小野塚小町は、今日も相変わらず仕事の途中で抜け出して幻想郷に来ていた。
今日はどこへ行こうか、などと気楽な事を考えながらのんびりと歩いている。
「幽霊も落ち着いてきたし、そろそろ息抜きは必要だ、ってね」
少し前に起きた花の異変で増えた幽霊も、ようやく数が減って正常に戻りつつあった。
それは元々自然にそうなって行っているだけなので、特に小町が何かしたという訳ではないのだが。
「そうだ、神社ならまだ桜が残ってるかも知れないな。季節外れの花見と洒落込みますか」
以前訪れた時の桜が見たくなったのと、神社の幽霊はまだ消えていない事を思い出し、目的地を決めた。
霊夢に文句を言われないように、適当な酒を里で買う事にする。
お酒を渡してやれば、喜んで場所を貸してくれるだろうと思っての事だ。
「どんな酒が良いかな、っと」
早速、里へ向かいながらどんな酒を持っていくかを考え始めた。
既に仕事の事などは忘却の彼方で、花見を楽しむ事しか頭にはない。
「おっと、肴も忘れちゃいけないね。後は四季様にお土産でも…」
お土産を買って帰ったりすれば、サボっていた事がバレるのは確実だが気にしてはいないようだった。
「四季様は真面目だからなー…適度に息抜きしなきゃもたないって」
仕事を抜け出す少し前に、息抜きにでも行こうと誘ったのだが、あっさり断られていた。
小町はその事を思い出して少し残念そうにしながら、独り言を言い続けている。
「ま、しょーがないか…あたいにゃどうしようもないし」
考えていても仕方ないと言う結論に至り、一先ず映姫の事を考えるのは止めておく。
そろそろ里に着くので、早く買い物を済ませてお花見をしようと思い直していた。
一方その頃、映姫は頭を悩ませていた。
「うーん…参ったわね…」
悩みの種となっているのは、上から言い渡された事だった。
「配置換え…ねぇ」
上の方から、小町を他の船頭の死神と入れ替ると言うお達しが来たのである。
映姫さえ承認すればすぐにでも対応されるが、承認するかどうかが問題だ。
「来る予定の子は確かに、有能で真面目みたいだけど…んん…」
予定されている船頭の死神は、今の仕事場でもその腕を認められているかなり有能な人物だった。
来てくれれば間違いなく、サボり癖など色々な問題がある小町よりは仕事が速くなるだろう。
普通なら即決で承認しそうなものだが、映姫にはそう出来ない理由がある。
「…小町を私の目の届かない所に置くのは…」
これでも映姫は他の閻魔に比べれば、仕事に対しては甘い方だった。
そんな映姫の下で初めて働くようになった小町が、他の閻魔の下についたら相当苦労するのは間違いない。
ザホりでもしようものなら、間違いなく即刻首になって船頭の仕事が出来なくなるだろう。
「確かに仕事がスムーズに進むのは、願ってもない事だけど…だからと言って見捨てる訳にも行かないし…」
仕事の事を考えればすぐにでも承認すれば良いと、頭で分かっていても心情的には従えなかった。
甘過ぎると言われればその通りだが、ここ最近は特にサボる事も無く真面目に働いている。
「まぁ、ついさっき休憩しないかと言い出したけど…」
少し前に、幽霊を運んできた小町がそろそろ息抜きをしないかと言ってきたのだ。
確かに最近は珍しく休まず働いているので、そう言いたくなる気持ちも分からなくはなかった。
「…これじゃ、私もあまり小町の事を言えないかも知れないわね」
たまには小町に付き合ってあげても良いか、などと思ってしまった自分を反省する。
しかし上司として、頑張っている部下を労うのも仕事の内だ。
「確かに今はかき入れ時だけど…少しくらいなら…」
そう考えると、自ずと上からの通達に対する答えも決まっていた。
サボり癖などの問題はあっても、やはり小町と共に頑張って行きたいと、そう思う。
