幻想郷に野球というスポーツが広まったのはおよそ5年前、そのころは里で子供が遊びでやったりしていただけだった。
しかし、子供から大人へと広まり、さらには妖怪までに広がり3年前からは幻想郷リーグと銘打って野球大会を開くようになった。
もちろん言い出したのは八雲紫である。
妖怪達の野球はそれなりの人気を博し、各チームに固定ファンもできてきたころであった。
「う~…」
紅魔館当主、レミリア・スカーレットは悩んでいた。
幻想郷に野球が広まって3年、レミリア率いる紅魔館デビルレッツは低迷を続けているからだ。
今幻想郷の野球は幻想郷リーグに所属する6チームから構成されている。
まず、昨年優勝で、3年連続Aクラス入りを果たしている「永遠亭ルナーズ」
次に主に妖怪の山メンバーで構成されており、強豪の「守矢マウンツ」
地下の妖怪のチームでさとり率いる「地霊殿ハデス」
命蓮寺メンバーで構成されている「命蓮寺スカイズ」
1、2年目に連続優勝しており、現在最強とされるのが博麗の巫女の「幻想ドリームス」
そして3年連続Bクラスの我らが「紅魔館デビルレッツ」である。
低迷を続けるレッツだが、今年からついにそれを打開できる状況になりつつあった。
「ドラフト会議」と「FA権の取得」である。
ドラフト会議といっても、有望な新人がいたりする訳ではなく。
単に3年前のチーム編成時にどこのチームにも入れなかった者達にチャンスを与えるために開かれるもので、チームバランスに大きな変化を与えるものには
ならないというのが大多数の見解であった。
FA権の取得は各主力選手を引き抜くことができれば大きな戦力アップ、さらには相手の戦力ダウンが見込め来シーズンへの期待は大きくなるだろう。
また他にも実力はあるもののどこのチームにも所属していない(する気がない)、ドラフト志望で無いものも少数だがいる。それらを引き込むことができれば
これも大きな戦力アップが見込めるだろう。
低迷しているチームに微かに光が差したこの現状にレミリアが何を悩んでいるかというと
「紅魔館の人員だけで勝つのはやはり不可能なの…?」
紅魔館の主力メンバーは6人。
レミリア・スカーレット 昨シーズン成績 防御率0.78 6勝0敗45S
リーグ屈指のストッパー 3年連続40Sをマークし、昨シーズンはセーブ機会46回で45Sを記録した。
フランドール・スカーレット 昨シーズン成績 防御率3.22 12勝7敗
デビルレッツのエース 球界No1のスタミナと150km/h超の直球が武器だが乱調を起こすことがある。
パチュリー・ノーレッジ 昨シーズン成績 防御率2.87 9勝3敗
デビルレッツの先発2枚看板 中6日で球数は80球が限界ながら7色の変化球を操る技巧派。
十六夜咲夜 昨シーズン成績 率.318 本7 点35 盗28
打順は1番、ポジションは遊撃手 長打力こそないが通算打率.320のアベレージヒッターであり守備も上手い。
紅美鈴 昨シーズン成績 率.285 本22 点87 盗6
打順は4番、ポジションはキャッチャー 固いブロックとチーム1の長打力を持つ頼れる中軸。
小悪魔 昨シーズン成績 率.282 本2 点28 盗20
打順は2番、ポジションはセカンド 成績は地味だが内野は遊撃以外守れ、犠打が上手く進塁打を打つのも上手い。チャンスに弱いのが玉にきず。
このチームの弱点、それは見てもわかるが長打力に欠け、セットアッパー不在なことだ。
チーム1の長打力を持つ美鈴でさえ22本塁打に留まっている、もちろんキャッチャーとしてなら文句なしの成績である。
だがホームラン王争いが40本あたりで繰り広げられていることを考えれば寂しい数字だ。
更に3,5番を打つ妖精メイドはそれぞれ13,16本塁打である。
そしてセットアッパーがいない、フランは完投、悪くても7~8回までは投げてくれるがパチュリーはスタミナが持って6回、下手すれば5回持たないときもある。そうなれば中継ぎ陣の出番だが中継ぎ陣が頼りない、中継ぎの防御率は5点台である。
試合をひっくり返されてはレミリアのでる幕では無い。さらに貧打が重なり大勝がほとんどなく勝ち試合のほとんどでレミリアが投げている。下位のチームでこれだけのセーブ数を記録する理由はこれだった。
「まぁFAはともかくドラフト会議には出席ね、このままでは余計にジリ貧だもの。」
レミリアはそう自嘲して手元のドラフト生の資料に目を通す。
(どうせ美鈴以上の強打者はいないし、せめてセットアッパー候補が欲しいわね…,できれば外野手も取れれば…)
ドラフト生名簿 スカウト 咲夜
