Coolier - 新生・東方創想話

銀色の殺人者~真実編~

2011/06/06 00:12:15
最終更新
サイズ
32.92KB
ページ数
1
閲覧数
1101
評価数
2/11
POINT
390
Rate
6.92

分類タグ

翌朝、妹紅は慧音より早く起きた、いや起きてしまった。昨日、深夜まで銀色の髪の女性の事を考えていて、あまり眠れなかったのだ。

「うぅ、眠いぜ。やっぱり、夜中に考え事はするもんじゃないな。」

妹紅は、重い瞼を精一杯開けながら、敷地に出て恒例となっている朝の体操を始めた。

「いっちにさ~んし。それにしても、腹減ったな~」

妹紅は、軽いストレッチをしながら、お腹から聞こえてくる虫の鳴き声を聞いてそう言った。
妹紅の声が聞こえたのか、慧音も目を擦りながら部屋から出てきた。

「御早う妹紅。朝から体を動かすなんて元気だな。」

「あ、ああ…御早う慧音。」

妹紅は、慧音の銀色の髪を見て少し動揺したが、慧音に挨拶をした。
慧音は、眠そうな顔をしながらも、精一杯笑顔を作った。

「すまないな、お腹が空いただろう。すぐに朝食の支度をしてくる。」

「ああ…有難う慧音。」

「どうした?。浮かない顔をしているが…」

「何でもないよ慧音。少し、寝不足なだけだから。」

慧音は、少し心配しながら妹紅を見つめた。しかし、妹紅は誤魔化すために話題を変えた。

「ちょ、朝食が楽しみだな。け、慧音の料理は上手かったからな。」

「そ、そうかあ。そう言ってくれると何か照れるな。」

慧音は、顔を少し赤くして、照れながらそう言った。そして、朝食の支度をするために厨房へ向かった。妹紅は、暫く呆然としていたが、我に返り朝の体操を続けた。

その後、妹紅と慧音は一緒に朝食を食べ、居間で今後の事について話し合っていた。

「それで、妹紅はこの後どうするつもりだ?。やはり、輝夜という人を探しに行くのか?。」

「ああ、寺子屋に居た廉という子は、竹林で見かけたと言っていた。だから、私はその竹林に行くつもりだ。」

慧音の質問に対して、少し感情を剥き出しにしながら、妹紅は答えた。

「その竹林が何処にあるか、心当たりないか?。」

「私達の目と鼻の先にある。私が、ここに住居を構えたのは、それも理由の一つなんだ。」

妹紅の質問に対して、思い詰めた顔で慧音は答えた。妹紅は、慧音の言葉の意味が分からなかったので、慧音に聞いてみた。

「どういう意味だ?。」

「あそこは、別名迷いの竹林と言われている。妖怪が跋扈し、一度入って生きて出られる者は極僅かだ。それに、最近では人を惑わす知的な妖怪も出没するという情報も入っている。
だから、私は無闇に竹林に人が入らないように見張っているのだ。」

「何故、慧音がそんなことをするんだ?。それに、竹林がそんなに近くにあるんだったら、慧音も危ないんじゃないのか?。」

「ま、まあ大丈夫だ。妖怪を撃退する術ぐらいは心得ているから。」

妹紅は、慧音の返答に首を傾げた。まるで、自分は大丈夫だと言っているようだった。しかし、妹紅は難しいことが嫌いなので、追求しなかった。

「とにかく、行くならば私も同行する。ある程度は、竹林の地形を把握しているからな。」

「私のことは、心配しなくても大丈夫だ。それに、寺子屋はどうするんだ?。これ以上、慧音に迷惑をかけることは出来ない。」

妹紅は、本当は慧音に付いてきて欲しくなかった。自分一人なら、妖怪相手でも、不老不死の力を使って思う存分に戦える。慧音が一緒にいると、自分が不老不死だということがバレる可能性があるからだ。

「今日は、寺子屋は休みだ。それに、私は妹紅を無事に竹林から還す義務がある。」

慧音は、妹紅の心配を知りもせず、妹紅に真っ向から言い切った。

「うぅ、わかった。よろしく頼むよ慧音。」

慧音の勢いに勝てず、妹紅はしぶしぶ了承した。

「行くなら、今すぐに行くぞ。夜になると、竹林はかなり危険になる。」

「あ、ああ…わかった。」

慧音は、どこか急いでいるような口調で妹紅に言った。

その後、妹紅と慧音は身支度をし、竹林の中に入っていった。


~迷いの竹林の中にある永遠亭~


永遠亭、それは竹林に守られるかのように存在する屋敷で、屋敷の大きさは計り知れず、無限に続く長い廊下に無数の部屋。そして、広すぎる敷地。永遠という名にふさわしい屋敷である。

屋敷の一室に、見るもの全てを虜にしてしまいそうな、美しい黒髪を持つ少女と銀色の髪をした女性が居た。

「え~り~ん。私を、一体何時までこの屋敷の中に閉じ込めておくつもりなの?。」

不満そうな顔をして話しているこの少女こそが、妹紅が探している蓬莱山輝夜その人である。かつて、自分に求婚してきた五人の貴族を五つの難題で退けた、絶世の美女と呼ばれた少女である。

