周囲の温度が、また上昇してきた。
ただでさえ燃え易い人なのに、姫が焚き付ける様な事をするから……
「そもそもなぁッ!
さっきから私の事をもこタンもこタンと馴れ馴れしく呼んでるけど、それもやめろ! 気色悪いッ!」
「えぇ~? いいじゃない、可愛いんだし…」
「『えぇ~?』じゃない、兎に角やめろ!」
「じゃあ『もこッペ』。」
「『じゃあ』じゃない、『じゃあ』じゃ!」
「『もこのすけ』。」
「あだ名をやめろと言ってるんだ、あだ名を!」
「『もこチン』。」
「何か響きが卑猥!」
「『モコモコ』。」
「可愛くしても駄目!」
「アニメ版ドラゴン○エストの。」
「なおさら駄目! つーか、元ネタが古過ぎて誰も解らんわッ!」
「じゃあ『日番谷君』。」
「イヤ、いきなり誰だよ日番谷君って!?」
「十番隊隊長。髪の毛白いからピッタリ。」
「誰も彼もが、某死神漫画を読んでいるという前提で話を進めるなー!」
「そっか… そうよね……」
「やっと理解したか……」
「炎属性という事を考えれば、『山じい』の方がピッタリよね。髪の毛白いし♪」
「人の話を聞けぇ~~ッ!!」
妹紅の叫び声と同時に、森羅万象一切を灰燼と為すべく、再び具現化する火の鳥。
第2スペルにして既に、超然たるこの霊圧。
その熱は天を焦がし雲すら消し、
その翼の通る道は、世の一切を灰燼に帰す。
これが――――――― 鳳翼天翔―――――――――――…!
「なんかすっごいムカついてきたから… いくわよ。」
大気を歪める程の熱量を発しながら、紅蓮の鳳凰が姫へと襲い掛かる。
「喰われろ!」
「ふふ………」
舞を躍るかの様に、華麗に優雅に、迫り来る不死鳥をかわす。
Yシャツの裾を翻しながらも、その中身は決して見せない見事な動き。
が、
「!」
ほんの一瞬の油断。その一瞬が、命運を分けるには充分過ぎる時間だった。
天を翔る鳳凰、その紅い軌跡に呑み込まれ、姫の姿が見えなくなった。
「本体はうまく避けたが… 余波にやられたな。」
姫、まさか本当に……!?
「…………………… あっけない終わりだわ。」
どこか寂しげに、藤原 妹紅が呟く。
「……甘いわね、もこタン。」
「!」
突然の声に、藤原 妹紅が振り返る。
その視線の先、紅弾が過ぎ去ったあとに立つは、美しき少女のシルエット。
「もこタンの鳳翼天翔など、わたしの前では涼風にすぎん!」
「な!?」
余波に呑まれたかに見えた姫は、しかし全くの無傷。白Yシャツに汚れの1つも付いてはいない……!
「月人に同じ技は二度も通じぬ。今やこれは常識!!」
……初めて聞きましたよ、そんな常識?
しかも、さっきは師匠の横槍が入ったんだから、『二度も通じぬ』でも何でもないじゃん。
ただ単に、気合で避けただけでしょうが。
適当な事ばっか言ってるなぁ、あの人。アレも何かの漫画の影響なのかな?
「そもそも、たかが第2スペル如きで私を倒そう、なんていうのが愚かなのよ。
見せてみなさい、もこタン、貴方の全力を!
使うがいいわ! あなたのラストスペルを!! あの!!!………
……えっと…… アレ? 何だったかしら、名前…??
………え~と、兎に角、あの!!! 『なんたらシャブルシューティング』をッ!!!!」
「ちょ、馬鹿! 何よ、そのモノ凄く嫌な間違え方!?
『インペリ』よ『インペリ』! 『インペリシャブルシューティング』!!」
「そうそうソレソレ!
その、『インテリのなんたらをシャブルシューティング』を使うがいいわッ!!」
「わざと間違ってるだろ、お前!」
「私の方は準備OKよ……?(はぁと)」
「何でそこで頬を赤らめるのよ!? ワケ解んないわよ!!
……ねぇ慧音、私、同じ日本語で輝夜と会話してるつもりだったんだけど、
もしかしたら日本語を喋ってるのは私だけで、アイツは月の言葉で話してるの?
だから会話が通じないの!? ねぇ、教えてよ慧音ッ!?」
……可哀想に藤原さん、もう半分以上、泣きが入ってる。
「落ち着け、落ち着くんだ妹紅! 兎に角、アイツの言葉にはもう耳を貸すな!」
「そうよ、もこタン! 落ち着いて歯を立てない様にゆっくり優しくしゃぶるのよ!」
「何をだーッ!?」
「ナニをだーッ♪」
何かもう、さっきから色々ギリギリな会話が続いている。
にしても、昔の私だったら、この会話の半分も理解できてなかったろうに、
師匠の弟子となった今じゃ、完ッ全に理解出来てしまう。
……アレ? 泣いてるの、私…?
「…もう駄目… 本ッ気で頭きた……
『永遠と須臾の罪人』蓬莱山 輝夜………
貴様には『死』ですらぬるい。
『滅殺』あるのみ!」
瞬間、大気が異様なプレッシャーに満たされる。藤原 妹紅の周囲の空気が、目で見て取れるほど明らかに変質していく。
翼を広げる五体の不死鳥。その異常な熱量で、妹紅の足元の砂が、みるみる内に融解してゆく。
「はあっ!!」
妹紅の霊圧が、さらに膨れ上がった!!!
「あっ! あああ…」
かっ… 体の自由が利かない!!! これが、『蓬莱の人の形』の真の力だというの……!!?
「最大究極奥義!!!!」
……もうダメ………!! 観念して目を閉じる。
「フェニックスさ……ぃ?………」
……何かが地面に落ちた音がした。そして静寂………
私、生きてる?……
……恐る恐る眼を開ける。
目に映るのは、極意の発動を為せずして、またもや砂浜に倒れ伏している藤原 妹紅。
そして、そのすぐ脇に、またもやいつの間にか立っている師匠。
「……今度は何を注射した…?」
……何かもう、既に怒ってるッポイな、あの半獣。
「先程リクエストをいただいた、
河豚の内臓をミキサーにかけ、そこにトマトソースと日本酒を加えて三時間程じっくりコトコト煮詰めた物。」
「そんな有害物質をリクエストした覚えは無い!」
「まったくもぅ、我侭な娘ねぇ…
分かったわ、そんなに言うなら、次回からは注射器には何も入れないで注射するようにするわ。」
「ソレはソレで、立派に殺人事件だがな……!」
「ふぅ……」
師匠が溜息をつく。その姿はまるで、聞き分けの無い子供を相手に困り果てている母親の様にも見える。
……まぁ、そう見えるだけで、実際には師匠の方が明らかに犯罪者なワケだが。
「あのねぇ、上白沢 慧音。貴方、こういう諺を知っているかしら?……
……『有松ーにありまつー、有松ーにありまつー』ってね。」
…だからそれ諺じゃないし、文章の流れを完全に無視してるし。
それにさっき、地域ネタは解りづらいからやめろって、私に言ってませんでしたっけ、師匠?
「くっ……! 『有松ーにありまつー、有松ーにありまつー』か… それならば仕方あるまい……」
えっ!? 今ので納得しちゃうの、上白沢さん!?
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「さ~て、話も纏まった所で、海水浴最大のイベント、西瓜割りを始めるわよ~♪」
何の話がどんな風に纏まったのかサッパリだが、兎に角、姫は西瓜割りを始めるらしい。
「…で、肝心の西瓜は何処に在るんだ、輝夜?」
何かこう、もう色々あきらめました~、みたいな雰囲気がバリバリの藤原さんが、姫に訊ねる。
…まだ完全に修復しきっていないのか、彼女の腹の辺りから色んな物がボトボトビチャビチャ落ちてたりするが、
ソレは気にしない。
……これから西瓜を食べるっていうのに、かなり嫌だなぁ、アレ。
「西瓜… 何処に在るの、えーりん?」
「先程イナバ部隊の者に、この部屋まで持って来るよう言い付けましたので、間も無く…」
師匠が言葉を紡ぎ終える前に、襖が開かれ大きな西瓜を抱えた兎少女が顔を出した。
「お待たせ致しましたラギョ、永琳様。」
「ああ有難う。西瓜は其処に置いて、貴方は下がって良いわ。」
「かしこまりましたラギョ。では、失礼致しますラギョ。」
「さて、西瓜も届いた事だし、始めましょうか、西瓜割り。」
「チ ョ ッ と 待 っ て く だ さ い 。」
「何よウドンゲ?」
「今の娘の科白中に、何だか聞き捨てならない様な語尾が聞こえた気がしたんですが……!?」
「……ウィルスが効く効かないには、どうやら個体差があるようね。」
視線を外した師匠が、小さく呟く。常人には聞き取れないであろう程の小声だが、月のウサ耳は伊達じゃない!
「師匠! まさか本当に、ウィルス散布とかヤバげな事をしちゃってたりするんですか!?」
「そんな、誰も覚えてない様な伏線を引っ張り出したりしないの、ウドンゲ。」
「イヤ、でも!?」
「安心なさい、今のはちょっとした冗談よ。さっきの娘に命じて、一芝居うってもらっただけ。」
「……本当ですか?」
「ホントもホント、蝶ホントー。ホント過ぎて、蝶バリキュンキュンドキドキなくらいーみたいなー感じーぃ☆」
だったら何で、目ぇ逸らしてんスか…… それ以前に、どちらの星の言葉ですか、今の?、
「あ~もう! また私を無視して、えーりんとイナバXの二人だけでストロベりってるぅ!」
姫の目には、今のやりとりがストロベりってる様に見えるんですか、そーなのかー。て言うか、
「イナバXのXって、『セタップ!』の方ですか、それとも『月は出ているか?』の方ですか?」
「最近DVDになった方。」
と言う事は、『月は出ているか?』の方か。
「伝説の勇者の方。」
○・ガーン!?
「チョッと!
そんな、今時の子には解らないネタはいい加減やめにして、西瓜割り、やるんだったらとっととやるわよ!?」
ソーセージ(の皮に使える物)をブラブラさせてる少女に急かされた。
何のかんの言って、西瓜割りを楽しみにしてるのか?
「それもそうね。
ウドンゲ、その西瓜をコッチまで持って来て頂戴。」
「あ、ハイ、分かりました!」
先程の娘が置いていった西瓜に駆け寄る。
……それにしても。
「何、ウドンゲ? 人の顔をジッと見たりして。」
「あ、いえ、この西瓜って、師匠が用意したのかな~、って。」
「? そうだけど。」
ああ、そうなんだ。その割りには…
「何かこう、普通に普通の西瓜ですね。」
「貴方、一体何を期待していたの?」
「イヤ、師匠の事だから、拉致って来た幼女を首だけ出して砂に埋めて、
『さ――っ 萃香割りでもしよーかああ!!』
なんて言いつつ、チェーンソーをヴリュリュヴリュゥ――ンッとやるとか、
そういう、ビジュアル的に色々マズい冗談をかましてくれるのかな~、なんて考えてたものですから。」
「…あのねぇウドンゲ。貴方、私の事を何だと思っているの? そんな馬鹿な事、するワケないでしょう?」
良かった、安心した。
いくら師匠が外道保健医とはいえ、流石にこのご時世に、やっていい事と悪い事の区別くらいはつく様だ。
「何が悲しくて、そんな楽しそうな事を幼女相手にやらなきゃならないのよ。」
……ハイ?
「あの、今の言い方だと、幼女が相手でなければやっちゃうよ、みたいに聞こえるんですが……」
「そうね、美少女が相手ならそれもアリね。
…かどわかしてきた美少女の自由を奪い、その前でメスをちらつかせながら、
『良いのよ? 叫んでも。いくらでも…』とか言って…
あぁ、想像しただけでゾクゾクしてくるわ!」
あの、もしもし?
「そもそもね、
『れみりゃさま萌~』だとか、
『フランちゃんハァハァ』だとか、
『萃香タンかわいいよかわいいよ萃香タン』だとか、
最近のそーいう、何て言うの?ロリ万歳とか、美幼女マンセーとか、そういったの我慢ならないのよ、私。
美幼女なんて、美少女に比べれば何の価値も無いというのに……」
「そんな、美幼女も美少女も、大して変わり無いでしょ…」
「な ん で す っ て ?」
師匠の目の色が変わる。ヤバい、地雷を踏んだか!?
「このザヤクウドンが、ワタシをナメてんのかッ!
『美少女』は美『少』女なのに、なんで美『幼』女と変わり無いんだ。この……
ド低脳がァ――ッ。」
フォークで人の頬をブッ刺しそうなくらいの勢いで怒り出す師匠。間違い無い、何か変なスイッチが入っちゃてる。
「いいことウドンゲ!?」
「ハヒッ!?」
「私が好きなのは美『少』女なの、美『幼』女ではないわ。
具体例を挙げるなら、みょんタンはOKで黒猫はボツ。さくやんはLOVEで頭が春の亡霊はNG。
これがラインよ、覚えておきなさい。
ちなみにストライクど真ん中は姫! コレ最優先事項。試験に出すからね?」
唐突に始まった、えーりん先生のはちみつ授業。何処からか、眼鏡まで持ち出してくる気合の入りよう。
おねがい☆師匠(マスター)!?
「美少女と美幼女の違いは、その行動からも説明できるわ。
例えば、美少女が入浴中のお風呂に乱入した場合……
『きゃっ!』
『アラ? 御免なさい、貴方が先に入っているとは知らなくて……
でも、そうね、折角だから一緒に入っても良いかしら?』
『あ、あの、でも…』
『フフ… 女同士なんだし、恥ずかしがる事ないじゃないの。』
ちゃぽん(入浴中)
『あの… 何ですか? 私の事ジッと見て……』
『綺麗な肌だなぁ、と思って。ヤッパリ、若い娘はハリが違うわね。
ホント、白くて綺麗な肌……』
『あ、有難う、ございます……』
『それに……フフフッ、可愛らしい胸。』
『(赤ァ…!)ひっ、酷いですよ!
そりゃ確かに、私はその、あの… あまり大きくは…ないかも知れないですけど……』
『フフ、御免なさい。怒らせるつもりじゃなかったんだけど…
お詫びに、そうね、どうすれば大きくなるか、教えてあげるわね。』
『ヒャッ!? あ、あの、チョッと? …あ… や… そこは……』
みたいな素敵で無敵なコミュニケーションが成立しちゃうワケなのよ!?
それが美幼女相手だと……
『あら? 御免なさい、貴方が先に入っているとは知らなくて……
でも、そうね、折角だから一緒に入っても良いかしら?』
『ウン、いいよっ!』
以上、証明終わり。 Q.E.D.
……面白くなし。全くもって面白くなし!!
私は乙女の恥らう姿を観たいっていうのに、美幼女が相手じゃ、何かこう、駄目! 全然駄目!
駄目な奴は何やっても駄目!!
所詮は、銭湯で男湯女湯の別無く入れる様な動物よ? 欲情のしようも無いわ。」
すげぇ… 狂った脳内妄想を臆面も無くブチ撒けた挙句、色々な方面の人から睨まれそうな科白を平気で口にしてる。
この人、本気で凄いよ……
ちなみに、その脳内妄想の内容を、私が永遠亭に来た初日に実際やられた様な記憶が無きにしもあらずだが、
どうにも後の方が思い出せない……??
「更に言うなら! あの鬼娘! アレなんかもう最悪!! 見た目は子供、頭脳はオヤジよ!?
一緒にお風呂なんか入ろうものなら、
『姉ちゃん、いー乳しとんなぁ。私にも触らせてよ、ゲヘゲヘゲヘヘ……』とか言って……
あーもうッ! 汚らわしい! 汚らわしい!! 汚らわしいったらありゃしない!!!
