※現代入り、二次設定が含まれます。寛大な心でお許しください。
「宴会やるわよ」
梅雨の晴れ間。本格的な夏の到来を感じさせる陽気の中、神社の縁側に腰かける少女は呟いた。
赤を基調とし、所々フリルのついた、腋の開いた奇妙な巫女服を着ている。しかし、そんな彼女の周囲に人影はない。
宴会を開くという一種の決意表明。そんな独り言になりかけた彼女の言葉だったが―
「あら、珍しいわね。アナタから言い出すなんて」
虚空より出現した、別の少女―女性と言った方が外見的には正しい―により、会話となった。
彼女はスキマといわれる空間の裂け目から、上半身を乗り出すような形で、巫女服の少女の背後に現れていた。
「霊夢、危うく独り言だったわね」
女性は、霊夢と呼んだ巫女服の少女に向かって笑みを浮かべながら言う。その笑みは妖艶で、どこか浮世離れしている。
「どうせアンタの事だから、聞き耳立ててるんじゃないかと思ったのよ」
霊夢は仏頂面で返す。普段から表情に乏しい彼女だが、プライバシーもあったもんじゃないわね、とぼやいている事から若干不機嫌らしい。
「ところで紫」
霊夢はいつの間にか隣に腰かけていた女性、紫に改めて話を持ち出す。
「お酒とお魚は頼んだわよ」
それを聞いた紫は一瞬ぽかん、とした後に、苦笑いで霊夢をたしなめる。
「妖怪の大賢者様を使いっ走りとは、いい御身分ね」
「なんせ、幻想郷の巫女様ですもの」
さも当然、とばかりに言い返す霊夢に、紫はため息を一つ。
「誰に似たのかしらね…。まぁ、いいわ。暫く空けるから、結界はよろしくね」
「藍がいるじゃない」
「藍もお出掛けよ。それじゃあね」
そういうと、紫はまた忽然と虚空に消えた。縁側に一人残された霊夢は、空を見上げて一言。
「…アンタに似たんじゃないの」
その呟きは、雲一つない初夏の青空に人知れず消えた。
所変わって紫の住処。全体的にこじんまりとしているが、良く手入れされた趣きある日本家屋だった。
紫は、そんな屋敷の主である。彼女は屋敷の一角にある、自らの式の部屋の前に立つ。
「どうぞ」
気配を感じ取ったのか、部屋の中から凛とした、落ち着きある返答が返ってきた。
紫が襖を開けると、彼女に背を向けて座る形で式が書き物をしていた。九つの尾を持つ狐、数々の国をその美貌で滅ぼした妖怪。
それが紫の式たる、藍だ。
書き物を止めた藍が紫に向き直ると、紫が部屋に一歩入って正座をする。絵面だけ見ればどちらが主だか分からない。
「お呼びしていただけたら出向きましたのに」
「いいのよ。さて藍。デートに行きましょう」
式の部屋にわざわざ出向いた主に対し恐縮する藍であったが、当の主は気にせず提案した。
恐縮というものの、長きに渡る主従関係の中で、最早上下関係というものは形骸化していた。
式として紫に服従するというよりかは、藍個人として紫に服従する。二人の関係はそういうものであった。
紫からの突然のデートのお誘いという唐突な提案であったが、藍は特に驚くことはない。主の思い付きに付き合わされた数など、逐一覚えていられないほどだからだ。
藍の視線は、正座した紫の足元に畳まれて置いてある衣類に向けられている。
彼女たちが普段着るものとも、里の人間たちが着るものとも違う意匠の衣類。そこから導きだされる答えは一つ。
「…外に行く気、まんまんですね」
「おめかしは女のたしなみ。さぁ、支度なさい」
呆れる藍に、それを気に留めず事を運ぶ紫。何時もの光景であった。
更に所変わって東京某所。下町風情溢れる商店街に、金髪美女二人が並んで歩いている。
地元住民であろう年配買い物客の中、外国人風で長身な彼女達はさぞ目立つだろうに、周囲の人々は口々に挨拶するだけで別段気に留めない。
目立つがゆえに、皆見慣れているようだった。
細身のジーパンに薄ピンクと水色のブラウス。姉妹のような二人は、紫と藍、その人であった。
(おめかしとか言いつつ、大したものじゃないんだもんなぁ…)
藍は内心、自分の主に呆れる。断じて女性ファッション誌の読モに憧れてなどいない。断じて。
ちなみに、彼女のトレードマークである狐耳と大きな尾は妖力を用いて隠してある。数千年を生きる彼女には雑作もない事だった。