「後、千年ぐらいですね。もしくは、それ以上かと。」

永琳と呼ばれた医者のような女性は、適当にそう答えた。

「ええ~そんなに~。私、退屈すぎて死んでしまいそうよ~」

「死にませんよ。不老不死なんですから。」

輝夜の不満な声に、率直で適当に答える永琳。

何故、二人は隠れ住んでいるのか。それは、二人が罪人で追われているからである。

大昔、二人が月の都に住んでいた頃、月の頭脳とも呼ばれる、月の民きっての天才、八意永琳は長きに渡る研究の末、不老不死の力を得る蓬莱の薬を開発した。だが、輝夜の父親である月の帝は、この薬を服用することを禁じた。しかし、輝夜は月の暮らしにうんざりしていたので、禁薬と言われる蓬莱の薬を服用し、地球へ流罪となった。もちろん、輝夜は喜んでその刑を受け入れた。その後、輝夜は竹取の翁という地上の民によって育てられた。そして、絶世の美女と呼ばれるまで成長し、五人の求婚者を五つの難題で退けた。妹紅に初めて出会ったのもその時だ。その後、月の帝は輝夜を連れ戻すべく、永琳を首領とした使者を地上に派遣した。しかし、輝夜は月への帰還を拒んだ。輝夜の気持ちを悟ったのか、永琳は自分の部下達を皆殺しにし、輝夜と共に逃亡する道を選んだ。そして、行き着いたのがこの幻想郷である。

「不老不死の天敵になりそうね、退屈って言うのは。」

「そんな事言って、もう少し危機感を持って下さい。いつ、月の追っ手に見つかるかわからないのですよ。」

急に真面目な話をする永琳。それは、輝夜を心配しているからこそだ。しかし、輝夜は素っ気なく答えた。

「何度来ようが私は月には帰らないわ。それに、私には永琳が居るもの。」

「はぁ、でも、危機感はちゃんと持ってくださいね。」

少し照れてはいるが、顔は呆れながら話す永琳。

「ねえ、永琳は昔私に求婚してきた、藤原一族を覚えてる?。」

「ええ、覚えていますが。それがどうかしましたか?。」

「その貴族に、私と同じぐらいの年頃の女の子が居たでしょう?。」

「居ましたね。あまり、会ったことがないけれど。確か、名前は藤原妹紅だったでしょうか。」

「あの子、今頃どうしているかしら。」

「何を言っているのですか。あれから、千年以上経っているのですよ。亡くなっているのに決まっています。」

輝夜の頓珍漢な質問に、何を言っているのかと思いながら答える永琳。

「そうね、でも時々思うのよ。あの子は、今も何処かで生きているんじゃないかって。」

「本当にそうなら、間違いなく輝夜を殺しに来ますね。あの娘の父親に恥をかかせたのは、何を隠そう輝夜なんですから。最後に、あの子を見た時は、鬼のような顔で輝夜を睨んでいましたよ。」

「そうなの?。でも、本当にそうなって欲しいわ。」

「何か言いましたか?。」

「なんでもないわ。」

輝夜は、月と変わらないこの退屈な日々に刺激が欲しく、そうなることを祈った。永琳は、不思議そうに輝夜を見ながら薬の調合を始めた。

その時、居間の扉が静かに開かれ、一人の少女が現れた。

「師匠、これから竹林の見回りに行ってきます。恐らく、帰るのは明日になると思います。」

「ええ、分かったわ。行ってらっしゃい優曇華。」

永琳の言葉を聞いて、優曇華と呼ばれた少女は竹林の見回りに向かった。


~迷いの竹林~


妹紅と慧音は、竹林の中を進んでいた。しかし、恐れていたことが現実になってしまった。道に迷ってしまったのだ。

「困ったな。まさか、本当に道に迷ってしまうとは。」

「おい、本当に大丈夫なのか慧音。ここ、さっきも通った気がするぞ。」

必死に道を探す慧音とは裏腹に、少し苛立ちを隠せなくなっている妹紅。

「道を知ってるんじゃなかったのかよ慧音。」

「地形を知っていると言っただけだ。道を知っているとは言っていない。」

お互いに口論になりながら道を探し続けた。しかし、何時の間にか夜になってしまった。
慧音は、夜道を闇雲に歩くのは危険だと言い、二人は適当な場所で焚き火を焚いて、野宿する準備をしていた。

「…………」

「…………」

さっきの口論のせいか、妹紅と慧音の間に会話はなかった。ただ、焚き火が灯す光が、辺り一面の闇を照らし続けているだけだった。
お互いに会話がない状態が続いた。その沈黙を破ったのは慧音だった。

「ちょっと、見回りに行ってくる。」

「お、おい、夜に無闇に歩くのは危険じゃないのか?。」

「大丈夫だ。今日は満月だし、見渡しはまだ良い方だ。」

「なら、私も一緒に…」

「お前はここに居ろ。正直言って、足でまといだ。」

「な、なんだよ、そんな言い方はないだろ。」

妹紅は慧音を心配して言っているのに、慧音は妹紅の好意を迷惑そうにした。そして、妹紅は本格的に不機嫌になった。

「そうか、慧音は私が側に居るのが嫌なんだな。私が、竹林に入りたいとか我侭を言ったから、慧音も巻き込んでしまったんだよな。慧音は、私のことが邪魔で仕方がないんだ。」

「…………」

無言で竹林の闇に消えていく慧音。それを、見送る気もないように焚き火を見つめる妹紅。

(もう、寝よう。)

妹紅は、妖怪に場所を悟られないようにするため、焚き火を消そうとしたが、慧音の事を考えて、危険を承知で消さないようにした。

(ったく、何だよ慧音の奴。私が、こんなに心配してやっているのに、あんな言い方はないだろ。)

妹紅は、横になりながら慧音の言動に腹を立てていた。

(でも、私も少し言いすぎたな。慧音は恩人なのに。それに、慧音の様子も何か変だったな。何かを隠しているようだったな。)

慧音と喧嘩したことによって、少し罪悪感が残る妹紅。しかし、妹紅は考えるのをやめた。

(考えても仕方がない。誰かが教えてくれるわけでもなければ、自分の力で答えを導き出せるわけでもない。考えても無駄だな。)

そう考えて、妹紅は今度こそ眠りにつこうとする。その時、妹紅は辺りから妖気を感じた。

「妖怪の気配がする!!。やっぱり、焚き火を焚いたままにしておいたのがまずかったか。」

妹紅は身構えて辺りを見渡す。しかし、闇に覆われて何も見えない。

「ちっ、何処に居やがる!!。」

妹紅はぐるぐる回りながら、何処に妖怪がいるか必死に突き止めようとした。その時、妹紅の背後からかまいたちのようなものが飛んできた。

ザシュ!!

