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幻想郷霊夢騙し大会 二話

2011/07/10 22:12:28
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■文■

 これは一体どういうことだ!?開始から二時間、
これでもう30人以上、全ての嘘を見破っている…
こんなことが可能なのか?
 先ほどまで行列を作っていた参加者は皆散ってしまった…
おそらく霊夢の連勝を見て作戦を立て直しているのだろう。
嘘の内容よりも、誰よりも早くテントに入ることに集中していただろうから
霊夢の連勝をきっかけに、自分の嘘に自信が無くなったのだろう。
こうなるのは当然か、参加者にとってこの展開は予想外だったはず。
それは、私にとってもだけど…

■大妖精■

 やっぱり、皆霊夢にやられてしまっている。

「大ちゃん!テントの前の列が無くなったよ!早くいこう!」

 チルノちゃんはこの状況がわからないのだろうか?
何も考えずにあの中に飛び込むのは自殺行為だ。

「まって!今は駄目」

「ぶー…」

 チルノちゃんは頬をふくらませて座り込んだ。
さてどうしようか、霊夢が何をしているかは大体予想がつくけど…
ここはまだ勝負に出ない方がいいわね、チャンスは二回だし、行ってみようか。
 私は立ち上がった。

「チルノちゃん、行ってくるね」

「え?そんなのずるい!あたいには駄目っていったのに!」

「ごめんね、でもチルノちゃんはもう少し待って」

「うーん…分かった…」

 納得してくれて良かった。
 私は自分のポーチを開けてみる。中に使えそうなものがあるかもしれない。
紙、ペン、鏡、…トランプ!よし、トランプでいこう。
私は適当にトランプから二枚抜き取って、その二枚を確認する。
ハートの5とクローバーの10だ。
私はその内の一枚をポケットに入れると、テントに向かって歩き出した。

■霊夢■

 次は大妖精か…
誰が来ても私が勝つことは決まっている。
咲夜、レミリア、早苗、妹紅、アリス…
全員私に見破られ、無言で帰るはめになった。
中でもレミリアとアリスはすでに二回失敗してゲームオーバー。
大妖精…こいつも同じ道をたどるだろう。

「始め」

 さて、どんな嘘をつくのかしら?

「今、私のポケットにはトランプのクローバーの10が入っています」

「……」

「以上です」

 シンプルだな、つまりそのクローバーの10が入ってるか否か、ってことね
さて、どうだろうか…

「………………」

 !?

 これは驚いた、なかなかやるわね、こいつ。
読めないわね…一体どっちかしら?入っているか、入っていないか…
まぁ、いくら考えても無駄だわね、これじゃあ大妖精の目を読んだとしても
わからないし、嘘ということにしておきましょう。

「嘘だわ、クローバーの10は入っていない」

「ふふふ…そう思いますか?」

「終了!」

 大妖精がテントの外に出る… さあ、どうだ!?

「見せてあげますね、ポケットの中」

 大妖精は私に背を向けたまま、ポケットに手を入れた。
その手が引き出されるとき、大妖精は持っているだろう。
二分の一、その確率で私に勝つことができるトランプを。

 ポケットからトランプが取り出される。
トランプは…



 ハートの5!


「霊夢さんお見事です!クローバーの10は入っていませんでした」

 あぶないあぶない、確率は二分の一だったが…けっこう私も強運なのかもね。

■大妖精■

 何かがおかしい…
私がトランプを使ったことで、霊夢が勝つ確率は二分の一になる
はずだった。しかし、霊夢が焦った様子は見られなかった。
私の考えは間違いだった?それとも霊夢は、負けても良いと思っている?

「大ちゃん!どうだった?」

 考え事をしていたらいつの間にかチルノちゃんが隣にいた。

「ああ…駄目だったよ」

「じゃあ次はあたいだね!」

 とりあえず今考えられる事はあれだけだし、仕方ないか。

「うん、じゃあ次はチルノちゃんが行ってね」

「やったー!」

 チルノがそう言った後、周囲がざわつき始めた。
何だろうか。私は周りを見渡した。

「どうしたんだろう…」

「きっと皆あたいの活躍に期待しているんだよ!」

「そ、そうかな…」

 私は再びテントに視線を移す…

 !?

