Coolier - 新生・東方創想話

幼き日

2011/06/23 23:38:44
最終更新
サイズ
7.12KB
ページ数
1
閲覧数
1102
評価数
2/22
POINT
490
Rate
4.48

分類タグ


魔理沙は日課のきのこ狩りの途中、汗をぬぐって顔を上げ、周りの白樺やブナの木の緑を
見てひと息つくと、ふっと今までの人生が頭の中を駆け巡った。郭公が頭上でとてもはっきり「かっこう!かっこう!」
と鳴いている。緑色の羽毛の、ずんぐりと太った愛らしい鳥である。



魔理沙3歳。物心ついたとき、すでに自然界の不思議なものに興味を持つ子であった。
苔の生える野のちょっとした水の流れがきらきらと輝きながら細く永続的に流れるのを日がな一日見ていたり、
縮れた頭髪がこんもりと鳥の巣のようになった画家のおじさんの作業をあきもせずに見ていたり・・
そして家に帰ると実際にスコップで土を盛り、じょうろで水を流して流れを再現し、
女の子らしく母親にお人形さんを所望するでもなく、画用紙と絵の具をねだって、絵を描くのであった。
実際に出来上がったものはすぐに尽きてしまう水の流れと、絵の具を何度も何度も塗り重ねることで
真っ黒になってしまったA4の画用紙であったが、魔理沙の人生は充実感と成長の実感に満ちたものであった。
世の中は資本主義の波が沸き立ち、霧雨家も景気がよかった。両親は流行のおもちゃや、強い甘みや香料、炭酸
等の刺激に満ちた菓子を魔理沙に与えたが、そのいずれにも彼女は全く興味を示さなかった。
後に魔理沙は「幼稚園に上がる前までに、私の人生のピークは一度来ていた。そして今もその感覚が完全に戻ってはいな

いんだ。」と語っている。すべての行動を自分できめ、周りの大人は魔理沙の成果(それは前述の黒い画用紙であったり

、松の葉を互いに刺して組み合わせた魔理沙流の織物とでもいうべきものであったりした。)にいつも笑顔で祝福した。
こんな日々がいつまでも続くと思っていた。だが幼稚園に通う時は来てしまった。



幼稚園でも魔理沙のやることは変わらなかった。他の子供がグループを作って鬼ごっこやオママゴトに
興じている中、一人幼稚園の裏手の木が生い茂る山へ入っていき、紫式部の実や野生の山椒を集めた。
変わったのは周りの大人が一切祝福しなくなったことである。保母は仕事上がりに寝る男の事を考えていた。
                       ・
                       ・
                       ・


郭公は飛び去っていった。再び意識をきのこが生える地面に向ける。

「・・・うふふ。やってることは今も同じじゃないか。まるでマステリーだ。夕飯のおかずだからという言い訳は
便利なものだぜ。」悲しいことに、いまだに一日のうちで何かを採取する時間がなければ気もくるわんばかりになってし

まうのである。
これは生涯ついて回ることだと自覚していた。

幼稚園には魔理沙の好きなお絵かきの時間も、園児みんなで連れ立って言った遠足もあったはずだった。
しかし彼女の聡明な頭脳にそれらの記憶は記されていない。彼女は当時、自分の境遇をこう解釈した。

世の中で生きていくとはこういうこと。今までの自分が間違っていたんだ

小学校に上がると、事態は少し変化する。勉強とスポーツという競争の要素が加わったからだ。
人間関係のみが生活のすべてだった幼稚園時代に比べ、ここは楽園に思えた。
魔理沙にとって勉強は容易いことであった。物心ついた頃から自然を相手にした思索に人生のほとんどを
費やしてきた魔理沙にとって、算数も、国語も、すべて今まで自分が学んできたことを別の言語で表現しているに過ぎず


新しく学ぶことなど何もなかった。新しく学ぶとは自然と触れ合って地球のリズムのようなものを知ることに他ならなか

った。
魔理沙は幼稚園のときと同じように過ごしたが、違ったのは紙に鉛筆でさらさらと何かを書いたり、
校庭でいままで駆けずり回った山よりはるかに適当でも怪我しない運動をしたことである。
紙には100と書かれて帰ってきた。運動を終えると先生は笑顔で頭をなで、先生が去った後には彼女に同級生の男子が