「くっ!!」

妹紅は間一髪で回避したが、右足の膝に被弾してしまった。

「くくくっ、こんな夜中に竹林に人間がいるとはな。生きた人間を食らうのは久しぶりだ。」

周りの竹林をなぎ倒しながら、妹紅の何倍もの大きさを誇る鬼のような妖怪が、妹紅の前に現れた。妹紅は、右足の痛みをこらえながら必死に身構える。

「ふん、そんなことは私を殺してからほざくんだな妖怪。図体だけがでかくても、私には勝てないぜ。」

「ふっ、手傷を負った人間に何ができる。それに、か弱き人間が我に勝てるとでも思っているのか。」

「減らず口を言っていられるのも、今のうちだけだ。」

「大人しく食われるがいい!!。」

鬼の妖怪は、再びかまいたちを放ってきた。

「そんな、低速斬撃波、当たらねえよ。」

軽々とかまいたちを回避する妹紅。しかし、右足の傷の影響で動きはいつもより鈍くなっている。

(どうやら、あいつは爪でこの斬撃波を放っているんだな。あそこを叩けば。)

「今度はこっちの番だ。食らえ、時効「月のいはかさの呪い」」

妹紅は、無数の小太刀を作り出し、鬼の爪に向かって放った。
妹紅の放った弾幕の影響で、辺りは砂煙に包まれた。

「やったか!!。」

砂煙が晴れると、そこには無傷の鬼が立っていた。しかも、集中的に狙った爪も全くの無傷である。

「ちっ、頑丈な野郎だな。」

「ふふふ、我の体は鋼よりも硬い。そんな、なまくら刀をいくら放とうが、切り傷一つ付かん。」

「そうかよ、わざわざ忠告ありがとよ。」

(まさか、私のスペル食らって無傷とはな。こいつ、少々面倒だな。)

「しかし、貴様は普通の人間ではなさそうだな。以前、我の邪魔をした女のようだ。」

(何言ってやがるんだ、この鬼。しかし、いくら不老不死でも、食われて溶かせれたら、蘇生できないかもしれない。何としてでも、こいつを倒さないと。)

妹紅は、鬼の言っている言葉の意味が分からなかった。しかし、今の妹紅にとってそんなことはどうでもいい。ただ、鬼を倒すこと。それだけを考えていた。

「ふっ、女相手に手こずるとはな。お前、大したこと無いな。」

「黙れ、小娘があああ!!」

プライドが高い鬼なのか、妹紅の挑発に簡単に乗った鬼は、今度は両手の爪で斬撃波を放ってきた。

「不死「火の鳥-鳳翼天翔-」」

妹紅は、スペルを唱え応戦する。今度は、辺りが爆炎に包まれ、視界がさっきよりも悪くなった。

「また煙か。前が見えねえ。」

その時、爆炎の中から突如鬼が襲いかかってきた。図体に似合わず、動きが素早いので、妹紅は不意を突かれ、妖怪の手中に捕らえられてしまった。

「くそっ、放せ!!」

妹紅は必死にもがいて、鬼の手中から脱出しようとするが、鬼の力が強すぎてどうにもならない。

「くくく、手こずったが、貴様は我が手中だ。大人しく……食われるがいい!!!!。」

鬼は、妹紅に食らいつこうとした。

「ちっ、こんな所で!。」

妹紅は、死を確信した。しかし、妹紅はこのまま鬼に食われて死んでもいいとも思った。どうせ、私はこの世に生を受けてはならない人間だったのだ。憎しみだけで生き、数え切れないほどの命を自らの手で消し去ってきた。こんな苦痛から開放されるなら、もう死んでもいい、そう思った。妹紅は目を閉じ、大人しく死を受け入れる覚悟をした。

しかし、いくら待っても鬼は襲ってこなかった。むしろ、聞こえるはずのない鬼の悲鳴のような声が聞こえた。恐る恐る、妹紅は目を見開いてみた。そこには、体を何者かに貫かれて苦しんでいる鬼の姿があった。妹紅のスペルでも、びくともしなかった鬼の体を。妹紅は、鬼の体を貫いている人物に見覚えがあった。しかし、似ても似つかない。妹紅が知っている人物は人間である。その人物は、頭に二本の鋭い角があり、尻尾があった。そう、まるで獣のようだった。

「くっ、貴様はあの時の人間か!?。」

「…………」

体を貫かれた鬼は、何か焦っているようだった。まるで、以前にその人物に会ったことがあるような口調だった。

「妹紅に手出しはさせない!!。」

突如、自分の名前を言われたので、妹紅はまさかと思った。そして、妹紅は恐る恐るその人物に話しかけてみた。

「慧…音か?。」

「…………」

妹紅の問いかけに対して、その人物は返事をしなかった。いや、したくなかったのだろう。

「また、我の邪魔をしおって。貴様から先に始末してやる!!。」

「慧音!!」

鬼が、その人物に向かって、鋭い爪を振りかざしてきた。しかし、その人物は微動だにしなかった。

ガキン!!

