「これで、私の計画は成し遂げられた」
そう言って、美鈴は笑った。
「何がおかしいんですか?」
仰向けになって倒れている美鈴を見おろしながら、咲夜は言った。
「負けたのはあなたです メイド長…いや、美鈴。
館から去るのはあなたなんですよ」
しかし、美鈴の口元は緩んだままだった。
「これでいいのよ、咲夜
あなたを追い出す計画… あれは、嘘なのよ
本当の計画は、わたしが負けて、あなたをメイド長にすること…」
「え?」
「あなたにはひどい事をしてしまった…ごめんなさい
私の誕生日、あの日の夜あなたが来たこと…私は知っているわ
メイド妖精から、聞いたの あなたが私のためにプレゼントを用意しているって
あの夜私はわざとあなたを傷つけて…」
「…嘘…どうしてそんなこと…」
「ずっと思っていたの、私はメイド長に向いていないって
私は、仕事もまともにできないし、料理だって下手糞だし、
部下のあなたに…いつも迷惑をかけて…
だから、このままじゃいけないって思ったの
私みたいなのが上に立っていたら、他のメイド達が皆駄目になっちゃう…
それに比べてあなたは、仕事もよくできるし、責任感もある
あなただけなのよ…私を起こしてくれるのは、他のメイドは皆
見て見ぬフリをしていた…
だから、あなたの方がメイド長にふさわしいって思ったの」
咲夜はうつむいたまま黙っている。
「お嬢様に頼んだわ、私をクビにしてもかまわないから
咲夜をメイド長にしてくださいって…
でも、お嬢様は許してくれなかった 自分が一度決めたルールを
無視する訳にはいかないって… ふふ、お嬢様は頑固だから困るわね
それで、この方法を思いついたの…
わざと咲夜に恨まれて、この戦いに導く…
そして、私が負ければ… あなたをメイド長にできる
お嬢様にこの計画を話したら、それに協力すると言ってくれたわ
きっとお嬢様も思っていたんでしょうね…
私はメイド長に“ふさわしくない”って…
あなたは人間、私達より早く枯れ果てる だから、この計画の実行は
急ぐ必要があった…
こうでもしないと、あなたはきっと…私との戦いを受けてくれないから…」
「あたりまえじゃないですか!!」
咲夜は叫んだ。
「こんなのは無効ですよ!だってメイド長は…
わざと負けたんでしょう!?だったら無効です!
この戦いの目的に反します!!」
「私が…いつ手を抜いたと言ったかしら?」
「え?」
「私はこの戦いで手を抜こうと思った事なんて無いわ
お嬢様と約束をしたの、本気で戦うって…
だから、この勝負で私が確実に負けるとは限らなかった
これは私の…賭けだったのよ
でも、良かった…あなたが…勝ってくれて…
私は罪悪感で…ずっと落ち着かなかった…
あなたは…知らないでしょうけど、今日まで…仕事中に居眠り…した事無かったの…よ
でも…これで……安心して…眠れ…る…」
美鈴はゆっくりとまぶたを閉じた。戦いの疲れで、美鈴は深い眠りに落ちたのだ。
「メイド長!! こんなの…こんなのひどい!ひ…どい…」
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
強く机が叩かれ、水晶が転がり落ちそうになる。パチュリーは慌てて水晶を手で押さえつけた。
「ちょっとレミィ!危ないじゃない!」
「こんな…こんな馬鹿なことがあるはず…」
レミリアは机に拳をめり込ませたまま言った。
「パチェ!あんた何かしたでしょ!」
「…私は何も」
「嘘!明らかに美鈴の実力の方が上だったのに!」
「…レミィ、まだ分からないの?あの戦いで美鈴に勝ち目は無かったわ」
「どういうことよ」
レミリアは額に青筋を浮かべ、息が荒くなっている。
「私は美鈴の表情に注目したわ、
最初に咲夜を殴る時、美鈴は物凄い顔をしていたわ
咲夜にとっては自分に怒りを向ける鬼の様に見えたかもしれないけれど、
