Coolier - 新生・東方創想話

霧雨魔理沙は信じない ~天地開闢クエイクガーデン~

2011/06/09 22:00:54
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※この作品は、一作目「霧雨魔理沙は知りたくない」の設定を用いています。
※また今作は過去シリーズほぼ全てのネタバレが含まれているので、「霧雨魔理沙の非常識な日常」タグから一作目及び「見たくない」「顧みない」「覚えない」「退かない」に目を通されることを、強く推奨します。
※長くなりましたが、どうぞお楽しみ下さい。




















――0・ゆうしゃよ、そなたのなをおしえてくれんか?――



 天蓋という言葉がある。
 顔を上げれば視界一杯に広がる青空。
 これを、昔の学者だか偉い人だかは、空に乗っかった幕だって言ったらしい。
 そんな話を、私はパチュリーの所で読んだことがある。

「暑い日は、やっぱりこれだな」

 蒸し暑い魔法の森を抜けて、青空に躍り出る。
 眼下の森は瘴気の霧で、その全容が見えなくなっていた。
 あんなあからさまに暑い場所で寝起きしなければならないのが、あの森の一番嫌なところだ。

 その暑さを解消するのに、良い方法。
 その一つが、この広大な空を飛び回るということだ。
 終わった後、茹だるほどに暑い思いをするのは、もちろん承知の上で。

 だが、楽しく心地よい時間というものは、大抵直ぐに終わりが来る。
 それはどんなものにも訪れるのだと、種族人間でかつ職業魔法使いである、私こと“霧雨魔理沙”は、よく理解していたりもする。

「あー……腹減った」

 ……それが“空腹”というのも、なんとも情けない話だが。
 腹の虫が、なにか食べさせて欲しいとめそめそしやがる。
 時間帯的に、昼食や夕食ではなく、そう……三時のおやつ、というやつだ。

「三時にティータイム、か」

 自分で言って、思い浮かべた場所は三つ。

 一つは、悪魔が住む真っ赤な屋敷――紅魔館。
 一つは、外からの習慣で、三時にカステラを食べるという神の根城――守矢神社。

 どちらも、今までに巻き込まれたことがある諸々の事情で、あまり進んで行きたいと思えない。
 だからだろうか、私の箒は自然に、思い浮かべた最後の場所に向けられていた。

「今日は……あー、曜日は関係ないんだったな」

 今日は、木曜日。
 だが“あの日”から、今日が何曜日であるかなど、意味を成さなくなっていた。
 そう、魔法の森の、私の隣人――アリス・マーガトロイドの秘密を知った、あの日から。

「さて、頼むから、まともな“彼女”であってくれよ」

 青い屋根、白い壁。
 マーガトロイド邸の前に降りたって、大きく深呼吸をする。
 こんなに緊張する理由はないはずなのだが、木曜日はいつもドギマギとさせられた苦い――ある意味、甘酸っぱい――記憶があるから、どうしても及び腰になってしまうのだ。

「おーい、アリス!遊びに来たぜ!」

 声を上げる。
 すると、待つ暇もなく扉が開かれた。
 開けてくれたのは、赤いエプロンドレスの上海人形だ。

 偶然、扉の前にでも居たのだろう。

「サンキュ、上海」

 私が礼を言うと、上海は微かにはにかんで頭を下げた。
 表情に微細な変化を与えられるようになったのか……また上に登りやがったな、“アリス”のやつ。

「入るぜー」

 直ぐに開けてくれた、ということは水曜日か木曜日だろうか。
 いや、上海が本当に偶然扉の近くまで来ていたのだとしたら、誰でも――土曜日に限っては、爆破される可能性があるので上海と蓬莱は持ち出し禁止になっている――可能性が出て来てしまう。

 フローリングの廊下を進み、リビングに顔を出す。
 半袖のシャツの上から青いワンピースを着て、その上から白いケープを羽織っている。
 私に対して背中を向けているため、滑らかに波打ったブロンドの髪に隠れて、リボンの色が見えない。

「アリス?」

 私が声をかけると、アリスはゆっくりと振り返る。
 ともすれば冷たいように見える瞳。
 けれど、その目に宿る光は、決して冷たいものでは無い。

 そう断定できる理由なんか、ただ一つだ。
 アリスの首元に巻かれた、リボン。
 その色は――光の反射によっては銀色にも見える、灰色だった。

「魔理沙」

 私の名を呼ぶ声は、透きとおっている。
 冷たい声、なのに決して突き放したりはしない、優しい声。
 ほとんど変わらない表情も、私の視線に沿うと、柔らかく綻んだ。

「会いに来てくれたの?」
「え、あ、いや、なんだ」

 正直に言おう。予想外だった。
 いやだって、今日は木曜日だぞ!?
 自由に表に出てくるようになったのに、なんで――――“木曜日”のアリスが、いるんだよ。

「私は会いたかったわ。魔理沙は?」
「あ、会いたくないなんて事はないぜ?」
「そう、嬉しいわ」
「ぐ、ぬ」

 このアリスは、言い方がストレートだ。
 私の目を真っ直ぐ見て、クールな物腰で素直な言葉を告げてくる。
 自他共に認めるひねくれ者――アリスや霊夢は、私を“まっすぐ”だとか言ってくるが――な私は、毎回のようにこの口調に負けてしまう。

「座って、紅茶を淹れてくるわ」

 アリスは私を椅子に促すと、席を立つ。
 いつもは人形を使うのに、何で今日はまた自分で行くんだ?

「人形にやらせればいいじゃないか」

 思わずそう、訊ねた。
 操っているのはアリスだからどうかわからないが、面倒はないと思うんだがなぁ。
 私の言葉に振り向くアリスの表情に、変化はない。だが、ほんの少し、頬に朱が差し込んだように見えた。

「久々に会うんですもの……私の手で、淹れたいのよ」

 それだけ言うと、アリスは踵を返して台所へ歩いて行った。
 一人残された私は、どうしていいか解らず大きく息を吐く。

「ああ、ちくしょう。あれは反則だぜ」

 私に“そっち”の趣味はない!
 ……はずなんだけど、最近どうにも押され気味だ。
 いやいや、押されているだけでそっちの趣味は勿論ないんだが、境界線を勘違いしそうになるんだ。

 木曜日のアリスと会うのは、思えば本当に久々だ。
 一番落ち着くのが水曜日のアリス、一番エンカウント率が高いのが、土曜日のアリス。
 他のアリスにもちょくちょく会うのだが、ここ最近、運悪く――私の運的には、微妙――木曜日のアリスに会うことがなかった。

「まぁ、なんだ、その」

 友達では、あるんだし。
 せめて木曜日のアリスが望むどおり、紅茶でも飲みながら雑談を楽しむくらい良いだろう。

 ついでに、茶菓子も貰おう。
 アリスのことだから、きっと用意してくれるだろう。
 それを食べながら雑談して、夜には幼いアリスでも引っ張り出して夕飯でも食べればいい。

 なんだ、そう考えると充実した一日になるじゃないか。





 私は、そんな風に楽観視していた。
 ここ最近ずっと、アリスに関わると何かしらの不利益を被ることなど、すっかり忘れて。

 だって仕方が無いじゃないか。このアリスには、どうにも弱いんだから――。
















霧雨魔理沙は信じない ~天地開闢クエイクガーデン~
















――1・“ああああ”じゃだめですか?――



 私の目の前に並べられる、白いケーキ。
 甘い香りが鼻孔をくすぐるこれは、天界の中でも上質な部類な“桃”のケーキだという。
 アリスが白魚のような手でケーキにナイフを入れると、なんの抵抗もなくすとんと切れる。
 まるでナイフを受け入れているかのようなケーキの有様に、私は生唾を呑み込んだ。

「どうしたんだよ、それ」
「あの方がね、貰ってきたの」
「貰ってきた?引き籠もりじゃなかったのか……」
「こら、もう」

 あの方……アリスの“本体”のことだろう。
 てっきり引き籠もりかと思ったが、そうでもないらしい。
 いや、故郷からの伝手やらなんやらなのかもしれないが。

 私の前に、ケーキが置かれる。
 甘い香り、でもくどさは感じられない。
 あっさりとした桃の風味が、ぎゅっと凝縮されているのだろう。
 ああ、腹減ったぜ……。

「あら?魔理沙、来てたの?」
「マスター……」

 木曜日のアリスが、柔らかい目を向ける。
 リビングの入り口、そこには幼いアリスが佇んでいた。
 睡眠を必要としないはず……なのに、心なしか眠たげに見える。

「マスターもどうぞ、ケーキよ」
「あら美味しそう。いただくわ」

 幼いアリスと二人揃うと、なんだか親子のようにも見える。
 幼いアリスが親、水曜日が長女で木曜日が次女、三女はきっと火曜日だ。

「なによ?変な顔して」
「変な顔って言うなよ」

 失礼なヤツだ。
 私はため息を吐くと、幼いアリスのスペースを空けるために、席を立った。
 ソファーの真ん中に座ったままじゃ、幼いアリスの座る場所がない。

「こっちに来て座れ――っ」

 席を立った瞬間、足がほつれた。
 前に飛び出す勢いと相まって、身体が浮かび上がる。
 このままだと、私の額は机によって真っ二つにされてしまうだろう。

「ぐぬ、負けるか!」

 だから私は、あえて前に飛んだ。
 これで額が割られる事はないのだろうが……目の前にあるのは、ケーキだ。

「おおおっ!」

 身体を空中で、捻る。
 今なら体術で世界を狙えそうだとか、そんなことを混乱した頭で考えていた。
 驚くアリスたちの姿を視界の端で捉えながら、私は時間が緩やかになったように見える極限の空間の中で、身を捩らせることに成功した。

「呻れ!私の――ぁ」
――ぐしゃっ

 手を着いた先。
 切り分けられたケーキの上に……手が乗る。
 美しいケーキが潰れていく絶望感の中、私が見たのは、ケーキの大皿だった。
 そう、ケーキそのものではなく、皿である。

「おおおっ……づ!?」
――ガンッ

 ぬおおおお、脳髄が飛び出る!?