 テントに行列が出来ている!さっきまで3、4人ぐらいしか並んでなかったのに。
私はテントに向かって駆け出した、行列をよく観察してみる…
私が最後尾付近に目をやったとき、ようやく理由が分かった。てゐだ。
 最初のゲームスタートの合図と同時に、参加者達が我先にとテントに走り出したとき、
私達は様子見のため動かなかった。そして、てゐ…彼女も同じくあの時行動をおこさなかった。
そのてゐがテントに向かって動き出したのだ。参加者達は焦ったに違いない。
 てゐと言えば、相当な嘘つきとして有名だ。彼女に騙され悪戯をされたのは、
鈴仙以外にも大勢いる…
 皆は知っているのだ。てゐがどれほど上手く人を騙すのかを。
“てゐならば霊夢を騙すかもしれない”という不安が、参加者達を動かしたのだ。
どんなに上手い嘘を思いついても、先に霊夢を騙すものが現れてしまったら意味がないから。
 てゐは最後尾付近に並んでいる。しかし顔は余裕の表情だ。恐らく自分の前に並んでいる
参加者達は全員負けると確信しているのだろう。それは霊夢の強さを認めているということ、
霊夢の強さを理解していながらなぜてゐは並んでいるのか。
ニ回チャンスがあるから負けても大丈夫だと思っている?それとも…
見つけたのか?霊夢を倒す方法を。

■てゐ■

 私は見つけた、霊夢を倒す方法を。
この霊夢の不自然なまでの連勝…この流れを私が止める!
私は今までたくさんの人を騙した。でも、中には私の嘘を見破る奴もいた。
そういう経験を多くした私だからわかる。
嘘を見破るのが得意な人間は、一体相手のどこを見ているのか。
それは、目だ。
言うだろ?目は口よりもものを言うって。
 霊夢は参加者の目を読むことで嘘を見破っている。
嘘の内容はどんなものだろうと関係ない。ただ相手の目だけを見てればいいんだ。
人が嘘をつく時の、独特な目の動きをとらえる事で、それが嘘かどうか分かる。
霊夢はそれがずば抜けて得意だ。普通に嘘をついて勝てる相手じゃない。
 そこで私が考えた対策は、目を見せない事。
テント内では常にサングラスをかけているようにする事よ。
これで霊夢は私の目を読むことはできない。

 私の前で、列がどんどん短くなっていく…
思ったとおり、皆霊夢に負けているな。必死になって私よりはやく並んでも、
これでは意味がない。笑えてくるね。

 さあ、あと3人…私の出番はあと少しだ。

 あと、2人…

 あと、1人…

 さあ、今テントにいる奴が負けたら、私の出番だ!
来い…来い…来い…

「くっそおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 無念の叫びと共に、そいつはテントから出てきた。
そう、こいつも負けたのだ。これで、私の出番だ!
 ふふ…霊夢の困った顔が思い浮かぶ。そんな妄想をして、ニヤつきながら私はテントに入った。

 テントの中はテーブルと椅子二つ、そのうち一つは霊夢が座っている。
そして、端っこに立っているのは魔理沙と文。
 私は空いている椅子に腰掛ける。テーブルをはさんで霊夢と向き合う形になった。
正面の霊夢は無表情。眉ひとつ動かさない。
 私はサングラスを取り出すとそれをかけた。魔理沙と文は私が何をしたいのか分からないようだ。
だが霊夢、お前は気付いているはず、このサングラスによって、私の嘘を見抜けなくなったことに。

「開始」

 文が合図する。私はさっそく霊夢に仕掛けた。

「あー…ちょっと質問いいかな?」

 霊夢は答えた。

「いいけど、大丈夫?貴重な三分間が…」

「ああ、問題ない。実は鈴仙が大会をリタイアすると言ってね
 でも鈴仙は一回もテントに入っていないんだ。これじゃあ参加していないのと同じでしょ?
 だから一万円返金されないかな?もう鈴仙は名札を返却ボックスに入れちゃったんだ。」