私には、自分の中での葛藤に苦しんでいる様に見えたわ
美鈴は咲夜を傷つけたくなかった、しかしレミィとの約束があるから
咲夜には本気で戦わなければならない
咲夜を殴ろうとした時の彼女の苦しみの顔だったのよ、あれは
そして、この戦いの最中、咲夜に致命的な傷を負わせるチャンスは
何度もあった、しかし美鈴はその全てで失敗していた
美鈴は本気で戦おうとはしていたんでしょうけど、明らかに肝心なところで躊躇していたわ
咲夜が倒た所を美鈴が狙った時もそう、
レミィは、咲夜の誘いに乗せられたと言ったけど、本当ならあの攻撃は避けられたはずなの
あそこで美鈴が攻撃を受けたのは、とどめを刺すことに躊躇していたから」
「つまり、美鈴は本気を出さなかった訳ね」
「出せなかったと言う方が正しいわ」
レミリアはしばらく黙ったまま動かなかった。
その様子にパチュリーは嫌なものを感じた。そして、パチュリーはある事を
言い忘れていたことに気が付いた。
「レ、レミィ落ち着いて さっき戦闘音のせいで言えなかったけど
一応言っておくわね、命だけは――――
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
戦いが終わって三時間程経った時、美鈴は自室で目を覚ました。
少し体を動すと戦闘で受けた傷が痛み、美鈴は顔を引きつらせた。
(夢じゃない)
美鈴は痛みに耐えながら体を起こし、周囲を見渡す。
その時、咲夜が隣で眠っていることに気が付いた。
「私よ」
突然声をかけられて美鈴は驚いて顔をあげた。
見ると、美鈴の机にパチュリーが座っている。
「あなた達をここまで運んだのは、私
私が見に行った時は、すでに咲夜も眠っていたわ あなたの隣でね」
「そうですか、ありがとうございます」
美鈴は立ちあがると、押し入れを開けた。
中には美鈴の荷物がまとめられている。
「あら、もう準備もしてあったのね」
「…もう、行きます 今までありがとうございました」
「行き場所は決まってるの?」
「泊まるところはすでに用意してあります」
「どこ?」
「それは―――
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
まだ日は出ていない真夜中、紅魔館の扉がゆっくりと開き
中から美鈴が出てきた。美鈴の前には紅魔館の正門がある
美鈴は分かっていた。
あの門を出た後自分がどうなるかを。
美鈴は門に手をかけると、それを押した。
錆びた金属が音を鳴らし、門が開いてゆく。
そして開いた門から、少女が姿を現した。
「主人にあいさつも無しに出て行くのかしら?」
「これは、失礼しました お嬢様」
「どこへいくつもりかしら?」
「どこだと思いますか?」
「もちろん、分かってるわよ
あなたがこれから行く場所は、一つしかない」
美鈴は動じない。こうなる事を覚悟していたから。
「これからあなたが行く場所は、死後の世界よ」
レミリアの目が赤く光る。唇が歪み、そこから鋭い牙が現れる。
「無事に出られると思う?あなたは私との約束を破り、咲夜にわざと負けた」
「私は、わざと負けるつもりは…」
「しかし、できなかった!そうでしょう?やさしいわねあなたは
でも私は、従者に裏切られてそれを放っておけるほどやさしくないわよ
あなたには責任を取ってここで死んでもらうわ」
「そうですか、では…
抵抗させていただきます」
レミリアが美鈴に襲いかかった。
しかし、美鈴はそれを軽々とかわすと、レミリアの腹に蹴りを入れた。
レミリアの体が飛ばされる。
「ははは、さすがだ美鈴
とても手負いとは思えない だが、主人に手を出すとは…
とんでもない無礼者だな」
「私は…クビになりました
もうあなたの従者ではないです」
美鈴は勢いよく地面を蹴り、レミリアに攻撃を仕掛ける。
「馬鹿が、一発当てて調子に乗ったか?
