里から伸びる峠道。始めのうちは田んぼを横目に牛舎の土の発酵したにおい、モー という
少しの力みもなく、ただ体重の重みに任せて響く、大地の一部にも似た響きが
危険の少なさを人に肌で感じさせる。遠目に見える山の松の木立は、近くで見るそれと違い
今にも雲が引っかかりそうだ。高いところにあるものは松でも雲でも「高い」程度にしか認識しなくていい・・
普段気を張り詰めて生きる人間を、その景色は癒す。
しばらく行くと峠道はだんだん日照される範囲が減ってきた。
道の両脇は杉におおわれ、織物の隙間のようにわずかな葉の隙間から、射るような
日光が杉の生える地面にぶつかり、地面に生える蔓植物の葉を間接照明のように
裏側から浮かび上がらせていた。
時折開ける峠の曲がり角には杉がまばらにしか生えておらず、そこからは崖の下が見える。
谷の両脇は完全な漆黒の表面に緑のエフェクトが付着している。実際は緑の奥行きが
あまりにもあるために漆黒を作り出しているのだが、そこまで分析しろとは山は人に言わない。
そして谷底の流れはきらきらと白く、岩や川底に水がぶつかる無数の音、その一つ一つは
こちらに届くときにはすでにフラットな さーっ という途切れのない音楽になっていた。
さらに歩を進めると、道と杉の生える地面との間の高さに隔たりが出来てきた。
杉の高さはそのままに、自分の進む道がエスカレーターのようにせりあがっていく。
それにつれて日差しは見る見るうちに手加減をやめ、自分の背丈と杉の木の先端が
同じ高さになったときには空間のすべてが明るかった。
峠の最高点に着いた。
バッ・・・ッ・・!!!
旅人の頭上を一瞬、影が過ぎ去った。
「猿(ましら)か・・・」そうつぶやいて眼の上の頭蓋骨に人差し指を添え、
上を見た。
やや!?
日の影になってはっきりとは確認できなかったが、ロングスカートの中に
白い腿の肉と、その結合部をカバーするのは尻と股間の肉感を強調するかのごとき
ブルマ。そしてその生き物の額には立派な角が一本生えていた。
~麓の里~
ユウギは両のつま先を斜め45度に開き、甚句でも踊るようなリズムで悠々と
闊歩した。その歩き方は人間から見ると異様であり、しかし見とれずにはいられないものであった。
全身、あらゆるところの力が抜けており、人間から見ると静止しているものの代表格である大地
から、「うねり」を受け取って、それを利用してすいすいと進む。
うねりは一定ではないようで、小さいうねりでは少し進み、大きなうねりに当たると
ユウギはふわりとした動作であるのに、全くアンバランスにも50mほど一気に進むのだ。
このとき彼女は機嫌がよくなるらしく、満面に笑みを浮かべ、「るーん」とも「ふーん」とも
とれぬ小唄が口から漏れた。
道端にはタンポポが無数に鮮やかな黄色を競っている。
少年少女が4人ほど道の真ん中をふさぎ、体の一回り大きいもう一人の少年を責めていた。
「遅刻したら殺すってあれほど言ったよな」
「お前一人が勝手なことするとみんなの損失になるんだよ低能」
「ルールがあるんだよ。お前一人が特別じゃないぞ」
ユウギはあっというまに5人の固まる一円に密着するように立ち、ご機嫌な表情のまま
あどけない中にも正義を後ろ盾に責める楽しさを謳歌するケレンミが覗く4人を、
4人でワンセットのように同時に見た。
「うわぁーーーーーーーーーー!!!!!!うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
その声というよりは全身の血がもんどりうって口が開き脳天から本能が発露された音を聞き、
4人は辺りを見回した。道から脇に逸れた田んぼのあぜ道をもう40ヤードもいったところに先ほどまで
4人の目の前でうつむいていたはずの少年はいた。10歩ほど前のめりに走っては転び、起き上がっては
また走り、彼はあちこちを深く切って血まみれであった。
息を呑んで凍りつく4人。空を飛ぶ鳥が飛ぶのをやめて降りてくる。カラスは民家の屋根に。四十雀は
姫踊子草の咲く野っ原に。どの鳥も、信号待ちをするかのように、気だるく、それでいて整然としていた。