「…はっ、いけない、考え事に集中し過ぎたわね…これじゃ裁きを待つ幽霊に示しが…」
考えていたのはほんの少しの間だったが、それでも幽霊は来ているだろうと思い慌てて顔を上げる。
しかし、辺りを見渡してみても幽霊の姿はどこにもなかった。
「あれ?前に裁いたのがこの時間だから…いくらなんでも…」
手元の紙に書かれた時間と今の時間を照らし合わせて、暫し考え込む。
徳の高い幽霊を優先するようにしているのだから、こんなに時間がかかるとは思えなかった。
そうなると、結論はすぐに出てきた。
「…小町の様子を見に行きましょう…」
間違いなく小町が原因だと判断した映姫は、すぐに様子を見に行くのだった。
里で適当にお酒と肴を買って、小町は神社へとやってきた。
「おー、咲いてる咲いてる…ちょっと散ってきてるけど」
少しずつ散り始めてはいたが、それでも花見をするには十分の桜だ。
早速辺りを見渡して霊夢の姿を探していると、後ろから声を掛けられた。
「何してんのよ、人の神社の前で」
「お、霊夢。ちょうどお前さんを探してたとこだよ」
声に気付いて振り返りながら、霊夢に答える。
自分を探していた時いて、不思議そうに首を傾げていた。
「私を?言っとくけど、面倒事はお断りよ」
境内の掃除や度々挑まれる弾幕ごっこでも面倒なのに、これ以上厄介ごとを増やされたくは無い。
そう思っての発言だったが、小町は特に気にする様子はなかった。
「あぁ、大丈夫大丈夫。ちょっと酒を呑む場所を貸して欲しいだけだよ」
買ってきたお酒を取り出しながら、霊夢に用件を告げる。
「お酒を?それ位ならまぁ良いけど…仕事はどうしたのよ」
少し拍子抜けをしながら、仕事の事を尋ねた。
確かに幽霊は減ってきているが、このままではまた自分が仕事をしていないと思われてしまうので、
霊夢としては早く何とかして欲しいのが本音だ。
しかし、以前に映姫や小町の言っていた事からすぐに収まらない事は分かっているので、既に諦めていた。
「問題ないって、まだバレてないし。それよりほら、ちゃんとお前さんの分も用意してあるよ」
気楽そうに答えながら、霊夢に買ってきた酒を渡した。
「お、気が利くじゃないの。それじゃあ私も呑もうかしらね」
お酒を受け取った霊夢は先程の疲れも吹き飛んだのか、早速お酒を呑もうと場所を移動する。
どうせ呑むなら一人より二人の方が良いと、霊夢の後に続いて小町も歩き出すのだった。
今日は小町以外に来客もなく、霊夢と小町は二人でのんびりと酒を呑んでいる。
既に持ってきたお酒は一本が空になっていて、二本目に手をつけていた。
「ぷはぁ~…季節外れの花見も、中々どうして、悪くないねぇ」
御猪口に注がれた酒を一気に飲み干して、桜を見上げながら小町が言った。
既に仕事の事など忘れてしまっているようで、頬は少し赤くなり軽く酔っている。
「それはまぁ、否定しないけど…アンタ達が仕事してくれないと、私がサボってると思われるのよね…」
普段の自分を棚に上げて、霊夢が恨めしそうに小町を見た。
しかし、そんな事を気にする様子もなく、相変わらず楽しそうに笑っている。
「焦るな焦るな、もうすぐ落ち着いてくるから。あたいが言うんだから間違いないって」
胸を張って自信満々といった様子で答える小町だが、霊夢は相変わらず疑いの眼差しを向けていた。
そもそも普段から仕事をサボる小町の言う事を、そう簡単に信じる事は出来ないからだ。
むしろ、今こうしてサボっている所為で、中々幽霊が減らないのではないかとすら思えてくる。
「…本当かしら…あの閻魔が言うならともかく、あんたが言ってもねぇ…」
「ちょっ、どういう意味だい、それは。あたいがそんなに嘘吐きに見えるのかい?」
