皆さんこんばんは。魔界通信大学基礎講座 実用アリス学のお時間です。
毎週アリス学の様々な場面での使用法、使用例についてレポートしているこの番組ですが、今日はすばらしいゲストに来ていただいています。制御アリス学の専門家で、格子分割再現法の提唱者でもあるパチュリー・ノーレッジ先生です。先生よろしくお願いします。
「よろしくお願いします」
さて、今日は、「泣き魔理沙に対するアリス学的対処」について学んでいきましょう。
皆さんご存知のとおり、泣き魔理沙はマリアリの中でも大変有用で社会の様々な妄想に使用されます。泣き魔理沙はツンデれ、意地っ張り、ダダ甘、子供っぽいなど様々な属性をもちますが、今回は典型的な例として、お姉さんアリスとへたれ魔理沙の関係について考えていきましょう。
「あ゛り゛ずー」
アリスがノックの音に気づいてドアを開けると、ぼろぼろと泣いている魔理沙が立っていた。
「ちょ、ちょっと、どうしたのよ」
「わ゛がんないけど、なんか、なんがー」
「ああもう、何でもいいからおいでなさい」
とにかく魔理沙を家の中に招き入れて、ソファーに誘導する。
涙で視界が塞がれているのか、よたよたと頼りない足取りをしている魔理沙の手を取ってアリスはソファーまで誘導してやった。
ソファーに座らせてやっても、魔理沙はまだ涙が止まらないようで、しきりに手で目をこすっている。
「パチュリー先生、これはどう理解すればいいのでしょうか?」
「そうですね、突然親しい相手から訪問をうけた場合のアリスの対応としては典型的なものでしょう。相手が魔理沙で、さらに泣いているのは予想外だったようですが、すぐにその手をとっています。是はおそらく体温のセンシングをしているのでしょう」
「体温のセンシングですか?」
「はい。こちらの式を見てください」
q = -k(∂T)/(∂x)
「これは伝導伝熱におけるフーリエの法則の基本式です。これによると、魔理沙からアリスが受け取る熱量は、単位時間、単位面積当たりの熱勾配に依存していることを示しています。
アリスは魔理沙の肌の熱を測ることで、その魔理沙の体の中の温度分布をシミュレートしていると推測されます。これにより、アリスは是が嘘泣きなのかどうか判断を下すことができます」
「ちょっと肌を触るだけで、嘘かどうか判断できるのですか?」
「流石に嘘をつくとすぐわかるといったものでなく、本気で泣いているかどうかの判断だけでしょう。この慎重な対応を見ると、以前にもだまされたことがあるのではないでしょうか?」
「あんまり手でこすっちゃだめよ」
そういってタオルを渡してやる。
涙だけでなく、鼻水もぼろぼろ零れ落ちていたからだ。
魔理沙はそれを受け取って顔の周りをぬぐい始めた。
やれやれ少しは落ち着くか、と思ったら今度はタオルに顔をうずめてまた泣き出す。
幼子のように遠慮のない泣き声だ。
「魔理沙さんは完全に泣きに入ってますね」
「はい、マリアリの典型例の一つ、へたれ魔理沙とお姉さんアリスのパターンに入ったといえます。
このパターンでは、いくつかの巧妙なアリスのお姉さん的行動が見られます。次の行動に注目してください」
ええい仕方がない。
私は魔理沙の帽子に手をかけた。
帽子を取り上げようとしたところで、それに気づいたのか、タオルから顔を上げる。
顔を隠している帽子を取られたくないのか、両手でつばを掴んでそれを阻止しようとする。
はいチェックメイト。
そのまま帽子を引き下ろして魔理沙の手を下げさせ、頭を掴んでそのまま胸に押し当てた。
「もう、どうしたのよ」
「う゛う゛ー」
くしゃくしゃの金髪に指を通して広げてやる。
しばらくそうしていると、ぐずぐずしていた魔理沙もおとなしくなってきた。
「いやー、実にマリアリですね。」
「はい、大変よろしいです。ここでは二つの特徴的な点に注目してください。ひとつは魔理沙の帽子を引きおろした点、もう一つは髪をすいている点です。」
「一つ目は実に巧みに魔理沙の特性を生かした制御といえるでしょう。
まず、魔理沙の帽子を取ると見せかけて、魔理沙の意識を自らの帽子に向けさせます。」
