ナズーリンが幼くなってしまったのですが
星がそんな訳の分からない事を言って廊下を歩く私を呼び止めてきます。その慌てふためく様から私は、またどうせ宝塔をなくしたパニックから不審な挙動を起こしているんだろう、と憶測します。若しくは、この梅雨の湿気で頭にカビでも生えてしまったのかもしれません。そもそも『幼くなる』という表現は日本語的に如何なものでしょうか?『幼い』と言うのは未発達であるという事になるでしょうが、形容詞であり動詞にはならないはずです。百歩譲って『幼くなる』という表現を認めたとして、考えられる行動様式は、幼児退行しかないでしょう。『退行』は一般的には、親が自分にかまってくれない際、幼児と同じ様な行動をとる事で、親の気をひこうとする、ということです。いつもそそっかしい星をただの一つも取りこぼさないで業務を補佐「りん」あのナズーリンが、誰かの気をひく為に「一輪?」行を見せるなど考えられ「一輪!!」
「なんですか星。宝塔の事なら私は知らないですよ。」
「宝塔の事じゃないです! 今日はちゃんと持ってますよ。ほら。」
今日はってつけてる時点で、なくし癖認めてるじゃん。っていいよ見せなくてわかったから。
「そうじゃなくてナズーリンが幼くなってしまって……私もう、食べてしまいそうで……」
うん。誰かこの人に日本語を教えてあげて。
「ていうか具体的にナズーリンに何が起こったのか教えてもらえませんか? 雲をも掴むような話で、ついていけないんですが。ま、雲は掴めますけどね。」
今私上手いこと言ったよ。上手かったよね?…………そうかい無視かいこの雲ジジィが。小さくして握りつぶしちゃろうかこんにゃろうめ。
「具体的にって…そのままですよ。体が小さくなって……。」
目の前の人(妖怪だけど)まで私の尼リカンジョークをスルーした。もう命蓮寺の屋根裏で白骨化してやろうか。
「それに以前より、か、可愛くなって……。」
「はぁ。」
「だから私はもうダメだ。」
「何その超理論!?」
ダメだこいつ早くなんとかしないと……、と考えていると、私がたった今星に絡まれて困っている元凶が現れました。
「びー! びー! ごしゅじん! ごしゅじんはっけん!」
あらやだ可愛い。
「………はうっ!」
「あーあ、鼻血だして失神しちゃったわ。」
「びこーん! びこーん! いっちゃんもはっけん!」
「あらら、見つかっちゃったわね……っていっちゃん?」
「ダウジングにふかのうはないぞ!」
「え……? あ、そう……。」
「うお! ごしゅじんがはなぢだしてる! だれにやられた! いちりんか!」
「いやあんたよ、あんた。」
「なずがやったのか!? ………なずのスペルカードつよい!」
「弾幕じゃないけど。少なくとも違う意味で破壊力は抜群ね。」
どうやら星が言っていた内容は的を射ていたようです。元々十数歳の子供のようにしか見えない小さな体躯が更に小さくなって、頭の中が多少特殊になってしまっているナズーリンは、成る程、確かに可愛いです。普段しっかりしているからこそ、こういった姿は新鮮で可愛らしいですね。ギャップ萌えという言葉がふと頭に浮かびましたが、何のこっちゃさっぱりわかりません。そんな言葉幻想入りしてないから。雲山のがハイカラなんじゃない?
うーん……でもこれって小さいけれど異変ですよね? 文屋に嗅ぎつけられてネチっこく質問攻め受けるのも面倒ですし……早く原因を見つけて解決しないといけませんね。
「ねぇナズーリン?」
「なんだ?」
「どうしてそんな姿になったの?」
「わからん!」
「即答かい。うーん……生活に支障はないのかしら……。」
「きょうのしごとはおわったぞ! さとにいってきたんだ。」
「星といっしょに?」
「ううん、なずひとりで。」
「え!? だ、大丈夫だったの? ちゃんと檀家回れた?」
「? だんか?」
「……はー……いいわ、私が後で行ってくるから。」
「かえりにチーズかってくる?」
「買わんわ!」
記憶力、判断能力に大きな欠陥が生じているみたいです。平たく言えば、「体は子供、頭脳も子供、その名はナズーリン!」って感じです。賢将の二つ名もこのままでは三等兵くらいに格下げされてしまいそうです。
この状況はマズいです。非常に。星は鼻血出して倒れている時点で仕事に手をつけられないし、ナズーリンも里で何してきたんだか到底考えが及びません。こんな状態の星とナズーリンでは揃いも揃って毘沙門天代理の仕事がままならないのは火を見るよりも明らかでしょう。そう、逆にいえば、この異変を解決すれば二人とも今まで通りにお仕事に戻れると思うのです。巫女や魔法使いに解決してもらってもいいんですが、大規模な異変でもないですし、命蓮寺内の事にわざわざ呼んでも……お賽銭巻き上げられそうだし。ここはこの雲居一輪が一肌脱ぎますか。……面倒くさいとかいうな爆発しろジジィ。あんたもくるの、私達で解決するわよ。
「よし。ナズーリン、ちょっとついて来て。」
「んー……。」
「ん? どうしたの?」
「いっちゃん、肩車。」
「え!?……し、仕方ないわね……。」
ちょっと……可愛過ぎでしょ。上目使いは反則よ……。
「おぉ! 高いぞ! いっちゃん!」
「あんまりはしゃいで落ちないでよね。行くわよ?」
「おう! しゅっぱつおしんこー!」
「っしゃあぁ! キュウリのぬか漬けー!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ぬえがやったんじゃないかしら?」
「はぁ、してその理由は?」
「あの子、こういう悪戯好きじゃない?」
「まぁ確かに…………って、え? それだけですか?」
「えぇ。」
「うお! みろひじり! このかけじくにすっごいはんのうがあるぞ! ロッドがぐりんぐりんしてるぞ! 」
「あらぁ本当ね。裏に何かあるんじゃない?」
「んー………なにもないぞ! ひじりめ、だましたな!」
すごく和むんだけど。
私とナズーリンと雲山(無理やり連れてきた)は失神した星を放置したまま、姐さんの部屋へやって来ました。人妖から信仰を集める姐さんは、やはり命蓮寺の中でも頼れる存在ですから、ナズーリンがこうなった原因も難なく解明してくれるんじゃないか、と考え話を聞きにきました。でも、悪戯好きというだけでぬえを疑うのも少しばかり気がひけるというか……やはり人(いや妖怪だけど)を疑うのならそれ相応の理由付けがなければいけないと思うのです。