その人物は、頭の二本の角で、鬼の爪をいとも簡単に粉砕してしまった。

「何、人間風情に我の鋼鉄の爪が!!」

「私は人間ではない。旧史「旧秘境史-オールドヒストリー-」」

その人物は、さっき貫いた鬼の体の傷口に向かってスペルを放った。いくら鋼の体でも、傷口に放たれたら防御する術がなく、まともに食らってしまい、鬼はその場に倒れた。

「そんな…馬鹿な……」

「私は、半獣だ。」

鬼を倒した後、その人物は言い放った。

「け、慧音?。」

「………妹紅。」

やはり、その人物の正体は慧音だった。いや、人物とは言えなかった。頭には、二本の鋭い角が生えており、いつもとは違う緑色を帯びた服を来ている。そして、背後には立派な尻尾が見える。人間というよりは、獣の姿をしていた。

「これが…私の、本当の姿だ。」

慧音は、妹紅を背にして、言いにくそうにそう言った。

「私は、満月の夜になると妖力が抑えられなくなり、本来の姿に戻ってしまうのだ。どうすることもできず、大人しく変化していく自分の姿を見ていることしかできない。だから、満月の夜は人気のないところへ行って、ほとぼりが冷めるまで身を隠しているのだ。卑怯だよな、教師をやっている身でありながら、こそこそ隠れるような真似をして。」

「慧音……」

「すまない。もう、妹紅とは一緒には居られない。」

そう言うと、慧音はその場から走り去っていった。

「ま、待て慧音!!。」

妹紅は、走り去った慧音の後を追いかけた。慧音に追いつくのは簡単だった。服のせいで、走るのが窮屈そうなのだ。しかし、中々止まる気配を見せなかった。仕方なく、妹紅は先回りし、全身を使って慧音を止めようとした。しかし、バランスを崩してしまい、慧音の上に妹紅が覆いかぶさるような形で、その場に倒れ込んだ。

「も、妹紅!!。離してくれ。私は、もうお前とは一緒に居られない。」

「そんなことはない!!。」

慧音は、予想外の妹紅の答えに、少し驚いた表情を見せた。

「慧音が、どんな姿をしていようと慧音は慧音だ。私は、慧音の側に居たいんだ。いや、居させて欲しいんだ。慧音は、私に優しく接してくれた唯一の人間だ。そして、私は慧音のおかげでもう一度人を信用してみようと思った。そんな、慧音をどうして拒絶する必要がある。」

「……妹紅。でも、私はお前にこのことをずっと隠していた。私は、嘘つきなんだぞ。また、お前の純粋な思いを裏切るかもしれない。」

「それでもいい。慧音が信頼できる人間だということは、一緒に居て十分分かった。だから、側に居させてくれ。もう、一人は嫌なんだ。」

「……妹紅。」

「だから、だから……」

慧音は、頬に冷たい感触がした。よく見ると、妹紅は涙を流している。

妹紅は、過去を思い出していた。平安時代の貴族である、藤原一家に生まれた妹紅は、末っ子で女というだけでいらない子として扱われた。兄弟達からは煙たがられ、両親は口も聞いてくれなかった。だから、妹紅は日々を怯えて過ごした。両親や血を分けた兄弟達に見つからないように。

「妹紅…すまない。お前のことを理解しないで、自分勝手なことを言って。本当にすまない。」

「うう…」

慧音は、そっと妹紅を抱き寄せる。妹紅は、慧音の胸の中で、抑えきれなくなったのか大泣きした。満月の光は、そんな二人を闇から守るように、二人を照らし続けていた。
その後、二人とも落ち着いたのか、消えた焚き火を再び焚き、お互いに向き合うように座っていた。

「……妹紅、その足の傷大丈夫か?。」

「うん?。ああ、これなら大丈夫だよ。すぐに治るから。」

「しかし、出血が止まっていない。応急処置ぐらいはしておかないと。」

先程の鬼との戦闘で負った、右足の傷を慧音は心配していた。せめて、止血ぐらいはと慧音は言うが、妹紅は軽く断った。

「なあ、慧音…」

「ん?どうしたんだ、妹紅。」

「私、慧音と一緒に居て思ったんだ。私は、今まで誰も信用しようとはしなかった。私は、他人を理解しようとは思わなかった。ずっと、それが原因だと思ってた。でも、そうじゃなかった。私は、今まで他人に理解してもらおうとは思わなかった。だから、私はずっと一人だったんだと思う。」

「…………」

慧音は、黙って妹紅の話を聞いていた。今まで、妹紅がどれだけ寂しい思いをしてきたか、慧音は改めて思い知らされた。

「だから、慧音に話しておきたいんだ。本当の私を。」

「どうしたんだ妹紅?。何を言っているんだ。」

妹紅の言っていることが理解できず、慧音は何がなんだかさっぱり分からなかった。

「慧音…今から私が慧音に見せること。それは、すべて真実だから。」

そう言うと、妹紅は立ち上がり、当たりの竹林を一本切り、小さな竹槍状にした。

「妹紅、一体何を?。」

慧音は、妹紅の行動が理解できず、ただ見ているだけだった。妹紅は、その小さな竹槍を持つと、小刻みに深呼吸をした。そして…

ザシュ!!