まだ私は本気ではない」
レミリアは美鈴の攻撃を受け流すと、地面に叩き付けた。
痛みで美鈴が悲鳴をあげる。
「残念だったわね、さようなら 美鈴」
美鈴はレミリアから距離をとろうとしたが、それより先にレミリアの攻撃が発動した。
轟音と共に美鈴の居た場所が紅い光に包まれた。
そして、光が消え、煙が消えると、そこには血まみれの美鈴が残っていた。
「悪いわね、紅魔館の誇り高き主が、従者にナメられたままでいるわけにはいかないの」
レミリアの手に紅い槍が出現する。
「あなたの首をもらうわ」
その時、美鈴の体が動き出した。
完全に倒したと思っていたレミリアは目を丸くしてその様子を見ていた。
(遅い…このままでは…私は…お嬢様には勝てない)
美鈴は立ち上がると、上空を見上げる。美鈴の見上げた先に、レミリアが居た。
そして、美鈴はある事に気が付いた。
その瞬間、美鈴は再び地面に膝を落とすと、頭をだらりと垂れ下げた。
美鈴の体からは、完全に闘志が消えていた。
その様子を見て、レミリアは思った。
(勝てないと気付いて、自らの首を差し出したか…)
レミリアは美鈴の前まで降りて来ると、無防備になった首に槍を突きつけた。
「その覚悟を認めて、楽に殺してあげるわ」
美鈴は何も言わず、下を向いたままだった。
レミリアは槍を振り上げると、美鈴の首に向かってそれを振った。
美鈴に槍が迫る、しかし美鈴は一切動こうとはしなかった。
下を向いている彼女の顔を、レミリアは確認できない。その時美鈴は、微笑んでいた。
彼女の体の一部が切断される瞬間は無音だった。静かにそれは切り離され
切り口からは血が流れ出る。
切り離された彼女の“部分”が、ゴトリと音を鳴らして地面に落ちる。
それと同時に――――
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
紅魔館の廊下で、小悪魔はパチュリーに尋ねた。
「美鈴さんは、どうなってしまうのでしょうか」
「一応言っておいたんだけどね、美鈴の“命だけは”見逃してあげてって
でもあの様子だとたぶん…殺されているでしょうね さっき戦闘音も聞こえたし」
「そう…ですか」
小悪魔は残念そうにうつむいた。
「見てみましょう」
パチュリーはそう言うと、窓から紅魔館の正門を確認できる場所まで移動した。
二人が窓から下を覗く。そこから見える光景に、二人は驚き目を見開いた。
「あ…あれは…」
「レ、レミィ!?」
「パ、パチュリー様!目っ目がっ…」
レミリアの右目に深々と刺さっていた。咲夜のナイフが。
そう言って、美鈴は笑った。
「何がおかしいんですか?」
仰向けになって倒れている美鈴を見おろしながら、咲夜は言った。
「負けたのはあなたです メイド長…いや、美鈴。
館から去るのはあなたなんですよ」
しかし、美鈴の口元は緩んだままだった。
「これでいいのよ、咲夜
あなたを追い出す計画… あれは、嘘なのよ
本当の計画は、わたしが負けて、あなたをメイド長にすること…」
「え?」
「あなたにはひどい事をしてしまった…ごめんなさい
私の誕生日、あの日の夜あなたが来たこと…私は知っているわ
メイド妖精から、聞いたの あなたが私のためにプレゼントを用意しているって
あの夜私はわざとあなたを傷つけて…」
「…嘘…どうしてそんなこと…」
「ずっと思っていたの、私はメイド長に向いていないって
私は、仕事もまともにできないし、料理だって下手糞だし、
部下のあなたに…いつも迷惑をかけて…
だから、このままじゃいけないって思ったの
私みたいなのが上に立っていたら、他のメイド達が皆駄目になっちゃう…
それに比べてあなたは、仕事もよくできるし、責任感もある
あなただけなのよ…私を起こしてくれるのは、他のメイドは皆
見て見ぬフリをしていた…
だから、あなたの方がメイド長にふさわしいって思ったの」
咲夜はうつむいたまま黙っている。
「お嬢様に頼んだわ、私をクビにしてもかまわないから
咲夜をメイド長にしてくださいって…
でも、お嬢様は許してくれなかった 自分が一度決めたルールを
無視する訳にはいかないって… ふふ、お嬢様は頑固だから困るわね
それで、この方法を思いついたの…
わざと咲夜に恨まれて、この戦いに導く…
そして、私が負ければ… あなたをメイド長にできる
お嬢様にこの計画を話したら、それに協力すると言ってくれたわ
きっとお嬢様も思っていたんでしょうね…
私はメイド長に“ふさわしくない”って…
あなたは人間、私達より早く枯れ果てる だから、この計画の実行は
急ぐ必要があった…
こうでもしないと、あなたはきっと…私との戦いを受けてくれないから…」
「あたりまえじゃないですか!!」
咲夜は叫んだ。
「こんなのは無効ですよ!だってメイド長は…
わざと負けたんでしょう!?だったら無効です!