 大皿の端に額がぶつかったことで、てこの原理の要領でケーキが宙を舞う。
 オマケに皿も宙を舞い、その皿が私めがけて振ってきた。

「ぁ――」
「――魔理沙!!」

 私の上に振ってきた、大皿。
 それを回避するために、木曜日のアリスは私を抱き締めた。
 でもこのままじゃ、木曜日のアリスに当たっちまう!?

――ヒュンッ
「はぁ、まったく」

 だが、ぶつかる直前。
 幼いアリスが、糸を使って皿を絡め取った。
 鋭角に落ちてくる皿を割らずに拾えるのか……私ももうちょっと、器用さってやつを身につけてみようかな。

 床に無残な形で横たわった、桃のケーキ。
 その哀愁漂う姿に、私は胸が締め付けられた。
 彼女を殺したのは……私だ。くそう、腹減ったぜ。

「あー、アリス、すまん。ケーキが」
「ケーキなんてどうでもいいわ。それよりも私は、貴女が心配」

 私を抱き締めていた木曜日のアリスが、そっと身体を離して私の瞳を覗き込む。
 清涼な空を連想させる蒼壁の瞳に、私は小さく目眩を覚えていた。
 睫毛長いな、アリスのヤツ……って、そうじゃなくて。

「でも、ケーキが」
「ケーキはまた作ればいいわ。でもね、貴女は一人なの」
「うぅ、そ、そうか」

 そんなに心配されると、いたたまれない。
 なんというか、どう考えても私がドジったのが原因なのに、木曜日のアリスはそれを責めるどころか私のみを本気で心配していた。

 こんな時、水曜日ですら小言を零すのに。

 視界の端では、上海と蓬莱がケーキを片付けていた。
 上質な桃だったろうに、本気でもったいない。
 そしてそれ以上に、しっかり作ってくれたであろう木曜日のアリスに申し訳ない。

「うん?いや、待てよ」

 私は怪訝な表情を浮かべる木曜日のアリスから離れると、上海と蓬莱を操っていた幼いアリスに視線を向けた。

「なぁアリス、桃ってどこのなんだ?」
「天界よ。天界でまともに食べられる物なんて、酒と桃くらいなんだから」
「やっぱり、そうか」

 天界の料理は、さほど美味しくない。
 前に地震の異変で行った時は、桃と酒と咲夜が持ってきたナマズのみでの酒宴となったことを、思い出した。

 私はもう一度、小首を傾げていた木曜日のアリスに向き直る。

「あー、なぁアリス」
「どうしたの?やっぱり額、痛む?」
「いや、そうじゃなくてだな」

 改めて言おうとすると、照れる。
 いや、照れる必要なんか無い筈なんだが、な。

「せっかくの桃ダメにしちゃったし――これから一緒に、天界まで採りに行かないか?」

 私が提案すると、木曜日のアリスは目を瞠る。
 やがてだんだんと口元が綻び、そして、微かに笑みを浮かべた。

「今日は良い日ね。魔理沙がデートに誘ってくれるんですもの」
「いやなら、いいんだぜ?」
「ふふ、ごめんなさい。嬉しいわ、魔理沙」

 あー、こんな反応が予想できたから、口に出しづらかったんだ。
 私は赤くなった顔を隠すために、帽子を掴んで引き下げる。
 そうして初めて、左手についたクリームに気がついた。
 これに気がつかないほどに、私は混乱していたようだ。

「魔理沙、その手……」
「……ん、うまい」

 クリームを一舐めして、桃の風味を味わう。
 クリーム自体にも桃のエキスが練り込まれていたのだろう。
 爽やかで、あっさりとした味わいだ。

「そうしたらさ、もう一回作ってくれよ。今度は私も、手伝うからさ」
「魔理沙……ええ、お願いするわ。ふふ、今日は、本当に良い日ね」

 木曜日のアリスは、そう言うと私に近づいて、糸で引き寄せたタオルを使って手を拭ってくれた。

 心情はストレートでも表情は澄ましていることが多い、木曜日のアリス。
 そんな彼女にしては珍しく、今は終始笑顔を崩さずにいた。

「ねぇ、二人とも。行くのは良いけど、朝帰りは止めてよね」
「ぶっ、ごほっ、ごほっ」

 く、クリームが、気管に!?
 幼いアリスの方を見ると、彼女は細めた瞳で私たちを見ていた。
 そういえば、幼いアリスが居ることをすっかり忘れてたぜ。

「朝帰り、どうする?魔理沙」
「少なくとも着替えは必要よね」
「何言ってんだ二人とも!?あ、朝帰りとか、私にそっちの趣味はない!!」

 ああ、くそっ。
 なんで私がこんなに慌てなきゃならんのだ!?
 ケーキか、ケーキの呪いか?さっさと作り直して、成仏させるしかないのか?

「あら?私は、天界でのんびりしすぎないようにって言ったつもりなんだけど……ナニを想像したのかしら?」
「ぐっ……おまえ、ぜったいわかっていってるだろ」
「なんのことかしら?」

 二人のアリスは、それだけ言うと揃って笑いだした。
 こう、修行中に魅魔さまに「お母さん」って言ったときと同様の気恥ずかしさを感じる。
 ああ、くそっ、思い出すな!私の黒歴史!

「まぁいいわ、気をつけて行ってきなさい」
「気をつけて、どうにかなるんならな」

 私の口は、自然とそんなことを零していた。
 まるでトラブルに巻き込まれることが前提みたいなことを、自分で言ってしまう。
 いや、これ以上考えるのは止そう。本当になりそうだ。

「ま、お土産でも期待しているわ」
「おう、任せとけ」

 私は拭い終わった手で箒を掴むと、木曜日のアリスと並んでマーガトロイド邸を後にする。
 幼いアリスは、そんな私たちをしっかりと玄関まで見送ってくれた。

「しっかり捕まっておけよ、アリス!」
「ええ、わかったわ。ふふ、楽しみね」

 私の箒の後ろに跨った、木曜日のアリス。
 彼女が零した声を耳朶に受けながら、私は瘴気の森を抜けて、天蓋を仰いだ。

 そういえば、天界に行くためには、妖怪の山を抜けなければならないような気がしたのだが……ま、まぁ、なんとかなるだろう。
















――2・さいしょのまちでぼうけんさがし――



 幻想郷の天蓋。
 その上に乗っかっているのが、天界だ。
 天界は成仏した霊が溢れすぎて飽和状態……だなんて言われていたのは、過去のことらしい。なんでも、紫が乗り込んでみたらまだスペースがあったと判明したとか。

 その天界に行くためには、ある手順を踏まなければならない。
 別に面倒な手順ではない。ただ、山を登るコースで行けば良いだけだ。
 空を飛んでいるのに登るとはこれ如何に?と言われそうだが、先に述べたように登るときのコースを辿ればそれで充分。

 大切なのは、手順。
 魔法でも同じ事がいえるため、私にとっては非常に解りやすい説明だったりする。

「ねぇ、魔理沙。どうしてそんなにこそこそとしているの?」
「土曜日と記憶を共有してみろ」
「え?――――ぁぁ」

 詳細は省くが、土曜日のアリスはこの山で暴れたことがある。
 世間的に見ればアリスは一人ということになっているのだから、万が一見つかりでもしたらまた、私とアリスの二人で妖怪の山に乗り込んだことにでも、されかねない。

「ねぇ魔理沙、あれ、椛じゃない?」
「え?」

 アリスに呼び止められて、慌てて木の裏に隠れる。
 そのまま右側を見ると、少し離れた位置で椛が仁王立ちをしていた。
 何故か、サングラスと耳栓をして。
 どこで手に入れたんだよ、あんなもの。

「……行きましょう、魔理沙」
「……ああ、そうだな」

 私とアリスは、そっとその場を離れる。
 あのサングラスじゃ、千里を見通せてもよく見えないだろう。
 オマケに耳栓だ。音すらも聞こえないとか、大丈夫なのか?

 嗅覚は……流石に遠いか。

 一応警戒しながら、その場を離れる。
 すると、今度は視界の端に射命丸の姿を捉えた。
 咄嗟に身構えようとするが……どうにも、その必要はなかったようだ。

 木の陰に隠れて、椛に向かってカメラを構える射命丸。
 あいつは私たちに首を向けると、良い笑顔で親指を立てた。

「今度、彼女にクッキーでも焼いてあげた方が良いかしら」
「たぶん、噛みつかれると思うぜ」
「それもそうね」

 あの怪しげな姿を記事にされるのであろう椛から、私たちはそっと視線を逸らした。
 あれが彼女たちのスキンシップなのだろう。そう、考えておくしかない。

 私たちは、そのまま山を進んでいく。
 背後から輝く弾幕ごっこの光を、極力見ないようにしながら。

 いくらサングラス越しでも、フラッシュをたけばばれると思うぜ?射命丸。
















――3・だんじょんへいこう!――



 天界へ行くために必要なステップ、その二。
 それは、たまにリュウグウノツカイの妖怪“永江衣玖”が泳いでいる玄雲海を抜けるということだ。
 稲妻を越えて行かなければならないというだけのことなので、大した苦労もなく抜けることが出来る。

「っても、まさかこんなにすんなり行くとはなぁ」

 私はアリスと連れたって、玄雲海を切り抜けた。
 稲妻が収まっていて、衣玖の姿も見えない。
 そのため、本当にすんなりと抜ける事が出来たのだ。

「普段は、もっと大変なのかしら?」
「ああ、暗くて何も見えないし、稲妻もあるし」
「ここのところ晴れ続きだったし、その影響じゃないかしら」
「まぁ、それなら暗雲は出ないか」