て言うか『けがらわしい』って『けがわらしい』と似てるわよね!? でも『けがわらしい』って何!?
『サスカッチって、実は中身は三つ編みの美少女で、外側のフワフワモコモコなのは毛皮らしい』とか、
そういう事ッ!!?」
汚らわしい汚らわしい言ってますけど、先程の妄想内で師匠がやってた事と、大差無い気がするんですが……
「そもそもッ! 私が幻想郷に来たのは、選りすぐりの美少女を集めた一大ハーレムを作る為!!
と言うワケでウドンゲ!
次回は、紅魔館に侵攻してめぼしい美少女をかっさらって来る予定だから、
貴方も戦闘の準備をしておきなさいッ!!」
え、チョッと、マジですか!?
「まーソレは取り敢えず置いといてッ!」
置いといちゃうの!? 今のって、かなり重要な話の気が!?
「とにかくッ! 美幼女なんてダメ。ゼッタイ!! 厚生労働省だってそう言ってるでしょう!?
美少女よ! 美少女こそがこの世の真理なのよ!?
ウサギ目ウサギ科の哺乳類にも理解し易い言葉で言うならば、『ビバ=美少女』よ!?
『ビバ』はイタリア語で、『美少女』は日本語よ!!! ビババババババババ!!!」
両手を広げ、天を仰ぎ、狂った様な笑い声(?)をあげる月の頭脳。
……師匠が筋金入りのお外道さんだ、という事は前々から知っていたけど、
その上ここまで猟奇的な変態さんだったとは……
外道と変態の二重の苦輪。略して外道変態。外道変態って、何だか魔法戦隊と発音が似てるなぁ。
……まぁ、取り敢えず師匠は放置しておこう。これ以上かかずらっていても仕方無い。
て言うか、出来る事なら、このまま永遠に関係を破棄したい……
「さてと…」
気を取り直して、師匠の用意した西瓜を持ち上げる。
随分と汗を掻いているが、その割りには生温かい。炎天下で食べるんだから、冷やしといてくれればいいのに…
……アレ? 何だろう。西瓜を掴んでいる掌に、何か違和感を感じる……?
何かが動いてる様な…… 私の手の血管か? イヤ、違う……
…西瓜だ。この西瓜の中で何かが動いてる…??
「師匠… この西瓜、中に何か入ってます…?」
「バババババババババ……… って、何? 何か言った、ウドンゲ?」
まだ笑って(?)たんだ、この人。
「イヤ、その、この西瓜の中……」
「果肉が入ってるわね。」
「あの、そうじゃなくて!」
「ああ、解る解る。貴方の言いたい事は解るわ、ウドンゲ。
何と言うか、反対なのよ、ソレ。」
「……ハ?」
「貴方の持っている西瓜の事よ。貴方が今見ているのは、その西瓜の裏側なのよ。」
「西瓜に裏も表も……」
「いいから、180度グルッと回してみなさいな。」
師匠が何を言いたいのかサッパリ解らないけど、兎に角言われた通り、西瓜を回転させてみる。
其処には……
……目と口があった。
西瓜の表面に、
目と、
口が、
付いていた。
………。
……。
…。
「ぎにゃあぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!??」
「五月蝿いわよ、ウドンゲ。」
「な、なななななななな………」
「ナイチンゲール?」
「なななななななな………」
「長町武家屋敷跡?」
「ななな何なんですかコレ!? 何で西瓜に顔が有るんですか!??」
目が二つと、口が一つ、ソレだけしか付いていないが、確かに、この西瓜には顔が有るのだ。
先程感じた動きはコイツの鼓動、周りに付いていた水滴は、物の例えじゃなくて本物の汗だったのか!?
「彼は、私が魔術と技術の粋を以て創り上げた植物生命体第壱号、西瓜の『メイ・サンチー』君よ。」
小学生男子並のネーミングセンスは、この際置いておくとして。
「何で、そんなモン創ったんです!?」
「一言で言えば、永遠亭防衛の為なんだけど……
……まぁ、うちには既にイナバ部隊が居るワケなんだけど、彼女らって、
外見は少女というか幼女というか、まぁ、そんなんでしょ?
そんな彼女らが、ナイフやらレーザーやらを打ち込まれて、脳漿やら臓物やらを撒き散らしつつ爆散するのって、
ビジュアル的にちょっとアレじゃない?
某ロボットアニメの最終決戦で、主人公少年の乗るロボが、
ビームサーベルで水着のおねーさんを次々と蒸発させていく、
あんな感じになってしまうワケよ。」
……東方シリーズって、そんな殺伐としたゲームだったけ?
「PCゲームならまだしも、永夜抄がアーケードやコンシューマー、
そしてアニメになった際にはヤッパリ問題になるだろうし、
そこで先手を打って、この植物生命体を創ったというワケ。
どんな悪人でも絶対殺さない漫画の主人公も、人外相手なら遠慮も容赦も無く刺殺斬殺銃殺爆殺しているでしょう?」
何と言うかまぁ、随分と気の早い……
「ちなみにアニメ化に際しては、私の声は皆○○子さんという事で了承(1秒)。」
それでもって、随分と自分に都合のいい事を話す人だなぁ…… 謎ジャムですか?
「あ、ウドンゲの声は玄○哲○さんね。」
「何で!? 何で私の声は、『主な出演作品』にカリフォルニア州知事の名前とか書いてありそうな人なんですか!?」
「やったわね、ウドンゲ。超ベテランで超有名な声優さんよ。」
「イヤ、それはそーだけど!?」
「……嫌なの?」
「そりゃ嫌ですよ!? ○田さんは大ファンですけど、声を当ててもらいたくはないですよ!」
「なら、大○のぶ○さんでいくわね。」
「ネコドラくーん!?」
「やったわねウドンゲ、これまた国民的声優さんじゃないの。羨ましいわ(?)」
「なんスか、その(?)は!? つーか、羨ましいなら代わって下さいよ師匠!」
「イヤほら、私は井○喜○子さんで決まりだし。」
「さっきと言ってる事が違うーッ!?」
……落ち着け…… 落ち着こう私………
アレだ、私がいちいち何かしらの反応を返すから、師匠が面白がって調子に乗るんだ。
さっきの姫と藤原 妹紅のやり取りを視てて解った。
このままじゃ、いつまで経っても話が進まない。次に師匠が何か言っても、適当にあしらおう。
「中○さんの方が良いかしら? 『殺しますよ?』みたいな感じで。」
「声優ネタは、もうええっちゅうんじゃ! それと、○尾さんは紫モヤシ役でいいですッ!!」
いかんイカン、反応しては駄目だ……
兎に角、話を進めよう。
「いいから師匠、とっととやりましょうよ、西瓜割り。」
「アラ、やる気満々ね、ウドンゲ。そんなに西瓜割りがやりたいの?」
「エーハイソーデスチョーヤリタイデスー。」
て言うかもう、兎に角何でもいいから、話を先に進めたいんですよ……
「それじゃあ一番手は貴方ね、ウドンゲ。」
「……ハイ?」
「姫もソレで構いませんか?」
「そうね。どうしてもって言うなら仕方無いわ。イナバネクサスジュネッスブルーに譲ったげる。」
何だか、話がおかしな方向に逸れてる気が…? あと、私の呼び名もおかしな方向に逸れてます。
パワーを搾り出せばいいんですか?
「それじゃあウドンゲ、西瓜を置いて此方に来なさい。目隠しをするから。」
西瓜割り自体が嫌なワケじゃないけど、顔付きは流石にチョットなぁ…… まぁ、目隠しするからいいかな?
西瓜を足元に置いて、師匠の所に駆け寄る。
「じゃあ、目隠しをするわよ。」
師匠の手が私の頭に回り、目隠しが着けられる。
……にしても、色が黒くて皮製の目隠しなんて初めて見た。
「口にも何か…」
「要りません。」
「冷たいわねぇ、ウドンゲ……」
視界が閉じられてるので判らないが、恐らく今師匠の手には、穴の沢山空いた金属製の玉が握られてるに違いない。
「はいレイセンちゃん、コレ☆」
てゐから棒を渡される。 ……何か手触りが冷たいし、あと、結構重いんだけど……
「コレ、何?」
「てつパイプDEATHぅ~★」
何で鉄パイプ? 普通に木刀とかは無いの?
まぁいいや。兎に角…
「行きますよ。」
「ああ、チョッと待ちなさい、ウドンゲ。」
師匠の茶々が入る。何ですかもう、とっとと始めて、早く終わらせたいのに……
「西瓜割りの前に、彼を起こさなきゃ。」
?…彼って……
「ソレの事ですか?」
西瓜の在る方向(多分)を指す。
「他に『彼』なんて代名詞が当て嵌まる人物なんて、幻想郷全体を見たってあと1人しか居ないと思うけれど、
アッチの方を今この場で起こす必要が、何処に在るのかしら?」
「……無いですね。」
て言うか、今この場でアレにまで乱入されたら、私、本気で生きる気力を失いそうです。
「にしても、その西瓜ってまだ生きてたんですか? 口も目も閉じたままだったから、私はてっきり……」
「死んでたら、鼓動を感じたり汗を掻いたりはしないでしょう? 私が眠らせておいたのよ。」
なるほど。
「でも、何で眠らせたりなんか…?」
「そうでもしないと彼、泣いて暴れて逃げ出そうとするんですもの。」
……ハイ?
「あの、もしかして、ソイツって、チャンとした自我とか知能とか持ってたりするんですか?」
「当然じゃない。私をなめてもらっては困るわね、ウドンゲ。
シッカリとした自意識と標準的な人間や妖怪並の知能を持ち、
言葉だって普通に話せるわ、このメイ・サンチー君は。」
……チョッと待て。
「師匠は、イナバ部隊の代わりに脳漿とかブチ撒けさせる為に、ソイツを創ったって言ってましたよね……?」
「そうよ? もっとも彼の場合、ブチ撒けるのは果肉とか果汁とか種子なんだけれども。」
「だったら、何でそんなモンに、知能とか自我とか持たせたりしたんですか!?
メチャクチャ後味が悪いじゃないですかッ!?」
「イヤでもホラ、某ロボットアニメシリーズなんて、夕方の普通に子供が観る時間帯に、
遠慮なく『母さん、僕のピアノ…』だとか、『邪魔だぁぁ!』『はっ、…ぐあ…!』とかやってるじゃない?」
「また解りにくい例えを!? じゃなくて、
そうならない為の植物生命体じゃないんですか!?」
「ああ、でも、子供達に戦争の恐ろしさ、愚かさを解らせるのも大切な事だとは思わない?」
……駄目だ。本気で疲れた。この人と話してると、喉と体力と精神力が幾ら有っても足りやしない………
「と言うワケで、目覚めなさい、メイ・サンチーよ! とっぴんぱらりんのぷう!!」
「え!? 何そのじゅもヴェホッ、ゲホッ、ゴホッ!」
叫び過ぎで喉が……
「………
……アレ、オレなんでこんな所に……
!そうだ、西瓜割りがどうとか言われて、逃げ出そうとしたら手足を切られて……」
手足があったんだ、アレ。
「…オイ、チョッとお前。何だよ? 何で鉄パイプなんか持ってるんだよ!?」
お前って私の事か…? 何が悲しくて、ウリ科の植物にお前呼ばわりされなきゃならないんだ。
チョッとヤる気が出てきたかも……
「お、オイ… まさか、マジで西瓜割りだなんて… 冗談、冗談だよなぁ!?」
うーん、でもヤッパリやりにくい……
「ああ、ちなみにウドンゲ。貴方、姫を押しのけて一番手になったのだから、絶対に一発で当てなさい?
もし外したりしたら、その鉄パイプ、貴方の何処かに直接プレゼントするわよ?」
「んな理不尽な!?」
「がんばるですぅ、レイセンちゃん!
でももししっぱいしたら、そのときは、てゐはてあしをおさえるやくをやってあげるDEATHぅ~★」
誰の!?
「私は、取り敢えず西瓜が食べられれば何でもいいから、とっととしろ月兎。」
「フフッ、食いしん坊だな、妹紅は。」
「からかわないでよ、慧音…」
イチャついてないで止めて下さいよ、藤原さんに上白沢さん!?
「イナバセブン! アレよ、右手はそえるだけ、そえるだけよッ!!」
姫は黙ってて下さい。あと、ソレ多分左手。
畜生、外野はいいよな、気楽で……
「ちょ… マジかよ、なぁオイ!?」
視界が封じられているとはいえ、目標の方がさっきからギャアギャア叫んでくれている為、位置の確認は容易である。
ぶっちゃけ、外しようが無いくらいだ。とは言え……
「何をモタモタしているの、ウドンゲ!
あと十を数える内にケリを着けないと、失格と見なして鉄パイプレイ開始よ!?」
十
……止むを得まい。
九
西瓜に向かって、静かに歩を進める。
八
「ま、待て! 待ってくれ!」
七
彼の目前に到達する。
六
「悪かった! オレが悪かったからさぁ!」
五
別にあんたは悪くない。勿論、私も悪くない。
四
「イヤだ! 死にたくねぇ! 死にたくねえよッ!!」
三
強いて言うなら、お互い運が悪かった。
二
「たっ、たた… たす、助け……」
一
何も聞こえない。私には何も……!
零
グチャリ
………。
……。
…。
「ねぇ~イナバ80、そんな所で一人で体育座りしてないで、コッチ来て一緒に西瓜食べよ~?」
違う私のせいじゃない私は悪くない命令だ命令だから仕方なかったんだ師匠だ師匠がヤれって言ったから仕方なく……
「可哀想に… 相当な心的外傷を負ったみたいだぞ、あの娘?」
私はヤりたくないって言ったんだソレを師匠が皆が無理矢理ヤらせたんだだから私は悪くないそう私は何も悪くない……
「まぁ、いいかんじに『のうしょうブチまけなあああががががが』だったDEATHからねぇ~★」
でも頭から離れないあの目あの声が死にたくない助けてくれってホントは聞こえてたんだでも聞こえないフリをして……
「私は、取り敢えず西瓜が食べられたから何でもいいけどね。」
アイツは生きたがってたそれを私が潰したこの手で潰したグチャリて割れて中身が飛び散ってあ阿唖亜ああアアアああ阿
「何と言うか…
苦労して彼の外皮の強度を人間の頭蓋と同じにした、その努力が報われたみたいで嬉しいわ。」
「どうするの~、えーりん?」
「大丈夫ですよ。
あの手の患者を治す一番の方策は、大勢で周りを取り囲んで『オメデトー』言いながら拍手する事です。
そうすれば、一人で勝手に、何かに感謝したりサヨナラしたりして立ち直っちゃいますから。
と言うワケで、行きなさい! 『メイ・サンチー君』弐~拾参号機!!」
「「「「「「「「「「「「オメデトー、オメデトー、オメデトー、オメデトー、オメデトー」」」」」」」」」」」」
「やめて下さい! 何が悲しくて、自分が潰したのと同じ姿形でその上ヤケに太くて毛むくじゃらな手足の生えた奴ら
12匹に囲まれて『オメデトー、オメデトー』と拍手されなきゃいけないんですか!?
そういう、傷口に塩を塗り込んだ上で天日で半日ほど干した後一枚一枚丁寧に袋詰めしてく様な真似されたら、
治る筈の患者だって『そーらを自由に 飛ーびたーいなー』とか歌って、
ホテル○航の屋上から白玉楼までノンストップですよッ!?」
「ほら、立ち直った。」
「流石えーりん~(はぁと)」
憎しみで人が殺せたら……!! 心からそう思う…
「あのね、イナバコスモス?」
トテトテと姫が近寄って来る。Yシャツの胸元は、西瓜の汁でベッタリしている。
……この人、少なくとも千歳は超えてるんだよね?
