Coolier - 新生・東方創想話

東方X18

2011/06/24 11:39:37
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東方X戦記



第18話「メイド・オブ・紅魔館」
「あと少しで、勇者の基地に着きます。」
リンの言葉に仮眠を取っていたサブロウは目を開ける。現在、自分達は専用の特殊車両・ビークルで勇者1号S2の基地へ向かっていた。目的は2つ。S2を倒す事と・・・・・・小悪魔と言う十六夜咲夜の連れの救出である。後半は幻想郷の住人である彼女の頼みだが。
サブロウは彼女を警戒していた。彼女は幻想郷と言う異世界の住人であり紅魔館の主、レミリア・スカーレットと言う吸血鬼に忠誠を誓っているメイド長だからだ。吸血鬼と言うのは今でも信じられないが、人外に従う人間は危険そのものだった。
「この通りを右に曲がったら、基地の入り口に着くわ・・・・・・問題はどうやって、中に入るかね・・・・・・。」
そう言って、考える咲夜。ハリソンも暫く考えた後、チームを見渡す。
「さて・・・・・・どうやって中に入るか・・・・・・だ・・・・・・。」
「決まってるんだろ、隊長!俺のガトリングであのロボット共を鉄屑に変えてやるぜ!」
「おいおい、そりゃ強行突破って言いますかい?ロボットも多くいたら無理だろうが。」
予想通り、ロージが意気揚々と言うが、呆れたニックに一蹴される。確かに、ロボットの規模が分からない。
「熱源確認!これは・・・・・・勇者帝国のロボットとは少し異なる熱源が・・・・・・およそ135位あります!」
熱源を察知してリンが報告する。さて、ロボットが出たか・・・・・・だが、異なる熱源?
「人間か?」
「いえ・・・・・・今まで軍隊が戦ったのより低い熱源ですが・・・・・・目視できる距離です。」
「・・・・・・見えている・・・・・・どうやら、レーダーに映りにくい素材を使った新型のロボットの様だな・・・・・・。」
ガルワの言葉にサブロウはビークルの窓から外の様子を見る。そこには多くのロボットが待ち構えていた。
だが、データーで見たタイプとは異なっている装甲で銃等の多数の武器を装備していた。成程、新型か・・・・・・。
「そんな・・・・・・機械人形はあの時、私が全て破壊した筈じゃ・・・・・・?」
「多分、補充か親衛隊みたいなもんだろ?メイドの姉ちゃんが壊したロボットってあのリサイクル品かい?」
咲夜が驚いた様子で呟いたが、何かを発見したのかボナルドが言う。見ると、データーと同じタイプのロボットもいる。だが、片手に銃器を装備したり、脚部がキャタピラ等、何か共通点がなさそうだが・・・・・・。
「あれは・・・・・・。」
「?どうした、ニック?何か知っているのか?」
「お台場のロボットの敵方も応急処置としてあんな形で前線に出ていたな・・・・・・確か・・・・・・。」
「もういい・・・・・・お前の趣味で分かった・・・・・・。」
「冷たいなぁ、お前は。ドームスクリーン式のゲームじゃ、遠距離砲撃型として重宝されているんだぜ?」
「使える所だけを使って改修されているのか・・・・・・やむを得ん!各員、これより強行突破を図る!異存は!?」
「異存はありませんが・・・・・・やはり、勇者の所までたどり着くのが問題なのよね・・・・・・。」
ジョーニアの言う通り、相手は約135体のロボット軍勢。たった10人で何ができるのだ?
「だが、この状態なら他に方法はない・・・・・・アンヌ、ビークルを進めてくれ!」
「ビークルは頑丈だけど・・・・・・心配です~!」
口では文句を言いながらもアンヌはビークルを前進させて敵陣へ突っ込む。すぐさま敵が銃器を放つが流石はビークル、ちょっとやそっとじゃ強化装甲を貫けやしない。構わずに上部のバルカンやフロント部のレーザーで蹴散らしつつ前進。すると、何とか入り口前に到着すると一同はアンヌとリンを車内に残してすぐに降り立つ。ハリソンの指揮の元、ロージがガトリングでロボットを蹴散らし、サブロウとジョーニア、ニックの3人は周りの状況を見ながら銃で相手を迎撃する。ガルワは狙撃ポイントにおり、そこからロボットを狙撃する。咲夜は入口の破壊の為に爆弾を設置するボナルドの援護を行っていた。
「ここをこうして・・・・・・できたぜ!入口付近には近づくなよ!」
そうメンバーに言いながら安全な場所に行き、爆破する。大きな音と共に入口は爆破される。
すると、中からもロボットが現れ、銃器を乱射する。それに対し、反撃する一同。
「くっ・・・・・・あの時より強くなっている・・・・・・!」
「あの時って・・・・・・ゲンソウキョウという所の時か?」
「えぇ・・・・・・あの時は紅魔形態のおかげで何とかなったけど・・・・・・。」
「多分、姉ちゃん達のデーターを元に改良したのか、今までより位の高い勇者が使っているかもしれないぜ。」
「どっちにしても嬉しくない事態だな・・・・・・隊長、どうします!?」
「サクヤ君、サブロウ、ニック!ここは我々に任せて君は勇者の所へ!勇者を何とかすればロボットの動きも止まる!」
「分かったわ!」
「了解!」
「おう!任されて~!」
ハリソンの指示に従って咲夜とサブロウ、ニックの3人はロボットを蹴散らしつつ、咲夜を先頭に先へ急ぐ。
一刻も早くしなくてはならない・・・・・・さもなければ、残っている隊長達が危険だからだ。



