Coolier - 新生・東方創想話

Aberrancy Shadows

2011/06/30 16:54:39
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注意! 

・レミフラレミです
・多分R15です
・キャラ崩壊を含みます
・るなてぃっくです
・ちょっとえちいぜ!


 それでも良ければどうぞ










 何て、か弱い生き物だろう。始まりを告げる時計の音が響き渡る中、私は手を触れて、そう思った。
 身体は華奢で手足は片手で折れそうなほど細く見えた。私と同じ不吉な紅い月を不安に揺らして草食動物のような可愛らしい動きで私の周りをちょこちょこ歩く歩き方は水面に映る像のように不安定だった。
 この小さい生き物は私や他の人がいなくても生きていけるのだろうか。いつだったか、ぼんやりとそう思った。
 その時、小さな生き物は私の先に立って綺麗な金色の月光に煌めく蝶々を追い回してよたよたと歩いていた。いや、蛾だったかもしれない。あまりにも毒々しい色合いをしていたから視界に入れぬように目を反らしていたから良く覚えていない。
 兎に角、私はふらふらと気儘に歩くそいつに軽く嫉妬したのだ。この生き物の為に私の時間が削られ、この生き物の為に私の労苦が費やされて無為に消費されていると、不意にそう思って腹を立てた。ある意味ではその怒りは正当だったろう。
 どうしてこんなちっぽけな生き物の為に心配しなきゃいけない。私は、私なら今野に放られても生きていける。でもこいつは違う。親のいない子兎のように死ぬしかないんだ。
 だから私はそいつからわざと目を反らして足を止めた。小さい生き物は後ろに気を払わず、私がついてきているものと信じてる足取りでふらふらと歩き続けた。私は目を閉じた。
 目を開くとうざったい奴はいなかった。ざまあみろ、少し気分が良くて月を見上げてひとしきり笑った。
 さあ、帰ろう。そう思った私がしたのは、直ぐ側にいる筈の小さな生き物を探す事だった。頭が凍り付く。自分は一体何をしてるのだろうか。あんな弱い生き物を迷子にして何が面白い。
 私は馬鹿だ。
 必死で探して、道を逸れた林の中、血塗れのあの子を見付けた。何の血だかは分からない。どうでもいい。無事なら何だっていい。私は口の中で不義理を詫び、不思議そうな顔をする彼女を壊れないようそっと抱き締めた。
「ねえ、どうしたの? お姉様」
 彼女は笑っていた。
 姉である私の事をどう思っていたかは一向に分からない。嫌いでないといい。せめて、そう信じたい。私は姉らしい事はしてやれなかったから。
 あの子はおままごとをしようと言い出した事がある。彼女が『姉役』で私が『妹役』だった。あの子が、それに何の意味があるのか私には遂に解らなかったが、地下に閉じ籠る前の話だ。
 お姉さんぶりたかったのかもしれない。あの子は彼女なりに『姉』を演じていたけど、それはどう見ても私だった。不真面目な私と違っていっぱい本を読んでいたから知識不足ではない。彼女の中の『姉』がイコールで私『レミリア・スカーレット』であった、というだけだろう。
 実を言うとかなりからかいがいのある姉だったので、あの子が何かするたびにおちょくって反応を楽しんでいた。
 お化粧ごっこをするとあの子は言ったが道具は無く、彼女は二人に血を振りかけた。乾きかけた血がぬるぬると滑って気持ちが悪かった。それにあの子の白い肌に赤黒い血がこびりついていて、見ていてなんだか痛々しかった。
「ちょっと、お姉さじゃない、レミリア。痛々しいなんて失礼じゃない? せっかく綺麗にしてあげたのに。お礼の一つくらい言いなさいよ」
 少し拗ねて彼女は言った。その時も笑っていた、と思う。
 あの子は気高く、毅然とした、人間不信者の、躊躇い無き、狂人だ。私と違って翼には力が宿り、敵と見ればその手には躊躇も容赦も無い。
 地下で何をしていたのか久しぶりに、本当に久しぶりに顔を見た。彼女は私との距離が分からなくなったみたいに、ふらふら定まらない眼で私を見ていた。
 私も分からなくなっていた。あの子がこっちを見ると私は別の方を見て、あの子がそっぽを向くと私は力無く手を伸ばした。指先はいつも宙を漂って、どこにも触らぬまま私の胸元にむなしく帰った。私は未だに、あの子がか弱い生き物のような気がしてならないのだ。
 お願い壊れないで、と思いながら触れられず、こっちを向いて笑って、と願ってもあの子は私を傷付けるのを怖がって近寄らない。
 あの子は自分の能力を怖がって閉じ籠った。姉の私が宥めて安心させてあげなきゃいけなかったのに、嫌な結末を先送りにしたくて、自分では力不足なのだと思おうとした。巫女や白黒魔法使いが来なければずっとそのままだったかもしれない。
 私はフランのことが好きなのに、近付くことも出来ない。
 先日、地下の彼女の所に行ってみた。勇気のいる事だった。彼女はぼろぼろのぬいぐるみを相手にいつか見たようなおままごとをしていた。
 それは、私の臓腑を抉るには十分な光景だった。でも、泣いて喚いて醜態を晒す事だけはしたくなかったから、後ろ手に左手で掌を引き裂いた。
「フラン、そんなぼろぼろのぬいぐるみで遊んでるの?」
 自然とからかうような、責めるような口調になった。新しいのくらい言えば直ぐにあげるのに、と。
 彼女は何も言わない。何も言わない。
 苛立ちが募って、近くに行ってぬいぐるみを奪い取った。子供じみた幼稚な行動なのは分かってる。でも私もフランも、もう子供では無い。相応に意味がある行為だとは思ったからしたのだ。
「っ返して、邪魔をしないで! それは私の!」
 端的に怒りをぶつけられて怯んだが、私はぬいぐるみを手に立ち去ろうとした。後で、ぬいぐるみの解れた所を直して強度も上げた上で返してあげようと考えてはいたのだけど、フランがあまりに激しく反応したから説明を省いてしまおうと悪戯心が芽生えた。不謹慎な事に。
「お姉様、それは持ってかないで! だって、それじゃあ、ここには誰も残らない!」
 あのか弱い生き物にあんな運命を押し付けたのは誰だ? 運命は彼女に何を背負わせた?