「心に深い傷を負った貴方に、今、この諺を贈るわ……
……『支配しーたがるマジシャン、怪~しげなぁエスパー、戦うー時はソルジャー、俺~の誇~りさー』ってね。」
……………………
「チョッとー、ここは『ソレ諺とちゃうやろ!』とか、『文章の流れを読まんかぃ!』とか、
『この地球が好きさ!?』とか、そういうツッコミが入るトコでしょ~?」
……………………
「……何よイナバネクスト! えーりんにはあんなにガンガン突っ込んでたクセに、私には出来ないって言うの?
そんなにえーりんが気持ちいいのッ!?」
……………………
「……………………」
……………………
「…………あのぉ~、今のは、『お笑いのツッコミ』と『アレの突っ込み』をかけたギャグでぇ…………」
……………………
「……………………
ヒッ… グゥゥウウ……
ふわぁあぁぁ~~ん! えーりんえーりん助けてえーりん!
イナバタロウが私を放置プレイで辱めてもうお嫁に行けな~い!」
「ご安心下さい。
姫と私の将来については、初夜から始まって娘の結婚式前夜まで、
完璧なシミュレーションを基にプランを立てておりますゆえ。
それよりウドンゲ!
貴方も芸人なら、ボケを無視されたり自分のギャグを自分で説明する事の寒さは、重々承知している筈でしょう!?」
「何またさりげなく、とんでもない妄想を垂れ流してんですか。
てか、師匠だとホントに娘を『造り』そうで怖いです。
あと、前にも言ったかも知れませんが、私は芸人じゃありません。」
「なら下忍かしら?」
「何か凄く『してやったり!』みたいな顔してますけど、師匠、ソレ全然面白くないですからッ!!」
「ソレよソレ! ソレなのよッ!」
うわ、五月蝿い人が口挟んできた。
「イナバパワードってば、えーりんの言う事にはいちいち反応するのに、何で私はシカトなの?
さっきなんて、えーりんと同じボケをやったのに!」
他人が二回も三回もやったネタを、その場でそのまんまでパクってる時点で、既に姫は芸人として失格だと思いますが。
……でも口に出してツッコミはしない。口に出すと、調子に乗るから。
「…………」
ふと気付けば、師匠が無言で此方を睨みつけている。
「な、何ですか?」
ヤな予感……
「……前々から思っていたのだけど、ウドンゲ、貴方、姫を軽んじてない?」
ギクリ
「姫の事をマイナスカリスマンだとか、ラスボスとは思えないとか、そう考えてない?」
ギクギクリ
「て言うかぶっちゃけ、
『て~んねんお嬢がリーダーじゃ 勝てーるワケねぇだろ始めから
一ぃ文にも ならーねぇ事 やら~ねぇ主義だがま~あいいか♪』
とか心の中で歌いながら、隠し撮りした姫の写真の額に『肉』と書くと見せかけて、
『お前なんて“肉”じゃなくて“にく”で充分だぜ!』みたいな事をしているんでしょう!?」
「イヤ、そこまで酷い事は考えてないですよ!?」
「……『そこまで』『は』……?」
しまった…!! 初歩的な誘導尋問に、見事に引っかかってしまった!?
「……ウドンゲ。どうやら貴方には、再教育という名の粛清が必要な様ね………」
「イヤそれ何処の独裁国家ですか!? 粛清の時点で死亡確定だし! 再教育の意味無いし!?」
「殺しはしないわ。ただ、一目でベテラン検死官すらも半月はまともに食事が出来なくる程の、
素敵な外見にさせっちゃたりはするけど。」
「ソレ死んでます! 絶対死んでますッ!!」
「ところがどっこい、それでもまだ生きてるのよねぇ、コレが♪」
「ソレはソレで凄いイヤ!!」
マズい。このままでは、粛清という名目で兎体実験の材料にされてしまう!
「やめてくださいですぅ、えいりんさまっ!」
ここで全く予想だにしなかった展開。まさか、てゐが私を庇ってくれるなんて……
ご免ね、私、あんたの事を誤解してた…!
「レイセンちゃんは、ひめのことをバカにしたりなんかしてないですぅ!」
「そうそう。」
「たしかに、ちょっとひめにたいしてつめたいところもあるですけど、
でもこころのなかでは、ホントにひめをそんけいしてるですぅ!」
「そうそう。」
「まあ、永琳様の事は、『外道変態(乳と態度が)でかレンジャー』だとか思ってれんけどな、こん素饂飩は。」
「そうそう。」
……アレ?
「なるほど、よぉく解ったわ、ウドンゲ(はぁと)」
ああ… うっかり正直に…
「貴方には、師を敬う心がどれほど尊いものか、シッカリと教え込まねばならない様ね。」
お願いですから、その前にまず貴方自身が、尊敬に値する人物になって下さい。
『美少女大好きソレ以外は皆実験動物』みたいなマッド保健医を敬うなど、普通の神経では無理です。
て言うか、狂っていても無理です。『狂気の月の兎』にだって、無理なモンは無理です……
「さあウドンゲ。貴方にはコレをプレゼントよ?」
師匠の手に握られるは、何故か練乳まみれの、チョッピリ黒ずんだ大根。
「何ですか、その、読者の九割以上がオチを予想できちゃいそうなくらい、判り易いアイテムはッ!?」
「練馬大根の植物生命体、『シャルル・ド・サンジェルマンⅢ世』ちゃんよ!」
「エベレストー」
「Ⅲ世!? Ⅰ世とⅡ世は!?」
「その辺りは、『新マン』の王様ザウルスと同じなのよ。」
「また若い子には解らないネタ!」
「彼女は一見ただの大根だけれども、色々動いたり実況したり出来るナイスガイよ。」
「アルプスー」
「何処で動くの!? 何を実況するの!!? つーか、『ちゃん』で『彼女』なのにナイスガイ!!??」
「頑張ってね、シャルル。」
「チョモランマー」
「ガン無視!? それと、蓬莱人形とか意識してるんだろうけど、
ソイツの場合、明らかにキモいって! 可愛くないって、その鳴き声!!」
「キリマンジャロー…」
「酷いわねウドンゲ。彼女はこれから、貴方の○○○の穴に入って、動いたり実況してくれたりするのよ?」
「師匠! ソレ伏字の意味があんまり無いです!! 『穴』とか言ってる時点で、伏字の意味が殆ど無いですッ!!」
「あら、『おくち』の穴かも知れないじゃない。」
「ソレはソレでノーセンキュウ!
何の因果で、練乳がけ生大根なんて至高で究極なメニューを食さなきゃならんとですか!?」
「敢えて言うなら、兎だから?」
「兎は人参! 大根違うッ! 色違うッ!!」
「安心なさい。口は口でも、上ではなくてしt
「ストップ師匠! それ以上は駄目です! 創想話的に許されません!!」
「大丈夫よ。このSSはもうすぐ終わりなんだから。」
「ハイ!?」
「つまりね、この後の展開については文章にせず、全て読者の方々の想像に任す、という事よ。
実際に『文章』という『形』にしなければ、後は各々が頭の中でウドンゲに(ピーッ)で(ズガガガガン)で
(ドキューン)な事をしようとも、ソレはあくまでも想像の範囲内だからOK、というワケ。
ああ、なんて完璧な理論武装…! 法廷でも勝つ自信が有るわ!
実際に行動に移さないのであれば、人は何を考えても構わないの。
と言うより、人の考えを、『心』を縛る事は、誰にも出来はしないのよ!
ああ、人間って、すばらしいなあ。これぞ正に生命賛歌よッ!!」
「ああああ謝れ! 荒○先生に蝶謝れッ!!」
「と言うワケで、『メイ・サンチー君』弐~拾参号機! ウドンゲを捕らえなさい!!」
「「「「「「「「「「「「オメデトー、オメデトー、オメデトー、オメデトー、オメデトー、」」」」」」」」」」」」
「まだ居たんかコイツら!?」
一瞬にして私の周りを取り囲むウリ科の植物ども。
マズい。このままじゃ、本気で色々尊厳とか貞操とかが大ピンチだ……!
「レイセンちゃんっ!」
西瓜包囲網を飛び越え、てゐが駆け寄って来た。まさか、助けて……
「さっきのやくそくどおり、てゐはてあしをおさえるやくをやってあげるDEATHぅ~★」
……くれるなんて微塵も思って無かったわよ!
あんたの本性くらい、こちとらイヤって程にガッテン承知の助よチクショー!?
こうなったら、(比較的)常識人の1.5人と0.5匹に助けを求め……
「プ、アハハハハ!」
「む、何だ、どうした、妹紅?」
「慧音ってば、鼻の頭に西瓜の種が付いてる~ゥ。」
「え、え、ウソ!?」
「慧音ってホント、真面目なクセに変な所で抜けてると言うか……」
「わ、悪かったな…」
「ま、そこが可愛いんだけどね。」
「…え…」
「ホラ、動かないで。今、西瓜の種を取ったげるから……」
「あ、チョッと……
………あ… ん……」
このバカップルどもがぁ~~ッ!!
海辺のアバンチュールだかアバンギャルドだかアバンストラッシュだか知らないが、ソレか? そーいう気分なのか!?
「酷いわ、もこタン! 私という者がありながら、そんな緑の魔法使いと……
あんなに激しくお互い(の命)を求め合ったというのに、アレは全て遊びだったの!?」
「アンタは黙ってろ――ッッ!!」
「アハ☆ やっとイナバマックスがツッコンでくれた~♪」
「ああウドンゲ、最後は…どうか、幸せな記憶を。」
「無理矢理、泣ける話ッポク締めようとしないで下さいぃ~~!!」
「さようなら。」
「助けて下さい! 助けて下さいッ!!」
「と言うワケで、GO! シャルル!!」
「ギラファノコギリー」
「何でいきなり昆虫名―――ッッ!!??」
“『何でいきなり昆虫名―――ッッ!!??』
それが彼女、鈴仙・優曇華院・イナバが遺した最期の言葉だった。
あの日、海に沈みゆく燃える様な夕日と共に、儚く、けれども、眩しく走り過ぎていった一人の少女……
私は彼女の生きた歴史を、生涯忘れる事はないであろう。”
参考文献:上白沢 慧音著「幻想歴史大全」巻之七より
「海が見たい」と。
月まで届かんとする程に、長く永く、天へと伸びる竹。
人里離れた竹林の奥。
まるで、人々の目からその身を隠しているかの様にひっそりと佇む、大きなお屋敷。
そのお屋敷に、お姫様は住んでいました。
つややかに流れる翠の黒髪をもった、とてもとても可愛らしいお姫様。
綺麗な服を着て、美味しい食べ物を食べて、沢山の召使達に囲まれて。
お姫様の為に作られたお屋敷の中で、何一つの不自由も知らずに暮らしていながら、
それでも彼女は決して、幸せではありませんでした。
お姫様は、籠の中の鳥だったからです。
お姫様は、お屋敷の中でとても大事にされていました。けれど、お屋敷から一歩でも出る事は許されていませんでした。
蝉の鳴き声が次第に鈴虫の音へと変わり、やがてはそれも聞こえなくなって雪が降ってきて、
けれどもその雪もいつかは溶けて花が咲き、そうしてまた蝉の鳴く季節がやって来る。
そんな繰り返しを、お姫様は千回も数えました。ずっと、ずうっと、お屋敷の中で数えていました。
お姫様には沢山の召使達が居ましたが、友達と言えるような者は居ませんでした。
たった一人、お姫様がお屋敷に来る前からずっと一緒に居てくれた女官を除いて。
そんなお姫様が、たった一人の友達に言った、たった一つの願い。
それが、海を見る事でした。
それを聴いたお姫様の友達は、何とかしてその願いを叶えてあげたいと思いました。
そして………
………。
……。
…。
目覚めはいつも眩しい。
瞼を下ろしているというのに、夏の強い日差しは、無遠慮に私を夢の中から現実へと引きずり出そうとする。
遠くに聞こえる波のざわめき。鼻の奥をくすぐる、潮くさい匂いのする風。体中を包み込む熱気。
眠っている間は閉じていた五感が、徐々に活性化していく様な感覚。
私の『頭』の方はまだ睡眠を欲しているのだが、『体』の方は既に起きる準備を整えたらしい。
……仕方ない。私はゆっくりと目を開いた…………
………。
……。
…。
って
「なんじゃこりゃあぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!??」
“ドキッ☆ 少女だらけの水泳大会 ~ポロリもあるよ~”
「大きな声を出して、一体どうしたの?
“5ボスという結構ランクの高い立場に居ながら本当に『5面のボス』としてしか出番が無くて
咲夜や妖夢に比べて何となく扱いが悪い気がすると言うかビジュアル的にはかなり萌え萌え狙ってるのに
本名で呼ばれる事は殆ど無くて永遠亭での真のヒエラルキーに於いては実はてゐより下っぽくて
言うなれば紅魔館に於ける中国みたいな扱いって言うかぶっちゃけ中国は最萌優勝して
萃夢想にも出場決定したから中国よりも可哀想なのかしらそもそもペットって何?ヤッパリ
首輪付けて檻の中に入れられてトイレは砂の上でとかそういう感じなの??とか言われてる”
鈴仙・優曇華院・イナバ!」
「セリフ長ッ! ソレを一息でスラスラと!! しかも何故だか説明文チック!!!
その上エラく失礼な表現ばっかですよ、師匠!!!!」
「前々から思っていたのだけれど、その『師匠』って呼び方、何だか噺家みたいよねぇ。」
「イヤせめて格闘家みたいとか言って下さいよ。って、そーじゃなくて!」
そうだ。そんな事を言っている場合ではない。今現在私の周りに起こっている異変に比べれば、
私の立場がどーだとか師匠という呼び方がこーだとか、そんな事は些事に過ぎない。
何故、一体どうして、何で……
「何で朝起きたら、私の部屋が海になっちゃってるんですか!? 海辺になっちゃってるんですか!!?
・・・・・・・・・・・・・
砂浜になっちゃってるんですか!?? 千里浜海水浴場になっちゃってるんですか!!??」
「千里浜って… またそんな一部地域の人にしか解らないネタを…
せめて松任海浜公園とか言った方が良いんじゃないかしら? ○遊館も近いし。」
「イヤ余計に解りづらいですよ!?
車○館とか言われて『あー、あそこのゲーセンって、SN系無いし微妙に偏ってるラインナップだよなぁ』とか
『ビビンパ屋は結構手軽で美味いよね』とか、相槌打てる人がどんだけ居ますかッ!」
って、あ―――ッ! そうじゃない! また師匠に話をはぐらかされた。千里浜も車遊○も今はどうでもいい。
私が言いたいのは、何で一晩の内に私の部屋が海になったのか、という事なのだ。
一応姫と師匠の直属の部下、という立場にある私には、永遠亭内に専用の個室を与えられている。
三畳一間の小さな和室だが、それでも私の城とも言える様な物であるし、結構気に入っている。
それが今、何故だか海になっている。一面の砂浜になっている。
金髪ロングでポニテな女の子が、「にはは」とか笑いながら遊んでてもおかしくない程に、
立派な海ップリをしていやがる。
と言うか、一面の砂浜の中に、私の布団やら書棚やらがポツンと存在している。
どこで○ドアみたいな感じで、白い砂の上に何の脈絡も無く襖が立っていたりする。何てシュールレアリスムな光景。
まるで、何処かの吸血鬼の館に住むスタンド使いの攻撃を受けている気分だ。
昨日布団に入った時までは、普通に普通の私の部屋だったってのに、今じゃ見事な内灘砂丘だ。
「またマイナーな地名を…」
「人のモノローグを読まんで下さい!