「どうしたんだ、衣玖?話したい事って・・・・・・?」
謎の世界では東方外伝ズがコウと一緒に屋敷で話し合っていた。衣玖が「この世界の事が分かりました」と言ったが・・・・・・
衣玖は何か躊躇ったかのような表情を浮かべていたが、意を決したかのように話しだす。
「まず、さっき戦った巨大な門の番人が言うには、この世界は“仮初めの世界”と言っておりました・・・・・・彼女の言葉が本当だとしたら、仮初めの世界とは?そして皆さんが調査して分かった事が多くありました。店はあっても全く売られていない商品、全て白紙の本、そして時間が分からない位、明るい空・・・・・・そう、この世界は・・・・・・。」
そう言って、衣玖はコウを見て、思いもよらない事を言った。
「コウさん・・・・・・貴方の想像の世界ですね・・・・・・?」
「「「えぇっ!!??」」」
衣玖の言葉にレミリア達は驚きの声を挙げる。この世界はあの少女の作り出した空想の世界?
「い、衣玖・・・・・・それだけじゃ確信は・・・・・・。」
「ありません・・・・・・ですが、私が今、感じている空気・・・・・・全く新鮮さが感じられないのです・・・・・・まるで、作られたかの様な・・・・・・そしてコウさん・・・・・・貴方の空気はそれに近いのです・・・・・・私の予想は間違って欲しいのですが・・・・・・。」
衣玖の言葉にコウは黙って聞いていたが・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・ふふふ・・・・・・ふふふふふ・・・・・・!」
「!?コ・・・・・・コウさん・・・・・・!?」
不意に笑いだすコウに衣玖は絶句した。まさか・・・・・・!
「・・・・・・衣玖のお姉ちゃんは凄いな・・・・・・私を狙った怖い人を追い払っただけじゃなく、この世界について分かったなんて・・・・・・やっぱり、もっと私の様な人間を多く作らせば良かったかな~?」
そう呟くコウに東方外伝ズは確信した。この少女がこの世界の創造主!?
「貴様・・・・・・何が目的だ!?何故、私達を蘇らせる!?そもそも・・・・・・!」
レミリアが今にも飛び掛かりそうな勢いでコウを睨むが、当の本人はそれに怯まず
「目的?簡単よ。お姉ちゃんを蘇らせたのはさっきの怖い人から私を・・・・・・ううん、紅様を守る為にあるのよ♪」
「紅・・・・・・まさか!?文さんと見た、あのデーターの!?」
その言葉を聞いて椛が驚きの声を挙げる。そして衣玖も確信する。天狗の手帳に記していたあの名か・・・・・・?
「紅様はこんな所で死にたくないって・・・・・・だって、紅様を創ったZさんとの約束を守る為に生きなければならないんだよ・・・・・・だから、Zさんの機械人形にやられたお姉ちゃん達をここに呼び寄せて、何の理由かは分からないけど紅様の魂を狙っている怖い人を何とかしてほしいって訳・・・・・・そしたら案の定、さっきの怖い人が現れて、お姉ちゃん達はそれを追いはらちゃった!」
「Z・・・・・・!?貴様、T‐JやZの仲間だったのか!?」
それを聞いたレミリアが怒りのあまりコウに飛びかかり、赤い槍を首筋に着き付ける。衣玖は止めようとするが
「死んだ私達をここに呼び寄せるなら、生き返る方法も知っているだろう?その方法を教えろ!」
「・・・・・・悪いけど、コウモリのお姉ちゃん・・・・・・この世界は紅様の世界だって事、分かっている?」
「・・・・・・!?下がれ、レミリア・スカーレット!」
「あはは、狐のお姉ちゃんにばれちゃった!そ!この世界は・・・・・・紅様の一部である私が少しだけ自由に操れるの!」
そう言うや否やコウが指を突き付けると、何とレミリアは何かに縛り付けるかのように壁に叩きつけられる。
「ぐはっ!」
「お、お姉様!?こんの~!よくもお姉さまを!」
フランが怒りの一撃を放つが、コウが手をかざすとフランの弾幕が消えてしまった。
「あ・・・・・・あれ!?」
「ふふん、凄いでしょうお姉ちゃん達!この世界は私が神様みたいなものなんだよ!だけど、紅様は現実世界・・・・・・つまり、お姉ちゃん達が大切にしている人達がいる幻想郷や外の世界に君臨する絶対神になる予定だって!もっと凄いでしょう?」
そう言って、両手を挙げると屋敷の床がスライム状になり、一同の脚を縛り付ける。どんなに足掻いても全く無力だった。
「な、何これ~!」
「気持ち悪~い!」
「藍様、助けて~!」
「橙―――!くっ・・・・・・どうすれば・・・・・・!」
「無駄だよ。だってここは私の世界・・・・・・紅様が作り出した私に勝つ者はいないよ!まぁ、現実世界じゃ何もできないけど。」
そう誇らしげに語る。紅と名乗る者の想像の世界である限り、彼女に勝つ者はいないのか・・・・・・その時!
「・・・・・・あれ?衣玖のお姉ちゃんは?」
「どうやら、紅と言う方は私達の事を全て話してはいなのですね・・・・・・。」
「っ!?」
コウが驚いてみると何と、衣玖は床のスライムっぽいのに掴まっておらず、空中に浮いていたのだ!
「な、何で衣玖のお姉ちゃんだけ・・・・・・?もう一回!」
そう言って、コウは手を振りかざすが、衣玖がさっと避け、数秒後に天井から手が伸びた。
「え、えっと・・・・・・瞬間移動・・・・・・??」
「いえ・・・・・・空気を読んだだけの事です・・・・・・貴方の気が私に向かっているのが感じましたから。」
コウの特殊能力に対し、自分の能力を駆使してかわしまくっていたのだ。彼女の能力を知り尽くすとは流石は龍宮の使い。
「さて・・・・・・このままでは、流石の貴方も気力を使い切りますよ?大人しくして下さい・・・・・・。」
「むぅ・・・・・・(衣玖のお姉ちゃんは空気を読んで私に捕まらない様にしている・・・・・・長期戦で決める気なんだね・・・・・・私も連続で紅様の世界を変えるのはそろそろ限界かも・・・・・・ん?待てよ・・・・・・“空気を読む程度の”・・・・・・“空気”・・・・・・!?)」
衣玖の言葉にコウは焦るが、何かに気付いたのか不敵に笑った。その空気を読んで警戒する衣玖。
「な・・・・・・・なんですか、その顔は・・・・・・?」
「別に~?だけど、1つだけ・・・・・・後1回でお姉ちゃんも捕まるよ♪」
「何を根拠に・・・・・・っ!?」
コウの言葉に訝しげな表情を見せるが突如、衣玖の様子が変化する。首元を抑え、必死に空気を取り込もうとする。
「くっ・・・・・・何をしたのですか・・・・・・!?」
「うふふふ・・・・・・お姉ちゃんの周りの空気をなくしたのよ。今、お姉ちゃんの周りは真空状態・・・・・・いくら、一度死んで魂の状態と言えど、呼吸する空気がないとお姉ちゃんも苦しいでしょ?」
「まさか・・・・・・この世界の空気すら変えるとは・・・・・・!」
「さぁて♪お姉ちゃん達には2つの選択肢があるんだよ・・・・・・大人しく、紅様の言う事を聞く僕さんになるか・・・・・・思いっきり痛い目にあって無理やりに従わせるか・・・・・・どっちか選ばないと、お姉ちゃん達にとって大切な人もここに来る羽目になるよ?」
コウの言葉に一同は絶句した。このままでは、霊夢や魔理沙達も奴等に殺されて、魂状態で奴隷として扱われる・・・・・・だが、これと言った反撃の機会がない・・・・・・まさに絶望的状況だ・・・・・・言葉の出ない一同に対し、コウは不機嫌になる。
「むぅ・・・・・・強情なお姉ちゃん達だね~こうなったら、私が嫌でも従わせてあげるよ・・・・・・。」
そう言って、何処からか剣を取り出し、一同に見せる。その表情は正に怪しげだった。
「ふふ~ん。言う事を聞かないなら、心臓とかを取り出したりして痛めつけないと♪最初は・・・・・・君に決めちゃった♪」
コウが剣で刺した先には・・・・・・床のスライムっぽいのに掴まっているこいしだった。当の本人はビクッと体を震わせる。
「わ・・・・・・私・・・・・・!?」
「そう♪最初は何処がいいかな~?その胸の閉じている目か・・・・・・顔についている片目か♪」
「お、お姉ちゃん・・・・・・!」
「こいし・・・・・・!止めなさい、コウさん!やるのだったら、私を・・・・・・!」
「あはは!麗しき、姉妹愛ってやつ?羨ましい~!ま、その方が言う事を聞かせるのに効果的だし。」
そう言って、ゆっくりとこいしに近づくコウ。そんな彼女に対して酸欠状態の中、衣玖は必死に思案を巡らせる。
「(このままでは、こいしさんが・・・・・・一体どうすれば・・・・・・コウさんはこの世界の状態を変える事が出来る能力・・・・・・それを如何にして止めるのかは・・・・・・!?そうでした・・・・・・あれを使えば・・・・・・一か八かです・・・・・・!)」
コウがこいしに近づき、動けずに震えている彼女の顔に剣を振るおうとしたその時!
「待ちなさい!」
「む?」
突然の声に振り向くと、そこには酸欠で立ち上がるのもやっとな衣玖が何かを構えていた。あれは、黄金の弓矢だ。
「衣玖のお姉ちゃん、何やってるの?そんな矢じゃ私を倒す事は・・・・・・?」
「あの門を吹き飛ばす威力のこの矢と、私の全ての力を使えば・・・・・・その2つの力で貴方を倒します・・・・・・!」
「悪いけど、その弓矢は私の世界の物・・・・・・そんな危ない物はポイッ!」
そう言って、コウは手をかざすが、衣玖の手の中にある弓矢は健全のままだった。それに驚くコウ。
「え!?な・・・・・・何で!?だって、それは・・・・・・!?」
「確かに弓矢のままですと、何とかなりそうでしたね・・・・・・ですが、これに少しの細工をしました・・・・・・。」
「細工・・・・・・?・・・・・・っ!ま、まさか・・・・・・息が全くできない状態で自らの手首の血で弓矢を・・・・・・!?」
コウが驚くのも無理はなかった。何と、衣玖は自らの手首を切り、その血で弓矢を塗っていたのだった!
「いくら何でも、紅と言う方以外は外から来た私の血を消すことはできませんね・・・・・・。」
「ちょ・・・・・・ちょっと待ってよ・・・・・・そんな状態でどうやって私を・・・・・・。」
そう言って、後ずさるコウ。今まで余裕だったその顔には焦りと恐怖が彩られた。
「コウさん・・・・・・貴方を・・・・・・止めます・・・・・・!」
「ま、待ってよ!もし私を倒したら、お姉ちゃん達はこの世界から放り出されて、永遠に何処かに彷徨ってしまうよ!」
「残念ですが、貴方を倒したら、何が起こるかは・・・・・・内容は不明ですが・・・・・・既に分かっています・・・・・・!」
「っ!!」
その覚悟を決めた表情を見たコウは慌てて避けようとするが、相手は空気を読む龍宮の使い・・・・・・弓をコウへと向いて・・・・・・血の付いた黄金の矢を放つ!そして、真っ直ぐな軌道を描き・・・・・・コウに当たった。
「そ・・・・・・そんな・・・・・・紅様の一部である私が・・・・・・やっぱりお姉ちゃんは凄かった・・・・・・!」
その声が放つと同時に、地面が揺れ始める。どうやら、この世界が消滅する様だ。
「コウが倒されて、この世界が消える様だ・・・・・・。」
「ど、どうするの!?」
「どうも、こうも・・・・・・仕方がない、私達の思考や魂はここまでの様だ・・・・・・ん?」
誰もが慌てふためく中、神奈子が何かを発見する。空に亀裂が生じ、そこから光が漏れていた。
「何だい、ありゃ・・・・・・もしかしたら、現世か地獄かもしれないが・・・・・・どうする?」
神奈子の問いに一同は躊躇うが、すぐにレミリアが言った。
「決まっているでしょ?こんな訳の分からない世界よりも地獄とかの方がマシよ。行くわよ、フラン!」
「OK―!」
レミリアとフランの吸血鬼姉妹が亀裂に飛びこんでいくのを見て、他の者も次々と飛び上がる。
一同が亀裂に近づくと、その亀裂が徐々に細くなっていく。どうやら、時間はあまりないらしい。
「・・・・・・。」
「衣玖っ!早く!急いで!」
酸欠からまだ立ち直れていないのか衣玖はフラフラとゆったりとしたスピードで飛んでいく。それを見て椛も手を伸ばす。
そして、手に感触があって掴んだと思った椛は他の者と一緒に亀裂の中に入り、振り返ると・・・・・・
そこには、衣玖の羽衣がしっかりと握られていた・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・・・・?い、衣玖!?」
羽衣があっても本人がいない事に気付いた椛が下を見ると・・・・・・崩壊しはじめる館の天井に衣玖が立っていた。
そして、彼女は椛に微笑み・・・・・・こう呟いた・・・・・・
「・・・・・・幻想郷に戻れましたら・・・・・・総領娘様の事を頼みます・・・・・・。」
一同は衣玖がいない事に気付き、そこへ向かおうとするが、非常にも亀裂は衣玖を残して閉じられていった。
「「「衣玖―――――――――――――――!!!!」」」