「!!!???」

「ぐふっ!!」

慧音は、目の前で起きたことが信じられなかった。何と、妹紅がその竹槍で自分の心臓を刺したのだ。慧音は、急いで妹紅に駆け寄った。辺りには、おびただしい血が流れていた。

「妹紅!!!!」

慧音は、妹紅を抱きかかえた。しかし、妹紅はすでに息絶えていた。

「なんで、こんなことを。一体、私に何を伝えたかったんだ。」

慧音が悲しみに浸っていた時、妹紅の体が炎に包まれた。

「!!??」

慧音は、何が起きたのか分からなかった。そして、妹紅の体を覆っていた炎が完全に消えると、そこには死んだはずの妹紅が立っていた。

「慧音…これが、私を苦しめてきた永遠の力、不老不死の力なんだ。」

「妹紅!!」

慧音の耳には、もう二度と聞くことができないと思っていた、妹紅の声が聞こえた。よく見たら、さっき竹槍で貫いたはずの心臓の傷も完治していた。慧音は、信じられないような顔をした。しかし、妹紅は何事もなかったような顔をして話を続ける。

「私は、不老不死の身なんだ。生涯老いることもなければ死ぬこともない。苦痛から解放されず、人々からは気味悪がられ、永遠に孤独というしがらみに捕らわれ続ける、哀れな人間なんだ。」

「…………」

慧音は、何も言えなかった。まさか、本当に不老不死の人間がこの世にいるとは、いくら慧音でも思わなかったのだ。

「心配かけてすまない。でも、これで分かってくれたはずだ。私が、不老不死だということを。そして、永遠の時を生きる人間だと言うことを。」

「…………」

慧音は、言葉が見つからなかった。まだ、現状が理解できていないのだ。妹紅は、構わず話を続ける。

「不老不死になった理由は、話せば長くなる。でも、一つだけ言えることがある。私は、望んでこの力を得ようと思った分けではないんだ。」

「……どうして、不老不死の力を得ようと?。」

慧音は落ち着いたのか、口を開き、恐る恐る妹紅に質問してみた。

「私は……いや、やっぱり話すことはできない。こればかりは、慧音には関係の無いことだ。」

「……どうしてだ。私では、妹紅の気持ちを理解してやれないからか?。」

「そうじゃないんだ。私は、慧音に出会って本当によかったと思う。慧音の側にいると、辛いこと、苦しいこと、悲しいこと全てが嘘みたいに忘れてしまう。今まで、体験したことがなかった優しさを、慧音は私に与えてくれた。だから、私は慧音のことを心の底から信用している。」

「なら、どうしてだ!!。私は、妹紅のことをもっと知りたい。少しでも、妹紅の心の傷を癒してやりたい。それでも、教えてくれないのか?。」

慧音は、少し怒鳴るような感じで言ったが、妹紅は、顔を背け沈黙を保った。

深夜になったのか、辺りは完全に見渡すことができないくらい暗くなっていた。

「御免ね慧音。私、疲れたからもう寝るね。」

「妹紅…」

僅かではあるが、妹紅の瞳に涙が浮かんでいた。慧音は、深く追求しなかった。慧音は、いつか妹紅が自ら話してくれると信じた。

その後、二人は妖怪に襲われないように焚き火を消し、眠りについた。

(御免ね慧音。輝夜への復讐なんかに、慧音を巻き込みたくないんだ。もう、これ以上私に関わって死んでいく人を見たくないんだ。)