それよりッ! 何でこんな事になちゃってるんですか!?」
「…『何で』『ですか?』という科白を、どうして私に向かって言うのかしら?
それじゃあまるで、私がこの事態を引き起こした原因を知っているみたいな言い方じゃないの。」
……いけしゃあしゃあとまぁ、よく言うよこの人は。
『原因を知っている』どころか、『原因そのもの』でしょうが、アンタは。
この海は幻覚ではない。本物だ。
恐らくは空間を捻じ曲げて、私の部屋と何処かの海辺を直結させたか、
もしくは空間を拡大して、そこに直接海を創り上げたか。
いずれにせよ、とんでもない程の高レベルな術だが、
真実の満月を隠す事をすら「取っておきでも何でもない」と言ってのける人だ。
私の部屋を海辺にさせる事など、造作も無いのだろう。
て言うか、こんな馬鹿げていて且つ大それた事を、しようと思う者も実際に出来る者も、
永遠亭には一人しか居ないってば。
「あら、よく解っているじゃないの。流石は我が弟子ね。」
「だからモノローグを読まないで下さいよ…」
「…そうね、貴方にはこうなった理由を知る権利が有るわね。」
改めて言われる迄も無いと思うんですけどね。
「我が弟子よ… よくお聞きなさい。
これからあなたに話すことは…とても大切なこと。わたしたちが、ここから始める…
師から弟子へと、絶え間なく伝えてゆく… 長い長い…旅のお話なのですよ。」
旅は関係ねぇだろ旅は、とツッコミを入れようとした刹那、
「あ~~、えーりん。海できたのねぇ♪」
襖を開けて飛び込んでくる能天気な声。カリスマ0の亡霊嬢をも下回る、マイナスカリスマンなお姫様。
永夜をプレイした人の多くが「えっ、ラスボスってえーりんでしょ?」とのたまう程に、ラスボスっぽくないラスボス。
我等が主、蓬莱山 輝夜様の御登場だ。
「と言うワケなのよ。」
全くもって説明としての体を成してない師匠の言葉。けれども、
「なるほど…」
全てが理解できた。
「姫がネットで見つけたゲームかアニメに影響されて、『海が見たい』と我侭言い出したとか、そーいう事ですか…」
「そーいう事よ、ウドンゲ。詳しくはこのSSの冒頭部を参照して頂戴。」
あまり参考にならないと思う。
つーか、簡単に言おうと思えば『姫の我侭』と四文字で表現できる事を、
わざわざ32行2KB使う意味はあるんでしょうか。
脚色激しいし。某空気なPCゲーム意識してるの見え見えだし。
「姫に海を見せようにも、幻想郷は山奥でしょう?
そこでウドンゲが寝ている間に空間を少しいじくって、部屋を海にさせてもらったのよ。」
「私としても外に出るのはメンドーだったから、うちの中に海が出来たのは好都合だったわ(はぁと)」
「はぁ… 姫のNEETップリも相変わらずの様ですね。」
「チョッとイナバMk-Ⅱ! 誰がNEETよ、酷いじゃない!」
何ですかMk-Ⅱって。イヤ、何となく意味は解るし、ツッコまないけど。
「働きもせず、また働く意欲も無い者の事をNEETって言うんですよ。姫にピッタリじゃないですか。」
「何よ、Zイナバ! 私だってチャンと働いてるわよ!」
何だかパワーアップしてるよ私の名前。
取り敢えず美男や柔道明日ではなく、水色美少女を思い浮かべてみる。ひねくれててスミマセン。
「ネットオークションで入手した物の転売だとか、
あと、イナバ部隊のアレやコレやを盗撮した写真を、ペドさん相手に通販で売ったりだとか…」
「……後半部分は普通に犯罪ですね。」
「ッ! …………
…ッン、ふわぁあぁぁ~~ん!
えーりんえーりん助けてえーりん! イナバV2アサルトバスターが虐めるよぅ~!」
一気に時代が上がった私の呼び名。荒んだ心に武器は危険ですよ?
「いい加減になさい、ウドンゲ!」
「ハイ、申し訳ありません…」
師匠には絶対服従の私も、何故だか姫相手には結構強気で出られるんだよなぁ。
何かこう、
紅魔館の主は、見た目ロリだが中身は大人。
白玉楼やマヨヒガの主は、見た目ホワホワだったり胡散臭かったりするが実は色々考えている。
師匠は、見た目は優しいが裏では腹黒。
そして姫は、見た目天然なお嬢で実際その通りな性格、って感じ。
そもそも、公式設定で師匠の方が『圧倒的に力を持つ』とか言われてるし、
戦闘シーンの背景も、師匠は通常版だけで四枚も有る(しかも宇宙とかも有ってヤケに壮大)という
スク○ェアRPGのラスボス並の待遇なのに、姫は通常版+スペカ版の二種類だけ
(月が動いてたり、満月光線?の色や指向が違う等、微妙な変化は在るけど)。
スペカだって、神宝「サラマンダーシールド」なんて、
ラスボスのLunaticスペカなのに、キャラによっては簡単に安地製作可能。
ラストスペルが沢山有る、っていうのは、まぁ、凄いと言えるかも知れないんだけど、
細分化されているせいで、攻略する分にはむしろ楽。特にスペルプラクティスでは。
ぶっちゃけ、「永夜返し -待宵~世明け-」をコンプするより、Normalの禁薬「蓬莱の薬」取る方が難しくないスか?
兎に角、主人公側が豪華オールスター布陣を敷いてる永夜のラストを飾るには、どうにも弱いんだよなあ、姫って。
例えて言うなら、
『地球最大の危機! 歴代ライダー全員出撃!!』みたいな映画で、十面鬼がボス役をやる様なものだ。
……にしても師匠、泣きついて来た姫を抱きかかえながら、
鼻から明らかに致死量を超えてる程の血を出すの、やめて欲しいなぁ…
アレですか、紅魔館に生息する、完全で瀟洒なロリ専の狗畜生を真似してるんですか?
いやアレだ、師匠はドクターだから、むしろナンだ、某南国少年漫画に出てくる香川県庁所在地か。
高○中央商店街のアーケード全長は日本一ですよ、群馬様(ちなみに、直線距離なら大阪の天○橋筋商店街)。
「またそうやって、解りづらい地域ネタに走る… 芸人としてソレで良いの、ウドンゲ?」
誰が芸人ですか誰が。つーかいい加減、人のモノローグ読むのやめて下さい。読心術でも使えるんですか、師匠は?
「流石にそこ迄は出来ないわ。ただ単に、貴方は行動パターンが単純で読み易い、というだけの事よ。」
屋dkfgpふjodkbmfop@odrgj.laraさ。
「何? 『屋dkfgpふjodkbmfop@odrgj.laraさ』って。
ワケの解らない事を考えているんじゃないの。」
「チョッと師匠!? 今の違う! 絶対違うッ!!
私の行動パターン読んでるとか、そういうレベルと絶対違う、今の!
明らかに心の中まで読んでなきゃ出来ないですよ、こんな芸当!?
それともむしろ、私がサトラレ?
皆がなるべくバレない様に気を使っていてくれただけで、実は私がサトラレ!?」
「まぁ、そんなどうでも良い事は置いといて、」
「置いといちゃうの!? どーでもいい事なの!?」
「私に質問したい事は以上で終わり、という事で良いわね、ウドンゲ?」
「……え?……あ、ハイ………」
………イヤちょっと待て。いかん、イカン。師匠のペースに呑まれて、一番大事な事を訊きそびれるトコだった。
「…スイマセン師匠、最後にもう一つ。」
「何? 姫を待たせているのだから、手短にね?」
「何で私の部屋に海を創ったんですか?」
右手を顎に当て、やれやれといった表情で師匠が溜息をつく。
「その事については既に話したでしょう? 同じ事を何度も言わせないで頂戴。無駄は嫌いなの。」
確かに、さっきも聞きました。でも…
「ソレは、『永遠亭内に』海を創った理由でしょう? 私が訊きたいのは、何故『私の部屋』か、という事です。
永遠亭には他にも無数に部屋は在りますし、そもそも師匠なら、新たな部屋を創る事だって出来たでしょうに、
何で『私の部屋に』海を創ったんですか?」
「そんな事、どうでも良いじゃない…」
「良くないですよ! 部屋が海になったせいで、私の本だとか貼ってあったポスターだとかが、
全部潮風でベタベタパリパリになっちゃってるんですよ!?」
「今の科白…」
「…ハイ?」
「『風』を抜いて読んでみると、ちょっぴりやらしいわね。本やらポスターを何に使っていたのかしら~?」
「ワケ分かんねーッ!!」
「ああ、それはね、『風』を抜いて読むと、『本やポスターが潮でベタベタパリパリになった』って文章になって、
潮というのは所謂アレの事で、という事はつまり、ウドンゲが本やポスターを使ってお
「イヤ説明しなくていいです! てかむしろ、説明しちゃ駄目ですッ! 創想話的にNGです!!」
ああダメだ駄目だ。師匠のペースに呑まれるな。
「ッ兎に角! チャンと理由を話してもらいますからね!」
「もしかして怒っているの、ウドンゲ?」
「当然ですよ!? 一番のお気に入りだった藪沢君のポスターだって、ボロボロになっちゃったんですから!」
「藪沢君って、貴方また、誰も知らない様なマイナーアイドルを出してきたわね…」
「な…!? や、藪沢君を馬鹿にするなぁ~!!」
藪沢君っていったらアレですよ? 超人気アイドルですよ?
顔もかわいくて性格もイーんだとか、わりとイイ男の弟が居るとか、実は格闘マニアだとか、
まぁ兎に角、ナウなヤングにバカうけな、今をときめくスーパースターっすよ!?
私の…、〝超(スーパー)アイドルオタク〟の、名にかけて!… 間違い無い…!!!!!
・・・
「もう、仕方ないわねぇ。コレをあげるから、少し落ち着きなさい。」
そう言いながら、師匠が筒状に丸められた紙を懐から取り出す。
「何ですかコレ?」
「好青年フンドシ眼鏡のポスター(はぁと)」
「要らんわぁぁああ~~!!!」
「あら、貴方の運命の彼でしょう?」
「誰がじゃあぁぁ――!!!」
ああ、トラウマが甦る… 詳しくは、第2回東方最萌トーナメントを参照の事。
て言うか師匠は、あの変態のポスターをいつも持ち歩いてるんですか?
「昔の人は言ったわ。『備えあれば憂いなし』ってね。」
「イヤ絶対違う! 得意気に言ってるけど、その諺の用途、絶対間違ってる!!
謝って下さい! 昔の人に謝って下さい!!」
って、いかんイカン! またもや話を逸らされた。
「いいッッ加減!! 『私の部屋を』海にした理由を教えて下さいッ!!」
「はぁ、仕方ないわねぇ…
我が弟子よ… よくお聞きなさい。
これからあなたに話すことは…とても大切なこと。わたしたちが、ここから始める…
師から弟子へと、絶え間なく伝えてゆく… 長い長い…旅のお話なのですよ。」
A○Rネタはもういいですから。
「ウドンゲ、あなたも既に知っていると思うのだけど…
強大な電磁気の場は、物質の根源をなす原子と呼ばれる微粒子を一定方向に整列させ、
一気に極低温に温度を低下させるの。
さらに、作り出された極低温の領域を膨張冷却させると、
目標に到達したところでその領域の温度は絶対零度に達するわ。
絶対零度の領域に包み込まれた目標は、瞬時にして氷結し、
急激な温度変化によってこなごなに粉砕されることになる。
だから、あなたの部屋を海にしたのよ。解ったかしら?」
「…え?? あ? ハイ………??」
「解ってくれたなら良いのよ。」
「…え、あ、ハイ………」
「えーりん~、ウイングイナバ0カスタムとの漫才、終わったのぉ?」
「ええ、終わりましたよ、姫。」
「だったら遊ぼう! 早く遊ぼう!」
「そうですね。まずは、ビーチパラソルを立てましょうか。
ウドンゲ! ボーッとしていないで、貴方も手伝いなさい!」
「っえ、あ、スミマセン、師匠!」
「もぅ~、イナバDXってば大丈夫ぅ~?」
「…姫、そのDXってヤッパリ、デラックスじゃなくてダブルエックスって読むんですか…?」
「当然じゃない。貴方も月から電波を受け取るワケだし、ピッタリじゃない?」
「そりゃまぁ、そうと言えなくもないかも知れないですけど…
アレってなんか、変なヒゲっぽいのが付いてるしなぁ…」
「ターンAよりはいいでしょ?」
「まぁ、シ○・○ードよりは確かに。」
「ウドンゲ、パラソルが倒れない様に、足の部分をしっかり埋めて固定して頂戴。」
「了解です、師匠!」
………。
……。
…。
…………チ ョ ッ ト 待 て 。
「全然説明になってないじゃないですかぁ――ッ!!」
「ちっ、気付いたか。」
「あっ、今『ちっ』って言いましたね師匠、『ちっ』って!?」
あまりにもボケが強引過ぎて、ツッコミを入れる迄に59行も間が空いてしまった。
「コレだから、中途半端に知恵の付いた兎は…」
「あ、今の差別発言ですよ! NGですよ!! 謝って下さいよ!!!」
「五月蝿いわ。黙りなさい。兎は兎らしく、ラギョラギョ鳴いていれば良いのよ。」
「何で逆切れ気味なの!?
つか、それ以前に、何ですかラギョラギョって! 兎はそんな鳴き方しませんよ!」
「するわよ。
なんてったって、『兎がラギョラギョ鳴く様になっちゃうゾ☆ウィルス』を、この間幻想郷中に散布したんだから。」
とんでもなく外道な行いを、胸を張ってさも誇らしげに答える師匠。かなりデカメロンぶりが強調されてます。
じゃなくて、
「な、何でそんな事を…!」
「イヤまぁ、暇だったもので、つい。」
『暇』だとか『つい』だとかいう理由で、兎権を踏みにじる様な行為をしたというのか、この人は…!
「師匠は兎を何だと思ってるんですか!?」
「耳の長いモルモット?」
「違いますよ!!」
「じゃあ、寂しいと死んでしまうモルモット?」
「モルモットから離れて下さい、モルモットから!」
「うーん、それなら……耳が長くて寂しいと死んでしまうラットかしら?」
「結局、実験動物かいッ!」
駄目だ。この人にはまともな理屈が通じないみたいだ。こうなったら実力行使しかない。
いくら師匠とはいえ、今日ばかりは堪忍袋の緒も切れた。
幻想郷中の兎達を代表して私が、兎を兎とも思わぬこのマッドサイエンティストにお灸を据えてやる!