(名簿左の選手の方が評価高)
投手(先発)メルラン・プリズムリバー チルノ
投手(中継ぎ)リリカ・プリズムリバー 大妖精 サニーミルク
投手(抑え)ルナサ・プリズムリバー
捕手 該当者無し
一塁手 ルーミア キスメ
二塁手 水橋パルスィ 河城にとり
三塁手 黒谷ヤマメ 多々良小傘
遊撃手 橙 鍵山雛
外野手 リグル ミスティア ルナチャイルド スターサファイア
(1位指名は騒霊3姉妹の長女か三女…か?ドラフトは2位以下はウェーバー方式らしいから2巡目で夜雀はとれそうね。3巡目は…わからん。ま、そのとき考えるか)
そして迎えたドラフト会議当日、会議場にはレミリアと咲夜が向かった。
「さて、予定通りのドラフトができるといいが」
「一巡目は複数入札の場合抽選ですからね、1巡目に騒霊3姉妹のいずれかをとれれば2巡目はまず固いでしょう。して、1位指名はいかがなさいますか?」
「他所はどういうドラフト戦略で来ると思う?」
「2位以下はわかりかねますが…どのチームも中距離砲とされるルーミア、ヤマメや投手陣は人気のようですわ。」
「やはり投手は人気か、騒霊姉妹のうちどちらかが取れればとりあえずOKね。」
「あ、始まりますよ。」
「これより第一回幻想郷リーグドラフト会議を始めます。各球団はお手元の札に入札選手名を書いて前の投票箱にお入れください。」
☆ ☆ ☆ 少女投票中 ☆ ☆ ☆
「では、発表します。
命蓮寺スカイズ 一巡目指名 黒谷ヤマメ 三塁手
紅魔館デビルレッツ 一巡目指名 ルナサ・プリズムリバー 投手
地霊殿ハデス 一巡目指名 リグル・ナイトバグ 外野手
守矢マウンツ 一巡目指名 水橋パルスィ 二塁手
幻想ドリームス 一巡目指名 ルナサ・プリズムリバー 投手
永遠亭ルナーズ 一巡目指名 リグル・ナイトバグ 外野手
一巡目指名が重複したところは抽選を行います、代表者前へ」
「長女でかぶったか…まぁもし外しても三女は取れるか。」
「抑えがいる球団が抑え指名するんじゃないわよ!」
「永遠亭は先発が急務じゃなかったの?………深刻な先発不足はうちだけだから二巡目でも取れる、か」
「先発が足りてなくても勝てたなら当面の危機に備えなきゃね。」
各代表者はボヤきながらくじ引き箱へと歩を進める。
☆ ☆ ☆ 少女くじ引き中 ☆ ☆ ☆
「紅魔館デビルレッツ 交渉権獲得
永遠亭ルナーズ 交渉権獲得
幻想ドリームス、地霊殿ハデスは再選択を行ってください。」
「ルナサがだめならリリカしかいないわね。」
「さすがに1巡目でこの選手が残ってるなら行くわよ。報復じゃないわよ?」
「地霊殿ハデス 一巡目指名 メルラン・プリズムリバー 投手
幻想ドリームス 一巡目指名 リリカ・プリズムリバー 投手」
「お、地霊殿はリグル指名したくらいだから夜雀かな~って思ってたら次女にきたわね。」
「あくまで夜雀の評価は外野手二番手ですからね、残っているなら先発に行くのはありかと。」
「まぁそっちのが好都合だけどね、あとは命蓮寺が指名しなけりゃ夜雀が指名できるわね。」
「では各球団二巡目、三巡目指名選択を行ってください。」
「命蓮寺スカイズ 二巡目指名 ルーミア 一塁手
紅魔館デビルレッツ 二巡目指名 ミスティア・ローレライ 外野手
地霊殿ハデス 二巡目指名 大妖精 投手
守矢マウンツ 二巡目指名 橙 遊撃手
幻想ドリームス 二巡目指名 河城にとり 二塁手
永遠亭ルナーズ 二巡目指名 チルノ 投手」
永遠亭ルナーズ 三巡目指名 サニーミルク 投手」
幻想ドリームス 三巡目指名 ルナチャイルド 外野手」
守矢マウンツ 三巡目指名 多々良小傘 三塁手」
地霊殿ハデス 三巡目指名 スターサファイア 外野手」
紅魔館デビルレッツ 三巡目指名 キスメ 一塁手」
命蓮寺スカイズ 三巡目指名 鍵山雛 遊撃手」
「以上でドラフト会議を終了します。お疲れさまでした。」
「咲夜、今回のドラフトどう思う?」
「とてもいい出来だと思いますわ、ポジションがかぶってる選手がいませんもの。」
「それはそうなんだけど、三巡目に指名したキスメとやらはどんな選手なの?」
「ポジションはご存知の通りファーストです、打撃は.270 10本程ですが守備はとても良く、GG賞をも狙えるレベルです。」
「どんどん守りのチームになってるわね…また来年も咲夜小悪魔美鈴頼みになりそうだ。」
「まだFAや、自由契約選手がいますわ。もしかしたら大物が入るかもしれません。」 咲夜は笑みを浮かべながら言った。
「自由契約選手か……彼女ら一人でも引き入れることができればだいぶ楽になるんだけど。」 ため息混じりにぼやき、レミリアは帰路についた。