心外に思いながら、霊夢に尋ねると、すぐに答えが返ってきた。
「少なくとも、仕事をサボってここにいる時点で…ねぇ」
言われてみれば、確かにそのとおりだった。
いくらその内戻ると言っても、ここでサボっているとそれが少し遅くなるのだ。
「いやまぁその。最近は色々と忙しくて休む間もなかったからね?ははは…」
痛い所を突かれてしまった、といった様子で適当に誤魔化そうとする。
霊夢は少し飽きれているようだったが、それ以上は特に言及しなかった。
「ま…こうしてお花見ができるし、そこまで悪くはないわね」
色々と文句を言ってはいるが、既に調査は終わっていて害が無い事も確認している。
さらに自分の手ではどうにも出来ないと言うなら、素直にこの状況を楽しもうと思っていた。
まぁ、咲き乱れる鈴蘭などは害になり得るかも知れないが、それはそれだ。
「はっは、そうそう。どうしようもないんだから、素直に楽しむのが吉ってね」
「周りの連中もそんな感じだし…明日も宴会あるのよね」
笑いながら小町が言うと、霊夢も苦笑しながら最近の事を思い出す。
霊夢が異変の調査を終えてから、頻繁に宴会が行われていたのである。
「へぇ、宴会か」
宴会と聞いて、小町がその話題に食いついた。
性格上、宴会や祝い事などは積極的に参加したがるので、当然といえば当然の反応だ。
「そ、何ならあんたも参加する?」
「おぉ、良いのかい?それは是非参加したいねぇ、四季様と一緒に」
宴会に誘われて嬉しそうに頷くと、どうやって映姫を連れ出そうかと考える。
いくら小町でも、自分の上司を放っておいて、自分だけ楽しく宴会に参加するのは気が引けるのだ。
「良いけど、説教禁止ね」
参加者が多いので、その分説教をしたくなる相手もたくさんいるだろうと思い、釘を刺しておく。
特にここに集まる連中は一癖も二癖もある人妖ばかりなので、説教の相手には困らないだろう。
「分かってる分かってる、ちゃんと言っとくよ」
苦笑しながら答えると、小町は御猪口についだ酒を一気に飲み干す。
そして小町は、仕事が終わったらすぐに誘おうと思うのだった。
呑み始めて暫く経って、そろそろお酒もなくなり掛けていた。
「そういやさ、ちょっと気になったんだけど」
何杯目かのお酒を飲み干した霊夢が、そう前置きして小町に声を掛ける。
「ん、なんだい?」
「あんたさ、どうしてそんなに仕事サボってんの?別に仕事が嫌いって訳じゃないんでしょ?」
不思議そうに聞き返す小町に、ずっと気になっていた事を質問した。
地獄の決まりごとはよく知らないが、以前に見かけた別の死神の事もあって、
仕事は自分から選べるものだと霊夢は思っているのだ。
自分からやろうと思った仕事が嫌いな筈がない、と考えるのは自然な事だろう。
「あぁ、それか…まぁ、確かにこの仕事は嫌いじゃないよ」
それは嘘ではなく、色んな幽霊の生前の話を聞ける今の仕事を小町は気に入っている。
「でもねぇ、四季様は物凄く真面目で仕事熱心だろ?」
「確かに、真面目が服を着て歩いてるような感じだったわね」
小町に言われて映姫の事を思い出すと、確かに仕事熱心で真面目そうだった。
その上、仕事が休みの時は幻想郷を周って説教した相手の様子を見ている。
「だから、あたいがこうしてサボる事で、その間は四季様に休憩してもらってるのさ。
裁く必要のある霊がいなければ、仕事を進めたくても進められないからね」
三途の川を渡す事ができるのは船頭を務める死神だけで、幽霊が運ばれてこなければ映姫は仕事が出来なくなる。
そうなると必然的に何もしない時間が出来て、嫌でも休憩を取らざるを得なくなってしまうのだ。
「あー、なるほど…理由としては分からなくもないわね」
閻魔が体調を崩したり、過労で倒れたりするのかは知らないが、人間と同じ様に考えれば納得できなくはなかった。