群がった。


そうなると不思議なものである。今まで集団行動では必ず最後の一人になるように行動していたが、それに対しての評価

が愚図から周りに配慮のある子に
変わった。一人でいると人が笑顔で話しかけてくるようになった。休み時間には男子に野球に誘われた。
魔理沙は人と関わることに人生の新たな楽しみを見つけたかに見えた。絵を描いたり、自然を観察することはしなくなっ

ていた。

                          ・
                          ・


たっ・・・・・手の甲にひんやりとした水が滴る。その2~3秒後には周りの広葉樹が水で叩かれ、パタパタと
音を立て始めた。

「いっけない。雨宿りしなくちゃ。」


魔理沙は山を降りて舗装された道路に出て、そこのバス停で雨宿りをすることにした。
バス停にはいつ作られたのかもわからない、古びた屋根付のベンチがあった。黒くすすけた外観だが、
ベンチの座る部分には分厚くきられた立派な杉の一枚板を採用してある。この説得力があれば、
後世に残そうという気になるものだ。当時の職人の負けん気を、このベンチは何人に分け与えてきたのだろうかと思うと


魔理沙は感慨深いものがあった。そして少女はまた思索にふけっていく・・。
                          ・
                          ・
                          ・

学校の人気者となった魔理沙は、そのあふれるエネルギーを周囲の明るい雰囲気作りに費やした。
本当は学校の授業ではなく天体の勉強がしたいという気持ちがあったが、それよりも友達が学校の勉強を
理解できるように教えたりすることで先生とクラスメイトの両方から認められることのほうが重要な気がした。
各方面から引っ張りだこの魔理沙に自分の時間などなかったが、自分がこの場所にいていいという確かな実感のためには
必要な対価だと思うことで、それは苦ではなかった。それどころか、まず周りから認められなければ自分の意見を
実行には移せないという考えさえあった。放課後にはチアリーディング部のチーフとして集団をまとめる仕事にもいそし

んだ。魔理沙は誰よりも大きな声を出し、気合の乗らないメンバーには叱責した。

「声を出さないと体が冷えて大怪我するよ!!」

部の評判は魔理沙がチーフに就任してから良くなっていった。だがチームメイトから魔理沙は孤立していくのだった。
魔理沙は自分の興味のある勉強に時間を使うために部活後に円座になってトークするのに一切参加しない。
仲良くもない同年代に指示されるのが気に入らないようだった。

「魔理沙はみんなと仲良くもしないのにどうしてチアやってるの?」

頼まれた仕事をやってるだけ、そして仕事は「終わらせる」のが最優先だと説明しても、この娘たちには
まだ理解できないのだろう・・
魔理沙は自分の意見を殺してみんなを纏め上げるたびに自分の内臓と内臓の隙間に冷たい風が流れ込むのを
感じ始めた。一人で生きてきた幼少時代にも、人に認められ、人を笑わすことに人生の楽しみを見つけた
入学当初にも、思っても見なかった感情であった。優秀な生徒としての自分なら、彼らにも理解できた。
しかし、その最低限の仕事を済ませたから少しくらい本来の自分を出してもいいだろうと思うと、
たちまち「魔理沙がまたおかしなこといってるよぉ。」といった具合であった。そこにリスペクトはなかった。


疲労感を感じつつ魔理沙が帰宅し、ネクタイを緩めていると、母がやってきて、こう言った。

「魔理沙、あなた覚えてるかわからないけど、小さい頃あんたに絵を描いて見せてくれてた佐藤さんとこのおじいちゃん

・・」

「覚えてるよ。」一瞬、魔理沙の目に光が差した。懐かしい。あの日の眩しい空気と今より低い目線が蘇った。絵の具を
画用紙に塗りたくって真っ黒にしたっけ。
ああ、あの日のことを思うとこんなにうきうきする。やめよう。模範生になるのは。つまらない詐欺にあって
浮かれていたようなものなんだ。日曜日にはチアの練習ではなく佐藤のおじいさんに久しぶりに元気な顔を見せ

「亡くなったって。」

                          ・
                          ・
                          ・



雨が上がった。「さぁーて!今日中にあいつらにもおすそ分けとしてきのこを配らなきゃな!鮮度が命だぜ!」
                            



                           完
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.360簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力削除
貴方ってたしか東方を殆ど知らないんですよね?
3.無評価名前が無い程度の能力削除
マステリーって何?
4.50名前が無い程度の能力削除
東……方?