「まぁでも可愛いからいいじゃん。一輪ちょっと心配しすぎじゃない? ナズーリン、チーズあげよっか?」
「チーズ!」
「そういう問題じゃないでしょ村紗。」
「まあそうかりかりするな。いっちゃんもチーズくうか?」
「いらんわ。」
「私はいただこうかしら。」
「ちょ、姐さん!」
なんだこいつら危機感ってものがないのかしら。おい雲山チーズ食ってんじゃねぇよエメンタールチーズみたいに穴開けてやろうかゴルァ。
「第一こんな姿、毘沙門天様がご覧になったら何て仰るか……。」
「あぁその事なら大丈夫よ。私の方からしばらく業務は出来ない旨をお伝えしたら、『いいってことよ。あのナズーリンを覗いてるだけでハァハァうわなにをするやめ』ですって。」
「その返事に一ミリも違和感を覚えない姐さんもどうかと思いますよ。」
ったくあの変態神め。会ったことないけど殺意を覚えるわ。
どうもこの異変を重く受けとめているのは私だけみたいです。あ、いや、さっきはなんか「キュウリのぬか漬けー!」とか言っちゃいましたが断じて本心じゃありません。断じて。ノリです、ノリ。妖怪でもノリが良くなきゃねぇ……侵入者相手に「貴女も姐さん復活を望んでるのねキャーステキーイクサーン」なんて言わないですよ。今の私はいたって真面目です。"ド"真面目です。
姐さんと村紗はナズーリンと遊んでいるし、いつの間にか覚醒した星は部屋の襖の陰から鼻血を噴き出しながらその様子を見ているし。てか三人とも気付けよ。いや、確かに命に関わる事でもないし、重大な異変ではないかもしれませんが。それでもやはり、ナズーリンに異変が起こっている事に変わりはありません。当の本人は何も気になっていないみたいですが、いつも一緒にいるこちらの身としては、違和感ありまくりです。別にナズーリンがこのままでもいいじゃない、みたいな素振りを見せる姐さんや村紗に対しても、私としてはやはり違和感があります。何だかなぁ、等とモヤモヤした気分からか、深いため息がでてしまいます。
「はぁ~……。」
「どうしたいっちゃん? ぐあいわるいのか?」
「ん?」
心配そうにナズーリンが私を見上げてきます。そういえば、以前もこうやってため息を吐いた時、具合が悪いのかとか、悩み事があるのなら言ってみろとか、色々と私の事を心配してくれたっけ。考えてみれば、こういった心遣いは以前のナズーリンと何も変わっていません。見た目と頭が少し幼くなった以外、あとはナズーリンなんです。星への忠誠を誓うナズーリン。この寺の事で行き詰まっていると、いつも私の心の支えになってくれたナズーリン。そして何より、一緒に過ごす家族のようなナズーリン。命蓮寺にとって欠いてはならない存在である事には変わりはない、そんな事を考えていたら、別にこのままでも支障はないのかな、なんてちょっぴり思ったりなんかしたりして。だってナズーリンはナズーリンなんですから。
「……ちょっとね。考え事してたの。」
「ふーん。みけんにしわよせるとふけるぞ。」
「余計なお世話ありがとう。」
そう言って私は笑顔でナズーリンの頭をクシャクシャと撫でます。そんな私の胸中を察したのか、姐さんと村紗も微笑んでいます。やっぱり私たちって家族同然の絆で結ばれているのかも。姐さんを封印から解こうとしたあの時から、私達の絆はより一層深まったと言えるでしょう。
ですが……
「もう……もう我慢できません!!」
そうでもない輩もいた事を忘れていました。ゾクッと悪寒が走ったかと思うと、星が襖をぶち抜いてこちらに飛び込んできました。さながら八等身あるんじゃないかと錯覚する程の飛び込みです。(°д°)←こんな顔してますし。今の星は風見幽香も真っ青になるくらい危険度極高になっています。主にナズーリンにとって。いくらご主人だからって、こんな狂った愛情は認めちゃいけないと思うのです。半分猫科の本能で動いてるだろうし。と、いうわけでお仕置き。
「雲山!」
「うわらば」
ナーイス雲山。私たちったら最強ね。雲山のパンチが見事星にクリーンヒットして、盛大にぶっ飛びました。ざまぁ。
「あ! 危ない!」
ハッと我に返ったのは村紗の声を聞いた時でした。星がぶっ飛んだ方向にあるのは床の間。いかにも大事そうに飾られている掛け軸がある場所です。何だか貧相な字体ですが、先ほどナズーリンのダウジングに引っかかったのもおそらく、価値が高い逸品だからでしょう。まずいです、非常に。星がぶつかった拍子にもし破れでもしたら、姐さんにどんな説教をされるか…。一日で二十七時間くらい平気で説法をするお方ですから、考えただけで脱水症状を起こしそうです。何とかスピンしながら飛んでいく星を止めようとし、雲山に指示を出そうとします。
↑この間約コンマ0.5秒。
しかし、幻想郷最速は私なんじゃないか、と錯覚する程の私のこの頭の回転も、星の飛んでいくスピードには追いつきません。てかどんだけの勢いで殴ったのよ雲山!あぁもうだめ…! そう思った瞬間、
「ぬぐぇ!」
「へ?」
妙ちくりんな呻きが聞こえました。よく見ると本日二度目の気絶をした星の下敷きになって、ぬえが目を回しています。
「いったたぁ……あ、見つかっちゃった。」
「ぬえ! あんた…何でこんな所にいるの?」
「かげぶんしんのじゅつか?」
「それを言うなら隠れ身の術でしょうが。」
「いやーん! やっぱかわいー!」
ぬえは覆い被さっている星をはねのけ、ナズーリンに抱きつきました。ぎゅーっという効果音が鳴っていそうなくらい強く抱いているようで、ナズーリンが凄く苦しそうにしています。
「ぬ…ぬえ……ぐるじい……。」
「ほらぬえ、離してあげなさい。」
「あーん、もうちょっとだけー。」
「何であんた突然出てきたのよ?」
「んー、正体不明の種使って隠れつつナズーリンの覗き見してた。」
私はぬえをナズーリンから無理やり引っ剥がします。見れば畳の上に、正体不明の種が落ちています。星との衝突の際に、ぬえの体の何処かからポロッと落っこちたのでしょう。きっとこれを使って隠れて覗いていたんですね。全く、覗きなんてサイテーな行いですよ。覗きをしていいのは、変態という名の紳士だけですよ。いやよくないけど。まぁぬえがナズーリンに飛びついた所で、星ほど危険じゃなさそうなのでいいのですが。いやだからよくはないけ・れ・ど・も。ぬえが現れた場所から考えると、ナズーリンを覗きながら隠れていたのは恐らく床の間の掛け軸の裏……って!!