休日も設けられているようだし、やはり休む必要のある種族なのだろう。
「無理されても困るしねぇ…ついでにあたいも楽が出来るし」
ノリが軽くてお酒も入っている為、どちらが本音なのかは分からない。
しかし、小町が本心から映姫の事を心配しているのは間違いないようだ。
その割には行動が問題だらけだが、それについて霊夢は特に言及しようとはしなかった。
「ふぅん…意外と部下に好かれてるのね」
最後の一杯を呑み干しながら、霊夢が感心したように言った。
自分に当てはめて考えてみるが、すぐにあんなうるさい者の下につきたくないという結論に達する。
「少なくともあたいは好きだねぇ、四季様の事。人間の世界じゃあんま好かれてないようだけど」
恥ずかしげもなくそう言うと、人間界で閻魔の話を聞いた時の事を思い出す。
地獄などとの関わりもあってなのか、怖い存在というイメージが強い様だった。
「ま、誰だって後ろめたい事の一つや二つはあるしね。そんなもんでしょ」
「それもそうか。霊夢もかなりありそうだねぇ」
納得して頷きつつ、霊夢の姿を眺めて小町が言う。
それを知るような能力を小町は持っていないので、これは単なる推測である。
「どうかしらね」
だが、それにもまったく動じる事無く、霊夢は曖昧な返事を返すだけだった。
持ってきたお酒がなくなる頃には、既に昼よりは夕方に近い時間になっていた。
思ってた以上に長い時間、呑んでいたようだ。
「さぁて、酒もなくなったしそろそろ帰るかねぇ」
立ち上がって大きく伸びをしながら、小町が帰る支度を始める。
引き止める理由も無いので、霊夢も空になった酒瓶などを片付け始めた。
「それが良いわね、ちょうど迎えも来たみたいだし」
「へ?」
神社に入ってくる者の気配を感じた霊夢がそう言うと、それから程なくして映姫が現れた。
顔は笑っていたが、その下には端から見ても分かるくらいの怒気を含んでいる。
「こ~ま~ち~…!」
名前を呼ばれてビクッと震えながら、恐る恐る小町が振り返った。
「げっ…い、いやほら、これは違うんですよ、なんと言うか、その…」
映姫が口を開く前に言い訳をしようと、適当な理由を探そうとしたが、慌てていて中々思いつかない。
その姿を見ながら、少しずつ小町の方へと歩きだす。
「…そ、そうだ、最近は幽霊も落ち着いてきたし、自分の仕事の成果を確認しようとですね…」
「問答…無用!」
「きゃんっ!」
言い訳を続けていた小町の頭を、持っている悔悟の棒で思いっきり引っ叩いた。
小町は可愛らしい悲鳴を上げながら、頭を抑えてその場にうずくまる。
「急に幽霊が来なくなったと思ったら、また小町はこんな所でサボっているのね。人の気も知らないで…大体、貴方は…」
うずくまっている小町に容赦なく説教を始めながら、何度も悔悟の棒で叩く。
それを暫く眺めた後、霊夢は呑んでいたお酒などを片付けに行った。
片付けを済ませた霊夢が戻ってくると、未だに説教を続けている映姫に声を掛けた。
「あー…人ん家の庭で、長々と説教されてもいい迷惑なんだけど」
掃除をするにしてもお茶を飲むにしても、こんな状況ではうるさくてかなわない。
なので霊夢は、面倒でも説教を止める事にしたのだった。
「貴方はそれが分かっていな……はっ、そうだったわね…失礼しました」
ようやく自分がどこにいるのか思い出したようで、説教を中断して霊夢に頭を下げる。
一先ずは解放されて、小町もほっとしたように胸を撫で下ろした。
「分かってくれたんならいーけどさ。あ、ちなみに私は説教とか間に合ってるからいらないわよ」
自分が標的にされないようにそう言いながら、霊夢は用意したお茶を注いだ。
その間に小町も立ち直ったようで、頭をさすりながら立ち上がる。
