『夏バテにマリアリが効くって本当ですか?』
1
「ほら、こんな投書があるくらいなんですよ。私の記者魂が真実を確かめろと轟き叫んでいるんです!」
射命丸文は唾を飛ばしながらいきまいていた。
魔理沙は額に汗をたらり、少しばかり引いている。
「それおまえが自分で書いたんじゃないのか」
「失礼な。捏造なんて少ししかしていませんよ」
「少しはしているのかよ」
「見解の相違ってやつですね。リトルかアリトルかの違いみたいな」
「知らん。知らん。だいたい私はな。アリスとはべつになんでもないぞ」
「仲の良い友人であり古くからの知り合いでもあるでしょう?」
「否定はせんがな。だいたいなんだマリアリって」
「マリアリとは、まあ正義ですね。我々の業界では通常、前に来る人物が攻めで後に来る人物が受けなんですが、ここ幻想郷では言いやすいように言ってるだけで攻めとか受けとかはあまり関係がないようですよ」
文は得意げに言った。
魔理沙はひとつ大きな溜息をつく。
「攻めとか受けとか、その時点で意味不明だな」
「あら、ご存知ないのですか」
「知りたくもない」
「そうですね。簡単に言えば、仲良くすることです」
「人間と妖怪が仲良くしたら夏バテにいいって? 因果律もビックリだぜ」
「仲良くします。かわいらしいふたりの様子にもだえます。甘ーいと叫びます。夏バテの疲れがふっとびます」
「いみふ」
「意味なんていつだって不明です。いいですか。世の中にあまねく存在する意味なんてものはつきつめていけば他人に伝達できるものではないのですよ。無限退行やら循環論法やら思考停止に陥るしかないんです」
「わかったから、そんなに唾を飛ばしてしゃべるな」
「わかっていただけましたか。では、さっそくマリアリしましょう」
「わかったというのは、おまえのせいで夏の暑苦しさが三倍増しになってるってことだよ」
「失礼ですね。こんなに薄着なのに」
スカートの丈は驚くほど短い。
魔理沙は膝下まであるというのに、文の場合はちょっとひらめかせただけで見えそうなくらいだ。
「そういうことがいいたいんじゃない」
「じゃあどういうことがいいたいんです」
「おまえは要するになんかアリスにちょっかいださせて、それを記事にするってことだろう」
「新聞記者が記事を書かなくてどうしますか」
「だとすれば、私のプライバシーは白日の元に晒されるわけだ」
「それがどうしたんです?」
「嫌に決まってるだろ」
「魔理沙さんが嫌がっていても、私は嫌じゃないですよ」
にこやかすぎる笑顔である。話が通じねえ。
「さてと散歩にでも行くか」
「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってくださいよ。お話しましょうよ」
「交渉は打ち切りだ」
「待ってください。では魔理沙さんのお望みのものを報酬としてお渡ししましょう」
「報酬?」
ぴくりと魔理沙の耳が動いた。
現世利益にはほとほと弱い魔理沙である。
この場合は文に恥ずかしい記事を書かれる危険はあるが、文の新聞なんて話半分にしか読まれていない。
報酬次第ではやってもよいかと思った。
「妖怪の山には実をいうと魔法の森にも生えていない珍しいキノコがあるんですよ。その名もハイパーウルトラスーパーデラックステングダケ。通常は禁制品扱いで人間に下げ渡してはいけないことになっているんですが、私はこう見えて一級キノコ狩りのライセンスを持っているんです」
「ここまでうそくさいと逆に真実味を帯びてくるな……」
キノコに目がない魔理沙としては、ハイパーウルトラデラックステングダケがどういうものなのか見てみたくはある。
考えるようにして口を開き、
「サンプルが欲しいな」
「サンプルですか。なにぶん普段は禁制品扱いなんでおいそれとは外に持ち出せないんですよ」
「証明できるようなものはあるのか」
「写真ならありますけど」
「見せてみろ」
「いいですよ」
そこには、縦長の写真にちょうど納まっている不可思議な色をしたキノコがあった。
なんと傘の部分が虹色に発光している。
「宝石みたいで綺麗だな」
魔理沙はキノコに見とれていた。
この世ならざる幻想の色をしたキノコは魔理沙のハートをわしづかみ。
絶対に欲しいと思ってしまった。
「では、引き受けてくださいますか」
「ああいいぜ。それにしても綺麗だなぁ……どんな効用があるのかなぁ……」
魔理沙はフヒヒと不気味に笑った。
2
「さて、魔理沙さんにはこれをお渡ししときましょう」
文が持ってきたのは手のひらサイズの板だった。鈍い鉛の色をしていて、中ほどには浅黄色をした妙な板がはまっている。