 地震の心配が無くなって、暇になった。
 そんなことを言いながら浮いている衣玖だが、今日はその姿が見えない。
 まぁいつもいるはずはないし、気にしなくても良いだろう。

「さて、見えてきたぜ」
「へぇ……あれが、天界」

 自分の目で見るのは初めてなのだろう。
 アリスは感心したように、そう零した。

 苔と岩で覆われた地面。
 沢山の桃の木と、楽しげに談笑する天女たち。
 飽和状態だなんて嘘だと一目でわかる、広大な空間がそこにあった。

「せっかくだし、一番上等な桃を探そうぜ」
「そうね。その方が、魔理沙と長く一緒に居られるものね」
「……まぁいいけどさ」

 箒から降りて、歩く。
 アリスは、火曜日みたいに近づくのを躊躇ったり、月曜日みたいに抱きついてきたりしない。
 一緒に同じ空気を感じられる、最も近いパーソナルスペース。
 それを掴んで、離さないのだ。

 心地よい、距離感。
 ずっと甘えていたくなる、近さ。
 それを享受しているのはなんだか私らしくない気がして、私はアリスの手を掴んだ。

「さ、良いから行こうぜ!」
「ちょ、ちょっと……もう、魔理沙ったら」

 アリスは、私の行動に驚くも、直ぐに頬を綻ばせた。
 そしてそのまま、強く手を握り返す。
 アリスの手はなんだか冷たくて、自分の体温がいつもよりも高いような気がした。

 きっと私は、混乱していたのだろう。
 だから、ここが周囲に誰もいないような場所じゃなく、知り合いも普通にいる場所だと言うことを忘れていたんだ――。

「あら?そこにいるのって地上の魔法使いかと思ったけど人違いだったわ邪魔したわね!」

 視界の端に飛び込んだ青が、ドップラー効果と共にフェードアウトする。
 その声の主は、なんというか、すごく聞き覚えのあるもので。

「まままま待て!天子!」
「私にソッチの趣味はないから!人の陰私を発く気は無いわ!」
「私にだってない!てかなんだ?“いんしをあばく”って!」
「ひとの秘密を探る事ね。……ねぇ魔理沙。私とは、いや?」
「あ、ありがとう、アリス。って、いや、じゃなくて!」

 天子のヤツ、本気で走ってやがる!
 くそっ、このままじゃどんな噂を流されるかわかったもんじゃない。
 きっと、「地上ってあんなことあるのね」みたいな感じで、世間話をする気だ!

「良いから話を聞け!不良天人!」
「知っているわよ!そうやって甘言を弄して罠にかけるんでしょう!?」
「だぁもう!アリス!手伝ってくれ!」

 叫びすぎて、疲れてきた。
 依然として走り回る天子を、追いかける。
 そろそろ足が上がらなくなって、キツイ。

「……飛べば良いんじゃないかしら?」
「あ」

 バカ正直に、箒を手に持って走っていた。
 よく見れば、アリスは低空飛行で私に着いていてくれたようだ。
 なんというか、混乱しすぎだろ!

「“ウィッチレイライン”!!」
「ちょ、あぶな……」
――ドンッ!

 天子が喚び出した要石で、私の突進を受け止める。
 当てる気も無かったし、向こうも防御目的の要石だった。
 なんにしても、止まってくれたのは僥倖だ。

「とにかく、話を聞け!」
「はぁ、わかったわよ。でも、洗脳はされないわよ?」
「するか!」

 ああ、くそぅ。
 なんで今日の私は、こんなに迂闊なんだ!

 憤りを覚えつつも、ため息を吐いてそれを誤魔化す。
 とにかくまずは説明して、この厄介な誤解を解かないと!
















――4・さいしょのなんかんにたちむかえ!――



 桃のために来て、ちょっと急いで探したかった。
 私はそう、かいつまんで天子に説明した。

「まったく、紛らわしいわね」

 確かに紛らわしかった気がする。
 いや、気のせいだ。ぜったい気のせいだ。

 かつて、人の気質を集めて地震を起こそうとした、不良天人。
 青い髪と桃がついた帽子、それから極光をイメージしたスカートを穿く少女。
 それが、天界に棲まう天人、比那名居天子だ。

 不良天人と言うだけあって、けっこう好き勝手やっている。
 でも頭の固い連中とは違って、呑み込みも良いしノリも良い。
 異変以外なら、一緒に宴会で盛り上がれる相手だ。

「貴女も大変そうね。鈍感なひとがお相手で」
「そんなことはないわ。どんなところも、素敵だもの」
「そ、そう」

 私がそんな風に回想している間、アリスと天子でなにやら話をしていたようだ。
 何を話していたか気にならないと言えば嘘になるが、嫌な予感がするので黙っておく。

「なぁ天子」
「なによ」

 天子は、僅かな疲労感を見せる顔つきで、私の方に視線をよこした。
 追いかけっこがそんなに疲れたんだろうか?そういえば、天子も走ってたしな。

「さっきも説明したが、私たちは上質な桃を探してるんだ。どこにあるか、知らないか?」
「まぁ、知らない事もないけれど」
「本当か!?教えてくれ!」

 天子は、何故だか気まずげにアリスを見る。
 アリスはそれに、肩を竦めながらも優しげな表情で首を縦に振った。
 なんか、のけ者にされ感があるぜ。

「天界の奥に、格段に味の良い桃があるのよ。私はこれからそれを採りに行くところだったのだけれど……一緒に来る?」
「いいのか!?助かるぜ」
「ええ、そうね。私たちだけでは、見つかるかも解らなかったし」

 私が諸手を挙げて喜ぶと、アリスも私の手を取って喜んでくれた。
 どこの桃が一番美味しいかなんて、一々試すのが大変すぎる。
 だから、天子がここに現れてくれたことは、有り難い。

「それならいいわ、さっさと行きましょう」
「おう!」

 天子に並んで歩き、その更に隣にアリスが並ぶ。
 空を飛んでいく必要はないのか、地上を歩いて向かうようだ。
 さっき走り回ったせいで歩くのが面倒なんだが……それは流石に、運動不足か。

「そういえば、貴女は何で桃を?」
「ええっと、アリス、よね。確か」
「ええ、そうよ」
「そういえば敬語は止めたのね。堅苦しいのは、面倒だからいいけど」

 アリスの質問に対して、天子はそう首を傾げた。
 ため口から、変な風に思うところがあって敬語に変えたのだろう。
 間違いなく、金曜日のアリスの仕業だった。

「え、ええ。それで、どうして?」
「ああ、桃ね。まあ罰みたいなものよ」
「罰?今度は何をやらかしたんだよ」
「いつもなにかやっているように言わないで頂戴」

 天子はそう肩を竦めて、私を細目で見た。
 そんな目をされても、仕方が無いじゃないか。
 どう考えても、天子自身の、日頃の行いのせいだ。

「要石を勝手に刺したから、その罰として桃を採ってこいって言われたのよ」
「はぁ?上等な桃を見つけ出せれば、それでいいってことか?」
「おそらくね。まぁ、上等な桃の在処は知っていた訳だけど」

 それは、なんというか、命じた方が滑稽なのか天子が狡賢いのか。
 なんにせよ、簡単な命令を恭しく受けてここにいるって事か。

「裏がありそうで怖いわね」
「道中の妨害くらいは覚悟していたのだけれど、なんにもないわ」
「おまえそれ、私たちを囮にする気だったんじゃ……」
「そんな気は無いわよ」

 まぁ、緋想の剣を持っている割りには戦闘態勢に入っているように見えない。
 本当に、この辺りは大丈夫なのだろう。
 そうでなくとも、最近気配に敏感だから、私自身が気がつけそうなものなのだが。

 しかし、天人たちはなんで桃を求めたんだ?
 見渡す限り桃……というか、まともに食えるものなんか桃くらいしかないのに。
 流石に、三食桃は勘弁して欲しいぜ。

「ああほら、そこの上よ」
「うん?丘か」

 私たちの視線の高さ程度の、小さな丘。
 天子は、軽く飛び上がるとその上に乗り、私たちを促した。

「さ、こっちよ」
「あ、ああ。行こう、アリス」
「ええ、そうね」

 アリスがごく自然に手を伸ばすので、私もごく自然にその手を取ってしまった。
 くそぅ、天子の呆れたような目が痛い。

 丘の上に登り、それから視界を前に戻す。
 するとそこには、ぽつんと生える桃の木があった。
 一本だけ生えている、とはなんとも怪しい木だ。

「前に家の書庫で見つけたのよ。あの桃の地図」
「じゃあ、食べてみたことはないのか?」
「あるわよ。ひとに言って、採ってきて貰ったことがあるもの」
「ひと?」
「衣玖よ」

 衣玖も災難だな。使いっ走りじゃないか。
 そういえば、天子が好き勝手にしていると飛んでくる衣玖が、今日は見えない。
 ……少しだけ、気になるな。

「その衣玖は?」
「休暇よ。霧の湖で魚を観察するって言ってたわ」
「楽しいのか?それ」

 天子は、私の問いに肩を竦めて、首を振る。
 いやまぁ、知らないか。衣玖の心情なんて。

「さて、どうする?魔理沙」
「うーん、まぁ、とりあえず採ってから、食べられる物かどうか検証しようぜ」

 アリスに言われて、桃に近づいていく。
 天子もさっさと歩き出してしまったし、遅れるのは、少し癪だ。

「どうだ?」
「そうね……よっと」

 木の下に立った天子が、桃を採ろうと軽く飛んで手を伸ばす。
 アリスもその様子をじっと見て、桃が噛みつきでもしないか見ているようだった。
 そんな中、私は、桃の木の洞を見ていた。

「キツツキでも居るのか?妙に綺麗な穴だが……」

 木の洞。
 綺麗な円形の穴を覗き込み、その中心を窺う。
 急に鳥や動物でも飛び出してきたら危険だから、少しだけ遠慮気味に。

「採れたわよー」
「おう、どれ早速――」
「――魔理沙!」

 天子の声に振り向いた瞬間、私の背後に視線を移したアリスが目を瞠る。
 同時に、何かに気がついた天子が、緋想の剣を振りかざした。

「伏せなさい!」
「ッ」

 言われるがままに伏せて、そのまま地面を転がる。
 天子が剣から放った、赤い気の斬撃。
 その刃は輝きを宿して、私の背後へ飛んでいった。

――ドオンッ!!
「おいおい、なんだよいったい!」

 アリスの元まで転がり、手を取って起こして貰う。
 そうして私は初めて、何が起こったのか把握した。

「桃の番人ってことかしら?」

 木の洞からうねり出る、二本の黒い触手。
 緋想の剣の一撃を受けてもなんともないとは、けっこう厄介な気がするんだが。

「でも、切り抜けられない状況じゃない!」

 八卦炉を片手に、箒に跨る。
 この程度の逆境は、何度も乗り越えてきた。
 この程度で、どうにかなる私じゃない!

