※このSSは「純情乙女マガンちゃん」シリーズの続編となります。過剰なマガン成分が含まれていますので、気分が優れなくなった場合はすぐにバックブラウザし、専門の医師の指導に従ってください。ユウゲンマガンの中で好きな眼が答えられる方、人気投票?マガンに入れたよ♪な方、夢マガは俺の夢物語。な方はそのままお進み下さい。
続編……と言うのもどうかと思うぐらい特に連続性は無いです。
「ふんふふ~ん」
「あれ、マガン。鼻歌なんて珍しいね。何か良い事あった?」
「エリス。うん!あ、あのね……」
にこやかに微笑むマガン。その後ろでは五つの眼が一斉にエリスを見る。
「視力でも上がった?」
「し、視力は右8.2、左8.4、おめめの一つ目36.5、二つ目37.2、三つ目36.3、四つ目39.1、五つ目38.2だけど……そ、そうじゃなくて!」
「お、ノリツッコミとは腕を上げましたな!しかし視力良いね!」
「し、視力下がっちゃったら、お仕事無くなっちゃうよ……。それでね、私がご機嫌だったのはね……」
「ふむふむ」
「あ、あのね、ちょっと背が伸びたの」
それを聞いてエリスはとても分かりやすくつまらなそうにした。
「えぇ~……ツマンネ」
「む!え、エリスはおっきいからいいけど、わ、私にとっては死活問題なんだよ?」
「私も充分ちっちゃいんだけどね」
「むむむ~……と、遠回しに私がかなりちっちゃいって言ってる……」
頬を膨らませてマガンは可愛くエリスを睨みつける。
「だってちっちゃいじゃん」
「し、身体的特徴で人を傷つけるのは、良くないんだよ……」
「いや~、ちょっと前まではずっと隠れてて身体的特徴どころか眼しかなかったマガンに言われてもね~」
「ただいまです。あら?マガン、どうしました?」
「さ、サリエル様……エリスがいじめるぅ……」
マガンは買い物袋を手に持っち帰宅したサリエルに抱き着いた。
「エリス、駄目ですよ。ちっちゃい子をいじめちゃ」
「さ、サリエル様も……!」
「だからマガンはちっちゃいんだって」
「い、いいもん……!ち、ちっちゃいのが好きな人もいるんだから!」
そう言うとマガンは背後の眼に飛び乗る。
「……少し外に出て来る。夕食までには帰る」
短くそう言い、五つの眼はふよふよと去っていった。
「ありゃりゃ、拗ねちゃった」
「?……どうしたんですか?」
苦笑いのエリスと不思議そうなサリエルはマガンの後ろ姿を見送った。
「そ、それで、みんな私のことちっちゃいって言うんですよぉ……」
ぷーっと頬を膨らませたマガンは両手で持っていたティーカップを置いた。
「そうなんですか……。それで、何で私の所に?」
その向かいには、夢子が腰掛けている。
パンデモニウム、夢子の部屋。
殺風景なその場所に、五つの眼が漂っている。
「ゆ、夢子さんは私のこと、ちっちゃいって言わないし、や、優しいから……。仕事中なのにごめんなさい」
「い、いえ!いいんです!仕事ならほとんど終わってますから、ゆっくりしていってください!」
顔を赤くした夢子は、わたわたと手を振りながら言う。
「あ、ありがとうございます。……やっぱり夢子さんは優しいです」
「い、いや……そんな……照れちゃいます……」
夢子はマガンに、珍しく可愛らしい表情で微笑んだ。
「と、ところで……夢子さんは、背もおっきいし、ぐ、ぐらまーですよね……。や、やっぱり最初からおっきかったんですか……?」
「うーん……魔界の一番最初の住民は皆、ある程度成長した姿だったんですけど、私は最初からこの姿だった訳じゃありませんでしたから……。ちっちゃい頃もあったんですよ。成長はそれからいつの間にか……って感じですかね」
「へぇ……ち、ちっちゃい頃は、どんな感じだったんですか?」
「写真はあるんですけど、どうしましょう……」
夢子は少し唸ると、決心したように手を合わせた。
「よし。じゃあ、マガンさんだけ特別見せちゃいます。妹達にも見せたこと無いんですけど」
そう言うと夢子は部屋の端に置かれた机の引き出しを開け、中から一枚の写真を取り出した。
「こんな感じでした。ちょっと恥ずかしいですが……」
その写真は少し色あせていたが、今と変わらず微笑む神綺と、その膝の上で無邪気な笑顔を浮かべる小さな夢子が写っていた。