自分たちの服装に不満げな藍だが、そのシンプルさが、むしろ彼女たち自身の現実離れした美しさを際立たせている。
実際に現実のものではないのだが。
「お酒とお魚…相変わらず、随分とアバウトな注文ですね」
藍は横を歩く紫に声をかける。幾度となく外の世界へ主と共に繰り出している藍だが、未だラフな格好の紫には慣れない。
肩の辺りで二つにくくっているおさげが似合わないとかそんなことは断じて思っていない。断じて。
「ま、外で適当に見繕ってこいババァ!って感じなんでしょうね。子供さえいないのにババア呼ばわり…ゆかりん泣きそう」
「…霊夢も反抗期ですね」
めそめそと泣き真似をしながら、割りと本気で拗ねている紫にかけるべき言葉はない。何故なら、彼女はそんな事も楽しんでいるのだから。
「ま、いいわ。白魚さんと酒田さんのとこ寄れば済む話だし」
ちなみに、白魚さんは酒屋、酒田さんは魚屋である。ややこしい。
すると、紫は藍の顔を覗き込みながら言う。
「…不満そうね?」
その顔があんまりにもにやにやと不愉快で、藍の顔は熱くなる。断じて照れてなどいない。断じて。
「何のことだか分かりかねます」
顔を背ける藍を笑いながら、紫は楽しそうに言う。
「せっかくのデート。宴会までは時間あることだし、寄り道でもして行く?」
「…紫様がよろしいのならば」
せっかく外の世界に出たのだから、目一杯買い物をしたい。
そんな見た目相応の少女心と、自分たち以外の幻想郷の住民には出来ないことをしてしまっているという背徳感がせめぎ合う。
だからこそ、自らの主に判断を仰いだ。もちろん、期待を込めた上目遣いはばっちりである。
「…アナタも大概罪な女よね」
「紫様には敵いませんよ」
そして紫は藍の手を握り、歩く速度を早めた。
お目当ての魚介類と酒を買った二人は、駅前のマクドナルドに来ていた。若者の店、マクドナルドだが、ここ下町ではファミリー層が多い。
ちなみに、先ほど買った酒や魚は、はスキマにて博霊神社に送ってある。ちゃぶ台に突っ伏していた霊夢の頭上にあれやらこれやらが降りかかったが、外界にいる二人は知る由もない。
「…紫さま」
アイスコーヒーをストローで啜りながら、藍は怨めしそうに対面に座る紫を見据える。
「お言葉ですが、デートと称するならもう少しですね…」
ジト目で非難する藍だが、当の紫は余裕の笑みで反論する。
「経費削減よ、経費削減。お金は有限なのだから」
そう言われてしまうと、藍としては文句が言えない。何故なら、外界のお金を稼いでいるのは紫なのだから。
彼女が冬眠と称して、その期間は外界でアルバイトをしている事を知っているのは、藍と紫の友人、幽々子だけだ。
本来の世界で忘れ去られた者たちの理想郷たる幻想郷。しかし、その円滑な運営には少なからず外界の財産がいるのだ。
「…私も働こうかな…」
そんな、藍の小さな呟きだったが、それを紫は聞き逃さなかった。
「冬の間アナタまでいなくなったら、誰が結界を維持するのよ…。霊夢だけじゃ荷が重いわ」
呆れ顔でたしなめるも、直ぐに笑顔になる。
「これは私が好きでやっていることだから、気にしないで」
そう言われては返しようがない。むぅ、と唸りながら、藍はフィレオフィッシュを一口食べた。
ちなみに、荷が重いというよりは信用ならない、じゃないだろうかとふと頭を過ぎったが、あれはあれで、あの巫女はやる時はやるのだ。
「新しいテレビが欲しいわ!」
下町から電車で数駅離れた所にある家電量販店。混雑する店内にいやに目立つ金髪二人組がいた。
二人はテレビ売り場でかれこれ数十分言い合っていた。
ただでさえ目立つというのに、長いこと言い合っているものだから最初は止めに入った店員も諦め顔である。
「『世は地デジ化よ!』って3年も前にブラウン管から買い換えたじゃないですか!」
「確かにその通りよ。けれどね、今や世は3Dなの!」
「そんな常用もしない機能無駄なだけです!」
「毎日映画見るわよ!」
「レンタル料もバカにならないんです!何ですか!月に2万がレンタル料って!」