そして、二人は眠りについた。月の光に反射する、二人の銀の髪が、辺りの闇を明るく照らす中で。



翌朝、二人は同時に起床した。

「おはよう妹紅。」

「……ああ、おはよう慧音。」

気まずい雰囲気ではあったが、お互いに挨拶をした。

「…………」

「…………」

昨日のことが原因になっているのか、二人に会話はほぼなかった。何もかもが唐突過ぎたのだ。
雑念を振り払うように、慧音が口を開いた。

「こ、これ食べるか?。」

「筍?」

「この竹林は確かに危険だが、筍の産地としては有名なんだ。」

「そ、そうなのか。」

慧音は、細かく切った筍を妹紅に渡した。いつの間に切ったのだろうと、妹紅は不思議がっていたが、腹が減っていたので、妹紅は筍を食べることに集中した。

「まあ、近年収穫量が減ってしまってな。竹林の奥に行かないと、収穫できなくなってしまったんだ。」

「…………」

妹紅は、筍を口いっぱいに頬張りながら慧音の話を聞いていた。慧音は、そんな妹紅を見て微笑みながら話した。

「すまないな、どうでもいいこと言って。さて、これからどうするか。まだ、竹林の中を探し続けるか。それとも、諦めて出口を探すか。」

「まら、さがふ!」

筍を頬張りながら喋ったので、妹紅の声は言葉にならなかった。慧音は、こらえきれず笑ってしまった。

「わかった。わかったから、焦らずゆっくり食べろ。」

「……うん。」

笑いながら話す慧音に対して、顔を真っ赤にしながら話す妹紅。その時、草むらから妙な音がした。

ガサガサ…ガサガサ…

「!!」

二人はとっさに身構えた。だんだん、音が大きくなってくる。どうやら、こちらに近づいているようだ。

「妹紅、油断するなよ。」

「慧音こそ。」

背中合せになりながら、お互いに心配し合う妹紅と慧音。

「そこか!!。藤原「滅罪寺院傷」」

妹紅は、足音の正体が居ると思われる場所にスペルを放った。

「やったか!!。」

妹紅は、恐る恐るスペルを放った場所に近づいた。

「いった~い。」

「????」

そこに居たのは妖怪ではなく、兎の耳を付け、制服のような服を着た人間の少女だった。

「貴方達ね、私を攻撃してきたのは。どういうつもりなのですか?。」

兎の耳を付けた少女が、自分のお尻を撫でながらそう言った。

「すまない、てっきり妖怪かと思って。怪我はないか?。」

妹紅は、頭を掻きながら謝った。兎の耳を付けた少女は、お尻を痛そうにしながら言った。

「大丈夫です。でも、ちょっと足を捻挫したみたいです。できれば、肩を貸して下さい。」

「ああ、分かった。慧音も手を貸してくれ。」

「ああ」

そう言うと、妹紅と慧音が兎の耳を付けた少女の両サイドに立ち、兎の耳を付けた少女を支え立たせてあげた。

「それで、私達はどうしたらいいんだ?。その……」

「ああ、私の名前は鈴仙・優曇華院・因幡と言います。この竹林の中にある、永遠亭の警備かつ薬師の見習いをやっています。」

「私は、藤原妹紅。こっちが、上白沢慧音だ。今、永遠亭とか言ったけど、そんな屋敷がこの竹林の中にあるのか?。」

優曇華の自己紹介の中にあった、永遠亭という言葉に、妹紅は疑問を持った。

「慧音、永遠亭ってなんだ?。」

「わからない、そんな屋敷がこの竹林の中にあったなんて、私も初耳だ。」

妹紅は、慧音に聞いてみたが、慧音も知らないようで少し驚いた。

「よかったら、永遠亭にいらっしゃいますか?。私も、見回りを終えて帰るつもりでしたし。」

「ああ、そうだな。私も、優曇華を捻挫させてしまったからな。ちゃんと、家まで送り届ける義務があるし。」

優曇華の足を捻挫させてしまったので、妹紅は優曇華を永遠亭まで送っていくことにした。しかし、慧音はあまり浮かない顔をしていた。

「どうした、慧音?。」

「いや、なんでもない。さあ、行こう。」

(何か、嫌な予感がするな。何も、起こらなければいいが。)

優曇華の案内で、二人は優曇華を支えながら歩いた。しかし、慧音は嫌な予感がしてならなかった。これから、起こることを見透かしたかのように。

「そういえば、妹紅さんと慧音さんはどうしてこんな竹林の中に?。」

「いや、ちょっと人を探しててね。それで、この竹林の中に入ったんだが、迷ってしまってね。」

「そうなのですか。でも、よくこんな奥深くまで進んで来られましたね。」

「ま、まあな。」

優曇華との会話に、若干焦る妹紅。自分が不老不死で、慧音が半獣だなんて、口が裂けても言えなかった。

「そういえば、優曇華さんが住んでいる永遠亭はどういう屋敷なのですか?。」

「実は、私もあまり詳しくは知らないのです。私は、居候の身ですから。」

「そうなのですか。」

「でも、皆さんとても優しいのです。私なんかを拾って、屋敷に置いて下さったうえに、とても、良くして下さるので。」

「そうか、それは良い所に拾われましたね。」

慧音は、優曇華から永遠亭についての情報を得ようとしたが、優曇華から知らないという返答が帰ってきたので、何も得ることができなかった。

ぐぅ~

その時、優曇華のお腹から鳴き声がした。

「…………」

「…………」

「…………」

三人は暫く沈黙した。

「これ、食べるか。」

「い、いただきます。」

暫くして、微笑みながら慧音が先程の細かく切った筍を優曇華に渡した。優曇華は、顔を真っ赤にしながら慧音から筍を受け取った。

「あ、見えてきました。あれが、永遠亭です。」

優曇華がそう言うと、大きな屋敷がうっすらと見えてきた。そして、いつの間にか夕方になっていた。優曇華との会話が弾んだので、疲労も時間もすっかり忘れていた。

「ここが永遠亭です。」

「すげー広いなー。」

三人は永遠亭に到着した。妹紅は、その屋敷の大きさに少し見とれていた。

「外観は、大体これぐらいの大きさですが、中に入るときっとびっくりしますよ。」

「どういう意味だ?。」

「入ってみたらわかりますよ。」

優曇華の言葉に疑問を感じながら、妹紅は永遠亭に足を踏み入れようとする。

「お邪魔しま…」

ガシ!!

「うお!?」

妹紅が、永遠亭に足を踏み入れようとした瞬間、慧音が妹紅の肩を片手で押さえ、妹紅を呼び止めた。

「妹紅、無事に優曇華さんを送り届けたんだ。もう帰るぞ。」

「なっ、どうしてだよ慧音。せっかくだから上がっていこうよ。」

「私もそうしたいが、何か嫌な予感がして仕方がないのだ。」

「何だよ、嫌な予感って。」

「わからない…でも…」

「どうかしましたか?。」

妹紅と慧音がなかなか来ないので、優曇華が心配したのか二人に声をかけた。

「とにかく、考え過ぎだよ慧音は。さあ、早く行こう。」

「……わかった。」

慧音は、妹紅の押しに珍しく負けてしまった。慧音は、入ることに抵抗を感じたが、里の為にも屋敷を調べてみようとも思った。もし、危険な存在なら放っておくわけにはいかない。そう慧音は思った。そんな事を考えているうちに、妹紅は先に入っていった。慧音も、妹紅の後を追い、永遠亭に足を踏み入れた。