「なんだこれ?」
「これはポケベルという道具でしてね。そこにある電光掲示板に文字を出力することができるんです」
「ふうん。それで?」
「私がポケベルに指示を送りますから、そのとおりに動いてください」
「文字が流れるのか?」
「はいそうです。さすがに音を鳴らしたら気づかれちゃいますから、まめに確認してくださいね」
「あーわかったぜ。だが、アリスにいきなり襲いかかれとか言われても無理だからな」
「まあ相手がいることがですからね。アリスさんの気持ちをないがしろにするわけにもいかないですし、その点は柔軟に対応してくださって結構ですよ」
襲いかかるの意味は弾幕ごっこを仕掛ける程度の意味だったのだが、文はよくわからない誤解をしているらしい。
いちいち訂正するのも面倒くさいので話をすすめることにする。
「で、いったい何をすればいいんだ? おおまかなところは聞いといたほうがいいだろ。マリ……アリ?とかいうのがどういうのか、よくわからんしな」
「そうですね。説明しておきましょう。まず、魔理沙さんはアリスさんの家にいつものように遊びにいきます。それから、魔法の森の散策等のいわゆるデートをしていただいて、最終的には夏の暑さを吹っ飛ばすような仲良しの関係を見せつけていただきたいのですよ」
「仲良しという言葉に、なにか陰謀めいた臭いを感じる……」
「そんなことないですよ。それにキノコですよ。キノコ」
「ああ、そうだったな。あのキノコ本当にくれるんだろうな」
「もちろんですとも。魔理沙さんには後で採集場所をお教えしますから」
「本当だろうなぁ……」
「疑りぶかいですね。思考まで魔法使いになってしまうと人間のよさが失われてしまいますよ」
「人間のよさってなんだよ」
「信じることを美徳とするところですかね」
文は爽やかに笑う。
まあ――その言葉は確かに正しいのかもしれない。
妖怪が言ってることに限りない怪しさがあるものの。
「まあいいか。じゃあとりあえず行ってくるけどな。おまえは離れたところから観察してるわけか。部屋の中はどうするんだ。あまり近づきすぎるとアリスは気づくぞ」
「風を舐めないで欲しいですね。風は音を運んでくれます」
「盗聴か。ますます犯罪じみてきた」
「大丈夫ですよ。魔理沙さんの同意はあるじゃないですか」
「うーん」魔理沙は腕をくんでわずかに悩む。「ま、いいか」
結論はでたようだった。
3
「アリスー。いるかー」
ドンドン。
ぶしつけにドアをノックする。窓から侵入しないだけマシな方法である。
しばらく待っていると、ドアは音もなく開かれた。
ドアの上下には上海人形と蓬莱人形がくっついていた。
――自動ドアか。
魔理沙は内心感心しつつ、歩みを進める。
アリスはいつものようにソファに座り、人形の服を編んでいた。
「あら、いらっしゃい。今日は何の用かしら」
「べつにたいしたことはないぜ。なんかおもしろいことはないかなと思っただけだ」
「おもしろいことねぇ。魔理沙にとってのおもしろいことって結構限られていると思うけど」
「失礼な。私は多趣味だぞ。出不精のおまえと違ってな」
「紅茶飲む?」
アリスは気にせずに話題を切り替えた。
魔理沙も気にせずにソファに座る。アリスとは対置の場所だ。
「いただけるものはなんでもいただいていく」
「上海お願い」
スイーっと音もなく人形たちがカタマリになってキッチンへと向かう。
五分ほど待っていると、アリスらしい白いカップに香ばしい匂いがたちこめていた。
「ずずず」
「音を立てないの」
「音ぐらいいいじゃんか」
「蕎麦じゃあるまいし」
「あいかわらずアリスは細かいな」
「礼儀作法にはそれなりの理由があるのよ。礼とは元をただせば宇宙の理のことを指すのだから」
「星なら得意だけどな」
「星なんて宇宙の広さに比べたら小さな点みたいなものよ」
「でも綺麗じゃないか」
「ずいぶんと乙女チックね」
「べつに乙女チックじゃないだろ。綺麗なものが好きなのは普通だし」
「普通? 人間としての普通かしら」
「まあそうかな」
「それで魔理沙は乙女じゃないのかしら」
「え? 失礼な。乙女に決まってるだろ」
「やっぱり乙女チックじゃないの」
「むう」
うまい言葉が見つからず、魔理沙の頬が膨らむ。
アリスは我関せずといった様子で、紅茶をすすった。
しばらくは無言タイム。
魔理沙は少しからだを傾けて、エプロンドレスのポケットのなかにあるポケベルを覗きこむ。
『もっと せっきょくてきに』
――積極的にって
いったい何を積極的にしろというんだろう。
もっと話せってことか?