「だからW○WOWに入りましょうって言ったじゃない!」
「月々数千円なんて無駄です!映画だって見ない時は5年も見ないじゃないですか!」
以下略。
そのままヒートアップした二人は歯止めが利かなくなり、スペルカードを懐から取り出そうとした所で、
日頃着ている服でない=ここは幻想郷ではないという当たり前の事実に気付き、何事もなかったかのように店を出た。
その日、その店のテレビ売り場の売上は5%ほど落ち込んだという。
その後も服やら雑貨やら散々見て回り、時刻は夕刻。そろそろ宴会の支度を始めねばならない。
日頃何もしない紫は未だしも、藍は食材の調理を手伝わねばならない身である。
その旨を述べたら、紫に買い物したいとねだった件を散々弄られたので、もう御飯作ってあげませんと言い返したら泣かれた。
街中でガチで泣かれた。
「さて…帰りますか」
大きく伸びをする紫。お腹やら背中やらが見えて道行く男の脇見を誘うその仕草を、藍がはしたないとたしなめる。
その様は大変妖艶で、先ほど鼻水まで垂らして号泣していた妖怪とは到底思えない。
適当なビルの間の狭い路地に入ると、念には念を入れて人払いの術をかけ、紫がスキマを開く。
あなたから行きなさい、と言われスキマの前に藍は立つ。中では気味の悪い目玉が蠢くスキマを前に、藍は目を閉じる。そして、紫に向き直り、言った。
「皆、喜んでくれますよ。お酒とお魚」
精一杯の笑顔で、今言える精一杯の労い。こんな普段ダメな主だが、何時だって幻想郷の皆のことを考えている。
それなのに胡散臭いだなんだとのけ者にされるというのもなんだか藍には納得がいかなかった。
そんな考えから出た労いの言葉。こんなものは労いには入らないかもしれないが…
「…そうね」
紫の笑みで、藍も救われた気がした。
「宴会やるわよ」
梅雨の晴れ間。本格的な夏の到来を感じさせる陽気の中、神社の縁側に腰かける少女は呟いた。
赤を基調とし、所々フリルのついた、腋の開いた奇妙な巫女服を着ている。しかし、そんな彼女の周囲に人影はない。
宴会を開くという一種の決意表明。そんな独り言になりかけた彼女の言葉だったが―
「あら、珍しいわね。アナタから言い出すなんて」
虚空より出現した、別の少女―女性と言った方が外見的には正しい―により、会話となった。
彼女はスキマといわれる空間の裂け目から、上半身を乗り出すような形で、巫女服の少女の背後に現れていた。
「霊夢、危うく独り言だったわね」
女性は、霊夢と呼んだ巫女服の少女に向かって笑みを浮かべながら言う。その笑みは妖艶で、どこか浮世離れしている。
「どうせアンタの事だから、聞き耳立ててるんじゃないかと思ったのよ」
霊夢は仏頂面で返す。普段から表情に乏しい彼女だが、プライバシーもあったもんじゃないわね、とぼやいている事から若干不機嫌らしい。
「ところで紫」
霊夢はいつの間にか隣に腰かけていた女性、紫に改めて話を持ち出す。
「お酒とお魚は頼んだわよ」
それを聞いた紫は一瞬ぽかん、とした後に、苦笑いで霊夢をたしなめる。
「妖怪の大賢者様を使いっ走りとは、いい御身分ね」
「なんせ、幻想郷の巫女様ですもの」
さも当然、とばかりに言い返す霊夢に、紫はため息を一つ。
「誰に似たのかしらね…。まぁ、いいわ。暫く空けるから、結界はよろしくね」
「藍がいるじゃない」
「藍もお出掛けよ。それじゃあね」
そういうと、紫はまた忽然と虚空に消えた。縁側に一人残された霊夢は、空を見上げて一言。
「…アンタに似たんじゃないの」
その呟きは、雲一つない初夏の青空に人知れず消えた。
所変わって紫の住処。全体的にこじんまりとしているが、良く手入れされた趣きある日本家屋だった。
紫は、そんな屋敷の主である。彼女は屋敷の一角にある、自らの式の部屋の前に立つ。
「どうぞ」
気配を感じ取ったのか、部屋の中から凛とした、落ち着きある返答が返ってきた。
紫が襖を開けると、彼女に背を向けて座る形で式が書き物をしていた。九つの尾を持つ狐、数々の国をその美貌で滅ぼした妖怪。
それが紫の式たる、藍だ。