「あぁ! 掛け軸!」
「びっくり!」
「ナズちゃん、それは驚いているのかしら?」
時既に遅し、とはまさに今の状況でしょう。私が気付いた時にはもう、拾い上げた掛け軸は見るも無残に真っ二つになっていました。ぬえと星の二人分の衝撃を受けたので、掛け軸の破れた部分から下側は星の下敷きに、上側は衝撃の余韻でいまだに揺れています。あ、落ちた。あばばばばばばばばばばばばば
「あらあら、掛け軸破れちゃったわね。」
「すすすすすいまませせせんんんん………。」
声が上ずっているのが自分でもわかります。と、とにかく謝らなきゃ……。もう頭が真っ白で自分が何を言っているのかわからない状態です。とりあえず雲山のせいにして……ごめんなさい雲山のせいにしないからその拳をしまって下さいお願いします。
「いいのよ一輪。これ価値のあるものじゃないから。」
「え、そうなんですか!?」
「霊夢の書なのよ、これ。私が霊夢から買ったの。まぁお賽銭の代わりってとこかしらね。」
「とうとう商売始めたのね、あの巫女。ガメツいったらないわ。」
「さいきんおまもりとかはまやもつくりはじめたらしいぞ。」
どうやら私の心配は杞憂だったみたいです。営利目的のありがたくも何ともない書なら別に破れたって問題ないですものね。村紗の言う通り、霊夢の金への執着心は幻想郷ナンバーワンを誇ります。材料費だけでも困窮を極めるはずですし、当然自身が被る労力を抑える為に、霊力なんか込めてないでしょう。霊力のこもっていない御守りやその他の厄除けの品は、全く効力はありませんから。そのような神事には疎く無知な人間なら騙せたのでしょうが、姐さんは騙せなかったようですね。それでも買ってあげる姐さんの徳の高さ、うーん惚れ惚れするわ。
「あれ? でもおかしくない?」
掛け軸なんかどーでもよくなった瞬間、疑問を呈したのは村紗でした。
「霊夢の掛け軸の価値が皆無なら、どうしてナズーリンのダウジングに引っかかったのかな?」
さらっと非道いことを言った気がしますが気のせいでしょう。確かに価値のない掛け軸がダウジングに引っかかるのは何故なんでしょうか。うーん、と私と村紗が首を捻っていると、姐さんが全てを説明してくれました。
「あら、何か勘違いしてないかしら? ダウジングというのは、探し物をする時の一手段であって、宝探しの手段ではないのよ。価値のある物ではなくて、目に見えない物に反応するようになっているの。宝探し等に使う場合、その場に行くと大体どの辺に宝物があるか、経験則等から予測がつくでしょう? そういう心理によってダウジングというのは反応するそうよ。要するに、ナズちゃんはぬえがそういう所に隠れる事がある、っていうのを知っていたのよ。だからぬえに反応したってわけ。」
「なるほど、そうだったのか。」
「ってあんた原理分かってないのに使ってたんかい。」
何だか今日一日でやたらとツッコミが上手くなった気がしますがどうでもいいでしょう。
成る程、ぬえが隠れていた場所は掛け軸の裏でしたから、ぬえに反応したとなると、確かに掛け軸に反応したように見えます。ナズーリンが普段からダウジングで見つけてきた物は、何気に価値のあるお宝ばかりだったので、ダウジング本来の意義も勘違いしていました。そういえば、白黒魔女と一緒にトレジャーなんたらをしている、と以前からナズーリンに聞いていましたが、それと関係があったのですかね。
「ナズーリンが持って帰ってくるのって、いつもお宝だから勘違いしてたわ。」
「私も。魔理沙とトレジャーハンティングしてきた、って私にくれたアンカー、香霖堂の店主に見せたらすごい逸品だって言ってたよ。何でも外の世界の、氷山にぶつかって沈没した豪華客船のアンカーだったらしくてね。」
「それあんたが沈めたんじゃないの?」
「ギクッ!……ままままさかそんなわけななないじゃないやだなー一輪ったら。」
「とりあえずその大量の汗を拭いてから否定しなさい。」
「こ、これは海水よ!」
「キモいわ!」
まぁ何にせよナズーリンのダウジングの腕は本物ってことね。正直恐れ入ったわ。
「まぁまた何か見つけたら私に頂戴よ、ナズーリン。」
「ひとにたよってばかりじゃいけないぞ?」
「え!?……あ……す、すいません……。」
ごもっともです。
すると、私が正座させていたぬえが、痺れたのか両足を投げ出しながら話に加わってきました。
「いやーでもさ、なずのダウジングロッドが反応した時はビックリしたよ。まさか私に反応するなんてねぇ……バレたかなって思ったもん。」
「実際姐さんにはバレてたしね。」
あの時、ナズーリンのダウジングロッドが反応していた時、姐さんは掛け軸の裏に何かある、と言っていました。ぬえがいるのを知っていたからでしょう。まぁ私にもわからなかったですし、結構上手く隠れていたのでしょうね。あ、もしかして姐さんはぬえが掛け軸から覗いているのを怪しんで、ぬえを疑ってたのかも……。うん、それなら辻褄が合うわね。
「聖はもうなーんでもお見通しだからお手上げ。私がなずに正体不明の種仕込んだのだってお見通しなんだから。」
「へぇ、そうなんですか? 姐さん。」
「私はそんな事知らないわよ?」
「え゛」
あらら墓穴掘ったわねぬえ。てゆーか何故今この場でそれを言うかな。
今の一言が決定打、今日の一連の出来事はやはりこの娘が元凶だったようです。いや、確たる証拠がないだけで私も姐さんと同じ様に疑っていたんですよ。……何よ雲山その「本当かよ」って目は。ほ、本当に私も疑ってたんだから!
まぁ何だかんだ言って悪戯好きのやることですよ。毎度毎度ぬえの悪戯には煮え湯を飲まされてますから。その度にきつーいお仕置きをしてるのですが、ぬえも懲りないわね。
「ぬ~~~~え~~~~!!!」
「ひっ!!」
ぬえが涙目で悲鳴をあげ、後ずさりします。私の鬼の如き形相と雲山の逆巻く拳を見れば、誰だってこうなるかもしれませんね。と、いうわけでお仕置き。
「ちょま、一輪! 待って待って待ってください! ダメダメダメダメダメそんなの喰らったらヤバいってマジで許してくだsあべし」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
みんなが各々使った食器を私の所まで持ってきます。食器洗いをしている私は、河童は食器を洗う機械とか作れないのかなぁ等どーでもいい事を考えたり、「ハイカラ少女と時代親父」の鼻歌Ver.を歌ったり、まぁとどのつまりいつも通り晩御飯の後片付けをしています。こう見えて私、この寺の家事は全部一人でやっているんです。将来良いお嫁さんになれるかも…なーんて……。
ふと気がつくと後ろからトトトッと誰かが歩いてくる音がします。カチャカチャと食器がこすれる音もする事から推理すると、台所へやって来たのはまだ晩御飯を食べ終わっていなかった……
「ご馳走さまでした。」
「はい、お粗末様でした。」
ナズーリンです。
あの後、ぬえをしめてナズーリンに仕込んだ正体不明の種を取り除かせました。するとポンっと小さな破裂音と共にナズーリンの様子が一変、いつものナズーリンに元通りになりました。案外あっけなく戻ったので少々拍子抜けしてしまいましたが、結果的に異変解決ということになったので良かったです。これで私にも自機のお誘いが……。