アリスのほうも話すことがなくなって、いまはぼーっとした視線で魔理沙の後ろを見ている。
チラっと視線をやると、上海がくるくるまわっていた。
「あー、そのなんだ。上海の自立化は進んでるのか?」
「そうね。可もなく不可もなくってところかしら」
「というと?」
「人形と人間の違いってわかる?」
「違いか? サイズかな」
「ティターニアは人間と同じサイズだったでしょ」
「ちょっと横長だったがな」
「試作型だからよ。実をいうとサイズの調整なんてたいした問題じゃないの。人間そっくりのサイズに創ることだって理論的には可能よ」
「じゃあ体温とか」
「体温だって付加することはできる」
「呼吸とか」
「呼吸も同じ。確かに余剰の機能なんでいらないようにすることもできるけど、つけくわえることは可能なのよ」
「ふうん。降参だ。わからん」
「あえて言えば目的意識かしら。人形は人間を模倣することを目的としているけれど、人間は人形を模倣しようとはしない」
「あいかわらず難しいことを考えてるな」
「魔法使いならこれぐらい当然でしょ」
「まあ人形はおまえの専門だからな」
『いっぱんじん が わかる はなしを』
あいかわらず注文の多い新聞記者である。
しかし、幻のキノコのためならいたしかたない。よくわからないがアリスと仲良くしないといけないのだ。そうしなければ夏バテで苦しんでいる人々が救われない。
「そういやアリス」
「なに?」
「この部屋。涼しいな」
「ん?」
「どうやって涼しくしてるんだ」
「空気を冷やしてるのよ」
「へえ。そんな魔法があるんだな」
「簡単そうに見えてわりと難しいのよ。持続力が必要だから」
「教えてくれよ」
「魔女は自分の研究結果をおいそれと他人に教えてはいけないの」
「暑くて死ぬぜー」
「ここは涼しいでしょう」
「そうだな」魔理沙はうなずいた。「じゃあ夏の間は毎日アリスんちに来ていいか」
「だ、だめよ。迷惑よ」
慌てたようにアリスが言った。
「そういうふうに言われると傷つくんだぜ。乙女だからな私は」
「私には私の予定があるのよ。ちょっとは考えてちょうだい」
「なんだよー。いいじゃんかよー」
「うっとうしいわね」
アリスはスクッと立ちあがった。トレイを持って、キッチンのほうへと向かう。マメな性格のアリスらしくカップを洗いにいったのだろう。魔理沙のカップはそのまま置いてあるあたり、気がきいているともいえるが、自分のことをいないように扱われたようで微妙な気持ちになってしまう。
魔理沙はその様子を無言のまま見送った。
『じれったいですね もっとなかよくおねがいします』
「けど、相手があんな調子じゃ無理なんだぜ……」
コツコツ。
小さな音に振り向いてみると、文が窓を叩いていた。
アリスがちょうどいないときに来るあたり、どこかの潜入捜査員のようだ。
「なんだ。ちゃんとやるべきことはやってるぞ。いつもと同じ調子だからな」
「魔理沙さんの話の仕方がちょっと自分勝手すぎるんですよ。もう少し優しくしてあげればきっとアリスさんも柔らかい反応を返してくれますよ」
「でもあれが普段のアリスだぜ」
「まあ魔理沙さんの反応が硬いから、アリスさんも硬くなっているってことは考えられます」
「硬いか?」
「硬いですよ。私が観察しているからでしょうけど、どうもいつもよりとげとげしさがありますね。もっと自己を解放してください。アリスさんのことが大好きだって気持ちを爆発させてください」
「好きって、おまえなぁ……」
頬が熱くなってくる。
そりゃ嫌いか好きかの二択でいえば、好きだろうけれど。
仲良くしたくないかといわれれば仲良くしたいけれど。
他人に言われたからそうするというのとは違うのだ。
それよりかはキノコのためということにしておいたほうが、魔理沙自身も心の安定が図れるし、実際、表層的にはキノコのためだと思い込んでいた。
なにしろ、アリスはいつだってクールで、魔理沙のことなんか頓着してないふうだったので。
こっちだけ本気だとなんだか負けた気分になる。
「まあともかくもう少し甘さ成分をだしていただかないと、キノコを渡すことはできませんから、よろしくお願いしますよ」
「でもあっちの反応が冷たいんだって」
「大丈夫ですよ。案外、心のなかで魔理沙さんがもっと優しく声をかけてくれればとか思ってるかもしれませんよ。いや、思ってます。まちがいないです。なにしろマリアリという言葉ができる程度にはあなたがたの相性はいいんですからね」
「だからなんなんだよ。そのマリアリって……」
キッチンから戻ってくるのを察知して、文はまたたく間に姿を消した。
さすが幻想郷最速なだけはある。
魔理沙は大きく息を吐いて、再びソファに座った。
「あらどうしたの。窓の外なんか眺めて」
「いやな。今日はいい天気だなーと思ってな」
「さっきまで暑くてヤダって駄々こねてたくせに」
「暑いのは嫌だけど、雨が降ってるよりはマシだと思うぜ」
「まあそうね」
アリスは小さくうなずいた。
その瞳はアイスブルーの色。
盗み見るだけで涼しげな透明な蒼色だ。
見ているだけでなぜか心拍数があがってしまう。
おそらくは魔法的な何かだろう。常時人間様を魅了しているなんて、さすがアリスきたない。
無言のままでいるのもなんだか心地悪かったので、魔理沙はジェット機で飛び立つかのように体を前のめりに倒した。
「あ、あのさ……」言葉をつかえさせながら「その外とか……」
「ん?」
「外とか行ってみないか」
「こんなに暑いのに? どこ行くの?」
「魔法の森を散策とかさ」
「湿度が最悪なことになってると思うんだけど」
「いいじゃんか。たまには外にでようぜ」
フゥと小さく嘆息をつくアリス。
しかし、白い肌にはわずかながら朱がさしているように見える。いや、魔理沙の体温が高くなって目がうるんでいるせいかもしれない。
――錯覚。錯覚。
アリスが私が散歩に誘ったくらいで嬉しそうにするわけないし。
そんなに簡単に崩れるような性格をしていないのだ。
いつだって真面目で、洗練されていて、ちょっとウィットの効いたユーモアを言ったりもするけど、実は不器用で。
くそ。
こうして待ってる時間がちょっと苦しいぜ。
魔理沙は心臓あたりを右手で抑えて、アリスの言葉を待つ。
「いいわよ。行きましょうか」
「お、おう」
すんなり話が決まったので、逆にどう対応したらいいのかわからなかった。
いつものアリスなら魔理沙の言葉には反発することも多く、論理で武装して魔理沙の言葉をくじくことが多い。
それなのに今日のアリスは妙に素直なのだ。
いや正確にはカップを洗いにいったあとぐらいからか?