胸ポケットのカードに手を伸ばす。
「波符…」
宣言しかけたその瞬間、
「ケンカはダメですぅ~!」
後頭部に鈍い痛みが走り、視界が揺らぐ。
「スペカ宣言の時に、あの鬼っ娘が何処からカードを取り出してるのか、気になるなぁ」等と考えている間にも、
目の前に迫り来る地面。
空から飛来した巨大な何かの下敷きになりながら私は、熱い砂浜と熱いベーゼを交わす羽目になった。
………。
……。
…。
「あ゛~~、死ぬかと思った…」
「ダイジョブですかぁ、レイセンちゃん?」
フワフワした長い耳を持つ黒髪の少女が、心配そうに私の顔を下から覗き込む。
因幡 てゐ。永遠亭イナバ部隊隊長である。
「でもホント、おどろいたですよぉ。ひめのいいつけで、つづらをもってレイセンちゃんのへやにきたら、
いきなりレイセンちゃんとえいりんさまがケンカしてたですからぁ…
てゐってばビックリして、ついレイセンちゃんにむかって、つづらをなげちゃったですよぉ☆」
てゐが、姫の言いつけで持って来たと言うつづら。
これが先程、私の頭にスカイツイスタープレスをかましてくれたワケだが。
……何かやたらデカい。んでもって重い。こんな物を『つい』で投げられるんだ、うちの幼女は。
「てか、この大きなつづら、一体何が入ってるんですか、姫。」
「ソレは後のお楽しみよぅ、ストライクフリーダムイナバ。開けてビックリ玉手箱、ってヤツね。
イナバも有難う、御苦労様ッ☆」
「わぁ~い! ひめにほめられちゃったですぅ♪」
『大きなつづら』にしろ『玉手箱』にしろ、姫がやるにはチョッと違う気もする。
つーか、てゐは普通にイナバで、私には変なのが付くんだ。まぁ、区別してくれるのは有難いんだけど。
でも、ストライクフリーダムってのはどうよ。ネーミングセンスが黒魔砲使いと大差無いと言うか。
ファイナルマスタースパークなんかと同レベル。イヤ、別にいいけどね。
「ところでぇ、なんでレイセンちゃんとえいりんさまはケンカしてたですかぁ?」
「それは…」
かくかくしかじか
「なるほどなるほどぉ… それはレイセンちゃんも、チョットわるいこだったですねぇ。」
「え、なんで!?」
「ていうかレイセンちゃん、まじめさんすぎですよぉ。えいりんさまのじょうだんをまにうけてぇ。
『ウサギがイピュイピュなくようになっちゃうゾ☆ウィルス』だなんて、ウソにきまってるじゃないですかぁ。
だって、てゐもレイセンちゃんも、ぜんぜんいつもとかわりないですよぉ?」
「あ、そう言えば…」
…ん? ところで、鳴き声ってイピュイピュだったっけ?
「まったくぅ、レイセンちゃんってばそそっかしいですぅ☆」
(ちゅうか、そんな事もいちいち言われんと気付かんがけ、こんダラが。)
「……今、変なのが聞こえた様な…??」
「えぇ~、きのせいですよぅ?」
(あ~もぅ、いじかっしいぞいや、コイツ!)
「また…」
「だからきのせいDEATH~★」
何だか色々煙に巻かれた様な気もするけど、まぁいいか。
つーか、これ以上追求したりなんだりする体力も気力も無いし…
「でも、ホント何で、私の部屋を海に…」
「まだ言ってるの? 貴方もしつこい娘ね、ウドンゲ。」
イヤだって、藪沢君のポスターが…
「いいこと? ウドンゲ…」
肩の上に師匠の手が置かれる。心なしか、その手には力が込められている様に感じられる。
「今の貴方にピッタリの諺があるわ。」
真っ直ぐに私を見つめる師匠の眼。深くて暗い翠色の目。 …まるで深い湖の底のような…
陳腐な表現かも知れないけど、『吸い込まれそうな瞳』って、こういうのを言うのかなぁ…
「昔の人は言ったわ……
……『男なら、誰かの為に強くなれ。女もそうさ、見てるだけじゃ始まらない』ってね。」
「イヤそれ多分、諺じゃないですよ!? 昔の人の科白でもないしッ!
それ以前に、話の流れと全く無関係じゃないですかッ!?
あぁもぅ! ツッコミ所が多すぎて、むしろ気持ちいいなぁッ!!」
「それは良かったわね(はぁと)」
「イヤ皮肉ですよ、今の!?」
「アラ、皮肉だなんて、ウドンゲのクセに生意気ね。貴方チッポケな、青い果実でしょ?」
「サッパリ意味が解りませんけど、ケンカですね? 今のケンカ売ってるって事で間違い無しッスね!?」
「おちつくですぅ、レイセンちゃん!」
今にも師匠に食って掛からんとする私を、必死になっててゐが制止する。
「えいりんさまも、きっとなにかしかたのないりゆうがあって、レイセンちゃんのへやをうみにしたですよぅ。
だからおちついて、ね、レイセンちゃん?」
(ちゅうか、『素饂飩に対する嫌がらせ』以外の理由なんて無いげん。いい加減、気付かんかい、ダラぶちが。)
「…てゐ、あんた何か、言外に色々隠してない……?」
「だからぁ~、そんなことないですぅ~☆」
(んな事、どうでも良いじ~。いじかっしいなぁ…)
「イヤ、でも、何か…」
「ッあぁ~~ッ! もぅ、マジでガンコいじかっしいぞいや! わしがナンも無いってゆっとるさけぇ、
ナンも無いに決まっとるわいね! ちっとは黙っとれ、こん素饂飩!」
(もぅ~、レイセンちゃんってばぁ~。
そんなにてゐのことがしんじられないですかぁ~? てゐ、プンプンですぅ~★)
……本音と建前が逆になってるわよ、てゐ………
「ちょっと~! えーりん、イナバ、イナバシザース!
いつまで私を放っておいて、三人だけでお笑いオンステージを楽しんでるつもり~?」
あぁ、スッカリ忘れてた、姫の事。て言うか、私の呼び名の方向性が、さっき迄と変化してる気がする。
「申し訳ございません、姫… 我が不肖の弟子のせいで、姫に不快な思いをさせてしまいました……」
「あぅ~… レイセンちゃんのせいで、ひめにおこられちゃったですぅ~……」
「まったくもぅ、気を付けなさいよね、イナバΔ!」
「え、何? 私? 私だけが悪者なの!?」
「イナバレンゲルが悪いと思う人、手ぇあげて~♪」
「「はぁ~い♪」」
天に向かって伸びる、三本の白い手。マイノリティーを封殺する、数の暴力。
ひでぇ、イジメだよコレ… イジメかっこ悪いよ…… 前○さんの言う通りだよ………
「まぁ、今回だけは特別に許してあげるわ。
お優しい私様に感謝なさいな、そして敬いなさい、イナバBLACK RXよ。エッヘン♪」
「流石は姫、何て寛大な御心の持ち主なのでしょう…! この八意 永琳、感動のあまり涙が止まりません……!!」
「よかったねぇ、レイセンちゃんっ☆」
へいへい、アリガトーゴゼーマス………
「さて、一件落着したところで、海遊びを始めるわよ~! メンバーも全員揃ってるしね。」
「全員って言っても4人しか居ませんけどね、姫。」
「あら、何を言ってるのウドンゲ。4人じゃあないわよ?」
師匠が口を挟む。あぁ分かる、言いたい事は大体分かる。
「私とてゐは兎だから、『4人』じゃなくて『2人と2羽』って事ですか。」
「まぁ、ソレもあるのだけれど…」
アレ、違う?
「今ここに居るのは、『3.5人と2羽と0.5匹』なのよ。」
つづらを横目で見ながら、何だか謎かけの様な言葉を呟く師匠。
「ソレって、どういう……」
「んっふっふ~~♪ ソレはねぇ、イナバインぺラー……」
姫が急に顔を近付けてくる。鼻と鼻がくっつきそう。
姫の吐息が間近に感じられて、くすぐったい様な、照れくさい様な、何だか変な感じがする。
それにしてもヤッパリこの人、綺麗に揃えられた前髪といい、大きな瞳といい、少し幼さの残る頬のラインといい、
顔だけ見れば、ホント正に『美少女』だよなぁ…
「…私の姫に対して邪な感情を抱こうものなら…… 解ってるわよね、ウドンゲ…?」
師匠の視線が怖い…… てか、何気にさり気なく、結構凄い事をカミングアウトした様な…?
「チョッと~、聞いてるの、イナバZX?」
「あ、ハイ! 聞いてますよ、姫。」
「全ての答えは、このつづらの中にあるのよー!
と言うワケでイナバスーパー1、レッツ オプニュャハーッ!」
オプニュャハーッ?
あぁ、Open your heartを、ネイティブスピーカーっぽく言おうとしたのか?
日本語圏の人が、無理して英語を『ソレっぽく』言おうとすると、大抵はビミョーな出来になっちゃうよなぁ。
……て言うか、your heartって何の意味が……?
まぁいいか、大体の意味は解ったし。要は、つづらを開けろって事でしょう?
…蓋を開けようと、つづらに近付く。
……ん? 何だろう、さっきは気付かなかったけれど、このつづら、中から変な臭いがする…?
夏場に放っておかれた生ゴミの様な、それでいて、何か錆びた鉄みたいな感じも…
嫌な予感がする。否、『予感』ではない、『確信』だ。
私は頭の回転が特に速いワケでもないが、それにしたって、この臭いが何かくらいは容易に想像がつく。
臭いの元である、つづらの中身についても……
夏の日差しの真っ只中に居るというのに、何故だかイヤに寒く感じる。体中に鳥肌が立つ。
…開けたくない。
けれど、姫の命令だ。開けないワケにはいかない。
……意を決して蓋に手をかける。気付かぬ内に口中に溜まった唾を、一気に飲み下す。心臓の鼓動がやけに速い。
「いく、わよ……」
誰にでもなく呟きながら、手に力を込めた………
赤
赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤赤
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「っヒッ……」
胃袋の中身が全て、喉を目指して逆流してくる。
「うぶっ! え゛あ゛ぁ~~~~~……… がはぁっ、はぁっ……」
口中を支配する胃液の酸味。汚らしい音を立てながら、砂浜に降り注ぐ嘔吐物。
……つづらの中に入っていたのは、奇妙な形状の帽子をかぶった1人の少女。
さるぐつわをかまされ、手足を縛られ、そして全身を赤く染め上げられた少女。
彼女を彩るのは、おびただしい量の赤い液体。
そして、同じく赤い色をした、かつては人間の一部であったであろう物体。
心臓、肺臓、肝臓、腎臓、脾臓。大腸、小腸、胃、胆、膀胱、三焦………
「と言うワケで、つづらの中身は本日のゲスト、
上白沢 慧音タンと藤原 妹紅タン(現在死亡中)でした! イェーイ♪」
何処から取り出したのか、タンバリンを片手に大はしゃぎの姫。
「生の臓物を見た程度で吐くなんて… そんなんじゃ焼肉屋さんに行った時にどうするのよ?」
言いながら、何故かウットリした目で肝臓を手にする師匠。
……もうイヤ。こんな上司も、こんな職場も………
少女復活中
NowResurrecting...
「八意 永琳、一つ訊きたい事があるんだが…」
「何かしら、上白沢 慧音?」
「私の知識が確かなら、あそこの兎二羽が着ているのは、『すくうるみずぎ』なる物の様に思えるんだが…」
「よく知っているわね。流石は“知識と歴史の半獣”、と言ったところかしら?」
「何処で手に入れたんだ、あんな物?」
「“眼鏡とフンドシの青年”がやっている店で。ウドンゲが着ると言ったら、大喜びで譲ってくれたわ。」
「尻尾用の穴が空いてるのは仕様なのか?」
「アレは私が空けたの。兎といったらヤッパリ、尻尾が出ていなければ嘘でしょう?」
「……何と言うか………
ウサ耳ウサ尻尾を付けたスク水少女って、どう考えてもアレでナニなお店の店員さんにしか見えないなぁ……」
「それが良いんじゃない。て言うかむしろ、それが狙いなんだから。
良かったら貴方も着る? もう一着あるんだけど……」
「イヤ、遠慮しておく。」
「あら残念。貴方は特に似合うと思うのに……」
「……頼むから、その何だ、ねぶる様な視線で此方を観るの、やめてもらえないか…?」
「アラ、良いじゃないの、減るものでもないんだし。ウフフフフ……」
ビ-チパラソルの下、ブルーシートに腰を下ろした師匠と上白沢 慧音が、
波打ち際で遊ぶ私とてゐを見ながら何か話している。
……何て言うか、こう、チョッと恥ずかしいな………
私とてゐが今着ている服は、非常に露出度が高いのだ。
普段の私の格好も(幻想郷内としてみれば)それなりに露出が多い方なのだが、この衣装とは比べ物にならない。
なにせ、手足は勿論の事、太腿やその上部、腋、胸元までが丸見えなのだ。しかも、素肌の上に直接の着用。
水遊びをするのに適している、と言えば確かにそうとも思えるが、どうにも落ち着かない。
何かこう、下着だけしか着けてない様な気分……
師匠にいたっては、『びきに』と言うらしいが、胸と腰の部分を僅かに覆うだけの、
それこそ下着そのものの様な物を着ている。
…それにしても……
「……いいなぁ、師匠は胸おっきくて………」
「レイセンちゃんってば、ペチャパイでせいてきみりょくにかけてるですからねぇ――(はぁと)」
「ぺ… ペチャ………!? あんたの胸でそーいうこと言うの!?」
「てゐのむねにはみらいがあるですぅ!! レイセンちゃんみたく、もうおわってないDEATHぅ!」
いかんイカン! 落ち着け私。子供の言う事だ、いちいち真に受けるな。
深呼吸でもして気持ちを落ち着けよう。
蒼い空を見上げて、深く息を吸ってみる。潮を含んだ風が、肺の中を満たしていく。
……気持ちいい。
姫の我侭が事の発端だったワケなんだけど、何だかんだ言って私、結構楽しんでるよなぁ。
他の皆を見てみれば、てゐは大喜びで波と戯れている。
姫は、初めの内は私達と一緒に泳いでたりしていたけれど、疲れたのか、今は砂でお城を作ったりしている。
ちなみに姫の格好だが、私達と似た衣装(ただし色が違くて白、胸元の名札も無く、腰周りの形状もシンプル)の上に、
大きめの白い長袖Yシャツを着ている。シャツがその下の衣装をほぼ完全に隠してしまっている為、
何と言うか、Yシャツ以外は何も着けてない様にも見える。
師匠曰く、
「黒髪ロングでお嬢前髪な美少女には、コレこそがcorrectなのですッ!
黒い髪と白いシャツのコントラスト! スラリと伸びた白く美しい肢体!!
そしてシャツの下は、下にはぁぁああ~~~ッ!!!」だそうだ。
……あーいう大人にはなりたくないなぁ。
姫と師匠に無理やり拉致られて来たらしい上白沢 慧音も、何のかんの文句を言いつつ、
さっきからずっと師匠とお喋りしている。
知識人同士、気が合うのだろうか。
で、同じく拉致られて来た(+惨殺された)藤原 妹紅だが……
……何か、ナイフみたいに尖っては触るもの皆傷付けそうなオーラを発しながら、ずぅっと押し黙って座り込んでいる。
非常に近寄り難い。
蘇生直後は、上白沢 慧音が何とか機嫌を直させようと話しかけたりしていたが、無駄だったみたいだ。
まぁ、当然っちゃ当然だろうけどね。
「もぅ~、もこタンってば。
せっかく私のプライベートビーチに招待してあげたっていうのに、
さっきっからずっとムスッとしてて、何だか感じ悪ぅ~。」
砂遊びに飽きたのか、姫が藤原 妹紅に話しかける。
いい度胸してるなぁ。イヤ、あの人は何も考えてないだけか。
「コイツは驚いたわね。人を虐殺して拉致るのを、月じゃあ『招待する』って言うんだ?」
吐き捨てる様に、藤原 妹紅が答える。
「何? もこタンってば、もしかして怒ってるの?」
「当ッ然だろが!! 朝っぱらに突然来たと思ったら、問答無用で人の事殺戮しやがって!
んな事されて怒らん人間が居たら、是非とも脳味噌かっさばいて内部構造を確認してみたいわ!!」
「あ、凄かったでしょう今日のは。えーりんにも頼んで、もえだんのダブルスペルみたく
禁薬『蓬莱の薬』と『永夜返し -世明け-』を同時発動してみたの。気に入ってくれた?」
「気に入るかボケ! 第一段階の時点で普通に回避不能だっつの! 普通に死ぬっつの!!」
「ん~、だったら、『蓬莱の樹海』と『天網蜘網捕蝶の法』の方が良かったかしら?」
「レーザー網を敷かれた上で、回転なんか出来るかぁ――ッ!!」
流石は姫。マジもんの宇宙人なだけあって、地球人との意思疎通が感動的な迄に駄目駄目だ。
「もこタンの怒りん坊~
どうせ不死身なんだから、チョッとくらい死んだっていいじゃないのよぉー」
「不死身っつったって、痛いモンは痛いんじゃ! 何だったらお前にも味あわせたろか、あぁ!?」
カードを取り出した藤原 妹紅の背後に、炎の鳥が具現化する。ヤバいなコリャ、逃げ出す準備をしといた方がいいか?