「魔理沙、背中は任せなさい」
「ああ、頼んだぜ」
「仕方ないわね。要石を、引き抜く訳にもいかないし」

 天子もまた、私の隣りに立って不敵に笑う。
 未知の敵に対して、恐れなんかない。
 享楽のために異変を起こして見せた異端の天人は、状況に限らず享楽を見いだしていた。

――オォォォ
「ッ!来るぞ!」
――ォォォォォオオオッッッ!!!

 呻り声か、風の音か。
 吹き荒れる風が、木の洞に吸い込まれていく。

「吸引か!」
「魔理沙、捕まって!」

 アリスがよこした人形を、掴み取る。
 天子も地面に緋想の剣を刺しているが、耐えきれるかは解らなかった。

――ゥゥゥ
「止んだ?」
「まだだ、天子!」
「へっ?」

 ふとした気の弛みが、天子の身体を持ち上げる。
 一瞬風を止めたように見せたのは、次の吸引への息継ぎに過ぎなかったのだ。
 舞い上がり、緋想の剣ごと吸い込まれていく天子。

 ああもう!手間のかかる天人だぜ!

「魔理沙!?」
「掴まれ、天子!」

 天子に手を伸ばして、掴み取る。
 けれど、そこまでだ。
 竜巻で舞い上げられようとしているがごとく、身体が吸い込まれていく。

「魔理沙!今助けるわ!」
「アリス、だめだ!」

 魔法で引っ張ろうとしていたが、それでも耐えきれずに私と天子は引き摺られていく。
 それをアリスが、手を伸ばして、掴み取った。
 思えば、いつも余裕を携えた木曜日のアリスのこんな表情を、私は始めて見る。

「なっ」
「うわぁっ」
「きゃあっ」

 ついに耐えきれず、引っ張られる。
 その暗い木の洞の中へ、導かれるように。

 私たちは、身を投じること以外に、なにもできなかった――。
















――5・“おおっと”おとしあなだ!――



 日差しだろうか。
 微かな灯りが、瞼の裏を強く照らす。
 その最中に、どうしてだか寂寥にも似た暖かさを感じた。

「魔理沙、魔理沙!」
「アリス……か」
「魔理沙!」
「うおっ!?」

 身体を起こした私に、アリスが抱きつく。
 強く、それでいて私が苦しくないように、優しく。

「心配したのよ、魔理沙」
「あ、ああ、すまん」

 言われて、アリスの瞳を覗き込む。
 そんなに長い間寝ていた訳ではないのだろう、その空色の瞳に雨雲が宿りはしなかったようだ。

「で……どこだ?ここ」
「魔法の森……に、似てるけれど」

 見渡す限りに森が広がっていて、そこら中に不可思議なキノコが生えている。
 魔法の森によく似た風景ではあるが、魔法の森みたいに瘴気はないし、それに変に蒸し暑くもない。つまり、不気味だ。

「あー、天子のヤツは?」
「周囲を探索しに行ったわ。もうすぐ、戻ってくると思うけど……本当に、大丈夫?」
「当たり前だぜ。私はなんていったって、“霧雨魔理沙”なんだからな」

 しきりに私を心配するアリスを安心させようとして口から出たのは、そんな意味のわからない言葉だった。
 いやいやいや、自分に自信がないとは言わないが、こんなに自意識過剰でもないぜ。

「ふふ、そうね。私“の”魔理沙だものね」
「……なんだ、その“の”って」

 変なことを言うな。
 そう続けようとしたが、その前に真上に影を見た。
 黒い影は太陽を遮り、やがて私の隣に降り立つ。

「起きたようね」
「天子……どうだった?」
「ここ、幻想郷ね。少し下れば人里があるし、その向こうには博麗神社も見えたわ」
「は?木の洞から、幻想郷に降りたのか?」

 それは、なんというか変だ。
 なにがどうとかじゃなくて、こう、奇妙な違和感を感じる。

「っと、そうだ、だったら魔法の森に瘴気がないのはおかしい」
「そうね。魔力が満ちているのに、その源であるキノコの胞子は感じられないわ」
「ついでに言うのなら、漂う気も妙ね」

 ……そこまでは、把握できなかった。
 アリスといい、天子と良い、鋭いぜ。

「なんにしても、せっかくだし各自で回ってみましょう。夕方に、ここに集合で」
「おまえ、いつでも楽しそうだな。天子」
「窮もまた楽しみ、通もまた楽しむ。どんな状況でも、楽しまなければ生きている意味がないわ」

 言い切りやがった。
 けれど、その思いには通じるものがある。
 確かに、せっかく訪れた“心躍る”機会なんだ。
 楽しみ尽くして学んでみせるのが、魔法使いの在り方だぜ。

「アリスはどうする?」

 早々に飛び立った天子を見送り、私はアリスに向き直る。
 そういえば、アリスの意見を聞いていなかった。

「私も魔理沙と一緒に行くわ。それが一番、“楽しい”もの」
「そ、そうか」

 また、直球だ。
 そんな綺麗な笑顔で笑うから、つい目を逸らしちまうんだ。
 ああ、まったく。不甲斐ないぜ。

「まずはどこへ行く?」
「そうね……紅魔館は、どうかしら?」
「ああ、そうだな。あそこの住人なら、色々知っていそうだ」

 アリスを箒の後ろに乗せて、飛び立つ。
 青く広がる空は、確かに幻想郷のものによく似ている。
 だがその空にも強い違和感があるような気がして……私はただ、首を傾げた。
















――6・まおうさまはどこですか?――



 霧で覆われた湖を抜けると、そこには赤い館がある。
 外の世界で未だにその名を轟かせているという、有名な悪魔。
 吸血鬼が支配するこの屋敷は、紅魔館と呼ばれている。

「そういえば、おまえはここに来たこと無いんだよな」
「ええ、私以外の“私”が来たことはあるはずだけどね」

 紅魔館の前まで飛び、門の前に立つ。
 そこには、柔和な笑顔を浮かべる美鈴の姿があった。

「おや、魔理沙さん」
「よう、美鈴」

 何度見ても、裏があるようには見えない笑みだ。
 つい裏表のないやつだと勘違いしてしまうが、うーん。

「アリスさんもご一緒ということは……パチュリー様ですね」
「ああ、まぁそうなんだが……」
「ねぇ美鈴、ここ最近で、なにか変わったことはあったかしら?」

 どう聞こうか首を捻っていた私に、アリスがフォローする。
 確かに、身近で起きたことを聞いておけば、なにかしらのヒントは得られるだろう。

「変わったこと、ですか?うーん……特にありませんね。いつもどおり、平和ですよ」
「悪魔の館としてはどうなんだ?それ」
「あはは、私は素敵なことだと思いますよ。お嬢様も、妹様と日光浴を楽しんでいましたし――と、すみません。長々と。ちょっと、咲夜さんに許可を戴いてきますね」

 美鈴は、それだけ告げると屋敷に引っ込んだ。
 いつもならフリーパスなのに確認を取りに行く辺り、いつもよりも律儀な気がする。
 というか、それ以前にもっと大きな違和感が……。

「魔理沙……レミリアとフランドールって、吸血鬼よね?」
「ああ……“日光浴”なんて、できるはずがない」

 更に言えば、レミリアは妹と二人でキャッキャッウフフという性格でもない。
 急激に、丸くなった?そんなことがあるのか?

「待たせたわね、魔理沙、アリス」
「ああ、咲夜か」
「相変わらず神出鬼没ね」

 時を止めてきたのだろう。
 咲夜は、いつの間にか私の横に立っていた。

「さて、パチュリー様だったわよね?今丁度、実験を終えて休憩されていたところよ」
「実験中だったのか。どうりで、美鈴がわざわざ許可を取りに行く訳だ」

 確かに、喘息――自業自得の――に冒されているパチュリーは、実験中に埃が立つだけで危ないこともあるらしい。
 わざと埃を立ててお仕置きされている小悪魔を見るのも、珍しくはない。

 あれ?お仕置きできているって事は、別に大丈夫なんじゃ……。
 いや、これは考えないようにしよう。主に私の精神衛生のために。

「よし、行こうぜ。アリス」
「ええ、そうね」

 咲夜に手を振って、その場を離れる。
 振り向いた先では、美鈴が咲夜と楽しそうに話をしていた。
 普段よりもずっと、和やかな空気になっているような気がする。

 赤い廊下を抜け、地下に降り、大きな扉を抜ける。
 そこが、紅魔館地下に広がる巨大な書庫。
 地下大図書館だ。

「おーい、パチュリー、いるかー?」

 図書館に、私の声が響いていく。
 いつ見ても魅力的な本棚だが、どんな嫌がらせを受けるかわからないので自重する。
 攻撃されれば弾幕ごっこに移行できるのだが、小悪魔に涙目で睨まれるような嫌がらせは御免被りたいのだ。

「そんなに声を張らなくても、聞こえるわよ」

 図書館の奥から響く、声。
 その先には、穏やかな笑みを浮かべるパチュリーの姿があった。
 いつもは風で生み出した椅子に腰掛けているのに、今日はちゃんと木製の椅子に座っていた。
 よく見れば周囲の本も綺麗に整頓されていて、パチュリーらしくない。

「ねぇパチュリー、聞きたい事があるのだけれど……」
「そう、それなら少し待っていて。小悪魔!紅茶をお願い!」
「はーい」

 パチュリーが呼ぶと、本棚の裏から声が届く。
 きっとこの机を整理したのは小悪魔のヤツなんだろう。
 労いの言葉をかけてやった方が、いいかもな。

 そんな風に考えていた私は、次の瞬間にはその余裕を粉々に砕かれた。

「お待たせしましたー」

 真っ赤な髪。
 その髪は、いつものようにロングヘアでもなければ、コウモリの羽型髪留めがつけられている訳でもない。

 耳が出る程度のショートカット。
 黒いベストに白いシャツ、それから黒いネクタイ。
 そこまではいいのだが……何故か、下には黒い短パンを穿いていた。

「え?女装は?」

 思わず、声が零れる。
 それを聞き届けた小悪魔は、何故だか首を傾げた。

「じょ、女装ですか?そんなことするはずがないじゃないですか!」
「ふふ、小悪魔はよくやってくれているわ。だから、そんなにからかってあげないで」
「か、からかわれたんですか!?僕」

 なにこの穏やかなパチュリー怖い。
 いやいやいや!なんか、絶対におかしい!