どちらにしろ、これでひとつマリアリに近づいたのかもしれない。
「じゃあさっそくいこうぜ」
「まちなさいよ。外にでかけるなら少しは準備しないと」
「なんの準備だよ」
「私は人形遣いよ。人形たちを外に出すなら湿度に対して予防しなくちゃいけないでしょ」
「あー、今日は留守番でいいじゃんか」
「人形遣いが人形をもってなかったら単なる魔法使いじゃないの」
「べつにいいだろ。昔は使ってなかったんだし」
「なんとなく心もとないのよね」
「いざとなったら……その、私が……守ってやるぜ」
守ってやるのところは異様にちいさいものになってしまった。
唐辛子を食べたときのように、カァっと顔が熱くなる。
いや、夏のせいだ。夏のせいに違いない。
「きょ、今日は暑いわね」
「そ、そうだな。暑いな」
「今日は気分をかえて人形を装備しないで出かけてみようかしら」
「おお、そうしたほうがいいぜ。そのほうが夏バテにもいいらしいし」
「夏バテ?」
「こっちの話だぜ」
4
『みっしょん てをつなげ』
なんじゃこりゃと思った。
いきなりランクがあがりすぎである。
魔理沙は心のなかで頭を抱えた。
隣を歩くアリスは湿気むんむんの魔法の森のなかでも汗ひとつなく、なめらかな白い肌をさらしている。
人間の魔理沙は当然のことながら汗だくだ。乙女なので暑苦しくはないだろうが、白黒の服装がさすがにこたえる。
いや、それよりも――
魔理沙の視線はアリスの細い指先に集中していた。
人形遣いの指先は繊細で、象牙のように綺麗だ。
魔理沙の少ない語彙ではともかくもう綺麗だという一言しか思いうかばなかった。
なんだか触れるのが怖いという感覚。
しかし、逆にむしょうに触れたいという感覚もあり、相反する想いのせいか頭のなかがぼーっとしてくる。
「湿度高いなぁ」
「そうね。湖のほうにいってみましょうか?」
「それもいいけど、あそこは妖精たちがたくさんたむろってるからな。うるさいぞ」
「今日は静かに歩きたい気分なのね」
「そうだな。今日は……えと、うん。そうだよ」
ふたりきりがいいなんて言えないわけで。
それからあとはほとんど無言のまま森の中を歩いている。
魔性の森も昼間は比較的穏やかで、薄暗くはあるが、木漏れ日でわずかに照らされている。
魔理沙はアリスのわずかに後ろを歩いていた。
さきほどからずっとアリスの指先を注視している。
しかし、どう切り出せばいいのかわからない。
頭がぐるぐるする。
「あちぃ……」
「大丈夫? 魔理沙。汗すごいわよ」
「湿度高いからな。しょうがないだろ」
「ほら」
アリスは持っていたポーチから花柄のハンカチをだして、魔理沙の顔をぬぐった。
「むぅん」
顔をそむけようとする魔理沙。
アリスにぬぐわれるのは気持ちよくて、べつに拒むことではないのだが、綺麗なハンカチを自分の汗で汚すのがちょっとだけ嫌な気分だったのだ。
「ほら嫌がらないの」
「べつにお子様じゃないんだぜ」
「はいはい」
「それにしてもおまえさ」
魔理沙は話題を切り替えることにした。
「なに?」
「なんで汗かいてないんだ」
「そりゃ魔法使いですもの」
「そんなもんか?」
「そんなもんよ」
「あのさ……もしかしてほら、あれじゃないか」
「あれ?」
魔理沙はアリスの腕あたりを握った。それなりの決心をともなう動作であったのだが、アリスのほうは特になにも感じていないようだ。肝心なところでわりと鈍感なところもあるのである。
「ほらやっぱりな」
「なによ?」
「腕冷たいぜ。まるで人形みたいだ」
「魔法使いだからよ」
「そんなもんか?」
「そんなもんよ」
「ずるくないか」
「べつにこれが私の普通なんだからしょうがないでしょ」
「やっぱりずるいだろ」
「どうしろっていうのよ」
当意即妙の答えとはこういうことを言うのだろう。
何か言いたいことがあることを察して、アリスは腰に手をあてて聞いてきた。
しばしの沈黙。
アリスの顔をまともに見れない。
いまがチャンスなのはわかるのだが、さすがに手をつないでくれなんて恥ずかしすぎてなかなか言い出せるものではない。
『いまです』
――わかってるぜ。でも。
文に観察されていること自体はなぜか慣れのようなものがでてきてしまっていて、さほど意識はしていない。
暑くて死にそうで湿度が高くて不快感も強く、頭が混沌としてきたのもその理由であろう。
魔理沙の羞恥心は文に見られているということよりも、むしろ自分の内面に向けられている。