「・・・・・・何で、お姉ちゃんだけここに留まるの・・・・・・?」
亀裂が閉じるのを見た後、衣玖はコウへ振り向く。彼女は黄金の矢を刺されて、倒れていた。
「言った筈です・・・・・・約束を守ります、と・・・・・・。」
「え!?ま、まさか・・・・・・。」
衣玖の言葉にコウは驚く。まさか、門の番人が現れた時に、「必ず帰って来る事」の約束の為に・・・・・・
「何で・・・・・・何でそれだけでお姉ちゃんは私といられるの!?私はお姉ちゃん達を騙したんだよ!お姉ちゃんを利用したんだよ!本当は、紅様が自分自身を助ける為にお姉ちゃん達の魂を呼び出したんだよ!なのに・・・・・・!」
「・・・・・・同じ、雰囲気だからです・・・・・・。」
「え・・・・・・?」
「貴方が総領娘様と同じ雰囲気だからなんです・・・・・・我儘で、暇つぶしに異変を起こし・・・・・・だけど、1人ぼっちが嫌でいつも誰かと側にいたいと願っている・・・・・・その雰囲気が貴方と似ていたからです・・・・・・。」
「お姉ちゃん・・・・・・。」
そして、衣玖はコウに血まみれの手を差し出し、優しげに微笑む。
「ですからコウさん・・・・・・これからはずっと一緒にいましょう・・・・・・。」
衣玖の手とコウの手が重なった時、全てが真っ白に輝き・・・・・・消滅していった・・・・・・

『・・・・・・っ・・・コウ・・・』
自らが生みだした分身体と偽りの世界が消滅した事は紅も既に分かっていた。自分の魂を狙っている者は衣玖達によって何とか追い払った・・・・・・だが、まさかコウが倒されるなんて・・・・・・それは予想外だった。
されど、このような状況であっても紅は泣かなかった・・・・・・否、泣けなかったのだ・・・・・・。
『コウが消えて、悲しい・・・だけど、泣く事が出来ない・・・どうすれば泣いたらいいか分からない・・・。』
そう呟き、紅は無表情に次の事態に備える為に1人だけの部屋で思案していた。消えたレミリア達の魂の事と、
大切な人・Zの仇である幻想郷の住人、博麗霊夢の抹殺の事を・・・・・・。



一方、咲夜達が機械人形を蹴散らしながら勇者のいる所へ向かっている時間稼ぎの為、ハリソン達は奮闘していた。
敵は新型でちょっとやそっとじゃ倒れないが、咲夜達を追っているのか数は少ない。
残りは咲夜に倒され、応急処置を施した前のタイプが多く残っていただけだった。
「旧タイプよりも新型を優先的に攻撃しろ!そうすれば、戦況が少しでも有利になる!」
ハリソンの指示に一同は新型を優先的に銃器で攻撃する。新型も瓦礫に潜んで火器で応戦する。
戦況は数的に見ると機械人形が多いが、ハリソン達の技量等を見れば勝負は膠着状態だった。
「敵さん、必死に抵抗しているぜ?」
「まぁ、さっきよりはましだがな。」
ボナルドの呟きにガトリングの弾薬を補充しているロージが愉快そうに答える。まさに勝利は我にありと言った感じだ。
「だが、相手はサクヤ君らの能力を多く持っているクローンの勇者がいる、油断しないでくれ。リン、サクヤ君達の現在地は?」
『まもなく到着する模様です。ロボットもサクヤさん達が向かっている先に熱源は感知していませんが・・・・・・。』
「所で前から気になっていたが、そのビークルのレーダー本当に感知しているのか~?これだけでX線や熱源感知できるって。」
『開発部が最高の技術を駆使して造られたのが、このビークルらしいです。レーダーもその一つだと思います。』
「確かにね。元々は対テロリスト用として開発された特殊車両らしいし・・・・・・。」
「・・・・・・来たぞ・・・・・・第二波だ・・・・・・後は応急処置のリサイクルが多い様だな・・・・・・。」
そんなやり取りをしながら機械人形と戦闘している中、ビークルの底部が開いた事に誰も気づかない。中から・・・・・・
「・・・・・・。」
キョロキョロと辺りを見回しながら降りてビークルの底部を閉める少女がいた。彼女の名はマリア・ガイバード。空飛ぶ要塞と政府軍の戦闘に巻き込まれ、両親を失い、咲夜に助けられた少女だ。彼女は確かめたい事があって痛む体に鞭打ってこの地忍び込んだのだ。
それは・・・・・・自分の大切な両親を奪った北方勇者帝国の幹部の顔がどんなのか見て見たい事だった。
そして、場合によっては・・・・・・、とビークルから調達した小さなハンドガンを握りしめ、こっそりと基地へ向かった。