自由契約選手とはどこのチームにも所属していなく、ドラフト志望も出さなかった選手のことであり、こちらの世界の戦力外通告を受けた選手とは異なる。
今までも多くのチームが契約を結ぼうとしたがいずれもあっけなく断られている。ちなみにレミリアは今まで紅魔館メンバー以外を入れる気がなかったため交渉したことはない。
それからしばらくして、FA権解禁の日がやってきた。
誰がFA権を行使するのか、というのは各球団関係者や、里のファンたちにとっても気にかけている事項であった。
「咲夜~、文々。新聞には誰がFA権行使しそうって書いてる~?」 起き抜け一番に従者にFAの事を聞く主人。どれだけ野球好きだ。
主人がいつ起きて何を聞くかわかってたかのように咲夜は答える。
「おはようございます お嬢様。 え~っと、永遠亭ルナーズの藤原妹紅がFA退団か?妹紅退団なら上白沢慧音も退団ある! と 幽々子様「わかってる勝負は面白くないのよね~」はFAの伏線か? あら、うちの門番も記事になってますよ。 紅魔館の門番へ興味を示している球団多数、果たして本人の胸中は!? ですって。」
「キャッチャーは人材不足だからねぇ…、目立ちたがりの多い幻想郷じゃあやりたがらないポジションよね。FAする気かしら?あの子。」
レミリアは口では心配そうだが表情は笑っている。 紅魔館の絆は強いのだーーーそう言わんばかりだ。
実際に美鈴はFAする気などないし、他のメンバーも同様であった。それはレミリアの恐怖政治などでは無く、純粋なカリスマによるものだろう。
「するなんてみじんもおもってらっしゃらないでしょう?」
咲夜も笑ってこたえる。 全員お嬢様についていく所存です、その気持ちがよくわかる表情だった。
「そういえば、ドラフト会議やFA解禁等を受けて自由契約選手のもとを再度訪れるものもいるようです。FAの影響や思ったようなドラフトが出来なかったんでしょうね。」
「どこも補強に動くわね…、咲夜はFA補強についてどう思う?正直うちもそういう補強するか悩んでるのよ。」
レミリアは以前から悩んでいることを打ち明ける、今はどんな意見でもいいから欲しかった。
咲夜は微笑んで答えた。
「このチームはお嬢様のチームです。お嬢様の思うように編成なさればいいのですわ。私個人としては紅魔館メンバーで、と思った時期もありましたがドラフトでルナサ、ミスティア、キスメも入団しますし深く考える必要は無いと思います。大切なのは楽しむことではないでしょうか?」
「そうね、ここでは変なプライドより楽しむことが大事かもね。FA補強も考えておきましょう。そういえばドラフトの3人はいつからチームに合流するのかしら?」
頭の中のもやもやが晴れたようだった。 咲夜が、ドラフト前は長女、夜雀と呼んでいたのを先ほどはルナサ、ミスティアと呼んでいた。
少なくとも咲夜は紅魔館以外の仲間ができることを肯定的に受け取っている。そう感じた。
「3日後の全体練習から参加するようですわ。そういえばお嬢様、ルナサは抑え向きのピッチャーですがどうなさるおつもりで?」
セットアッパーと抑えは似ているようだが微妙に異なっている。投手は多くて困らないが少し疑問に思っていたのだ。
「あぁ、それは私に考えがある。」
レミリアはにやりと笑って答えた。
続く!
読み進めていくウチにドンドン引き込まれていきました。
レミリアが良い指導者としてチームのことを思っているのが伝わってきますね。
紫やゆゆさま等がどこのチームに所属するのか?気になってしょうがない。
第一話でこれほど続きが楽しみな続き物は久々です。
続編待ってます!
しかしチーム名がデビルレッツってなんだよw
面白いです期待カキコ
アメフトしそうな名前だけど
あとドリームスもおかしい気がする
ドラフトってこんな感じなんだ
次はどうなるのかな?
期待してます!!
楽しかったです。
オラわくわくしてきたぞ。
魔球「ミスディレクション」とか作ってましたけど、そういうのは出るのかな?
ともかく、これからの展開に期待です!頑張ってください!
続き、待ってます!
続き、期待してます!!
キャッチャーやりたがる奴がいないって理由で美鈴引き抜きの話が出るくらいなんだから、自由契約選手の中にはそもそも野球なんてする気のない奴らもいそうだし、如何に選手獲得するかが今後の課題か……ってか他チームの選手もバランス考えてポジションつけばいいものをwまあそこが幻想郷の住人らしいとも言えるw
今後紅魔館チーム含むが各選手達がどう動くのか楽しみにしてます