アリスと手をつなぐという行為自体が、すごく恥ずかしいのだ。
いや――
あるいはそうなることを望んでいる自分が恥ずかしい。
「もしかして気分でも悪いの?」
「ちょっと暑いだけだ」
「家に帰りましょうか。そのほうが涼しいわよ」
「あのさ!」
じたばたしてても始まらない。
ともかく大切なのは最初の一言だ。あとは流れでどうにかなる。
後先考えずに真っ直ぐ突っこむのが魔理沙らしい生き様である。
「なによ?」
「手、つなぎたい」
……結果として放たれた言葉は非常にシンプルなものだった。
ちょっと恥ずかしげに目を伏せている様は、なんとなく子どもっぽくすらある。
アリスはいつものように子どもっぽいわがままだと思ったのか、クスリと笑った。
「人をひえぴたクールみたいに扱わないの」
「でも、その……冷たかったし……そうそう古代エジプトではな人の体温のほうが気温よりも低かったから、人肌で涼んでいたこともあったんだぜ。だからべつに全然おかしくない。人類文化の正統な行使ってやつだ」
「なにそれ?」
でもうっすらと笑って、アリスは優雅に手をとった。
魔理沙は心底嬉しくなって。なんだこの感情は静まれ静まれと念じつつ、そうキノコだ、キノコが欲しくて嬉しかったんだと思いこむことにする。
嬉しさに舞い上がった後に飛来した感情は緊張だ。
案外不慣れなこの状況。
全身の神経が指先に集中して、自分が指になったみたいな感覚。
アリスの手はやっぱりひんやりとしていて俗世とは縁遠い世界に住んでいるみたいだ。
「すずしーぜ」
緊張してないと主張するために、あえて気安い言葉を言った。
「そうかしら。でもね魔理沙。魔法使いの関係は等価関係なのよ。つまり持ちつ持たれつね。いまのままじゃ私ばっかり魔理沙に利益を与えることになって不公平だわ」
「なんだよ。なんか欲しいもんでもあるのか。アリスが欲しがるようなもんなんてそんなに持ってないような気がするんだがな」
「そうじゃなくて……」
アリスは魔理沙と手をつないでいない方向に顔を向けて、しばらく言葉を探しているようだった。
アリスにしては珍しい思考時間。
「なんだよー」
「私の手と相対して、魔理沙の手は暖かいってことになるわね」
「ん。ああそうなるのかな」
「じゃあ、冬にカイロがわりになりなさい。それが交換条件」
「お、おう」
今日のアリスは少しばかりクールからはずれている。
それこそカイロのようにほんのり暖かい。
妙な違和感を覚えたが、これもたぶんいつもより自分が優しく接しているせいかもしれない。
自分が変われば相手も変わる。たぶん魔法の一番最初の原理と同じだ。
5
『きすをしましょう』
ブッと唾を飛ばすことになった。
ついに最高難易度のミッションがはじまったらしい。
――さすがにこれは無理だぜ。
恥ずかしいとかそんなレベルじゃなくて、なんというか――これってもう。
いやなにか考えがうまくまとまらなかったが、ともかくだめだ、これはだめ。絶対だめ。
できるわけがない。
「どうしたのいきなり」
「あー、なんか嫌な視線を感じてな」
「視線?」
アリスは怪訝そうに辺りを見まわした。
魔法の森は危険な生物も住んでいるが、いまは閑散とした田舎のペンションのような雰囲気である。ちょっと蒸し暑いものの、怪しい雰囲気はない。
もちろん上空には文が待機しているのだろうが、気配で悟られるほど近くにいるわけではなかった。
「誰かいた?」
「いやいないぜ。いるわけないぜ。こんなところ」
「そ、そうよね」
アリスはなぜか繋いだ手をしきりに気にしている。
やっぱりアリスもちょっとは恥ずかしいと思っているのだろうか。
いまさら離すタイミングもわからないので、とりあえず繋ぎっぱなしだ。
しかしキスは脈絡がなさすぎだろうと思うのだ。
いったいどんな理由からキスしたいともっていけばいいのか、まったく検討がつかない。
暑いからキスする。無理やりすぎる。
素直にキスしたくなったと言う。なんだそりゃ。変態か私は。
べつにアリスとキスするのが嫌いなわけではないが、うだるような暑さのなかでも残った理性というものがあるのだ。さすがにキスをしたことを記事にされるというのは具合が悪い。
もじもじするしかなくなる魔理沙。
アリスのほうもなんだかそわそわしているようだった。
「どうした? アリス」
「ん。べつに人形がいないと、索敵範囲が狭くなってやりにくいなと思って……」