「来たか・・・・・・咲夜・・・・・・。」
さて、マリアが基地内に忍び込んでいる事に気づかない咲夜とサブロウ、ニックは何とか勇者1号・S2の元へと辿り着く。
「(これが勇者・・・・・・見た所、20代の少女だが・・・・・・。)」
始めて見る幹部格、勇者の姿に驚きつつも警戒する。彼女の側には・・・・・・。
「咲夜さん!」
「小悪魔!」
「あれが・・・・・・小悪魔・・・・・・?」
「・・・・・・な・・・・・・。」
「ニック?」
「何てこった・・・・・・“小悪魔”という名前ながらも、可愛らしい天使フェイスだ・・・・・・!」
「・・・・・・背中と尾がその証拠だろ・・・・・・。」
ニックのボケ(?)にサブロウが突っ込む中で、当の本人こと小悪魔は両手に壁の鎖で縛りつけられていた。
「S2様・・・・・・!」
「やはり、来たか・・・・・・私もこうはしたくなかったが、キリュウの命令でな・・・・・・今度は決着を付ける・・・・・・。」
S2の強い意志を込めた言葉に咲夜は目を閉じていたが・・・・・・
「・・・・・・正直申しますと、私は貴方と戦いたくありません・・・・・・お嬢様や妹様、パチュリー様に美鈴の記憶を持つ貴方とは戦いたくありません・・・・・・ですが、小悪魔は紅魔館で私の大切な者の1人・・・・・・もうこれ以上、死なせたくありません。その為にも・・・・・・S2様・・・・・・貴方と戦って・・・・・・倒します・・・・・・!三郎さん、ニックさん、手を出さないで・・・・・・。」
そう言って、ナイフを取り出して戦闘態勢を取る。そんな彼女を見て、S2も赤き槍で戦闘態勢を取る。
「ならば、遠慮はしない・・・・・・一気に決める・・・・・・!」
「っ!」
2人が睨みあった瞬間、突如として消える。消えた!?と思いきや、別の所で戦い、それは高速移動している様だ。
それをポカーンと見るしかできないサブロウとニック。
「こりゃ確かに、手出しできんわな。」
「そうだな・・・・・・む?」
そう言って、サブロウが見ると追って来たのか新型ロボットが自分達に向かって来たのだ。
「どうやら、休んではいられない様だな・・・・・・。」
「あぁ、暇つぶしにさっさと終わらせますか。」
そう言い合って、2人は銃器を構えて新型機械人形と戦闘を開始した。



「さて、皆は勇者との戦いで危機に陥った時、見た事も無いスペルカードが出たわね?」
幻想郷にある紫の家、マヨイガでお空、小町、勇儀、鈴仙、天子、妖夢の6人は紫の話をじっくりと聞いていた。
しかし、予想通りに鴉頭で考える事が大の苦手なお空が音を上げてしまう。
「紫~・・・・・・そんなのはいいから早くキリュウとか言う、さとり様達の仇であるクローンの所へ連れて行ってよ~!」
「我慢しなさいよ、空・・・・・・昼休みになったら給食の地獄饅頭が出るけど?」
「うにゅ・・・・・・。」
「さて・・・・・・貴方達のこのカードは知っていない人もいるでしょうけど、大神・天照が話していた、『伝説の夢想技』のスペルカードなのよ・・・・・・だけど、聞いた話によると今の貴方達じゃこの力を発揮するのは精々、3割程度しか出せないのよ。」
「やはり、そうだったのか・・・・・・なぁ紫、どうやれば本来の力を引き出せるんだ?」
「慌てない、慌てない・・・・・・正直言うと私にも確証はないけど、その力を宿っているこれを身につけるのが無難だと思う。」
そう言って、紫はスキマから何やら箱らしき物を取り出し、一同の前に置く。中を見ると・・・・・・
「・・・・・・服・・・・・・ですか・・・・・・?」
「ノンノン、只の服じゃないわ。これはかつて、霊夢の先代の巫女が伝説の夢想技を習得した時に、万が一の時の為に未来の者達への助けになる為に、伝説の夢想技を制御する能力を持つこの戦闘着を作り出した訳。分かった?」
「霊夢のご先祖って結構用意周到なんだな・・・・・・。」
「つーか、あたしら妖怪がこれ着ていいのか?」
「本当にこれを着るだけで本来の力を取り戻すなんて本当なの?」
「この服・・・・・・波長を持っている・・・・・・まるで生きているみたい・・・・・・。」
「ねー昼休みはまだー?」
「はいはい、文句は後回し。さて、後は傷の治療をしながら残りのチームが来るまで昼休みといきましょう♪」
そう言って、紫はいつもの様にノホホンとした笑みを浮かべた



咲夜とS2との戦いはまさにサブロウ達にとって桁外れたものだった。弾幕と能力を駆使した戦いは何事にも勝っていた。
そして、咲夜の心境の変化に気付いたS2は咲夜の攻撃をかわしながら、思案を巡らしていた。
「(この攻撃・・・・・・今までより激しくなっている・・・・・・やはり、今の咲夜は本気の様だ・・・・・・紅魔形態を使わないと見ると、人のままで戦う決意をした様だ・・・・・・だが・・・・・・。)」
「そこですっ!」
「っ!」
その隙をついたのか、咲夜がS2に接近して攻撃した。手には数本のナイフ。慌ててかわすS2。
何とかかわしたものの、S2の頬には一筋の赤い線が刻まれていた。それに対し、驚愕するS2。
「そこまで、小悪魔を助ける為に・・・・・・。」
「S2様・・・・・・貴方が憎い訳ではありません・・・・・・ですが貴方にどのような事情があれ、お嬢様達の能力を悪用させる訳にはいきません・・・・・・それが・・・・・・紅魔館のメイドとしての務めです・・・・・・!」
「・・・・・・そうか・・・・・・だが・・・・・・私もそれなりの覚悟があっての事・・・・・・本気ださせてもらうぞ・・・・・・。」
「っ!?まさか、今までのは本気ではなかったのですか・・・・・・っ!?」
「あぁ・・・・・・お前は今気付いている様だが、今の私の力が飛躍的に上がっている事にお前の本能が察知したらしい。」
そう言って、S2は更に気を高める。確かに、周りの空気が張っていく・・・・・・
「見るがいい・・・・・・これが私の・・・・・・真の姿だ!!」
S2の言葉と同時に姿が変わり始めた。咲夜が恐る恐る見るとそこにはS2の姿が変わっていた。服装は銀色の豪華な魔道士型のドレスだった。銀色と赤の混じったロングに目は赤、そして背中の羽は新たな羽が生え、4枚羽になっていた。あの羽は・・・・・・妹様の・・・。
背も咲夜より縮んでいるが、その威圧感は今までよりも高くなっている。あのお姿は・・・・・・!
「あれが・・・・・・S2様の・・・・・・お美しい、真の姿・・・・・・!」
「・・・・・・“お美しい”は余計だ・・・・・・今までの姿はこの形態の拘束具みたいなもの。つまり、これこそ真の力!」
そう言った瞬間、S2は物凄い速さで咲夜に近づいた。この速さは尋常ではない・・・・・・!かわしきれない!?
慌てて防御するが、S2の攻撃に数メートルはぶっ飛ばされる。尋常ではない痛みが体中に走る。
「これは一体・・・・・・!?」
「フランドール・スカーレットの力だ。彼女の“破壊する程度の能力”は私でも加減が難しい故に極力抑える為のあの形態に変えたのだ・・・・・・正直、これを使いたくなかったがやむを得ない・・・・・・一気に勝負をつけさせてもらう!」
そう言ってS2はスペルカードを取り出す。だが、それはかつて咲夜を退けさせたあのスペルではなかった。
「終わりにさせてもらうぞ・・・・・・発動・『運命:レジェンデリック・デストロイ』!!」
そう叫んで発動するや否や、突如として眩しい程の光・・・・・・いや、全てを破壊する光線が咲夜に襲い掛かる。
「しまっ・・・・・・!?」
慌てて時を止めるが、光線型の弾幕は動いていたのだった。やはり、妹様(フラン)と同じ様に止まった時間を動けるのか!?
そして、拠点№1に激しい震動が襲いかかった・・・・・・