「あ、アリス、どう思う?」
「……他のところも、調べてみましょう」
「そ、そうだよ、な」

 あまりにショッキングな光景に、私はアリスに手を引かれて立ち去る。
 そんな私を、パチュリーは心配そうな声――心の底から言ってそうな声だ。怖い――で、呼び止めた。

「あら、どうしたの?」
「な、なんでもないぜ、はは」
「ちょっと急用を思い出したの。騒がしくしてしまってごめんなさいね」
「構わないわ。困ったことがあったら、いつでもいらっしゃい」

 緩やかな笑みと共に、パチュリーは紅茶に口をつける。
 嚥下して、小悪魔に礼を告げると、小悪魔は嬉しそうに笑った。
 私とアリスは、そんな二人から逃げるように図書館を後にする。

 廊下を抜け、エントラスを越え、花畑を横切る。
 そこで楽しげに談笑する吸血鬼姉妹の姿は、そっと視線から外した。

「アリス!他のところを確かめるぞ!」
「ええ、そうね。行きましょう」

 門の前で手を振る美鈴に、小さく手を振り返す。
 それから、私たちは違和感だらけの空に躍り出た。

 このむず痒い感覚の元凶を、見つけ出すために。
















――7・むしろさがすはおひめさま――



 人里で仲睦まじく手を繋ぐ、古明地姉妹。
 人形屋の前で萃香を引っ張る、勇儀。
 宇治茶で一息吐く、パルスィとヤマメ。

 得意げな様子でサングラスを自慢する、椛。
 それをきらきらとした清純な瞳で聞く、射命丸。
 そんな二人を見ながら楽しげに談笑する、山の神々。

 非想天則を乗りこなす、早苗。
 それをサポートする、諏訪子。
 敵に捕らわれて助けを求める、神奈子。

 違和感だらけ。
 でも、優しさの渦に、誰も彼もが包まれている。

 私たちはそんな彼女たちを遠目で見た後、博麗神社に立ち寄った。
 赤い鳥居から覗く、石畳。
 守矢神社に比べるとこぢんまりとしているが、それでも荘厳さは変わらない。

「霊夢、いるか?」
「魔理沙に、アリス?久しぶりね」

 境内に降り立つと、すぐに声が聞こえた。
 ちょうど縁側の方から歩いてきたのは、肩を剥き出しにした巫女服の少女、霊夢だった。

「久しぶりね、霊夢。元気そうね」
「早々へばったりはしないわ。お節介なのも居るし」
「お節介なの?」

 アリスが、小さく首を傾げる。
 私以外の前ではあまり表情を変えないアリスにしては、珍しい仕草だ。

「霊夢、お客さん?」

 霊夢が出て来た方角。
 そこから響く声を、私は、知っていた。
 でも何故だか、直ぐに思い出すことができない。

「って、誰かと思えば、魔理沙じゃない」
「――――え?」

 いや、そんなはずはないと、自分に言い聞かせていたのかもしれない。
 黄色の髪、赤いリボン、フリルの着いた変形巫女服。
 手にお茶を持って、霊夢によく似た顔で微笑む少女。

「麟?」
「なに?ど忘れしたの?」

 そう、博麗神社の境界で知り合った少女――“冴月麟”が、そこにいた。

「魔理沙、誰?」
「ああ、そういえば、どの“アリス”も見たこと無いんだったな」

 霊夢は、確かに麟のことを知らないと言った。
 なのに霊夢は何故か、こうして麟と並んでいる。
 心なしか、そう、どこか自然な笑みを浮かべているように見えた。

「魔理沙もどう?飲んでく?」
「昼間から?やめてよね」
「お酒とは言ってないわよ。それより、頭が固くなってるわよ、霊夢」
「ちょ、ちょっと、止めなさいよ!麟!」

 麟に頭をかき回されて、顔を赤くする霊夢。
 実の親子か姉妹のような、仲睦まじい遣り取りだ。

「ああそうだ、魔理沙。霊夢と弾幕ごっこしなさいよ。貴女確か――」

 思案に耽っていた私に、麟が声をかける。
 その言葉は、深いところまで落ちていた私の思考を、強制的に引き摺り出した。

「――霊夢に“勝ち越して”いるでしょう?」
「ぇ?」

 霊夢に、勝ち越す?
 この私が?まだ、アリスに並べても居ない、私が?

「あ、はは、は」
「魔理沙?大丈夫?」

 アリスの声に、渇いた笑みを零す。
 なんだか、この地の在り方が見えてきた気がして、私は帽子を目深く被った。
 アリスの手を、掴みながら。

「すまん霊夢、麟、今日は外せない用事があるんだ」
「そうなの?残念ね」
「悪いな」

 残念そうな二人から、目を逸らす。
 急に心拍数が上がったような、不快感。
 どうにも、調子が狂う。

「そうだ――“魅魔”には会っていかないの?」
「ッ」

 その名前だけは、だめだ。
 私はまだ、正々堂々と引き籠もった師匠を引き摺り出せるほど、強くはない。
 魔法も、心も、まだ足りないのに……受け入れられたら――。

「それも、遠慮しておくぜ。行こう、アリス!」

 そのまま私は、アリスの手をとったまま空へ舞い上がった。
 あのままあそこにいて、霊夢と弾幕ごっこをして、そして“勝ってしまった”ら。
 あのままあそこに残って、魅魔さまに認められてしまったら。
 そう考えたら、もう長居することなんかできなかった。

「これから、どうするの?」
「……アリスの家に行こう」
「私たちの?」
「そうだ」

 私の予想が正しければ、そこに一つの答えがある。
 だから私は、箒を握る手に力を込めた。

「なにも、聞かないのか?」
「信用しているし、信頼しているもの」
「はは、そうか……それなら、安心だ」

 この違和感だらけの場所だからこそ、真っ直ぐな感情の吐露が胸に響く。
 普段ならドギマギとしてしまう言葉に、私は確かな安堵を寄せていた。
 なんだ、まだ全然、頑張れるじゃないか。

 目指すは、魔法の森。
 ――マーガトロイド邸、だった。
















――8・いまたすけます、ぼくのひめ――



 清楚な青、無機質な白。
 他者に関心を示さないその在り方は、家にも表れる。
 外観を整えられてはいるが、それはあくまで自分たちの視界を整えるために過ぎない。
 全て家の中から見るためだけに整えられた庭は、外から見ると拒絶を受けているように感じるのだ。

 それについて、思うところはない。
 魔法使いの家なんてそんなもの、というか、庭を整えているだけ珍しい。
 だから私は、とくに気にしたことはなかった。

「……はずなんだが」
「開放的、ね」

 アリスが、澄ました表情でそう言った。
 私の隣りに立ち、周囲を警戒するのも忘れない。
 きっと何かが起こったら、最初に動いてくれるのだろう。

「行こう」
「ええ」

 アリスの家に、アリスが居るとは限らない。
 違和感だらけの幻想郷だからこそ、木曜日のアリスも警戒しているのだろう。
 それでも頷いてくれるのは、私への信頼か。

 ……びしっと締めようと思ったのに、考えれば考えるほど、照れる。

――コンコン、コン
「おーい、誰かいるか?」

 ノックを二回、それから控えめに、一回。
 声に出して人を窺うと、小さな足音が響いてきた。

――ガチャ
「あら、魔理沙じゃない。いらっしゃい」

 私を見て、どこか照れを滲ませながらはにかむ少女。

「よう、アリス」

 水曜日ではなく、火曜日でも月曜日でも土曜日でも金曜日でも日曜日でもない。
 全てのアリスを統括する、幼いアリスが、私を見て“嬉しそうに”微笑んだ。

「遊びに来るなら、そう言ってくれればいいのに。さ、入って、二人とも」
「あ、あの、マスター?」
「どうしたのよ?ふふ、二人が並んでいる姿は、やっぱりいいわね」

 なにがだ。
 娘とその大切な人を見るような、いや、自分にとって大切な二人を見るような眼差し。
 いや、予想できてはいたんだが……実際見ると怖いな、いっそ。

「なあアリス、私のことどう思う?」

 まどろっこしいのは、嫌いだ。
 だから私はそう、ストレートに聞いた。
 ……だが、返答は私の隣から来た。

「好きよ」
「いや、おまえじゃなくて!」

 混ぜっ返さんでくれ。
 まぁ、緊張感はほぐれたが。

「ともだちよ。もう、なにを言わせるのよ」

 幼いアリスはそれだけ言うと、家に入っていく。
 それをもう一度呼び止める気になれず、私も彼女に着いていく。

 日の光が取り込まれて、優しい灯りに包まれたリビング。
 普段なら、こんなことは余りない。
 水曜日や木曜日のアリスは積極的に日光を取り入れようとするが、そもそも魔法の森に日光が差し込まないためだ。