「そうなのか?」
「ん。そう。最近は人形を扱うのに慣れすぎてたのかもしれないわね。なんだか目を塞がれている気分よ」
「悪かったな」
「べつに」
アリスは非難するつもりはないようだった。
不安というより落ち着かないといった感じのようだ。いつもは人形の腕を自分の腕としていろいろとやっているから、勝手が違うのだろう。
でも――
よく考えると人形たちに見られないでキスできるチャンスは今だけかもしれない。
文に見られるのと人形たちに見られるのとどちらが恥ずかしくないだろうか。
記事にされることを考えれば文のほうが恥ずかしいのは当然だが、人形たちにマリアリごっこをされたら、そちらのほうが死ねる恥ずかしさなのは自明。すでに何回かやられている。人形はアリスの真似をよくするのである。まるで人間の子どものように。
『はやくあくしょんを』
――なんでそこまでしなくちゃいけないんだ。
頭がパンクしそうだ。
太陽が脳みそのなかに入ったかのように暑い。
アリスのほうも動きが緩慢だし、やっぱり汗をかいてないから熱が内側にこもってるんだろうか。
アリスの息は熱っぽいんだろうか。
桃色の唇に視線が吸い寄せられる。
ふぁぁ。
「暑いな」
「そうね。ちょっと木陰で休みましょうか」
「ここら全部木陰じゃんか」
「まあそうだけど。じゃあそこで」
自然な動作で手が離れてしまった。
少し残念な気持ち。
いまさらながら手の汗が気になる。アリスが汗ひとつかいてないのに、魔理沙の手はべっとりだ。人間だからしかたないところであるが、少しだけ不満。
それは少女らしい綺麗になりたいという思いもあるが、他方でアリスを汚すことに対する申し訳なさのようなものもある。
魔理沙はスカートの裾で汗をぬぐった。
「家のなかみたいにはいかないんだな。歩行しながら涼をとるとかできればいいんだがな」
「体感的な涼しさならできるけど」
「え。できるのか?」
「うん。まあできるわ。やってあげましょうか」
「お願いするぜ」
アリスが人差し指を空中へ向けた。
くるくるとらせん状に風が巻き起こっている。緑色をした葉っぱが風に浮かんでいるからわかる状況だ。
「ひゅー。涼しいな。こんなんできるんだったら最初から頼んでればよかった」
「できなかったのよ。確信がもてなくて――いや、考えればわかりきったことだったんだけどね」
「え? 歩行中だからか」
「そうじゃなくてね。魔理沙……」
――あなた文に言われて来たでしょう?
「え?」
6
ドキーンと心臓が跳ねた。
いつバレた。どうしてバレた。そんなにわかりやすい性格をしているのか私。
魔理沙の額からだらだらと汗が吹き出ている。
アリスが目をほそめて、小さく嘆息している様が、断罪の一歩手前のように見えた。
「ご、ごめ……」
「いいえ。べつに謝らなくてもいいの。ほら、いまは風を起こしているから文には聞こえないはずよ。普通に話しているようにしなさい」
「う、うん。わかったけどさ――」
魔理沙は大きな木に背を預けるようにして、顔を横に向ける。
アリスはなにもかも了解しているようだった。
「なあアリス。べつに文に言われたからってわけじゃなくてだな……えーっとなんて言えばいいのか」
「ハァ。ずいぶん恥ずかしい場面を見せることになっちゃったわね。文脈がわからなければどうとでもなると思っていたのが甘かったわ」
「文脈?」
「魔理沙。あなた文には何をあげるって言われたの?」
いきなり話をふられて魔理沙は面食らう。
「え、七色に光る世にも珍しいキノコだぜ」
「そう。残念ながらそのキノコは存在しないかもしれないわね」
「え、嘘だろ。というかどういうことなんだ」
「相手は最速の天狗、普通に追いかけても逃げられるか。でも、最後のキスの瞬間にはきっと文もカメラに収めたいはず……」
「んん?」
アリスは既に魔理沙のあずかり知らないところで猛烈な計算をおこなっているようだ。
なんだか置いてきぼりをくったようで、ちょっとだけしょんぼりしてしまう。
「そういうことか。わかったわ。魔理沙」
「なにがどうわかったのか説明してほしいものだな」
「普通キスをするときどうする?」
「えー、顔を傾けてだな」アリスのぷるんぷるんな唇に視線。「目を閉じて――」
「そう。目を閉じるのよね。だから気づかれないとふんだんでしょ」
「な、なるほどな。よくわからんが、確かにキスの瞬間は近づいてきてもわからないかもしれないな」