4人の子供はぽかぁーんと口をあけてユウギを見つめている。
「・・・・ぁあーん」
4人の目の前に立つ長身の鬼が面倒くさそうにうなると、列車が近くを駆け抜けたときそのものの
風きり音が巻き起こった。右端の少年にユウギの手が当たると、彼の頭部はあっけなく胴体から切り離された。
そのままユウギが無造作に力を抜いて振りぬくと、頭は水平に弾丸のごとく射出され、隣に立つ少年の
頭部に衝突し、パンッ! という乾いた破裂音と共に赤い霧があたりに立ち込めた。
霧は風に乗って流れていき、タンポポの上を通過した。黄色の花弁は血液の付着によって
つややかな赤い花となり、やがてその赤は日光による感想で色あせていき、下地の鮮やかな黄色
と折り合いを付けて紅花のようなオレンジ色となった。
説教に夢中になり、ユウギの接近に気づかないという、若年の高い集中力が災いする皮肉。
そして日本のアニミズムにおける常識、道の真ん中は神様のもの を侵す基本的な見落とし・・
致命的な過ちが2つも重なれば、この世で浮遊する権利は剥奪され、土として悠久の歳月を下支え
する仕事が与えられてしかるものなのであろう。
鳥たちは羽毛のついた長い腕をよっこらせとばかりにもこもこした胴体から取り出し、
自分たちの一日へと帰っていった。
鬼はやや上を向いたキュートな小鼻をふふんと鳴らし、
「なんでぇ、はよ出てこいや」
道の右手の田んぼがボコボコとあわ立ち始める。やがて泥が盛り上がり、人の形を成す。
人型の泥はこちらの道に向かって這い上がって来た。背はあまり高くなく、何事か喋っているが
泥が次から次へと口の中に入って「あのゴフォ・・あわガフフ」と何を言っているのか分からない。
ユウギは片方の眉をうんと下げ、目を半開きにしてもう片方の眉はうんと持ち上げるという
芸をしつつ息を ふっ と吹き付けた。
泥はすべて後方に吹き飛んでいった。道に花火を印刷したように模様が出来上がる。泥の飛まつは
限りなく細く、長いものは30mはあった。鬼の鋭い吐息を吹き付けられた「それ」は
あまりの強風に耐えかね、一瞬で重心を後方に持っていかれると、やや間を置いて尻餅をついた。
尻が地面にぶつかると、反動でかかとがぴょこんと上方に跳ねた。
諏訪子は後ろ手をついたままユウギを見つめた。頬は真ん丸く下あごの骨をすっかり隠し、額は
ボリュームがあり前髪が薄く見える。
「産卵するからたんぱく質が必要なの。そこのヒト二人、食べてもいい?」
「ああ。あたしはレバーがあればいいから残りは持ってきな。」
「ありがとう!」
少女はつややかな凹凸のないほおの肉をさらに寄せて笑った。
完
一発変換出来ない名前はカタカナなんですかね。
今回は諏訪子はちゃんと漢字になってますし。
鬼神乱舞、かつ諏訪子かぁいいよ、みたいな話でしょうか。
間違ってたらすいません。それと、ひとつ言わせて。
生命をもうちょっと丁重に扱ってあげて欲しいんです。
最近の流行、と考えていますが、やはり人道に反した行為です。
広く一般受けするものではないので、その、突然の描写は勘弁してください。
文章も長くなり、可読性も向上していると感じました。(慣れかもしれない)
感心させられる表現も多く、また、神という存在に対する哲学を読み取れました。
プロットは薄味ですけど、投稿速度からすれば凄い濃度だと思います。
独特のテイストが癖になりそうです。期待してます。長文失礼。
https://twitter.com/#!/aaam8/status/78234406355079168
https://twitter.com/#!/aaam8/status/78253407214911488
https://twitter.com/#!/aaam8/status/78261538166808576
https://twitter.com/#!/aaam8/status/78266325910294528
これが本当ならもうちょっと知ってから書いたほうがいいと思います
本格的な荒らしみたいですね、このラビィ・ソーって方は。
もう飽きちゃったのか?