「サクヤ!?」
「全くチートにも程があるっしょ、あの勇者って奴は!」
咲夜がS2のスペルでやられたのを見て、サブロウとニックが駆け付けようとするが、機械人形に阻まれる。
そして咲夜はスペルをまともに喰らってしまい、足元がふらついて膝を付く。倒れなかっただけましと言えるが・・・・・・。
「まだ、戦うと言うのか・・・・・・!?」
「私は・・・・・・小悪魔を助けに・・・・・・。」
「?・・・・・・どうやら、命に別状はないが、意識が朦朧としている・・・・・・ならば・・・・・・。」
「!?S2さん!な、なにを!?」
S2が倒れようとする咲夜に近づいて行くのを見て、小悪魔が慌てる。まさか止めを刺す為に!?
「落ち着け。私は咲夜からレミリアの能力を取り上げるだけだ。今の彼女を人として生きる道を照らす為にな・・・・・・。」
そう言って、咲夜に手を伸ばそうとした瞬間、乾いた音が響いた。
「っ!何だ!?・・・・・・む?」
突如として飛んで来た銃弾を避けてS2は弾丸を放った犯人を探そうとするが、意外にもすぐに見つかった。
「・・・・・・!」
そこには、震える手でS2に銃を向けている少女がいた。だが、震える目には決意の表情が宿っていた。
「お前は・・・・・・!?」
「!?マリア・ガイバード!?何故、こんな所に!?」
「もしかして、俺等の後を付いて来たのかも・・・・・・こいつはヤバいぜ・・・・・・!?」
機械人形と激しい銃撃戦を繰り広げながらもサブロウとニックは慌てる。
「・・・・・・娘よ。何故、無駄だと分かりながらも私に銃を向ける?」
「・・・・・・!」
「・・・・・・そうか・・・・・・軍事隊長の移動基地と軍隊との戦いで失った親の仇打ちと言う訳か・・・・・・。」
S2の言葉に図星なのかマリアの表情が驚きへと変わる。どうやら、レミリアの能力で彼女の過去の運命を読み取ったのだろう。
マリアに対してS2は彼女と距離を置いて説得するかのように語る。
「だが、私を倒した所で両親は戻らないぞ。生命が失うのは世の中の理だからな。一度死んだ者を蘇らせるのは神でも不可能だろう・・・・・・私も彼女の仲間としては悔やむべきだと思う。だが、仕方ないのだ。我々とこの世界の者達とは敵同志故に。」
そう彼女を説得しようとしたその時、突如として機械人形の動きに変化が起こり、マリアに近づこうとする。
「!?どうした、何をしようとする。」
S2の問い掛けに対し、機械人形はマリアに銃を向けながらモールス信号らしき音を出してS2に知らせる。

その信号は外で戦っているハリソン達のビークルにも聞こえていた。
『!隊長!敵ロボットからの通信です!これは・・・・・・!』
「どうしたリン?内容は分かるか?」
『・・・・・・ガイバード氏が勇者帝国の総帥に自分の孫のマリア・ガイバードの抹殺の依頼をした模様です・・・・・・。』
「なっ・・・・・・!?」

その信号はS2にも伝わり、彼女も信じられない表情で驚愕の声を上げる。
「ガ、『ガイバード氏が総帥にマリア・ガイバードの抹殺を依頼した故に任務を果たす』・・・・・・!?馬鹿な、キリュウは一体何を!?」
「「「っ!!??」」」
S2の言葉にサブロウ、ニック、マリアの3人は絶句する。まさかガイバード氏が自分の孫の抹殺を勇者帝国に依頼するとは・・・
「(まさかと思っていたが・・・・・・マリアの祖父が勇者帝国とつながっていたとは・・・・・・そして噂通りに武器の密輸入をしていたとは・・・・・・自分の孫を殺そうとするなんて、そんなのは家族ではない・・・・・・!)」
そうサブロウは憤るが機械人形は半数をサブロウ達の足止めに任せて、マリアの方へ近づいて銃を向ける。
「よせ!彼女は民間人で我々の戦いの犠牲者だ!彼女を殺害する事は私が許さん!これは命令だ!」
S2は止めようとするが、機械人形の一部が庇うかのようにS2の前に立ちはだかる。
「っ・・・・・・『総帥の命令は絶対。処罰は覚悟している。』・・・・・・!上の命令は絶対だと言うのか・・・・・・!」
そして機械人形は一斉に銃を向けて一斉射撃を施す。危ない!そう誰もが思うが、サブロウ達は機械人形に阻まれている。
マリア本人も祖父が自分の抹殺を両親の仇に依頼していた事にショックを受けて、逃げる事が出来なかった。
銃弾がマリアに向かっていき、彼女は涙ながらに意識が朦朧としている咲夜に目を向け、叫ぶ。
当然、今の状態では何も声が出なかったが、咲夜は薄らとした意識の中でハッキリと聞こえていた。
『サクヤ!!』、と・・・・・・