「絶対に叶わない妄想をしている所すまないね。」
「ぬぁっ! 何故それを…。」
「そのにやけ顔を見れば誰でもわかるよ。ところで何か手伝う事はあるかい?」
「あ、じゃあ食卓を拭いてきてもらえる?」
「お安い御用さ。」
そういって私は、まだ使っていない綺麗な布巾を水で濡らします。
「今日は本当にすまなかった……。」
「もういいって言ってるでしょ? 謝るの何回目よ。」
本人は幼くなっていた時の記憶がうっすらとあるらしく、騒動の責任は自分にある、と何度も私に頭を下げるのです。
「いや、一輪が私の為に色々してくれなければ、私はあのままだった。……迷惑をかけたね。」
「大袈裟なんだから……。」
ナズーリンには義理深い所があるので、こう堅苦しい感じになってしまう事が多々あります。親しき仲にも礼儀ありと言いますが、大袈裟すぎるのも考えものです。
「困った時はお互い様よ。私とナズーリンの仲でしょ?」
「……あぁ…そうだね。」
堅い表情も崩れ、ようやくナズーリンにも笑顔が見えます。子供のような無垢な笑顔ではなく、慈愛に満ちた優しい笑顔。私はそれを見て、あぁいつものナズーリンだ、と安心するのです。
濡らした布巾を渡すと、ナズーリンは踵を返し食卓を拭きに居間へと戻って行きます。私も洗い物に戻ると、不意にナズーリンに呼びかけられました。
「一輪。」
「んー?」
「ありがとう。」
「やだ、何よ改まって………。」
振り向くと私をジッと見つめるナズーリンと目が合います。その力強い視線に、私の心の隅っこまで見透かされてしまいそうです。
「……えへへ、何かそうやって面と向かって言われると恥ずかしいな……うん。どういたしまして。」
私の頬が熱を持っているのがわかります。ナズーリンに見つめられているからじゃない、その言葉に本当に心がこもっているから。一緒にいる時間が永ければ永い程、「ありがとう」という言葉は普段忘れがちだけど、真っ直ぐな心を向ける事で、こんなにも真っ直ぐに人の心に届くものなんだ、としみじみ感じます。
そしてそれはとても、とても勇気がいることだから。
私も誠意を見せなければいけません。
「ナズーリン。」
「ん? なんだい?」
「ごめんなさい。」
「えっ……!?」
「私はナズーリンがあのままでもいい、って思った。さっきまでのナズーリンが可愛くて、でもどこかしっかりしていたから……。」
それは紛れもない事実。
ナズーリンはいつでも私に優しい。それは今日の異変があっても同じことでした。それ故に私はあの時、正体不明になったナズーリンと元のナズーリンを重ね合わせてしまったのです。私にとって、命蓮寺にとって大切なナズーリンがあのままでいい筈がないのに……。
私はこの事を謝らなければ、ナズーリンの感謝の気持ちを受け取ることは出来ません。とにかく謝るのではない。気持ちを込めて謝るために、私はもう一度ごめんなさいと言い頭を下げました。
「……。」
「……。」
しばらく沈黙が続きます。
やっぱり怒ってるかな……。
「君は……。」
先に口を開いたのはナズーリンでした。
「君は……実に馬鹿だな……。」「!?」
やっぱり怒ってる、そう思って顔を上げてみると、ナズーリンは笑っていました。怒気を全く感じさせない笑顔に、私は戸惑ってしまいます。
「ふふ……怒ってる、と思っていた顔をしているね。そんなわけないじゃないか。『私とナズーリンの仲』なんだろう?」
そう言ってニコッと微笑むナズーリンを見て気付きました。あぁ……そうか、私が言ったんだっけ。何度も謝るナズーリンを私は許した。だからナズーリンも私を許した。お互いに誠心誠意心を込めて謝り、許し合い感謝しあった。こんなにも心と心が繋がりあっていることを、ナズーリンも分かってくれていたんですね。いや……私の方が分かってなかったのかな。自分で言った癖に、お互いの絆に気付かされるなんて、やっぱりナズーリンには私の心の中を見透かされてるんじゃないか、と錯覚してしまいます。
「そうね……ありがとう。」
「これでおあいこだね。」
そう言われるとなんか負けた気がしちゃうんだけど……。まぁ、一本取られたってことね。まったく、ナズーリンにはかなわないわ。
さてと、早く食器洗っちゃわないと夜の説法に間に合わなくなってしまいます。私は話を切って食器洗いに戻ります。
「フフッ…さて私も、食卓をふいてくるよ……うわっ!」
すると突然、私の後ろから悲鳴と共にポンッと小さな破裂音が聞こえました。何事かと目を凝らすと、尻もちをついたナズーリンが何故か星が持っているはずの宝塔を握っていました。え、これどういう状況?
「ふ……あはははははははは!!」
「え……ちょ……どうしたのナズーリン? 何で笑ってるの?」
「いや……ぬえも悪戯が好きだなぁと思って。あぁ可笑しい。」
そう言ってナズーリンは床に転がっている何かをつまみ上げました。成る程、正体不明の種ですか。宝塔に正体不明の種を仕込んで、布巾に変えていたわけですね。全く、あの娘の悪戯は手が込んでいて油断も隙もない。
「ということは星が今日持ってた宝塔は……。」
「台所用の布巾だよ。全くあの間抜けなご主人のことだから、今頃これと同じ様に正体不明が解けて、『宝塔がなくなった!』って慌てふためいているだろうね。」
と、ナズーリンが予想します。案の定星の部屋の方からバタバタと慌ただしく足音が聞こえます。それと同時にナズーリンを呼ぶ声も聞こえます。本当に星はそそっかしいですね。
そんな、全くもっていつも通りの光景が何だか微笑ましくて、可笑しくて、温かくて、自然と笑いがこみ上げてきます。
「ぷっ……!」
「「あはははははははは!」」
「はぁ可笑しい……何回ぬえに悪戯されても学習しないんだから、ご主人は。すまない一輪。ご主人にこれを返してくるよ。」
「うん。」
そう言うと、ナズーリンは濡れ布巾ではなく、今度は宝塔を持って台所から出て行きました。
ぬえの悪戯を発端とした今日の事件は結局何事もなく終わりました。まぁ何事もなく、という訳ではありませんでしたが、こうやってまたナズーリンと笑いあう事が出来るのは、普段通りに戻ったということ。きっと明日も幻想郷は平和でしょう。
ん……? 何か忘れてる気がする……。まぁいっか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おーい、ご主人。」
「あ、ナズーリン! どうしよう宝塔がこんなフニャフニャになってしまいました……。」
「いやそれは布巾だろ。どう見ても布巾だろ。」
「え? 布巾? イヤですねナズーリン。宝塔で食卓が拭けるわけが無いじゃないですか。」
「君は実に馬鹿だな。」
「私は馬でも鹿でもありません! 虎です!」
「知ってるよ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……ねーうーんざん。」
「……」
「……あたしけっこー反省してるんだけどなー。」
「……」
「……雲山、あたし晩ご飯食べてないんだよねー……って知ってるか……ずっとあたしのこと見張ってるんだもんね……。」グー
「……」
「……にしても逆さ吊りで放置とか一輪は鬼畜よねー。」
「……」キッ!