「こんな明るい日に、目立つところにいて良いのか?」
「構わないわ。私と貴女、そして“アリス”たち。“並び立つ者”にだけ認められていれば、充分よ」

 ああ、そうだよな。
 こんなに優しい世界なんだ。
 そうだって、思ったよ。

 顔を引きつらせる私を見て、木曜日のアリスは私の頬に手を添える。
 瞳を覗き込まれ、頬を撫でられ、震えが止まる。
 慰められていたんだろうが、そろそろしっかりしないと格好がつかない。

「紅茶はなにがいい?」
「オススメは?」
「いいカモミールが手に入ったの」

 幼いアリスがそう言うと、上海と蓬莱が家の奥から紅茶を三人分出してきた。
 他のアリスの所在も気になりはするが、聞いたところで仕方がないので気にしない。
 これ以上、自分の中に余分な要素を入れるのは嫌だった。

「なぁ、ここ最近の幻想郷のことを、教えてくれないか?」
「?あら、知っているでしょう?」
「確認だよ。自分の知識以外からの情報が欲しい」
「ふふ、良い心がけね」

 そう前置きすると、幼いアリスは紅茶を啜る。
 そうしてから、私に現状を語ってくれた。

 大図書館を一般向けに開放したパチュリー。
 同居人が増えて、賑やかになった博麗神社。
 外の世界から侵入した祟りに、巨大ロボで立ち向かう守矢神社。
 地底が完全に解放されて、地上でのんびり暮らすようになった妖怪たち。

 どれもこれも、聞き覚えのない事件だ。
 どれもこれも、“起こりえない”事件だ。

「なぁ、アリス。やっぱりこれは――」
――コンコンコンコンコンッガチャ!

 幼いアリスに、自分でも纏まらない言葉を告げようとする。
 けれど、それは、連続して響くノックによって遮られた。
 というか、勝手に入ってくるなよ。人様の家に。
 ……私は、最近やってないぜ?

「夕方にはって言ったけれど、案外退屈で戻って来ちゃったわ。って、なんか増えているわね」
「天子……?」
「あら、いつぞやの天人ね。何の用?」

 幼いアリスは、天子に無機質な目を向ける。
 今朝方まで私が向けられていたのと、さほど変わらない目だ。

「なんでも楽しむって言ってなかったか?」

 私がそう訊ねると、天子は肩を竦めて息を吐いた。
 やれやれとでも言いたそうな顔が、非常に鬱陶しい。

「飽食終日、心を用うる所なきことほどの退屈はない。それだけよ」
「ふん、博奕なすはなお已むに賢れり?それは縦欲の病ではないのかしら?」
「而して、医し難し執理の病よりは遙かにマシよ」
「いやおまえら、もっと解りやすい言葉で話せ。むしろ日本語を話せ」

 異国の言葉にしか聞こえん。
 幻想郷は日本だ。だったら日本語で話すのが筋だ。

「日本語よ?まぁ、細かいことはどうでも良いけど……この小さいの誰?アンタたちの隠し子?」
「できるか!」

 くそぅ、天子のヤツ、まだ誤解してんのか!?
 天子は我が物顔で近づくと、私の分の紅茶を飲み干す。
 いや、おい、それは私のカモミールだ。

「はい、私のをあげるわ」
「いや、まぁ、いいけど」
「間接キスね」
「ぶっ!げふっげほっ」

 気管に入って、咽せる。
 このタイミングは絶対わざとだ。
 ……しっかり主導権が握られているような気がするのは、気のせいとして。

「はぁ、あの天人たち、妙なことを言うと思ったらこれよ」
「妙なこと?なんだ、それ?」
「見つからなかったら探しに来るから、連れ戻されたら要石を抜けってね」

 それは、つまり、ここに来ることを予想されていた?
 救出を受け入れれば要石は抜かれ、救出を拒絶すれば帰れない。
 そんなところ、だろうか。

「それなら、早く抜け出さないと!」
「慌てる必要はないわ」

 木曜日のアリスを、幼いアリスが窘める。
 天子は幼いアリスにさほど興味がないらしく、もう視線を外して家を見回していた。

「なぜ?」
「ここにいればいいじゃない。ここに、不足はあった?」

 幼いアリスの視線は、私に向いていた。
 確かに、ここにはなんでもある。
 もう一度会えるかわからなかった人がいて、もう会えないと思っていたひとがいた。
 誰も彼もが充足した顔をしていて、それでいて楽しげだった。

 ここはなるほど、“天界”なのだろう。
 そう、幻想郷の天界、その内側に潜む幻想郷の“箱庭”こそ、この地なのだろう。
 そう思えば、もう、それだけで。

 思考に更けることすらなく、答えがこぼれ落ちた。
 いや、違うな。これは……溢れ出たんだ。

「これは違う」
「魔理沙?」

 言い切った私を、木曜日のアリスが心配そうに見る。
 自分で考えていたよりも、鋭い口調になっていた。

「こんなのは、違う」
「違う?夢が、叶っているのに?」

 夢が叶う。
 それは、嬉しいことだ。
 けれどそこに、過程が含まれていなかったら?

「星の名前を覚えるだけじゃ、星は掴めない」

 空に手を伸ばして、願う。
 ここが夢を叶える場所なら、私の思いも反映されるのか。
 瞬く間に、舞台が夕焼けの魔法の森へ移った。

「っ!これは……」
「あら、面白いわね」

 木曜日のアリスと、天子の声。
 二つの声を聞きながら、私は幼いアリスと相対していた。

「新たな星を自分で見つけて初めて、夜空に名を刻むことができるんだ」
「手に入らないかも知れないのに?」
「手に入る。信じて望んで手を伸ばせば――絶望だって、打ち砕けるんだぜ」

 八卦炉とスペルカードを片手に、笑ってみせる。
 こいつは、アリスじゃない。
 魔界を飛び出して、自分の力で自立人形の研究を行うアリスが、過程を捨てるはずがないんだ。

「欹器は満つるを以て覆る。満ち足りた空間に全てを求めすぎたわね、箱庭の番人よ」

 天子はそう、楽しそうに笑う。
 なんでも楽しむと言いきっていただけあって、本当に楽しげだ。
 緋想の剣を地面に突き刺し、大地を躍動させ、天子は不敵に笑って見せた。

「マスターの姿を偽った罪は、重いわよ」

 木曜日のアリスがそう言って指を弾くと、周囲に人形が展開された。
 設置から攻撃に転ずる戦いが、木曜日のアリスの得意とする戦術だ。
 こいつのことだ、きっと私よりもずっと早く幼いアリスが偽物だと気がついていたことだろう。

 それでも、最後まで言わせてくれたことに、今は感謝をしておく。

「求めて何が悪いのかしら?貴女みたいに、享楽から他者の破壊を望むよりはマシよ」
「地震のこと?解決されるようにしたんだから、いいじゃない」
「天界の事よ」

 天界のこと?
 そういえば、天人たちはなんでしきりに要石を抜かせたがったんだ?

「そこの天人はね、魔理沙。要石を抜かない結果が天界の崩壊に繋がっても、仕方がないと思っているのよ」
「天界の崩壊?なんでそんな大それた事になるんだよ」

 私が訊ねると、天子は肩を竦めた。
 その表情に……翳りは、ない。

「天界は元々、巨大な要石だった。地震を吸収して大きくなりすぎた要石は、やがて空へと弾かれる。……要石同士の衝突が、天界の崩壊を導くのよ」
「私たちの記憶でも読んでいるのかしら?だとしたら、危険ね」
「ああ、そうだな」

 幼いアリス――いや、偽アリスが忌々しげにそう告げる。
 だが天子は、その最中にあってなお、不遜に笑っていた。

「地震で地上が崩壊するか、ずっと先に本当に弾かれて飛び出るかも解らない天界を救うか?だったら私は、花半開を看て酒微酔に酔える地上を選ぶ。それだけのことよ」
「結局は己の享楽の為じゃない」
「ええ、そうよ。それがどうしたの?」

 退屈を紛らわせるために、博麗神社を潰した天子。
 その在り方は傲岸不遜で自分勝手……でも、その心は幻想郷に傾いていた。

「もういいわ。貴女たち全員で、この地に眠りなさい。何時までも、微睡みの中で抱き締めてあげるわ!!」
「それは怖いな。だけど、そう簡単に私たちを倒せると思うなよ。星の光で、その寝ぼけ眼を醒まさせてやるぜ!!」

 私を中心に、左に天子が立ち、右にアリスが立つ。
 異変を通じて何度も戦ってきた。
 だから、こいつらの強さは知っているし、信頼もしている!

 八卦炉を片手に掴み、黒い本を広げる偽アリスと対峙する。
 気張れよ、霧雨魔理沙。
 ここが本当の、正念場だ!
