 名札とは、この大会に参加するとき、受付で参加者全員に配られたものだ。
この名札をつけていないとテントには入れない。そして、すでに二回失敗して
ゲームオーバーになった者は、この名札を返却ボックスに返す。
 当然、鈴仙がボックスに入れたというのは嘘だ。この嘘を証明するには、返却ボックスの
中身を調べればすぐにわかる。

「無理ね、ちゃんとポスターに書いてあるでしょ?
 “返金はできません”って」

「そうかー…そうだよねー」

「あと、1分」

「おっとやばい、じゃあ、嘘言うよー 私の血液型はA型だ」

 さあ、見破れるかな?

「…まず一つ、鈴仙はリタイアしていない。名札も返却してない
 そして、あなたはA型じゃない」

 これは…驚いた。
まさか目を読まなくても見抜けるとは…
ふふふ、でもまだまだこれは想定内だ。

 こんなこともあろうかと、お面を用意していたのさ!
これをかぶれば、目だけでなく表情すらわからない。この状態で嘘を見抜くのは
かなり難しいぞ!

「霊夢、私の負けだよ。もう一回やらせてくれ
 チャンスは二回まであるんだろ?このまま続けてもいいだろ?」

 その時、文が口をひらいた。

「それについては問題無いです。ですが良いのですか?
 一回、作戦を立て直したほうが…」

「ふふふふ…大丈夫だよ、次は絶対見抜けない」

■大妖精■

 てゐ、遅いな…
テントに入ってから、8分ぐらい経ってるんだけど。

「大ちゃーん!あたいはやく行きたい…」

「ごめん、てゐが出てくるまで待ってて、もしてゐですら勝てなかったら
 たぶん私も勝てないから…」

「え?」

「もしてゐが負けたら、私リタイアするわ」

「えええええええええ!?」

「あ、てゐが出てきた!」

 テントから出てきたてゐは、なぜだかお面をかぶっている…
私はてゐの方に走っていった。

「てゐさん!」

「……」

 無言。まさか…

「てゐ…さん?」

「……」

 無言でてゐはうつむいている。…負けてしまったか。

「てゐさん、一体霊夢にどんな嘘をついたのですか?」

「う…うぇ……」

 てゐ泣いてる!?

■霊夢■

 結局てゐは駄目だったか。少しは期待をしていたんだが。
今の所、要注意すべきなのは大妖精か…


ガラララ…


 
 テントの入り口のカーテンが開く。聞きなれた音だ。
次は誰だ?妖怪か…人間か…

「あたいだよ!!」

 チルノか。
そういえばこいつは大妖精と仲が良かったな。少し探りを入れてみるか。

「あらチルノ、大ちゃんはどんな感じかしら?」

「……」

 ん?チルノの表情が変わった。何かあったか?

「大ちゃんは、諦めちゃった…」

 何?

「だから!大ちゃんの分まで、あたい頑張る!
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コメント



0.670簡易評価
4.80名前が無い程度の能力削除
名前変えたら?
16.70名前が無い程度の能力削除
チルノ…どこのにし○かすみこだよw
17.90名前が無い程度の能力削除
いいな、評価が低くても最後までやってくれよ!!
22.90名前が無い程度の能力削除
こういうの大好きです!続きをぜひよろしくお願いします。
23.100名前が無い程度の能力削除
実はラストのチルノのセリフは大ちゃん仕込みの嘘で、実際には大ちゃんはリタイアしていない。……という展開だったらとか邪推しちゃうテスト。
続きお待ちしております!
27.無評価名前が無い程度の能力削除
微表情使ってるとしても、『さとりが霊夢の思考と作戦を読む』『レミリアが英語で嘘をつく』とか、絶対に勝てるルールなんだがな。
こころなんて天然ポーカーフェイスだ。