  ―
 だから、私はこうしてる。
「な、何なの? 私が何かした?」
 不安に揺れる瞳を見つめ返す。昔と変わらぬ深い紅が二つ、空中で絡み合って流れる。
 どこからか、終わりを刻む時計の音が響いてくる。私は軽く息を吐いて、フランの額に口付けた。壊れ物を扱うように、優しく。自分の状況が分からず視線をさ迷わせる彼女に無限の愛情を感じながら、私はくすりと笑った。
 状況は実にシンプル、私はちょっと彼女を喰べてしまおうと思っただけだ。狂ってる、自分で理解してる。私は本当はかなり前におかしくなっていたのかもしれない。彼女が分かり易い狂人であるなら、私は分かり難い狂人だ。姉妹なら実にお似合いだ。狂った姉妹ならば狂ったまま暮らせるかもしれない。本当に私が狂ってるかは関係がない、私が狂っていると自覚していれば。ああ、でも私は彼女を喰らってしまいたい。
 手の指の一本一本まで拘束されて全く身動きのとれない彼女を安心させる為、笑いかける。それで彼女は驚きで目を見開いた。
「お姉様? 本当にどうしちゃったの?」
「別にどうもしないわ。少し喉が渇いただけ」
 少しどころか熱情に身を焦がされ喉は干上がり、どうしようも無く渇いていた。切実に、彼女が欲しいと思う。思考が上手く回らなくなって辛い。
「大丈夫、貴女には私がいるから。心配する事なんて何も無いのよ」
 抱きすくめるように顔を寄せる。そっと唇を重ねてみると、彼女は逃げようと身を捩らせるが拘束されていてままならない。ぐっ、と押し付けるように身を寄せて、私と彼女の間の隙間を無くそうとしてみた。
 甘い体臭と染み付いた埃とカビの匂いを吸い込んで、舌で柔らかい彼女の唇を舐めた。吃驚して離れようともがく彼女を押さえ付けて舌を深く入れる。
「――――――――っ!!」
 彼女は言葉に成らぬ声を上げた。悲鳴じみてはいたが、歯の隙間から口内に侵入を果たして彼女の舌に優しく触れるとそれもおさまる。
 可愛いな、本当に可愛い子だ。恐る恐る押し返してきた彼女を捉えて捕まえる。彼女と私が触れる度に電撃のように快楽が走り、彼女と私がキスしてるという事実に身悶えするほど快楽を感じる。彼女の目もとろんとしていて明らかな快楽に濡れていた。
 歯の一本一本をなぞるようにして口内を蹂躙する。ふと、相変わらずの悪戯心が芽生えた。舌先で彼女の鋭い牙に触れて、腹の辺りを押し付ける。鈍い痛みと共に牙が食い込み、血が溢れだした。
 自分の血なんて不味いだけだ。それでも彼女はいかにも旨そうに私の舌を吸った。乳飲み子にお乳を与えるように、唾液と交ざった血を注ぎ入れる。
 痛みの所為で過敏になった舌を逆に絡め取られ、一対の牙に刺し穿たれた。彼女は早くも塞がりかけた傷口の隣に穴を二個開けて、血を飲んでいた。くぐもった唸り声が漏れる。吸血の際の背信的快感に襲われ、慌て離れようとする。
 補食側が喰われてどうする。腰砕けにならないよう気を張りながら舌を引き抜こうとするが、がっちりと食い込んだ牙は簡単には外せない。その間もフランはこくこくと喉を鳴らして私の血を飲んでいる。
 なんとか離れた。激しい動悸を御せず、胸元を押さえる。彼女は酷く静かな瞳で私を見ていた。透明な、何の感情の無い眼。ぺろりと唇を舐めて、不意に彼女の瞳に熱情が入り込む。私を見つめて、薄く笑う。
 引き摺られてはいけない。気を確かに。口を一文字に引き結び、また近付いた。『妹』の幕を引くのは『姉』の役目、だからあの子に終わりを告げるのは私の役目。