「すげーな、外観もすごく大きかったけど、中は予想していたよりもすげー広いぜ。」

「ふふふ、びっくりしてもらえてよかったです。」

「優曇華さん、どうしてこんなに屋敷が広いのですか?。」

「え!!それは…わかりません。あ!!着きましたよ。ここが、私の師匠の部屋です。」

慧音の質問に、少しおどおどしながら答える優曇華。話をそらすように、優曇華は話題を変えた。

「師匠、失礼します。お客人を連れて来ました。」

「どうぞ、入りなさい。」

「失礼します。」

優曇華は、両手で丁寧に襖を開けて入室した。妹紅と慧音もその後に続く。
部屋には、藍と紅の色をした服を着て、銀色の髪をした医者のような女性が薬の調合をしていた。

「おかえりなさい。あら、優曇華どうしたの?。足を引きずってるけど。」

「ええ!?ああ、転んじゃって少し捻挫したみたいなんです。それで、この人達に送って貰ったんです。」

「それは違…」

妹紅は事情を話そうとしたが、優曇華が少し睨むように見てきたので中断した。

「それは有難う。可愛い弟子を助けてくれて。礼を言うわ。えっと…」

「ああ、こちらは上白沢慧音さんです。そして、こちらが……」

「藤原妹紅だ。」

優曇華が言い切る前に、妹紅が自分から自己紹介をした。

「!!!!」

「どうかしましたか師匠?。」

「いえ、なんでもないわ。はじめまして、私はこの永遠亭の主かつ医者をやっている八意永琳よ。」

永琳は、妹紅の名前を聞いた瞬間、少し驚いた様子だった。しかし、直ぐに立ち直り、話を続けた。

「へえ、医者かぁ。もしかしたら、一生死なない薬なんて作れたりして。」

「そうね、作ろうと思えば作れないこともないかもしれないわ。多分ね。」

妹紅は、永琳に冗談を交えて話した。しかし、永琳は口調を合わせるような返答をした。

「なんてね、冗談よ。そんな物作れたら、医者なんて必要ないわよ。」

「だ、だよな。」

永琳の返答に、妹紅は若干動揺したが、妹紅は落ち着きを取り戻した。

「永琳殿、無礼を承知でお聞きしたいことがあるのだが。」

「あら、全然構わないわよ。」

慧音は、ずっと気になっていたことを永琳に思い切って聞いてみた。

「この屋敷は、一体なんの為に建てられたのかをお聞きしたいのだが。」

「そうねえ、一言でいえば美しき姫を捕らえるための穢れた檻ってとこかしらね。」

「????」

「御免なさい、変なこと言って。まあ、私達は竹林で迷った人を看病したり、無事に外に送り届けたりしているわ。人里の人達の為にね。」

「そ、そうなのですか。」

永琳の返答を、慧音は理解することができなかった。しかし、永琳はあまり知られたくないのか、話題を変えた。

「そういえば、今日はもう遅いから泊まっていくといいわ。」

「しかし、まだ夕方ですが。」

「何を言っているの。帰る途中に夜になるのに決まっているじゃない。それに、貴方達の体の汚れが酷いことから推測すると、道が分からず闇雲に竹林の中を歩いていたのじゃないかしら。」

「うっ」

図星だったので、慧音は少し落ち込んだ。

「大丈夫ですよ、部屋は余るぐらいありますから。」

「どうせだし、お言葉に甘えようぜ慧音。」

慧音は考えていたが、人の行為を無駄にしてはいけないと妹紅に行ったのは自分自身なので、慧音は断ることができなかった。

「分かりました。一晩、お世話になります。」

「わかりました~」

慧音の返事に、何故か嬉しそうな優曇華だった。

「それじゃ、来客用の部屋まで案内しますね。付いて来て下さい。」

優曇華は、妹紅と慧音を引き連れて、客室まで案内するために部屋を出た。

「ふふふ、まさか輝夜の言っていたことが現実になるなんてね。藤原妹紅……彼女なら……」

部屋に一人残った永琳は、不気味な笑みを浮かべていた。そして、席を立ち、本当の主の部屋へと向かった。

優曇華は、妹紅と慧音を別々の客室に案内した。

「なんで、別々の部屋なんだ?。」

「あれ、ひょっとしたら一緒のお部屋が宜しかったですか?。」

優曇華の言葉に、妹紅と慧音は顔を見合わせる。しばらくして、お互いに顔を赤くしながら同時に返答した。

「別々でいいです。」

「別々で……」

妹紅と慧音の反応を見て、笑いながら優曇華は言った。

「うふふ、それではごゆっくり。」

そう言うと、優曇華は部屋を後にした。

(それにしても、この屋敷は何か異様な感じがするな。何か、時の流れが他と違うような……)

「そう、まるで私と同じようだ。」

妹紅は、今更だけどこの屋敷に異様な感じを抱いていた。そして、忘れていた目的を再び思い出した。

「そうだ、私は輝夜を探していたんだ。すっかり、忘れていたぜ。」

慧音とのいざこざや、優曇華との会話が弾んだので、妹紅はすっかり忘れていた。

(待てよ。この異様な時の流れ、銀色の髪をした医者、そして、あの医者が言っていた言葉。)

「ま、まさか。」

妹紅は、何かを思いついたようだった。そして、妹紅は真実を確かめるべく、屋敷の探索に乗り出した。屋敷を駆け回っている時、さっきの永琳の部屋の前に来た。そして、中から話し声が聞こえてきた。妹紅は、気づかれないように聞き耳を立てた。

「し、師匠。それは、一体どういう意味なのですか。」

「今、言った通りよ。あなたは、私の指示通りに動きなさい。」

「しかし、それは……」

「これは、あの子の為でもあるの。黙って、私の言う通りにしなさい。これは命令よ。鈴仙・優曇華院・因幡。」

「わ、わかりました。……我が主。」

どうやら、永琳と優曇華が話しているようだった。何やら、深刻な会話をしていた。

「やっぱり、この屋敷に輝夜が居るかもしれないな。」

妹紅は、この永遠亭に輝夜が居るかもしれないと思った。先程から駆け回っているのは、手掛かりを得る為だ。

「さあて、そうと分かれば、この屋敷を徹底的に調べてみるか。」

妹紅は、その場を離れ、再び屋敷を探索しに行った。

慧音は、自室で考えていた。どうも、この屋敷のことが引っ掛かって仕方がなかったのだ。

「この屋敷は、一体何の為に建てられたのだ。永琳殿は、里の人間の為と言ったが、人里では誰もこの屋敷の話しなどしていなかった。それに、永琳殿や優曇華さんは一体何者なのだ。どうも、普通の人間だとは思えない。」