「ひっ! そ、そんな睨まないでよぉ……。ホントに反省してるからぁ……ぐすん……。」
「……」
「……ねぇ雲山? もう降ろしてくれてもいいでしょ……?」
「……」フルフル
「そんなぁ……ひっ…ぐす……うぅ……ぬえええええぇぇぇぇぇん………」
星がそんな訳の分からない事を言って廊下を歩く私を呼び止めてきます。その慌てふためく様から私は、またどうせ宝塔をなくしたパニックから不審な挙動を起こしているんだろう、と憶測します。若しくは、この梅雨の湿気で頭にカビでも生えてしまったのかもしれません。そもそも『幼くなる』という表現は日本語的に如何なものでしょうか?『幼い』と言うのは未発達であるという事になるでしょうが、形容詞であり動詞にはならないはずです。百歩譲って『幼くなる』という表現を認めたとして、考えられる行動様式は、幼児退行しかないでしょう。『退行』は一般的には、親が自分にかまってくれない際、幼児と同じ様な行動をとる事で、親の気をひこうとする、ということです。いつもそそっかしい星をただの一つも取りこぼさないで業務を補佐「りん」あのナズーリンが、誰かの気をひく為に「一輪?」行を見せるなど考えられ「一輪!!」
「なんですか星。宝塔の事なら私は知らないですよ。」
「宝塔の事じゃないです! 今日はちゃんと持ってますよ。ほら。」
今日はってつけてる時点で、なくし癖認めてるじゃん。っていいよ見せなくてわかったから。
「そうじゃなくてナズーリンが幼くなってしまって……私もう、食べてしまいそうで……」
うん。誰かこの人に日本語を教えてあげて。
「ていうか具体的にナズーリンに何が起こったのか教えてもらえませんか? 雲をも掴むような話で、ついていけないんですが。ま、雲は掴めますけどね。」
今私上手いこと言ったよ。上手かったよね?…………そうかい無視かいこの雲ジジィが。小さくして握りつぶしちゃろうかこんにゃろうめ。
「具体的にって…そのままですよ。体が小さくなって……。」
目の前の人(妖怪だけど)まで私の尼リカンジョークをスルーした。もう命蓮寺の屋根裏で白骨化してやろうか。
「それに以前より、か、可愛くなって……。」
「はぁ。」
「だから私はもうダメだ。」
「何その超理論!?」
ダメだこいつ早くなんとかしないと……、と考えていると、私がたった今星に絡まれて困っている元凶が現れました。
「びー! びー! ごしゅじん! ごしゅじんはっけん!」
あらやだ可愛い。
「………はうっ!」
「あーあ、鼻血だして失神しちゃったわ。」
「びこーん! びこーん! いっちゃんもはっけん!」
「あらら、見つかっちゃったわね……っていっちゃん?」
「ダウジングにふかのうはないぞ!」
「え……? あ、そう……。」
「うお! ごしゅじんがはなぢだしてる! だれにやられた! いちりんか!」
「いやあんたよ、あんた。」
「なずがやったのか!? ………なずのスペルカードつよい!」
「弾幕じゃないけど。少なくとも違う意味で破壊力は抜群ね。」
どうやら星が言っていた内容は的を射ていたようです。元々十数歳の子供のようにしか見えない小さな体躯が更に小さくなって、頭の中が多少特殊になってしまっているナズーリンは、成る程、確かに可愛いです。普段しっかりしているからこそ、こういった姿は新鮮で可愛らしいですね。ギャップ萌えという言葉がふと頭に浮かびましたが、何のこっちゃさっぱりわかりません。そんな言葉幻想入りしてないから。雲山のがハイカラなんじゃない?
うーん……でもこれって小さいけれど異変ですよね? 文屋に嗅ぎつけられてネチっこく質問攻め受けるのも面倒ですし……早く原因を見つけて解決しないといけませんね。
「ねぇナズーリン?」
「なんだ?」
「どうしてそんな姿になったの?」
「わからん!」
「即答かい。うーん……生活に支障はないのかしら……。」
「きょうのしごとはおわったぞ! さとにいってきたんだ。」
「星といっしょに?」
「ううん、なずひとりで。」
「え!? だ、大丈夫だったの? ちゃんと檀家回れた?」
「? だんか?」
「……はー……いいわ、私が後で行ってくるから。」
「かえりにチーズかってくる?」
「買わんわ!」
記憶力、判断能力に大きな欠陥が生じているみたいです。平たく言えば、「体は子供、頭脳も子供、その名はナズーリン!」って感じです。賢将の二つ名もこのままでは三等兵くらいに格下げされてしまいそうです。
この状況はマズいです。非常に。星は鼻血出して倒れている時点で仕事に手をつけられないし、ナズーリンも里で何してきたんだか到底考えが及びません。こんな状態の星とナズーリンでは揃いも揃って毘沙門天代理の仕事がままならないのは火を見るよりも明らかでしょう。そう、逆にいえば、この異変を解決すれば二人とも今まで通りにお仕事に戻れると思うのです。巫女や魔法使いに解決してもらってもいいんですが、大規模な異変でもないですし、命蓮寺内の事にわざわざ呼んでも……お賽銭巻き上げられそうだし。ここはこの雲居一輪が一肌脱ぎますか。……面倒くさいとかいうな爆発しろジジィ。あんたもくるの、私達で解決するわよ。
「よし。ナズーリン、ちょっとついて来て。」
「んー……。」
「ん? どうしたの?」
「いっちゃん、肩車。」
「え!?……し、仕方ないわね……。」
ちょっと……可愛過ぎでしょ。上目使いは反則よ……。
「おぉ! 高いぞ! いっちゃん!」
「あんまりはしゃいで落ちないでよね。行くわよ?」
「おう! しゅっぱつおしんこー!」
「っしゃあぁ! キュウリのぬか漬けー!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ぬえがやったんじゃないかしら?」
「はぁ、してその理由は?」
「あの子、こういう悪戯好きじゃない?」
「まぁ確かに…………って、え? それだけですか?」
「えぇ。」
「うお! みろひじり! このかけじくにすっごいはんのうがあるぞ! ロッドがぐりんぐりんしてるぞ! 」
「あらぁ本当ね。裏に何かあるんじゃない?」
「んー………なにもないぞ! ひじりめ、だましたな!」
すごく和むんだけど。
私とナズーリンと雲山(無理やり連れてきた)は失神した星を放置したまま、姐さんの部屋へやって来ました。人妖から信仰を集める姐さんは、やはり命蓮寺の中でも頼れる存在ですから、ナズーリンがこうなった原因も難なく解明してくれるんじゃないか、と考え話を聞きにきました。でも、悪戯好きというだけでぬえを疑うのも少しばかり気がひけるというか……やはり人(いや妖怪だけど)を疑うのならそれ相応の理由付けがなければいけないと思うのです。