「これで謎はすべて解けたわ。じゃあ早速、文を捕まえましょう。今日の取材の件でたっぷりとオハナシしないといけないわ」
「お、おう……」
有無を言わせない迫力とはこういうことを言うのだろう。
アリスの無言の強制に魔理沙はうなずくしかない。
「じゃ、さっそくキスするわよ」
「ちょ、ま、なにをいってるんだ」
「キスシーンをカメラにおさめにくるはずだから、その瞬間をつかまえるの」
「そりゃわかるけどさ」
「じゃあ、風の魔法を解除するわね。適当に話はあわせなさいよ」
「……おう」
甘い雰囲気なんてかけらもない。
そもそも文のことなんか魔理沙にとってはどうでもよかった。文をつかまえなくてもべつによかったし、キノコももういらないと思っていた。べつにもらえるならもらってもいいけれど。
そう――言ってみれば、もらえるものはもらうというのが魔理沙のスタンスなので、キスだろうが手をつなぐことだろうが、もらえるものはもらっておきたかったのだ。
「なんか違うんだよなぁ」
「ほら、準備OK?」
「おっけ。まあいつものことか」
よく考えれば異変の端緒をもってくるのはアリスのほうなのである。
魔理沙もそれが楽しいからアリスにつきあっているのだ。
アリスが風の魔法を解いた。
「どう涼しかったでしょ」
「もう終りか」
「わりと疲れるのよこれ」
アリスの目が『言え』と言っている。何をかはなんとなく察することができた。これも長いつきあいだからできることだろう。文の発破をかける言葉なんか問題にならないほど強力だ。
魔理沙が重い口を開く。
「じゃあ、魔力供給しようか?」
「どうやって?」
「魔力供給っていったらキスだろ。知らないのか」
「へ、へえ、そうなの。知らなかったわ」
頬がイチゴケーキのような色になっているのは演技なのだろうか。
――プロ並だぜ。それ。
魔理沙はキスするといっただけで、頬から発火しそうなほど恥ずかしいのに。
アリスだけクールなのが悔しい。とても悔しい。
「まりょくきょーきゅーしちゃうぜ」
「し、しかたないわね。スマートにできないのは不満だけどしょうがないわ。あなた人間だものね」
「でも――アリスと仲良くしたいってのは本当なんだぜ」
アリスはすっと目を閉じる。
ドキドキドキドキ。
心臓の音が耳に届く。
このまま心不全になって死んでしまうんじゃないか。
こんなの演技にすぎないのはわかってるし、アリスにはそのつもりなんて毛頭ないのもわかっている。
けれど。
魔理沙はもらえるものはもらっておきたい。
文がどこからか見ているとかカメラを構えているとか、そんなことはもはや意識の外においやって、魔理沙はアリスの口もとに一気に迫った。
柔らかな感触。
すーっと目をあげると、そこには見知った顔。
「ホーライ」
「なんで?」
蓬莱人形であった。
次の瞬間にはカメラのフラッシュがたかれた。
「あ、あやや。あともう少しでフェイタルフレームだったんですがね。まさかアリスさんの人形に邪魔されるとは思いもしませんでしたよ」
「おあいにくさま。あなたがキスの瞬間を狙ってたのはお見通しだったのよ」
「あやっ。こんにちわアリスさん。奇遇ですね。こんなところでお会いするなんて、奇妙な偶然もあったものです」
「残念ながら魔理沙から既に話は聞いてるわ」
「魔理沙さん。裏切りましたね」
文はたいして緊迫感のない声で言った。
「べつに裏切ったわけじゃない。アリスが勝手に気づいたんだよ」
「ふむ。そうですか……」
「今日の取材はちょっと不公平なのよ。すべての記録を破棄することを要求するわ」
「魔理沙さんにはきちんと同意はとったんですけどね」
「幻のキノコでしょ。それって本当に存在するの?」
「しますよ」
「物理的に存在するのかと聞いてるの」
「うぐ。まあ世の中広いですからね。どこかには存在するんじゃないでしょうか」
「そう。やっぱりそういうことなのね」
アリスは文をにらみつけていた。
「どういうことなんだ? あのキノコはきちんと写真に写ってたんだぜ? 捏造にしてはよくできてたけどな」
そもそも捏造の技術が未熟な幻想郷である。
写真に写ったものの信用性はそれなりに高い。
ただし例外がある。
「念写を除けばね」
「念写!? まさかはたてか!」
「そういうことよ」アリスは自分の服のポケットからポケベルを取り出して文のほうへと放った。「あなたからはたてに返しておいて」
文はポケベルを受け取る。
アリスからはたてへ?