慧音は、不思議に思うことが山積みだった。しかし、整理することができず、混乱していた。

「くそう、分からない。」

慧音が考えに浸っていた、その時、部屋の襖が丁寧に開かれた。

「慧音さん、今、大丈夫ですか?。」

「その声は、優曇華さんですか?。」

襖が完全に開かれると、そこには兎の耳が特徴的な優曇華が立っていた。

「どうしたんですか?。」

「それはですね…その…」

「????」

「ご免なさい!!。散符「真実の月(インビジブルフルムーン)」。」

慧音は、優曇華の一段と輝く赤眼を見て意識を失った。

「はあ、ここにも居なかったか。やっぱり、この幻想郷に輝夜が居るっていうのはガセなのかな。」

妹紅は、自室に戻って、溜息を吐きながら呟いた。屋敷中をくまなく探索したが、輝夜の姿どころか手掛かりすら見つからなかった。

「もう、こんな時間か。」

探索に夢中になりすぎて、時間をすっかり忘れてしまっていた。辺りは、すっかり暗くなっていた。

「それにしても、こんなに広い屋敷なのに、警備の一人もいないとはな。一体、どうなっているんだ、この屋敷は。」

妹紅は、この広すぎる屋敷に、誰も居ないことを疑問に思っていた。しかし、輝夜が居ないと分かると、そんなことはどうでもよかった。

「明日、幻想郷を出るか。もう、長居する意味もないだろうし。慧音にも、短い間だったけど礼を言っとかないとな。」

妹紅が決心を固めた時、自室の襖が開かれた。

「どうしたんだ慧音?。こんな時間に…」

妹紅が、部屋に入ってきた慧音に問いかけたが、慧音は返事をしない。

「慧…音?。」

「産霊「ファーストピラミッド」」

慧音は、妹紅にスペルを放ったのだ。鋭い刃状の弾幕が、妹紅に襲いかかる。

「け、慧音!!??」

間一髪、妹紅は避けたが、数発が体を掠ってしまい、痛々しい傷を負ってしまった。
しかし、慧音は攻撃を止めない。むしろ、より一層攻撃は激しさを増すばかりだった。

「慧音!!。一体どうしたんだ。どうして、こんなことをするんだ!!。」

しかし、慧音は相変わらず答えない。まるで、意思も心も持っていない傀儡のように。
ただ、ひたすら妹紅に向かって、弾幕を打ってくる。

「くそ!!」

妹紅は、スペルで応戦しようとするが、相手が慧音なのでそれができなかった。

ザシュ!!

「くっ!!」

疲労と気の緩みで、妹紅は隙を見せてしまい、被弾してしまった。

「あらあら、殺さないの?。抵抗しなければ、貴方が死ぬことになるわよ。」

聞き覚えのある声に、妹紅は鳥肌が立った。そして、妹紅は屋根を見上げた。
そこには、漆黒の髪をした美しい髪の少女が、満月を背にして、屋敷の屋根に立っていた。

「貴様は!!!!」

「ふふふ、覚えていてくれた?。私のこと?。」

「ああ、忘れもするか。そんな、漆黒の闇のような髪を持つ奴は、一人しか知らない!!」

「何千年ぶりかしらね、藤原妹紅。」

「輝夜あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
遅くなりましたが、第二話が完成しました。前回と比べて、容量が多くなってしまって、バランスが悪くなってしまいました。まだまだ、素人の文章ですが、評価の方をお願い致します。
スコール
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.330簡易評価
6.50名前が無い程度の能力削除
閉じ括弧の直前には句点「。」はいらないです。
感嘆符「!」や疑問符「?」の後にも不要です。
小説というか文章の基本作法ですので直した方が良いです。(古い文学作品にはついてますけど現在はこちらが主流です)
ですが前作で指摘され改善された点もあるのでいくぶん読み易くなったと思います。

<内容について>
あくまで個人的な感想ですが、破たんとか大きな不満はなく安心して読めるのですが、悪く言えばありがちな展開が続きいまいち魅力に欠ける印象でした。
原作を全く知らない人間ならいざ知らず、創想話までわざわざ読みに来るような人は東方の事をよく知っており、他のいろいろな二次創作にも慣れ親しんでいるケースも多いかと思われます。
本作はそういう人たちを楽しませるレベルには残念ながらまだ達してないと言えます。
自分で指摘しておいてこんなこと言うのもナニですが、その意味でも面白いストーリーを作るのは大変ですよね……

それと細かい部分ですが、最後にでてくる「何千年ぶりかしらね」という輝夜の台詞に違和感があります。
少なくとも2~3000年は会ってない印象を受けますが、竹取物語をモチーフにしている設定上ありえない気がしましたので。

続きを期待してます。長文失礼しました。
9.10にけ削除
読みにくい。
世界観が魅力的でない。
文章構成というものを理解していない。
メリハリがない。
自己満足なモノ。
人物(妖怪)の行動が不自然。
そもそも面白くない。
才能がない。
顔がキモい←





最後のはあまり関係ないですが、以上の理由から物書きには向いていないと思われます。

就職できたのですから、こちらはやめたほうがいいですよ。
ブログのほうも。