「まぁでも可愛いからいいじゃん。一輪ちょっと心配しすぎじゃない? ナズーリン、チーズあげよっか?」
「チーズ!」
「そういう問題じゃないでしょ村紗。」
「まあそうかりかりするな。いっちゃんもチーズくうか?」
「いらんわ。」
「私はいただこうかしら。」
「ちょ、姐さん!」
なんだこいつら危機感ってものがないのかしら。おい雲山チーズ食ってんじゃねぇよエメンタールチーズみたいに穴開けてやろうかゴルァ。
「第一こんな姿、毘沙門天様がご覧になったら何て仰るか……。」
「あぁその事なら大丈夫よ。私の方からしばらく業務は出来ない旨をお伝えしたら、『いいってことよ。あのナズーリンを覗いてるだけでハァハァうわなにをするやめ』ですって。」
「その返事に一ミリも違和感を覚えない姐さんもどうかと思いますよ。」
ったくあの変態神め。会ったことないけど殺意を覚えるわ。
どうもこの異変を重く受けとめているのは私だけみたいです。あ、いや、さっきはなんか「キュウリのぬか漬けー!」とか言っちゃいましたが断じて本心じゃありません。断じて。ノリです、ノリ。妖怪でもノリが良くなきゃねぇ……侵入者相手に「貴女も姐さん復活を望んでるのねキャーステキーイクサーン」なんて言わないですよ。今の私はいたって真面目です。"ド"真面目です。
姐さんと村紗はナズーリンと遊んでいるし、いつの間にか覚醒した星は部屋の襖の陰から鼻血を噴き出しながらその様子を見ているし。てか三人とも気付けよ。いや、確かに命に関わる事でもないし、重大な異変ではないかもしれませんが。それでもやはり、ナズーリンに異変が起こっている事に変わりはありません。当の本人は何も気になっていないみたいですが、いつも一緒にいるこちらの身としては、違和感ありまくりです。別にナズーリンがこのままでもいいじゃない、みたいな素振りを見せる姐さんや村紗に対しても、私としてはやはり違和感があります。何だかなぁ、等とモヤモヤした気分からか、深いため息がでてしまいます。
「はぁ~……。」
「どうしたいっちゃん? ぐあいわるいのか?」
「ん?」
心配そうにナズーリンが私を見上げてきます。そういえば、以前もこうやってため息を吐いた時、具合が悪いのかとか、悩み事があるのなら言ってみろとか、色々と私の事を心配してくれたっけ。考えてみれば、こういった心遣いは以前のナズーリンと何も変わっていません。見た目と頭が少し幼くなった以外、あとはナズーリンなんです。星への忠誠を誓うナズーリン。この寺の事で行き詰まっていると、いつも私の心の支えになってくれたナズーリン。そして何より、一緒に過ごす家族のようなナズーリン。命蓮寺にとって欠いてはならない存在である事には変わりはない、そんな事を考えていたら、別にこのままでも支障はないのかな、なんてちょっぴり思ったりなんかしたりして。だってナズーリンはナズーリンなんですから。
「……ちょっとね。考え事してたの。」
「ふーん。みけんにしわよせるとふけるぞ。」
「余計なお世話ありがとう。」
そう言って私は笑顔でナズーリンの頭をクシャクシャと撫でます。そんな私の胸中を察したのか、姐さんと村紗も微笑んでいます。やっぱり私たちって家族同然の絆で結ばれているのかも。姐さんを封印から解こうとしたあの時から、私達の絆はより一層深まったと言えるでしょう。
ですが……
「もう……もう我慢できません!!」
そうでもない輩もいた事を忘れていました。ゾクッと悪寒が走ったかと思うと、星が襖をぶち抜いてこちらに飛び込んできました。さながら八等身あるんじゃないかと錯覚する程の飛び込みです。(°д°)←こんな顔してますし。今の星は風見幽香も真っ青になるくらい危険度極高になっています。主にナズーリンにとって。いくらご主人だからって、こんな狂った愛情は認めちゃいけないと思うのです。半分猫科の本能で動いてるだろうし。と、いうわけでお仕置き。
「雲山!」
「うわらば」
ナーイス雲山。私たちったら最強ね。雲山のパンチが見事星にクリーンヒットして、盛大にぶっ飛びました。ざまぁ。
「あ! 危ない!」
ハッと我に返ったのは村紗の声を聞いた時でした。星がぶっ飛んだ方向にあるのは床の間。いかにも大事そうに飾られている掛け軸がある場所です。何だか貧相な字体ですが、先ほどナズーリンのダウジングに引っかかったのもおそらく、価値が高い逸品だからでしょう。まずいです、非常に。星がぶつかった拍子にもし破れでもしたら、姐さんにどんな説教をされるか…。一日で二十七時間くらい平気で説法をするお方ですから、考えただけで脱水症状を起こしそうです。何とかスピンしながら飛んでいく星を止めようとし、雲山に指示を出そうとします。
↑この間約コンマ0.5秒。
しかし、幻想郷最速は私なんじゃないか、と錯覚する程の私のこの頭の回転も、星の飛んでいくスピードには追いつきません。てかどんだけの勢いで殴ったのよ雲山!あぁもうだめ…! そう思った瞬間、
「ぬぐぇ!」
「へ?」
妙ちくりんな呻きが聞こえました。よく見ると本日二度目の気絶をした星の下敷きになって、ぬえが目を回しています。
「いったたぁ……あ、見つかっちゃった。」
「ぬえ! あんた…何でこんな所にいるの?」
「かげぶんしんのじゅつか?」
「それを言うなら隠れ身の術でしょうが。」
「いやーん! やっぱかわいー!」
ぬえは覆い被さっている星をはねのけ、ナズーリンに抱きつきました。ぎゅーっという効果音が鳴っていそうなくらい強く抱いているようで、ナズーリンが凄く苦しそうにしています。
「ぬ…ぬえ……ぐるじい……。」
「ほらぬえ、離してあげなさい。」
「あーん、もうちょっとだけー。」
「何であんた突然出てきたのよ?」
「んー、正体不明の種使って隠れつつナズーリンの覗き見してた。」
私はぬえをナズーリンから無理やり引っ剥がします。見れば畳の上に、正体不明の種が落ちています。星との衝突の際に、ぬえの体の何処かからポロッと落っこちたのでしょう。きっとこれを使って隠れて覗いていたんですね。全く、覗きなんてサイテーな行いですよ。覗きをしていいのは、変態という名の紳士だけですよ。いやよくないけど。まぁぬえがナズーリンに飛びついた所で、星ほど危険じゃなさそうなのでいいのですが。いやだからよくはないけ・れ・ど・も。ぬえが現れた場所から考えると、ナズーリンを覗きながら隠れていたのは恐らく床の間の掛け軸の裏……って!!