つまりそれって。
「あやや。バレてしまいましたか」
「魔理沙の様子を見ていれば、すぐに気づくわよ」
「仲が良いことですね。微笑ましいですよ」
「あんたたちほどじゃないわよ」
アリスと文のやりとりを聞きながら、魔理沙はなるほどと思った。
そもそも最初の違和感は文のポケベルだ。香霖堂でそういった機械のこともそれなりに聞いている魔理沙はその機械が確かケータイとか呼ばれる機械を通じて通信することを知っていた。文自身はいったいどうやって通信しているのだろうと思ったのだが、どうやらはたてにケータイを借りたか、あるいは近くにはたてがいるかしたのだろう。
遠方から狙い撃ちすることができない魔法の森でも、はたての念写なら楽々撮れるし、文のほうは風で音を拾える。ふたりで協力すれば映像と音が同時に取得できるのだ。
「って、それだとあのキノコは念写で摂ったはたての妄想か!?」
そうだ。そうに違いない。
あの写真は文のいつもの写真とは違って『縦長』だったのである。
「おそらくね」
「しかし、魔理沙さんもアリスさんもふたりともそれなりに同意していただいているんですから」
「あのさ」魔理沙がおずおずと口を開く。「アリスは何をもらう約束だったんだ」
「人形の材料よ。本当にあるのか怪しいもんだけど」
「そちらはあるんじゃないかと思いますが」
「どちらにしてもダメよ。魔理沙の欲しいものが手に入らないんじゃ、結局フェアじゃないわ」
「最初は自分のことしか考えてなかったんでしょうに」
「私からしてみれば、単にはたての妄想かもしれない写真が掲載されるだけという予定だったのよ。けどもしもあなたとはたてが二人同時に同じ内容の記事を掲載したらどうなるかしら」
「そういうことか、信用性が増すってわけだな」と魔理沙。
「普段対立しているふたりだけにね」
「うむむ。そこまで見破られてしまってはしかたありませんね。もはや記事は完成間近なんです。引きこもりのはたてはともかくとして私はあなたがたに捕まるほど遅くはありませんよ」
「もう遅いわ。どうしてここに蓬莱がいると思うの。人形は既に周りに待機している。逃げられはしないわよ」
「空を飛んで逃げればいいだけのことです」
「木で覆われたここでいつものように速く飛べるといいわね」
「記者魂を舐めないでくださいよっ!」
文は目にもとまらぬ速さで上昇をはじめた。
このまま木々で覆われた層を脱出されては、必ず逃げられてしまう。
「魔理沙!」
「わかった!」
アリスの声に魔理沙はうなずく。
手と手をとりあって、ターゲットロックオン。文の遠ざかる背中をとらえた。
永夜のときに編み出された必殺の技。
――マリス砲。
魔理沙のマスタースパークを遙かにしのぐ威力を持つ極細の光線に貫かれ、文はピチューンした。
7
はたてはずっと自室にひきこもってるだけだったので、おそらく時折念写でこちらの様子をうかがっていることが推測できたから、大きめのプラカードに『いま、会いにいきます』と書いて精神的に追いつめることに成功した。自室にいるはたては暗い部屋のなかでひとり毛布をかぶって震えていた。まあそれも引きこもりが祟ったせいなのかもしれないが。
ともあれ、取材の過程で撮られた写真はすべて破棄させて、この件はすっきりと解決した。
いま、魔理沙はやっぱりアリスの家にいる。
「ふぅ生き返る。アリスの家は涼しくていいな。夏はアリスの家に限るぜ」
「でも最近は節魔しようかと思ってるのよね」
「節魔ってなんだよ節魔って」
「ちょっと温度をさげすぎてた気がするのよね。あまり冷えすぎると冷房病になっちゃうわよ」
「でもな、今年の夏の暑さは人間にとっては勘弁してほしいレベルなんだよ」
「人間は不便ね」
「だから、もっと涼しくしてほしいぜ。温度下げろ」
「だめよ。節魔中なんだから」
「だったら……、まりょくきょーきゅーすればいいじゃないか」
「魔力供給? ど、どうやって?」
少し目が泳いでる気がした。
今度ばかりは演技ではないはずだ。
魔理沙は涼しい部屋のなかでなぜか体温があがるのを感じながら口を開いた。
何を言ったのかはわからない。
盗撮趣味の天狗たちは、今日のところは夏バテのせいかお休み中だったので。
おいしい話でした、ごちそうさま。
遠くのものを写し出すとか、そういうことは出来なかったと思いますよ。
あとマリス砲発射シーンも。ありありと想像できたわ、二人の動きが。
それと、はたての念写の件ですが、「文のカメラでプラカードを撮らせた」で
解決できるかと。
そして続きはまだですか!?
この初々しい関係がしばらく続くのかと思うと夏バテもふっとびますよ!
カップリングに第三者を介入させるなど面白かったです。
それはそうとアリスの感の鋭さと、魔理沙との距離感がうまく表現されていて楽しかったです。
また今後さらに暑くなるのでに夏バテ対策作品や冬に寒さ対策の作品を期待しています。
追記
上海、蓬莱 GJ!
ニヤニヤさせてもらいましたw
暑いし口の中は砂糖まみれになるしどうしてくれるしw
それにしても、だれかが写真に撮って、はたてが念写したという、世界のどこかにある幻のキノコ、どんな味がするんだろう…?
もっと涼ましてください。お願いします。
これはいいマリアリ。
だがまだ足りないんだぜ。
そこかしこにネタが散らばっていて
読んでいてニヤリとしましたよ。
面白かったです。