――9・ささやき・えいしょう・ますたーすぱーく――



 八卦炉から、光が溢れる。
 満ちた光は幾重にも連なり、やがて巨大な力を爆発させた。

「恋心【ダブルスパーク】!」
――ドンッ!
「防ぎなさい【青の魔法】」

 私が放った一撃は、しかし偽アリスに防がれる。
 青い結晶が連なり、水晶のようなドームを生み出したのだ。

「“人形伏兵”」
「っ!!」

 偽アリス一歩踏み出た場所に、人形が出現する。
 空間の狭間に潜ませられていた人形たちは、偽アリスを囲む五方向から槍を持って出現した。

「焼き払え【黒の魔法】!」

 だがそれも、偽アリスが放った焔弾で焼き払われる。

「魔理沙!合わせなさい!地符【不譲土壌の剣】」
「任せろ、天子!光符【ルミネスストライク】」

 天子が私の背後で、地面を隆起させる。
 同時に私は箒に跨ると、箒の先端から星型の大玉弾幕を放った。
 視界が天地逆さまに動き、地面を天にした私の頭上を、隆起した地面が通り過ぎる。
 急な射角からの弾丸射出は、私に心地よい浮遊感を与えていた。

――ド、ゴォンッ!!
「【青の魔法】!そのまま、【紫の魔法】!!」

 隆起してきた地面を、偽アリスは結晶で防ぐ。
 そのまま紫色の巨大レーザーを、私に向けて放ってきた。
 当然のようにルミネスストライクを貫いて、諸共だ。

「させないわ……紅符【和蘭人形】」

 アリスの人形が光を放ち、十字のレーザーを撃つ。
 それは、偽アリスのレーザーと拮抗していた。
 本物のアリスなら、この程度で済んだりはしない。
 きっと私たちの障壁なんか、黒の魔法で焼き尽くすだろう。

 だから私は、私たちは……劣化したアリスの力になんか、負けはしない!

「三人でも押されるとはね。本当に何者よ、あの小さいの」
「細かいことは気にするな」
「そうね、細かいことは気にしないことにするわ」

 三対一で、拮抗。
 けれど、負ける気はしない。
 負ける気がしないってことは、勝てるって事だ!

「そろそろ、朽ちなさい【緑の魔法】」
「まずいな……避けろ……っていない?!」

 天子に声をかけようとした、天子は既にその場にいなかった。
 回避行動早いな、おい。

 アリスが放ったのは、緑色の光を放つ多数のレーザーだ。
 五十を超えるレーザーが、全て高速で追尾してくる。
 これを全部避けるのは、至難の業だ。

「ええい、とっておきだ!持っていけ!」

 私は帽子の裏から瓶を取り出すと、それを地面に向かって投げた。
 数は十そこそこ程度だが、上手く狙えば……当たる。

「光符【アースライトレイ】!」

 瓶が爆ぜて、緑色のレーザーを貫く。
 全部私に向けられているのだから、まとめて迎撃するのは楽だ。
 私は残りをマジックミサイルで撃ち落として、それから偽アリスに八卦炉を向けた。

「っ!【赤の――」
「――戦操【ドールズウォー】」

 偽アリスが魔法を放つ前に、人形の伏兵たちが躍り出る。
 回転しながら刃を以て襲いかかる人形たちを、偽アリスは結晶弾を交えながら避けていった。

 そうしながらも、私の八卦炉から目を逸らさないようにしている。

「――――手、疲れたでしょう?もう、降ろしても良いわよ」
「なっ!?」

 私たちの元に届いた、天子の声。
 見上げてみれば、そこには巨大な要石があった。
 って、このままだと巻き込まれる!

「乗れ、アリス!」
「ええ!」
「“ウィッチレイライン”!!」

 結界を張る偽アリスを一瞥して、私とアリスはその場を離れた。
 すると、先程立っていたところを纏めて踏みつぶすほどの要石が、落ちてきた。

「――要石【天地開闢プレス】――」
――ズドォォォォンッッッ!!!

 周囲の地面が陥没し、要石の上に仁王立ちしていた天子が降りてくる。
 所々焼け焦げていたのは、緑の魔法が何本か天子の方にでもいったのだろう。

「これで終わり、か?」
「まだよ、見て」

 アリスに指さされて、要石を見る。
 そこからは、無数の亀裂が入っていた。

「砕ける?!」
――バガンッ!!

 大きな音と共に、要石が砕ける。
 その下から出て来たのは、偽アリス――ではなくて、巨大な“ナマズ”だった。

「な、なまずぅ?」
「要石は、地震を起こす大ナマズの頭を押さえつけるのよ。天界を造るほどの要石で抑えていたナマズがどこへ行ったのかと思えば……」
「暢気に話している場合じゃないわよ、天子、魔理沙」

 そうしている間にも、大ナマズはどんどん大きくなっていった。
 いつのまにかそのサイズは山を越え、見上げるだけでは全容を窺えない。
 これで地震でも起こされたら……まずい。

「逃げるぞ!掴まれ!」
「ええ!」
「お邪魔するわよ」

 アリスが箒の後ろに跨り、天子がそのさらに後ろに立つ。
 要石に乗って降ってきたりできるだけあって、すごいバランス感覚だ。

 大ナマズから離れて初めて、私は空に亀裂が入っていることに気がついた。
 どこもかしこも罅だらけ。その上、見渡す限りに生き物という生き物がいなくなっている。

「あの亀裂を抜ければ、どこかに出られるかも知れないわね」
「それは良いが、本当に抜けられるのか?!」
「そうよ天子、大丈夫なの?」

 私が訊ねると、天子は少し間を置いた。
 それから、直ぐに口を開く。

「一つ、忠言をしましょう」
「は?」
「“慮らずんば胡ぞ獲ん、為さずんば胡んぞ成らん”」

 また難しいこと言いやがって。
 私が困惑していると、アリスは私の背で小さく笑った。
 ぬぅ、パチュリーの所で勉強すべきか?

「もっとわかりやすく言ってくれ!」
「仕方ないわね…………“為せば成る”よ!」
「そっちの方が、解りやすいぜ!――――星符【エスケェェプゥゥッ……ベロシティィィッッ!!!】」

 星を纏って、一直線に逃げ出す。
 亀裂の穴を潜り抜けて、大きく空に舞い上がり、それから私たちは幻想郷の箱庭を潜り抜けた――。
















――10・“おおっと”・てきは、こなごなになった!――



 エスケープベロシティで抜け出した先。
 そこには、真っ白な空間が広がっていた。
 行けども行けども、白ばかり。
 抜け出せたはいいが、このままだと閉じ込められて終わりだ。

「どうする、魔理沙」

 緋想の剣を片手に、天子が問いかける。
 アリスも天子も、私の意見に沿おうと、ただ耳を傾けてくれていた。

 こんなに信頼されているのに、諦められるはずがない。

「空をぶち抜く。まぁ、どこかにぶつかるさ」
「無茶苦茶ね。でも、嫌いじゃないわ」
「魔理沙らしくて、格好いいわよ。そういうの」
「おだてるな。ったく」

 こんな時でも茶化してくるんだから、油断ならない。
 でも二人のおかげで、私の心で疼き始めていた不安は、かき消えた。

「ダメでもいい。何度でも、ぶち抜いてやる!魔砲【ファイナル――」
「――こんなところで、なにをしているのですか?」
「っ!?」

 宣言をキャンセル。
 そのまま、身体ごと振り向いて八卦炉を向けると、そこには――予想外の姿があった。

「い、衣玖!?」
「はい、永江の衣玖です。総領娘様」

 まっさらな空間を泳ぐ、緋色の衣。
 龍宮の使い、永江衣玖が私たちを見ていた。

「へぇ、貴女が私を説得しに来たのね?」
「説得?なんのことでしょう?」
「あれ?違うのかしら……」

 このままもう一戦というのは、流石にキツイ。
 だから、衣玖が要石を抜くための刺客だったら、まずかった。
 だが、流石にそんなことはないようだ。

「ねぇ衣玖、ここからの帰り道、知っている?」
「知っているも何も、ここは私の仕事場です。ああ、また遊んでいて出られなくなったのですね。仕方のない人です」
「それすっごく子供の時の事だから!って、なんで衣玖がそんな昔のことを知っててるのよ?」
「総領様にお聞きしました」

 衣玖と天子が、じゃれ合いを始めた。
 おかげで力が抜けて、私は地面に腰を下ろす。
 もう今日は、なにもしたくない。

「お疲れ様」
「ああ、お疲れだぜ」

 隣に並ぶアリスが、笑いかける。
 こうして、そっと支えてくれたから、私は強く揺るがなかった。
 今にして思えば、そんな気がする。

「なぁ、アリス」
「どうしたの?」
「今日は、その……ありがとう」
「ふふ、どういたしまして」

 地面に置いた手に、アリスはそっと自分の手を重ねる。
 結局あのナマズがなにをしたかったのか、わからなかった。
 けれど今は、この温かさに身を委ねて、身体を休めよう。

 私の頬が、僅かに綻ぶ。
 本当に、お疲れ様、だ――。
















――11・おおゆうしゃよ、よくぞたすけてくれた――



 天界の一角を使った、小さな宴会。
 魔理沙と、五番目のアリスと、それからあの天人。
 三人が上等な桃のケーキを食べる様を、私は紫と眺めていた。

「貴女は混ざらないのかしら?」
「抜け出してきたのよ」

 天人にばれてしまったのも、まぁ想定の範囲内。
 けれどあっさり受け入れられたのは、想定外ではあった。
 もっとも、アリスが彼女以外にもいることは黙っているのだけれども。

 魔理沙たちが、私たちに気がつく様子はない。
 紫が境界を弄ったのだろう。
 魔理沙たちから、私たちの姿は見えないようだ。

「お疲れ様です、お二方」

 そんな私たちを“見つけた”のは、永江衣玖だった。
 いや、正確には違う。彼女だったら、私たちを“見つける”ことはできない。

「此度は幻想郷のこと、まことに――」
「――そんなに畏まらなくても良いですよ。所詮私は、使いの身体を借りている分霊にすぎませんから」

 プレッシャーもなにも、全て巧妙に隠している。
 この程度はきっと、息を吸うよりも簡単なことなのだろう。
 彼女に――幻想郷の最高神にとっては。

「私はあのナマズを哀れに思ったに過ぎません。そうして引っ張り回したのもまた私」

 天界で、深い眠りについていた大ナマズ。
 何時しか彼は、その腹の中に幻想の箱庭を生み出していた。
 幻想郷にいながら幻想郷を夢見るなど、確かに哀れではある。

「さて、もう少し見ていても良かったのですが、そろそろこの子の身体に悪いので」

 それだけ言って、あのお方は優雅な礼をした。
 すると、永江衣玖の身体が傾き、倒れる。
 それを紫は、スキマで包み込んだ。
 自宅にでも、送り届けたのであろう。

「あのお方の“お戯れ”とはいえ、緊張しますわ。本当に」
「ええ、まったくよ」

 紫はあのお方の言葉を受けて、私に話を持ちかけてきた。
 魔理沙を向かわせれば、きっと波乱の末にどうにかしてしまう。
 英雄伝に名を連ねる人間は、その期待に応えて見事にナマズを解放したのだ。