「落ち着け妹紅! 蘇生したばかりの体であまり無茶をしたら、
せっかく修復した五臓やら六腑やらが、またバラバラになるぞ!!」
うわっ! 言ってるそばから、赤黒いナマモノがボトボトベチャベチャ落ちていってるよ!
……うげぇ、また吐き気がしてきた………
「ほら、言わんこっちゃない! 取り敢えず今は落ち着くんだ、妹紅!」
「えぇい、止めるな慧音! この腐れ外道をヌッ殺せるなら、内臓の一つや二つ、安いものよ!!
今日という今日こそ、この最終鬼畜兵姫さまの捻じ曲がった性根を叩き折った上で露西亜式の暖炉にくべて
その前でペチカ燃えろよ燃えろよペチカとか歌い踊ってやる!」
「どうしてもやるのかしら、もこタン?」
「今更命乞いか? 炎がお前を呼んでるわよ!」
「なら燃え尽きなさい、潔くね!」
ああ、やめて姫、煽ったりしないで! 姫や師匠は不死身だからいいかもしれないけど、
こちとら巻き添え喰らって死んだりしたら、
普通にその時点で私の兎生ゲームオーバーでコンティニュー出来ないのさ!?
「くらえ!! 星も砕け散るフェニックスの羽ばたきを!!」
「げエエ~~~!?」
「なにい!?」
「こ…これは――ッ!?」
「不死! 火の鳥 -鳳翼天しょ……ぉ?………」
宣言を終える事なく、砂浜に倒れ伏す藤原 妹紅。そのすぐ脇に、いつの間にか師匠が立っていた。
「永琳! お前、妹紅に何をした!?」
「安心なさい。鎮静剤を打っただけよ。」
言いながら、掌の中で空になった注射器を回転させる。何か格好いいです、師匠ッ!
「なるほど。で、その注射器に入っていた物は一体なんだ。」
「ゲルセミウム・エレガンスのお茶に、隠し味としてドクターペッパーを少々混ぜた物。」
「そんな、口から摂取しても充分にヤバそうな物を、直接血管に注入するな!」
「別に良いじゃないの。不老不死なんだし。
あ、それとも、河豚の内臓をミキサーにかけ、そこにトマトソースと日本酒を加えて
三時間程じっくりコトコト煮詰めた物の方が良かったかしら?」
…流石は師匠。自分がやられてイヤな事を、
(三割増しくらいにして)平気で他人に対して行う素晴らしい迄の外道ップリ。
子供の教育上、とてもよろしくない人物ですね、ホント。
……何でこんな人の弟子をやってるんだろう、自分?
少女復活中
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「あ゛~~、死ぬかと思った…」
実際、死んでたと思うけど。
「大丈夫ぅ、もこタン?」
「お前に心配されたくない。」
「あ、ひど~い! せっかく心配してあげたのに。もこタンのイケズぅ~」
流石は姫、永遠を生きているだけあって、言葉のセンスが微妙に古い。『イケズ』だなんて単語、久しぶりに聞いた。
「ちなみに『イケズ』は、『い』つも『け』なげな『○』レーター、の略よ☆」
姫、それ伏字の意味が全く在りません。それ以前に、○レーターって健気な人なの?
「待てコラ! 誰がパナマ出身のソフト○ンク外国人選手だ、誰がッ!」
「もこタンが。そんな事も知らなかったの? 駄目ねぇ…」
「知るかぁぁ――ッ!!」
「いざゆ~け~ 無敵~の~ ワカタカ軍団~♪」
「歌うなぁぁ――ッ!!!」
「ちなみに『ワカタカ軍団』ていうのは、大量の兄弟力士が『どぅすこ~い、どぅすこ~い』な軍団です☆」
「ワケ解らんわぁぁ――ッ!!!!」
まずい。藤原さんの周囲の温度が、また上昇してきた。
ただでさえ燃え易い人なのに、姫が焚き付ける様な事をするから……
「そもそもなぁッ!
さっきから私の事をもこタンもこタンと馴れ馴れしく呼んでるけど、それもやめろ! 気色悪いッ!」
「えぇ~? いいじゃない、可愛いんだし…」
「『えぇ~?』じゃない、兎に角やめろ!」
「じゃあ『もこッペ』。」
「『じゃあ』じゃない、『じゃあ』じゃ!」
「『もこのすけ』。」
「あだ名をやめろと言ってるんだ、あだ名を!」
「『もこチン』。」
「何か響きが卑猥!」
「『モコモコ』。」
「可愛くしても駄目!」
「アニメ版ドラゴン○エストの。」
「なおさら駄目! つーか、元ネタが古過ぎて誰も解らんわッ!」
「じゃあ『日番谷君』。」
「イヤ、いきなり誰だよ日番谷君って!?」
「十番隊隊長。髪の毛白いからピッタリ。」
「誰も彼もが、某死神漫画を読んでいるという前提で話を進めるなー!」
「そっか… そうよね……」
「やっと理解したか……」
「炎属性という事を考えれば、『山じい』の方がピッタリよね。髪の毛白いし♪」
「人の話を聞けぇ~~ッ!!」
妹紅の叫び声と同時に、森羅万象一切を灰燼と為すべく、再び具現化する火の鳥。
第2スペルにして既に、超然たるこの霊圧。
その熱は天を焦がし雲すら消し、
その翼の通る道は、世の一切を灰燼に帰す。
これが――――――― 鳳翼天翔―――――――――――…!
「なんかすっごいムカついてきたから… いくわよ。」
大気を歪める程の熱量を発しながら、紅蓮の鳳凰が姫へと襲い掛かる。
「喰われろ!」
「ふふ………」
舞を躍るかの様に、華麗に優雅に、迫り来る不死鳥をかわす。
Yシャツの裾を翻しながらも、その中身は決して見せない見事な動き。
が、
「!」
ほんの一瞬の油断。その一瞬が、命運を分けるには充分過ぎる時間だった。
天を翔る鳳凰、その紅い軌跡に呑み込まれ、姫の姿が見えなくなった。
「本体はうまく避けたが… 余波にやられたな。」
姫、まさか本当に……!?
「…………………… あっけない終わりだわ。」
どこか寂しげに、藤原 妹紅が呟く。
「……甘いわね、もこタン。」
「!」
突然の声に、藤原 妹紅が振り返る。
その視線の先、紅弾が過ぎ去ったあとに立つは、美しき少女のシルエット。
「もこタンの鳳翼天翔など、わたしの前では涼風にすぎん!」
「な!?」
余波に呑まれたかに見えた姫は、しかし全くの無傷。白Yシャツに汚れの1つも付いてはいない……!
「月人に同じ技は二度も通じぬ。今やこれは常識!!」
……初めて聞きましたよ、そんな常識?
しかも、さっきは師匠の横槍が入ったんだから、『二度も通じぬ』でも何でもないじゃん。
ただ単に、気合で避けただけでしょうが。
適当な事ばっか言ってるなぁ、あの人。アレも何かの漫画の影響なのかな?
「そもそも、たかが第2スペル如きで私を倒そう、なんていうのが愚かなのよ。
見せてみなさい、もこタン、貴方の全力を!
使うがいいわ! あなたのラストスペルを!! あの!!!………
……えっと…… アレ? 何だったかしら、名前…??
………え~と、兎に角、あの!!! 『なんたらシャブルシューティング』をッ!!!!」
「ちょ、馬鹿! 何よ、そのモノ凄く嫌な間違え方!?
『インペリ』よ『インペリ』! 『インペリシャブルシューティング』!!」
「そうそうソレソレ!
その、『インテリのなんたらをシャブルシューティング』を使うがいいわッ!!」
「わざと間違ってるだろ、お前!」
「私の方は準備OKよ……?(はぁと)」
「何でそこで頬を赤らめるのよ!? ワケ解んないわよ!!
……ねぇ慧音、私、同じ日本語で輝夜と会話してるつもりだったんだけど、
もしかしたら日本語を喋ってるのは私だけで、アイツは月の言葉で話してるの?
だから会話が通じないの!? ねぇ、教えてよ慧音ッ!?」
……可哀想に藤原さん、もう半分以上、泣きが入ってる。
「落ち着け、落ち着くんだ妹紅! 兎に角、アイツの言葉にはもう耳を貸すな!」
「そうよ、もこタン! 落ち着いて歯を立てない様にゆっくり優しくしゃぶるのよ!」
「何をだーッ!?」
「ナニをだーッ♪」
何かもう、さっきから色々ギリギリな会話が続いている。
にしても、昔の私だったら、この会話の半分も理解できてなかったろうに、
師匠の弟子となった今じゃ、完ッ全に理解出来てしまう。
……アレ? 泣いてるの、私…?
「…もう駄目… 本ッ気で頭きた……
『永遠と須臾の罪人』蓬莱山 輝夜………
貴様には『死』ですらぬるい。
『滅殺』あるのみ!」
瞬間、大気が異様なプレッシャーに満たされる。藤原 妹紅の周囲の空気が、目で見て取れるほど明らかに変質していく。
翼を広げる五体の不死鳥。その異常な熱量で、妹紅の足元の砂が、みるみる内に融解してゆく。
「はあっ!!」
妹紅の霊圧が、さらに膨れ上がった!!!
「あっ! あああ…」
かっ… 体の自由が利かない!!! これが、『蓬莱の人の形』の真の力だというの……!!?
「最大究極奥義!!!!」
……もうダメ………!! 観念して目を閉じる。
「フェニックスさ……ぃ?………」
……何かが地面に落ちた音がした。そして静寂………
私、生きてる?……
……恐る恐る眼を開ける。
目に映るのは、極意の発動を為せずして、またもや砂浜に倒れ伏している藤原 妹紅。
そして、そのすぐ脇に、またもやいつの間にか立っている師匠。
「……今度は何を注射した…?」
……何かもう、既に怒ってるッポイな、あの半獣。
「先程リクエストをいただいた、
河豚の内臓をミキサーにかけ、そこにトマトソースと日本酒を加えて三時間程じっくりコトコト煮詰めた物。」
「そんな有害物質をリクエストした覚えは無い!」
「まったくもぅ、我侭な娘ねぇ…
分かったわ、そんなに言うなら、次回からは注射器には何も入れないで注射するようにするわ。」
「ソレはソレで、立派に殺人事件だがな……!」
「ふぅ……」
師匠が溜息をつく。その姿はまるで、聞き分けの無い子供を相手に困り果てている母親の様にも見える。
……まぁ、そう見えるだけで、実際には師匠の方が明らかに犯罪者なワケだが。
「あのねぇ、上白沢 慧音。貴方、こういう諺を知っているかしら?……
……『有松ーにありまつー、有松ーにありまつー』ってね。」
…だからそれ諺じゃないし、文章の流れを完全に無視してるし。
それにさっき、地域ネタは解りづらいからやめろって、私に言ってませんでしたっけ、師匠?
「くっ……! 『有松ーにありまつー、有松ーにありまつー』か… それならば仕方あるまい……」
えっ!? 今ので納得しちゃうの、上白沢さん!?
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「さ~て、話も纏まった所で、海水浴最大のイベント、西瓜割りを始めるわよ~♪」
何の話がどんな風に纏まったのかサッパリだが、兎に角、姫は西瓜割りを始めるらしい。
「…で、肝心の西瓜は何処に在るんだ、輝夜?」
何かこう、もう色々あきらめました~、みたいな雰囲気がバリバリの藤原さんが、姫に訊ねる。
…まだ完全に修復しきっていないのか、彼女の腹の辺りから色んな物がボトボトビチャビチャ落ちてたりするが、
ソレは気にしない。
……これから西瓜を食べるっていうのに、かなり嫌だなぁ、アレ。
「西瓜… 何処に在るの、えーりん?」
「先程イナバ部隊の者に、この部屋まで持って来るよう言い付けましたので、間も無く…」
師匠が言葉を紡ぎ終える前に、襖が開かれ大きな西瓜を抱えた兎少女が顔を出した。
「お待たせ致しましたラギョ、永琳様。」
「ああ有難う。西瓜は其処に置いて、貴方は下がって良いわ。」
「かしこまりましたラギョ。では、失礼致しますラギョ。」
「さて、西瓜も届いた事だし、始めましょうか、西瓜割り。」
「チ ョ ッ と 待 っ て く だ さ い 。」
「何よウドンゲ?」
「今の娘の科白中に、何だか聞き捨てならない様な語尾が聞こえた気がしたんですが……!?」
「……ウィルスが効く効かないには、どうやら個体差があるようね。」
視線を外した師匠が、小さく呟く。常人には聞き取れないであろう程の小声だが、月のウサ耳は伊達じゃない!
「師匠! まさか本当に、ウィルス散布とかヤバげな事をしちゃってたりするんですか!?」
「そんな、誰も覚えてない様な伏線を引っ張り出したりしないの、ウドンゲ。」
「イヤ、でも!?」
「安心なさい、今のはちょっとした冗談よ。さっきの娘に命じて、一芝居うってもらっただけ。」
「……本当ですか?」
「ホントもホント、蝶ホントー。ホント過ぎて、蝶バリキュンキュンドキドキなくらいーみたいなー感じーぃ☆」
だったら何で、目ぇ逸らしてんスか…… それ以前に、どちらの星の言葉ですか、今の?、
「あ~もう! また私を無視して、えーりんとイナバXの二人だけでストロベりってるぅ!」
姫の目には、今のやりとりがストロベりってる様に見えるんですか、そーなのかー。て言うか、
「イナバXのXって、『セタップ!』の方ですか、それとも『月は出ているか?』の方ですか?」
「最近DVDになった方。」
と言う事は、『月は出ているか?』の方か。
「伝説の勇者の方。」
○・ガーン!?
「チョッと!
そんな、今時の子には解らないネタはいい加減やめにして、西瓜割り、やるんだったらとっととやるわよ!?」
ソーセージ(の皮に使える物)をブラブラさせてる少女に急かされた。
何のかんの言って、西瓜割りを楽しみにしてるのか?
「それもそうね。
ウドンゲ、その西瓜をコッチまで持って来て頂戴。」
「あ、ハイ、分かりました!」
先程の娘が置いていった西瓜に駆け寄る。
……それにしても。
「何、ウドンゲ? 人の顔をジッと見たりして。」
「あ、いえ、この西瓜って、師匠が用意したのかな~、って。」
「? そうだけど。」
ああ、そうなんだ。その割りには…
「何かこう、普通に普通の西瓜ですね。」
「貴方、一体何を期待していたの?」
「イヤ、師匠の事だから、拉致って来た幼女を首だけ出して砂に埋めて、
『さ――っ 萃香割りでもしよーかああ!!』
なんて言いつつ、チェーンソーをヴリュリュヴリュゥ――ンッとやるとか、
そういう、ビジュアル的に色々マズい冗談をかましてくれるのかな~、なんて考えてたものですから。」
「…あのねぇウドンゲ。貴方、私の事を何だと思っているの? そんな馬鹿な事、するワケないでしょう?」
良かった、安心した。
いくら師匠が外道保健医とはいえ、流石にこのご時世に、やっていい事と悪い事の区別くらいはつく様だ。
「何が悲しくて、そんな楽しそうな事を幼女相手にやらなきゃならないのよ。」
……ハイ?