「あぁ! 掛け軸!」
「びっくり!」
「ナズちゃん、それは驚いているのかしら?」
時既に遅し、とはまさに今の状況でしょう。私が気付いた時にはもう、拾い上げた掛け軸は見るも無残に真っ二つになっていました。ぬえと星の二人分の衝撃を受けたので、掛け軸の破れた部分から下側は星の下敷きに、上側は衝撃の余韻でいまだに揺れています。あ、落ちた。あばばばばばばばばばばばばば
「あらあら、掛け軸破れちゃったわね。」
「すすすすすいまませせせんんんん………。」
声が上ずっているのが自分でもわかります。と、とにかく謝らなきゃ……。もう頭が真っ白で自分が何を言っているのかわからない状態です。とりあえず雲山のせいにして……ごめんなさい雲山のせいにしないからその拳をしまって下さいお願いします。
「いいのよ一輪。これ価値のあるものじゃないから。」
「え、そうなんですか!?」
「霊夢の書なのよ、これ。私が霊夢から買ったの。まぁお賽銭の代わりってとこかしらね。」
「とうとう商売始めたのね、あの巫女。ガメツいったらないわ。」
「さいきんおまもりとかはまやもつくりはじめたらしいぞ。」
どうやら私の心配は杞憂だったみたいです。営利目的のありがたくも何ともない書なら別に破れたって問題ないですものね。村紗の言う通り、霊夢の金への執着心は幻想郷ナンバーワンを誇ります。材料費だけでも困窮を極めるはずですし、当然自身が被る労力を抑える為に、霊力なんか込めてないでしょう。霊力のこもっていない御守りやその他の厄除けの品は、全く効力はありませんから。そのような神事には疎く無知な人間なら騙せたのでしょうが、姐さんは騙せなかったようですね。それでも買ってあげる姐さんの徳の高さ、うーん惚れ惚れするわ。
「あれ? でもおかしくない?」
掛け軸なんかどーでもよくなった瞬間、疑問を呈したのは村紗でした。
「霊夢の掛け軸の価値が皆無なら、どうしてナズーリンのダウジングに引っかかったのかな?」
さらっと非道いことを言った気がしますが気のせいでしょう。確かに価値のない掛け軸がダウジングに引っかかるのは何故なんでしょうか。うーん、と私と村紗が首を捻っていると、姐さんが全てを説明してくれました。
「あら、何か勘違いしてないかしら? ダウジングというのは、探し物をする時の一手段であって、宝探しの手段ではないのよ。価値のある物ではなくて、目に見えない物に反応するようになっているの。宝探し等に使う場合、その場に行くと大体どの辺に宝物があるか、経験則等から予測がつくでしょう? そういう心理によってダウジングというのは反応するそうよ。要するに、ナズちゃんはぬえがそういう所に隠れる事がある、っていうのを知っていたのよ。だからぬえに反応したってわけ。」
「なるほど、そうだったのか。」
「ってあんた原理分かってないのに使ってたんかい。」
何だか今日一日でやたらとツッコミが上手くなった気がしますがどうでもいいでしょう。
成る程、ぬえが隠れていた場所は掛け軸の裏でしたから、ぬえに反応したとなると、確かに掛け軸に反応したように見えます。ナズーリンが普段からダウジングで見つけてきた物は、何気に価値のあるお宝ばかりだったので、ダウジング本来の意義も勘違いしていました。そういえば、白黒魔女と一緒にトレジャーなんたらをしている、と以前からナズーリンに聞いていましたが、それと関係があったのですかね。
「ナズーリンが持って帰ってくるのって、いつもお宝だから勘違いしてたわ。」
「私も。魔理沙とトレジャーハンティングしてきた、って私にくれたアンカー、香霖堂の店主に見せたらすごい逸品だって言ってたよ。何でも外の世界の、氷山にぶつかって沈没した豪華客船のアンカーだったらしくてね。」
「それあんたが沈めたんじゃないの?」
「ギクッ!……ままままさかそんなわけななないじゃないやだなー一輪ったら。」
「とりあえずその大量の汗を拭いてから否定しなさい。」
「こ、これは海水よ!」
「キモいわ!」
まぁ何にせよナズーリンのダウジングの腕は本物ってことね。正直恐れ入ったわ。
「まぁまた何か見つけたら私に頂戴よ、ナズーリン。」
「ひとにたよってばかりじゃいけないぞ?」
「え!?……あ……す、すいません……。」
ごもっともです。
すると、私が正座させていたぬえが、痺れたのか両足を投げ出しながら話に加わってきました。
「いやーでもさ、なずのダウジングロッドが反応した時はビックリしたよ。まさか私に反応するなんてねぇ……バレたかなって思ったもん。」
「実際姐さんにはバレてたしね。」
あの時、ナズーリンのダウジングロッドが反応していた時、姐さんは掛け軸の裏に何かある、と言っていました。ぬえがいるのを知っていたからでしょう。まぁ私にもわからなかったですし、結構上手く隠れていたのでしょうね。あ、もしかして姐さんはぬえが掛け軸から覗いているのを怪しんで、ぬえを疑ってたのかも……。うん、それなら辻褄が合うわね。
「聖はもうなーんでもお見通しだからお手上げ。私がなずに正体不明の種仕込んだのだってお見通しなんだから。」
「へぇ、そうなんですか? 姐さん。」
「私はそんな事知らないわよ?」
「え゛」
あらら墓穴掘ったわねぬえ。てゆーか何故今この場でそれを言うかな。
今の一言が決定打、今日の一連の出来事はやはりこの娘が元凶だったようです。いや、確たる証拠がないだけで私も姐さんと同じ様に疑っていたんですよ。……何よ雲山その「本当かよ」って目は。ほ、本当に私も疑ってたんだから!
まぁ何だかんだ言って悪戯好きのやることですよ。毎度毎度ぬえの悪戯には煮え湯を飲まされてますから。その度にきつーいお仕置きをしてるのですが、ぬえも懲りないわね。
「ぬ~~~~え~~~~!!!」
「ひっ!!」
ぬえが涙目で悲鳴をあげ、後ずさりします。私の鬼の如き形相と雲山の逆巻く拳を見れば、誰だってこうなるかもしれませんね。と、いうわけでお仕置き。
「ちょま、一輪! 待って待って待ってください! ダメダメダメダメダメそんなの喰らったらヤバいってマジで許してくだsあべし」
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みんなが各々使った食器を私の所まで持ってきます。食器洗いをしている私は、河童は食器を洗う機械とか作れないのかなぁ等どーでもいい事を考えたり、「ハイカラ少女と時代親父」の鼻歌Ver.を歌ったり、まぁとどのつまりいつも通り晩御飯の後片付けをしています。こう見えて私、この寺の家事は全部一人でやっているんです。将来良いお嫁さんになれるかも…なーんて……。
ふと気がつくと後ろからトトトッと誰かが歩いてくる音がします。カチャカチャと食器がこすれる音もする事から推理すると、台所へやって来たのはまだ晩御飯を食べ終わっていなかった……
「ご馳走さまでした。」
「はい、お粗末様でした。」
ナズーリンです。
あの後、ぬえをしめてナズーリンに仕込んだ正体不明の種を取り除かせました。するとポンっと小さな破裂音と共にナズーリンの様子が一変、いつものナズーリンに元通りになりました。案外あっけなく戻ったので少々拍子抜けしてしまいましたが、結果的に異変解決ということになったので良かったです。これで私にも自機のお誘いが……。
「絶対に叶わない妄想をしている所すまないね。」
「ぬぁっ! 何故それを…。」
「そのにやけ顔を見れば誰でもわかるよ。ところで何か手伝う事はあるかい?」
「あ、じゃあ食卓を拭いてきてもらえる?」
「お安い御用さ。」
そういって私は、まだ使っていない綺麗な布巾を水で濡らします。
「今日は本当にすまなかった……。」
「もういいって言ってるでしょ? 謝るの何回目よ。」
本人は幼くなっていた時の記憶がうっすらとあるらしく、騒動の責任は自分にある、と何度も私に頭を下げるのです。
「いや、一輪が私の為に色々してくれなければ、私はあのままだった。……迷惑をかけたね。」
「大袈裟なんだから……。」