幼い頃、私の家は他のと同じ様に普通の家族だった。
父も母も無口だが仲が悪いと言うのではなく、私にも褒める事はないが厳しく叱りつける事もなかった。
父は夜遅くまで仕事をし、母は私の世話や家事を行っていた。私もそんな2人の娘として普通の毎日を送っていた。
だけど、他の人達の間では妙な噂が村中に広がっていた。「あの男は吸血鬼を狩っている。」「夜、あの男が吸血鬼の死体を処分している所を見た。」“あの男”というのは父親らしく、子供達も私から避けている事が多かった。
その噂がデマだと私は思っていた。無口だけど、優しい父親がお話しか存在しない怪物を殺しているなんて想像できない。
それに父も仕事の内容は詳しく話していないが、遠方で商品を売っていると言っていた。
しかし、その噂が本当だと言う事に気付いたのは、満月が輝く夜中に起こった。
それは突然、起こった。何が起こったか理解できずに私は立ちつくした。いつもの様に父が帰り、夕食を始めようとした時だった。
戸が勢いよく開いたかと思うと“何か”が飛び出し、父親が始めて見る驚愕の表情で私に逃げろと言い、何かを取り出そうとするが、それが腕をふるった瞬間、父が何かを取りだしたと同時に血飛沫が舞い、倒れる。
その時、私は何がどうなっているか理解できなかった。やがて“何か”が私に近づいて腕を振るう。母親が悲鳴を上げて私に駆け寄り、抱きつく。そして鈍い音が響き、母の体温が冷たくなり始めた事に気づく。そして私は気付いた。父と母が殺された事に。
次は私かもしれない、そう思い目を瞑るとバンとドアが再び開く音が聞こえ、“何か”の呻き声や戦闘らしき音、そして不気味な絶叫が響き渡った。それはまさに一瞬だった。母の腕の中で震えていると突如、視界が明るくなる。誰かが死んだ母親をどかしたのだ。
『あら?生き残っている人間がまだいるなんてね・・・・・・。』
そう私に声を上げたのは1人の少女だった。だが、少女の背には羽があり、腕には血がこびりついていた。
そして、彼女の傍らに転がっているそれに私は目を見張る。それは胸に穴を開けられている“吸血鬼”だった。
吸血鬼は存在していた。そして彼女は人間ではない。その事に気づいた私は隅へ逃げる。
『それにしても近頃、吸血鬼を狩っているハンターがいると聞いたから、退屈紛れに行ったら既に妻と一緒に殺されていたなんて・・・・・・ま、言うなれば、下級の吸血鬼を狩っているヴァンパイアハンターだと言う事ね。不良貴族に消されるなんて哀れね。』
父の死体を見下ろしながら少女が蔑む。あの噂は本当だった。父はヴァンパイアハンターだったのだ。そして、自分達の同胞の仇討ちなのか天敵の排除なのか父を殺しに来たのだ。そして母も・・・・・・そう考え、私は父のポケットから何かを発見する。
それは銀色のナイフだった。すぐに私は父が取りだそうとしたナイフを取り出し、少女に構える。
『あら?何のつもりかしら?両親の仇討ち?吸血鬼は人間の敵?そうね、ハッキリ言って・・・・・・。』
私の様子を見た少女はククッと笑うや否や、キッと真顔で私を睨む。その目に私はたじろいだ。
『舐めないでよね、人間。たった数十年しか生きられない下等生物如きが高貴の一族の娘である私に勝てると思っているの?両親の仇討ち?吸血鬼が憎い?はっ、私としてはいい迷惑よ。それとも・・・・・・今すぐ両親の所へ行く?』
そう言って、近づくと同時に素早い動きで私の頭上に飛ぶ。そして腕が私の頭に向けられる。
殺される?吸血鬼に父や母と同じ様に?何もできずに?無力だから?嫌だ・・・・・・そんなのは嫌だ・・・・・・父と母が大切に育てた私が死ぬのは2人も望んでいないだろう。生きたい・・・・・・生き残る力が欲しい・・・・・・。
そう思った瞬間、私の内に何かとてつもない力が感じる事に気づく。そしてそれは起こった。吸血鬼の少女が止まった。いや、外のさざめく木も飛び立つ鳥も何もかもが止まっていた。私は何が起こっているか分からないが、今ならと少女にナイフを投げる。
残りのナイフも引き出し(父が開けてはいけないと釘を刺した)から取り出して投げようとした時、止まっていた全てが動いた。
『っ!?』
少女も突如として何が起こったか分からずにいた。だが、私が投げたナイフは彼女の右肩にかすりはしたものの、避けられた。
右肩の傷に少女は呆然としたが、やがて何か理解したのか右肩の血をすくって舐めながら笑う。
『そうか、貴方・・・・・・少しだけど時を止められるのね・・・・・・。』
『時・・・・・・?』
『どうやら、両親の死をきっかけに覚醒した様ね・・・・・・人間って中には特殊な能力を秘めているからねぇ・・・・・・。』
『時を止める・・・・・・?』
『気に入ったわ・・・・・・実はうちにもメイドがいるのだけど、妖精なのか使えないメイドばかり・・・・・・うちで働かない?』
『・・・・・・どう言う風の吹きまわしだ、レミリア・スカーレット・・・・・・!』
『『っ!?』』
そのうめき声に私と少女が振り向くとそこには胸に穴を開けられて地に伏している吸血鬼が嘲るかのように囁く。
『我等とはかけ離れ、よく血を溢して服を汚しているスカーレットのお嬢とあろう者が、我等の天敵であるヴァンパイアハンターの娘を雇う事になろうとはな・・・・・・いつかはあの狂った“フランドール”かその者に喉をかき切られても知らんぞ・・・・・・。』
その吸血鬼は不気味な笑いを浮かべながら言うが、当の彼女は澄ました顔で吸血鬼に近づく。
『余計なお世話よ、全く。ま、貴方のおかげで貴重な素材が見つかったし・・・・・・けどね・・・・・・妹の名を平気で狂気扱いした貴方には容赦しないわよ・・・・・・!私はフランにも彼女にも殺されない・・・・・・私の運命の中ではね・・・・・・。』
『っ!レミリア・・・・・・貴様・・・・・・!』
吸血鬼が何かを言おうとしたその時、少女が赤い槍で吸血鬼の眉間に突き刺した。トドメを刺された吸血鬼は息絶えた様だった。
自分の同胞を殺したにもかかわらず、少女は赤い槍を引っ込めて私に向き直り微笑む。
『良かったわね、貴方?親の仇が討てて。』
『・・・・・・っ!』
『何その表情?人間だって同じ人間を殺すでしょ?それと同じだと思うけど?ま、あいつはいつか、私が消そうと思っていた吸血鬼の面汚しだからね・・・・・・妹を嘲ったからその時間が早まっただけど。とにかく今から、貴方は私の物よ。そう言えば名は?』
『・・・・・・咲夜・・・・・・。』
『は?』
『・・・・・・十六夜・・・・・・咲夜・・・・・・。』
『イザヨイ・サクヤ・・・・・・ねぇ・・・・・・私の名はレミリア・スカーレット。高貴なる吸血鬼よ。』
『・・・・・・。』
『警戒しているわね・・・・・・両親の仇の同類が憎いって言うの?しょうがないわね・・・・・・。』
未だにナイフを構えて警戒している私に対し、少女・・・・・・レミリアは不気味に微笑んでこう言った。
『・・・・・・だったら、私の能力で・・・・・・貴方の運命を変えてあげる・・・・・・これで貴方は私の物よ・・・・・・。』
その言葉の意味を知ろうとしたその時、私の意識が朦朧となり・・・・・・そして視界が暗くなって意識が途切れた・・・・・・。

