空を見上げる。
天気は悪くない。
漂う雲。
それをボーっと眺めて。
私は今日も門の前に立つ。
◇ ◇ ◇
静かだ。
心地よい。
侵入者もいない。
手合せを願い出てくる人もいない。
少し退屈。
でも幸せ。
平和。
大きく深呼吸。
私の後ろには、誰もが恐れる吸血鬼の館。
私がいるのは、境界線。
前は平穏。
後ろは危険。
◇ ◇ ◇
そろそろ昼飯だ。
さあて、今日は何を作ろうか?
門番隊の詰所で食事を作るのが日課。
美味しいのだろうか。
自分には分からない。
ただ。
門番隊の皆は私が食事を作ると群がってくる。
私の作った食事を頬張る。
皆、幸せそうだ。
それが。
ただそれだけが。
堪らなく嬉しい。
誰かに喜んでもらえる。
幸せそうな表情を浮かべる。
そんな些細な幸せ。
ただ。
今日は違った。
◇ ◇ ◇
「美鈴」
声がしたほうへ振り向く。
メイド服
凛とした佇まい。
瀟洒。
「・・・お昼ご飯を作っていたらね。余っちゃったのよ。ついでだからあげる」
そう言って手渡されるお弁当箱。
渡してくれたのは咲夜さん。
メイド長。
お嬢様のお世話を直々にしているだけあって、私なんかよりずっと立場は上。
そうか。
この子はこんなにも成長したんだ。
「ありがとうございます」
受け取る。
嬉しい。
素直に嬉しい。
咲夜さんは、私にとって一番思入れの深い『後輩』だ。
いや、今では咲夜さんのほうが立場が上なんですけどね。
昔はよく世話してあげた。
でも。
今では立派に成長してくれた。
それが何よりも嬉しい。
「な、なにニコニコしているのよ」
ツンッとそっぽ向く咲夜さん。
あらら、怒らしちゃいましたかね?
私は、それ以上なにも言わずに弁当箱を開ける。
あぁ、美味しそうだ。
一口、口に運ぶ。
・・・。
・・。
美味しい。
すごく美味しい。
そうか。
咲夜さんはこんなに料理が上手になったのか。
「・・・」
無言でチラチラとこちらを見る咲夜さん。
「うん、すごく美味しいですよ」
その言葉に、咲夜さんはプイッとそっぽむく。
あらら、また咲夜さんの機嫌を損ねちゃいましたか。
ホント、『気』を読める能力はあるのですがね。
暫くその場で立っていた咲夜さん。
「じゃあ、私は館に戻るからね」
館へと立ち去っていく咲夜さん。
忙しいんだろう。
私に『時間』を使っている暇もない。
彼女にとっては『時間』はとっても長い。
それでも有限。
◇ ◇ ◇
「今度、私の部屋に誘ってみますか」
有限でも、長くても。
きっと私より短い時間。
私は咲夜さんが大好きだ。
ずっと、一緒にいたい。
でも、時間は限られている。
だからこそ。
こんな些細なひと時を大事にしたい。
いつか。
私より先にいなくなる咲夜さん。
愛する彼女のために。
彼女を愛する自分の為に。
このひと時を。
大切な時間を。
どうか悔いのないように。
天気は悪くない。
漂う雲。
それをボーっと眺めて。
私は今日も門の前に立つ。
◇ ◇ ◇
静かだ。
心地よい。
侵入者もいない。
手合せを願い出てくる人もいない。
少し退屈。
でも幸せ。
平和。
大きく深呼吸。
私の後ろには、誰もが恐れる吸血鬼の館。
私がいるのは、境界線。
前は平穏。
後ろは危険。
◇ ◇ ◇
そろそろ昼飯だ。
さあて、今日は何を作ろうか?
門番隊の詰所で食事を作るのが日課。
美味しいのだろうか。
自分には分からない。
ただ。
門番隊の皆は私が食事を作ると群がってくる。
私の作った食事を頬張る。
皆、幸せそうだ。
それが。
ただそれだけが。
堪らなく嬉しい。
誰かに喜んでもらえる。
幸せそうな表情を浮かべる。
そんな些細な幸せ。
ただ。
今日は違った。
◇ ◇ ◇
「美鈴」
声がしたほうへ振り向く。
メイド服
凛とした佇まい。
瀟洒。
「・・・お昼ご飯を作っていたらね。余っちゃったのよ。ついでだからあげる」
そう言って手渡されるお弁当箱。
渡してくれたのは咲夜さん。
メイド長。
お嬢様のお世話を直々にしているだけあって、私なんかよりずっと立場は上。
そうか。
この子はこんなにも成長したんだ。
「ありがとうございます」
受け取る。
嬉しい。
素直に嬉しい。
咲夜さんは、私にとって一番思入れの深い『後輩』だ。
いや、今では咲夜さんのほうが立場が上なんですけどね。
昔はよく世話してあげた。
でも。
今では立派に成長してくれた。
それが何よりも嬉しい。
「な、なにニコニコしているのよ」
ツンッとそっぽ向く咲夜さん。
あらら、怒らしちゃいましたかね?
私は、それ以上なにも言わずに弁当箱を開ける。
あぁ、美味しそうだ。
一口、口に運ぶ。
・・・。
・・。
美味しい。
すごく美味しい。
そうか。
咲夜さんはこんなに料理が上手になったのか。
「・・・」
無言でチラチラとこちらを見る咲夜さん。
「うん、すごく美味しいですよ」
その言葉に、咲夜さんはプイッとそっぽむく。
あらら、また咲夜さんの機嫌を損ねちゃいましたか。
ホント、『気』を読める能力はあるのですがね。
暫くその場で立っていた咲夜さん。
「じゃあ、私は館に戻るからね」
館へと立ち去っていく咲夜さん。
忙しいんだろう。
私に『時間』を使っている暇もない。
彼女にとっては『時間』はとっても長い。
それでも有限。
◇ ◇ ◇
「今度、私の部屋に誘ってみますか」
有限でも、長くても。
きっと私より短い時間。
私は咲夜さんが大好きだ。
ずっと、一緒にいたい。
でも、時間は限られている。
だからこそ。
こんな些細なひと時を大事にしたい。
いつか。
私より先にいなくなる咲夜さん。
愛する彼女のために。
彼女を愛する自分の為に。
このひと時を。
大切な時間を。
どうか悔いのないように。
続くなら期待しています。