この戦いの目的に反します!!」
「私が…いつ手を抜いたと言ったかしら?」
「え?」
「私はこの戦いで手を抜こうと思った事なんて無いわ
お嬢様と約束をしたの、本気で戦うって…
だから、この勝負で私が確実に負けるとは限らなかった
これは私の…賭けだったのよ
でも、良かった…あなたが…勝ってくれて…
私は罪悪感で…ずっと落ち着かなかった…
あなたは…知らないでしょうけど、今日まで…仕事中に居眠り…した事無かったの…よ
でも…これで……安心して…眠れ…る…」
美鈴はゆっくりとまぶたを閉じた。戦いの疲れで、美鈴は深い眠りに落ちたのだ。
「メイド長!! こんなの…こんなのひどい!ひ…どい…」
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強く机が叩かれ、水晶が転がり落ちそうになる。パチュリーは慌てて水晶を手で押さえつけた。
「ちょっとレミィ!危ないじゃない!」
「こんな…こんな馬鹿なことがあるはず…」
レミリアは机に拳をめり込ませたまま言った。
「パチェ!あんた何かしたでしょ!」
「…私は何も」
「嘘!明らかに美鈴の実力の方が上だったのに!」
「…レミィ、まだ分からないの?あの戦いで美鈴に勝ち目は無かったわ」
「どういうことよ」
レミリアは額に青筋を浮かべ、息が荒くなっている。
「私は美鈴の表情に注目したわ、
最初に咲夜を殴る時、美鈴は物凄い顔をしていたわ
咲夜にとっては自分に怒りを向ける鬼の様に見えたかもしれないけれど、
私には、自分の中での葛藤に苦しんでいる様に見えたわ
美鈴は咲夜を傷つけたくなかった、しかしレミィとの約束があるから
咲夜には本気で戦わなければならない
咲夜を殴ろうとした時の彼女の苦しみの顔だったのよ、あれは
そして、この戦いの最中、咲夜に致命的な傷を負わせるチャンスは
何度もあった、しかし美鈴はその全てで失敗していた
美鈴は本気で戦おうとはしていたんでしょうけど、明らかに肝心なところで躊躇していたわ
咲夜が倒た所を美鈴が狙った時もそう、
レミィは、咲夜の誘いに乗せられたと言ったけど、本当ならあの攻撃は避けられたはずなの
あそこで美鈴が攻撃を受けたのは、とどめを刺すことに躊躇していたから」
「つまり、美鈴は本気を出さなかった訳ね」
「出せなかったと言う方が正しいわ」
レミリアはしばらく黙ったまま動かなかった。
その様子にパチュリーは嫌なものを感じた。そして、パチュリーはある事を
言い忘れていたことに気が付いた。
「レ、レミィ落ち着いて さっき戦闘音のせいで言えなかったけど
一応言っておくわね、命だけは――――
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
戦いが終わって三時間程経った時、美鈴は自室で目を覚ました。
少し体を動すと戦闘で受けた傷が痛み、美鈴は顔を引きつらせた。
(夢じゃない)
美鈴は痛みに耐えながら体を起こし、周囲を見渡す。
その時、咲夜が隣で眠っていることに気が付いた。
「私よ」
突然声をかけられて美鈴は驚いて顔をあげた。
見ると、美鈴の机にパチュリーが座っている。
「あなた達をここまで運んだのは、私
私が見に行った時は、すでに咲夜も眠っていたわ あなたの隣でね」
「そうですか、ありがとうございます」
美鈴は立ちあがると、押し入れを開けた。
中には美鈴の荷物がまとめられている。
「あら、もう準備もしてあったのね」
「…もう、行きます 今までありがとうございました」
「行き場所は決まってるの?」
「泊まるところはすでに用意してあります」
「どこ?」
「それは―――
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
まだ日は出ていない真夜中、紅魔館の扉がゆっくりと開き
中から美鈴が出てきた。美鈴の前には紅魔館の正門がある
美鈴は分かっていた。
あの門を出た後自分がどうなるかを。
美鈴は門に手をかけると、それを押した。
錆びた金属が音を鳴らし、門が開いてゆく。
そして開いた門から、少女が姿を現した。