「あの、今の言い方だと、幼女が相手でなければやっちゃうよ、みたいに聞こえるんですが……」
「そうね、美少女が相手ならそれもアリね。
…かどわかしてきた美少女の自由を奪い、その前でメスをちらつかせながら、
『良いのよ? 叫んでも。いくらでも…』とか言って…
あぁ、想像しただけでゾクゾクしてくるわ!」
あの、もしもし?
「そもそもね、
『れみりゃさま萌~』だとか、
『フランちゃんハァハァ』だとか、
『萃香タンかわいいよかわいいよ萃香タン』だとか、
最近のそーいう、何て言うの?ロリ万歳とか、美幼女マンセーとか、そういったの我慢ならないのよ、私。
美幼女なんて、美少女に比べれば何の価値も無いというのに……」
「そんな、美幼女も美少女も、大して変わり無いでしょ…」
「な ん で す っ て ?」
師匠の目の色が変わる。ヤバい、地雷を踏んだか!?
「このザヤクウドンが、ワタシをナメてんのかッ!
『美少女』は美『少』女なのに、なんで美『幼』女と変わり無いんだ。この……
ド低脳がァ――ッ。」
フォークで人の頬をブッ刺しそうなくらいの勢いで怒り出す師匠。間違い無い、何か変なスイッチが入っちゃてる。
「いいことウドンゲ!?」
「ハヒッ!?」
「私が好きなのは美『少』女なの、美『幼』女ではないわ。
具体例を挙げるなら、みょんタンはOKで黒猫はボツ。さくやんはLOVEで頭が春の亡霊はNG。
これがラインよ、覚えておきなさい。
ちなみにストライクど真ん中は姫! コレ最優先事項。試験に出すからね?」
唐突に始まった、えーりん先生のはちみつ授業。何処からか、眼鏡まで持ち出してくる気合の入りよう。
おねがい☆師匠(マスター)!?
「美少女と美幼女の違いは、その行動からも説明できるわ。
例えば、美少女が入浴中のお風呂に乱入した場合……
『きゃっ!』
『アラ? 御免なさい、貴方が先に入っているとは知らなくて……
でも、そうね、折角だから一緒に入っても良いかしら?』
『あ、あの、でも…』
『フフ… 女同士なんだし、恥ずかしがる事ないじゃないの。』
ちゃぽん(入浴中)
『あの… 何ですか? 私の事ジッと見て……』
『綺麗な肌だなぁ、と思って。ヤッパリ、若い娘はハリが違うわね。
ホント、白くて綺麗な肌……』
『あ、有難う、ございます……』
『それに……フフフッ、可愛らしい胸。』
『(赤ァ…!)ひっ、酷いですよ!
そりゃ確かに、私はその、あの… あまり大きくは…ないかも知れないですけど……』
『フフ、御免なさい。怒らせるつもりじゃなかったんだけど…
お詫びに、そうね、どうすれば大きくなるか、教えてあげるわね。』
『ヒャッ!? あ、あの、チョッと? …あ… や… そこは……』
みたいな素敵で無敵なコミュニケーションが成立しちゃうワケなのよ!?
それが美幼女相手だと……
『あら? 御免なさい、貴方が先に入っているとは知らなくて……
でも、そうね、折角だから一緒に入っても良いかしら?』
『ウン、いいよっ!』
以上、証明終わり。 Q.E.D.
……面白くなし。全くもって面白くなし!!
私は乙女の恥らう姿を観たいっていうのに、美幼女が相手じゃ、何かこう、駄目! 全然駄目!
駄目な奴は何やっても駄目!!
所詮は、銭湯で男湯女湯の別無く入れる様な動物よ? 欲情のしようも無いわ。」
すげぇ… 狂った脳内妄想を臆面も無くブチ撒けた挙句、色々な方面の人から睨まれそうな科白を平気で口にしてる。
この人、本気で凄いよ……
ちなみに、その脳内妄想の内容を、私が永遠亭に来た初日に実際やられた様な記憶が無きにしもあらずだが、
どうにも後の方が思い出せない……??
「更に言うなら! あの鬼娘! アレなんかもう最悪!! 見た目は子供、頭脳はオヤジよ!?
一緒にお風呂なんか入ろうものなら、
『姉ちゃん、いー乳しとんなぁ。私にも触らせてよ、ゲヘゲヘゲヘヘ……』とか言って……
あーもうッ! 汚らわしい! 汚らわしい!! 汚らわしいったらありゃしない!!!
て言うか『けがらわしい』って『けがわらしい』と似てるわよね!? でも『けがわらしい』って何!?
『サスカッチって、実は中身は三つ編みの美少女で、外側のフワフワモコモコなのは毛皮らしい』とか、
そういう事ッ!!?」
汚らわしい汚らわしい言ってますけど、先程の妄想内で師匠がやってた事と、大差無い気がするんですが……
「そもそもッ! 私が幻想郷に来たのは、選りすぐりの美少女を集めた一大ハーレムを作る為!!
と言うワケでウドンゲ!
次回は、紅魔館に侵攻してめぼしい美少女をかっさらって来る予定だから、
貴方も戦闘の準備をしておきなさいッ!!」
え、チョッと、マジですか!?
「まーソレは取り敢えず置いといてッ!」
置いといちゃうの!? 今のって、かなり重要な話の気が!?
「とにかくッ! 美幼女なんてダメ。ゼッタイ!! 厚生労働省だってそう言ってるでしょう!?
美少女よ! 美少女こそがこの世の真理なのよ!?
ウサギ目ウサギ科の哺乳類にも理解し易い言葉で言うならば、『ビバ=美少女』よ!?
『ビバ』はイタリア語で、『美少女』は日本語よ!!! ビババババババババ!!!」
両手を広げ、天を仰ぎ、狂った様な笑い声(?)をあげる月の頭脳。
……師匠が筋金入りのお外道さんだ、という事は前々から知っていたけど、
その上ここまで猟奇的な変態さんだったとは……
外道と変態の二重の苦輪。略して外道変態。外道変態って、何だか魔法戦隊と発音が似てるなぁ。
……まぁ、取り敢えず師匠は放置しておこう。これ以上かかずらっていても仕方無い。
て言うか、出来る事なら、このまま永遠に関係を破棄したい……
「さてと…」
気を取り直して、師匠の用意した西瓜を持ち上げる。
随分と汗を掻いているが、その割りには生温かい。炎天下で食べるんだから、冷やしといてくれればいいのに…
……アレ? 何だろう。西瓜を掴んでいる掌に、何か違和感を感じる……?
何かが動いてる様な…… 私の手の血管か? イヤ、違う……
…西瓜だ。この西瓜の中で何かが動いてる…??
「師匠… この西瓜、中に何か入ってます…?」
「バババババババババ……… って、何? 何か言った、ウドンゲ?」
まだ笑って(?)たんだ、この人。
「イヤ、その、この西瓜の中……」
「果肉が入ってるわね。」
「あの、そうじゃなくて!」
「ああ、解る解る。貴方の言いたい事は解るわ、ウドンゲ。
何と言うか、反対なのよ、ソレ。」
「……ハ?」
「貴方の持っている西瓜の事よ。貴方が今見ているのは、その西瓜の裏側なのよ。」
「西瓜に裏も表も……」
「いいから、180度グルッと回してみなさいな。」
師匠が何を言いたいのかサッパリ解らないけど、兎に角言われた通り、西瓜を回転させてみる。
其処には……
……目と口があった。
西瓜の表面に、
目と、
口が、
付いていた。
………。
……。
…。
「ぎにゃあぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!??」
「五月蝿いわよ、ウドンゲ。」
「な、なななななななな………」
「ナイチンゲール?」
「なななななななな………」
「長町武家屋敷跡?」
「ななな何なんですかコレ!? 何で西瓜に顔が有るんですか!??」
目が二つと、口が一つ、ソレだけしか付いていないが、確かに、この西瓜には顔が有るのだ。
先程感じた動きはコイツの鼓動、周りに付いていた水滴は、物の例えじゃなくて本物の汗だったのか!?
「彼は、私が魔術と技術の粋を以て創り上げた植物生命体第壱号、西瓜の『メイ・サンチー』君よ。」
小学生男子並のネーミングセンスは、この際置いておくとして。
「何で、そんなモン創ったんです!?」
「一言で言えば、永遠亭防衛の為なんだけど……
……まぁ、うちには既にイナバ部隊が居るワケなんだけど、彼女らって、
外見は少女というか幼女というか、まぁ、そんなんでしょ?
そんな彼女らが、ナイフやらレーザーやらを打ち込まれて、脳漿やら臓物やらを撒き散らしつつ爆散するのって、
ビジュアル的にちょっとアレじゃない?
某ロボットアニメの最終決戦で、主人公少年の乗るロボが、
ビームサーベルで水着のおねーさんを次々と蒸発させていく、
あんな感じになってしまうワケよ。」
……東方シリーズって、そんな殺伐としたゲームだったけ?
「PCゲームならまだしも、永夜抄がアーケードやコンシューマー、
そしてアニメになった際にはヤッパリ問題になるだろうし、
そこで先手を打って、この植物生命体を創ったというワケ。
どんな悪人でも絶対殺さない漫画の主人公も、人外相手なら遠慮も容赦も無く刺殺斬殺銃殺爆殺しているでしょう?」
何と言うかまぁ、随分と気の早い……
「ちなみにアニメ化に際しては、私の声は皆○○子さんという事で了承(1秒)。」
それでもって、随分と自分に都合のいい事を話す人だなぁ…… 謎ジャムですか?
「あ、ウドンゲの声は玄○哲○さんね。」
「何で!? 何で私の声は、『主な出演作品』にカリフォルニア州知事の名前とか書いてありそうな人なんですか!?」
「やったわね、ウドンゲ。超ベテランで超有名な声優さんよ。」
「イヤ、それはそーだけど!?」
「……嫌なの?」
「そりゃ嫌ですよ!? ○田さんは大ファンですけど、声を当ててもらいたくはないですよ!」
「なら、大○のぶ○さんでいくわね。」
「ネコドラくーん!?」
「やったわねウドンゲ、これまた国民的声優さんじゃないの。羨ましいわ(?)」
「なんスか、その(?)は!? つーか、羨ましいなら代わって下さいよ師匠!」
「イヤほら、私は井○喜○子さんで決まりだし。」
「さっきと言ってる事が違うーッ!?」
……落ち着け…… 落ち着こう私………
アレだ、私がいちいち何かしらの反応を返すから、師匠が面白がって調子に乗るんだ。
さっきの姫と藤原 妹紅のやり取りを視てて解った。
このままじゃ、いつまで経っても話が進まない。次に師匠が何か言っても、適当にあしらおう。
「中○さんの方が良いかしら? 『殺しますよ?』みたいな感じで。」
「声優ネタは、もうええっちゅうんじゃ! それと、○尾さんは紫モヤシ役でいいですッ!!」
いかんイカン、反応しては駄目だ……
兎に角、話を進めよう。
「いいから師匠、とっととやりましょうよ、西瓜割り。」
「アラ、やる気満々ね、ウドンゲ。そんなに西瓜割りがやりたいの?」
「エーハイソーデスチョーヤリタイデスー。」
て言うかもう、兎に角何でもいいから、話を先に進めたいんですよ……
「それじゃあ一番手は貴方ね、ウドンゲ。」
「……ハイ?」
「姫もソレで構いませんか?」
「そうね。どうしてもって言うなら仕方無いわ。イナバネクサスジュネッスブルーに譲ったげる。」
何だか、話がおかしな方向に逸れてる気が…? あと、私の呼び名もおかしな方向に逸れてます。
パワーを搾り出せばいいんですか?
「それじゃあウドンゲ、西瓜を置いて此方に来なさい。目隠しをするから。」
西瓜割り自体が嫌なワケじゃないけど、顔付きは流石にチョットなぁ…… まぁ、目隠しするからいいかな?
西瓜を足元に置いて、師匠の所に駆け寄る。
「じゃあ、目隠しをするわよ。」
師匠の手が私の頭に回り、目隠しが着けられる。
……にしても、色が黒くて皮製の目隠しなんて初めて見た。
「口にも何か…」
「要りません。」
「冷たいわねぇ、ウドンゲ……」
視界が閉じられてるので判らないが、恐らく今師匠の手には、穴の沢山空いた金属製の玉が握られてるに違いない。
「はいレイセンちゃん、コレ☆」
てゐから棒を渡される。 ……何か手触りが冷たいし、あと、結構重いんだけど……
「コレ、何?」
「てつパイプDEATHぅ~★」
何で鉄パイプ? 普通に木刀とかは無いの?
まぁいいや。兎に角…
「行きますよ。」
「ああ、チョッと待ちなさい、ウドンゲ。」
師匠の茶々が入る。何ですかもう、とっとと始めて、早く終わらせたいのに……
「西瓜割りの前に、彼を起こさなきゃ。」
?…彼って……
「ソレの事ですか?」
西瓜の在る方向(多分)を指す。
「他に『彼』なんて代名詞が当て嵌まる人物なんて、幻想郷全体を見たってあと1人しか居ないと思うけれど、
アッチの方を今この場で起こす必要が、何処に在るのかしら?」
「……無いですね。」
て言うか、今この場でアレにまで乱入されたら、私、本気で生きる気力を失いそうです。
「にしても、その西瓜ってまだ生きてたんですか? 口も目も閉じたままだったから、私はてっきり……」
「死んでたら、鼓動を感じたり汗を掻いたりはしないでしょう? 私が眠らせておいたのよ。」
なるほど。
「でも、何で眠らせたりなんか…?」
「そうでもしないと彼、泣いて暴れて逃げ出そうとするんですもの。」
……ハイ?
「あの、もしかして、ソイツって、チャンとした自我とか知能とか持ってたりするんですか?」
「当然じゃない。私をなめてもらっては困るわね、ウドンゲ。
シッカリとした自意識と標準的な人間や妖怪並の知能を持ち、
言葉だって普通に話せるわ、このメイ・サンチー君は。」
……チョッと待て。
「師匠は、イナバ部隊の代わりに脳漿とかブチ撒けさせる為に、ソイツを創ったって言ってましたよね……?」
「そうよ? もっとも彼の場合、ブチ撒けるのは果肉とか果汁とか種子なんだけれども。」
「だったら、何でそんなモンに、知能とか自我とか持たせたりしたんですか!?
メチャクチャ後味が悪いじゃないですかッ!?」
「イヤでもホラ、某ロボットアニメシリーズなんて、夕方の普通に子供が観る時間帯に、
遠慮なく『母さん、僕のピアノ…』だとか、『邪魔だぁぁ!』『はっ、…ぐあ…!』とかやってるじゃない?」
「また解りにくい例えを!? じゃなくて、
そうならない為の植物生命体じゃないんですか!?」
「ああ、でも、子供達に戦争の恐ろしさ、愚かさを解らせるのも大切な事だとは思わない?」
……駄目だ。本気で疲れた。この人と話してると、喉と体力と精神力が幾ら有っても足りやしない………
「と言うワケで、目覚めなさい、メイ・サンチーよ! とっぴんぱらりんのぷう!!」
「え!? 何そのじゅもヴェホッ、ゲホッ、ゴホッ!」
叫び過ぎで喉が……
「………
……アレ、オレなんでこんな所に……
!そうだ、西瓜割りがどうとか言われて、逃げ出そうとしたら手足を切られて……」
手足があったんだ、アレ。
「…オイ、チョッとお前。何だよ? 何で鉄パイプなんか持ってるんだよ!?」
お前って私の事か…? 何が悲しくて、ウリ科の植物にお前呼ばわりされなきゃならないんだ。
チョッとヤる気が出てきたかも……
「お、オイ… まさか、マジで西瓜割りだなんて… 冗談、冗談だよなぁ!?」
うーん、でもヤッパリやりにくい……
「ああ、ちなみにウドンゲ。貴方、姫を押しのけて一番手になったのだから、絶対に一発で当てなさい?