『と言う訳で今日からここで働く事になった新人よ。』
『・・・・・・十六夜咲夜と申します・・・・・・。』
どういう経緯かは分からないけど、私は吸血鬼・・・・・・レミリアお嬢様の所で働く事になった。
お嬢様がいる紅魔館という所では妖精メイドが多くいて、自分を興味心身と見ている。
そんな訳で私は紅魔館で新人メイドとして働く事になったがそこはまさにハードな毎日だった。お嬢様の指導が厳しいのではない、仕事が1人分よりも異常に多いのだ。原因は先輩の妖精メイド達のほとんどが仕事をしていないのだった。仕方なく私1人でやる事になっている。お嬢様も「なにも他のメイドの分までやらなくてもいいのに」と仰っていたが、何となく自分の気が済まないかもしれない。
そんな日々が続いたまま数週間が経ち、私はお嬢様に妹がいた事を知った。
名前はフランドール・スカーレット。メイド達からは“妹様”と呼ばれている彼女はお嬢様曰く、「吸血鬼の能力を暴走しやすい上で情緒不安定なのよ」、と地下室で寂しく過ごしていた。始めて会った時、『あら、カワイイお人形ね?遊ばない?』『駄目よ(byお嬢様)』と話しかけたその表情はまさに無邪気故の残虐さで妹様の雰囲気に私は震えるしかなかった。
そしてお嬢様にはたった1人の親友がいた。パチュリー・ノーレッジ様。彼女は魔法使いと言う種族で500年も生きている。読書が大好きなのはいいが、喘息持ちなのに図書館に引き籠っており、傍には彼女が召喚した小悪魔が身の回りの世話をしている。
いつの日か、先輩妖精メイド達に役割を分担させて作業を管理しながらお嬢様の世話をしている私にある出来事が起こった。
それは私がメイド長になる約5年前の事・・・・・・私があらゆる所をチェックしている時にお嬢様が『咲夜、今日から門番を雇う事になったから、挨拶しておきなさい。』と何故か片腕に包帯を巻いておられるお嬢様に言われ、私は門へ向かうとそこに彼女がいた。
背丈は私よりも上で、ほっそりとした脚が目につく。赤毛の頭には服と同じ緑色で星のついた帽子を被っていた。
しかし目つきは凄く悪く、何だかムスッとしている。私が近づこうとすると、不機嫌そうに彼女は私に振り向いて言った。
『・・・・・・あんだ?何か用でもあんのかよ?』
『(何だか不服そう・・・・・・)貴方が新しく来た門番さん?』
『・・・・・・んだよ、人間か・・・・・・別になりたくてなった訳じゃねぇけどな・・・・・・。』
『え?』
『あんたん所の主の吸血鬼娘にやられて無理やりに任命されたんだよ、クソッ・・・・・・!』
そう忌々しそうに言う彼女には、成程、体中が包帯まみれだ。恐らく、お嬢様とサシで勝負して負けて門番にされたのだろう。
そして彼女も人間ではない。私の人間の本能がそう告げていた。種族は何なのか聞かないでおこう。
『・・・・・・で?人間のメイドがあたしに何の用だ?』
『そ、それは・・・・・・貴方に挨拶しに・・・・・・。』
『はっ!結構、もの好きな奴だな。あたしが怖くないのか?』
『別に・・・・・・。』
『そりゃそうだよな。こんな化け物屋敷みたいな所に働く人間はあんたしかいねぇよ、普通。』
『そう言い方・・・・・・貴方、人間が嫌いなの?』
『正確に言いや、奴らがあたしを嫌っているのさ。人間って怖いものだらけじゃねぇか?“饅頭怖~い!”ってな?』
『・・・人をおちょくると刺すわよ・・・・・・!』
彼女の人間を馬鹿にした言い方に私はカチンとなって睨んで言った。すると彼女は不敵の笑みを浮かべて言う。
『あ~?何か文句あんのか?』
そう言って、彼女は私に近づきながら腕をポキポキと鳴らす。何だかただならない状態なんだけど・・・・・・!?
『文句あんなら・・・・・・拳で聞いてやるよっ!』
そう言って、彼女が私に突っ込んで拳で私に攻撃する。堪らず、時を止めてナイフを投げる。目的は戦闘を止める為だ。
しかし、勢い誤って1本が彼女の頭に帽子ごと刺さってしまった。その事に私は慌てて時を動かして彼女に駆け寄る。
死んだ?と思った瞬間、頭にナイフが刺さっているにも拘らず、起き上がって颯爽と私に噛み付いて来た。
『てめぇ!拳で聞いてやるって言ったのに飛び道具とは卑怯じゃねぇか!』
『取り敢えず、無事見たいね・・・・・・まぁ貴方の言う通り、人間は弱いからね。こうするしかないのよ。』
『何だか納得いかねぇ・・・・・・!』
『諦める事ね。貴方はお嬢様に興味を持たれたからここで働く事になっているじゃないのかしら?』
『じゃあ、あんたは何の為にここで働きに来たんだよ?』
『それは・・・・・・失った記憶を探す為かしら・・・・・・。』
『あぁ?』
『私、昔の事は覚えていないのよ。ここに来た理由も覚えていないもの。もしかしたら、お嬢様が私の記憶を取り戻してくれると信じて来たのだと思う。最初はそう思っていた。だけど、紅魔館でメイドとして働いている内にそんな気は全然しなくなったわ・・・・・・それはきっと、お嬢様を信頼しているからだと思う。記憶が戻らなくてもいい。お嬢様と幸せにいたらそれで・・・・・・。』
私の言葉に彼女は黙って聞いていたが、やがてクックと笑いだす。
『な、何よ?』
『さては、あんた・・・・・・あの吸血鬼に惚れているな?』
『っ!?な、な、な、何を言っているかしら!?メイドが主に恋などと天地が引っくり返ってもそれだけは!?それにお嬢様は誇り高き吸血鬼で私よりも長く生きておられるし、とても私なんかでは・・・・・・。』
『いいじゃねぇか?あのお嬢様もあんたの何かが気に入ったからここに連れて来たのだと思うしな・・・・・・よしっ!人間のメイド、あんたの記憶はあたしが絶対に取り戻してやる!ま、あんたの事が気に入ったし期待して待ってくれよな!』
『・・・・・・フフッ。』
『な、何だよ・・・・・・?』
『貴方って結構、人間に興味があるのね・・・・・・期待しないで待っているわ・・・・・・けど、一つ言いたい事はある。』
そう言って、私は指を彼女に突き付ける。それに対し、「?」とキョトンとなる彼女。
『ここで働くからには、門番の仕事をちゃんとやる事。貴方もお嬢様との約束で役割を任せたのでしょう?貴方は侵入者を撃退する事、いいわね・・・・・・あ、それとここの花園も頼むわね。最近、良いお茶を作る為の材料作りにもなるし。』
『・・・・・・ハァッ!?何であたしが!?つーか、花園までやらされんのか!?』
『それはお嬢様と私に負けたから。「飛び道具が反則」、しかも拳でやり合うなんて、いつの時代よ?恨むなら勝手に飛びかかった自分自身を恨む事ね・・・・・・それに、その言葉遣いも何とかならないのかしら?客人に失礼よ?』
『客人って来るのかよ・・・・・・分かったよ!やりゃあいいだろう、やりゃあ!』
『(ヤレヤレ・・・・・・挨拶しに行ったのに何でこうなるのかしら・・・・・・?)』
そう心の中では苦笑しつつも私はある事に気が付く。そう言えば、まだ名前を聞いていなかった。
『所で貴方の名前は?』
『・・・・・・メイリンだ・・・・・・あたしの名は紅美鈴。そういうあんたは?』
『十六夜咲夜・・・・・・紅魔館のメイドよ。貴方の先輩だから、“咲夜さん”って呼びなさい。』
『へっ。いきなり先輩面かよ・・・・・・分かったよ、“咲夜さん”。』
それが・・・・・・私と彼女、美鈴の出会いだった。あの時は美鈴が私の記憶を取り戻すと言ったっけ?
だけど、お嬢様が死ぬ間際に与えて下さった“運命を操る程度の能力”で私は過去を知ってしまった。
お嬢様と敵対する吸血鬼に両親を殺され、お嬢様に拾われたあの頃。
サブロウさんの言う通り、私はヴァンパイアハンターだった。ただし、正確にはヴァンパイアハンターの娘であるが。
本来は敵対し合うそれぞれの存在。だけど、過去を知ってしまっても私の気持ちは変わらなかった。
あの時のお嬢様はほんの戯れで私を拾って下さったけど、私はそれでも構わない。お嬢様のおかげで今の私がいるのだ。
だから、お嬢様と共に過ごした日々、全ての記憶を決して忘れる訳にはいかない。お嬢様から授かった能力を無駄にしたくない。
そう、全てはお嬢様との約束、全ての原因を突き止め、霊夢達と共に解決する為に・・・・・・。
それを感じた私は内なる何かが湧きあがるかのような気持ちになり、そして・・・・・・



間に合わない!そう思っていたサブロウ達だったが、凄まじい音と共にマリアを撃とうとした機械人形が吹っ飛んだ。
恐る恐る見ると、そこには異形の姿の咲夜がナイフを構えながら立っていたのだ。
「(サクヤ・・・・・・それが、お前の人外としての姿か・・・・・・!?)」
「咲夜・・・・・・お前はまだ・・・・・・!」
「・・・・・・お言葉ですが、S2様・・・・・・これがキリュウのやり方なのです・・・・・・貴方に何があったか分かりませんが、命を踏みにじるものと共に行動させる訳には参りません・・・・・・大切な何かを守る為なら、私は人外としての道を歩みます。」
そう咲夜が言うと、光が輝いてスペルカードが出て来た。それを手に取る咲夜。
「これが、お嬢様達と私の真の力です・・・・・・!秘儀、『夢想紅魔弓』・・・・・・!」
咲夜が発動するや否や、突如として空が暗くなり始める。天井には月が浮かび、空から赤く巨大な弓が咲夜の前に降り立つ。それに手に取り、咲夜は目の前にいるS2・・・・・・ではなく、月に向けてエネルギー弾らしき矢を発射した。
矢が月に当たった瞬間、月が砕かれ、その破片がS2の周りに降り注ぐ。その光景にハッとなるS2。
「まさか・・・・・・今のは私の行動を防ぐ為・・・・・・!?」
破片が至る所に散らばっているのでいくら真の力を解放しているとは言え、行動しづらい。上へ避けるかと思った瞬間、咲夜が弓を構えながら飛び立ち、S2に向けて先程とは比べ物にならない程の高威力の矢を放った。
ピチュチュチュ―――ン!!
その行動はほんの僅かであり、地面に降り立った咲夜は恭しく頭を下げる。それがメイドの義務であるかのように。