ナズーリンには義理深い所があるので、こう堅苦しい感じになってしまう事が多々あります。親しき仲にも礼儀ありと言いますが、大袈裟すぎるのも考えものです。
「困った時はお互い様よ。私とナズーリンの仲でしょ?」
「……あぁ…そうだね。」
堅い表情も崩れ、ようやくナズーリンにも笑顔が見えます。子供のような無垢な笑顔ではなく、慈愛に満ちた優しい笑顔。私はそれを見て、あぁいつものナズーリンだ、と安心するのです。
濡らした布巾を渡すと、ナズーリンは踵を返し食卓を拭きに居間へと戻って行きます。私も洗い物に戻ると、不意にナズーリンに呼びかけられました。
「一輪。」
「んー?」
「ありがとう。」
「やだ、何よ改まって………。」
振り向くと私をジッと見つめるナズーリンと目が合います。その力強い視線に、私の心の隅っこまで見透かされてしまいそうです。
「……えへへ、何かそうやって面と向かって言われると恥ずかしいな……うん。どういたしまして。」
私の頬が熱を持っているのがわかります。ナズーリンに見つめられているからじゃない、その言葉に本当に心がこもっているから。一緒にいる時間が永ければ永い程、「ありがとう」という言葉は普段忘れがちだけど、真っ直ぐな心を向ける事で、こんなにも真っ直ぐに人の心に届くものなんだ、としみじみ感じます。
そしてそれはとても、とても勇気がいることだから。
私も誠意を見せなければいけません。
「ナズーリン。」
「ん? なんだい?」
「ごめんなさい。」
「えっ……!?」
「私はナズーリンがあのままでもいい、って思った。さっきまでのナズーリンが可愛くて、でもどこかしっかりしていたから……。」
それは紛れもない事実。
ナズーリンはいつでも私に優しい。それは今日の異変があっても同じことでした。それ故に私はあの時、正体不明になったナズーリンと元のナズーリンを重ね合わせてしまったのです。私にとって、命蓮寺にとって大切なナズーリンがあのままでいい筈がないのに……。
私はこの事を謝らなければ、ナズーリンの感謝の気持ちを受け取ることは出来ません。とにかく謝るのではない。気持ちを込めて謝るために、私はもう一度ごめんなさいと言い頭を下げました。
「……。」
「……。」
しばらく沈黙が続きます。
やっぱり怒ってるかな……。
「君は……。」
先に口を開いたのはナズーリンでした。
「君は……実に馬鹿だな……。」「!?」
やっぱり怒ってる、そう思って顔を上げてみると、ナズーリンは笑っていました。怒気を全く感じさせない笑顔に、私は戸惑ってしまいます。
「ふふ……怒ってる、と思っていた顔をしているね。そんなわけないじゃないか。『私とナズーリンの仲』なんだろう?」
そう言ってニコッと微笑むナズーリンを見て気付きました。あぁ……そうか、私が言ったんだっけ。何度も謝るナズーリンを私は許した。だからナズーリンも私を許した。お互いに誠心誠意心を込めて謝り、許し合い感謝しあった。こんなにも心と心が繋がりあっていることを、ナズーリンも分かってくれていたんですね。いや……私の方が分かってなかったのかな。自分で言った癖に、お互いの絆に気付かされるなんて、やっぱりナズーリンには私の心の中を見透かされてるんじゃないか、と錯覚してしまいます。
「そうね……ありがとう。」
「これでおあいこだね。」
そう言われるとなんか負けた気がしちゃうんだけど……。まぁ、一本取られたってことね。まったく、ナズーリンにはかなわないわ。
さてと、早く食器洗っちゃわないと夜の説法に間に合わなくなってしまいます。私は話を切って食器洗いに戻ります。
「フフッ…さて私も、食卓をふいてくるよ……うわっ!」
すると突然、私の後ろから悲鳴と共にポンッと小さな破裂音が聞こえました。何事かと目を凝らすと、尻もちをついたナズーリンが何故か星が持っているはずの宝塔を握っていました。え、これどういう状況?
「ふ……あはははははははは!!」
「え……ちょ……どうしたのナズーリン? 何で笑ってるの?」
「いや……ぬえも悪戯が好きだなぁと思って。あぁ可笑しい。」
そう言ってナズーリンは床に転がっている何かをつまみ上げました。成る程、正体不明の種ですか。宝塔に正体不明の種を仕込んで、布巾に変えていたわけですね。全く、あの娘の悪戯は手が込んでいて油断も隙もない。
「ということは星が今日持ってた宝塔は……。」
「台所用の布巾だよ。全くあの間抜けなご主人のことだから、今頃これと同じ様に正体不明が解けて、『宝塔がなくなった!』って慌てふためいているだろうね。」
と、ナズーリンが予想します。案の定星の部屋の方からバタバタと慌ただしく足音が聞こえます。それと同時にナズーリンを呼ぶ声も聞こえます。本当に星はそそっかしいですね。
そんな、全くもっていつも通りの光景が何だか微笑ましくて、可笑しくて、温かくて、自然と笑いがこみ上げてきます。
「ぷっ……!」
「「あはははははははは!」」
「はぁ可笑しい……何回ぬえに悪戯されても学習しないんだから、ご主人は。すまない一輪。ご主人にこれを返してくるよ。」
「うん。」
そう言うと、ナズーリンは濡れ布巾ではなく、今度は宝塔を持って台所から出て行きました。
ぬえの悪戯を発端とした今日の事件は結局何事もなく終わりました。まぁ何事もなく、という訳ではありませんでしたが、こうやってまたナズーリンと笑いあう事が出来るのは、普段通りに戻ったということ。きっと明日も幻想郷は平和でしょう。
ん……? 何か忘れてる気がする……。まぁいっか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おーい、ご主人。」
「あ、ナズーリン! どうしよう宝塔がこんなフニャフニャになってしまいました……。」
「いやそれは布巾だろ。どう見ても布巾だろ。」
「え? 布巾? イヤですねナズーリン。宝塔で食卓が拭けるわけが無いじゃないですか。」
「君は実に馬鹿だな。」
「私は馬でも鹿でもありません! 虎です!」
「知ってるよ!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……ねーうーんざん。」
「……」
「……あたしけっこー反省してるんだけどなー。」
「……」
「……雲山、あたし晩ご飯食べてないんだよねー……って知ってるか……ずっとあたしのこと見張ってるんだもんね……。」グー
「……」
「……にしても逆さ吊りで放置とか一輪は鬼畜よねー。」
「……」キッ!
「ひっ! そ、そんな睨まないでよぉ……。ホントに反省してるからぁ……ぐすん……。」
「……」
「……ねぇ雲山? もう降ろしてくれてもいいでしょ……?」
「……」フルフル
「そんなぁ……ひっ…ぐす……うぅ……ぬえええええぇぇぇぇぇん………」
面白いHNだな、と思ったので作者様のことは記憶しておりました。再会が叶って嬉しいです。
よつばと、ですか。言われてみれば成程納得、良い感じで本作にインスパイアしてらっしゃる。
ナズの可愛らしさは説明不要、星ちゃんはあちらの虎のクールさを少し見習った方が良い。
でもやっぱり主役は一輪さん。俺は彼女が一番好きだ。
ラストも良いしめかただと思う。物語全体がきっちりまとまっている印象ですね。
あえて難癖をつけるのであれば、もうちょい逸脱したところがあっても良かったのかな、と。
次回の投稿、お待ちしていますね。
終わった頃には「ああ、もうちょっと読んでいたいな」と思う妙な安心感がありました。
惜しいといえば転らしい転が見当たらないことかな。コチドリさんも言ってますが、もうちょい全体に起伏があったほうが映えるタイプの話かもしれませんね。
何にせよ次回が楽しみです。名前覚えましたっ
彼女は寺の常識人ポジションが映えますね。
心まで幼くなってしまったナズーリンのかわいさにもやられました。
「しゅっぱつおしんこー!」「キュウリのぬか漬けー!」には笑わせていただきました。
面白かったです。
それと幼いナズのしゃべり方を見て戯言シリーズの想影真心を思い出しました。