もし外したりしたら、その鉄パイプ、貴方の何処かに直接プレゼントするわよ?」
「んな理不尽な!?」
「がんばるですぅ、レイセンちゃん!
でももししっぱいしたら、そのときは、てゐはてあしをおさえるやくをやってあげるDEATHぅ~★」
誰の!?
「私は、取り敢えず西瓜が食べられれば何でもいいから、とっととしろ月兎。」
「フフッ、食いしん坊だな、妹紅は。」
「からかわないでよ、慧音…」
イチャついてないで止めて下さいよ、藤原さんに上白沢さん!?
「イナバセブン! アレよ、右手はそえるだけ、そえるだけよッ!!」
姫は黙ってて下さい。あと、ソレ多分左手。
畜生、外野はいいよな、気楽で……
「ちょ… マジかよ、なぁオイ!?」
視界が封じられているとはいえ、目標の方がさっきからギャアギャア叫んでくれている為、位置の確認は容易である。
ぶっちゃけ、外しようが無いくらいだ。とは言え……
「何をモタモタしているの、ウドンゲ!
あと十を数える内にケリを着けないと、失格と見なして鉄パイプレイ開始よ!?」
十
……止むを得まい。
九
西瓜に向かって、静かに歩を進める。
八
「ま、待て! 待ってくれ!」
七
彼の目前に到達する。
六
「悪かった! オレが悪かったからさぁ!」
五
別にあんたは悪くない。勿論、私も悪くない。
四
「イヤだ! 死にたくねぇ! 死にたくねえよッ!!」
三
強いて言うなら、お互い運が悪かった。
二
「たっ、たた… たす、助け……」
一
何も聞こえない。私には何も……!
零
グチャリ
………。
……。
…。
「ねぇ~イナバ80、そんな所で一人で体育座りしてないで、コッチ来て一緒に西瓜食べよ~?」
違う私のせいじゃない私は悪くない命令だ命令だから仕方なかったんだ師匠だ師匠がヤれって言ったから仕方なく……
「可哀想に… 相当な心的外傷を負ったみたいだぞ、あの娘?」
私はヤりたくないって言ったんだソレを師匠が皆が無理矢理ヤらせたんだだから私は悪くないそう私は何も悪くない……
「まぁ、いいかんじに『のうしょうブチまけなあああががががが』だったDEATHからねぇ~★」
でも頭から離れないあの目あの声が死にたくない助けてくれってホントは聞こえてたんだでも聞こえないフリをして……
「私は、取り敢えず西瓜が食べられたから何でもいいけどね。」
アイツは生きたがってたそれを私が潰したこの手で潰したグチャリて割れて中身が飛び散ってあ阿唖亜ああアアアああ阿
「何と言うか…
苦労して彼の外皮の強度を人間の頭蓋と同じにした、その努力が報われたみたいで嬉しいわ。」
「どうするの~、えーりん?」
「大丈夫ですよ。
あの手の患者を治す一番の方策は、大勢で周りを取り囲んで『オメデトー』言いながら拍手する事です。
そうすれば、一人で勝手に、何かに感謝したりサヨナラしたりして立ち直っちゃいますから。
と言うワケで、行きなさい! 『メイ・サンチー君』弐~拾参号機!!」
「「「「「「「「「「「「オメデトー、オメデトー、オメデトー、オメデトー、オメデトー」」」」」」」」」」」」
「やめて下さい! 何が悲しくて、自分が潰したのと同じ姿形でその上ヤケに太くて毛むくじゃらな手足の生えた奴ら
12匹に囲まれて『オメデトー、オメデトー』と拍手されなきゃいけないんですか!?
そういう、傷口に塩を塗り込んだ上で天日で半日ほど干した後一枚一枚丁寧に袋詰めしてく様な真似されたら、
治る筈の患者だって『そーらを自由に 飛ーびたーいなー』とか歌って、
ホテル○航の屋上から白玉楼までノンストップですよッ!?」
「ほら、立ち直った。」
「流石えーりん~(はぁと)」
憎しみで人が殺せたら……!! 心からそう思う…
「あのね、イナバコスモス?」
トテトテと姫が近寄って来る。Yシャツの胸元は、西瓜の汁でベッタリしている。
……この人、少なくとも千歳は超えてるんだよね?
「心に深い傷を負った貴方に、今、この諺を贈るわ……
……『支配しーたがるマジシャン、怪~しげなぁエスパー、戦うー時はソルジャー、俺~の誇~りさー』ってね。」
……………………
「チョッとー、ここは『ソレ諺とちゃうやろ!』とか、『文章の流れを読まんかぃ!』とか、
『この地球が好きさ!?』とか、そういうツッコミが入るトコでしょ~?」
……………………
「……何よイナバネクスト! えーりんにはあんなにガンガン突っ込んでたクセに、私には出来ないって言うの?
そんなにえーりんが気持ちいいのッ!?」
……………………
「……………………」
……………………
「…………あのぉ~、今のは、『お笑いのツッコミ』と『アレの突っ込み』をかけたギャグでぇ…………」
……………………
「……………………
ヒッ… グゥゥウウ……
ふわぁあぁぁ~~ん! えーりんえーりん助けてえーりん!
イナバタロウが私を放置プレイで辱めてもうお嫁に行けな~い!」
「ご安心下さい。
姫と私の将来については、初夜から始まって娘の結婚式前夜まで、
完璧なシミュレーションを基にプランを立てておりますゆえ。
それよりウドンゲ!
貴方も芸人なら、ボケを無視されたり自分のギャグを自分で説明する事の寒さは、重々承知している筈でしょう!?」
「何またさりげなく、とんでもない妄想を垂れ流してんですか。
てか、師匠だとホントに娘を『造り』そうで怖いです。
あと、前にも言ったかも知れませんが、私は芸人じゃありません。」
「なら下忍かしら?」
「何か凄く『してやったり!』みたいな顔してますけど、師匠、ソレ全然面白くないですからッ!!」
「ソレよソレ! ソレなのよッ!」
うわ、五月蝿い人が口挟んできた。
「イナバパワードってば、えーりんの言う事にはいちいち反応するのに、何で私はシカトなの?
さっきなんて、えーりんと同じボケをやったのに!」
他人が二回も三回もやったネタを、その場でそのまんまでパクってる時点で、既に姫は芸人として失格だと思いますが。
……でも口に出してツッコミはしない。口に出すと、調子に乗るから。
「…………」
ふと気付けば、師匠が無言で此方を睨みつけている。
「な、何ですか?」
ヤな予感……
「……前々から思っていたのだけど、ウドンゲ、貴方、姫を軽んじてない?」
ギクリ
「姫の事をマイナスカリスマンだとか、ラスボスとは思えないとか、そう考えてない?」
ギクギクリ
「て言うかぶっちゃけ、
『て~んねんお嬢がリーダーじゃ 勝てーるワケねぇだろ始めから
一ぃ文にも ならーねぇ事 やら~ねぇ主義だがま~あいいか♪』
とか心の中で歌いながら、隠し撮りした姫の写真の額に『肉』と書くと見せかけて、
『お前なんて“肉”じゃなくて“にく”で充分だぜ!』みたいな事をしているんでしょう!?」
「イヤ、そこまで酷い事は考えてないですよ!?」
「……『そこまで』『は』……?」
しまった…!! 初歩的な誘導尋問に、見事に引っかかってしまった!?
「……ウドンゲ。どうやら貴方には、再教育という名の粛清が必要な様ね………」
「イヤそれ何処の独裁国家ですか!? 粛清の時点で死亡確定だし! 再教育の意味無いし!?」
「殺しはしないわ。ただ、一目でベテラン検死官すらも半月はまともに食事が出来なくる程の、
素敵な外見にさせっちゃたりはするけど。」
「ソレ死んでます! 絶対死んでますッ!!」
「ところがどっこい、それでもまだ生きてるのよねぇ、コレが♪」
「ソレはソレで凄いイヤ!!」
マズい。このままでは、粛清という名目で兎体実験の材料にされてしまう!
「やめてくださいですぅ、えいりんさまっ!」
ここで全く予想だにしなかった展開。まさか、てゐが私を庇ってくれるなんて……
ご免ね、私、あんたの事を誤解してた…!
「レイセンちゃんは、ひめのことをバカにしたりなんかしてないですぅ!」
「そうそう。」
「たしかに、ちょっとひめにたいしてつめたいところもあるですけど、
でもこころのなかでは、ホントにひめをそんけいしてるですぅ!」
「そうそう。」
「まあ、永琳様の事は、『外道変態(乳と態度が)でかレンジャー』だとか思ってれんけどな、こん素饂飩は。」
「そうそう。」
……アレ?
「なるほど、よぉく解ったわ、ウドンゲ(はぁと)」
ああ… うっかり正直に…
「貴方には、師を敬う心がどれほど尊いものか、シッカリと教え込まねばならない様ね。」
お願いですから、その前にまず貴方自身が、尊敬に値する人物になって下さい。
『美少女大好きソレ以外は皆実験動物』みたいなマッド保健医を敬うなど、普通の神経では無理です。
て言うか、狂っていても無理です。『狂気の月の兎』にだって、無理なモンは無理です……
「さあウドンゲ。貴方にはコレをプレゼントよ?」
師匠の手に握られるは、何故か練乳まみれの、チョッピリ黒ずんだ大根。
「何ですか、その、読者の九割以上がオチを予想できちゃいそうなくらい、判り易いアイテムはッ!?」
「練馬大根の植物生命体、『シャルル・ド・サンジェルマンⅢ世』ちゃんよ!」
「エベレストー」
「Ⅲ世!? Ⅰ世とⅡ世は!?」
「その辺りは、『新マン』の王様ザウルスと同じなのよ。」
「また若い子には解らないネタ!」
「彼女は一見ただの大根だけれども、色々動いたり実況したり出来るナイスガイよ。」
「アルプスー」
「何処で動くの!? 何を実況するの!!? つーか、『ちゃん』で『彼女』なのにナイスガイ!!??」
「頑張ってね、シャルル。」
「チョモランマー」
「ガン無視!? それと、蓬莱人形とか意識してるんだろうけど、
ソイツの場合、明らかにキモいって! 可愛くないって、その鳴き声!!」
「キリマンジャロー…」
「酷いわねウドンゲ。彼女はこれから、貴方の○○○の穴に入って、動いたり実況してくれたりするのよ?」
「師匠! ソレ伏字の意味があんまり無いです!! 『穴』とか言ってる時点で、伏字の意味が殆ど無いですッ!!」
「あら、『おくち』の穴かも知れないじゃない。」
「ソレはソレでノーセンキュウ!
何の因果で、練乳がけ生大根なんて至高で究極なメニューを食さなきゃならんとですか!?」
「敢えて言うなら、兎だから?」
「兎は人参! 大根違うッ! 色違うッ!!」
「安心なさい。口は口でも、上ではなくてしt
「ストップ師匠! それ以上は駄目です! 創想話的に許されません!!」
「大丈夫よ。このSSはもうすぐ終わりなんだから。」
「ハイ!?」
「つまりね、この後の展開については文章にせず、全て読者の方々の想像に任す、という事よ。
実際に『文章』という『形』にしなければ、後は各々が頭の中でウドンゲに(ピーッ)で(ズガガガガン)で
(ドキューン)な事をしようとも、ソレはあくまでも想像の範囲内だからOK、というワケ。
ああ、なんて完璧な理論武装…! 法廷でも勝つ自信が有るわ!
実際に行動に移さないのであれば、人は何を考えても構わないの。
と言うより、人の考えを、『心』を縛る事は、誰にも出来はしないのよ!
ああ、人間って、すばらしいなあ。これぞ正に生命賛歌よッ!!」
「ああああ謝れ! 荒○先生に蝶謝れッ!!」
「と言うワケで、『メイ・サンチー君』弐~拾参号機! ウドンゲを捕らえなさい!!」
「「「「「「「「「「「「オメデトー、オメデトー、オメデトー、オメデトー、オメデトー、」」」」」」」」」」」」
「まだ居たんかコイツら!?」
一瞬にして私の周りを取り囲むウリ科の植物ども。
マズい。このままじゃ、本気で色々尊厳とか貞操とかが大ピンチだ……!
「レイセンちゃんっ!」
西瓜包囲網を飛び越え、てゐが駆け寄って来た。まさか、助けて……
「さっきのやくそくどおり、てゐはてあしをおさえるやくをやってあげるDEATHぅ~★」
……くれるなんて微塵も思って無かったわよ!
あんたの本性くらい、こちとらイヤって程にガッテン承知の助よチクショー!?
こうなったら、(比較的)常識人の1.5人と0.5匹に助けを求め……
「プ、アハハハハ!」
「む、何だ、どうした、妹紅?」
「慧音ってば、鼻の頭に西瓜の種が付いてる~ゥ。」
「え、え、ウソ!?」
「慧音ってホント、真面目なクセに変な所で抜けてると言うか……」
「わ、悪かったな…」
「ま、そこが可愛いんだけどね。」
「…え…」
「ホラ、動かないで。今、西瓜の種を取ったげるから……」
「あ、チョッと……
………あ… ん……」
このバカップルどもがぁ~~ッ!!
海辺のアバンチュールだかアバンギャルドだかアバンストラッシュだか知らないが、ソレか? そーいう気分なのか!?
「酷いわ、もこタン! 私という者がありながら、そんな緑の魔法使いと……
あんなに激しくお互い(の命)を求め合ったというのに、アレは全て遊びだったの!?」
「アンタは黙ってろ――ッッ!!」
「アハ☆ やっとイナバマックスがツッコンでくれた~♪」
「ああウドンゲ、最後は…どうか、幸せな記憶を。」
「無理矢理、泣ける話ッポク締めようとしないで下さいぃ~~!!」
「さようなら。」
「助けて下さい! 助けて下さいッ!!」
「と言うワケで、GO! シャルル!!」
「ギラファノコギリー」
「何でいきなり昆虫名―――ッッ!!??」
“『何でいきなり昆虫名―――ッッ!!??』
それが彼女、鈴仙・優曇華院・イナバが遺した最期の言葉だった。
あの日、海に沈みゆく燃える様な夕日と共に、儚く、けれども、眩しく走り過ぎていった一人の少女……
私は彼女の生きた歴史を、生涯忘れる事はないであろう。”
参考文献:上白沢 慧音著「幻想歴史大全」巻之七より
とりあえず、地元ネタがワカりすぎるのでカンベンしてくれェッ……!(笑)
後、白玉桜ではなく白玉楼では?
でもってデスティニーイナバはしずかちゃくぁwせdrftgyふじこ
調べなくてもわかる
orz
…とりあえず、鈴仙に合掌…。
北陸っぽいネタは全スルーというか「え、千本浜?」とか思った俺は静岡県民ッ!
あとここにスイカの脳漿置いときますね。
要約すると、ほぼ元ネタが分かって、なおかつ面白かったと。デストロイレイセンか、気尽彷徨ウドンベインの出番はないかと、期待してみたり。
あんたアホだ。そして私もきっとアホだ。
そうか・・ウドンゲの部屋が海になった原因は ソロモンの指輪 ですか・・w
・・・・・なんで師匠持ってるの?
小ネタの選別に再考の余地がありそうですが、基本的にこういった馬鹿っぽいの好きです。
もう歳かな~
体は子供、頭脳はオヤジな萃香は笑えた。
全体的に笑えるのがいいです、ただちょっとだけ助走が長すぎたかなと。
最悪だw(褒め言葉
これにすべてを集約します。というかされます。元ネタわかんないのが残念。
ともあれ、ごちそうさまでした。ナイスジョブです。