「サクヤッ!?」
「いやっほー!それが幻想郷のダンマクってやつかいな!まさにCG顔負けな演出だぜ!」
「???」
一息ついて人の姿に戻る咲夜に駆け寄るサブロウとニック、マリアが駆け寄る。その時、瓦礫から何かが動く音が聞こえる。
慌てて構える一同だが、瓦礫からボロボロ状態のS2が現れた。そして咲夜に対し、分かったかの様な口ぶりで言う。
「そうか・・・・・・それが、お前の思いであり、力でもあるのか・・・・・・そして紅魔形態はレミリアに与えられたのではなく、お前の思いが具現化したものだったとは・・・・・・!私は少し、勘違いしていた様だな・・・・・・。」
「S2様・・・・・・。」
「・・・・・・キリュウの命令とは言え、一般市民に手を出す事を黙認した私の落ち度だ。今回は、引いておこう・・・・・・しかし、私もクローンであって、レミリアではない・・・・・・それだけは分かってほしい・・・・・・次に会う時は・・・・・・。」
「はい、承知しております。ですが、貴方の意志とは言え、お嬢様の志と異なるようでしたら全力で阻止して見せます。」
「ふっ・・・・・・理由は何であれ、強くなったな咲夜・・・・・・。」
「はい・・・・・・メイドですから。」
「ならば、お前には偽名で隠す必要はないだろう・・・・・・。」
「えっ・・・・・・!?」
「私の名はサイゼリア・・・・・・サイゼリア・スカーレット・・・・・・それが私の本当の名だ・・・・・・咲夜、平和の時に会う事を祈る。」
そう言って、S2は・・・否、サイゼリアはテレポート装置を取り出し、去っていった。
「サイゼリア様・・・・・・。」
その様子を咲夜は寂しそうに見ていた。思えば、サイゼリア様もキリュウの言いなりになっている人形としてこき使われていたのだろう。故に真の黒幕はキリュウだ。彼女を倒せばサイゼリア様も他の勇者も彼女の言いなりにならずに済む。
その為には、キリュウを討つ・・・・・・!その思いを強くした咲夜は振り向いてサブロウ達へと向かった。

「本当に、彼女を連れて行くのだね?」
勇者の拠点でハリソン達と合流した咲夜は自分達の基地に戻らないか、と言うハリソンの誘いを丁寧に断って一度、幻想郷に戻る事となった。その時、マリアを連れて行くと言ったので一同は驚いたが、ハリソンはまるで分かっていたかの様に落ち着いていた。
「えぇ・・・・・・幻想郷の方がこの世界よりも狙われる心配はないし、一通り安全とも言えるわね・・・・・・。」
「すまないな・・・・・・君にとってこの世界の人間は愚かかもしれないな・・・・・・。」
「いいえ、それが人間らしさでもあるわ。それに・・・・・・彼女、何だか昔の私に似ていて・・・・・・。」
と、咲夜は足元を見る。そこには自分の脚にしがみ付いてじっと見ているマリアがいた。それに対し微笑む咲夜。
「そうか・・・・・・これからも帝国と戦うなら、再び共闘するかもしれないな・・・・・・本部からは君達の事は外部に漏れない様に進言しておく・・・・・・幻想郷と我々の世界の共存の為に・・・・・・幸運を祈る・・・・・・。」
そう言って、敬礼するハリソン。それに合わせて他のネオアルファーズ隊員も咲夜に向けて敬礼する。
「じゃあな、メイドの姉ちゃん。戦うメイドってのは一生の土産もんになったから礼を言うぜ。」
「貴方はまだ若いわ。だから、無茶は決してしないでね。」
「今度は何か飲ませてくれよ、絶対だからな!」
「あの・・・・・・いつの日か、幻想郷や他の方々についてお聞かせ下さい。」
「・・・・・・協力に感謝する・・・・・・。」
「良い根性だったよ、姉ちゃん。今回の撃墜王ってか?」
「マリアちゃんも気を付けてね~ちゃんと安静するんだよ~?」
ニック、ジョーニア、ボナルド、リン、ガルワ、ロージ、アンヌの言葉を聞いて最後はサブロウの方へ向きあうと・・・・・・
「サクヤ・・・・・・。」
「え?」
「お前がお前の道を行くのなら、俺は止めやしない・・・・・・お前の覚悟・・・・・・決して無駄にはするな。」
「・・・・・・えぇ、分かったわ・・・・・・。」
こうして、咲夜はマリアと共に、ネオアルファーズと別れて幻想郷へと帰還した。
これで、クローン勇者は全て倒した事になり、残るは修行中の霊夢と敵であるキリュウと紅のみである・・・・・・
だが、幻想郷の住人達は知らないのだろう・・・・・・魔理沙達が辿り着いた移動基地には勇者以上の力を持つ者がいる事を・・・・・・


続く



次回:「いきなり、敵の移動基地に赴いた魔理沙達。どうしようと戸惑う彼女等に襲い掛かるのは何と外の世界の少女達だった。それぞれの悲しみを背負い、人体改造で幻想郷以上の力を手に入れた特殊部隊に苦戦する一同だが、野心の為の改造に魔理沙の怒りが大爆発!怒りのマスタースパークは謎の軍事隊長に勝てるのか!?次回、『移動基地』!次回は魔理沙の弾幕に付き合ってもらおう。」



キャラ紹介
「魔光勇者:S2」
クローン1号で本名はサイゼリア・スカーレット。冷静沈着、皆を纏めるリーダー的存在。だが、その真面目すぎる性格が弱点になる事も。プロポーションは咲夜メインだが、真の力を発揮すると大半はレミリア。大の仲間思いでもある。
2号(薫)とは幼馴染的存在で上級勇者であるのでキリュウに可愛がられている。勇者の中では桁違いで真の力を発揮すればオリジナルのフランですら敵ではないと言われている。勇者達のリーダーなので苦労しているが趣味は掃除に読書と意外な面も見られる。
ZRXです。
正直、咲夜さんの話はどの様にしようかと迷った結果、こうなりました。
自分解釈で回想シーンも入ってます。原作の咲夜さんって結構、謎が多かったりしますね?
次回は霊夢と同じ主人公、魔理沙が活躍します。
ZRX
簡易評価

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コメント



0.310簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
そう! お前だ!
2.100名前が無い程度の能力削除
そうだね
8.20名前が無い程度の能力削除
今度はボトムズネタか・・・相変わらずだなお前は。そのしぶとさには恐れ入るよ。
これで残すはエース級の敵か・・・この終盤戦でお前がどう動くのかはお前の自由だが、これ以上この場所を荒らすのなら、二度とこの場に足を踏み入れないでほしい。
どうせならこの作品を作っているお前の顔を見てみたいもんだ。そんなに東方が嫌いか?
9.10名前が無い程度の能力削除
もうやめなさい
10.無評価名前が無い程度の能力削除
自己満足なら他でやれ。

しかし、不思議なものだ。なぜ減点がない。
15.100名前が無い程度の能力削除
これは文学だ
18.20Dark+削除
過去作の評価を見たので、偏見をもった状態で見始めたのですが……
自分には、なんとも言えません。頑張ってください、とも言えません。
……文学って、難しいです。

問題は、これがただ単純な「文学」ではなく「東方創想話」と認識できるかどうか。
僕には……難しかったようです。
20.100名前が無い程度の能力削除
君こそ東方の虫太郎だ! 読者の意見なんて気にするな、私は評価する。
27.70名前が無い程度の能力削除
文章を書くのは難しい、このような文章でもここまで書けるのは凄い
オリキャラ多いけど
32.100名前が無い程度の能力削除
なんか変なカップリングするSSよりこっちのが100倍好感持てるわ