 あのナマズは、普通に川に降りていった。

「桃を渡しただけでこんなにすんなりと行くとは、流石ですわ」
「別に、大したことじゃないわ」

 紫は、相変わらず胡散臭い笑みを浮かべていた。
 もう少し穏やかな笑みを浮かべられないのかしら。

「彼女のこと、よく理解しているのね」
「まぁ、研究の一環だし」

 そう、研究の一環だ。
 自立人形のための、感情の分析。

「誰かに興味を持つのは、いいことですわ」
「興味、興味ねぇ」

 紫はそれだけ告げると、スキマに身体を滑らせた。
 扇子で、口元を隠したまま。

「ふふ、それではごきげんよう」
「ええ、またいずれ」

 去っていく紫を見て、ため息を吐く。
 そうすると境界操作の効果が切れたのか、私は魔理沙たちに見つかった。

「おーい!こっちに来て一緒に飲もうぜ!」
「はぁ、しょうがないわねぇ。ほんとう」

 天界の空は、常に青一色だ。
 その最中で、私はぼんやりと彼女たちを見る。

 たまには、なにも考えずに飲んだり食べたりするのもいいだろう。
 そんな事を考えながら、私は彼女たちの輪に入っていくのであった――。




――了――
――11,7・えぴろーぐにはなたばを――



 酒に酔った五番目のアリスと魔理沙をおぶって帰る。
 迎えに出てくれた四番目のアリスに二人を渡すと、私は一人リビングに向かった。

 思い出すのは、紫が告げた言葉。
 最後に私に向かって言った、あの台詞だ。

『彼女のこと、よく理解しているのね』

 桃のケーキにあたるように転ばせれば、こうなるだろう。
 事前にあの箱庭に赴き、私の情報を一部落としてやれば、魔理沙はこんな選択をするだろう。

「理解……理解、か」

 そう考えて、実行した。
 そうしたら、予想どおりの結果に繋がった。
 ただ、それだけのことなのに。

「知らないわよ。なんで――あんなに魔理沙を、理解できていたのか、なんて」

 呟きは、誰に届くこともなく。
 小さく小さく、夜の狭間に消えていった。



◇◆◇




 お待たせしました。今回で、六作目になります。
 また長くなってしまいましたが、お楽しみいただけましたでしょうか。

 どうでもいい裏設定。
 クエイク→クエスト、行く and 衣玖さんのクエスト。
 そんなしょうもないタイトルの意味。

 私は一太郎を用いて書いているのですが、先日初めて“校正”というシステムを知りました。おかげで、非常に楽です。
 それなのに投稿するまでの期間が今までと変わらないのは、天子の台詞を考えるのに中国古典を調べていたためでしたw
 今まで四書五経の一部しか読んでいなかったため、付け焼き刃っぽい箇所があり申し訳ないです。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

 それでは次回“霧雨魔理沙は諦めない ~稀難題・四次元超時空ストリーム~”でお会いしましょう!

 2011/06/10
 誤字修正しました。
 分け身→わけみたま→分霊でした……orz
I・B
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コメント



0.3270簡易評価
1.100奇声を発する程度の能力削除
続編キター!!!
このシリーズは毎回読むたびに、鳥肌が立ちますw
次回も楽しみにしています!
3.100名前が無い程度の能力削除
木曜アリス可愛いよ!!
次はいよいよ日曜アリスの出番でしょうか。
楽しみです。
4.100名前が無い程度の能力削除
木曜日アリスキター!
素直クールっていいな
あとまだなのは金、日だったかな
次も楽しみにしています
少しずつ変わっていく旧アリスもいいですね
6.無評価名前が無い程度の能力削除
いかんいかん、金曜日アリスもまだ残ってましたね。
どっちが来ても楽しませてくれそうです。
7.100名前が無い程度の能力削除
本当にレベル高いなあ
全部のアリス終わったら連載が終わってしまうのかと心配しています どうかこのシリーズ続けてください!
8.100名前が無い程度の能力削除
続編キタ━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━!!!!
木曜日と魔理沙の距離間が最高でした。
次回も楽しみ~
9.100名前が無い程度の能力削除
待ってました。
シリーズを重ねる毎に世界が広がっていくのが楽しくて仕方ないです。
ゲストキャラの魅せ方も上手いです。天子ちゃんに会いに行きたい。
続編お待ちしてます。
10.100名前が無い程度の能力削除
待ってたよ!
俺の愛する木曜日アリス!

きちんと着地点が決まっているであろうお話を読むのは久々で楽しい。
商業ではなかなかそれが出来ないからねぇ
次のお話も楽しみに待ってます!
14.90名前が無い程度の能力削除
もうきたのかはやいこれで勝つる
冴月麟に続いてあのお方まで……
この物語はどこまで広がるんだ。超楽しみ。
17.100名前が無い程度の能力削除
魅魔様にお母さんと言ってしまった魔理沙を詳しく。
グラサン耳栓で不審者マックスなもみもみを詳しく。

しかし怒濤の執筆速度であられますな。
七色終了が近づいてくることに、一抹の寂しさすらかんじてしまいそうです。
19.100名前が無い程度の能力削除
安心の楽しさ。そうコメントするしかない。
24.100愚迂多良童子削除
一太郎か。日本語の文章を書くにはワードより優れているらしいですね。
天子が箒に立っているシーンで思わず桃白白を連想して笑ってしまったw
やっぱり魔理沙には、ぬるま湯につかるような人生よりも困難を打ち砕いてほしいですね。

>>侵されているパチュリー
 病なので「冒される」
>>どおりで、美鈴がわざわざ許可を取りに行く訳だ
 どうり
>>槍を以て出現した。
 持って
>>分け身
 ひょっとすると分身?
25.100名前が無い程度の能力削除
早すぎるし、ほんとこのシリーズはすごいな。
毎回大満足のボリューム、ごちそうさまです。
34.100名前がない程度の能力削除
いやぁついにあの方が!毎回楽しませていただいてます!次回も頑張ってください!!
35.90桜田ぴよこ削除
素直クールには弱いもので。
42.90名前が無い程度の能力削除
もしかしなくても龍神様ですか?
これまたド偉い存在が出て来たな…。
さらに風呂敷は広がっていくこのシリーズ、どんな形で畳まれるのか。これからも楽しみにしています。
60.無評価I・B@コメント返し削除
1・奇声を発する程度の能力氏
 ありがとうございます。
 次回は陰謀成分少なめで、お送りします。

3・6・名前が無い程度の能力氏
 はいw実は日曜アリスのパートになりました。
 手厳しい彼女です。

4・名前が無い程度の能力氏
 素直クールは胸がときめきますね。
 こう、お姉さん的な。
 旧作アリスさんも、いずれしっかり描写します。

7・名前が無い程度の能力氏
 一度区切りはつけます。
 その後続くにしても番外編などになりそうですが、まだ未定です。
 ありがとうございます。

8・名前が無い程度の能力氏
 おお、なんかたくさんw
 次回は長めのお話になります。
 シリアス中心ですが、お楽しみいただければ幸いです。

9・名前が無い程度の能力氏
 次回は、世界はそこそこに、キャラクタ中心になるようにしてみました。
 私も、天子さんに会いに行って忠言して貰いたいですw
 小人閑居して不善を為すとか言われてしまいそうですが。

10・名前が無い程度の能力氏
 ありがとうございます。
 なにか連載するときは、必ず最初と最後は決めてからにしてあります。
 ですので、そう言っていただけますと、幸いです。

14・名前が無い程度の能力氏
 話数の都合上、これ以上はそんなに広がらないかも知れませんw
 あのお方は、理解できませんが胡散臭くありません。そもそも理解できないので。

17・名前が無い程度の能力氏
 きっと顔を真っ赤にして乙女口調になって弁明したのだろうと信じています。
 きっと文にもグラサンの恥辱を味あわせようとおもむろに(ry
 寂しいと言っていただけるのなら、嬉しく思います。
 続きは、どうなるかはわかりませんが、一応構成はしたいと考えています。

19・名前が無い程度の能力氏
 ありがとうございます。
 これからも安心していただけますよう、頑張ります!

24・愚迂多良童子氏
 一太郎さんには本当に助けられています。使いやすいんですよね。
 魔理沙はやっぱり、壁を打ち砕く瞬間が一番輝いているように思えます。
 それと、毎度ご指摘ありがとうございます。
 さようなら誤字脱字を目指して、精進します。

25・名前が無い程度の能力氏
 ありがとうございます。
 そして次回はそのボリュームが飛び抜けてしまいました。

34・名前がない程度の能力氏
 あのお方の、登場でした。
 これからも頑張ります!
35・桜田ぴよこ氏
 私も弱いですw
 いいですよね、素直クールなお姉さん。

42・名前が無い程度の能力氏
 龍神様です。
 ふろしき全部畳まず、補完する場所もあります。
 ですが、魔理沙とアリスの物語そのものは、収束させます。



 沢山のご感想のほど、ありがとうございました!
 それでは次回、永遠亭編でお会いできれば、幸いです。
72.100名前が無い程度の能力削除
話が進む度に、焦点の置かれている曜日のアリスに惚れていく俺ェ……。
か、可愛いんだから仕方ないじゃないっ(←

いやホント、作者さんの魔理沙もアリスも他の登場人物も皆が皆、とても魅力的で読んでいてわくわくします!
では、続きを読んできますね。