「か、かわいい……」
「これは神綺様と喧嘩……というより私が一方的になんですけどね……。その後に撮ったものです」
「え?ゆ、夢子さんも神綺様とケンカ……するんですか?」
「昔はまだまだ子供でしたから……、自分が小さい事に劣等感を感じてたんです。それを神綺様のせいにして……恥ずかしい限りです」
「ほえぇ……そうなんですか……」
照れたように笑う夢子。
「マガンさんも自らの劣等感を他の人にぶつけてはいけないですよ。でも、マガンさんは優しいですからね、その心配は無用ですか」
「い、いえ……ご忠告ありがとうございます……」
マガンは立ち上がりペこりと頭を下げる。その拍子に机に置かれたティーカップが倒れてしまう。
「あ、あちち…………ご、ご、ご、ごめんなさいぃ……」
「そんなのはいいんです、それより火傷しちゃいましたよね!?」
「あ、や……だ、大丈夫ですよ……?」
「無理しないで下さい!今冷やしますから!」
表情で嘘を見破った夢子は、マガンを抱き抱えるとベッドに寝かせた。
それから短く何か呟き、服の濡れた所に優しく触れた。
「あ、冷たい……」
「ユキやマイ程ではありませんが、一応こんなのも使えるんです」
夢子は濡れた部分を順番に触れて、冷やしていく。その顔は真剣そのもので、本気でマガンを心配しているようだった。
そう、だからこそ気付かないこともあるのだ。
「あ、あの……ゆ、夢子さん……」
「どうしました?何処か痛みます?」
その問い掛けにマガンは少しもじもじしてから口を開く。
「あ、あの……夢子さんが今触ってるところ……ほ、ほとんど無いけど……そ、その……おっぱい……」
「………………あああああぁぁぁ!!!!!ごごごごごごめんなさい!!!!!」
顔を真っ赤にした夢子は目にも留まらぬスピードで手を退け、後方へ飛びのき、空中で一回転し、土下座で着地した。
「だ、大丈夫ですから……き、気にしないでください……」
「そ、そうですか?」
「は、はい……」
「…………」
「…………」
しばしの沈黙。
「……あ、あのっ!」
「は、はいっ!」
恐る恐る口を開いたマガンに夢子はびくりと反応する。
「えっと……も、もし良かったら……何でも良いので、お、お洋服、貸して貰えますか?」
「服……ですか?」
「は、はい……濡れた服のままだと……風邪、ひいちゃいそうなので……」
「分かりました。任せてください」
落ち着いた風に見せかけ夢子の目は輝いていたが、それに気付く事も無くマガンはただただ申し訳なさそうにしていた。
夢子は軽やかな足取りでクローゼットの前まで行き、中から迷う様子も無くすぐさま一着のメイド服を取り出した。
「これなんてどうでしょう?」
そう言って、夢子がいつも着ているのとは違う、スタンダードな黒いメイド服をマガンに手渡す。
「わぁ、かわいい……で、でも、どうしてこんな小さなサイズのを……?」
マガンの言う通り、夢子が取り出したメイド服は夢子が着るのには明らかに小さい。せいぜいユキマイサイズ……むしろマガンにぴったりと言っていい大きさだ。
「それはもちろんマガンさんの為にとくちゅ……ゲフンゲフン、パンデモニウムのメイド支給用の予備ですよ」
「そ、そうなんですか……?じ、じゃあこれ、借りても良いですか……?」
「もちろんですよ。きっと似合うはずです、何せマガンさんの為だけにゴホンゴホン、何でもありません」
マガンは首を傾げたが、深く追求はせず、むしろ可愛らしいメイド服を見てキラキラと目を輝かせた。
「私は新しいお茶を持って来ますから、その間にここで着替えててもらっていいですよ」
「わ、分かりました。それじゃあ……お借りします」
夢子が扉の向こう側に姿を消してから、マガンは自分の服に手をかけた。
「着替え終わりました?」
「あ、は、はい……」
お茶を用意して戻ってきた夢子は部屋に入る。
ドアを開けたらまだ着替え中という展開を望んでいた夢子だったが、マガンはしっかり着替え終わっていた。
「ど、どうですか……?」
メイド服姿のマガンを見ると、夢子は無言で持って来たお茶を置き、しゃがみ込んで鼻を押さえた。