「主人にあいさつも無しに出て行くのかしら?」
「これは、失礼しました お嬢様」
「どこへいくつもりかしら?」
「どこだと思いますか?」
「もちろん、分かってるわよ
あなたがこれから行く場所は、一つしかない」
美鈴は動じない。こうなる事を覚悟していたから。
「これからあなたが行く場所は、死後の世界よ」
レミリアの目が赤く光る。唇が歪み、そこから鋭い牙が現れる。
「無事に出られると思う?あなたは私との約束を破り、咲夜にわざと負けた」
「私は、わざと負けるつもりは…」
「しかし、できなかった!そうでしょう?やさしいわねあなたは
でも私は、従者に裏切られてそれを放っておけるほどやさしくないわよ
あなたには責任を取ってここで死んでもらうわ」
「そうですか、では…
抵抗させていただきます」
レミリアが美鈴に襲いかかった。
しかし、美鈴はそれを軽々とかわすと、レミリアの腹に蹴りを入れた。
レミリアの体が飛ばされる。
「ははは、さすがだ美鈴
とても手負いとは思えない だが、主人に手を出すとは…
とんでもない無礼者だな」
「私は…クビになりました
もうあなたの従者ではないです」
美鈴は勢いよく地面を蹴り、レミリアに攻撃を仕掛ける。
「馬鹿が、一発当てて調子に乗ったか?
まだ私は本気ではない」
レミリアは美鈴の攻撃を受け流すと、地面に叩き付けた。
痛みで美鈴が悲鳴をあげる。
「残念だったわね、さようなら 美鈴」
美鈴はレミリアから距離をとろうとしたが、それより先にレミリアの攻撃が発動した。
轟音と共に美鈴の居た場所が紅い光に包まれた。
そして、光が消え、煙が消えると、そこには血まみれの美鈴が残っていた。
「悪いわね、紅魔館の誇り高き主が、従者にナメられたままでいるわけにはいかないの」
レミリアの手に紅い槍が出現する。
「あなたの首をもらうわ」
その時、美鈴の体が動き出した。
完全に倒したと思っていたレミリアは目を丸くしてその様子を見ていた。
(遅い…このままでは…私は…お嬢様には勝てない)
美鈴は立ち上がると、上空を見上げる。美鈴の見上げた先に、レミリアが居た。
そして、美鈴はある事に気が付いた。
その瞬間、美鈴は再び地面に膝を落とすと、頭をだらりと垂れ下げた。
美鈴の体からは、完全に闘志が消えていた。
その様子を見て、レミリアは思った。
(勝てないと気付いて、自らの首を差し出したか…)
レミリアは美鈴の前まで降りて来ると、無防備になった首に槍を突きつけた。
「その覚悟を認めて、楽に殺してあげるわ」
美鈴は何も言わず、下を向いたままだった。
レミリアは槍を振り上げると、美鈴の首に向かってそれを振った。
美鈴に槍が迫る、しかし美鈴は一切動こうとはしなかった。
下を向いている彼女の顔を、レミリアは確認できない。その時美鈴は、微笑んでいた。
彼女の体の一部が切断される瞬間は無音だった。静かにそれは切り離され
切り口からは血が流れ出る。
切り離された彼女の“部分”が、ゴトリと音を鳴らして地面に落ちる。
それと同時に――――
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
紅魔館の廊下で、小悪魔はパチュリーに尋ねた。
「美鈴さんは、どうなってしまうのでしょうか」
「一応言っておいたんだけどね、美鈴の“命だけは”見逃してあげてって
でもあの様子だとたぶん…殺されているでしょうね さっき戦闘音も聞こえたし」
「そう…ですか」
小悪魔は残念そうにうつむいた。
「見てみましょう」
パチュリーはそう言うと、窓から紅魔館の正門を確認できる場所まで移動した。
二人が窓から下を覗く。そこから見える光景に、二人は驚き目を見開いた。
「あ…あれは…」
「レ、レミィ!?」
「パ、パチュリー様!目っ目がっ…」
レミリアの右目に深々と刺さっていた。咲夜のナイフが。
レミリアには攻撃を躊躇う素振りも見せないの
馬鹿なの?
小悪魔もあとからつけたみたいな感じ。
全話に目を通したが、読者を馬鹿にした作品にしか見えない。
批判を受けても書き上げた事、そして次への期待にこの点数で…
もうなんでもいいね