「あいたたた…もうちょっと手加減してくださいよぉ」
小町は涙目になって、映姫に抗議する。
「手加減したら反省しないでしょう、小町は。手加減しなくても、反省しないようだけど…」
ため息を吐きながら映姫が言うと、小町は黙って顔を逸らしてしまう。
確かにその通りではあるので、何も言い返せないようだ。
「ま、続きは帰ってからにしたら?」
気に留める事も無くお茶を飲みながら、霊夢がそう提案する。
「そうね、仕事もあるし…そろそろ失礼しましょう。ほら、帰るわよ、小町」
「はーい…という訳で、世話になったねぇ。そいじゃ、また」
丁寧に一礼をして、映姫が小町の手を引いて歩き出す。
映姫に連れて行かれながら、小町も軽く手を上げて言った。
「んー。気が向いたら、明日の宴会に参加しなさいよー」
それを見送りながら、霊夢が二人に呼びかける。
あの様子では、小町が映姫を誘うなどとても無理そうに見えたからだ。
「…そうね、考えておきましょう」
少し迷った後にそう言うと、映姫はそのまま帰っていく。
あっさり断ると思っていたので、小町は当然、誘った霊夢も驚いていた。
そして翌日、神社ではいつものように宴会が開かれている。
だが、その中に映姫と小町の姿はなかった。
「まぁ、来ないわよね」
予想通りといえば予想通りなので、霊夢も特に気にせずお酒を飲んでいた。
「お~い、霊夢ぅ~。霊夢もこっち来なよ~」
「はいはい、ちょっと待ちなさい」
萃香に呼ばれて、霊夢が萃香達の呑んでいる場所へ向かう。
その途中で、また神社に参加者がやって来た事に気付く。
「おっと、誰か来たわね。ちょっと待ってなさい」
萃香にそう言うと、霊夢は賽銭を促すためにそちらへ向かった。
少し不満そうだったが、萃香はすぐにまた飲み始めている。
「あら、珍しい。来たのね」
やって来た二人の姿を確認して、少し驚きながら霊夢が言う。
新しくやって来た参加者は、映姫と小町だった。
「えぇ、仕事も一段落したので…お邪魔させて頂きます」
「随分とまぁ、賑やかだねぇ。あたいも血が騒ぐよ」
丁寧にお辞儀をする映姫に対し、小町は周りを見渡してすぐにでも呑みに行きたいようだ。
「こら、小町。招かれたと言うのに、挨拶もしないとは何事ですか」
そんな小町を叱りつけて、霊夢に挨拶させる。
まるで姉妹の様なやりとりを見ていて、霊夢は少し顔をほころばせていた。
「気にしないわよ、別に。それより、今日は楽しんでいきなさいな」
「えぇ、そうさせて頂きます」
「それじゃあ四季様、早速飲みましょう」
輪に加わりたくて仕方ないのか、小町は子供の様に映姫を急かしていた。
身長差の所為で小町の方が上に見えるが、中身はまったく逆のようである。
「あ、それと素敵なお賽銭箱はそこだからね」
そのまま宴会に混ざろうとした二人に、霊夢がそう言って賽銭箱を指した。
「…場所をお借りする分、と思いましょう」
「はは、死神としてどうなんだか、これ」
相手が閻魔でも死神でも、霊夢が特別に態度を変えるという事は無い。
その事を改めて感じながら賽銭箱に賽銭を入れると、二人は気を取り直して宴会に参加した。
「そうだ、忘れてた。四季様も誘ってくれて、ありがとね」
「仲間外れってのも感じ悪いでしょ、それだけよ」
心の底から感謝している小町に、照れ隠しをしながら霊夢が答える。
映姫と共に宴会に参加できた小町は、かなりご機嫌のようだ。
「小町ー」
「おっと、四季様が呼んでる。そいじゃ、また後で」
「はいはい、しっかり楽しんできなさい」
映姫に呼ばれて急いで駆けていく小町を見送ると、霊夢も宴会に戻る事にした。
「さて、それじゃあ萃香のトコに行ってやりますか」
お賽銭も入って機嫌を良くした霊夢は、二人の様子を軽く確認してから萃香達の方へと向かうのだった。