書き物を止めた藍が紫に向き直ると、紫が部屋に一歩入って正座をする。絵面だけ見ればどちらが主だか分からない。
「お呼びしていただけたら出向きましたのに」
「いいのよ。さて藍。デートに行きましょう」
式の部屋にわざわざ出向いた主に対し恐縮する藍であったが、当の主は気にせず提案した。
恐縮というものの、長きに渡る主従関係の中で、最早上下関係というものは形骸化していた。
式として紫に服従するというよりかは、藍個人として紫に服従する。二人の関係はそういうものであった。
紫からの突然のデートのお誘いという唐突な提案であったが、藍は特に驚くことはない。主の思い付きに付き合わされた数など、逐一覚えていられないほどだからだ。
藍の視線は、正座した紫の足元に畳まれて置いてある衣類に向けられている。
彼女たちが普段着るものとも、里の人間たちが着るものとも違う意匠の衣類。そこから導きだされる答えは一つ。
「…外に行く気、まんまんですね」
「おめかしは女のたしなみ。さぁ、支度なさい」
呆れる藍に、それを気に留めず事を運ぶ紫。何時もの光景であった。
更に所変わって東京某所。下町風情溢れる商店街に、金髪美女二人が並んで歩いている。
地元住民であろう年配買い物客の中、外国人風で長身な彼女達はさぞ目立つだろうに、周囲の人々は口々に挨拶するだけで別段気に留めない。
目立つがゆえに、皆見慣れているようだった。
細身のジーパンに薄ピンクと水色のブラウス。姉妹のような二人は、紫と藍、その人であった。
(おめかしとか言いつつ、大したものじゃないんだもんなぁ…)
藍は内心、自分の主に呆れる。断じて女性ファッション誌の読モに憧れてなどいない。断じて。
ちなみに、彼女のトレードマークである狐耳と大きな尾は妖力を用いて隠してある。数千年を生きる彼女には雑作もない事だった。
自分たちの服装に不満げな藍だが、そのシンプルさが、むしろ彼女たち自身の現実離れした美しさを際立たせている。
実際に現実のものではないのだが。
「お酒とお魚…相変わらず、随分とアバウトな注文ですね」
藍は横を歩く紫に声をかける。幾度となく外の世界へ主と共に繰り出している藍だが、未だラフな格好の紫には慣れない。
肩の辺りで二つにくくっているおさげが似合わないとかそんなことは断じて思っていない。断じて。
「ま、外で適当に見繕ってこいババァ!って感じなんでしょうね。子供さえいないのにババア呼ばわり…ゆかりん泣きそう」
「…霊夢も反抗期ですね」
めそめそと泣き真似をしながら、割りと本気で拗ねている紫にかけるべき言葉はない。何故なら、彼女はそんな事も楽しんでいるのだから。
「ま、いいわ。白魚さんと酒田さんのとこ寄れば済む話だし」
ちなみに、白魚さんは酒屋、酒田さんは魚屋である。ややこしい。
すると、紫は藍の顔を覗き込みながら言う。
「…不満そうね?」
その顔があんまりにもにやにやと不愉快で、藍の顔は熱くなる。断じて照れてなどいない。断じて。
「何のことだか分かりかねます」
顔を背ける藍を笑いながら、紫は楽しそうに言う。
「せっかくのデート。宴会までは時間あることだし、寄り道でもして行く?」
「…紫様がよろしいのならば」
せっかく外の世界に出たのだから、目一杯買い物をしたい。
そんな見た目相応の少女心と、自分たち以外の幻想郷の住民には出来ないことをしてしまっているという背徳感がせめぎ合う。
だからこそ、自らの主に判断を仰いだ。もちろん、期待を込めた上目遣いはばっちりである。
「…アナタも大概罪な女よね」
「紫様には敵いませんよ」
そして紫は藍の手を握り、歩く速度を早めた。
お目当ての魚介類と酒を買った二人は、駅前のマクドナルドに来ていた。若者の店、マクドナルドだが、ここ下町ではファミリー層が多い。
ちなみに、先ほど買った酒や魚は、はスキマにて博霊神社に送ってある。ちゃぶ台に突っ伏していた霊夢の頭上にあれやらこれやらが降りかかったが、外界にいる二人は知る由もない。
「…紫さま」
アイスコーヒーをストローで啜りながら、藍は怨めしそうに対面に座る紫を見据える。
「お言葉ですが、デートと称するならもう少しですね…」