 若干の警戒をしながら、彼女の首を傾けて頸を晒す。固唾を飲んで、そこに噛み付くのを夢想した。彼女はもはや暴れたりしたりはせず、こちらを観察するように私を見ている。
 首筋に口付けてフランを拘束具ごと抱き締める。嫌な予感がするので彼女に噛み付かれないよう気を付けて。
 本当にいいのかな、とちょっと躊躇う。本当に喰べてもいいのかなと、彼女が死んだら私は生きてられるのかなと。
 迷いを振り切って、鋭い牙を剥き出しにして頸に突き刺す。彼女の身体が反動で跳ねた。肌を食い破って深く食い込ませる。ずぶりと鈍い音と共に大量の血液が溢れ出す。口から零れそうになるがなんとか抑えた。
 恐らく、私が今まで飲んできた中でも一番美味しい血を、何かに憑かれたかのように貪る。一滴残らず飲み干してしまおうと。吸血に伴う快楽に流されながらも、彼女は私を見ていた。深く突き入れる度に矯声を上げても目を放す事は無い。戦慄した。どうして命を奪う相手をそんな静かな瞳で見つめられるのだろうか。
 熱に浮かされて私を何度も呼ぶ彼女の髪を優しく撫でて極上の紅を嚥下した。飲み干してしまいたいのに少食の私ではやはり厳しい。既に満腹なのにまだ満足できていない。もっと欲しい。のに、私はいつの間にか口を離していた。彼女の首筋を血がたれる。
「―――――――――ふぅん」
 バギン、と有り得ない音がした。金属をねじ曲げる、不快な音が。恐る恐る視線を上げると、彼女は実につまらなさそうに私でも脱出は不可能な筈の拘束具を引き千切って、自由な姿で私の前に立っている。優しげな微笑を浮かべて。
 有り得ない。有り得ない。そんな簡単な話では無い。そんな簡単に逃げ出せるのなら、何故彼女は今までそこに甘んじて捕らえられていたのか。
「つまらない、姉妹なんだから思考の行き着く先なんて一緒でしょう? まあ、私はお姉様を喰い殺そうなんで思わないけど、こんな拘束に意味は無い。死にたくはないけどお姉様に私を殺せるとも思えない」
 声は驚くほど冷たい熱に侵されていた。私と同じ不吉な紅い月の眼の色が可笑しく笑って、拘束されてはいないのに動けない私を抱き寄せる。
「ねえ、私はお姉様を傷付けたくなくて触れなかったの。でもお姉様の方から来るのなら、私は、我慢しないわ。私は貴女が欲しい」
 口付けは一瞬で、牙は迅速に突き立てられた。彼女は私が意識を無くす最後まで笑っていた。
 儚い希望は無に帰り刹那に宙返り。それでも、彼女と私が笑っていられるなら何でもしよう。
 それが例え全ての終わりだったとしても。
どうも、虎です
元曲がありますが分からなければそれでもいいです

俺の嫁がいっぱい書けてとても幸せだけど
これはこんな所に投稿しても良かったのだろうか…

前回言っていたシリアスものに仕上がっている、といいな
タイトルの「Aberrancy」とは常軌を逸した状態や状況の事だそうです
よく分かりませんが

ここまで読んでくれてありがとうございました
できれば前作もどうぞw
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コメント



0.380簡易評価
4.60名前が無い程度の能力削除
原曲を私は知っている気がしました。
だけどこれは長い部類に入るのかな、と。

ま、なんていうか私はこんな感じは好きですよ。
5.80名前が無い程度の能力削除
懐かしい感じだった
こういうレミフラは
6.80奇声を発する程度の能力削除
何だか良いわぁ、こういうの
13.100名前が無い程度の能力削除
好きです