「え、えぇ!?大丈夫ですか……?」
「あ、はい……似合いすぎます……」
「そ、そうですか?えへへ……照れちゃいます」
顔を赤くし、背後の眼をぎゅんぎゅん動かしてマガンは笑った。
その笑顔で再び鼻から流血の危機にさらされた夢子だったが何とか垂れ流しながらも堪えた。
「あ、マガンさん、頭に糸屑が付いてます」
「え?ど、どこですか……?」
「大丈夫ですよ、私が取ります」
夢子はマガンに近寄ると優しく頭に触れ、糸屑を取った。
「こ、こうして見ると……やっぱり夢子さんは大きいです……」
上を見上げたマガンだが、夢子の腰より少し高いぐらいの身長しかない為に視界は夢子の胸でほとんど隠されている。
「えっと、身長の事でしょうか?それとも……」
「えっ?あ、あのあの……、おっぱい?」
「おっぱい?」
「……おっぱい」
二人で無言で頷き合う。
「……まあ、実際これは私の自慢だったりするのですが。魔界で五本の指に入るとは自負してます」
「わ、私も……おっぱいだけでも大きかったらな……」
「だ、駄目です!ろ、ろ、ろりきょにゅ……な、なんて!あっ、でも!」
頭を押さえながら夢子は一人で悶絶している。
「ゆ、夢子さん?……夢子さーん?」
「はっ!い、いけません!…………いつもの冷静さを……」
自分の世界から帰ってきた夢子だったが、鼻から血液が垂れ流し状態である。
それからティッシュを鼻に詰め、深呼吸をし、いつも妹達の前で浮かべるような落ち着いた笑みを浮かべながら言った。
「私は、小さい胸も大好きですよ」
「そ、それは冷静に言っちゃ駄目ですよ……!」
そう言いながらも、マガンは少し壊れ始めた夢子を可愛いなぁと思った。この辺の趣味思考は一般魔界人には考えられない感覚らしい。
「あ!そういえば!」
「ど、どうしました……?」
突然夢子が上げた声にびくりとするマガン。
「マガンさん、今週末空いてます?」
「え?あ、はい……」
「前に約束してたじゃないですか、お食事」
「あっ、そ、そういえば……」
少し前にパンデモニウムに訪れた時、夢子に誘われていたのを思い出す。
「どうですか?」
「……よ、喜んで」
マガンは赤面でにっこり笑うと、夢子もつられるように笑う。
「…………」
「…………」
お互いに微笑みながら硬直。
「あ、あ、あの……私、そろそろ帰ろうかと……」
「そ、そうですね!あ、えっと……外まで送ります!」
そうは言ったものの、外まで二人は何も喋らずに赤面しているだけだった。
「あ、じ、じゃあ、今週末にまた……」
「はい、帰り道お気をつけて」
マガンは小さく手を振る夢子に手を振り返すと飛び上がり、周囲を舞う眼と共に宙に浮く。
「あっ、あの、それと……」
「は、はいっ!?」
ちらっと夢子の方を見たマガンは赤面しながらもにっこり笑うと、
「こ、今週末……楽しみにしてますね」
と言い、そのまま全速力で飛び去ってしまった。
それを聞いた夢子は、嬉しさのあまり顔がにやけてしまうのを手で隠しながら部屋まで行き、ベッドに倒れ込む。
(やっぱりマガンさん、可愛い、可愛い、可愛いぃ!)
枕を抱きしめ、くねくねと動くその姿は、いつもの夢子と同一人物と言われても疑ってしまう。
いつもの振る舞いを行えなくなるほどまでに今の夢子はマガンに心を奪われていた。
「青春ねぇ……」
「し、神綺様!?」
ついでに部屋に人が入ってきても気付けないほどに。
「マガン、なーんかさっきからにたにたしてるけどどうしたの?」
「わ、私、にたにたしてる……?」
「してますよ。出かける時はちょっと拗ねてたのに」
サリエル家の夕食風景。
サリエル、エリス、マガンの三人でちゃぶ台を囲んでいる。
「え、えへへ……な、なんでもないよ?」
「うっそだー、マガンが何も無いのにニヤニヤしてる訳ないじゃん!と言うかなんでメイド服なの!?さらに訳分かんないよ!」
「メイド服は良いじゃないですか、可愛いですし。それより……何があったか、白状しましょうか♪」
「な、なんでもないったら……あ、は、離してー!」
「サリエル様!脱がして脱がして!」
「分かってます!」
「や、やだー!や、やめてー!」
サリエルさん家は今日も賑やかです。
では、次回作も期待しています。