ジト目で非難する藍だが、当の紫は余裕の笑みで反論する。
「経費削減よ、経費削減。お金は有限なのだから」
そう言われてしまうと、藍としては文句が言えない。何故なら、外界のお金を稼いでいるのは紫なのだから。
彼女が冬眠と称して、その期間は外界でアルバイトをしている事を知っているのは、藍と紫の友人、幽々子だけだ。
本来の世界で忘れ去られた者たちの理想郷たる幻想郷。しかし、その円滑な運営には少なからず外界の財産がいるのだ。
「…私も働こうかな…」
そんな、藍の小さな呟きだったが、それを紫は聞き逃さなかった。
「冬の間アナタまでいなくなったら、誰が結界を維持するのよ…。霊夢だけじゃ荷が重いわ」
呆れ顔でたしなめるも、直ぐに笑顔になる。
「これは私が好きでやっていることだから、気にしないで」
そう言われては返しようがない。むぅ、と唸りながら、藍はフィレオフィッシュを一口食べた。
ちなみに、荷が重いというよりは信用ならない、じゃないだろうかとふと頭を過ぎったが、あれはあれで、あの巫女はやる時はやるのだ。
「新しいテレビが欲しいわ!」
下町から電車で数駅離れた所にある家電量販店。混雑する店内にいやに目立つ金髪二人組がいた。
二人はテレビ売り場でかれこれ数十分言い合っていた。
ただでさえ目立つというのに、長いこと言い合っているものだから最初は止めに入った店員も諦め顔である。
「『世は地デジ化よ!』って3年も前にブラウン管から買い換えたじゃないですか!」
「確かにその通りよ。けれどね、今や世は3Dなの!」
「そんな常用もしない機能無駄なだけです!」
「毎日映画見るわよ!」
「レンタル料もバカにならないんです!何ですか!月に2万がレンタル料って!」
「だからW○WOWに入りましょうって言ったじゃない!」
「月々数千円なんて無駄です!映画だって見ない時は5年も見ないじゃないですか!」
以下略。
そのままヒートアップした二人は歯止めが利かなくなり、スペルカードを懐から取り出そうとした所で、
日頃着ている服でない=ここは幻想郷ではないという当たり前の事実に気付き、何事もなかったかのように店を出た。
その日、その店のテレビ売り場の売上は5%ほど落ち込んだという。
その後も服やら雑貨やら散々見て回り、時刻は夕刻。そろそろ宴会の支度を始めねばならない。
日頃何もしない紫は未だしも、藍は食材の調理を手伝わねばならない身である。
その旨を述べたら、紫に買い物したいとねだった件を散々弄られたので、もう御飯作ってあげませんと言い返したら泣かれた。
街中でガチで泣かれた。
「さて…帰りますか」
大きく伸びをする紫。お腹やら背中やらが見えて道行く男の脇見を誘うその仕草を、藍がはしたないとたしなめる。
その様は大変妖艶で、先ほど鼻水まで垂らして号泣していた妖怪とは到底思えない。
適当なビルの間の狭い路地に入ると、念には念を入れて人払いの術をかけ、紫がスキマを開く。
あなたから行きなさい、と言われスキマの前に藍は立つ。中では気味の悪い目玉が蠢くスキマを前に、藍は目を閉じる。そして、紫に向き直り、言った。
「皆、喜んでくれますよ。お酒とお魚」
精一杯の笑顔で、今言える精一杯の労い。こんな普段ダメな主だが、何時だって幻想郷の皆のことを考えている。
それなのに胡散臭いだなんだとのけ者にされるというのもなんだか藍には納得がいかなかった。
そんな考えから出た労いの言葉。こんなものは労いには入らないかもしれないが…
「…そうね」
紫の笑みで、藍も救われた気がした。
ゆかりんはもっと愛されるべき!
紫のアルバイトとかもこけねとかも期待してます。
ゆかりんだってちゃんとしっかりしてるんだよね、
財布の紐は藍に握らせたほうがちゃんとやってくれそうな気もする。
月2万レンタル料って何本見てるんだゆかりんww
語彙も以前より圧倒的に増えてるし、ネタも寒くない
しかし前半の神社の掛け合いがちょいと寂しいかな
あとテンポよく読めるからもう少し全体的なボリュームが欲しい
受験終わったんだったら……期待してるよ
さてゆかりんはどうする?
外貨を何故持って…ゆかりんが遊びで仕入れてそうだ