でもひとつ言わせてください。私にとってツイッターは遊びで創作活動のほうが本気です。
でもこうしてみるとツイッターばれというのはひとつの芸術ですね。残しておくことにします。
これからも投稿は続けます。皆さんのおかげで文章の地力が向上しているのを自分でも感じます。
ありがとうございます。mーーm
カタカナで書いているのは、きわどい描写をした際に俺の嫁になんてことを!と思わせないためです。
俺の嫁はこんなことしねえ!と思う方は同音の他人だと思っていただけるかなと。
>>10
>>11
>>12
ツイッターは飲み屋でオヤジ同士が会話してるようなものですから、話を面白くするために
盛ります。真に受けられても困りますし、私の一連の作品投稿も釣りではありません。
神への見方を読み取ってもらえて感激です。実はこの作品のテーマなのです。
次回作も日曜に上げますのでご期待ください!
悪くはないにしろ一言注意が欲しかったです
思わぬ発見があるはずです。
それとこのような作品ならタグに注意事項を記すなりしていただければ、と思います。
わかりました。やってみます。
タグに関しては全くその通りですね。今すぐします。
わざわざ難しい言葉を使わずに簡単にまとめてみてはいかがでしょうか?
ありがとうございます。当方昭和の小説家のファンでありまして、
ついついクサくなっちゃうんですよねー^^; 簡潔な表現で同じ効果を出す工夫をしてみます。
自分が今まで、少ない時間をかき集めて、文章力が無くても読者の方に喜んでもらえるような工夫をひねり出して、色々ぶつかって迷って失敗しながらSSを書いてきたのがバカらしく思えてきました。
今まで私の作品ほぼ全てにコメントをくれていた某固定ハンドルネームの方は私の作品と彼の作品に同程度の点数を付けるし。これが一番へこんだ。
なんというか、創想話そのものがどうでもよくなってきました。
そういう意味で、何かと考えさせられる作品(作者)でした。
なので個人的には高得点ですが、空気を読んでフリーレス。
ちょwwwwwwww俺にとってそれは最悪の結果ですよ!
あんまりクソミソ言われるから「俺あらしだもーん。ふーん」てやっちゃっただけじゃないですか!
それに点数=価値じゃない!とくにネットはね。アデリーペンギンさん、やめないで!
ありがとうございます。めげたりせずに頑張って生きようと思います。^^
ツイッターご覧になったんですね。よろしければフォローしてくださいね。私も仕返しますから。m--m
ま、羞恥心が芽生えるまで遊んでって
このような有意義な場にいることを許されて
ほっと胸をなでおろしています。仰るとおり、羞恥すべき拙文ではありますが、
皆様の暖かい叱咤激励をありがたく頂戴している次第です。m--m
誰だ通報したやつは!`^´ 俺にとって10点がどれだけ貴重かわかってんのか!
管理人に連絡させていただきます。
せっかくの作品が作家の名前で貶められてちゃどうしようもないじゃない。
コメントに対する反応・対応をもう少し冷静にやれば、もっと長く深く使える『遊び場』になると思いますが、どうでしょうか。
くじさん流石ですね!いやぁー嬉しいな。^^
「これは1・00・・・電光板の桁が足りないので10点ということですね!」www
くじさんみたいな話のわかる人と遊べるのが一番嬉しいですよ!この作品を書いたのが今報われました。^^v
冷静に普通に ですね。 でも皆さんが思ってるほど私に他意はないですよ?素朴な人間なんです。
10点がほしいらしいので10点にさせていただきます
変な事さえ書かなかったら80点はいれてたのに・・・
自分とてツイッターとここじゃ使い分けてますし。
純粋に、作品として滑ってると思いました。
グロいものを見せたいだけって作品で、内容も大してないですね。
自分に酔った勢いで書き上げた文章と感じました。
申し訳ないですが、本気さは感じられません。
それ以上に、読みにくさに引っかかりました。地の文章は良いのにもったいない。
減点した70点のうち50点くらいがこの部分です。
まず、カタカナの部分、作者としては思う所があってそうしたようですが、
ただ読みにくさを増すだけで何の効果もありません。
もし、仰っている通りグロ描写回避という意味でそうしているのなら、
最初にその旨を書いておくのが効果的です。
あと、改行位置ですね。これまでほとんど指摘がないようですが。
「~は、<改行>~して~した。」と
文が始まって数文字で改行している場所があり、読んでいて引っ掛かりました。
アート・リンゼイとは最高のほめ言葉ですね!ありがとうございます。
技巧にとらわれず自分が表現したいものに近づけることを追求する姿勢は
私の理想とするところです。