魔理沙→帽子←アリス
「魔理沙には帽子を取られそうになると、両手でつばを引き下ろす特性があります。これにより、魔理沙の両手は完全に帽子と一体化されます。」
魔理沙→両手→帽子←アリス
「ぎゅーっとつばをつかんだことを確認してから、帽子を引きおろすことで、アリスは魔理沙を完全にコントロール下におきました。そのまま胸に顔を押し当てさせたことで、意識を胸にもっていってますね。これで魔理沙の頭の中は、アリスのやわらかさでいっぱいでしょう。」
魔理沙→アリスの胸 帽子←アリス
「ここでなぜアリスさんは魔理沙さんの帽子を取ったのですか?」
「それは二点目、髪を梳いていることと関係します。」
q = -k(∂T)/(∂x)
「これは先ほどのフーリエの式ですが、これを時間、面積について拡張して伝熱量の式に直すと」
⊿Q = h⊿TA
「となります。これは、伝熱面積Aが大きければ、伝熱量が大きくなるということを示しています。
ここで、アリスは魔理沙の髪を梳いていますね?これは伝熱面積の拡張を図っているといえます。
この、意図的に増やされた伝熱面を、拡大伝熱面、といいます。」
「また、先ほどの帽子を取ったことですが、これは対流熱伝導で、魔理沙の熱を空中に放出しようとしているものです。さきほどから上海たちがこっそりとうちわをもって視界を横切っているのがわかるでしょうか。大気中に強制対流を作ることで熱の発散を促しているのです。」
「まとめると、アリスは魔理沙の頭を冷やそうとしている、といえるでしょう。」
しばらくぐずぐずとしていた魔理沙だが、アリスの胸に抱かれてよいよいされているうちにだんだんと眠くなってきた。背中をぽんぽんとたたかれるリズムやアリスの呼吸音、胸から伝わるアリスの声などが渾然一体となって魔理沙を眠りにいざなう。
……寝てしまったようだ。
「魔理沙さんは完全に寝てしまったようですね」
「アリスの作戦勝ちでしょう。背中をたたく単調なリズムは1/fのゆらぎに準じていますし、絶えず意味のないことをしゃべりかけているようにみせかけて、その目的は骨伝導を用いて休眠誘導のようです。何よりも肩にまわされた腕、指の繊細な動きといったら!あれでは仕事中の閻魔でも寝かせることができるのではないでしょうか。」
「そうですね」
さて皆さん、今日の実用アリス学講座はいかがだったでしょうか。
今日のポイントをまとめます。
・魔理沙が泣いているときには、嘘泣きの判断を行う。
・意識を誘導することで、魔理沙はちょろい
・とりあえずやわらかい胸はえらい
今日の解説は、パチュリーノーレッジ氏でした。それではまた次回、実用アリス学でお会いしましょう。
マリアリは正義!
適度、節度、限度的なものを。
アリスを持ち上げるために
魔理沙が頭の弱い子にされているようにしか見えない
今回はストーリー的になっていて分かりやすく良かったです
続けて欲しいと思いますが、ジェネの方が受け入れやすいのかも・・・
冒険心は素晴らしいので凹まずに頑張って欲しいです
ただ数式があんまり出過ぎるとわかりづらいかも。
自分は『人形型試験機を用いたハプニング法による乙女の純情測定』あたりが一番好きです。
てか、ポイントww間違っちゃいないww
もっとじっくり読みたい気もする。
でもこれアリス学ってより魔理沙学じゃね?
前作から読み始めたけど今回は数式控えめでしたね
もっと濃いのもバッチこいw
面白い上に萌えるッ!!マリアリ萌え数式ヤバス。
大いに楽しませていただきました。
子どもの頃、意地悪クイズで「1+1=田」と言われた時のような
くだらない屁理屈を並べただけなのに
今までになかった視野へのアハ体験を同時に味わった時の感覚と言いましょうか…。
この作品はそのジョークを理解するかしないかですよね。
天丼、良いじゃないですか。
毎回ばいきんマンを倒すだけの作品や、勧善懲悪のご老公一団の作品がどうして20年以上も愛され続けていると思いますか?
はっきり言いましょう。とっても面白かったです!!