あと、意図しているのかどうかはわかりませんが、改行がメチャクチャでちと読みにくいです
5.無評価名前が無い程度の能力削除
魔界にも佐藤さんは居るんですね
8.無評価ラビィ・ソー削除
>>2 知識の出し惜しみはしておりません。

>>3 嫌な思い出に似た経験を繰り返すことで慣れ、苦しみの思い出を薄めようとすること、です。

>>4 すみませぬ。

>>5 ロバート佐藤さんといいます。30分で風景画を描く程度の能力です。
10.無評価名前が無い程度の能力削除
ロバート佐藤さんはどんな~程度の能力を持っているのか
11.無評価名前が無い程度の能力削除
これは作者の実体験なのか……
12.無評価名前が無い程度の能力削除
何これ
17.無評価名前が無い程度の能力削除
ラビィ・ソー、作品のレベルが変わらず、長期に渡り駄作を連投することにより読者や他の作者の気分を害する程度の能力、と。
19.無評価ラビィ・ソー削除
>>11
若干入ってます。マリサを見てると他人とは思えないんですよね。本当に私に似てて。*^^*
21.無評価名前が無い程度の能力削除
魔理沙に似てるって……w
23.無評価名前が無い程度の能力削除
作者がイタい人間だって事は分かった。
27.無評価名前が無い程度の能力削除
お前はZRX氏には勝てない。
28.無評価名前が無い程度の能力削除
文章力はあるのに、すごく残念。
東方の世界観関係ないなら注意書きくらい書いとこうぜ。
29.無評価名前が無い程度の能力削除
読者を尊重し、失敗や批判を糧にすればきっといい作品が出来ると思いますよ。
ただ、設定がおかしいらしいですね。
東方キャラの日常とか書けばいいんじゃないですか?
文章力は評価されてるようですし。
批判は全て確り読んで、今後に使いましょう。
私だって批判はたくさんもらったこともあります。
ただ、それを全部読み、糧にできたからこそ成長できました。

今後、ラビィ・ソーさんの成長した作品を読むことができるのを期待してます。
失敗は成功のもと、です。
30.無評価ラビィ・ソー削除
>>31
いやぁありがたいですね。勇気が出ました。
今後行き詰ったらあなたの言葉を思い出して書き続けようと思います!
31.無評価名前が無い程度の能力削除
てかさ、東方原作やろうよ ね?
32.無評価ラビィ・ソー削除
>>33
原作のゲームはやってます。小説は一冊も読んでないのですが。^^;
33.無評価名前が無い程度の能力削除
奇を衒わずに。普通のお話でいいんだよ
34.80名前がない程度の能力削除
良い魔理沙をお書きになられますね。
こういう話好きです、おもしろかった。
35.無評価名前が無い程度の能力削除
もう少しZRX氏を見て勉強をしましょう
36.無評価ラビィ・ソー削除
>>36
ありがとうございます。これからも書き続けますのでご期待ください。^^b

>>37
僕、ボトムズとか興味ないんで・・折角のアドバイス、申し訳ないですけど。^^;
37.無評価名前が無い程度の能力削除
魔理沙が他人とは思えないと作者は言うが、俺にはこの魔理沙が東方projectに登場した霧雨魔理沙と偶々名前が被っただけの他人にしか見えない件。
最低限wikipediaで調べればわかる程度の知識すら盛り込まれて無いし、本当に東方原作でやる必要性を感じられない作品だと思う。
過去作も全部読んだけど、自分の作品に対する批判を無視している様にしか見えんぞ。自分に都合の良い評価だけ聞いて他の意見に耳を貸さないなんてスタンスだったら、いつまで経っても成長しないと評価されても当然かと。
文章力が結構良い線いってるだけに、非常に残念です。
40.無評価名前が無い程度の能力削除
いや正に批判を無視して39さんの様な真摯な対応を見て、ほくそ笑んでるんですよね?
41.無評価名前が無い程度の能力削除
ここまでやってもレートで上に(下に)三作品もあるという中途半端さ。
42.無評価ラビィ・ソー削除
>>42
批判を無視するという発想が良くわかりません。自分ではかなり変わってるつもりなのですが。
>>43
出来れば高得点欲しいですよ。だから続けているんだし。
46.無評価名前が無い程度の能力削除
東方二次のテーマはファンタジーと現実との対峙だと思っているのでこれはこれで面白かったですね
最後は魔理沙は耐えれなかったんですかね