「時代は合体攻撃ですよ!」
早苗が持ってきた若干擦り切れたビデオテープ。その中身は熱血ロボットアニメと呼ばれるもので結構古いものだった。
風車で多少の電力を供給できる紅魔館では、こういった媒体の映像を見るぐらいならできるようになった。
外の世界ではこのテレビというものは、常時情報を拾っているらしいがこの幻想郷ではただの箱。
「合体攻撃……ねぇ?」
その映像の中身は主人公がピンチになったときに、前作の主人公が駆けつけて力を合わせて必殺技を放つ話。
チープな展開ではあるが少年達が心を踊らすには申し分ない展開だ。
何よりこういった話は、一流のバッドエンドよりもチープなハッピーエンドのほうがいい。
とはいえ、いい年したしかも女性の早苗がここまでテンション上げて私に見せてくるのは意外な内容だった。
「レミリアさんと私なら不可能なんてありませんよ! とくに神様の力を宿せる技術の応用があれば問題は無いはずです」
「神と悪魔じゃ力のベクトルが違うじゃない」
「え? 悪魔もところ変われば神になるって言ってたじゃないですか。ほら、見事なカウンターで返しましたよ!」
確かに以前そんなこと言った気がするけどいいのかな。
それに夜の帝王の名は伊達じゃない。誰かと共同作業で何かを成し遂げるなんてことは無かった。
「あのアニメだと、お互い同じような必殺技を一緒に撃つ単純なものじゃない。でも、私と早苗で何かするとしても共通点なんてないわよ?」
八坂神奈子のほうならグングニルと御柱を合わせて何かしらできそうだけど。
「それはほら新しく考えれば大丈夫です。運命と奇跡が合わさり最強に見えるんですよ」
なんていうか自分たちの能力だけど、えらく運任せな最強よねぇ。
「暇つぶしにはいいかもね。他のアニメはないのかしら。これだけじゃ参考にするのは難しいわ」
そう資料は大事である。
決してこの私が子供だましなアニメに心を揺さぶられてるわけじゃない。
「お勧めなら沢山ありますよ! それにさすが紅魔の大図書館。VHSまで保管されてるのが凄いじゃないですか。お陰で今から不眠不休でアニメ鑑賞できますよ」
「え、そんなにあるの?」
「凄いですよね紅魔館。そんなわけで少し待っててくださいね」
どうやら覚悟をして見ないと駄目なようね。
咲夜にお茶を用意してもらい早苗の帰りを待つこと数分。
台車に乗せられた大量のテープが私の前に積まれる。
「なにこれ?」
「紅魔館に保管されているアニメの3割ですね」
いやこれ明らかに早苗の背丈ぐらい詰まれてるじゃない。それで3割ってどういうことなの?
困惑した表情を見せる私に早苗は笑顔で
「あくまでVHSだけですけどね。DVDも紛れ込んでいたし、整理ができていない区域を入れたら多く見て3割という計算ですから」
幻想郷で一番アニメ文化が盛んって自慢になるかしら?
河童のにとりと天狗ぐらいなら話題に食いつきそうだけど、それぐらいよねぇ。
「で、私たちはどれから見ていくのかしら。駄作なんてピックアップしたら怒るわよ」
私の振りにも動じることなく早苗は嬉しそうにテープを取り出す。
どうやら5体のメカが合体するアニメのようだ。
さすが人型である私たちに合体ロボの真似事はできないと思う。
夜の合体なんて考えた奴は駄メイドと一緒にお仕置きだから。
……。朝日が出てるわよ。
4クールって一日で見るものじゃないわ。
「不眠不休って……無理でしょこれ」
「私は夏休みに7日間アニメを見続けたことがありますよ」
私は人間を甘く見すぎていた。身体能力は吸血鬼が圧倒的だなんて勘違いしてたのは私のようだ。
1週間もアニメを見続けるなんて私には真似できないわよ。
「大丈夫ですよ。今回は突発なので3日ぐらいにしますから」
「無理無理無理!」
首を横に激しく振るなんて500年生きてきて1度もなかった。
パチュリーを超える無茶な子にこの私が押されている。
「それにほらいきなり家を空けると、神奈子と諏訪子が心配するわ! ほら、今日はあと1作品ぐらいにしましょ。ね?」
悪魔が他所のご家庭の心配をするとか前代未聞だわ。
「今回はあきらめるしかないですね。無理に進めてアニメを嫌いになられては本末転倒。合体攻撃を思いつくまではじっくり考えていかないといけません」
どうやら早いところ考えないと、本格的に準備されてきては私の限界が突破してしまう。
「ま、まぁ私も考えておくから今日は帰りなさい」
でないと私が死ぬ。わりとマジで。
「ですね。では、私も考えておきますのでまた一緒にアニメ見ましょうね!」
「もちろんよ」
笑顔で私は答える。
たしかに不眠不休を要求されるとは辛いが、早苗と一緒にこうやって楽しむのは好きな時間なのは間違いない。
「それに霊夢が最近天狗と仲がいいらしいし。二人まとめて倒せる技を考えましょう。風を扱う身としても天狗は大きな壁でしょ?」
「博麗の巫女も目標の壁ですから。霊夢さんだけが妖怪と友達になれる巫女じゃないってことを教えてさしあげます。じゃあレミリアさんまた来ますね」
手を振って早苗は風に乗る。
「はてさてあの子の要望にどう応えたものかしら」
咲夜とはまた違う人間との付き合い方を考えながら私は眠りにつくのだった。
どんな合体技ができあがるのか楽しみでしたが、そこはメインではなかったということですか。
しかし相変わらずこのレミリアはクールでいい。
この組み合わせは徐々に癖になりそうだ
一応日常がメインのつもりでした。
でも、合体を要望されているので何かしら考えたいと思います。
そしてここのお嬢様はカリスマで聖女でお姉さんです。
>>8
聖女なので思いやり溢れた素敵なお嬢様です。
早苗さんとの組み合わせは個人的に凄く楽しいのでまだまだ書きたいですね
>>18
合体攻撃を思いついたらそっと出したいと思います!
日常はまだまだ続くのでまた見てくださいね。
天然な早苗さんとツッコミのレミリアが相性良すぎ